特許第6367008号(P6367008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367008
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】吸収体の製造方法及び吸収体製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20180723BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A61F13/15 321
   A61F13/534
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-114320(P2014-114320)
(22)【出願日】2014年6月2日
(65)【公開番号】特開2015-226709(P2015-226709A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 真悟
(72)【発明者】
【氏名】重松 雅人
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−278004(JP,A)
【文献】 特開昭56−134249(JP,A)
【文献】 特開2006−110329(JP,A)
【文献】 特開昭59−204955(JP,A)
【文献】 特開2008−255529(JP,A)
【文献】 特開2000−093459(JP,A)
【文献】 特開2002−363849(JP,A)
【文献】 特開2000−080549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
A61F 13/534
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の高分子吸収材を挟んだ状態で、長繊維からなる第一繊維層と、長繊維からなる第二繊維層とを重ね合わせる積層工程と、
前記積層工程後に、前記第一繊維層の繊維と前記第二繊維層の繊維とを局所的な外力により絡ませ、前記高分子吸収材に隣接する繊維の絡み合いを促進させる絡み促進工程と、を備える、吸収体の製造方法。
【請求項2】
前記絡み促進工程では、前記第一繊維層の繊維と前記第二繊維層の繊維との絡み合いをニードルパンチ処理することにより促進させる、請求項1に記載の吸収体の製造方法。
【請求項3】
前記第一繊維層と前記第二繊維層とは、セルロースアセテート繊維をそれぞれ含む、請求項1または2に記載の吸収体の製造方法。
【請求項4】
前記積層工程前において、トウバンドからなる繊維材料を用いて前記第一繊維層と前記第二繊維層とをそれぞれ形成する繊維層形成工程をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項5】
前記積層工程前において、繊維材料をニードルパンチ処理することにより前記第一繊維層と前記第二繊維層とをそれぞれ形成する繊維層形成工程をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項6】
粒状の高分子吸収材を挟んだ状態で、長繊維からなる第一繊維層と、長繊維からなる第二繊維層とを重ね合わせる積層部と、
前記積層部により重ね合わされた前記第一繊維層と前記第二繊維層とにおいて、前記第一繊維層の繊維と前記第二繊維層の繊維とを局所的な外力により絡ませ、前記高分子吸収材に隣接する繊維の絡み合いを促進させる絡み促進部と、を備える、吸収体製造装置。
【請求項7】
前記絡み促進部は、前記第一繊維層の繊維と前記第二繊維層の繊維との絡み合いを促進させるためのニードルパンチ装置を含む、請求項6に記載の吸収体製造装置。
【請求項8】
トウバンドからなる繊維材料を用いて前記第一繊維層と前記第二繊維層とをそれぞれ形成する繊維層形成部をさらに備える、請求項6または7に記載の吸収体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体の製造方法及び吸収体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ、失禁パッド、包帯、生理用品等に用いられるものとして、水または水溶液を吸収する吸収体が知られている。
【0003】
一般に、吸収体は、高分子吸収材と繊維材料とを用いて構成される。特許文献1には、フラッフパルプ等と高分子吸収材との混合体を用いてなる吸収体が開示されている。特許文献2には、アセテートトウの開繊体と高分子吸収材との混合体を用いてなる吸収体が開示されている。特許文献3には、セルロース繊維を有する基材に、吸水性樹脂をホットメルト接着剤の粘着性により固定してなる吸収体が開示されている。高分子吸収材は、SAP(Super Absorbent Polymer)とも称される。
【0004】
吸収体に要求される特性しては、例えば、装着感が良好なこと、高分子吸収材の保持性が良好なこと、表面の触感が良好であること、吸水後も形態が維持されること、高分子吸収材の吸水性が良好なこと等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−288020号公報
【特許文献2】特開2006−110329号公報
【特許文献3】特開2001−96654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された吸収体は、フラッフパルプを構成するパルプ繊維が移動することによって、ヨレや割れを生じることがある他、フラッフパルプ自体が一定の吸水性を有することにより、吸水したフラッフパルプにユーザの肌が触れることでユーザが違和感を感じたり、蒸れやかぶれを生じることがある。
【0007】
特許文献2に開示された吸収体は、吸水後に高分子吸収材が偏在することがある他、高分子吸収材の保持性が低下したり、ざらざらした表面の触感を生じる場合がある。また、吸収体の内部で高分子吸収材が偏在することによって、吸水時の液拡散性が低下する場合がある。
【0008】
さらに、特許文献1及び2に開示された吸収体は、吸水後の高分子吸収材の膨潤による割れや偏った膨らみを生じることで、元の形状を維持できなくなる場合がある。
【0009】
特許文献3に開示された吸収体は、高分子吸収材を固定するための接着剤が、高分子吸収材の吸水性を阻害することによって、吸水能力が低下する場合がある。
【0010】
このように、従来の吸収体には、要求される特性を満足すべき点において改善の余地が存在している。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、吸収体において、従来に比べて良好な性能を発揮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様における吸収体の製造方法は、粒状の高分子吸収材を挟んだ状態で、第一繊維層と第二繊維層とを重ね合わせる積層工程と、前記積層工程後に、前記第一繊維層の繊維と前記第二繊維層の繊維とを局所的な外力により絡ませ、前記高分子吸収材に隣接する繊維の絡み合いを促進させる絡み促進工程とを備える。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の態様における吸収体製造装置は、粒状の高分子吸収材を挟んだ状態で、第一繊維層と第二繊維層とを重ね合わせる積層部と、前記積層部により重ね合わされた前記第一繊維層と前記第二繊維層とにおいて、前記第一繊維層の繊維と前記第二繊維層の繊維とを局所的な外力により絡ませ、前記高分子吸収材に隣接する繊維の絡み合いを促進させる絡み促進部とを備える。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明の各態様によれば、吸収体の第一繊維層の繊維と第二繊維層の繊維とを局所的な外力により絡ませ、高分子吸収材に隣接する繊維の絡み合いを促進させることによって、高分子吸収材が繊維の間に保持される。従って、接着剤を用いて高分子吸収材を繊維に固定する必要がないため、高分子吸収材が接着剤で覆われることで、高分子吸収材の吸水性が接着剤により阻害されるのを回避できる。
【0015】
また、繊維の間に高分子吸収材が保持されるので、吸収体の内部において、高分子吸収材が偏在しにくく、吸収体が割れやヨレを生じるのを防止できる。さらに、高分子吸収材が吸水して膨潤した際においても、吸収体において割れや偏った膨張等が発生するのを防止できる。これにより、吸水前後における吸収体の形態を良好に維持できる。また、吸収体の内部において高分子吸収材が偏在しにくいので、吸収体の全体にわたって高分子吸収材の吸水効果を奏することができる。これにより、高分子吸収材が吸水した水または水溶液を吸収体の全体に拡散できるので、優れた液拡散性を期待できる。
【0016】
また、粒状の高分子吸収材を挟み、第一繊維層と第二繊維層とを重ね合わせた状態で、高分子吸収材が繊維の間に保持されるので、高分子吸収材が吸収体の表面に露出するのが防止される。これにより、吸水前後を問わず、吸収体の表面をさらさらに保つことができる。従って、吸収体の触感を良好に維持でき、ユーザが使用時に優れた装着感を得ることを期待できる。
【0017】
結果として、上記した本発明の各態様によれば、吸収体において、従来に比べて良好な性能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1に係る吸収体の構成を示す図である。
図2】実施形態1に係る吸収体の中間部の周辺構造を示す拡大断面図である。
図3】実施形態1に係る吸収体の中間部の周辺構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した拡大断面写真である。
図4】実施形態1に係る吸収体の製造ステップを示す図である。
図5】吸収体製造装置の構成を示す図である。
図6】実施形態2に係る吸収体の製造ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を各図を参照して説明する。
【0020】
<実施形態1>
[吸収体]
図1及び2に、実施形態1に係る吸収体1の構成を示す。図3に、吸収体1の中間部14の周辺構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した拡大断面写真を示す。
【0021】
吸収体1は、互いに重ね合わされた第一繊維シート10及び第二繊維シート11と、第一繊維シート10及び第二繊維シート11の間に挟まれた多数の粒状の高分子吸収材12とを備える。第一繊維シート10と、第二繊維シート11とは、いずれも化学繊維を含んで構成される。吸収体1では、第一繊維シート10で構成される第一繊維層10Aと、第二繊維シート11で構成される第二繊維層11Aとが、多数の粒状の高分子吸収材12を挟んだ状態で重ね合わされ、吸収体1の厚み方向中央付近に位置する中間部14において、高分子吸収材12を介して対向する第一繊維層10A及び第二繊維層11Aの繊維同士が絡み合って網状部13が形成されている。高分子吸収材12は、網状部13の内部における複数本の繊維の間に保持されている。尚、図1では、吸収体1の全体形状を一例として直方体としているが、吸収体1の全体形状はこれに限定されず、例えば円盤状や楕円状等の形状であってもよい。
【0022】
第一繊維シート10と第二繊維シート11とは、一例として、同じ繊維材料を用いて作製される。具体的に、第一繊維シート10と第二繊維シート11とは、例えば、セルロースアセテートの長繊維を含むトウバンドを開繊した繊維材料で作製される。ここで、「トウバンド」は、複数の紡糸機で紡糸した全フィラメントを合一し、これを捲縮した複数本のフィラメントの繊維束を指す。
【0023】
第一繊維シート10と第二繊維シート11とが含む化学繊維としては、公知のものを適宜選択することが可能であるが、一例として、セルロースアセテート繊維を用いると、吸収体1では第一繊維シート10と第二繊維シート11においても適度な親水性が発揮され、良好な吸水性を期待できるので望ましい。ここで、「化学繊維」は、化学プロセスにより製造される繊維を指し、例えば、再生繊維と、半合成繊維と、合成繊維とのいずれかが含まれる。化学繊維は、例えば、絹や羊毛等の動物繊維と、綿や麻等の植物繊維とは含まない。
【0024】
高分子吸収材12は、主として、排泄体液等の水溶液を吸収可能な高分子材料を用いて構成される。前記高分子材料としては、一例として、ポリアクリル酸系材料が挙げられる。本実施形態では、使用前の吸収体1における高分子吸収材12は、一例として、前記高分子材料の固形物を解砕してなる多数の粒状の形態としているが、「粒状」とは、高分子吸収材12が網状部13の内部における複数本の繊維の間に保持可能な形状であればよく、例えば、粉体の微粒子の他、複数の前記微粒子が集まって出来た塊、或いは、フレーク状体等のいずれの形態であってもよい。高分子吸収材12は、互いに対向する第一繊維シート10及び第二繊維シート11の間に、均一に分散するように配置されている。以下、高分子吸収材12が水または排泄体液等の水溶液を吸収することを、便宜上、「吸水」と称する。
【0025】
第一繊維シート10と第二繊維シート11とは、互いに重ねて配置された状態で、外部よりニードルパンチ(NP)処理がなされている。吸収体1では、第一繊維シート10及び第二繊維シート11が対向する中間部14において、高分子吸収材12に隣接する繊維10a、11aの絡み合いがニードルパンチ処理によって促進されたことにより、網状部13が形成されている。
【0026】
尚、図2では、説明上、繊維10a、11aの間の空隙をある程度広く図示しているが、この空隙は実際には極めて微小であるため、高分子吸収材12は網状部13の内部から脱落しにくい。図3に示す拡大断面写真では、中間部14において、第一繊維シート10と第二繊維シート11に含まれる多数本の繊維が絡み合うことで網状部が形成され、当該網状部の内部の多数本の繊維の間に、白色の塊状の複数の高分子吸収材が保持された様子を確認できる。
【0027】
このように、吸収体1では、網状部13の内部における多数本の繊維10a、11aの間に、高分子吸収材12が良好に保持される。従って、特許文献3のように、接着剤を用いて高分子吸収材を繊維に固定する必要がない。このため、高分子吸収材12が接着剤に覆われることで、高分子吸収材12の吸水性が阻害されるのを回避できる。
【0028】
また、多数の粒状の高分子吸収材12が、網状部13の内部において、繊維10a、11aの間に存在する空隙に分散して保持されるため、吸収体1の内部で高分子吸収材12が偏在しにくい。従って、高分子吸収材12が偏在することで発生しうる吸収体1の割れやヨレ等を防止できる。さらに、高分子吸収材12が吸水して膨潤した際に、吸収体1が割れや偏った膨張等を発生するのを防止できる。これにより、吸収体1の使用前後における形態を良好に維持できる。
【0029】
また、吸収体1の内部で高分子吸収材12が偏在しにくいので、吸収体1の全体にわたって高分子吸収材12の吸水効果を発揮させることができる。このように、高分子吸収材12が吸水した水または水溶液を吸収体1の全体に拡散できることにより、優れた液拡散性が発揮され、吸水後の漏れを適切に防止することができる。
【0030】
また、図1及び2に示したように、高分子吸収材12は、第一繊維シート10と第二繊維シート11とに挟まれながら、中間部14の網状部13の内部における繊維10a、11aの間に保持されるので、吸収体1の表面に高分子吸収材12が露出するのが防止される。ここで、化学繊維は、動物繊維及び植物繊維等に比べて一般に吸水性が低いため、第一繊維シート10と第二繊維シート11とを化学繊維を含むように構成することで、吸水後の吸収体1の表面をさらさらに保つことができ、吸水前後にわたって良好な触感を維持できる。さらに、吸水後の高分子吸収材12がユーザの肌に触れるのを防止できるので、吸水後においても良好な装着感を維持することが可能である。
【0031】
[吸収体の製造方法及び吸収体製造装置]
図4及び5に基づき、実施形態1における吸収体1の製造方法を例示する。
【0032】
図4に、実施形態1に係る吸収体の製造ステップを示す。図4に示すように、まず、所定のトウバンド製造装置で製造されて梱包箱に収納されたベール状のトウバンドを繰り出し、当該トウバンドの開繊工程(S1)を実施する。次に、開繊したトウバンドを所定サイズに裁断することにより、繊維層形成工程(S2)を実施する。これにより、開繊したトウバンドからなる繊維材料を用いて、第一繊維層10Aを構成する第一繊維シート10と、第二繊維層11Aを構成する第二繊維シート11とをそれぞれ作製する。
【0033】
次に、高分子吸収材12を挟んだ状態で、第一繊維シート10と第二繊維シート11とを重ね合わせることにより、第一繊維層10Aと、第二繊維層11Aとを重ね合わせる積層工程(S3)を実施する。次に、積層工程(S3)の実施後に、第一繊維層10Aと第二繊維層11Aとをニードルパンチ処理することにより、第一繊維層10Aの繊維10aと第二繊維層11Aの繊維11aとを局所的な外力により絡ませ、高分子吸収材12に隣接する繊維10a、11aの絡み合いを促進させる絡み促進工程(S4)を実施する。具体的には、例えば、重ね合わせた第一繊維シート10及び第二繊維シート11に対し、外部よりニードルパンチ処理を実施することにより、繊維10a、11aを互いに絡ませて網状部13を形成し、網状部13の内部における繊維10a、11bの間に高分子吸収材12を保持させる。次に、絡み促進工程(S4)の実施後に、第一繊維シート10と、第二繊維シート11とを所定のサイズにそれぞれ裁断して吸収体1を作製する裁断工程(S5)を実施する。以上で、吸収体1が得られる。
【0034】
図5に、図4に示した各工程(S1〜S5)を具体的に実施するための吸収体製造装置100の構成を示す。吸収体製造装置100は、セルロースアセテートの長繊維を含むトウバンドからなる繊維材料を幅方向に分割する分割部と、前記分割部によって形成された第一繊維層10Aと第二繊維層11Aとを用い、粒状の高分子吸収材12を挟んだ状態で、第一繊維層10Aと第二繊維層11Aとを重ね合わせる積層部と、前記積層部で積層された第一繊維層10Aと第二繊維層11Aとをニードルパンチ処理することにより、第一繊維層10Aの繊維10aと第二繊維層11Aの繊維11aとを局所的な外力により絡ませ、高分子吸収材12に隣接する繊維10a、11aの絡み合いを促進させる絡み促進部と、前記絡み促進部を経た後に、第一繊維層10Aと第二繊維層11Aとを裁断することにより吸収体1を作製する裁断部とを備える。具体的に、吸収体製造装置100は、開繊装置100Aと、前記分割部としての回転カッター105と、第一開繊ジェット装置106と、第二開繊ジェット装置107と、高分子吸収材供給装置108と、ガイドローラ109a、109bを有する積層部109と、前記絡み促進部としてのニードルパンチ装置110と、前記裁断部としての回転カッター111とを備える。
【0035】
開繊装置100Aは、第一バンディングジェット装置101と、第二バンディングジェット装置102と、第一開繊ローラ対103と、第二開繊ローラ対104とを備える。積層部109は、ガイドローラ109a、109bを有する。ニードルパンチ装置110は、トウバンドTBの搬送方向に沿って配置されたフィードローラ対110aと、搬送ローラ対110bと、これらのローラ対110a、110bの間において、上面を水平にして配されたプレート110cと、返し(棘)を有する複数本のニードル(不図示)が下方に向けて配され且つプレート110cの上方に配置されたニードルボード110dとを備える。プレート110cの上面には、ニードルボード110dに配された各ニードルが挿通可能な複数の孔が形成されている。
【0036】
吸収体製造装置100を用いて吸収体1を製造する際には、まず、梱包箱Bからベール状のトウバンドTBを繰り出し、第一バンディングジェット装置101と第二バンディングジェット装置102とにトウバンドTBを順に通過させる。このとき、トウバンドTBに対してトウバンドTBの搬送方向の下流側に張力を掛けることで、トウバンドTBを開繊するとともに、トウバンドTBに含まれる繊維(複数本のフィラメント)を薄く広げることにより、トウバンドTBの幅を調整する。次に、第一開繊ローラ対103におけるローラ103a、103bの間と、第二開繊ローラ対104におけるローラ104a、104bの間とに、トウバンドTBを順に通過させる。このとき、第一開繊ローラ対103と第二開繊ローラ対104との回転速度を異ならせることで、搬送方向に沿ってトウバンドTBに一定の張力を掛けながら、トウバンドTBをさらに開繊し、その幅を調整する。以上のようにして開繊工程(S1)を実施する。
【0037】
次に、トウバンドTBを幅方向に分割することにより、第一繊維層10Aと第二繊維層11Aとをそれぞれ形成する繊維層形成工程(S2)を実施する。具体的には、一例として、回転カッター105によりトウバンドTBを幅方向に2つに分割する。この繊維層形成工程(S2)によって、第一繊維層10Aを構成する第一繊維シート10と、第二繊維層11Aを構成する第二繊維シート11とをそれぞれ形成する。尚、回転カッター105は必須ではなく、例えば、回転カッター105を用いずにトウバンドTBを幅方向に裂いて分割してもよい。
【0038】
次に、第一繊維シート10を第一開繊ジェット装置106に挿通し、且つ、第二繊維シート11を第二開繊ジェット装置107に挿通し、第一繊維シート10と第二繊維シート11とをトウバンドTBの搬送方向の下流側に搬送する。このとき、第一開繊ジェット装置106及び第二開繊ジェット装置107において、トウバンドTBの搬送方向の下流側に向けてエアをジェット状に流通させることにより、第一繊維シート10と、第二繊維シート11とに一定の張力を掛けつつ、繊維層形成工程(S2)を良好に行えるようにすることができる。
【0039】
次に、高分子吸収材供給装置108を用い、第一繊維シート10の上面に粒子状の高分子吸収材12を供給する。ガイドローラ109a、109bを用いて第二繊維シート11を第一繊維シート10側に案内し、高分子吸収材12を挟んだ状態で、第一繊維シート10と第二繊維シート11とを重ね合わせることにより積層工程(S3)を実施する。
【0040】
次に、ニードルパンチ装置110を用い、第一繊維シート10と第二繊維シート11とに対して外部よりニードルパンチ処理を行い、第一繊維層10Aの繊維10aと第二繊維層11Aの繊維11aとを局所的な外力により絡ませ、高分子吸収材12に隣接する繊維10a、11aの絡み合いを促進させる絡み促進工程(S4)を実施する。この絡み促進工程(S4)は、具体的には、重ね合わされた第一繊維シート10と第二繊維シート11とを、フィードローラ対110aにおける一対のローラ間と搬送ローラ対110bにおける一対のローラ間に通した状態で、プレート110cに対して近接と離間とを交互に繰り返すようにニードルボード110dを往復移動させ、ニードルボード110dにおける複数本のニードルを第一繊維シート10と第二繊維シート11に繰り返し穿刺することで実施する。このとき、複数本のニードルの各々に設けられた返しによって、第一繊維シート10と第二繊維シート11の各繊維10a、11aの絡み合いを促進する。これにより、第一繊維シート10と第二繊維シート11との対向部分の繊維10a、11aが互いに絡むように促進されて網状部13が形成される。そして、この網状部13の内部に高分子吸収材12が保持される。
【0041】
このように絡み促進工程(S4)を実施した後、第一繊維シート10と第二繊維シート11とを、回転カッター111を用いて所定のサイズに裁断して吸収体1を作製する裁断工程(S5)を実施する。以上で吸収体1が得られる。
【0042】
尚、吸収体製造装置100では、トウバンドTBを幅方向に分割して第一繊維シート10と第二繊維シート11とを作製したが、必ずしもトウバンドTBは分割しなくてもよい。この場合、例えば、トウバンドTBを幅方向の中央付近で折り返し、当該折り返したトウバンドTBの間に高分子吸収材12を挟むように、高分子吸収材12を配置してもよい。言い換えると、高分子吸収材12を挟むための繊維シートは、第一繊維シート10及び第二繊維シート11のように個別の2枚の繊維シートに限定されず、1枚の繊維シートでもよい。この場合、例えば上記したように、一枚の繊維シートを折り返し、当該折り返した繊維シートの間に高分子吸収材12を挟む工程を経ることで、吸収体を構成できる。このような場合でも、粒状の高分子吸収材12を挟んだ状態で、前記繊維シートで構成される第一繊維層と第二繊維層とを重ね合わせて絡み促進工程(S4)を実施できるので、実施形態1の吸収体が得られる。
【0043】
尚、図5に示した吸収体製造装置100と、上記した吸収体1の製造方法とは、あくまで一例であって、実施形態1は、このいずれにも限定されない。例えば、吸収体1の製造方法は、1本のトウバンドTBを用いた方法に限定されず、2本のトウバンドTBを用いた方法でもよい。一例として、2本のトウバンドTBを用いて第一繊維シート10と第二繊維シート11とを別個に形成することにより、1本のトウバンドTBを分割せずに第一繊維シート10と第二繊維シート11とを形成し、この第一繊維シート10と第二繊維シート11とを用いて吸収体1を製造してもよい。
【0044】
以下、本発明の実施形態2について、実施形態1との差異を中心に述べる。
【0045】
<実施形態2>
図6に、実施形態2に係る吸収体の製造ステップを示す。
【0046】
実施形態2は、積層工程を実施する前において、セルロースアセテートの短繊維をシート状に成形してなる繊維材料を用い、この繊維材料をニードルパンチ処理することにより、第一繊維層を構成する第一繊維シートと、第二繊維層を構成する第二繊維シートとをそれぞれ不織布として作製する。
【0047】
具体的に、実施形態2に係る吸収体を製造する際には、一例として、まず、捲縮されたセルロースアセテート繊維を30mm以上50mm以下程度の長さに切断し、複数本の短繊維を形成する。これにより、短繊維形成工程(P1)を実施する。
【0048】
次に、金網等からなる基台の表面に対し、複数本の短繊維を吹き付け、各々の短繊維を均一に均すことにより、シート状の繊維材料を得る。次に、当該シート状の繊維材料における多数本の短繊維をほぐした後、例えばニードルパンチ装置110を用いて複数本の短繊維を互いに絡ませることにより、前記繊維材料中に網目構造を形成する。このような処理を行うことで、第一繊維シート及び第二繊維シートを短繊維からなる不織布として作製する。これにより、第一繊維シートにより構成される第一繊維層と、第二繊維シートにより構成される第二繊維層とを形成する繊維層形成工程(P2)を実施する。
【0049】
次に、第一繊維シートの上面に粒子状の高分子吸収材を配置する。この粒状の高分子吸収材を挟んだ状態で、第一繊維層を構成する第一繊維シートと、第二繊維層を構成する第二繊維シートとを重ね合わせる積層工程(P3)を実施する。その後、例えばニードルパンチ装置110を用い、第一繊維シートと第二繊維シートとを、再度、外部よりニードルパンチ(NP)処理する。これにより、第一繊維層の繊維と第二繊維層の繊維とを局所的な外力により絡ませ、高分子吸収材に隣接する繊維の絡み合いを促進させる絡み促進工程(P4)を実施する。
【0050】
その後、第一繊維シート及び第二繊維シートを所定のサイズに裁断する裁断工程(P5)を実施することにより、実施形態2における吸収体が得られる。
【0051】
以上の製造方法を実施することによって、不織布としての第一繊維シート及び第二繊維シートに高分子吸収材が挟まれ、第一繊維層の繊維と、第二繊維層の繊維との絡みが促進されてなる吸収体が得られる。このような実施形態2の吸収体は、第一繊維シート及び第二繊維シートが不織布として構成されているので、ごわつきが少なくふんわりした触感と、吸水前後の形状維持性とに優れ、良好な装着感を得ることができる。また、当該吸収体は、実施形態1の吸収体1と同様に、網状部の内部において、複数本の繊維の間に高分子吸収材を保持できるため、割れやヨレを防止でき、且つ、優れた液拡散性を発揮できる。
【0052】
尚、繊維層形成工程(P2)において、短繊維を絡ませる方法としては、ニードルパンチ法に限定されず、その他、例えばケミカルボンド法、サーマルボンド法、ウォータージェット法等の公知のいずれかの方法であってもよい。このうち、ケミカルボンド法またはサーマルボンド法を採用した場合には、短繊維同士を絡ませた状態で強力に接着できるので、丈夫な第一繊維シートと第二繊維シートとが得られる。また、ニードルパンチ法またはウォータージェット法を採用した場合には、ボンド(接着剤)を用いない分、第一繊維シートと第二繊維シートとを軽量にし、且つ、その風合いを良好にすることができる。特に、ウォータージェット法を採用した場合には、低秤量で薄い第一繊維シートと第二繊維シートとを得ることができる。
【0053】
<評価試験>
以下、本発明の各態様の性能を確認する目的で作製した複数の実施例及び比較例の各吸収体の構成と、これらの複数の実施例及び比較例の各吸収体について実施した評価試験について述べる。
【0054】
当該試験に供する実施例1〜4及び比較例1〜3の各吸収体の構成を以下の通りとした。
【0055】
実施例1:吸収体製造装置100を用い、セルロースアセテートの長繊維からなるトウバンドを開繊し、この開繊したトウバンドにより第一繊維シート及び第二繊維シートを構成した。そして、粒子状の高分子吸収材(SAP)を第一繊維シート及び第二繊維シートの間に配置し、重ねた第一繊維シート及び第二繊維シートに絡み促進工程を実施した。この絡み促進工程は、高分子吸収材を挟んで重ね合わせた第一繊維シート及び第二繊維シートに対し、ニードルパンチ機(大和機工株式会社製「NL−380」)を用いてニードルパンチ処理することにより実施した。これにより、実施形態1の吸収体1を作製した。
【0056】
実施例2:セルロースアセテートの短繊維をカーディング機(大和機工株式会社製「SC−360DIR」)を用いてほぐした後、ニードルパンチ機(大和機工株式会社製「NL−380」)を用いてニードルパンチ処理した。これにより、第一繊維シート及び第二繊維シートを不織布として作製した。粒子状の高分子吸収材を第一繊維シート及び第二繊維シートの間に配置し、重ねた第一繊維シート及び第二繊維シートに絡み促進工程を実施した。この絡み促進工程は、高分子吸収材を挟んで重ね合わせた第一繊維シート及び第二繊維シートに対し、ニードルパンチ機(大和機工株式会社製「NL−380」)を用いて再度ニードルパンチ処理することにより実施した。これにより、実施形態2の吸収体を作製した。
【0057】
実施例3:レーヨンの短繊維を用い、実施例2と同様の手法に基づいて実施形態2の吸収体を作製した。
【0058】
実施例4:ポリプロピレンの短繊維を用い、実施例2と同様の手法に基づいて実施形態2の吸収体を作製した。
【0059】
比較例1:フラッフパルプのシートを用い、当該シートのパルプ繊維間に高分子吸収材を分散配置することで、吸収体を作製した。
【0060】
比較例2:セルロースアセテートの長繊維を含むトウバンドを開繊し、この開繊したトウバンドを用いて繊維シートを構成した。当該繊維シートの内部における繊維間に高分子吸収材を分散配置することで、吸収体を作製した。
【0061】
比較例3:絡み促進工程を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の手法に基づいて吸収体を作製した。
【0062】
実施例1〜4及び比較例1〜3の各吸収体は、サイズ及び厚みと高分子吸収材の使用量とが略同様となるように調整した。実施例1〜4及び比較例1〜3の各吸収体のサイズは、幅10cm且つ長さ30cmに設定した。
【0063】
尚、上記した各々のニードルパンチ処理を行う際は、ニードルパンチ機における処理対象物の搬送速度を5m/minに設定した。
【0064】
上記のように得られた各実施例と各比較例について、以下の(a)〜(k)に示す合計11項目の評価をそれぞれ行った。
【0065】
(a)吸収体を水平に配置した状態と、吸収体の両端を上方に曲げてU字状に配置した状態とで、吸収体に80mlの水を吸水させる際に要する時間を計測した。これにより、吸収体の液透過性を評価した。吸水時間が短いほど高評価とした。
【0066】
(b)吸収体の両端を上方に曲げてU字状に配置した状態で、吸収体の中央部に80mlの水を3回吸水させ、水が上方に拡散した距離を計測した。これにより、吸収体の吸上拡散性を評価した。水が上方に拡散した距離が長いほど高評価とした。
【0067】
(c)吸収体の上面を水平方向に対して45°傾斜させて配置した状態で、吸収体に80mlの水を滴下し、吸収体から漏れる水の量を計測した。これにより、吸収体の耐漏れ性を評価した。吸収体から漏れる水の量が少ないほど高評価とした。
【0068】
(d)吸収体を平面状に配置した状態において、吸収体に80mlの水を3回に分けて吸収させ、吸収体の表面の触感を検査した。これにより、吸収体の耐リウェット(吸収体に吸収された水が吸収体の表面に再度染み出る特性。リウェットバックとも称する。)を評価した。吸収体の表面に触れた際の濡れた感覚が少ないほど高評価とした。
【0069】
(e)吸収体の両端を上方に曲げてU字状に配置した状態において、吸収体に80mlの水を3回吸収させ、耐リウェット性を検査した。これにより、吸収体の中央部における吸収体の耐液溜り性を評価した。吸収体の中央部の表面に触れた際に濡れた感覚が少ないほど高評価とした。
【0070】
(f)吸収体に80mlの水を吸収させ、吸収体の表面におけるべたつきを検査した。これにより、吸収体の耐濡れ性を評価した。吸収体に触れた際にべたついた感覚が少ないほど高評価とした。
【0071】
(g)吸収体を平面状に配置した状態において、吸収体に80mlの水を3回吸収させ、厚みの変化を検査した。これにより、吸収体の吸水後の厚み維持性を評価した。吸収体の吸水前後の厚み変化が小さいほど高評価とした。
【0072】
(h)吸収体を水平に配置した状態において、吸収体に80mlの水を3回吸収させ、形状の変化を検査した。これにより、吸収体の吸水後の形状維持性を評価した。吸収体の吸水前後の形態変化が小さいほど高評価とした。
【0073】
(i)吸収体を地上20mmの高さから5回繰り返し落下し、吸収体内部からの高分子吸収材の脱落がないかを検査した。これにより、高分子吸収材の保持性(以下、「SAP保持性」と称する。)を評価した。高分子吸収材の脱落量が少ないほど高評価とした。
【0074】
(j)吸収体に手で触れることにより、吸収体の吸水前の形状維持性について評価した。手で触れる前後の吸収体の形態変化が少ないほど高評価とした。
【0075】
(k)吸収体に手で触れることにより、吸収体の触感(ごわつき)について評価した。吸収体の触感(ごわつき)が少ないほど高評価とした。
【0076】
上記(a)〜(k)の各項目の評価は、4点を最高得点として採点することで行い、全項目の評価点数を合計して総合評価を行った。実施例1〜4及び比較例1〜3の各吸収体の概要と各評価結果と各総合評価とを表1に示す。表1では、(a)〜(e)と(g)との各項目における計測値を、比較例1の計測値を100%とした場合の相対値として記載した。評価点数は、4点をA、3点をB、2点をC、1点をDとしてそれぞれ表記した。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、実施例1及び2は、少なくとも吸上拡散性と、耐リウェット性と、耐液溜まり性と、耐漏れ性と、厚み維持性とを含む幅広い評価項目において、比較例2及び3よりも優れた評価結果となった。実施例3は、少なくとも吸上拡散性と、耐漏れ性と、耐液溜まり性と、厚み維持性と、吸水後形状維持性と、SAP保持性と、吸水前形状維持性とを含む幅広い評価項目において、比較例2及び3よりも優れた評価結果となった。実施例3は、吸水前後における形状維持性に特に優れ、吸水しても厚みがそれほど増えないことが分かった。また、実施例1〜3のSAP保持性は、いずれも比較例2及び3と比較して良好であることが分かった。
【0079】
実施例4は、少なくとも液透過性と、耐リウェット性と、厚み維持性と、SAP保持性と、吸水前形状維持性とを含む評価項目において、全ての比較例1〜3と比較して優れた評価結果となった。従って、実施例4は、これらの特性が要求される用途においては有用な吸収体であると言える。
【0080】
上記(a)〜(k)の全11項目の評価点数を合計して行った総合評価において、実施例1〜4は、いずれも比較例1〜3に比べて高い評価結果となった。この結果から、実施例1〜4は、吸水前後及び吸水中の吸収体に求められる多くの特性をバランス良く備えていると言える。
【0081】
比較例1は、液透過性と、吸上拡散性とを含む各評価項目においては、実施例1〜4と同程度、或いはそれ以上の良好な評価結果となった。このような結果が得られた理由として、例えば、吸水性に富むパルプの特性が反映されたことと、パルプの繊維使用量が実施例1〜4の繊維シートの繊維使用量に比べて倍以上も含まれているため、パルプが豊富に吸水したこととが考えられる。しかしながら、比較例1は、繊維シート自体が吸水性を有し、且つ、強度も比較的弱いので、耐濡れ性と、耐漏れ性と、耐リウェット性と、吸水後形態維持特性と、厚み維持性と、吸水前形状維持性と、触感(ごわつき)との各特性を含む各評価項目において、低い評価結果となった。また、比較例2及び3では、吸上拡散性と、耐濡れ性と、耐リウェット性と、耐液溜まり性と、厚み維持性と、吸水後形状維持性とを含む各評価項目において、低い評価結果となった。従って、仮にユーザが比較例1〜3のいずれかを実際に使用した場合には、装着感が優れず、且つ、吸水後の漏れが発生しうることが予想される。このため、比較例1〜3は、いずれも吸収体として要求される基本的な特性が不足していると言える。
【0082】
以上のように、表1に示した評価試験の範囲において、実施例1〜4は、いずれも比較例1〜3に比べて良好な特性を有していることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明の各態様によれば、吸収体において、従来に比べて良好な性能を発揮させることができる優れた効果を有する。従って、例えば、この効果の意義を発揮できる吸収体の製造方法及び吸収体製造装置に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0084】
TB トウバンド
1 吸収体
10a、11a 繊維
10A 第一繊維層
11A 第二繊維層
12 高分子吸収材(SAP)
100 吸収体製造装置
100B 積層部
110 ニードルパンチ装置(絡み促進部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6