(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0032】
[1]第1の実施の形態
(1)光学式座標測定装置の構成
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光学式座標測定装置の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1の光学式座標測定装置300の測定ヘッドの構成を示す斜視図である。
図3は、
図2の測定ヘッド100のプローブの構成を示す斜視図である。以下、本実施の形態に係る光学式座標測定装置300について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、光学式座標測定装置300は、測定ヘッド100および処理装置200を備える。測定ヘッド100は、保持部110、載置台120、主撮像部130、プローブ140、副撮像部150、表示部160、操作部170および制御基板180を含む。
【0033】
図2に示すように、測定ヘッド100の保持部110は、設置部111およびスタンド部112を含む。設置部111は、一方向に延びる長い平板形状を有し、例えば水平な設置面に設置される。スタンド部112は、設置部111の一方の端部から上方に延びるように設けられる。
【0034】
設置部111の他方の端部に載置台120が設けられる。載置台120は、例えば光学定盤である。載置台120上には、測定対象物Sが載置される。本例においては、載置台120は略正方形状を有する。載置台120には、互いに直交する2方向に等間隔で並ぶように複数のねじ穴が形成されている。これにより、クランプ部材および固定ねじにより測定対象物Sを載置台120に固定することができる。載置台120は磁性を有していてもよい。この場合、マグネットベース等の磁石を用いた固定部材により測定対象物Sを載置台120に固定することができる。また、載置台120の上面が粘着性を有してもよい。この場合も、測定対象物Sを載置台120に容易に固定することができる。また、載置台120の上面上に、測定対象物Sを載置するための部材をねじにより固定してもよい。測定対象物Sを載置するための部材としては、例えば上面が粘着性を有する板状部材を用いることができる。この場合、板状部材の上面上に測定対象物Sを容易に固定することができる。なお、載置台120が設置部111に対して着脱自在に構成されてもよい。
【0035】
スタンド部112の上部に主撮像部130が設けられる。主撮像部130は、スタンド部112の上部に着脱自在に設けられてもよく、スタンド部112に一体的に設けられてもよい。主撮像部130は、撮像素子131(後述する
図5)および複数のレンズ132(後述する
図5)を含む。本実施の形態においては、撮像素子131は赤外線を検出可能なCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサである。主撮像部130は、予め定められた撮像領域V(後述する
図4および
図6)から放出される赤外線を検出可能に斜め下方を向くように配置される。
【0036】
撮像領域V(
図4および
図6)は、設置部111の載置台120およびその周辺を含む一定の領域である。本実施の形態においては、
図1の載置台120および載置台120から
図1のプローブ140の全長の寸法分だけ突出した領域が撮像領域Vとして定義されている。なお、プローブ140の全長は、例えば150mm程度である。主撮像部130の各画素からは、検出量に対応するアナログの電気信号(以下、受光信号と呼ぶ)が制御基板180に出力される。
【0037】
図3に示すように、プローブ140は、筐体部141、把持部142、複数の発光部143、スタイラス144、電源基板145および接続端子146を含む。把持部142は、第1の方向D1に延び、筐体部141は第1の方向D1と交差する第2の方向D2に延びる。使用者は、把持部142を把持してプローブ140を操作する。
【0038】
以下、特に言及しない場合には、プローブ140の上下および前後は、使用者が把持部142を垂直に保持した状態(第1の方向D1が上下方向を向く状態)でのプローブ140の上下および前後を指す。
【0039】
筐体部141は把持部142の上端部に設けられる。筐体部141の前部分が把持部142の前方に突出し、筐体部141の後部分が把持部142の後方に突出するように、把持部142は筐体部141の下面の中央部から下方に延びる。ここで、第1の方向D1と第2の方向D2とがなす角度を把持部142と筐体部141の前部分とがなす角度φと定義する。本実施の形態では、角度φは鋭角であり、0°よりも大きく90°よりも小さい。
【0040】
把持部142が垂直に保持された状態において、筐体部141の前端は筐体部141の後端よりも下方に位置し、筐体部141の上面が後端から前端にかけて斜め下方に傾斜する。この場合、使用者は、筐体部141の上面を容易に斜め上方に向けることができる。
【0041】
本実施の形態では、筐体部141の上面は、前部上面141a、中央部上面141bおよび後部上面141cからなる。前部上面141a、中央部上面141bおよび後部上面141cは、それぞれ第2の方向D2に平行である。また、前部上面141a、中央部上面141bおよび後部上面141cは、第1および第2の方向D1,D2を含む平面に垂直である。前部上面141aおよび後部上面141cは同一の平面上にあり、中央部上面141bは前部上面141aおよび後部上面141cよりも高い平面上にある。
【0042】
筐体部141の内部には、複数の発光部143を保持するガラス製の保持部材が収容される。筐体部141には、内部の複数の発光部143を露出させるための複数の開口141hが形成される。
【0043】
図3の例においては、筐体部141内に7個の発光部143が設けられる。筐体部141の前端に3個の発光部143が配置され、中央に2個の発光部143が配置され、後端に2個の発光部143が配置される。筐体部141の前部上面141a、中央部上面141bおよび後部上面141cには、前端の3個の発光部143を露出させるための開口141h、中央の2個の発光部143を露出させるための開口141hおよび後端の2個の発光部143を露出させるための開口141hが形成される。
【0044】
本例においては、筐体部141の前端の3個の発光部143および後端の2個の発光部143は、同一の平面上に位置するように配置されている。また、中央の2個の発光部143は、他の発光部143が位置する平面よりも高い平面上に位置するように配置されている。
【0045】
前端の3個の発光部143は前部上面141aから上方に露出するように配置される。中央の2個の発光部143は中央部上面141bから上方に露出するように配置される。後端の2個の発光部143は後部上面141cから上方に露出するように配置される。
【0046】
各発光部143は、複数のLED(発光ダイオード)を含む。本例においては、各LEDは赤外LEDであり、各発光部143は定期的に波長860nmの赤外線を放出する。複数の発光部143から放出された赤外線は、筐体部141の複数の開口141hを通って
図2の主撮像部130により撮像される。
【0047】
図2の主撮像部130は、載置台120の斜め上方に位置する。上記のように、使用者は、筐体部141の上面を容易に斜め上方に向けることができる。そのため、主撮像部130は、載置台120上の測定対象物Sの形状測定時に、プローブ140の複数の発光部143から放出される赤外線を効率よく撮像することができる。
【0048】
図3に示すように、スタイラス144は、測定対象物Sに接触可能な接触部144aを有する棒状の部材である。本実施の形態においては、スタイラス144の先端に球状の接触部144aが設けられる。筐体部141の前端面および下面には、スタイラス144を取り付けるための図示しない取付部が形成されている。使用者は、測定対象物Sの形状に応じて、スタイラス144の取り付け位置を筐体部141の前端面と前端の下面との間で任意に変更することができる。
図3の例では、スタイラス144は、筐体部141の前端面に取り付けられている。
【0049】
電源基板145は、複数の発光部143に電力を供給する。電源基板145は、把持部142の内部に収納される。接続端子146は、把持部142の下部に配置される。複数の発光部143の動作は、接続端子146に接続されたケーブルを通して
図1の制御基板180により制御される。なお、プローブ140と制御基板180とが無線により通信可能に設けられてもよい。
【0050】
副撮像部150は、例えばCCD(電荷結合素子)カメラである。副撮像部150の解像度は、主撮像部130の解像度よりも低くてもよい。副撮像部150は、プローブ140のスタイラス144の接触部144aとの位置関係が既知となる位置に配置される。本実施の形態においては、副撮像部150は、プローブ140の筐体部141の前端の端面に配置される。副撮像部150の各画素から受光信号が制御基板180に出力される。
【0051】
図2に示すように、表示部160の下端部が、表示部保持機構500により保持される。表示部保持機構500は、保持部110の設置部111に一体的に取り付けられている。なお、表示部保持機構500は、保持部110のスタンド部112に一体的に取り付けられてもよく、設置部111およびスタンド部112の両方に一体的に取り付けられてもよい。
【0052】
表示部160は、例えば液晶ディスプレイパネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。表示部160の画面SCには、制御基板180による制御に基づいて、測定対象物Sの物理量の測定結果および後述する測定位置の座標が表示される。また、表示部160の画面SCには、光学式座標測定装置300の操作手順および処理装置200により生成された画像等も表示される。
【0053】
操作部170は、例えば複数の操作ボタンを有する。操作部170は、測定を行う測定対象物Sの部分を指定するとき等に使用者により操作される。操作部170は、プローブ140に一体的に設けられてもよい。例えば、
図3の把持部142に1または複数の操作ボタンが操作部170として設けられてもよい。この場合、使用者が一方の手で把持部142を把持しつつ操作部170を操作することができる。
【0054】
制御基板180は、保持部110の設置部111内に設けられる。制御基板180は、主撮像部130、プローブ140、副撮像部150、表示部160および操作部170に接続される。処理装置200は、制御基板180を介して主撮像部130、プローブ140、副撮像部150、表示部160および操作部170の動作を制御する。
【0055】
制御基板180には、図示しないA/D変換器(アナログ/デジタル変換器)およびFIFO(First In First Out)メモリが実装される。主撮像部130および副撮像部150から出力される受光信号は、制御基板180のA/D変換器により一定のサンプリング周期でサンプリングされるとともにデジタル信号に変換される。A/D変換器から出力されるデジタル信号は、FIFOメモリに順次蓄積される。FIFOメモリに蓄積されたデジタル信号は画素データとして順次処理装置200に転送される。
【0056】
本実施の形態においては、
図3の複数の発光部143の発光のタイミングと
図2の主撮像部130の撮像のタイミングとが同期される。複数の発光部143の発光期間に蓄積された画素データが、次の発光部143の消光期間に制御基板180から処理装置200に転送される。
【0057】
図1に示すように、処理装置200は、記憶部210、制御部220および操作部230を含む。記憶部210は、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)およびハードディスクを含む。記憶部210には、システムプログラムが記憶される。また、記憶部210は、種々のデータの処理および測定ヘッド100から与えられる画素データ等の種々のデータを保存するために用いられる。
【0058】
制御部220は、CPU(中央演算処理装置)を含む。本実施の形態においては、記憶部210および制御部220は、パーソナルコンピュータにより実現される。制御部220は、測定ヘッド100から与えられる画素データに基づいて画像データを生成する。画像データは複数の画素データの集合である。制御部220は、生成された画像データに基づいて、プローブ140のスタイラス144の接触部144aの位置を算出する。
【0059】
操作部230は、キーボードおよびポインティングデバイスを含む。ポインティングデバイスは、マウスまたはジョイスティック等を含む。操作部230は、使用者により操作される。
【0060】
(2)載置台、主撮像部および表示部の位置関係
図4(a),(b)は、主撮像部130、表示部160および載置台120の位置関係を示す側面図および平面図である。
図4(a),(b)の例では、使用者が測定ヘッド100により測定対象物Sを測定する状態が示される。
【0061】
図4(a),(b)に示すように、表示部160は、保持部110のスタンド部112と載置台120との間で表示部保持機構500により保持される。また、表示部160は、画面SCが載置台120の上方の領域を向くように傾斜している。表示部160の画面SCは、設置部111の長手方向LDに平行な鉛直面に垂直である。本実施の形態では、主撮像部130により撮像可能な範囲を撮像領域Vと呼ぶ。
【0062】
上記のように、主撮像部130は、撮像領域Vに位置するプローブ140の複数の発光部143を撮像する。使用者は載置台120を挟んで主撮像部130に対向する位置で測定対象物Sを測定する。この場合、使用者は載置台120を挟んで表示部160の画面SCに対向する。
【0063】
それにより、使用者は、測定対象物Sの測定時に、最小限の視線の移動で測定対象物Sおよび表示部160の画面SCを選択的に視認することができ、または測定対象物Sおよび表示部160の画面SCを同時に視認することができる。
図4(a),(b)では、使用者が測定対象物Sを視認する際の視線の方向が太い一点鎖線の矢印で示され、使用者が表示部160の画面SCを視認する際の視線の方向が太い点線の矢印で示される。
【0064】
通常、使用者は測定対象物Sを見下ろした状態で測定を行う。したがって、表示部160は、
図4(a)に示すように、画面SCが斜め上方を向く状態で鉛直軸に対して傾斜するように保持されることが好ましい。それにより、使用者は、測定対象物Sおよび表示部160の画面SCを視認するための視線の移動範囲をより小さくすることができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、表示部160は、表示部160の画面SCが鉛直軸に平行となるように保持されてもよい。
【0066】
(3)主撮像部の構成
図5は、主撮像部130の構成について説明するための図である。
図5(a)は、主撮像部130の模式的断面図であり、
図5(b)は、主撮像部130の外観斜視図である。
【0067】
図5(a)に示すように、主撮像部130は、素子保持部130a、レンズ保持部130b、撮像素子131および複数のレンズ132を備える。素子保持部130aおよびレンズ保持部130bは例えば金属材料からなる。素子保持部130aおよびレンズ保持部130bは、一体成形により共通の部材として設けられてもよく、または別体として設けられてもよい。
【0068】
素子保持部130aの一面に矩形の断面を有する凹部133が形成される。凹部133に撮像素子131が嵌合される。撮像素子131の位置ずれを防止するため、凹部133内で撮像素子131が固定されてもよい。凹部133の底面から素子保持部130aの上記一面に平行な他面にかけて貫通孔134が形成される。
【0069】
レンズ保持部130bは、円筒形状を有する。レンズ保持部130bの一端部が素子保持部130aの上記他面に固定される。レンズ保持部130bには種々の大きさを有する複数のレンズ132が保持される。複数のレンズ132は、素子保持部130aの貫通孔134と重なり、かつ互いに光軸が一致するように配置される。レンズ保持部130bの他端部から複数のレンズ132を通して撮像素子131に光が入射する。
【0070】
(4)主撮像部による検出
上記のように、主撮像部130は、プローブ140の複数の発光部143から放出される赤外線を検出する。
図6は、主撮像部130と複数の発光部143との関係について説明するための模式図である。
図6においては、理解を容易にするため、いわゆるピンホールカメラモデルを用いて説明する。
図6には、主撮像部130の複数のレンズ132のうち1つのレンズ132のみが示され、そのレンズ132の主点132aを通るように撮像素子131に光が導かれる。
【0071】
図6に示すように、主撮像部130は、一定の画角(視野角)θを有する。主撮像部130の画角θの範囲内に、撮像領域Vが含まれる。撮像領域V内に複数の発光部143がそれぞれ位置する場合、それらの発光部143から放出される赤外線が、レンズ132の主点132aを通って撮像素子131に入射する。
【0072】
この場合、撮像素子131の受光位置Pに基づいて、レンズ132の主点132aから各発光部143へ向かう方向が特定される。
図6の例では、一点鎖線で示すように、各受光位置Pおよびレンズ132の主点132aを通る各直線上に各発光部143が位置する。また、複数の発光部143の相対的な位置関係は、例えば
図1の記憶部210に予め記憶される。
【0073】
レンズ132の主点132aから各発光部143へ向かう方向および複数の発光部143の位置関係に基づいて、各発光部143の中心の位置が一義的に定まる。また、本実施の形態では、互いに直交するx軸、y軸およびz軸がそれぞれ定義され、撮像領域V内の絶対位置が3次元座標で表される。
図1の制御部220は、撮像素子131の受光位置P、および予め記憶された複数の発光部143の位置関係に基づいて、各発光部143の中心の座標を算出する。
【0074】
算出された各発光部143の中心の座標に基づいて、プローブ140の接触部144a(
図3)と測定対象物Sとの接触位置の座標が
図1の制御部220により算出される。
【0075】
例えば、各発光部143の中心と接触部144a(
図3)の中心との位置関係が、
図1の記憶部210に予め記憶される。算出された各発光部143の中心の座標、および予め記憶された各発光部143の中心と接触部144aの中心との位置関係に基づいて、接触部144aの中心の座標が特定される。
【0076】
また、各発光部143の中心の座標に基づいて、プローブ140の姿勢が特定される。これにより、スタイラス144の向きが特定される。また、各発光部143の中心の座標の変化に基づいて、接触部144aの移動方向が特定される。通常、接触部144aは、接触されるべき測定対象物Sの面に対して垂直に近づけられる。そのため、特定されたスタイラス144の向きおよび接触部144aの移動方向に基づいて、接触部144aの中心と接触位置との相対的な位置関係が推定される。推定された位置関係に基づいて、接触部144aの中心の座標から接触部144aと測定対象物Sとの接触位置の座標が算出される。
【0077】
なお、測定対象物Sから接触部144aに加わる力の方向を検出するセンサがプローブ140に設けられてもよい。その場合、センサの検出結果に基づいて、接触部144aと測定対象物Sとの接触位置の座標を算出することができる。
【0078】
撮像素子131と複数のレンズ132との位置関係、複数の発光部143の位置関係、および複数の発光部143と接触部144aとの位置関係等に個体差があると、算出される座標にばらつきが生じる。そこで、光学式座標測定装置300による測定を行う前に、個体差によるばらつきを防止するためのキャリブレーションが行われることが好ましい。キャリブレーション結果を固有データとして保持し、その固有データを測定対象物の測定の際に参照してもよく、またはキャリブレーション結果に基づいて、実際に測定を行う前に上記の各位置関係等の個体差を調整してもよい。
【0079】
(5)測定例
光学式座標測定装置300による測定対象物Sの寸法の測定例について説明する。
図7は、
図2の表示部160に表示される画像の一例を示す図である。
図8は、測定対象物Sの一例を示す図である。
【0080】
図7には、撮像領域Vを仮想的に表す画像(以下、撮像領域仮想画像と呼ぶ)VIが示される。上記のように、撮像領域Vには、x軸、y軸およびz軸がそれぞれ設定される。本例では、載置台120の上面に平行でかつ互いに直交するようにx軸およびy軸が設定され、載置台120の上面に対して垂直にz軸が設定される。また、載置台120の中心が原点Oに設定される。
図7の撮像領域仮想画像VIには、原点O、x軸、y軸およびz軸が含まれるとともに、載置台120の外周を表す線(
図7の点線)が含まれる。
【0081】
図8の測定対象物Sは、直方体形状を有する。本例では、測定対象物Sの一側面Saと、その反対側の側面Sbとの間の距離が測定される。測定対象物Sの側面Sa,Sbは、それぞれx軸に対して垂直である。
【0082】
図9〜
図13は、
図8の測定対象物Sにおける具体的な測定例について説明するための図である。
図9(a)および
図11(a)は、載置台120、主撮像部130、プローブ140および測定対象物Sの位置関係を示す正面図であり、
図9(b)および
図11(b)は、プローブ140および測定対象物Sの外観斜視図である。
図10、
図12および
図13には、表示部160に表示される撮像領域仮想画像VIの例が示される。
【0083】
図9(a)および
図9(b)に示すように、プローブ140の複数の発光部143が撮像領域V内に位置するように、スタイラス144の接触部144aが測定対象物Sの側面Saに接触される。その状態で、
図1の操作部170が操作されることにより、
図9(b)に示すように、測定対象物Sと接触部144aとの接触位置が測定位置M1aとして設定される。この場合、測定位置M1aの座標が特定される。
【0084】
同様にして、測定対象物Sの側面Sa上の3つの位置が測定位置M2a,M3a,M4aとして設定され、測定位置M2a,M3a,M4aの座標が特定される。続いて、
図1の操作部170または操作部230が操作されることにより、測定位置M1a〜M4aを通る平面が、測定対象物Sの側面Saに対応する測定平面ML1として設定される。この場合、
図10に示すように、撮像領域仮想画像VI上に、設定された測定平面ML1が重畳される。
図10の撮像領域仮想画像VI上には、測定平面ML1に加えて、算出された各測定位置M1a〜M4aの座標が重畳表示される。
【0085】
続いて、
図11(a)および
図11(b)に示すように、プローブ140の複数の発光部143が撮像領域V内に位置するように、スタイラス144の接触部144aが測定対象物Sの側面Sbに接触される。その状態で、
図1の操作部170が操作されることにより、
図11(b)に示すように、測定対象物Sと接触部144aとの接触位置が測定位置M1bとして設定される。この場合、測定位置M1bの座標が特定される。
【0086】
同様にして、測定対象物Sの側面Sb上の3つの位置が測定位置M2b,M3b,M4bとして設定され、測定位置M2b,M3b,M4bの座標が特定される。続いて、
図1の操作部170または操作部230が操作されることにより、測定位置M1b〜M4bを通る平面が、測定対象物Sの側面Sbに対応する測定平面ML2として設定される。この場合、
図12に示すように、撮像領域仮想画像VI上に、測定平面ML1に加えて、設定された測定平面ML2が重畳される。
図12の撮像領域仮想画像VI上には、測定平面ML1,ML2に加えて、算出された各測定位置M1a〜M4a,M1b〜M4bの座標が重畳表示される。
【0087】
続いて、
図1の操作部170または操作部230が操作されることにより、
図1の制御部220において、決定された測定平面ML1,ML2の距離が算出され、
図13に示すように、算出結果が測定結果として撮像領域仮想画像VI上に表示される。このとき、撮像領域仮想画像VI上には、測定結果に加えて、
図10および
図12の例と同様に、各測定位置M1a〜M4a,M1b〜M4bの座標が重畳表示されてもよい。
【0088】
なお、測定結果は、撮像領域仮想画像VIと別個に表示部160の画面SCに表示されてもよい。また、2つの測定平面間の距離の算出条件等は、使用者により適宜設定可能であってもよい。
【0089】
本例では、4つの測定位置に基づいて1つの測定平面が決定されるが、最少で3つの測定位置に基づいて、1つの測定平面を設定することができる。一方、4つ以上の測定位置を設定することにより、測定対象物Sに対応する測定平面をより正確に設定することができる。また、4つ以上の測定位置に基づいて、測定対象物Sの面の平面度を求めることもできる。
【0090】
また、本例では、指定された複数の位置(測定位置)を通る平面(測定平面)が測定対象として設定されるが、測定対象物の形状に応じて、他の幾何学形状が測定対象として設定されてもよい。例えば、指定された複数の位置を通る円筒または球等が測定対象として設定されてもよい。この場合、設定された円筒の断面の径または球の半径等を求めることができる。また、設定された幾何学形状に関する角度または面積等が求められてもよい。
【0091】
上記のように、光学式座標測定装置300によれば、測定対象物Sの物理量として、例えば測定対象物Sまたはその一部分についての寸法、面積、体積、平面度および角度等を測定することができる。
【0092】
本実施の形態に係る光学式座標測定装置300が製造部品の良否検査に用いられる場合、実際に測定対象物(製造部品)の測定が行われる前に、測定すべき幾何学的特徴が光学式座標測定装置300に予め設定される。その幾何学的特徴に関して測定対象物Sの物理量の測定が行われ、その測定結果に基づいて、測定対象物が設計通りの形状を有するか否かが検査される。この場合、測定すべき複数の幾何学的特徴の各々に関して良否基準が光学式座標測定装置300に予め設定され、光学式座標測定装置300が、その複数の幾何学的特徴に関する測定対象物の測定結果と、予め設定された複数の幾何学的特徴に関する良否基準とをそれぞれ比較し、各幾何学的特徴に関して良否の判別を行ってもよい。また、複数の幾何学的特徴の測定手順と複数の幾何学的特徴に関する良否基準が光学式座標測定装置300に予め設定され、光学式座標測定装置300が、各幾何学的特徴に関して良否の判別を行うのに加え、複数の幾何学的特徴に関する測定結果と良否基準との比較結果に基づいて総合的に測定対象物の良否判定を行ってもよい。
【0093】
(6)撮像部の使用例
図3の副撮像部150によって測定対象物Sを撮像することにより、測定対象物Sの画像を表示部160に表示させることができる。以下、副撮像部150により得られる画像を撮像画像と呼ぶ。
【0094】
複数の発光部143と副撮像部150との位置関係、および副撮像部150の特性(画角およびディストーション等)は、例えば
図1の記憶部210に撮像情報として予め記憶される。そのため、複数の発光部143が撮像領域V内にある場合、副撮像部150により撮像される領域が
図1の制御部220により認識される。すなわち、撮像画像に対応する3次元空間が制御部220により認識される。
【0095】
上記のように、測定位置および測定平面等の測定に関する情報(以下、測定情報と呼ぶ)は、3次元空間で設定される。本実施の形態では、これらの測定情報を撮像画像と対応付け、撮像画像上に測定情報を重畳表示することができる。
【0096】
図14は、撮像画像上に測定情報が重畳表示された例を示す図である。
図14の例では、測定対象物Sの側面Saが副撮像部150により撮像される。その撮像画像SIに、測定位置M1a〜M4aを表す複数の球体の画像P1a〜P4aが重畳されるとともに、測定平面ML1を表す画像PL1が重畳される。
【0097】
このように、実際に測定対象物Sが撮像されることによって得られる撮像画像上に測定情報が重畳されることにより、測定情報を使用者が視覚的に把握しやすくなる。また、一の測定対象物Sに対する測定を行った後に、他の測定対象物Sに対して同様の測定を行う場合、測定情報が重畳された撮像画像を参照することにより、他の測定対象物Sに対する測定を容易に行うことが可能となる。
【0098】
(7)効果
上記の光学式座標測定装置300による測定対象物Sの測定時に、使用者は、載置台120を挟んで主撮像部130に対向する位置で測定対象物Sの測定作業を行う。この場合、使用者は載置台120を挟んで表示部160の画面SCに対向する。したがって、使用者は、測定対象物Sの測定時に、最小限の視線の移動で測定対象物Sおよび表示部160の画面SCを選択的に視認することができ、または測定対象物Sおよび表示部160の画面SCを同時に視認することができる。その結果、測定結果および測定位置の座標等の確認を伴う正確な測定作業を容易かつ迅速に行うことが可能になる。
【0099】
なお、本例の表示部160は、
図4(a),(b)に示すように、主撮像部130の撮像領域Vから外れるように保持される。それにより、表示部160により測定対象物Sの測定可能な範囲が制限されることが防止される。
【0100】
また、第1の実施の形態では、表示部保持機構500により主撮像部130および載置台120と一体的に表示部160が設けられる。それにより、測定ヘッド100の取り扱いが容易になる。
【0101】
[2]第2の実施の形態
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る測定ヘッドの構成の一部を示す模式図である。第2の実施の形態に係る光学式座標測定装置の構成および動作は、以下の点を除いて第1の実施の形態に係る光学式座標測定装置300の構成および動作と同様である。
【0102】
図15に示すように、本実施の形態では、主撮像部130に漏斗形状を有するフード部材FDが取り付けられる。具体的には、本例のフード部材FDは、略矩形の開口を有する。また、フード部材FDは径小部FDaおよび径大部FDbを有する。径大部FDbの断面は径小部FDaの断面から漸次拡大する。
【0103】
径小部FDaは、レンズ保持部130bの外周部を取り囲むように主撮像部130に取り付けられる。フード部材FDの内面は、主撮像部130の撮像領域Vに重ならないように形成されている。
【0104】
図16は、
図15のフード部材FDによる効果を説明するための測定ヘッド100の側面図である。
図1の表示部160の画面SCに測定結果等が表示される際に表示部160が発熱する。表示部160の発熱量が過剰に大きくなると、表示部160の周辺の雰囲気が表示部160により加熱されやすくなる。加熱された雰囲気は、
図16の太い波線の矢印で示すように表示部160の上方に向かって流れる。
【0105】
このとき、本例の主撮像部130にはフード部材FDが取り付けられるので、加熱された雰囲気はフード部材FDの外周面に沿って上方に流れる。したがって、表示部160により加熱された雰囲気がフード部材FDにより取り囲まれる撮像領域V内に進入することが防止される。
【0106】
それにより、加熱された雰囲気が主撮像部130の撮像領域V内で不均一に流れることが防止されるので、主撮像部130に入射する光が撮像領域V内の雰囲気の揺らぎにより屈折することが防止される。その結果、表示部160の発熱に起因する測定精度の低下が抑制される。
【0107】
本実施の形態においては、画面SCが載置台120の上方の領域を向くように、表示部160が傾斜して配置される。この場合、表示部160により加熱された雰囲気の少なくとも一部は、表示部160の下端部から上端部にかけて画面SCに沿って斜め上方に向かって流れる。したがって、表示部160の上端部は、フード部材FDの先端部よりも載置台120から遠い位置(スタンド部112に近い位置)に配置されることが好ましい。それにより、表示部160により加熱された雰囲気がフード部材FDの先端部と載置台120との間の空間を通ることが防止される。
【0108】
表示部160は可能な限りフード部材FDの先端部よりも載置台120から遠い位置(スタンド部112に近い位置)に配置されることが好ましい。それにより、表示部160により加熱された雰囲気がフード部材FDの内部に進入することが十分に抑制される。
【0109】
[3]第3の実施の形態
図17は、本発明の第3の実施の形態に係る測定ヘッド100の構成を示す外観斜視図である。第3の実施の形態に係る光学式座標測定装置の構成および動作は、以下の点を除いて第1の実施の形態に係る光学式座標測定装置300の構成および動作と同様である。
【0110】
図17に示すように、主撮像部130に略角筒形状を有するフード部材FD2が取り付けられる。フード部材FD2の内面は、主撮像部130の撮像領域Vに重ならないように形成されている。フード部材FD2は、
図16のフード部材FDと同様に、表示部160により加熱された雰囲気が主撮像部130の撮像領域V内に進入することを防止するために用いられる。なお、本実施の形態では、フード部材FD2は必ずしも設けられなくてもよい。
【0111】
本実施の形態では、表示部160の下端部を保持する
図2の表示部保持機構500に代えて、以下に説明する表示部保持機構600が設けられる。
図18(a)は
図17の測定ヘッド100の一部を示す側面図であり、
図18(b)は
図17のQ−Q線を通る鉛直面における表示部160および表示部保持機構600の縦断面図である。
【0112】
図18(a),(b)に示すように、表示部保持機構600は、アルミニウム製の底面板601、前面板602、傾斜板603、上面板604、背面板605、一方側板606および他方側板607を含む。底面板601、前面板602、傾斜板603、上面板604および背面板605は矩形状を有し、一方側板606および他方側板607は台形状を有する。
【0113】
底面板601は、互いに対向する前縁部601aおよび後縁部601bを有する。底面板601の前縁部601aから上方に延びるように前面板602が設けられる。また、前面板602の上端部から斜め上方に延びるように傾斜板603が設けられる。さらに、傾斜板603の上端から底面板601の後縁部601bの上方の位置まで水平に延びるように上面板604が設けられる。後縁部601bの上方に位置する上面板604の部分から後縁部601bに向かって下方に延びるように背面板605が設けられる。
【0114】
底面板601、前面板602、傾斜板603、上面板604および背面板605により取り囲まれる空間を両側方から覆うように、一方側板606および他方側板607が設けられる。
【0115】
載置台120からスタンド部112に向かう方向に前縁部601aおよび後縁部601bがこの順で並ぶように、底面板601が設置部111の上面上に取り付けられる。底面板601が設置部111に取り付けられた状態で、前縁部601aおよび後縁部601bは、設置部111の長手方向LDに直交する方向に延びる。
【0116】
本実施の形態では、表示部160における画面SCの反対側の面(背面)が被支持面として機能する。また、表示部保持機構600の傾斜板603の上面が表示部160を支持するための支持面として機能する。
【0117】
図18(b)に示すように、傾斜板603の上面上にアルミニウム製の金属板G1が取り付けられる。金属板G1は、表示部160よりもやや大きい矩形状を有する。金属板G1の上面上には、シート状の放熱ゴムG2が取り付けられる。放熱ゴムG2としては、シリコンゴム等の高い熱伝導性を有するゴムが用いられる。放熱ゴムG2の上面上に表示部160の背面が取り付けられる。それにより、表示部160の背面が、傾斜板603の上面により支持される。
【0118】
上記のように、表示部保持機構600および金属板G1が高い熱伝導性を有するアルミニウムにより形成され、放熱ゴムG2が高い熱伝導性を有するゴムにより形成される。この場合、傾斜板603の上面全体を金属板G1に接触させまたは近接させることにより表示部160と傾斜板603との間の熱の伝達面積を大きく確保することができる。
【0119】
したがって、表示部160が発熱する場合に、
図8(b)の太い実線矢印で示すように、表示部160から発生される熱が放熱ゴムG2および金属板G1を通して傾斜板603の上面に効率よく伝達される。また、傾斜板603に伝達された熱が前面板602および底面板601を通して設置部111に伝達され、設置部111に吸収される。それにより、表示部160の発熱による表示部160周辺の雰囲気の加熱が抑制されるので、加熱された雰囲気が主撮像部130の撮像領域V内に進入することが抑制される。その結果、表示部160の発熱に起因する測定精度の低下が抑制される。
【0120】
本例の表示部保持機構600および金属板G1はアルミニウムにより形成されるが、表示部保持機構600および金属板G1の材料はアルミニウムに限られない。表示部保持機構600および金属板G1の材料は、高い熱伝導性を有すればよく、鉄、銅またはこれらの合金が用いられてもよい。
【0121】
本実施の形態では、表示部160と傾斜板603との間の熱の伝達面積を大きくするために、傾斜板603の上面の面積を可能な限り大きくすることが好ましい。また、底面板601と設置部111との間の熱の伝達面積を大きくするために、底面板601の下面の面積を可能な限り大きくすることが好ましい。
【0122】
ここで、表示部160として液晶ディスプレイパネルを用いる場合を想定する。一般に、液晶ディスプレイパネルには、サイドライト方式のバックライトが用いられる。この場合、液晶ディスプレイパネルの駆動時には、矩形状を有する画面の一辺が局所的に発熱しやすい。
【0123】
図19は、液晶ディスプレイパネルの表面温度の測定結果を表すサーモグラフィー画像である。
図19では、太い点線で取り囲まれる部分の画像SCIが液晶ディスプレイパネルの画面に対応する。また、
図19の画像においては、ハッチングの濃度が高い部分ほど測定された温度が高いことを示し、ハッチングの濃度が低い部分ほど測定された温度が低いことを示す。
【0124】
図19の測定結果によれば、その液晶ディスプレイパネルにおいては、画面の下縁の温度が他の部分に比べて局所的に高いことが確認できる。このように、局所的に発熱する画面の部分が既知である場合には、局所的に発熱する部分が他の部分よりも設置部111に近い位置に配置されるように、表示部160を表示部保持機構600に取り付けることが好ましい。
【0125】
この場合、局所的に発熱する表示部160の部分から設置部111までの熱の伝達経路が短くなる。それにより、表示部160の画面上で局所的に発生する熱が、効率よく設置部111に伝達され、吸収される。
【0126】
本実施の形態においては、表示部160の発熱を抑制するとともに表示部160により加熱された雰囲気を撮像領域Vの外部に導くためのファンを表示部160の近傍に設けてもよい。この場合、表示部160の発熱に起因する測定精度の低下を十分に防止することができる。
【0127】
また、本実施の形態においては、表示部160に透光性を有するカバー部材を設けてもよい。
図20は、
図18(a)の表示部160にカバー部材が設けられた例を示す側面図である。
【0128】
図20の例では、画面SCを取り囲むように矩形のスペーサ160Sが表示部160上に取り付けられる。そのスペーサ160S上に透光性を有するカバー部材160Gが設けられる。スペーサ160Sおよびカバー部材160Gの取り付け作業には、接着剤またはねじ等が用いられる。スペーサ160Sの材料としては、アルミニウム等の金属が用いられる。カバー部材160Gの材料としては、アクリル樹脂またはガラス等が用いられる。
【0129】
表示部160にスペーサ160Sおよびカバー部材160Gが取り付けられた状態で、カバー部材160Gは、画面SCから一定間隔をおいて表示部160の画面SCに対向する。それにより、画面SC上には、スペーサ160Sおよびカバー部材160Gの内面で取り囲まれた密閉空間HSが形成される。
【0130】
密閉空間HS内の空気は画面SCとカバー部材160Gとの間の断熱材として機能する。そのため、画面SCから発生する熱は、密閉空間HS内の空気によりカバー部材160Gに伝達されにくい。この場合、表示部160の画面SCの発熱とともにカバー部材160Gの表面温度が高くなることが抑制されるので、表示部160周辺の雰囲気が画面SCから発生する熱で加熱されることが抑制される。
【0131】
それにより、加熱された雰囲気が主撮像部130の撮像領域V内で不均一に流れることが抑制される。したがって、主撮像部130に入射する光が撮像領域V内の雰囲気の揺らぎにより屈折することが防止される。その結果、表示部160の発熱に起因する測定精度の低下が抑制される。
【0132】
本例では、表示部160とスペーサ160Sとの間の隙間およびスペーサ160Sとカバー部材160Gとの間の隙間を塞ぐように、樹脂またはゴム等の封止材が設けられてもよい。この場合、密閉空間HSの密閉度を高めることができる。また、密閉空間HS内に空気よりも熱抵抗が大きいアルゴンガスが充填されてもよいし、密閉空間HS内が真空状態に保持されてもよい。それにより、画面SCとカバー部材160Gとの間でより高い断熱効果を得ることができる。
【0133】
[4]第4の実施の形態
図21は、本発明の第4の実施の形態に係る測定ヘッドの構成を示す側面図である。第4の実施の形態に係る光学式座標測定装置の構成および動作は、以下の点を除いて第1の実施の形態に係る光学式座標測定装置300の構成および動作と同様である。
【0134】
本実施の形態では、
図2の表示部保持機構500に代えて設置部111上に水平方向に延びるとともに上下方向に延びる断面L字型の表示部保持機構510が設けられる。
【0135】
表示部保持機構510の上端部には、水平方向に平行でかつ設置部111の長手方向LDに直交するように回転軸511が設けられる。また、表示部160の上端部近傍の背面部分に、表示部保持機構510の回転軸511を挿入可能な連結具161が設けられる。
【0136】
表示部160に設けられた連結具161が表示部保持機構510の回転軸511に取り付けられる。それにより、
図21(a),(b)に示すように、表示部160の画面SCが、回転軸511を中心として回転可能な状態で表示部保持機構510により保持される。
【0137】
この場合、使用者または測定環境に応じて表示部160の画面SCの傾きを調整することが可能になる。その結果、光学式座標測定装置300による測定対象物Sの測定作業の利便性が向上する。
【0138】
[5]他の実施の形態
(1)上記の実施の形態では、表示部160を保持する表示部保持機構500,510,600が、設置部111およびスタンド部112とは別体として設置部111またはスタンド部112に取り付けられる。本発明はこれに限らず、設置部111およびスタンド部112のうち少なくとも一方が表示部160を保持可能な形状に形成されてもよい。
【0139】
この場合、保持部110とは別体で作製された表示部保持機構500,510,600を用いることなく、表示部160を保持部110に取り付けることができる。それにより、光学式座標測定装置300の組立てが容易になり、部品点数が削減される。
【0140】
(2)上記の実施の形態では、保持部110のスタンド部112は、設置部111の一方の端部から上方に延びるように形成される。これに限らず、スタンド部112は、設置部111の一方の端部から載置台120の方向または載置台120とは反対の方向に向かって斜め上方に傾斜または湾曲して延びるように形成されてもよい。また、スタンド部112は、設置部111の側方に向かって傾斜または湾曲して延びるように形成されてもよい。
【0141】
(3)上記の実施の形態では、画面SCが設置部111の長手方向LDに平行な鉛直面に垂直となるように、表示部160が表示部保持機構500,510,600により保持される。本発明はこれに限らず、表示部保持機構500,510,600が、設置部111の長手方向LDに平行な鉛直面に対する画面SCの角度を変更可能に構成されてもよい。
【0142】
(4)上記の実施の形態では、表示部160が設置部111上の所定の位置で固定されるように、表示部160が表示部保持機構500,510,600により保持される。本発明はこれに限らず、表示部160が設置部111上で長手方向LD(
図4)に移動可能となるように、表示部保持機構500,510,600が構成されてもよい。
【0143】
(5)上記の実施の形態では、表示部160が設置部111上の所定の位置で固定されるように、表示部160が表示部保持機構500,510,600により保持される。本発明はこれに限らず、表示部160が設置部111上で上下方向に移動可能となるように、表示部保持機構500,510,600が構成されてもよい。
【0144】
(6)上記の実施の形態は、1つの撮像部によってプローブが撮像されることにより測定位置の座標が測定されるシングルカメラ式の光学式座標測定装置に本発明が適用された例であるが、複数の撮像部によってプローブが撮像されることにより測定位置の座標が測定されるマルチカメラ式の光学式座標測定装置に本発明が適用されてもよい。
【0145】
(7)上記の実施の形態では、プローブ140と制御基板180とがケーブルを介して接続される。これに限らず、プローブ140と制御基板180とが無線により通信可能に構成されてもよい。この場合、プローブ140の複数の発光部143の動作が制御基板180からの無線通信により制御される。また、副撮像部150から出力される受光信号が無線通信により制御基板180に送信される。それにより、プローブ140の操作性が向上する。
【0146】
(8)上記の実施の形態では、主撮像部130により撮像されるプローブ140のマーカとして、LEDにより発光される発光部143が用いられるが、プローブ140のマーカはこれに限定されない。例えば、フィラメント等の他の発光素子により発光される発光部がマーカとして用いられてもよく、蛍光色等の特定の色を有する非発光部がマーカとして用いられてもよく、特定の形状を有する非発光部がマーカとして用いられてもよい。
【0147】
[6]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0148】
上記実施の形態においては、測定対象物Sが測定対象物の例であり、載置台120が載置台の例であり、発光部143がマーカの例であり、接触部144aが接触部の例であり、プローブ140がプローブの例であり、主撮像部130が撮像部の例である。
【0149】
また、保持部110が保持部の例であり、制御部220が測定部の例であり、表示部160が表示部の例であり、表示部160の画面SCが画面の例であり、光学式座標測定装置300が光学式座標測定装置の例であり、表示部保持機構500,510,600が表示部保持機構の例であり、フード部材FD,FD2がフード部材の例である。
【0150】
さらに、表示部保持機構600の底面板601、前面板602、傾斜板603、上面板604、背面板605、一方側板606および他方側板607が熱伝導性部材の例であり、表示部160における画面SCの反対側の面(背面)が被支持面の例であり、表示部保持機構600の傾斜板603の上面が支持面の例である。
【0151】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
[7]参考形態
参考形態に係る光学式座標測定装置は、測定対象物が載置される載置台と、複数のマーカを有するとともに測定対象物に接触される接触部を有するプローブと、プローブの複数のマーカを撮像する撮像部と、撮像部を保持する保持部と、撮像部により得られる複数のマーカの画像を示す画像データに基づいて、測定対象物と接触部との接触位置の座標を算出し、算出結果に基づいて測定対象物の物理量を測定する測定部と、測定部により得られる算出結果および測定結果の少なくとも一方を表示する表示部とを備え、表示部は、保持部と載置台との間の位置で表示部の画面が載置台の上方の領域を向くように配置されたものである。
その光学式座標測定装置においては、載置台上に載置された測定対象物にプローブの接触部が接触される。プローブの複数のマーカが撮像部によって撮像されることにより画像データが生成される。その画像データに基づいて測定対象物と接触部との接触位置の座標が算出される。また、算出結果に基づいて測定対象物の物理量が測定される。それにより、測定対象物の所望の部分の寸法を測定することができる。
プローブの複数のマーカが撮像部によって撮像される場合、使用者は載置台を挟んで撮像部に対向する位置で測定対象物の測定を行う。この場合、使用者は載置台を挟んで表示部の画面に対向する。それにより、使用者は、測定対象物の測定時に、最小限の視線の移動で測定対象物および表示部の画面を選択的に視認することができ、または測定対象物および表示部の画面を同時に視認することができる。その結果、座標の算出結果および測定結果の少なくとも一方の確認を伴う正確な測定作業を容易かつ迅速に行うことが可能になる。