(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366995
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】開閉体装置及び開閉体制御方法
(51)【国際特許分類】
E06B 9/84 20060101AFI20180723BHJP
E06B 9/68 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
E06B9/84 C
E06B9/68 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-103154(P2014-103154)
(22)【出願日】2014年5月19日
(65)【公開番号】特開2015-218493(P2015-218493A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114166
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】高井 邦治
(72)【発明者】
【氏名】大館 一樹
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−081560(JP,A)
【文献】
特開2000−265763(JP,A)
【文献】
米国特許第06014307(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉体の開放及び閉鎖の少なくとも一方の操作信号を出力する操作手段と、
前記開閉体の閉鎖側先端部に設けられ、障害物検知時に検知信号を電波無線方式にて送信する障害物検知手段と、
電波無線方式にて受信した信号の中から前記検知信号を抽出し、抽出した前記検知信号に基づいて前記開閉体の開閉動作を制御すると共に前記検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を前記電波無線方式にて受信している状態のときは、前記開閉体の閉鎖時の動作を通常の閉動作とは異なる態様で、及び/又は開放時の動作を通常の開動作とは異なる態様で動作させる開閉体制御手段とを備え、
前記開閉体制御手段は、前記検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を受信している状態であって、前記開閉体が停止中の場合は、前記操作手段から閉操作信号を受信している間だけ前記開閉体を閉動作させると共に防災信号が入力しても直ちに前記開閉体を自重閉鎖させずに所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すことによって自重閉鎖動作を行い、前記開閉体が閉動作中の場合は、前記開閉体の閉動作を一旦停止し、停止時から所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すことによって閉動作を行うことを特徴とする開閉体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉体装置において、
前記開閉体制御手段は、前記電波無線方式にて受信した信号の中から前記検知信号を抽出する検知信号電波受信部と、前記検知信号電波受信手段が前記検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を受信しているか否かを監視する電波監視制御部と、前記検知信号電波受信手段によって抽出された前記検知信号に基づいて前記開閉体の開閉動作を制御すると共に前記電波監視制御手段が前記検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を受信している状態であって、前記開閉体が停止中の場合は、前記操作手段から閉操作信号を受信している間だけ前記開閉体を閉動作させると共に防災信号が入力しても直ちに前記開閉体を自重閉鎖させずに所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すことによって自重閉鎖動作を行い、前記開閉体が閉動作中の場合は、前記開閉体の閉動作を一旦停止し、停止時から所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すことによって閉動作を行う制御部とを備えたことを特徴とする開閉体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の開閉体装置において、前記所定時間経過前に前記妨害電波信号を受信しなくなった場合は、通常の閉動作を再開することを特徴とする開閉体装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の開閉体装置において、前記開閉体制御手段は、前記妨害電波信号を受信した日時に関する情報を記憶することを特徴とする開閉体装置。
【請求項5】
開閉体の閉鎖側先端部に設けられた障害物検知手段から電波無線方式にて送信される検知信号を無線方式にて受信した信号の中から抽出し、抽出した前記検知信号と操作手段から出力される前記開閉体の開放及び閉鎖の少なくとも一方の操作信号とに基づいて前記開閉体の開閉停の動作を制御すると共に前記検知信号と同じ周波数帯の異なる妨害電波信号を前記電波無線方式にて受信している状態のときは、前記開閉体の閉鎖時の動作を通常の閉動作とは異なる態様で、及び/又は開放時の動作を通常の開動作とは異なる態様で動作させる開閉体制御方法であって、
前記検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を受信している状態であって、前記開閉体が停止中の場合は、前記操作手段から閉操作信号を受信している間だけ前記開閉体を閉動作させると共に防災信号が入力しても直ちに前記開閉体を自重閉鎖させずに所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すことによって自重閉鎖動作を行い、前記開閉体が閉動作中の場合は、前記開閉体の閉動作を一旦停止し、停止時から所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すことによって閉動作を行うことを特徴とする開閉体制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の開閉体制御方法において、前記所定時間経過前に前記妨害電波信号を受信しなくなった場合は、通常の閉動作を再開することを特徴とする開閉体制御方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の開閉体制御方法において、前記妨害電波信号を受信した日時に関する情報を記憶することを特徴とする開閉体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋、ビル、工場、倉庫などの建物を含む構造物躯体の窓や出入口などの開口部に設置される開閉体装置を制御する開閉体制御方法及び装置に係り、特に障害物検知装置の検知信号を無線にて送信する開閉体制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル、工場、倉庫などの建物を含む構造物躯体の開口部に設置されシャッターカーテンやドアなどの開閉体装置には、その開閉動作を電動で行う電動シャッターや電動ドアが使用されることが多い。このように電動で開閉動作を行うものは、その動作を遠隔操作によって制御するための無線方式の無線リモコン送信装置を備えるものがある。無線方式は、電波、赤外線、超音波、あるいは、フラッシュ等のいずれかを搬送媒体として、操作信号を送受信して、制御装置に信号を送り、電動シャッターの開閉機を作動させている。シャッターカーテンを電動で作動させるものにおいては、巻き降ろしの際に、障害物があると、それと接触し、シャッターカーテンが破損する場合もある。障害物が人等の場合は、事故となる可能性もある。障害物の対策として、座板部に障害物検知器を設け、障害物を検知した場合に、シャッターカーテンの降下を停止させるなど一定の回避動作を行うようにしたものもある。座板部に設けられた障害物検知器からの検知信号を制御装置に送る方法として、赤外線等の無線信号を用いることが行なわれている。
【0003】
障害物検知器からの検知信号を無線方式にて制御装置に送信するものとしては、特許文献1,2,3に示すものが知られている。
特許文献1に記載のものは、シャッター開閉操作と障害物検知動作をいずれも無線通信で行うようにしたものである。
特許文献2に記載ものは、障害物の検知の送受に無線電波を用いこれを安定して行えるようにしたものである。
特許文献3に記載のものは、操作用の信号を搬送する搬送媒体と、障害物検知信号を搬送する搬送媒体とを、同じ種類の搬送媒体を用い、共通の受信機で受信するようにしたものである。
【特許文献1】特開平09−135482号公報
【特許文献2】特開平09−317358号公報
【特許文献3】特開平10−061354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものは、障害物検知信号を搬送する搬送媒体として、所定波長の光を用いているので、違法無線やアーク溶接などの強力な電磁波による影響を受け難く好ましいが、日光等の外乱光の影響を受けやすい。
一方、特許文献2に記載のものは、障害物検知信号の送信周波数をこの検知信号の送信中に所定の周波数範囲で変化させることによって、検知信号の受信を安定して行えるようにしている。また、特許文献3に記載のものは、障害物検知信号と操作信号を同じ受信装置で受信している。しかしながら、これらは、違法無線やアーク溶接などの強力な電磁波による影響を受け易い。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、障害物検知信号の送受信を電磁波の無線方式にて安定的に行うことのできる開閉体装置及び開閉体制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る開閉体装置の第1の特徴は、開閉体の開放及び閉鎖の少なくとも一方の操作信号を出力する操作手段と、前記開閉体の閉鎖側先端部に設けられ、障害物検知時に検知信号を電波無線方式にて送信する障害物検知手段と、電波無線方式にて受信した信号の中から前記検知信号を抽出し、抽出した前記検知信号に基づいて前記開閉体の開閉動作を制御すると共に前記検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を前記電波無線方式にて受信している状態のときは、前記開閉体の閉鎖時の動作を通常の閉動作とは異なる態様で、及び/又は開放時の動作を通常の開動作とは異なる態様で動作させる開閉体制御手段とを備えたことにある。
【0007】
開閉体は、ビル、住宅、工場、倉庫等の建物などの構造物における、出入口や窓部、あるいは内部の通路や空間などの開口部などを電動で開閉移動するシャッターカーテンなどの開閉部材で構成される。開閉体がシャッターカーテンの場合には、建物などの開口部の周縁部の一つである上部に収納され、まぐさなどを通過してシャッターカーテンが下降し、開口部を電動で開閉動作する。これ以外にも開閉体が開口部の側部に収納され電動横引き方式で開閉移動し、開口部の下部に収納され電動上昇方式で開閉移動する。また、開閉体には、閉鎖によって開口部を全閉できるものも全閉できないものも含む。
【0008】
障害物検知手段は、この開閉体の閉鎖側先端部に設けられ、開閉体と共に移動するものであり、例えば、閉動作中の移動経路上に障害物が存在することを検出する。障害物検知手段は、検知信号を電波無線方式にて開閉体の収納ボックス等に設けられた開閉体制御手段に送信する。障害物検知手段からの検知信号を受信した開閉体制御手段は、検知信号に応じて障害物回避動作等を行なう。ところが、検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を電波無線方式にて受信している状態のときは、開閉体制御手段は障害物検知手段からの検知信号を受信することが難しいので、このような状態で開閉体を通常と同じように閉鎖させるのは好ましくない。
【0009】
この発明では、妨害電波信号を受信している状態のときは、開閉体の閉鎖時の動作を通常の閉動作とは異なる態様で、及び/又は開放時の動作を通常の開動作とは異なる態様で閉動作させるようにした。通常は、開閉体が停止中に操作手段から閉操作信号を受信した場合、それに応じて閉動作を開始し開口部を閉鎖するまでこの閉動作を継続するが、この発明では、妨害電波信号を受信している状態の異なる態様の閉動作として、操作手段から閉操作信号を受信している間だけ、すなわち操作者が開口部近傍で閉操作子を押し切り操作している間だけ、開閉体を閉動作させる。
【0010】
また、開閉体が停止中に、防災信号が入力すると、通常は、直ちに開閉体を自重閉鎖させるが、この発明では、妨害電波信号を受信している状態の異なる態様の閉動作として、所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すか、又は所定時間経過後に閉動作と停動作と回避動作(上昇動作)とを繰り返すことによって、自重閉鎖動作を行う。さらに、開閉体が閉動作中の場合、この発明では、妨害電波信号を受信している状態の異なる態様の閉動作として、開閉体の閉動作を一旦停止し、停止時から所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すか、又は所定時間経過後に閉動作と停動作と回避動作(上昇動作)とを繰り返すことによって自重閉鎖動作を行う。なお、上述した異なる態様の閉動作は一例であり、これ以外の通常の閉動作とは異なる、より安全性の高い閉動作を実行してもよい。
【0011】
本発明に係る開閉体装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体装置において、前記開閉体制御手段が、前記電波無線方式にて受信した信号の中から前記検知信号を抽出する検知信号電波受信部と、前記検知信号電波受信手段が前記検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を受信しているか否かを監視する電波監視制御部と、前記検知信号電波受信手段によって抽出された前記検知信号に基づいて前記開閉体の開閉動作を制御すると共に前記電波監視制御手段が前記検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を受信している状態のときは、前記開閉体の閉鎖時の動作を通常閉動作とは異なる態様で動作させる制御部とを備えたことにある。これは、開閉体制御手段が検知信号電波受信部、電波監視制御部及び制御部で構成される点を明確にしたものである。なお、電波監視制御部を省略して、制御部が妨害電波信号を受信しているか否かを監視するようにしてもよい。
【0012】
本発明に係る開閉体装置の第3の特徴は、前記第1又は第2の特徴に記載の開閉体装置において、前記開閉体制御手段は、前記検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を受信している状態であって、前記開閉体が停止中の場合は、前記操作手段から閉操作信号を受信している間だけ前記開閉体を閉動作させると共に防災信号が入力しても直ちに前記開閉体を自重閉鎖させずに所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すことによって自重閉鎖動作を行い、前記開閉体が閉動作中の場合は、前記開閉体の閉動作を一旦停止し、停止時から所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すことによって閉動作を行うことにある。これは、通常の閉動作とは異なる態様の閉動作を具体的にしたものである。開閉体停止中は、閉操作信号を受信している間だけ閉動作し、防災信号が入力した場合は、所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返して自重閉鎖動作を行い、閉動作中の場合は、閉動作を一旦停止し、停止時から所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返して閉動作する。これによって、より安全性の高い閉動作を実現することができる。
【0013】
本発明に係る開閉体装置の第4の特徴は、前記第1、第2又は第3の特徴に記載の開閉体装置において、前記所定時間経過前に前記妨害電波信号を受信しなくなった場合は、通常の閉動作を再開することにある。これは、妨害電波信号を受信しなくなった場合に、直ちに通常の閉動作に復帰させることによって、防災信号入力時などの緊急性に高い場合の閉動作に対応できるようにしたものである。
【0014】
本発明に係る開閉体装置の第5の特徴は、前記第1、第2、第3又は第4の特徴に記載の開閉体装置において、前記開閉体制御手段は、前記妨害電波信号を受信した日時に関する情報を記憶することにある。これは、妨害電波信号を受信した日時に関する情報を記憶しておき、記憶した情報を無線を介して出力、PCと接続して出力、又は外部メモリ等へ出力し、妨害電波信号の発生時間等の情報に基づいて、どこからどの機器から妨害電波が発生しているのかを追跡する際に役立てることができる。例えば、特定の時間に妨害電波信号が発生している場合には、その時間に可動する機器等から妨害電波信号が発生していることが容易に分かるので、その機器等を特定し易くなるという効果がある。
【0015】
本発明に係る開閉体制御方法の第1の特徴は、開閉体の閉鎖側先端部に設けられた障害物検知手段から電波無線方式にて送信される検知信号を無線方式にて受信した信号の中から抽出し、抽出した前記検知信号と操作手段から出力される前記開閉体の開放及び閉鎖の少なくとも一方の操作信号とに基づいて前記開閉体の開閉停の動作を制御すると共に前記検知信号と同じ周波数帯の異なる妨害電波信号を前記電波無線方式にて受信している状態のときは、前記開閉体の閉鎖時の動作を通常の閉動作とは異なる態様で、及び/又は開放時の動作を通常の開動作とは異なる態様で動作させることにある。これは、前記開閉体装置の第1の特徴に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0016】
本発明に係る開閉体制御方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記検知信号と同じ周波数帯の妨害電波信号を受信している状態であって、前記開閉体が停止中の場合は、前記操作手段から閉操作信号を受信している間だけ前記開閉体を閉動作させると共に防災信号が入力しても直ちに前記開閉体を自重閉鎖させずに所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すことによって自重閉鎖動作を行い、前記開閉体が閉動作中の場合は、前記開閉体の閉動作を一旦停止し、停止時から所定時間経過後に閉動作と停動作とを交互に繰り返すことによって閉動作を行うことにある。これは、前記開閉体装置の第3の特徴に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0017】
本発明に係る開閉体制御方法の第3の特徴は、前記第1又は第2の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記所定時間経過前に前記妨害電波信号を受信しなくなった場合は、通常の閉動作を再開することにある。これは、前記開閉体装置の第4の特徴に対応した開閉体制御方法の発明である。
【0018】
本発明に係る開閉体制御方法の第4の特徴は、前記第1、第2又は第3の特徴に記載の開閉体制御方法において、前記妨害電波信号を受信した日時に関する情報を記憶することにある。これは、前記開閉体装置の第5の特徴に対応した開閉体制御方法の発明である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の開閉体装置によれば、障害物検知信号の送受信を電磁波の無線方式にて安定的に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るシャッター装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の電波監視制御部及び開閉体制御装置が実行する電波監視処理の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下添付図面に従って本発明に係る開閉体装置の好ましい実施の形態について説明する。この実施の形態では開閉体として上下に開閉(昇降)制御されるシャッター装置を例に説明する。開閉体の閉鎖方向は、通常の下降で閉鎖のみではなく、上昇で閉鎖であってもよい。本実施の形態では、上方からの下降が閉鎖方向である場合を例に説明する。
図1は、本発明に係るシャッター装置の概略構成を示す図である。このシャッター装置は、建物の開口部に設けられるものであり、基本的にシャッターケース11、シャッターカーテン12、ガイドレール13,14、モータ15、シャッター駆動回路16、開閉体制御装置17、操作信号受信機18、検知信号受信機20、電波監視制御部22、リモコン操作スイッチ30、障害物検知器40などから構成される。これ以外の巻取シャフトやチェーンなどについては図示を省略してある。
【0022】
ガイドレール13,14は、シャッターカーテン12の両端部に接するように建物の開口部の両端側に設けられ、まぐさ部から床面まで掛け渡された断面形状がコの字型の案内溝を有する金属製部材で構成されている。シャッターカーテン12は、このガイドレール13,14の各案内溝に沿って上昇下降し、開口部の開閉動作を行う。図示していない巻取りシャフトは、開口部の上方に位置しているシャッターケース11の両端側に回動可能に設けられ、シャッターカーテン12を巻き取ったり巻き戻したりする。図示していないチェーンは、モータ15の回転軸に設けられた主動スプロケットと巻取りシャフトの回転軸に設けられた従動スプロケットとを連結している。従って、モータ15の回転駆動力はチェーンを介して巻取りシャフト側に伝達され、モータ15が回転すると、チェーンを介して巻取りシャフトが回転し、シャッターカーテン12の開閉動作が制御されるようになっている。
【0023】
シャッター駆動回路16は、マイクロコンピュータ構成になっており、図示していない電源ラインを介して電力が供給されている。シャッター駆動回路16は、開閉体制御装置17からの制御信号に基づいて、モータ15の回転を制御する。開閉体制御装置17は、リモコン操作スイッチ30からの制御信号すなわち制御電波信号を受信するリモコン用アンテナ19を備えた操作信号受信機18と、障害物検知器40からの検知信号すなわち検知電波信号を受信する検知用アンテナ21を備えた検知信号受信機20にそれぞれ接続されており、リモコン操作スイッチ30の各操作ボタンの操作状態に対応した制御信号及び障害物検知器40の検知状態を示す検知信号をシャッター駆動回路16に出力する。
【0024】
リモコン操作スイッチ30は、開ボタン、停止ボタン、閉ボタンを備えたシャッター装置専用の無線方式の操作子である。なお、操作スイッチは有線方式の操作子でもよい。障害物検知器40は、シャッターカーテン12の座板部に設けられており、障害物を検知した場合、電磁波の検知信号を発振(送信)する。検知信号受信機20は、検知用アンテナ21を介して障害物検知器40からの電磁波の検知信号を受信し、それに応じて開閉体制御装置17にその検知信号を出力して、シャッター駆動回路16を制御してモータ15の回転、すなわちシャッターカーテン12の上昇下降時の制御を実行する。
【0025】
電波監視制御部22は、操作信号受信機18及び検知信号受信機20に入力した信号を随時取り込み、その信号に含まれる暗号コード信号を用いて、誤作動を防止している。また、電波監視制御部22は、リモコン操作スイッチ30、障害物検知器40などの送信器を判別するための固有のコード信号と、シャッターカーテンの動作に対応したコード信号とを受信することによって、作動の確実性を担保し、その誤作動を防止している。しかしながら、操作信号及び検知信号の搬送媒体として電波を用いているので、シャッター装置の周辺空間に飛び交っている種々の電波、例えば、違法無線やアーク溶接などの強力な電磁波により、偶然に誤動作をしてしまうおそれがある。
【0026】
この実施の形態では、電波監視制御部22は、操作信号受信機18及び検知信号受信機20に入力した信号を取り込み、それがリモコン操作スイッチ30及び障害物検知器40からの適切な信号なのか、その他の異常な信号(妨害電波信号)なのかを判断し、異常な信号(妨害電波信号)を受信した場合は、異常環境としてブザ鳴動やランプ、文言等の表示による報知及び動作制限を掛けることで、電波環境として異常な状態でシャッターを通常動作させないようにしている。ここでの妨害電波とは、障害物検知器40から送信される検知信号と同じ周波数帯の信号であるが、固有のコード信号を有さないものである。このような妨害電波を受信している間は、適切な検知信号が送信された場合にその検知信号を受信することが難しくなるからである。
【0027】
図2は、
図1の電波監視制御部22及び開閉体制御装置17が実行する電波監視処理の一例を示すフローチャート図である。以下、このフローチャートを用いて電波監視制御部22及び開閉体制御装置17の動作の一例を説明する。
ステップS20では、検知用アンテナ21を介して受信した電波が妨害電波信号であるか否かの判定を行い、妨害電波信号でない(no)場合はステップS21に進み、妨害電波信号である(yes)場合はステップS23に進む。ここで、妨害電波であるか否かの判定は、検知用アンテナ21を介して受信した電波が所定の規定値(コード判定可能レベル)を超えており、かつ、それが障害物検知器40の発信周波数帯と同じであり、さらに、送信器判別用の固有コードと一致するか否かを判定し、これら全ての条件に一致する場合は、妨害電波信号がないと判定し、これらの少なくとも1つの条件が満たされない場合は妨害電波信号であると判定する。
【0028】
ステップS21では、前のステップS20で受信した電波が妨害電波信号ではなく正規の信号であると判定されたので、異常環境フラグをリセットする。この異常環境フラグは、検知用アンテナ21を介して受信中の電波が妨害電波信号であり、異常環境状態にあることを示すものである。
ステップS22では、現在異常環境状態ではないので、リモコン操作スイッチ30の操作に対応した開閉体の開閉停の各動作及び防災信号入力時の自重閉鎖(降下)動作を行うことのできる通常状態とする。通常状態にある開閉体装置は、リモコン操作スイッチ30を用いて電動で開閉停の操作や防災信号入力時に自重で降下する自動閉鎖装置の作動が有効な状態となる。
【0029】
ステップS23では、検知用アンテナ21を介して受信中の電波が妨害電波信号であると判定されたので、現在のシャッターカーテン12の動作状態が停止中なのか否かを判定し、停止中(yes)の場合はステップS24に進み、停止中でない昇降中の場合はステップS31に進む。
ステップS24では、現在妨害電波受信中であることを示すために、視覚的及び/又は音声的に異常環境下にあることを報知すると共に押し切り動作可能とする。すなわち、妨害電波受信中ではあるが、リモコン操作スイッチ30にて操作する場合にはその操作ボタンを押し切りすることによって閉鎖動作を可能とする。これは、リモコン操作スイッチ30の操作者がシャッターカーテン12の近くで安全を確認しながら操作することができるようにするためである。なお、押し切り動作とは、操作ボタンを押しているときだけ、その操作ボタンに相応する動作を行うことである。妨害電波受信中の状態であるが、リモコン操作スイッチ30にて操作して、この操作による電波およびその内容が正常であると制御部が認識できた場合には押し切り動作を行う。なお、妨害電波受信中の状態であると、リモコン操作スイッチ30の操作も正常に制御部に伝達されないおそれがあるので、より確実に押し切り動作を行わせるためには、リモコン操作スイッチ30と同等の指示機能を有するスイッチを設け、有線にて制御部に伝達することが好ましい。
【0030】
ステップS25では、防災信号が入力したか否かを判定し、入力した(yes)場合はステップS26に進み、そうでない(no)場合はリターンする。
ステップS26では、妨害電波信号の受信中に防災信号を入力したが、直ちに自重降下できないようにする。すなわち、検知用アンテナ21を介して受信中の電波が妨害電波信である場合は、障害物検知器40が検知信号を発信してもそれを受信することが難しくなるからである。なお、閉鎖を優先して直ちに自重降下するようにしてもよい。
【0031】
ステップS27では、妨害電波信号の受信状態が継続しているか否かを判定し、継続している(yes)場合はステップS28に進み、継続していない場合はステップS38に進む。
ステップS28では、検知用アンテナ21を介して妨害電波を受信している状態になってから所定時間T1を経過したか否かを判定し、経過した(yes)場合はステップS29に進み、経過していない(no)場合はステップS26に戻り、所定時間T1を経過するまで、自重降下できないようにする。ここで、所定時間T1は、例えば30秒とする。
【0032】
ステップS29では、検知用アンテナ21を介して妨害電波信号を受信している状態になってから所定時間T1を経過したので、例えば5秒降下動作を行い、10秒停止動作を行い、その後にまた5秒降下動作を行うというように、降下動作と停止動作を繰り返しながら安全にシャッターカーテン12を降下させて開口部閉鎖する降下処理を実行する。
ステップS30では、異常環境フラグに『1』をセットし、現在異常環境状態にあることを示すと共に妨害電波信号を受信した日時の情報を記録してリターンする。この日時の情報には、妨害電波信号の受信を開始した日時及び/又は終了した日時を記録することが好ましい。
【0033】
ステップS31では、前のステップS23でシャッター停止中でないと判定されたので、シャッター降下中か否かを判定し、降下中(yes)の場合はステップS32に進み、そうでない上昇中(no)の場合は、障害物検知器40から検知信号が入力しなくても上昇動作に影響はないので、ここではなにも処理せずにリターンする。
ステップS32では、異常環境フラグに『1』がセットされているか否かを判定し、セットされている(yes)場合は、前述のステップS30又は後述するステップS37の処理にて異常環境フラグがセットされ、異常環境状態における降下処理中であることを意味するので、直ちにリターンし、セットされていない(no)場合は、ステップS33に進む。
【0034】
ステップS33では、異常環境フラグがセットされていないと判定されたので、リモコン操作スイッチ30の操作による通常の閉鎖(降下)動作中、又は防災信号の入力による自重降下中に、検知用アンテナ21を介して妨害電波信号を受信したことを意味するので、閉鎖(降下)動作を一旦停止する。
ステップS34では、妨害電波信号の受信状態が継続しているか否かを判定し、継続している(yes)場合はステップS35に進み、継続していない場合はステップS38に進む。
【0035】
ステップS35では、検知用アンテナ21を介して妨害電波信号を受信している状態になってから所定時間T2を経過したか否かを判定し、経過した(yes)場合はステップS36に進み、経過していない(no)場合はステップS33に戻り、所定時間T1を経過するまで、閉鎖(降下)動作を停止させる。ここで、所定時間T2は、上述の所定時間T1と同じ時間、例えば30秒としてもよいし、閉鎖(降下)動作中なので、例えば10〜20秒と所定時間T1よりも小さな値としてもよい。
【0036】
ステップS36では、検知用アンテナ21を介して妨害電波信号を受信している状態になってから所定時間T2を経過したので、例えば5秒降下動作を行い、10秒停止動作を行い、その後にまた5秒降下動作を行うというように、降下動作と停止動作を繰り返しながら安全にシャッターカーテン12を降下させて開口部閉鎖する降下処理を実行する。
ステップS37では、異常環境フラグに『1』をセットし、現在異常環境状態にあることを示すと共に妨害電波信号を受信した日時の情報を記録してリターンする。この日時の情報には、妨害電波信号の受信を開始した日時及び/又は終了した日時を記録することが好ましい。
【0037】
ステップS38では、ステップS27で妨害電波信号の受信状態が継続していないと判定されたということは、防災信号の入力に応じて自重降下処理を開始できなかったことを意味するので、妨害電波信号がなくなり次第に自重降下動作を再開させるための処理を行うと共にステップS34で妨害電波信号の受信状態が継続していないと判定されたということは、閉鎖(降下)動作中にその降下動作を一旦停止させたことを意味するので、妨害電波信号がなくなり次第に閉鎖(降下)動作を再開させるための処理を行う。なお、ステップS23における停止中の判定には、ステップS29及びステップS36の停止動作を含まないものとする。
【0038】
上述の実施の形態では、妨害電波信号の受信中に防災信号を入力した場合、直ちに自重降下できないようにしているが、開口端部から50〜100[cm]程度だけ降下させて、そこで一旦停止状態を維持させ、防火垂れ板として機能させるようにしてもよい。上述の実施の形態では、検知用アンテナ21を介して妨害電波信号を受信している状態になってから所定時間T1又はT2を経過した場合、例えば5秒降下動作を行い、10秒停止動作を行い、その後にまた5秒降下動作を行うというように、降下動作と停止動作を繰り返しながらシャッターカーテン12を降下させる場合について説明したが、5秒降下動作を行い、停止後直ちに上昇回避動作3秒を行い、その後にまた5秒降下動作を行うというように、降下動作と上昇回避動作を交互に繰り返しながらシャッターカーテン12を降下させて開口部閉鎖するようにしてもよい。
【0039】
上述の実施の形態では、妨害電波信号の受信を開始した日時及び/又は終了した日時を記録する場合について説明したが、妨害電波信号の電波強度を測定する手段を設け、その電波強度も併せて記録するようにしてもよい。また、使用している周波数帯で一定の電波強度(対となる送信機以外の電波)を受信機が受信した場合、それを妨害電波信号として、電波強度及び/又は受信日時をログとして記録することによって、後日妨害電波信号の発生状態を容易に確認することができる。さらに、受信日時が特定の時間に集中している場合には、その妨害電波信号の発生源を特定するのに役立つ。また、妨害電波信号を受信していたために開閉体の正常な閉鎖ができなかったことを記録されたログに基づいて証明することができる。
【0040】
上述の説明は、障害物検知を行うのが、開閉体が閉鎖する際の場合についてであったが、開閉体が開放する際の場合についても、また開閉体が閉鎖する際と開放する際の両方の場合についても、
図2のフローチャートを若干変更することで可能になる。すなわち、開閉体が開放する際に障害物検知を行う場合には、
図2のフローチャートの例えばステップS31、ステップS33やステップS36等の「降下」を「上昇」と読み替えて処理すればよく、また、開閉体が閉鎖する際と開放する際の両方で障害物検知を行う場合には、上述した開放の場合の処理と
図2のフローチャートの処理の両者の制御を行えばよい。
なお、通常とは異なる態様の動作に関し、例えば開閉体が下降しているときに障害物を検知した場合に、開閉体が上昇をする際に通常とは異なる態様の動作、すなわち通常とは異なる態様の開動作を行うような、閉鎖や開放と、通常とは異なる態様の開閉動作とは必ずしも対応や一致をしていなくてもよいが、上述の例でいえば、開閉体が下降しているときに障害物を検知した場合には、閉鎖時に通常とは異なる態様の閉動作をするというような、閉鎖や開放と、開閉動作とが対応や一致していることが好ましい。
【0041】
上述の実施の形態では、上下昇降方式で繰り出されるシャッターカーテンを例に説明したが、シャッター状の開閉部材が横引き方式で繰り出されたり、あるいは水平方式で繰り出されたりするものであっても同様に適用することができる。また、開閉体装置としては、例えば、シャッター装置、窓シャッター装置、ブラインド装置、ロールスクリーン装置、垂れ幕装置、引戸装置、移動間仕切装置、オーニング装置、防水板装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
11…シャッターケース
12…シャッターカーテン
13,14…ガイドレール
15…モータ
16…シャッター駆動回路
17…開閉体制御装置
18…操作信号受信機
19…リモコン用アンテナ
20…検知信号受信機
21…検知用アンテナ
22…電波監視制御部
30…リモコン操作スイッチ
40…障害物検知器