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特許6367009ポジトロン放射断層撮影装置、調整方法およびPETスキャナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367009
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ポジトロン放射断層撮影装置、調整方法およびPETスキャナ
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20180723BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G01T1/161 A
   G01T1/17 E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-115261(P2014-115261)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-238397(P2014-238397A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2017年4月28日
(31)【優先権主張番号】13/913,094
(32)【優先日】2013年6月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・マッゴーワン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・チャン・ワン
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0269513(US,A1)
【文献】 特開2006−105601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)スキャナにより実行されるスキャンの間に前記PETスキャナの検出器の現在温度を取得し、前記現在温度に基づき、前記スキャンの間に前記PETスキャナで用いられるエネルギーウインドウの位置を調整する制御部を備えるポジトロン放射断層撮影装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記現在温度が先に記録された前記検出器の温度と異なるか否かを判定し、前記現在温度が前記先に記録された温度と異なる場合、前記スキャンの間に前記PETスキャナで用いられる前記エネルギーウインドウの位置を調整する、請求項1に記載のポジトロン放射断層撮影装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記スキャンの間の所定時間に前記現在温度を取得し、前記取得した現在温度に基づき、各所定時間に前記エネルギーウインドウの位置を調整する、請求項1又は2に記載のポジトロン放射断層撮影装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出器に対応して配設されたセンサから前記現在温度を取得し、
前記先に記録された温度は、前記スキャンの前に前記センサから取得され記録される、請求項2に記載のポジトロン放射断層撮影装置。
【請求項5】
メモリをさらに備え、
前記制御部は、前記メモリに格納された既定の表を用いて、前記現在温度に対応付けられた前記エネルギーウインドウの位置を調整する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポジトロン放射断層撮影装置。
【請求項6】
ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)スキャナにより実行されるスキャンの間に、データ取得パラメータを調整する調整方法であって、
前記スキャンの間に前記PETスキャナの検出器の現在温度を取得するステップと、
前記現在温度に基づき、前記スキャンの間に前記PETスキャナで用いられるエネルギーウインドウの位置を調整するステップと
を含む調整方法。
【請求項7】
ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)スキャナであって、
温度を測定するよう構成されたセンサをそれぞれ含む複数の検出器と、
前記PETスキャナのスキャンの間に前記複数の検出器の現在温度を取得し、前記現在温度に基づき、前記スキャンの間に前記PETスキャナで用いられるエネルギーウインドウの位置を調整する制御部と
を備えるPETスキャナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ポジトロン放射断層撮影装置、調整方法およびPETスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)システムの校正係数は、温度の関数である。校正係数はシステムタイミングおよびエネルギー性能に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−514952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、多くの場合、校正係数は特定の雰囲気温度で測定されるため、PETシステムの性能は、全ての温度範囲において必ずしも最適化されていない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、広い温度範囲にわたりPET画像の品質を向上することができるポジトロン放射断層撮影装置、調整方法およびPETスキャナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のポジトロン放射断層撮影装置は、ポジトロン放射断層撮影(PET)スキャナにより実行されるスキャンの間にPETスキャナの検出器の現在温度を取得し、現在温度に基づき、スキャンの間にPETスキャナで用いられるエネルギーウインドウの位置を調整する制御部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)システムを示す図である。
図2】開示する実施形態の方法を示す図である。
図3】開示する実施形態による温度補償用のシステムを示す図である。
図4A】温度に応じたエネルギーウインドウを説明する説明図である。
図4B】温度に応じたエネルギーウインドウを説明する説明図である。
図5】開示する実施形態を実施してもよいコンピュータシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明を読み取り、添付図面を考察すれば、開示内容をよりよく理解できるであろう。添付図面は、単に実施形態を限定しない例として示すものである。
【0009】
本明細書に記載の実施形態は、ポジトロン放射断層撮影校正に関する。
【0010】
開示する実施形態では、ポジトロン放射断層撮影スキャナにより実行されるスキャンの間に、データ取得パラメータを調整する装置について述べる。装置は、スキャンの間にPETスキャナの検出器の現在温度を取得し、現在温度に基づき、スキャンの間にPETスキャナで用いられるデータ取得パラメータを調整するよう構成された制御部を備える。
【0011】
一実施形態では、制御部は、現在温度が先に記録された検出器の温度と異なるか否かを判定し、現在温度が先に記録された温度と異なる場合、スキャンの間にPETスキャナで用いられるデータ取得パラメータを調整するようさらに構成される。一実施形態では、制御部は、スキャンの間の所定時間に現在温度を取得し、取得した現在温度に基づき、各所定時間にデータ取得パラメータを調整するようさらに構成される。
【0012】
一実施形態では、制御部は、検出器に対応して配設されたセンサから現在温度を取得するよう構成され、先に記録された温度は、スキャンの前にセンサから取得され記録される。
【0013】
一実施形態では、装置はメモリをさらに備え、制御部は、メモリに格納された既定の表を用いて、現在温度に対応付けられたデータ取得パラメータを調整するようさらに構成される。一実施形態では、制御部は、エネルギーウインドウを規定するパラメータを含むデータ取得パラメータを調整するよう構成される。
【0014】
また開示する実施形態では、PETスキャナにより実行されるスキャンの間にデータ取得パラメータを調整する方法についても述べる。方法は、スキャンの間にPETスキャナの検出器の現在温度を取得するステップと、現在温度に基づき、スキャンの間にPETスキャナで用いられるデータ取得パラメータを調整するステップとを含む。
【0015】
一実施形態では、方法は、現在温度が先に記録された検出器の温度と異なるか否かを判定するステップと、現在温度が先に記録された温度と異なる場合、スキャンの間にPETスキャナで用いられるデータ取得パラメータを調整するステップとをさらに含む。
【0016】
一実施形態では、取得ステップは、スキャンの間の所定時間に現在温度を取得するステップを含み、調整ステップは、取得した現在温度に基づき、各所定時間にデータ取得パラメータを調整するステップを含む。
【0017】
一実施形態では、方法は、先に記録された温度をスキャンの前に記録するステップをさらに含み、取得ステップは、検出器に対応して配設されたセンサから現在温度を取得するステップを含む。一実施形態では、調整ステップは、メモリに格納された既定の表を用いて、現在温度に対応付けられたデータ取得パラメータを調整するステップを含む。一実施形態では、調整ステップは、エネルギーウインドウを規定するパラメータを含むデータ取得パラメータを調整するステップを含む。
【0018】
また開示する実施形態では、コンピュータ実行可能命令を含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、命令は、コンピュータにより実行されると、PETスキャナにより実行されるスキャンの間に、データ取得パラメータを調整する方法をコンピュータに実行させる、コンピュータ可読記憶媒体について述べる。方法は、スキャンの間にPETスキャナの検出器の現在温度を取得するステップと、現在温度に基づき、スキャンの間にPETスキャナで用いられるデータ取得パラメータを調整するステップとを含む。
【0019】
一実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、現在温度が先に記録された検出器の温度と異なるか否かを判定するステップと、現在温度が先に記録された温度と異なる場合、スキャンの間にPETスキャナで用いられるデータ取得パラメータを調整するステップとをさらに含む。
【0020】
一実施形態では、取得ステップは、スキャンの間の所定時間に現在温度を取得するステップを含み、調整ステップは、取得した現在温度に基づき、各所定時間にデータ取得パラメータを調整するステップを含む。一実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、先に記録された温度をスキャンの前に記録するステップをさらに含み、取得ステップは、検出器に対応して配設されたセンサから現在温度を取得するステップを含む。
【0021】
一実施形態では、調整ステップは、メモリに格納された既定の表を用いて、現在温度に対応付けられたデータ取得パラメータを調整するステップを含む。一実施形態では、調整ステップは、エネルギーウインドウを規定するパラメータを含むデータ取得パラメータを調整するステップを含む。
【0022】
また開示する実施形態では、PETスキャナにより実行されるスキャンの間にデータ取得パラメータを調整するPETスキャナについても述べる。PETスキャナは、温度を測定するよう構成されたセンサをそれぞれ含む複数の検出器と、スキャンの間に複数の検出器の検出器現在温度を取得し、現在温度に基づき、スキャンの間にPETスキャナで用いられるデータ取得パラメータを調整するよう構成された制御部とを備える。
【0023】
一実施形態では、PETスキャナはメモリをさらに備え、制御部は、メモリに格納された既定の表を用いて、現在温度に対応付けられたデータ取得パラメータを調整するようさらに構成される。
【0024】
本実施形態は、より広い温度範囲でタイミングおよびエネルギー分解能を向上させることによるPET画像品質の向上に関する。すなわち、本実施形態により、特定の雰囲気温度に対してのみ最適化しているのとは対照的に、全ての温度範囲にわたり性能が向上する。
【0025】
PETにおいて、温度が上昇すると計数落としやタイミング劣化が生じることがある。しかし、光電ピーク位置に対する温度の影響は、データ取得の際に把握し状況確認することができる。取得データについて温度センサはポーリングされ、スキャンの間に温度が変動する場合、変化の状況が確認される。
【0026】
製造におけるシステム校正および/またはシステム試験の間、温度に対する光電ピーク位置を、低温、公称温度、高温の雰囲気温度において測定することができる。別の実施形態では、測定結果は、あらゆる温度において取得できる。次に、前述のデータ(例えば、様々な温度で用いるためのパラメータ値)を含む校正表が作成される。次に、このデータを用いて、PETシステムにおいて用いられる様々なパラメータが動的に調整される。なお、一実施形態では、パラメータはエネルギーウインドウを規定するパラメータを含む。一実施形態では、校正表は、光電子増倍管(Photomultiplier Tube:PMT)用のゲイン、結晶マップ、結晶依存的なエネルギー係数、結晶依存的なタイミング係数、等を含む。一実施形態では、校正表は校正の間に作成される。
【0027】
温度データは、PETスキャンが実行されている間に取得される。スキャンの間、温度が変化するにつれ、温度変化の状況をスキャンの間にリアルタイムで確認することができる。校正表のデータ点間を補間することにより、タイミングおよび/またはエネルギー分解能を向上させることができる。
【0028】
図面を参照すると、図1は、環状の検出器20を備えるPETシステム10を示す。検出器20のそれぞれは、各検出器20および検出器20に対応して配設された他の電子機器の温度を計測するよう構成された温度センサ30を含む。また図1には、スキャンのデータを取得するよう構成された複数のデータ取得ユニット40が示されている。
【0029】
図2に、開示する実施形態の方法を示す。図2のプロセスに見られるように、スキャン前とスキャンの間の両方で温度が測定される。図2のプロセスは、温度センサ30が検出器20および対応する電子機器の温度を測定するステップ100から始まる。ステップ100は、システム校正および/またはシステム試験の間、およびデータ取得の前(すなわち、実際のスキャンの前)に実行してもよい。なお、上述のように、ステップ100を実行する前に、様々な温度、例えば、低温、公称温度、および高温の雰囲気温度で温度を測定することができ、また校正表を作成してもよい。
【0030】
ステップ110において、測定された温度に対する(上記のように作成された)対応校正表が読み込まれる。対応校正表により、様々な温度または温度範囲が、特定のパラメータ、数値、または校正係数に対応付けられる。
【0031】
ステップ120において、PETシステムによるデータの取得(すなわち、スキャン)が始まる。なお、ステップ120におけるデータの取得は、ステップ100で測定された温度に対応付けされた特定のパラメータ、数値、または校正係数を用いて、実行される。
【0032】
データ取得の間、ステップ130において検出器および電子機器の温度が、温度センサ30により測定される。
【0033】
次に、ステップ140において、温度が先に測定した温度から変化したか否かを判定するための比較を行う。なお、1回目のステップ130およびステップ140では、先に測定した温度はステップ100で測定した温度に相当する。
【0034】
ステップ140で、温度が変化した(YES)と判定された場合、プロセスは、測定温度に対する対応校正表を取得するステップ150に進む。温度変化に対する(すなわち、「YES」と判定するための)閾値は、設定変更可能であり、また特定の構成に基づいて変えることができる。次に、新たな、変化した温度に対応付けられて更新されたパラメータ、数値、または校正係数が用いられ、プロセスは、PETシステムが更新されたパラメータ、数値、または校正係数を用いてデータ取得を継続する、ステップ160に進む。このように、スキャンの間に温度が変化しても、スキャンが行われているときにリアルタイムで、温度変化を補償することができる。
【0035】
ステップ140で、温度が変化しなかった(NO)と判定された場合、プロセスは、PETシステムがデータ取得を継続するステップ160に直接進む。なお、この場合は温度変化がないため、様々なパラメータ、数値、または校正係数を用いる必要はない。
【0036】
ステップ160の後、プロセスは温度を再度測定するステップ130に戻る。一実施形態では、温度の測定は、データ取得全体を通して特定の間隔で行われる。この間隔は、設定変更可能であり、また特定の構成に基づいて変えることができる。プロセスはスキャンが完了するまで継続される。
【0037】
一実施形態では、プロセスにおいて、スキャンの間の所定時間に現在温度を取得し、取得した現在温度に基づいて各所定時間にパラメータを調整してもよい。すなわち、本実施形態では、現在温度が先に記録された温度と異なるか否かの判定(例えば、図2のステップ140を参照)を行う必要がない。代わりに、プロセスにおいて、スキャン全体を通して所定時間に検出器の温度を継続して取得し、また取得した温度に基づいて各所定時間にパラメータを調整する。このプロセスはスキャンが完了するまで実行される。
【0038】
図3に、開示する実施形態による温度補償用のシステムを示す。検出器20は、例えば、(図1でも示したように)温度センサ30を含む。一実施形態では、要素20、30、40、50、および60は、図1のシステム10等のPETスキャナシステムの一部である。一実施形態では、制御部50は、データ取得ユニット40の一部である。
【0039】
図3に見られるように、制御部50は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサとして、または専用回路として実装することができ、検出器20に含まれるセンサ30から温度測定値を取得する。次に、制御部50は、取得した温度に対応するメモリ60内のデータ取得パラメータを調べ、更新されたデータ取得パラメータをデータ取得ユニット40に送る。更新されたパラメータを用いてスキャンが継続される。スキャンが完了すると、データ取得ユニット40は、取得データを、取得したPET事象データに基づいて画像の再構成を行う再構成プロセッサ(図示せず)に送る。
【0040】
なお、上で開示した実施形態では1つの検出器に関して説明しているが、これらの実施形態を複数の検出器(または、図1のPETシステム10における検出器の全て)に適用し、複数の検出器のために温度を測定して各検出器のデータ取得パラメータを更新するようにしてもよい。一実施形態では、図3に関して、制御部50は複数の検出器20のそれぞれに含まれるセンサから温度を取得する。このように、一実施形態では、パラメータは個々の検出器に合わせて調整される。
【0041】
上述のように、本実施形態により、特定の雰囲気温度に対してのみ最適化しているのとは対照的に、全ての温度範囲にわたり性能が向上する。このため、例えば、エネルギーウインドウ位置は温度に依存し、これは取得される計数が増すことを意味する。さらに、取得される計数が増すことに伴い、全体のスキャン時間が短縮され得る。
【0042】
図4A図4Bは、温度に応じたエネルギーウインドウを説明する説明図である。具体的には、図4A図4Bでは、検出器において異なる温度(T1、T2)ごとに、エネルギー[eV]と取得された計数との関係をグラフで表している。例えば、図4Aに示すように、検出器の温度がT1とT2とで異なる場合には、ポジトロンの対消滅イベントにより生成されるガンマ線(511keV)を計数した際のピークが異なる位置に現れることがある。同様に、図4Bに示すように、検出器の温度がT1とT2とで異なる場合には、急峻にピークが生じる形状と、なだらかにピークが生じる形状とで、T1及びT2におけるグラフの形状が互い異なることがある。したがって、本実施形態では、このような検出器の温度依存性に対応するため、各検出器における温度T1、T2に基づいてエネルギーウインドウW1、W2の位置、幅を規定するように、各検出器のデータ取得パラメータを更新する。これにより、ポジトロンの対消滅イベントの計数などにおける、検出器の温度による影響を抑えることができる。
【0043】
開示する実施形態の二次的な利点は、散乱除去の向上であり、これもエネルギーウインドウ位置に依存する。エネルギーウインドウの配置の精度が高いと(例えば、425keV〜650keV)、タイミングウォーク補正が向上し、これによりタイミング分解能が向上する。
【0044】
上記の機能のそれぞれを、1つ以上の処理回路により実装してもよい。さらにまた、データ取得ユニット40を、1つ以上の処理回路により構築してもよい。処理回路は、プロセッサが電気回路を含むように、プログラム式プロセッサ(例えば、プロセッサ1203)を含む。また処理回路は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)や列挙した機能を実行するよう配置された従来の回路構成部品等の装置も含む。
【0045】
さらに、開示する実施形態において述べたプロセスは、PETシステム10またはコンピュータシステム(またはプログラマブル論理デバイス)によって実行することができる。図5に、開示する実施形態を取り入れてもよいコンピュータシステム1201を示す。コンピュータシステム1201は、上記のプロセス(例えば、図2について述べたプロセス)を実行し、PETシステム10と通信してもよい。一実施形態では、図5のシステムの種々の構成部品は、図1のPETシステム10に含まれてもよい。一実施形態では、図5のコンピュータシステム1201は、図3の要素50または図3の複数の要素に相当してもよい。
【0046】
コンピュータシステム1201は、バス1202に結合されたディスク制御部1206を備え、磁気ハードディスク1207やリムーバブルメディアドライブ1208(例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、読み出し専用コンパクトディスクドライブ、読み出し/書き込みコンパクトディスクドライブ、コンパクトディスクジュークボックス、テープドライブ、およびリムーバブル光磁気ドライブ)等の情報および命令を格納する1つ以上の記憶装置を制御する。記憶装置は、適切なデバイスインタフェース(例えば、小型コンピュータシステムインタフェース(Small Computer System Interface:SCSI)、統合デバイスエレクトロニクス(Integrated Device Electronics:IDE)、拡張IDE(Enhanced-IDE:E−IDE)、直接メモリアクセス(Direct Memory Access:DMA)、またはウルトラDMA)を使用して、コンピュータシステム1201に追加されてもよい。
【0047】
またコンピュータシステム1201は、専用論理デバイス(例えば、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))または構成可能論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))を備えてもよい。
【0048】
またコンピュータシステム1201は、コンピュータユーザに情報を表示するディスプレイ1210を制御する、バス1202に結合されたディスプレイ制御部1209を備えてもよい。コンピュータシステムは、キーボード1211やポインティングデバイス1212等の、コンピュータユーザと対話するとともにプロセッサ1203に情報を提供するための入力装置を備える。ポインティングデバイス1212は、例えば、プロセッサ1203に指示情報やコマンド選択を伝達しかつディスプレイ1210上のカーソルの動きを制御するためのマウス、トラックボール、タッチスクリーンセンサに対する指、またはポインティングスティックであってよい。
【0049】
プロセッサ1203は、メインメモリ1204等のメモリに含まれる1つ以上の命令からなる1つ以上のシーケンスを実行する。そのような命令は、ハードディスク1207やリムーバブルメディアドライブ1208等の、他のコンピュータ可読媒体からメインメモリ1204に読み込まれてもよい。また、メインメモリ1204に含まれる命令シーケンスを実行するために、マルチプロセッシング構成の1つ以上のプロセッサを使用してもよい。別の実施形態では、ソフトウェア命令の代わりまたはソフトウェア命令との組み合わせで、ハードワイヤード回路を用いてもよい。したがって、実施形態は、ハードウェア回路構成およびソフトウェアのいかなる特定の組み合わせにも限定されない。
【0050】
上述したように、コンピュータシステム1201は、本開示の教示に従ってプログラムされた命令を保持し、データ構造、表、記録、または本明細書に記載の他のデータを収容するための少なくとも1つコンピュータ可読媒体またはメモリを備える。コンピュータ可読媒体の例として、コンパクトディスク、ハードディスク、フロッピーディスク、テープ、光磁気ディスク、PROM(消去可能PROM(Erasable PROM:EPROM)、電気的消去可能PROM(Electrically Erasable PROM:EEPROM)、フラッシュEPROM)、ダイナミックRAM(Dynamic RAM:DRAM)、スタティックRAM(Static RAM:SRAM)、シンクロナスDRAM(Synchronous DRAM:SDRAM)、または任意の他の磁気媒体、コンパクトディスク(例えば、CD−ROM)、または任意の他の光媒体、パンチカード、紙テープ、または穿孔パターンを持つ他の物理媒体がある。
【0051】
コンピュータ可読媒体のいずれか1つまたはその組み合わせに格納されるものとして、本開示は、コンピュータシステム1201を制御し、本発明を実現するための1つまたは複数のデバイスを作動させ、コンピュータシステム1201が人間ユーザと対話できるようにするための、ソフトウェアを含む。そのようなソフトウェアは、デバイスドライバ、オペレーテイングシステム、およびアプリケーションソフトウェアを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。そのようなコンピュータ可読媒体は、本発明を実現する際に実行される処理の全部または一部(処理が分散されている場合)を実行するための、本開示のコンピュータプログラム製品をさらに含む。
【0052】
本実施形態のコンピュータコードデバイスは、スクリプ卜、解釈可能なプログラム、ダイナミックリンクライブラリ(Dynamic Link Library:DLL)、Java(登録商標)クラス、および完全な実行可能プログラムを含むが、これらに限定されるものではなく、任意の解釈可能なまたは実行可能なコード機構であってもよい。さらに、性能、信頼性、および/またはコストを改善するために、本実施形態の処理の部分を分散させてもよい。
【0053】
本明細書で使用する用語「コンピュータ可読媒体」は、プロセッサ1203に命令を与えて実行することに関与する任意の非一時的な媒体を指す。コンピュータ可読媒体は、不揮発性媒体または揮発性媒体を含むが、これらに限定されるものではなく、多くの形態を取ることができる。例えば、不揮発性媒体は、ハードディスク1207またはリムーバブルメディアドライブ1208等の光学ディスク、磁気ディスク、および光磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メインメモリ1204等のダイナミックメモリを含む。一方、伝送媒体は、バス1202を形成する配線を含む同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含む。また伝送媒体は、電波通信および赤外線通信の間に生成される波等の、音波または光波の形態をとってもよい。
【0054】
実行用のプロセッサ1203に対する1つ以上の命令からなる1つ以上のシーケンスを実行する際に、様々な形態のコンピュータ可読媒体を用いてもよい。例えば、命令を、最初に、リモートコンピュータの磁気ディスクに収容してもよい。リモートコンピュータは、本開示の全部または一部を実行するための命令をダイナミックメモリにリモー卜でロードし、この命令をモデムを使って電話線で送信することができる。コンピュータシステム1201のローカルのモデムは、電話線でデータを受信し、データをバス1202に乗せてもよい。バス1202は、データをメインメモリ1204へ伝達し、そこからプロセッサ1203は命令を取り出して実行する。メインメモリ1204が受信した命令は、必要に応じて、プロセッサ1203が実行する前か後かにハードディスク1207またはリムーバブルメディアドライブ1208に格納してもよい。
【0055】
またコンピュータシステム1201は、バス1202に結合された通信インタフェース1213も備える。通信インタフェース1213は、例えば、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)1215、またはインターネット等の別の通信ネットワーク1216に接続されるネットワークリンク1214につながる双方向データ通信を可能にする。例えば、通信インタフェース1213は、任意のパケット交換LANに取り付けるネットワークインタフェースカードであってもよい。他の例として、通信インタフェース1213は、総合サービスデジタル網(Integrated Services Digital Network:ISDN)カードであってもよい。また無線リンクが実装されてもよい。そのような実施形態のいずれにおいても、通信インタフェース1213は、様々な種類の情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号を送受信する。
【0056】
ネットワークリンク1214は、一般的に、1つ以上のネットワークを介して他のデータデバイスへのデータ通信を可能にする。例えば、ネットワークリンク1214は、ローカルネットワーク1215(例えば、LAN)を通じて、または通信ネットワーク1216を介して通信サービスを提供するサービスプロバイダによって操作される機器を通じて、別のコンピュータに接続できるようにしてもよい。ローカルネットワーク1214および通信ネットワーク1216は、例えば、デジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号、および関連する物理層(例えば、カテゴリ5ケーブル、同軸ケーブル、光ファイバなど)を使用する。様々なネットワークを介した信号、およびコンピュータシステム1210との間でデジタルデータをやりとりする通信インタフェース1213を介したネットワークリンク1214上の信号は、ベースバンド信号または搬送波ベースの信号で実現されてもよい。ベースバンド信号は、デジタルデータビットの流れを表す非変調電気パルスとしてデジタルデータを伝達する。ここで、用語「ビット」は、記号を意味するように広く解釈するべきであり、各記号は、少なくとも1つ以上の情報ビットを伝達する。またデジタルデータを用いて、導電媒質上を伝搬されるかあるいは伝搬媒質を介して電磁波として伝送される振幅偏移変調信号、位相偏移変調信号、および/または周波数偏移変調信号等で、搬送波を変調してもよい。このように、デジタルデータは、「有線の」通信チャネルを通して非変調のベースバンドデータとして送信されてもよく、かつ/または、搬送波を変調することによりベースバンドとは異なる所定の周波数帯の範囲内で送信されてもよい。コンピュータシステム1201は、ネットワーク1215および1216、ネットワークリンク1214、および通信インタフェース1213を介して、プログラムコードを含むデータを送受信することができる。さらに、ネットワークリンク1214は、LAN1215を介して、パーソナル携帯情報機器(Personal Digital Assistant:PDA)、ラップトップコンピュータ、または携帯電話等の携帯機器1217に接続できるようにしてもよい。
【0057】
以上、説明したとおり本実施形態によれば、広い温度範囲にわたりPET画像の品質を向上することができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5