特許第6366994号(P6366994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366994
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】組電池および接続部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/20 20060101AFI20180723BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20180723BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01M2/20 A
   H01M2/10 M
   H01M2/30 C
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-102864(P2014-102864)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-220092(P2015-220092A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 博史
(72)【発明者】
【氏名】小池 昇
(72)【発明者】
【氏名】志水 秀男
(72)【発明者】
【氏名】首藤 正志
(72)【発明者】
【氏名】和田 怜
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/154171(WO,A1)
【文献】 特開2014−179196(JP,A)
【文献】 特開2006−324348(JP,A)
【文献】 特開平11−250950(JP,A)
【文献】 特開2004−171856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10、2/20−2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の第一の支持部と前記第一の支持部の内側に位置した第二の支持部とを有し前記第一の支持部と前記第二の支持部との間に第一の開口部が設けられた電極端子を有した電セルの前記電極端子、を接続する接続部材であって、
記第一の開口部に入れられる接触部を有した導電部材と、
前記第一の開口部に入れられ、弾性力によって前記接触部を前記電極端子に押し付ける押付部材と、
を備え
前記第一の支持部と前記第二の支持部とによって、前記第一の支持部と前記第二の支持部との間に位置した前記接触部と前記押付部材とが支持される、接続部材
【請求項2】
前記接触部は、前記第一の支持部と接触し、
前記押付部材は、前記接触部と前記第二の支持部との間に介在した、請求項に記載の接続部材
【請求項3】
前記導電部材は、第一の接続部を有し、
前記接触部は、前記第一の接続部によって互いに接続され、前記第一の接続部から延び、前記第二の支持部回りに互いに間隔をあけて位置し前記電極端子と接触した複数の延部を有した、請求項またはに記載の接続部材
【請求項4】
前記延部は、電極端子に向けて突出し前記電極端子と接触した突起部を有した、請求項に記載の接続部材
【請求項5】
前記押付部材は、第二の接続部と、各前記延部ごとに設けられ、前記第二の接続部によって互いに接続され、前記第二の接続部から延び、前記第二の支持部回りに互いに間隔をあけて位置し前記延部を前記電極端子に押し付ける複数の弾性部を有した、請求項またはに記載の接続部材
【請求項6】
前記導電部材および前記押付部材のそれぞれに、前記第二の支持部を露出させた第二の開口部が設けられた、請求項のいずれか一項に記載の接続部材
【請求項7】
前記第一の開口部には、入口が設けられ、
前記第二の支持部の前記入口側の端部に、前記第一の支持部に向けて張り出した張出部が設けられた請求項のいずれか一項に記載の接続部材
【請求項8】
前記張出部は、前記入口から遠ざかるにつれて張り出し量が大きくなる、請求項に記載の接続部材
【請求項9】
前記張出部は、前記入口に近づくにつれて張り出し量が大きくなる、請求項に記載の接続部材
【請求項10】
前記導電部材と前記押付部材とは、互いに一体化されて一つの部品を構成した、請求項1〜のいずれか一項に記載の接続部材
【請求項11】
前記電極端子および前記導電部材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成された、請求項1〜10のいずれか一項に記載の接続部材
【請求項12】
前記導電部材は、銅または銅合金によって構成された、請求項1〜10のいずれか一項に記載の接続部材
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の接続部材により複数の前記電池セルの前記電極端子同士を接続する組電池
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、組電池および接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隣り合う電池セルの電極端子同士を導電部材で接続した組電池が知られている。導電部材は、溶接やねじ等によって電極端子に結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−87721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の組電池では、例えば、比較的容易に電極端子同士を接続することが可能な新規な構成が得られれば、有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の接続部材、電池セルの電極端子を接続する。前記電極端子は、環状の第一の支持部と前記第一の支持部の内側に位置した第二の支持部とを有し前記第一の支持部と前記第二の支持部との間に第一の開口部が設けられている。前記接続部材は、導電部材と、押付部材と、を備える。前記導電部材は、前記第一の開口部に入れられる接触部を有する。前記押付部材は、前記第一の開口部に入れられ、弾性力によって前記接触部を前記電極端子に押し付ける。前記第一の支持部と前記第二の支持部とによって、前記第一の支持部と前記第二の支持部との間に位置した前記接触部と前記押付部材とが支持される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態の組電池の平面図である。
図2図2は、第1の実施形態の電池セルと接続部材との斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態の電極端子と接続部材との断面図である。
図4図4は、第1の実施形態の電池セルの一部の分解斜視図である。
図5図5は、第1の実施形態の電極端子の一部の斜視図である。
図6図6は、第1の実施形態の電極端子の一部の断面図である。
図7図7は、第1の実施形態の接続部材の斜視図である。
図8図8は、第1の実施形態の接続部材の一部の底面図である。
図9図9は、第1の実施形態の導電部材の斜視図である。
図10図10は、第1の実施形態の導電部材の側面図である。
図11図11は、第1の実施形態の導電部材の底面図である。
図12図12は、第1の実施形態の押付部材の斜視図である。
図13図13は、第1の実施形態の押付部材の斜視図であって、図12とは異なる視線方向での斜視図である。
図14図14は、第1の実施形態の押付部材の断面図である。
図15図15は、第1の実施形態の組電池の製造工程の一部を示す図であって、電池セルの電極端子に接続部材が挿入される様子を示す図である。
図16図16は、第2の実施形態の導電部材の底面図である。
図17図17は、第3の実施形態の接続部材における導電部材の底面図である。
図18図18は、第4の実施形態の導電部材の一部の底面図である。
図19図19は、第5の実施形態の押付部材の斜視図である。
図20図20は、第6の実施形態の導電部材の斜視図である。
図21図21は、第6の実施形態の導電部材の斜視図であって、図20とは異なる視線方向での図である。
図22図22は、第6の実施形態の接続部材の一部の底面図である。
図23図23は、第7の実施形態の押付部材の斜視図である。
図24図24は、第8の実施形態の導電部材の斜視図である。
図25図25は、第8の実施形態の導電部材の斜視図であって、図24とは異なる視線方向での図である。
図26図26は、第8の実施形態の導電部材の底面図である。
図27図27は、第8の実施形態の組電池の製造工程の一部を示す図であって、電池セルの電極端子に接続部材が挿入される様子を示す図である。
図28図28は、第9の実施形態の電極端子の一部の斜視図である。
図29図29は、第9の実施形態の電極端子の一部の断面図である。
図30図30は、第10の実施形態の電極端子の一部の斜視図である。
図31図31は、第10の実施形態の電極端子の一部の断面図である。
図32図32は、第11の実施形態の電極端子の一部の斜視図である。
図33図33は、第11の実施形態の電極端子の一部の断面図である。
図34図34は、第12の実施形態の電池セルの斜視図である。
図35図35は、第12の実施形態の電池セルの一部の斜視図である。
図36図36は、第13の実施形態の電池セルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、以下の例示的な複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が省略される。
【0008】
<第1の実施形態>
図1に示すように、組電池1(電池モジュール、電池ユニット)は、複数の電池セル2(電池)と、筐体3と、複数の接続部材4と、を備える。複数の電池セル2は、一列に並んだ状態で筐体3に収容されている。複数の電池セル2は、接続部材4によって直列に接続されている。なお、複数の電池セル2は、並列や、並列および直列の組み合わせによって接続されていてもよい。組電池1は、種々の装置や、機械、設備等に設置され、それら種々の装置や、機械、設備の電源として使用されうる。例えば、組電池1は、自動車や鉄道車両、自転車(移動体)等の電源等、移動型の電源としても使用される他、例えば、POS(point of sales)システム用の電源等、定置型の電源としても使用される。また、種々の装置等には、本実施形態で示す組電池1を、直列あるいは並列に複数接続したセットとして搭載することができる。
【0009】
筐体3は、上方に開口した凹状の容器部(本体)3aを有する。容器部3aの内部は、複数の壁部3b(隔壁部)によって複数の収容室3cに区画されている。壁部3bは、容器部3aの第一の幅方向(図1の左右方向)に互いに間隔をあけて並べられている。よって、各収容室3cも容器部3aの第一の幅方向に互いに間隔をあけて並べられている。収容室3cは、上方に開口されている。各収容室3cに、電池セル2が収容されている。また、筐体3は、収容室3cの開口部を覆う蓋部(図示せず)を有することができる。筐体3は、例えば、合成樹脂材料や金属材料等で構成されうる。
【0010】
電池セル2は、一例として、リチウムイオン二次電池として構成されることができる。なお、電池セル2は、ニッケル水素電池や、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等、他の二次電池であってもよい。リチウムイオン二次電池は、非水電解質二次電池の一種であり、電解質中のリチウムイオンが電気伝導を担う。正極材料としては、例えば、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物等が用いられ、負極材料としては、例えば、チタン酸リチウム(LTO)等の酸化物系材料や、炭素質材料、シリコン系材料等が用いられる。また、電解質(一例としては電解液)としては、例えば、フッ素系錯塩(例えばLiBF4、LiPF6)等のリチウム塩が配合された、例えば、炭酸エチレンや炭酸プロピレン、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジメチル等の有機溶媒等が単独であるいは複数混合されて用いられる。
【0011】
図2に示すように、電池セル2は、一例として、筐体11と、筐体11から突出した一対の電極端子12と、弁13と、を有する。一対の電極端子12は、正極端子12Aと負極端子12Bとである。筐体11内には、一例として、電極体と電解液とが収容されている。電極体は、一例として、発電要素である正極シートおよび負極シートがセパレータを介してスパイラル状に巻かれて形成されうる。また、電極体は、一例として、正極シートおよび負極シートがセパレータを介して積層されて形成されうる。電極体の正極シートおよび負極シートに、正極端子12Aおよび負極端子12Bがそれぞれ接続されている。
【0012】
筐体11は、一例として、扁平な直方体形状に構成されている。筐体11は、例えば、金属材料や合成樹脂材料等で構成されうる。また、筐体11は、一例として、絶縁性材料で構成された場合、その内面(表面)に、例えば絶縁層が設けられる。また、筐体11の金属材料としては、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、ステンレス等を用いることができる。また、筐体11の合成樹脂材料としては、例えば、絶縁性を有した合成樹脂材料(例えば、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)や、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等)を用いることができる。また、筐体11の合成樹脂材料としては、熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、PEや、PP、PMP等のオレフィン樹脂、PETや、PBT、PEN等のポリエステル系樹脂、POM樹脂、PA6、PA66、PA12等のポリアミド系樹脂、PPS樹脂、LCP樹脂等の結晶性樹脂およびそれらのアロイ樹脂、あるいは、PSや、PC、PC/ABS、ABS、AS、変性PPE、PES、PEI、PSF等の非結晶性樹脂およびそれらのアロイ樹脂を、用いることができる。
【0013】
筐体11は、壁部11a〜11cを有する。壁部11a(天壁部、上壁部)および壁部11b(底壁部、下壁部)は、矩形板状に構成されている。壁部11aおよび壁部11bは、筐体11の高さ方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。壁部11cは、壁部11aの縁部と壁部11bの縁部とに渡って設けられ、矩形の筒状に構成されている。
【0014】
筐体11は、複数の部材(分割体、部品)が組み合わせられて構成されることができる。例えば、筐体11は、壁部11aを含む部材と、壁部11b,11cを含む部材とを有する部材とによって構成されてよい。これらの部材は、例えば溶接などによって気密および液密に結合されうる。
【0015】
壁部11aには、正極端子12A、負極端子12B、および弁13が設けられている。弁13は、筐体11の内圧が規定値以上に上昇した場合、破断して筐体11内を開放する。これにより、筐体11内のガスが弁13を介して筐体11の外部に放出されて、筐体11の内圧を下げることができる。
【0016】
一対の電極端子12は、互いに離間して設けられている。具体的には、正極端子12Aが、壁部11aの長手方向の一端部に設けられ、負極端子12Bが、壁部11bの他端部に設けられている。正極端子12Aと負極端子12Bとの間に、弁13が位置している。
【0017】
電極端子12は、壁部11aを貫通した状態で設けられている。電極端子12は、導電性の材料によって構成されている。電極端子12の導電性の材料は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等である。なお、電極端子12の表面にニッケルメッキ等の層を設けて、電極端子12の表面を硬化させてよい。電極端子12と壁部11aとの間には、シール部材14(ガスケット、介在物)が設けられている。シール部材14は、合成樹脂材料やガラスなどの絶縁体で構成されている。電極端子12と壁部11aとの間は、シール部材14によって、気密および液密にシール(封止)されるとともに、電気的に絶縁されている。
【0018】
図2〜4に示すように、電極端子12は、二つの部材12a,12bを有する。部材12aは、壁部11aを貫通している。部材12aのうち筐体11の内部に位置する部分が、電極体の正極シートまたは負極シートに接続されている。部材12aは、筐体11の外側に突出した突出部12cを有する。突出部12cの先端部には、面12dが設けられている。面12dは、一例として平坦状に構成されている。
【0019】
図3〜6に示すように、部材12bは、ベース部12e(基部)と、嵌部12fと、を有する。ベース部12eは、円板状に構成されている。ベース部12eは、面12dに重ねられた面12g(下面)と、面12gの反対側の面12h(上面)と、を有する。部材12bは、部材12aに、溶着(溶接)やかしめ、接着等によって接合されている。
【0020】
嵌部12fは、ベース部12eの面12hから突出している。嵌部12fの先端部には、面12i(上面、先端面)が設けられている。嵌部12fには、面12iからベース部12eに向かって凹んだ凹部12j(凹面部)が設けられている。凹部12jは、底面12k(面)と、周面12m(第一の支持部、面)と、を有する。周面12mは、底面12kの縁部と面12iの縁部との間に亘って設けられている。周面12mは、円筒面状(環状)に構成されている。
【0021】
底面12kには、突出部12n(第二の支持部)が設けられている。突出部12nは、底面12kの中央部から凹部12j(周面12m)の内側に向かって突出している。突出部12nは、周面12mの内側に位置し、周面12mに囲まれている。突出部12nは、概略円柱状に構成されている。突出部12nは、底面12kから延出した周面12pと、突出部12nの先端部に設けられた面12qと、を有する。周面12pは、円筒面状(環状)に構成され、面12qは、円形かつ平坦状に構成されている。本実施形態では、底面12kに対する面12qの高さ位置は、底面12kに対する面12iの高さ位置よりも低くなっている。また、突出部12nには、張出部12rが設けられている。張出部12rは、突出部12nにおいて後述する開口部12sの入口12t側の端部(周面12pの先端部)に設けられている。張出部12rは、周面12mに向けて張り出している。張出部12rは、入口12tから遠ざかるにつれて張り出し量が大きくなっている。
【0022】
嵌部12fには、開口部12s(第一の開口部)が設けられている。開口部12sは、凹部12jと突出部12nとによって形成されている(囲まれている、規定されている)。つまり、開口部12sは、凹部12jの内部空間によって構成され、周面12mと突出部12nとの間の空間を含む。開口部12sは、嵌部12fの外側に向けて開口している。開口部12sの入口12tは、周面12mの面12i側の縁部によって形成されている(囲まれている、規定されている)。
【0023】
図7,8に示すように、接続部材4は、導電部材15(バスバー)と、押付部材16と、を有する。導電部材15と押付部材16とは、電極端子12に入れられる前に、溶着(溶接)やかしめ、接着などによって互いに一体化されて、一つの部品(接続部材4)を構成している。
【0024】
図9〜11に示すように、導電部材15は、板部15a(基部)と、板部15a(基部)から突出した二つの接触部15bと、を有する。導電部材15は、導電性の材料によって構成されている。導電部材15の材料は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、銅、銅合金等である。なお、導電部材15の表面にニッケルメッキや錫メッキ等の層を設けてよい。導電部材15は、複数の異なる電池セル2の、電極端子12と電極端子12とを電気的に接続する。二つの接触部15bは、互いに異なる電池セル2の、開口部12sと開口部12sとに入れられる。複数の電池セル2が直列に接続される場合、一方の接触部15bが正極端子12Aの開口部12sに入れられ、他方の接触部15bが負極端子12Bの開口部12sに入れられる。
【0025】
板部15aは、二つの壁部15cや、二つの壁部15d、一つの壁部15e、二箇所の曲部15f、二箇所の曲部15g等を有する。具体的に、板部15aは、一枚の板状(帯状、短冊状)の部材が、四箇所(二箇所の曲部15fおよび二箇所の曲部15g)で屈曲されてハット型(クランク状)に構成されている。壁部15c,15d,15eは、それぞれ四角形状の板状(帯状)に構成されている。二つの壁部15c(第一の接続部、横壁部、底壁部)は、それぞれ、嵌部12fの面12iに面している。壁部15cには、開口部15h(第二の開口部)が設けられている。開口部15hは、一例として貫通孔である。開口部15hは、突出部12nの面12qを露出させる。壁部15d(立壁部、側壁部)は、それぞれ壁部15cに曲部15fを介して接続されている。壁部15dは、面12iと交差する方向(直交する方向)に延びている(起立している)。壁部15eは、二つの壁部15cと離れた位置で、二つの壁部15d間に亘って設けられている。壁部15eは、二箇所の曲部15gを介して、二つの壁部15dに接続されている。壁部15eは、壁部15cと略平行に設けられている。板部15aのうち二つの壁部15cの間に介在した壁部15d,15eおよび曲部15f,15gは、変形可能(弾性変形可能)な介在部15iを構成している。このような構成の板部15aに、二つの壁部15c同士が離間する方向の外力や、二つの壁部15c同士が近接する方向の外力が作用すると、介在部15iが変形(弾性変形)する。介在部15iの変形によって、二つの壁部15c間の間隔が調整される。
【0026】
接触部15bは、複数の延部15jを有する。本実施形態では、延部15jは、一例として、六つ設けられている。複数の延部15jは、壁部15dによって互いに接続されている。延部15jは、壁部15cにおける開口部15hの縁部から延びて、電極端子12の開口部12s(凹部12j)に入れられている。複数の延部15jは、突出部12n(周面12p)回りに互いに間隔をあけて位置している。別の言い方をすると、複数の延部15jは、接触部15bの中心線に沿って延び、当該中心線回りに互いに間隔をあけて位置している。隣り合う二つの延部15j間には、スリット15k(開口部)が設けられている。スリット15kは、延部15jの延び方向(接触部15bの中心線)に沿って設けられている。複数の延部15jは、スリット15kが設けられた円筒を構成するように設けられている。
【0027】
延部15jは、凹部12jの周面12mに沿った湾曲板状に構成されて、周面12mと接触している。詳細には、延部15jは、周面12mに面した面15mと、面15mの反対側の面15nと、を有する。面15mには、一例として、一つの突起部15pが設けられている。突起部15pは、電極端子12に向けて突出している。突起部15pは、延部15jの延び方向(接触部15bの中心線)に沿って延びている。突起部15pの延び方向と交差する断面は、台形状や三角状、半円状、矩形状等である。本実施形態では、一例として、接触部15bにおいては、突起部15pだけが周面12mと接触している。
【0028】
図3,12〜14に示すように、押付部材16は、一つの接続部16a(第二の接続部)と、接続部16aから延びた複数の弾性部16bと、を有する。押付部材16は、弾性部16bが接触部15bとともに開口部12sに入れられ、弾性力によって接触部15bを電極端子12に押し付ける。
【0029】
接続部16aは、壁部15cの嵌部12fとは反対側で、壁部15cに重ねられている。接続部16aは、板状に構成されている。接続部16aには、開口部16c(第二の開口部)が設けられている。開口部16cは、一例として貫通孔である。開口部16cは、導電部材15の開口部15hと重ねられて、突出部12nの面12qを露出させている。接続部16aは、一つの壁部16dと、複数の壁部16eと、を有する。壁部16dは、平面視で多角形の平板状に構成されている。壁部16dの中心部に、開口部16cが設けられている。壁部16eは、壁部16dの壁部15c側で、壁部16dに重ねられている。壁部16eは、押付部材16の中心線回りに互いに間隔をあけて位置している。壁部16eは、平板状に構成され、壁部16dの外周縁部から壁部16dの内周縁部に向けて延びている。
【0030】
複数の弾性部16bは、各延部15jごとに設けられ、接続部16aによって互いに接続されている。弾性部16bは、壁部16eの開口部16c側の端部から壁部16dとは反対側に延びて、電極端子12の開口部12s(凹部12j)に入れられている。複数の弾性部16bは、突出部12n(周面12p)回りに互いに間隔をあけて位置している。別の言い方をすると、複数の弾性部16bは、押付部材16の中心線に沿って延び、当該中心線回りに互いに間隔をあけて位置している。弾性部16bは、平板部16fと、湾曲部16gと、を有する。平板部16fは、壁部16eから延びている。湾曲部16gは、平板部16fにおける壁部16eとは反対側の端部から延びている。湾曲部16gは、略C字状に構成されている。湾曲部16gは、延部15jの面15nと、突出部12nの周面12pとに接触している。湾曲部16gは、弾性変形した状態で、面15nと周面12pとの間に介在している。弾性部16bは、少なくとも湾曲部16gの弾性力によって、延部15jを周面12mに押し付けている。弾性部16bは、一例として、延部15jに食い込む。押付部材16は、単一の板部材の折り曲げによって構成することができる。また、弾性部16bは、渦巻き状に構成されうる。
【0031】
上記構成の接続部材4では、図3に示すように、導電部材15の接触部15bと押付部材16の弾性部16bとが、電極端子12の開口部12sに入れられている。接触部15bと弾性部16bとは、凹部12jの周面12mと突出部12nの周面12pとの間に介在している。このとき、接触部15bの内側に弾性部16bが位置している。接触部15bの突起部15pは、周面12mに接触し、弾性部16bは、接触部15bの面15nと突出部12nの周面12mとの間に介在している。弾性部16bは、弾性力によって、接触部15bを周面12mに押し付けており、この弾性力を受けた周面12mと周面12pとが、これら周面12mと周面12pとの間に位置した接触部15bと弾性部16bとを支持(挟持)している。このようにして、接触部15bと弾性部16bとが、周面12mと周面12pとの間に嵌った状態が維持され、接触部15bと電極端子12との電気的な接続が維持される。また、嵌部12fの面12iは、開口部15h,16cによって露出されている。
【0032】
組電池1の製造の際、二つの電池セル2の接続工程では、一つの接続部材4の一方の接触部15bおよび弾性部16bが、一方の電池セル2の電極端子12の開口部12sに入れられるとともに、当該接続部材4の他方の接触部15bおよび弾性部16bが、他方の電池セル2の電極端子12の開口部12sに入れられる。ここで、開口部12sに入れられる前の接触部15bにおける突起部15pの部分での径は、凹部12jの周面12mの径よりも少しだけ大きい。これにより、図15に示すように、突起部15pは、周面12mにおける入口12t側の縁部によって押し潰されながら周面12m上を摺動し、周面12mに密着する。本実施形態では、張出部12rは、入口12tから遠ざかるにつれて張り出し量が大きくなっている。よって、弾性部16bは、張出部12r上を摺動しながら開口部12sの奥に進むにつれて、湾曲部16gの径が小さくなり、張出部12rを通過すると、湾曲部16gの径が弾性変形前の径に近づく。そして、接続部材4が電極端子12に装着された状態では、開口部16cからの抜け方向(図3の上方)への力が接続部材4に作用した場合、張出部12rは、当該張出部12rに接触した湾曲部16gを支持して、接続部材4の移動を規制する。すなわち、張出部12rは、電極端子12からの接続部材4の抜け止め部として機能する。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、電極端子12に開口部12s(第一の開口部)が設けられ、導電部材15は、互いに異なる電池セル2の、開口部12sに入れられた二つの接触部15bを有し、押付部材16は、開口部12sに入れられ、弾性力によって接触部15bを電極端子12に押し付けている。よって、開口部12sに接触部15bおよび押付部材16を入れることにより、電極端子12同士を接続することができる。ここで、導電部材を電極端子に溶接する場合、溶接設備を用意する必要があり、導電部材を電極端子にねじによって結合する場合、適切なねじの締め付けトルクを発生させるためには、ねじのトルク管理を行う必要がある。これに対して、本実施形態の組電池1では、上述のとおり、開口部12sに接触部15bおよび押付部材16を入れることにより、電極端子12同士を接続することができるので、比較的容易に電極端子12同士を接続することができる。
【0034】
また、本実施形態では、電極端子12は、環状の周面12m(第一の支持部)と、周面12mの内側に位置した突出部12n(第二の支持部)とを、有する。開口部12sは、周面12mと突出部12nとの間に設けられている。そして、周面12mと突出部12nとが、周面12mと突出部12nとの間に位置した接触部15bと押付部材16とを支持している。よって、比較的簡素な構成によって、接触部15bと押付部材16とを支持することができる。
【0035】
また、本実施形態では、接触部15bは、周面12mと接触し、押付部材16は、接触部15bと突出部12nとの間に介在している。よって、押付部材16によって接触部15bを周面12mに押し付けることができる。
【0036】
また、本実施形態では、導電部材15は、壁部15c(第一の接続部)を有する。接触部15bは、壁部15cによって互いに接続され、壁部15cから延び、突出部12n回りに互いに間隔をあけて位置し電極端子12と接触した複数の延部15jを有する。よって、複数の延部15jと電極端子12とが接触しているので、導電部材15と電極端子12との結合(嵌め合い)を比較的強固にし易い。
【0037】
また、本実施形態では、延部15jは、電極端子12に向けて突出し電極端子12と接触した突起部15pを有する。よって、延部15jにおいて、突起部15p以外の部分を電極端子12から離間させることにより、電極端子12と接触部15bとの接触面積を小さくして、電極端子12への接触部15bの挿入の際の摺動抵抗を小さくすることができる。
【0038】
また、本実施形態では、押付部材16は、接続部16a(第二の接続部)と、各延部15jごとに設けられ、接続部16aによって互いに接続され、接続部16aから延び、突出部12n回りに互いに間隔をあけて位置し延部15jを電極端子12に押し付ける複数の弾性部16bと、を有する。よって、各延部15jを弾性部16bによって電極端子12に良好に押し付けることができる。
【0039】
また、本実施形態では、導電部材15および押付部材16のそれぞれに、突出部12nの面12q(検査面)を露出させた開口部15h,16c(第二の開口部)が設けられている。よって、導電部材15によって互いに接続された電極端子12同士の導通検査(電気的接続の検査)用の検査器具を、開口部15h,16cを介して、突出部12nの面12qに接触させることができる。よって、電極端子12同士の導通検査を比較的容易に行うことができる。
【0040】
また、本実施形態では、突出部12nにおける開口部12sの入口12t側の端部に、周面12mに向けて張り出した張出部12rが設けられている。よって、張出部12rによって、接続部材4の抜け止めを行うことができる。
【0041】
また、本実施形態では、張出部12rは、入口12tから遠ざかるにつれて張り出し量が大きくなる。よって、弾性部16bを張出部12rに摺動させながら開口部12sの奥に押し込みやすい。
【0042】
また、本実施形態では、導電部材15と押付部材16とは、互いに一体化されて一つの部品(接続部材4)を構成している。よって、導電部材15と押付部材16とを開口部12sに入れる作業がしやすい。
【0043】
また、本実施形態では、電極端子12および導電部材15は、一例として、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成されていてよい。この場合、電極端子12および導電部材15を低コスト化しやすい。このとき、電極端子12よりも導電部材15が柔らかい方が、電極端子12へ導電部材15を入れやすい(突起部15pが潰れやすい)。例えば、電極端子12の材料に、A2000系(2000番台)〜A7000系(7000番台)のアルミニウムを用い、導電部材15の材料に、A1000系(1000番台)のアルミニウムを用いることができる。また、本実施形態では、電極端子12が、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成され、導電部材15が、銅または銅合金によって構成されていてもよい。この場合、銅や銅合金は、アルミニウムやアルミニウム合金に比べて電気伝導率がよい(電気抵抗が低い)ので、低発熱である。よって、導電部材15の冷却性を向上させやすい。これにより、組電池1自体の発熱を抑えることができるので、組電池1の冷却性の向上につながる。
【0044】
また、本実施形態では、電極端子12の表面にニッケルメッキ等の層が設けられうる。この場合、電極端子12の表面の硬さが向上するので、電極端子12への接続部材4の挿脱を繰り返しても、電極端子12が変形しにくい。
【0045】
<他の実施形態>
以下に説明する第2〜第13の実施形態の組電池は、上記第1の実施形態の組電池1と同様の構成を備えている。よって、第2〜第13の実施形態によっても、上記第1の実施形態と同様の構成に基づく同様の結果(効果)が得られる。ただし、第2〜第13の実施形態は、以下に説明する部分が第1の実施形態と主に異なる。
【0046】
図16に示すように、第2の実施形態では、導電部材15の延部15jが、四つ設けられている。
【0047】
図17に示すように、第3の実施形態では、導電部材15の延部15jが、八つ設けられている。
【0048】
図18に示すように、第4の実施形態では、導電部材15の延部15jに、複数(一例として二つ)の突起部15pが互いに略平行に設けられている。このように、一つの延部15jに複数の突起部15pが設けられていることにより、延部15jと電極端子12との接触抵抗が低減されやすい。
【0049】
図19に示すように、第5の実施形態では、押付部材16の壁部16dが、略円板状に構成されている。
【0050】
図20〜22に示すように、第6の実施形態では、導電部材15の延部15jが、略平板状に構成されており、延部15jの面15nと押付部材16の弾性部16bとの接触部が概略線状(帯状)となっている。この構成では、弾性部16bが、延部15jに食い込むことが抑制される。
【0051】
図23に示すように、第7の実施形態では、押付部材16の湾曲部16gにおいて、湾曲部16gの平板部16fに対する延び方向と交差する方向の断面が、湾曲状(円弧状)に構成され、湾曲部16gが、延部15jの面15n(図8)に沿う。湾曲部16gにおいて、延部15jの面15nと接触する部分は、球面に沿うように構成されている。この構成では、弾性部16bが、延部15jに食い込むことが抑制される。
【0052】
図24〜27に示すように、第8の実施形態では、導電部材15に、二つの筒部15rが設けられている。筒部15rは、接触部15bごとに設けられている。筒部15rは、壁部15cから接触部15bと同じ方向に延びて、接触部15bを囲んでいる。筒部15rは、電極端子12の嵌部12fの外周面12u(面)に接触する。接触部15bが開口部12sに入れられる際、筒部15rが嵌部12fの外周面12uを摺動することにより、接触部15bが凹部12jに対して斜めに進入することを抑制することができる。また、電極端子12への組み付け前の導電部材15において、筒部15rが接触部15bを囲んで保護しているので、接触部15bが外部部材と接触することを抑制することができる。
【0053】
図28,29に示すように、第9の実施形態では、電極端子12の張出部12rが、開口部12sの入口12tに近づくにつれて張り出し量が大きくなっている。よって、面12qの面積を大きくしやすい。
【0054】
図30,31に示すように、第10の実施形態では、電極端子12において、嵌部12fの面12iと、突出部12nの面12qとが、同一平面上に位置する。
【0055】
図32,33に示すように、第11の実施形態では、電極端子12において、嵌部12fの面12iと、突出部12nの面12qとが、同一平面上に位置するとともに、張出部12rが、開口部12sの入口12tに近づくにつれて張り出し量が大きくなっている。
【0056】
図34,35に示すように、第12の実施形態では、電極端子12において、部材12aに、嵌部12f(凹部12j、突出部12n、開口部12s)が設けられている。本実施形態では、電極端子12に、部材12bは設けられていない。よって、本実形態では、部材12bが設けられた構成で生じる電気抵抗(部材12bでの電気抵抗や、部材12aと部材12bとの間の溶接部分での電気抵抗)が生じないので、電気抵抗を低減しやすい。
【0057】
図36に示すように、第13の実施形態では、電極端子12の部材12bにベース部12eが設けられていない。本実施形態の部材12bは、嵌部12fによって構成されている。嵌部12fは、筐体11の外側に向けて突出している。
【0058】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、各構成要素のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。例えば、導電部材15の延部15jの数や押付部材16の弾性部16bの数は、上述の実施形態で説明した数以外であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…組電池、2…電池セル(電池)、4…接続部材、12…電極端子、12A…正極端子、12B…負極端子、12m…周面(第一の支持部)、12n…突出部(第二の支持部)、12q…面、12r…張出部、12s…開口部(第一の開口部)、12t…入口、15…導電部材、15b…接触部、15c…壁部(第一の接続部)、15h…開口部(第二の開口部)、15j…延部、15p…突起部、16…押付部材、16a…接続部、16b…弾性部、16c…開口部(第二の開口部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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