特許第6366998号(P6366998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6366998
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】溶接構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20180723BHJP
【FI】
   B23K26/21 N
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-105448(P2014-105448)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-217432(P2015-217432A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊之
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 一彦
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−533114(JP,A)
【文献】 特開2013−094808(JP,A)
【文献】 特開2013−021079(JP,A)
【文献】 特開平09−141447(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00940214(EP,A2)
【文献】 独国特許出願公開第102014202636(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102013225495(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
G02B 7/02
B23K 9/00
B23K 9/20
B23K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面状に形成される球面部を有する第1部材の前記球面部と板状に形成される第2部材の端とがレーザ溶接で接合されることで形成される溶接構造体の製造方法であって、
レーザ溶接前の前記第2部材の端面の一部は、前記球面部の一部が接触する接触部を同一面上に含む接触端面となっており、
前記第2部材には、前記接触端面を含むとともに前記球面部がレーザ溶接で接合される接合部が形成され、
少なくともレーザ溶接前において、前記接合部の板厚は、前記第2部材の、前記接合部を除いた部分の板厚よりも薄くなっていることを特徴とする溶接構造体の製造方法
【請求項2】
前記第2部材は、板状に形成され互いに当接するように積層される2枚の第3部材によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の溶接構造体の製造方法
【請求項3】
前記第1部材は、全体が前記球面部となっている球体であり、前記第2部材は、ジンバルバネであることを特徴とする請求項2記載の溶接構造体の製造方法
【請求項4】
前記球面部が前記接合部にレーザ溶接で接合されると、2枚の前記第3部材と前記球面部とが接合されるとともに、2枚の前記第3部材同士が接合されることを特徴とする請求項2または3記載の溶接構造体の製造方法
【請求項5】
前記接合部における2枚の前記第3部材の厚さは等しくなっており、
2枚の前記第3部材の当接面と前記球面部の曲率中心とは、前記第2部材の厚さ方向で略一致しており、
前記第2部材の厚さ方向の両側からレーザが照射されて、前記接合部に前記球面部が接合されることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の溶接構造体の製造方法
【請求項6】
レーザ溶接前の前記接合部では、2枚の前記第3部材のうちの一方の前記第3部材に、前記第3部材の厚さ方向に貫通するとともに前記接触端面側が開口する切欠部が形成され、
前記第2部材の厚さ方向において前記切欠部が形成される一方の前記第3部材の側から前記切欠部にレーザが照射されて、2枚の前記第3部材と前記球面部とが接合されるとともに、2枚の前記第3部材同士が接合されることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の溶接構造体の製造方法
【請求項7】
前記接合部における2枚の前記第3部材の厚さは等しくなっており、
2枚の前記第3部材の当接面と前記球面部の曲率中心とは、前記第2部材の厚さ方向で略一致していることを特徴とする請求項6記載の溶接構造体の製造方法
【請求項8】
前記第2部材は、枠状に形成され、
前記接触端面は、前記第2部材の内周端に形成され、
前記接合部は、前記第2部材の内周端から外周端までの範囲に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の溶接構造体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状に形成される部材の端面に球面状に形成される球面部がレーザ溶接で接合されることで形成される溶接構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平板状に形成される接合体に金属球をレーザ溶接で接合する金属球の接合方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の金属球の接合方法では、接合体に、金属球の直径よりも直径の小さい円形の貫通孔が形成されており、貫通孔の縁と金属球とが溶接されて接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−115691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、板状に形成される接合体の表面に対して金属球を溶接する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1には、板状に形成される部材の端面に、球面状に形成される球面部を溶接する方法は開示されていない。
【0005】
そこで、本発明の課題は、板状に形成される部材の端面に球面状に形成される球面部がレーザ溶接で接合されることで形成される溶接構造体の製造方法において、球面部を溶接する際のレーザの出力を低減することが可能で、かつ、球面部を溶接する際のスパッタの発生を抑制することが可能な溶接構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の溶接構造体の製造方法は、球面状に形成される球面部を有する第1部材の球面部と板状に形成される第2部材の端面とがレーザ溶接で接合されることで形成される溶接構造体であって、レーザ溶接前の第2部材の端面の一部は、球面部の一部が接触する接触部を同一面上に含む接触端面となっており、第2部材には、接触端面を含むとともに球面部がレーザ溶接で接合される接合部が形成され、少なくともレーザ溶接前において、接合部の板厚は、第2部材の、接合部を除いた部分の板厚よりも薄くなっていることを特徴とする。
【0007】
本発明の溶接構造体の製造方法では、レーザ溶接前の第2部材の端面の一部は、球面部の一部が接触する接触部を同一面上に含む接触端面となっている。また、本発明では、接触端面を含むとともに球面部が溶接されて接合される第2部材の接合部の板厚が、少なくともレーザ溶接前において、第2部材の、接合部を除いた部分の板厚よりも薄くなっている。そのため、本発明では、レーザ溶接前において、第2部材の厚さ方向に直交する方向における球面部と接触端面との間の最大隙間を小さくすることが可能になる。したがって、本発明では、接合部に球面部を溶接する際のレーザの出力を低減することが可能になる。また、本発明では、接合部に球面部を溶接する際のレーザの出力を低減することが可能になるとともに、第2部材の厚さ方向に直交する方向における球面部と接触端面との間の最大隙間を小さくすることが可能になるため、接合部に球面部を溶接する際のスパッタの発生を抑制することが可能になる。
【0008】
本発明において、第2部材は、板状に形成され互いに当接するように積層される2枚の第3部材によって構成されていることが好ましい。板状に形成される板状部材がエッチング加工やプレス加工で製造される場合、板状部材の幅と厚さとの比であるアスペクト比に限界があり、板状部材の幅が狭くなると、板状部材の厚さを厚くすることができなくなるが、このように構成すると、幅の狭い第3部材がエッチング加工やプレス加工で製造されて第3部材の厚さが薄くなっても、第2部材の厚さを厚くすることが可能になる。
【0009】
本発明において、たとえば、第1部材は、全体が球面部となっている球体であり、第2部材は、ジンバルバネである。この場合には、幅の狭い第3部材がエッチング加工やプレス加工で製造されて第3部材の厚さが薄くなっても、第2部材の厚さを厚くすることが可能になる。すなわち、ジンバルバネの厚さを厚くすることが可能になる。したがって、ジンバルバネの厚さを所望の厚さにすることが可能になり、その結果、所望のバネ特性を有するジンバルバネを形成することが可能になる。
【0010】
本発明において、球面部が接合部にレーザ溶接で接合されると、2枚の第3部材と球面部とが接合されるとともに、2枚の第3部材同士が接合されることが好ましい。このように構成すると、2枚の第3部材同士を接合するための工程を別途設ける必要がなくなる。したがって、溶接構造体の製造工程を簡素化することが可能になる。
【0011】
本発明において、接合部における2枚の第3部材の厚さは等しくなっており、2枚の第3部材の当接面と球面部の曲率中心とは、第2部材の厚さ方向で略一致しており、第2部材の厚さ方向の両側からレーザが照射されて、接合部に球面部が接合されることが好ましい。このように構成すると、第2部材の厚さ方向において、球面部を接合部にバランス良く固定することが可能になる。
【0012】
本発明において、レーザ溶接前の接合部では、2枚の第3部材のうちの一方の第3部材に、第3部材の厚さ方向に貫通するとともに接触端面側が開口する切欠部が形成され、第2部材の厚さ方向において切欠部が形成される一方の第3部材の側から切欠部にレーザが照射されて、2枚の第3部材と球面部とが接合されるとともに、2枚の第3部材同士が接合されることが好ましい。このように構成すると、接合部に球面部を溶接する際に、他方の第3部材側からレーザを照射する必要がなくなるため、接合部に球面部を溶接する際のレーザの照射回数を減らすことが可能になる。したがって、溶接構造体の製造工程を簡素化することが可能になる。
【0013】
また、この場合には、接合部における2枚の第3部材の厚さは等しくなっており、2枚の第3部材の当接面と球面部の曲率中心とは、第2部材の厚さ方向で略一致していることが好ましい。このように構成すると、第2部材の厚さ方向において、球面部を接合部にバランス良く固定することが可能になる。
【0014】
本発明において、第2部材は、枠状に形成され、接触端面は、第2部材の内周端に形成され、接合部は、第2部材の内周端から外周端までの範囲に形成されていることが好ましい。このように構成すると、枠状に形成される第2部材の外周側から、球面部と接合部とが接合される部位に向かってレーザを照射しても、第2部材の、接合部以外の部分にレーザが照射されるのを防止することが可能になる。したがって、作業スペースが確保しやすい第2部材の外周側から、球面部と接合部とが接合される部位に向かって精度良くレーザを照射することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明では、板状に形成される部材の端面に球面状に形成される球面部がレーザ溶接で接合されることで形成される溶接構造体の製造方法において、球面部を溶接する際のレーザの出力を低減することが可能になるとともに、球面部を溶接する際のスパッタの発生を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態にかかる溶接構造体が搭載される撮影用光学装置の斜視図である。
図2図1のE−E断面の断面図である。
図3図1に示す撮影用光学装置の分解斜視図である。
図4】本発明の実施の形態にかかる溶接構造体の平面図である。
図5図4のF部の拡大斜視図である。
図6図4のG−G断面の断面図である。
図7図6のH部の拡大図である。
図8図4に示す溶接構造体の効果を説明するための図である。
図9】本発明の他の実施の形態にかかる接合部の構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(撮影用光学装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる溶接構造体21が搭載される撮影用光学装置1の斜視図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。図3は、図1に示す撮影用光学装置1の分解斜視図である。なお、以下の説明では、図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、図1等のZ1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0019】
本形態の撮影用光学装置1は、携帯電話等の携帯機器、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等に搭載される小型かつ薄型のカメラであり、手振れ等の振れを補正する振れ補正機能を備えている。この撮影用光学装置1は、全体として略四角柱状に形成されている。本形態では、撮影用光学装置1は、撮影用のレンズの光軸Lの方向(光軸方向)から見たときの形状が略正方形状となるように形成されており、撮影用光学装置1の4つの側面は、左右方向と上下方向とから構成される平面または前後方向と上下方向とから構成される平面と略平行になっている。
【0020】
撮影用光学装置1は、撮影用のレンズおよび撮像素子が搭載される可動モジュール3と、可動モジュール3を揺動可能に保持する支持体4とを備えている。可動モジュール3は、バネ部材5、6によって支持体4と繋がれている。また、撮影用光学装置1は、支持体4に対して可動モジュール3を揺動させて手振れ等の振れを補正するための振れ補正機構7を備えている。本形態では、上下方向は、可動モジュール3が揺動していないときの可動モジュール3の光軸方向とほぼ一致する。また、本形態では、可動モジュール3の下端に撮像素子が搭載されており、上側に配置される被写体が撮影される。
【0021】
可動モジュール3は、全体として、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となる略四角柱状に形成されている。この可動モジュール3は、レンズおよび撮像素子を有するカメラモジュール8と、カメラモジュール8が固定されるホルダ9とを備えている。カメラモジュール8は、たとえば、レンズを保持し光軸方向へ移動可能な可動体と、この可動体を光軸方向へ移動可能に保持する保持体と、可動体と保持体とを繋ぐ板バネと、可動体を光軸方向へ駆動する駆動機構とを備えている。すなわち、カメラモジュール8は、オートフォーカス機構を備えている。カメラモジュール8の下端側からは、フレキシブルプリント基板10が引き出されている。ホルダ9は、光軸方向から見たときの外形が略正方形状となるように形成されている。また、ホルダ9の中央には、筒状部が形成されている。カメラモジュール8は、ホルダ9によってカメラモジュール8の外周側が覆われるように、ホルダ9の筒状部の内周側に固定されている。なお、カメラモジュール8は、オートフォーカス機構を備えていなくても良い。
【0022】
支持体4は、支持体4の前後左右の4つの側面を構成するケース体11と、支持体4の下端側部分を構成する下ケース体12とを備えている。本形態では、ケース体11は、撮影用光学装置1の前後左右の4つの側面を構成し、下ケース体12は、撮影用光学装置1の下端側部分を構成している。ケース体11は、略四角筒状に形成されている。ケース体11の上端には、略四角形の枠状に形成されるカバー14が固定されている。カバー14の上面は、カバーシート15に覆われている。また、カバー14の下端側には、略四角形の枠状に形成されるフレーム16が固定されている。このケース体11は、可動モジュール3および振れ補正機構7を外周側から覆うように配置されている。下ケース体12は、底付きの略四角筒状に形成されている。下ケース体12の底部には、貫通孔12aが形成されている。貫通孔12aは、下ケース体12の下面に固定される底板17によって塞がれている。ケース体11の下端と下ケース体12の上端との間には、可動モジュール3の揺動範囲を規制するストッパ18が固定されている。
【0023】
バネ部材5は、板バネであり、平板状に形成されている。また、バネ部材5は、たとえば、金属材料によって形成されている。このバネ部材5は、可動モジュール3の上端側に固定される可動側固定部と、支持体4の上端側に固定される支持側固定部と、可動側固定部と支持側固定部とを繋ぐ複数の腕部とを備えている。バネ部材5は、振れ補正機構7を構成する後述の振れ補正用コイル26に電流が供給されていないときに、可動モジュール3の姿勢を維持する機能を果たしている。
【0024】
バネ部材6は、板バネである。具体的には、バネ部材6は、可動モジュール3を揺動可能に保持するジンバルバネである。このバネ部材6は、略正方形の枠状に形成されており、その4辺が前後方向または左右方向と略平行になるように配置されている。略正方形の枠状に形成されるバネ部材6の各辺の中心部には、前後方向または左右方向に対して蛇行する蛇行部6aが形成されている(図4参照)。バネ部材6の四隅のそれぞれの内側には、球状に形成される球体20が固定されている。すなわち、バネ部材6には、4個の球体20が固定されている。球体20は、金属材料で形成されている。たとえば、球体20は、ステンレス鋼で形成されている。この球体20は、レーザ溶接によってバネ部材6に接合されている。本形態では、バネ部材6と4個の球体20とがレーザ溶接で接合されることで溶接構造体21(図4参照)が形成されている。溶接構造体21の詳細な構成については後述する。
【0025】
4個の球体20のうち、バネ部材6の一方の対角線上に配置される2個の球体20は、球体20を回動可能に支持する支持部材22に支持され、残りの2個の球体20は、球体20を回動可能に支持する支持部材23に支持されている。支持部材22は、ホルダ9の上端側に固定されている。支持部材23は、フレーム16の下端側に固定されている。支持部材22、23には、球体20の一部が配置される半球状の凹部が形成されている。支持部材22、23は、バネ部材6の内周側から球体20を回動可能に保持している。
【0026】
振れ補正機構7は、ホルダ9の4つの側面のそれぞれに固定される振れ補正用コイル26と、ケース体11の4つの内側面のそれぞれに固定される振れ補正用磁石27とを備えている。振れ補正用コイル26は、略長方形状の枠状に導線が巻回されることで形成されている。振れ補正用磁石27は、長方形の平板状に形成されており、振れ補正用コイル26に対向するように配置されている。
【0027】
以上のように構成された撮影用光学装置1では、可動モジュール3の下端面に取り付けられるジャイロスコープ28(図2参照)によって可動モジュール3の傾きの変化が検出されると、ジャイロスコープ28での検出結果に基づいて、振れ補正用コイル26に電流が供給される。また、振れ補正用コイル26に電流が供給されると、支持部材23を中心に球体20が回動し、球体20を中心に支持部材22が回動するとともに、バネ部材6が撓むことで、可動モジュール3が光軸Lを傾けるように揺動して、振れが補正される。
【0028】
(溶接構造体の構成)
図4は、本発明の実施の形態にかかる溶接構造体21の平面図である。図5は、図4のF部の拡大斜視図である。図6は、図4のG−G断面の断面図である。図7は、図6のH部の拡大図である。
【0029】
溶接構造体21は、レーザ溶接で接合されたバネ部材6と4個の球体20とによって構成されている。上述のように、バネ部材6は、板バネであり、全体として板状に形成されるとともに、略正方形の枠状に形成されている。また、バネ部材6は、互いに当接するように積層される2枚のバネ部材31、32によって構成されている。バネ部材31、32は、金属材料によって形成されている。たとえば、バネ部材31、32は、ステンレス鋼によって形成されている。また、バネ部材31、32は、全体として板状に形成されるとともに、略正方形の枠状に形成されている。
【0030】
また、上述のように、バネ部材6の四隅のそれぞれに球体20がレーザ溶接によって接合されている。すなわち、バネ部材6の四隅のそれぞれには、球体20がレーザ溶接で接合される接合部6bが形成されている。レーザ溶接前においては、図7に示すように、接合部6bの板厚t1は、バネ部材6のその他の部分(すなわち、接合部6bを除いた部分(接合部6b以外の部分))の板厚t2よりも薄くなっている。具体的には、板厚t1は、板厚t2の1/2〜1/4程度の厚さとなっている。また、本形態では、バネ部材6の四隅の内周端から外周端の全域が接合部6bとなっている。すなわち、接合部6bは、バネ部材6の内周端から外周端までの範囲に形成されている。なお、本形態では、レーザ溶接後においても、接合部6bの板厚t1は、バネ部材6のその他の部分の板厚t2よりも薄くなっているが、レーザ溶接後に、接合部6bの一部の板厚が板厚t2以上の厚さとなっても良い。
【0031】
レーザ溶接前の、バネ部材6の径方向における接合部6bの内側端には、球体20の一部が接触する接触部を同一平面上に含む接触端面6cが形成されている。すなわち、レーザ溶接前のバネ部材6の端面の一部は、接触端面6cとなっており、バネ部材6の内周端に接触端面6cが形成されている。また、接合部6bには、接触端面6cが含まれている。なお、本形態では、接触端面6cの一部が接触部となっているが、接触端面6cの全体が接触部となっていても良い。
【0032】
バネ部材31とバネ部材32とは、後述の切欠部31dがバネ部材31に形成されている点を除いて同形状に形成されている。本形態では、バネ部材6の厚さ方向において、2枚のバネ部材31、32の当接面と球体20の曲率中心(すなわち、球体20の中心)とが略一致している。また、本形態では、バネ部材6の板厚t2と球体20の直径とが等しくなっている。すなわち、接合部6bの板厚t1は、球体20の直径よりも薄くなっている。
【0033】
レーザ溶接前においては、バネ部材31の、接合部6bを構成する部分である第1接合部31bの板厚t3は、バネ部材31のその他の部分(第1接合部31bを除いた部分)の板厚t4よりも薄くなっており、バネ部材32の、接合部6bを構成する部分である第2接合部32bの板厚t5は、バネ部材32のその他の部分(第2接合部32bを除いた部分)の板厚t6よりも薄くなっている。すなわち、レーザ溶接前においては、バネ部材6の四隅に、バネ部材6の厚さ方向の一方の面から窪む凹部が形成されるとともに、バネ部材6の厚さ方向の他方の面から窪む凹部が形成されている。接合部6bは、互いに当接するように積層される第1接合部31bと第2接合部32bとによって構成されている。
【0034】
なお、上述のように、バネ部材31とバネ部材32とは、ほぼ同形状に形成されており、板厚t3と板厚t5とは等しくなっている。また、板厚t4と板厚t6とは等しくなっている。また、本形態では、レーザ溶接後においても、板厚t3は板厚t4よりも薄くなり、板厚t5は板厚t6よりも薄くなっているが、レーザ溶接後に、第1接合部31bの一部の板厚が板厚t4以上の厚さとなっても良いし、第2接合部32bの一部の板厚が板厚t6の厚さとなっても良い。
【0035】
レーザ溶接前の第1接合部31bには、バネ部材31の厚さ方向に貫通するとともにバネ部材31の内周端側が開口する切欠部31dが形成されている。切欠部31dは、バネ部材31の厚さ方向から見たときの形状が略U形状となるように形成されている。レーザ溶接前の、バネ部材31の径方向(すなわち、バネ部材6の径方向)における第1接合部31bの内側端には、接触端面6cの一部を構成する第1接触端面31cが形成され、レーザ溶接前の、バネ部材32の径方向(すなわち、バネ部材6の径方向)における第2接合部32bの内側端には、接触端面6cの一部を構成する第2接触端面32cが形成されている。
【0036】
バネ部材6に球体20をレーザ溶接で接合する際には、バネ部材6の厚さ方向において2枚のバネ部材31、32の当接面と球体20の中心とが略一致するように、接触端面6cに球体20を突き当てた状態で、バネ部材6の外周側、かつ、バネ部材31側から切欠部31dにレーザを照射する。すなわち、図7の矢印Vの方向で切欠部31dにレーザを照射する。具体的には、バネ部材31、32の当接面上の2箇所であって、バネ部材6の径方向における切欠部31dの縁の内側端の2箇所にレーザを照射する。また、バネ部材31側から切欠部31dにレーザが照射されるため、レーザ溶接後の溶接構造体21では、バネ部材6の厚さ方向において、バネ部材31側にレーザ溶接跡が形成されている。
【0037】
本形態では、レーザが照射されて、球体20が接合部6bにレーザ溶接で接合されると、バネ部材6と球体20とが接合されるとともに(すなわち、バネ部材31、32と球体20とが接合されるとともに)、2枚のバネ部材31とバネ部材32とが接合される。なお、本形態では、バネ部材31、32と球体20とが接合された部位においてのみバネ部材31とバネ部材32とが接合されており、その他の部位では、バネ部材31とバネ部材32とは接合されていない。また、切欠部31dの幅が狭い場合には、バネ部材31、32の当接面上の1箇所であって、バネ部材6の径方向における切欠部31dの内周端の1箇所にレーザを照射しても良い。
【0038】
本形態の球体20は、球面状に形成される球面部を有する第1部材である。すなわち、本形態の第1部材は、全体が球面部となっている球体20である。また、本形態のバネ部材6は、板状に形成される第2部材であり、バネ部材31、32は、板状に形成される第3部材である。
【0039】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、レーザ溶接前の、バネ部材6の径方向における接合部6bの内側端に、球体20の一部が接触する接触部を同一平面上に含む接触端面6cが形成されている。また、本形態では、接触端面6cを含む接合部6bの板厚t1は、バネ部材6の接合部6bを除いた部分の板厚t2よりも薄くなっている。そのため、本形態では、レーザ溶接前において、バネ部材6の厚さ方向に直交する方向における球体20と接触端面6cとの間の最大隙間S1を小さくすることが可能になる。すなわち、図8に示すように、たとえば、レーザ溶接前において、接合部6bの板厚がバネ部材6の接合部6bを除いた部分の板厚と等しくなっていると、レーザ溶接前において、バネ部材6の厚さ方向に直交する方向における球体20と接触端面6cとの間の最大隙間S2が大きくなるが、本形態では、図7に示すように、板厚t1が板厚t2よりも薄くなっているため、最大隙間S1を小さくすることが可能になる。したがって、本形態では、接合部6bに球体20を溶接する際のレーザの出力を低減することが可能になる。また、本形態では、接合部6bに球体20を溶接する際のレーザの出力を低減することが可能になるとともに、最大隙間S1を小さくすることが可能になるため、接合部6bに球体20を溶接する際のスパッタの発生を抑制することが可能になる。
【0040】
本形態では、レーザが照射されて、球体20が接合部6bにレーザ溶接で接合されると、バネ部材31、32と球体20とが接合されるとともに、バネ部材31とバネ部材32とが接合される。そのため、本形態では、バネ部材31とバネ部材32とを接合するための工程を別途設ける必要がない。したがって、本形態では、溶接構造体21の製造工程を簡素化することが可能になる。
【0041】
また、本形態では、レーザ溶接前の第1接合部31bに切欠部31dが形成されており、バネ部材31側から切欠部31dにレーザが照射されると、バネ部材31、32と球体20とが接合されるとともに、バネ部材31とバネ部材32とが接合される。そのため、本形態では、接合部6bに球体20を溶接する際に、バネ部材32側からレーザを照射する必要がなくなり、その結果、接合部6bに球体20を溶接する際のレーザの照射回数を減らすことが可能になる。したがって、本形態では、溶接構造体21の製造工程を簡素化することが可能になる。
【0042】
本形態では、第1接合部31bの板厚t3と第2接合部32bの板厚t5とが等しくなっている。また、バネ部材6の厚さ方向において、2枚のバネ部材31、32の当接面と球体20の中心とが略一致している。そのため、本形態では、バネ部材6の厚さ方向において、接合部6bに球体20をバランス良く固定することが可能になる。
【0043】
本形態では、接合部6bは、バネ部材6の内周端から外周端までの範囲に形成されている。そのため、本形態では、バネ部材6の外周側から、接合部6bと球体20とが接合される部位に向かってレーザを照射しても、バネ部材6の、接合部6b以外の部分にレーザが照射されるのを防止することが可能になる。したがって、本形態では、作業スペースが確保しやすいバネ部材6の外周側から、接合部6bと球体20とが接合される部位に向かって精度良くレーザを照射することが可能になる。
【0044】
本形態では、バネ部材6は、互いに当接するように積層される2枚のバネ部材31、32によって構成されている。板状に形成されるバネ部材6がエッチング加工やプレス加工で製造される場合、バネ部材6の幅と厚さとの比であるアスペクト比に限界があり、バネ部材6の幅が狭くなると、バネ部材6の厚さを厚くすることができなくなるが、本形態では、幅の狭いバネ部材31、32がエッチング加工やプレス加工で製造されてバネ部材31、32の厚さが薄くなっても、バネ部材6の厚さを厚くすることが可能になる。したがって、本形態では、バネ部材6の厚さを所望の厚さにすることが可能になり、その結果、ジンバルバネであるバネ部材6のバネ特性を所望のバネ特性とすることが可能になる。
【0045】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0046】
上述した形態では、レーザ溶接前の第1接合部31bに切欠部31dが形成されているが、図9に示すように、レーザ溶接前の第1接合部31bに切欠部31dが形成されていなくても良い。この場合には、バネ部材6の外周側、かつ、バネ部材31側からレーザを照射するとともに、バネ部材6の外周側、かつ、バネ部材32側からレーザを照射して、接合部6bに球体20をレーザ溶接で接合する。すなわち、図9の矢印V1の方向および矢印V2の方向でレーザを照射して、接合部6bに球体20をレーザ溶接で接合する。この場合、レーザ溶接後の溶接構造体21では、バネ部材6の厚さ方向において、バネ部材31側およびバネ部材32側の両側にレーザ溶接跡が形成される。
【0047】
上述した形態では、第1接合部31bの板厚t3は、バネ部材31のその他の部分の板厚t4よりも薄くなっており、第2接合部32bの板厚t5は、バネ部材32のその他の部分の板厚t6よりも薄くなっている。この他にもたとえば、接合部6bの板厚t1がバネ部材6のその他の部分の板厚t2よりも薄くなっているのであれば、板厚t3は、板厚t4以上の厚さとなっていても良い。この場合には、板厚t5は、上述した形態よりもさらに薄くなる。また、板厚t1が板厚t2よりも薄くなっているのであれば、板厚t5は、板厚t6以上の厚さとなっていても良い。この場合には、板厚t3は、上述した形態よりもさらに薄くなる。
【0048】
上述した形態では、バネ部材6の厚さ方向において、2枚のバネ部材31、32の当接面と球体20の中心とが略一致しているが、バネ部材6の厚さ方向において、2枚のバネ部材31、32の当接面と球体20の中心とがずれていても良い。また、上述した形態では、接合部6bは、バネ部材6の内周端から外周端までの範囲に形成されているが、接合部6bは、バネ部材6の内周端から外周端までの範囲に形成されずに、バネ部材6の内周端からバネ部材6の径方向における所定の範囲までに形成されても良い。
【0049】
上述した形態では、バネ部材6は、互いに当接するように積層される2枚のバネ部材31、32によって構成されている。この他にもたとえば、バネ部材6は、1枚のバネ部材によって構成されても良いし、互いに当接するように積層される3枚以上のバネ部材によって構成されても良い。バネ部材6が1枚のバネ部材によって構成される場合、および、バネ部材6が3枚以上のバネ部材によって構成される場合のいずれの場合であっても、バネ部材6の厚さ方向において、バネ部材6の厚さ方向の中心と球体20の中心とが略一致していることが好ましい。
【0050】
上述した形態では、球体20が接合部6bにレーザ溶接で接合されると、バネ部材31、32と球体20とが接合されるとともに、バネ部材31とバネ部材32とが接合されている。この他にもたとえば、球体20が接合部6bにレーザ溶接で接合されたときに、バネ部材31とバネ部材32とが接合されなくても良い。この場合には、別工程において、バネ部材31とバネ部材32とをレーザ溶接で接合すれば良い。
【0051】
上述した形態では、溶接構造体21は、撮影用光学装置1に搭載されているが、溶接構造体21は、撮影用光学装置1以外の装置に搭載されても良い。また、上述した形態では、バネ部材6と4個の球体20とがレーザ溶接で接合されることで溶接構造体21が形成されているが、本発明が適用される溶接構造体は、バネ部材6以外の板状の部材と球体20とがレーザ溶接で接合されることで形成された溶接構造体であっても良い。また、本発明が適用される溶接構造体は、球面状に形成される球面部を一部に有する部材とバネ部材6とがレーザ溶接で接合されることで形成された溶接構造体であっても良い。この場合には、バネ部材6の接合部6bに球面部がレーザ溶接で接合される。また、この場合には、バネ部材6の厚さ方向において、バネ部材6の厚さ方向の中心と球面部の曲率中心とが略一致していることが好ましい。また、本発明が適用される溶接構造体は、球面状に形成される球面部を一部に有する部材とバネ部材6以外の板状の部材とレーザ溶接で接合されることで形成された溶接構造体であっても良い。
【符号の説明】
【0052】
6 バネ部材(第2部材、ジンバルバネ)
6b 接合部
6c 接触端面
20 球体(第1部材)
21 溶接構造体
31 バネ部材(第3部材)
31d 切欠部
32 バネ部材(第3部材)
t1 接合部の板厚
t2 バネ部材(第2部材)の、接合部を除いた部分の板厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9