(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の同期リラクタンス型回転電機を、図面を参照して説明する。
【0008】
実施形態の同期リラクタンス型回転電機10は、例えば4極の同期リラクタンス型回転電機である。同期リラクタンス型回転電機10は、
図1に示すように、複数層の空隙11が設けられる回転子鉄心12と、固定子13と、を備えている。
回転子鉄心12は、円筒状の外形を有し、例えば円環状の複数の磁性鋼板が積層されることによって形成されている。固定子13は、回転子鉄心12よりも大きな円筒状の外形を有する固定子鉄心13aと、固定子鉄心13aのスロット13bに装着される固定子コイル(図示略)と、を備えている。固定子鉄心13aは、例えば円環状の複数の磁性鋼板が積層されることによって形成され、回転子鉄心12の外周側に配置されている。
【0009】
複数層の円弧状の空隙11が設けられる回転子鉄心12は、複数層の帯状磁路14を備えている。回転子鉄心12は、磁極中心線方向において、複数層の空隙11および帯状磁路14を交互に配置している。複数層の空隙11および帯状磁路14の各々は、磁極中心線方向において、内周側に凸状に湾曲する形状を有している。なお、磁極中心線方向は、回転子中心Oと磁極中央部Mとを含む直線が伸びる方向であって、d軸の方向である。また、極間の中心線方向はq軸の方向である。
実施形態の回転子鉄心12は、例えば、磁極中心線方向の内周側から外周側に向かい順次積層配置される、4つの第1〜第4空隙11a〜11dと、5つの第1〜第5帯状磁路14a〜14eを備えている。
【0010】
回転子鉄心12は、各空隙11を介して隣接する帯状磁路14を外周部において連結する外周側ブリッジ15を備えている。
回転子鉄心12は、複数層の空隙11の少なくとも2つ以上において、各空隙11を跨いで、各空隙11を介して隣接する帯状磁路14を接続する少なくとも1つ以上のブリッジ16を備えている。回転子鉄心12は、例えば、複数層の空隙11のうち、磁極中心線方向の最外周側の空隙11(つまり、第4空隙11d)以外の各空隙11に少なくとも1つ以上のブリッジ16を備えている。
【0011】
各ブリッジ16は、回転子鉄心12と同一の材質により形成され、例えば、回転子中心Oから径方向に伸びる所定の直線上に配置される形状を有している。各ブリッジ16は、回転子鉄心12の回転時に作用する応力に耐え得る所望の機械的強度を確保するために必要とされる下限幅以上の幅を有している。複数層の空隙11のうち隣り合う空隙11の互いのブリッジ16は、同一の直線上に配置されないように、異なる直線上に配置されている。
【0012】
実施形態の回転子鉄心12は、複数層の空隙11のうち磁極中心線方向の最内周側の第1空隙11aに磁極中心線L0上に配置される1つの第1ブリッジ16aを備えている。さらに、磁極中心線方向で第1空隙11aの外周側の第2空隙11bに磁極中心線L0に対して第1角度θ1で傾斜する2つの第1直線L1上に配置される2つの第2ブリッジ16bを備えている。さらに、磁極中心線方向で第2空隙11bの外周側の第3空隙11cに磁極中心線L0上に配置される1つの第3ブリッジ16cを備えている。2つの第2ブリッジ16bの各々は、各1つの第1ブリッジ16aおよび第3ブリッジ16cよりも細い形状を有している。
【0013】
以上説明した実施形態によれば、帯状磁路14を介して隣り合う空隙11に互いに異なる直線上に配置されるブリッジ16を持つことにより、ブリッジ16が同一直線上で連続して配置されることを防ぐことができる。これにより、機械的強度を確保しつつ、同一直線上で磁気抵抗が小さくなることを防止し、漏れ磁束を低減することができ、トルクおよび力率の低下を抑制することができる。
【0014】
さらに、複数層の空隙11のうち隣り合う空隙11に、互いに磁極中心線L0上に配置されないように、異なる直線上に配置されるブリッジ16を持つことにより、d軸方向の磁気抵抗が小さくなることを防止することができる。これにより、d軸方向の漏れ磁束を低減することができ、トルクおよび力率の低下を抑制することができる。
【0015】
さらに、回転子中心Oから径方向に伸びる所定の直線上に配置される形状を有するブリッジ16を持つことにより、回転子鉄心12の回転時に作用する応力の方向に対して効率的に所望の機械的強度を確保することができる。これにより、所望の機械的強度を確保するために必要とされるブリッジ16の幅を適正に小さくすることができ、磁気抵抗を増大させることができ、漏れ磁束を低減することができ、トルクおよび力率を増大させることができる。
【0016】
さらに、磁極中心線L0に対して傾斜する直線(つまり第1直線L1)上に配置されるブリッジ16を持つことにより、磁極中心線L0上に配置されるブリッジ16に比べて、ブリッジ16を長くすることができ、磁気抵抗を増大させることができる。これにより、漏れ磁束を低減することができ、トルクおよび力率を増大させることができる。
【0017】
さらに、複数層の空隙11のうち最も幅が大きい空隙11において磁極中心線L0上に配置されるブリッジ16を持つことにより、回転子鉄心12の回転時に外周側ブリッジ15に作用する応力を的確に緩和することができ、所望の機械的強度を容易に確保することができる。
【0018】
以下、第1の変形例について説明する。
上述した実施形態においては、互いのブリッジ16が同一の直線上に配置される2つの空隙11が、他の1つの空隙11を間に挟んで配置されるとしたが、これに限定されない。互いのブリッジ16が同一の直線上に配置される2つの空隙11が、他の複数の空隙11を間に挟んで配置されてもよい。これに伴い、複数層の空隙11の全てにおいて互いのブリッジ16が異なる直線上に配置されてもよい。
上述した実施形態の第1の変形例の同期リラクタンス型回転電機10の回転子鉄心12は、
図2に示すように、上述した磁極中心線L0上の1つの第1ブリッジ16aの代わりに、2つの第2直線L2上に配置される2つの第1ブリッジ16aを備えている。第1の変形例の回転子鉄心12は、第1空隙11aに磁極中心線L0に対して第1角度θ1よりも大きい第2角度θ2で傾斜する2つの第2直線L2上に配置される2つの第1ブリッジ16aを備えている。この第1の変形例の2つの第1ブリッジ16aの各々は、上述した実施形態の1つの第1ブリッジ16aよりも細い形状を有している。
【0019】
第1の変形例によれば、互いに異なる直線上に配置されるブリッジ16を持つことにより、機械的強度を確保しつつ、ブリッジ16が配置される全ての直線上で複数のブリッジが配置されることを防ぐことができる。これにより、ブリッジ16が配置される全ての直線上で磁気抵抗が小さくなることを防止することができ、漏れ磁束を低減することができ、トルクおよび力率の低下を抑制することができる。さらに、磁極中心線L0に配置される1つのブリッジ16の代わりに、磁極中心線L0の両側に配置される複数のブリッジ16を持つことにより、ブリッジ16により形成される磁路を細くすることができる。これにより、磁気抵抗を増大させることができ、漏れ磁束を低減することができ、トルクおよび力率を増大させることができる。
【0020】
以下、第2の変形例について説明する。
上述した実施形態においては、複数の空隙11に同一数のブリッジ16を備えるとしたが、これに限定されない。複数層の空隙11の全てにおいて互いに異なる数のブリッジ16を備えてもよい。
上述した実施形態の第2の変形例の同期リラクタンス型回転電機10の回転子鉄心12は、
図3に示すように、上述した1つの第1ブリッジ16aの代わりに、磁極中心線L0および2つの第2直線L2上に配置される3つの第1ブリッジ16aを備えている。第2の変形例の回転子鉄心12は、第1空隙11aに磁極中心線L0上に配置される1つの第1ブリッジ16aと磁極中心線L0に対して第1角度θ1よりも大きい第2角度θ2で傾斜する2つの第2直線L2上に配置される2つの第1ブリッジ16aとを備えている。この第2の変形例の3つの第1ブリッジ16aの各々は、上述した第1の変形例の2つの第1ブリッジ16aよりも細い形状を有している。
【0021】
第2の変形例によれば、複数層の空隙11の全てにおいて互いに異なる数のブリッジ16を持つことにより、ブリッジ16により形成される磁路を複雑かつ細くすることができ、磁気抵抗を増大させることができる。これにより、漏れ磁束を低減することができ、トルクおよび力率を増大させることができる。
【0022】
以下、第3〜第5の
参考例について説明する。
上述した実施形態においては、各ブリッジ16は、回転子中心Oから径方向に伸びる所定の直線上に配置される形状を有しているとしたが、これに限定されない。各ブリッジ16は、他の直線上に配置される形状を有してもよい。
上述した実施形態の第3の
参考例の同期リラクタンス型回転電機10の回転子鉄心12は、
図4に示すように、上述した実施形態の2つの第1直線L1の代わりに、2つの第3直線L3を用いている。第3の変形例の回転子鉄心12は、第2空隙11bに磁極中心線L0から第1距離d1だけ離間して磁極中心線L0に平行な2つの第3直線L3上に配置される2つの第2ブリッジ16bを備えている。
【0023】
上述した実施形態の第4の
参考例の同期リラクタンス型回転電機10の回転子鉄心12は、
図5に示すように、上述した第1の変形例の各2つの第1直線L1および第2直線L2の代わりに、各2つの第3直線L3および第4直線L4を用いている。第4の
参考例の回転子鉄心12は、第2空隙11bに磁極中心線L0から第1距離d1だけ離間して磁極中心線L0に平行な2つの第3直線L3上に配置される2つの第2ブリッジ16bを備えている。さらに、第1空隙11aに磁極中心線L0から第1距離d1よりも大きい第2距離d2だけ離間して磁極中心線L0に平行な2つの第4直線L4上に配置される2つの第1ブリッジ16aを備えている。
【0024】
上述した実施形態の第5の
参考例の同期リラクタンス型回転電機10の回転子鉄心12は、
図6に示すように、上述した第2の変形例の各2つの第1直線L1および第2直線L2の代わりに、各2つの第3直線L3および第4直線L4を用いている。第5の
参考例の回転子鉄心12は、第2空隙11bに磁極中心線L0から第1距離d1だけ離間して磁極中心線L0に平行な2つの第3直線L3上に配置される2つの第2ブリッジ16bを備えている。さらに、第1空隙11aに磁極中心線L0上に配置される1つの第1ブリッジ16aと磁極中心線L0から第1距離d1よりも大きい第2距離d2だけ離間して磁極中心線L0に平行な2つの第4直線L4上に配置される2つの第1ブリッジ16aとを備えている。
【0025】
第3〜第5の
参考例によれば、回転子中心Oから径方向に伸びる直線の他の直線上に配置されるブリッジ16を持つことにより、回転子鉄心12の形状に対する設計自由度を向上させることができる。
【0026】
以下、第6の変形例について説明する。
上述した実施形態および第1〜第5の変形例においては、複数層の空隙11の少なくとも何れか1つにおいて磁極中心線L0上に配置されるブリッジ16を備えるとしたが、これに限定されない。複数層の空隙11の全てにおいて磁極中心線L0以外の直線上に配置されるブリッジ16を備えてもよい。
この第6の変形例によれば、複数層の空隙11の全てにおいて磁極中心線L0以外の直線上に配置されるブリッジ16を持つことにより、d軸方向の磁気抵抗が小さくなることを、より一層、防止することができる。これにより、d軸方向の漏れ磁束を、より一層、低減することができ、トルクおよび力率の低下を、より一層、抑制することができる。
【0027】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、帯状磁路14を介して隣り合う空隙11に互いに異なる直線上に配置されるブリッジ16を持つことにより、ブリッジ16が同一直線上で連続して配置されることを防ぐことができる。これにより、機械的強度を確保しつつ、同一直線上で磁気抵抗が小さくなることを防止し、漏れ磁束を低減することができ、トルクおよび力率の低下を抑制することができる。
さらに、複数層の空隙11のうち隣り合う空隙11に、互いに磁極中心線L0上に配置されないように、異なる直線上に配置されるブリッジ16を持つことにより、d軸方向の磁気抵抗が小さくなることを防止し、漏れ磁束を低減することができ、トルクおよび力率の低下を抑制することができる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。