(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面はあくまで模式的なものであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る滅菌ドレープの構成および使用態様を示す図である。同図に示す滅菌ドレープ1は、被観察体の微細構造を拡大して撮像する顕微鏡としての機能を有する医療用観察装置(以下、観察装置という)2を被覆するように被せられ、観察装置2の表面の滅菌状態を保持する。滅菌ドレープ1の本体は、ビニール等の材料を用いて構成され、観察装置2の形状に適合する袋状の異形形状を有する。
【0015】
図1は、術者201が患者202の手術を行っている状況を示している。
図1において、表示装置3は、観察装置2が撮像した患者202の術部の拡大画像を表示している。術者201は、表示装置3が表示する患者202の術部の拡大画像を見ながら手術を行っている。
【0016】
観察装置2は、床面上を移動可能なベース部4と、2つのアーム部および該2つのアーム部の一方を他方に対して回動可能に連結する関節部からなる組を複数有し、ベース部4に支持される支持部5と、支持部5の先端に設けられて被観察体の微小部位を拡大して撮像する円柱状の顕微鏡部6と、を備える。
【0017】
図2は、観察装置2の先端部に装着される滅菌ドレープ1の要部の構成ならびに観察装置2の先端部における支持部5および顕微鏡部6の構成を示す拡大斜視図である。
【0018】
まず、支持部5の先端部の構成を説明する。支持部5は、先端側で顕微鏡部6を回動可能に支持する第1関節部51と、第1関節部51に固定され、第1関節部51の側面から延びる第1アーム部52と、先端側で第1アーム部52を回動可能に保持する第2関節部53と、先端部が第2関節部53に固定される第2アーム部54とを有する。
【0019】
第1関節部51は円筒状をなし、高さ方向の中心軸である第1軸O
1のまわりに回動可能に顕微鏡部6を保持する。
第1アーム部52は、第1関節部51の側面から第1軸O
1と直交する方向に延びる形状をなす。
第2関節部53は円筒状をなし、高さ方向の中心軸であり、かつ第1軸O
1と直交する軸である第2軸O
2のまわりに回動可能に第1アーム部52を保持する。
第2アーム部54は、第2軸O
2と直交する方向に延びる形状をなす。
【0020】
第2アーム部54の基端側からベース部4に至る部分には、複数の関節部およびアーム部が設けられている(
図1を参照)。なお、支持部5は、2つのアーム部および該2つのアーム部の一方を他方に対して回動可能に連結する関節部からなる組を少なくとも一組有していればよい。このため、第2アーム部54の基端側からベース部4に至る部分の構成は、適宜変更することが可能である。
【0021】
第1関節部51および第2関節部53は、顕微鏡部6および第1アーム部52の回動をそれぞれ禁止する電磁ブレーキを有する。各電磁ブレーキは、顕微鏡部6に設けられるアーム操作スイッチ63(後述)が押下された状態で解除され、顕微鏡部6および第1アーム部52の回動が許容される。なお、電磁ブレーキの代わりにエアブレーキを適用してもよい。
【0022】
支持部5には、複数のケーブルを収容可能な中空部が形成されている。このため、観察装置2の外部にケーブルが露出することなく、ケーブルに人や物が引っかかってしまうのを防止することができる。また、複数のケーブルを本体外部で引き回すよりも小型化することができ、術者201の視界の妨げにもならない。
【0023】
次に、顕微鏡部6の構成を説明する。顕微鏡部6は、円筒状をなす筒状部61と、筒状部61の中空部に設けられ、被観察体の像を拡大して撮像する撮像部62と、第1関節部51および第2関節部53における電磁ブレーキを解除して各関節部の回動を許容する操作入力を受け付けるアーム操作スイッチ63と、撮像部62における拡大倍率および被観察体までの焦点距離を変更可能な十字レバー64と、直方体状をなして筒状部61から該筒状部61の径方向へ突出し、主面(外周面)にアーム操作スイッチ63および十字レバー64が設けられるとともに、滅菌ドレープ1の所定部位を固定して取り付ける固定部65と、を有する。
【0024】
筒状部61は、第1関節部51よりも径が小さい円筒状をなしており、下端部の開口面には、撮像部62を保護するカバーガラスが設けられている(図示せず)。なお、筒状部61の形状は円筒状に限られるわけではなく、多角筒状をなしていてもよい。
【0025】
撮像部62は、光軸が第1軸O
1と一致するようにそれぞれ配置される複数のレンズを有し、被観察体からの光を集光して結像する光学系621と、光学系621が集光した光を受光して光電変換することによって撮像信号を生成する撮像素子622とを有する。
【0026】
光学系621は、複数のレンズを有し、十字レバー64の操作に応じて被観察体像の拡大倍率および被観察体までの焦点距離を変更可能である。
【0027】
撮像素子622は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いて構成される。撮像素子622が出力する撮像信号は、支持部5の内部空間に設けられる伝送ケーブルを介して表示用の画像データを生成する画像生成装置(図示せず)へ伝送される。
【0028】
撮像部62は、第1関節部51の内部まで入り込んでいる。
図2では、筒状部61および第1関節部51の中空部に設置される光学系621および撮像素子622を破線で模式的に示している。
【0029】
アーム操作スイッチ63は、押しボタン式のスイッチである。術者201がアーム操作スイッチ63を押下している間、第1関節部51および第2関節部53の電磁ブレーキが解除される。術者201は、筒状部61の側面のうち、アーム操作スイッチ63および十字レバー64が設けられる側面と反対側の側面と向かい合って顕微鏡部6を操作する。
【0030】
十字レバー64は、筒状部61の高さ方向および該高さ方向と直交する周方向に沿って操作可能である。十字レバー64は、筒状部61の側面であって筒状部61の高さ方向に沿ってアーム操作スイッチ63の下方の側面に設けられる。
【0031】
図2に示す位置から筒状部61の高さ方向に沿って十字レバー64を操作すると拡大倍率が変更され、
図2に示す位置から筒状部61の周方向に沿って十字レバー64を操作すると被観察体までの焦点距離が変更される。例えば、筒状部61の高さ方向に沿って十字レバー64を上方へ動かすと拡大倍率が大きくなり、筒状部61の高さ方向に沿って十字レバー64を下方へ動かすと拡大倍率が小さくなる。また、筒状部61の周方向に沿って十字レバー64を時計回りに動かすと被観察体までの焦点距離が遠くなり、筒状部61の周方向に沿って十字レバー64を反時計回りに動かすと被観察体までの焦点距離が近くなる。なお、十字レバー64の移動方向と操作の割り当ては、ここで説明したものに限られるわけではない。
【0032】
固定部65の側面には、滅菌ドレープ1が有する取付部13に形成される取付凹部13a(後述)と嵌合可能な取付凸部65aが形成されている。
図3は、取付凸部65aと取付凹部13aとの嵌合の仕方を模式的に示す図である。
【0033】
以上の構成を有する顕微鏡部6は、術者201が顕微鏡部6の視野を移動させる際に術者201が把持して操作を行うグリップ部としての機能を兼備している。
【0034】
次に、滅菌ドレープ1のうち、観察装置2の先端部に装着される部分の構成を説明する。
図2に示すように、滅菌ドレープ1は、顕微鏡部6の筒状部61の先端に取り付けられ、顕微鏡部6が被観察体からの光を集光する開口面を保護するカバーガラス(図示せず)が設けられた円筒状の開口カバー11と、滅菌ドレープ1の本体の一部をなし、滅菌ドレープ1を顕微鏡部6へ装着した状態でアーム操作スイッチ63、十字レバー64および固定部65を収容可能な態様で突起した形状をなすスイッチカバー(入力部カバー部の例)12と、スイッチカバー12の基端部に複数設けられ、筒状部61に固定して取り付けられる取付部13と、を有する。
【0035】
図4は、
図2の矢視A方向(第1軸O
1および第2軸O
2と直交する方向)の側面図である。スイッチカバー12は、滅菌ドレープ1の本体において直方体状に突起している。このようなスイッチカバー12は、例えば滅菌ドレープ1の本体の一部を直方体状に弛ませることによって形成される。また、スイッチカバー12は、袋状の滅菌ドレープ1の周囲を加工することによって突起部を形成してもよいし、別に作成された突起部形状を滅菌ドレープ1の本体に接着して形成してもよい。
【0036】
取付部13は、滅菌ドレープ1の本体よりも硬質の材料を用いて構成され、筒状部61の表面に固定して取り付けられる。なお、開口カバー11のカバーガラス以外の部分も、取付部13と同様の材料から構成される。
【0037】
図3に示すように、取付部13の裏面(滅菌ドレープ1を顕微鏡部6に装着した状態で顕微鏡部6と対向する面)には取付凹部13aが形成されている。取付凹部13aは、固定部65の表面に設けられた取付凸部65aに嵌合される。これにより、取付部13が筒状部61に対して固定して取り付けられる。
【0038】
滅菌ドレープ1を観察装置2に被せて装着する際には、開口カバー11を筒状部61の先端に取り付けた後、各取付部13の取付凹部13aを対応する取付凸部65aに嵌合させることにより、滅菌ドレープ1を観察装置2の先端部に対して装着する。
【0039】
取付部13を固定部65に固定して取り付けることにより、スイッチカバー12がアーム操作スイッチ63、十字レバー64および固定部65を収容した状態で固定される。この場合、滅菌ドレープ1の他の本体部分に変形が生じても、その変形による影響は取付部13によって遮断され、スイッチカバー12には及ばない。ここで、スイッチカバー12は、アーム操作スイッチ63および十字レバー64が操作される際の動きを妨げず、かつ弛みが多すぎない適度な弛みを持つように構成されている。
【0040】
図5は、術者201が顕微鏡部6を操作する状況を模式的に示す図である。術者201は、筒状部61の側面のうち、アーム操作スイッチ63および十字レバー64が設けられる側面(
図5の右側面)と反対側の側面(
図5の左側面)と向かい合って顕微鏡部6を操作する。この際、術者201は、顕微鏡部6を右手211で把持した状態で、アーム操作スイッチ63または十字レバー64を操作する。
【0041】
術者201は、
図1に示すように、表示装置3が表示する画像(顕微鏡部6が撮像する画像)を目視しながら、顕微鏡部6のアーム操作スイッチ63を押下した状態で顕微鏡部6を把持して所望の位置まで移動させる。術者201は、顕微鏡部6の視野を決定した後、アーム操作スイッチ63から指を離す。これにより、第1関節部51および第2関節部53では電磁ブレーキが動作し、顕微鏡部6の視野が固定される。その後、術者201は、十字レバー64を操作して、拡大倍率や被観察体までの焦点距離を調整する。
【0042】
術者201が顕微鏡部6を把持しやすく、かつ術者201が表示装置3または患者202の術部を見る際の視界の妨げとならないようにするには、例えば筒状部61の外径が40〜70mm程度であり、筒状部61の先端から第1関節部51までの高さが80〜200mm程度であればより好ましい。
【0043】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、観察装置2を被覆した状態でアーム操作スイッチ63および十字レバー64を収容可能に突起した形状をなすスイッチカバー12と、スイッチカバー12の突起形状の基端部に設けられ、観察装置2を被覆した状態で顕微鏡部6の固定部65に嵌合して取り付けられる取付部13と、を備えているため、適用対象である観察装置2において、操作用の入力部としてアーム操作スイッチ63等が設けられた顕微鏡部6の操作性を良好に保つことが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態1によれば、取付部13が顕微鏡部6に固定されているため、滅菌ドレープ1の本体に突っ張りやねじれ等の変形が生じても、スイッチカバー12に影響が及ぶことがない。したがって、滅菌ドレープ1の本体の変形に起因してアーム操作スイッチ63や十字レバー64に外力が加わることを確実に防止することができる。特に十字レバー64は、4つの方向へ操作可能であるため、滅菌ドレープ1の本体の変形によって外力が加わりやすい。したがって、本実施の形態1のように、スイッチカバー12が十字レバー64を収容する場合には、より大きな効果を得ることができる。
【0045】
また、本実施の形態1によれば、スイッチカバー12は、アーム操作スイッチ63および十字レバー64が操作される際の動きを妨げず、かつ弛みが多すぎない適度な弛みを持つように構成されているため、アーム操作スイッチ63および十字レバー64の周辺に余分な滅菌ドレープ1の弛みができ過ぎてしまい、ユーザがアーム操作スイッチ63および十字レバー64の入力を行うことが困難になってしまうことがない。
【0046】
また、本実施の形態1によれば、スイッチカバー12が、顕微鏡部6に対する滅菌ドレープ1の位置決めにもなるため、ユーザは滅菌ドレープ1を顕微鏡部6に容易にかつ適切に装着することができる。
【0047】
なお、上述したスイッチカバー12の形状はあくまでも一例に過ぎず、被覆対象のスイッチの形状等に応じて適宜変更可能である。その場合、取付部13の個数および設置位置がスイッチカバー12の形状に応じて適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0048】
また、1つの取付部13に対して取付凹部13aを2個以上形成しても構わない。その場合、筒状部61に設ける取付凸部の数も取付凹部の数に応じて変更されることはもちろんである。
【0049】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る滅菌ドレープの要部の構成および該要部を装着した医療用観察装置の構成を示す拡大斜視図である。
図7は、
図6の矢視C方向(第1軸O
1および第2軸O
2と直交する方向)の側面図である。
図6および
図7に示す滅菌ドレープ7は、観察装置2を被覆するように被せられ、観察装置2の表面の滅菌状態を保持する。滅菌ドレープ7の本体は、実施の形態1の滅菌ドレープ1と同様の材料からなる。
【0050】
滅菌ドレープ7は、開口カバー71と、スイッチカバー72と、取付部73とを有する。開口カバー71およびスイッチカバー72の構成は、開口カバー11およびスイッチカバー12の構成とそれぞれ同じである。
【0051】
取付部73は、リング状の弾性部材からなる。取付部73の少なくとも一部は、滅菌ドレープ7の本体のうちスイッチカバー72の基端部に対し、接着等によって固定して取り付けられている。取付部73の1周の長さは、固定部65の基端部の1周の長さより若干小さい。
【0052】
滅菌ドレープ7を観察装置2に被せて装着する際には、開口カバー71を筒状部61の先端に取り付けた後、スイッチカバー72を固定部65に位置合わせした後、取付部73を伸ばして固定部65に引っ掛けることにより、滅菌ドレープ1を観察装置2の先端部に対して装着する。
【0053】
取付部73の1周の長さは、固定部65の基端部の1周の長さより若干短いため、取付部73を固定部65に引っ掛けることにより、スイッチカバー72がアーム操作スイッチ63、十字レバー64および固定部65を収容した状態で固定される。したがって、滅菌ドレープ7の他の本体部分に変形が生じても、その変形による影響は取付部73によって遮断され、スイッチカバー72には及ばない。
【0054】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、観察装置2を被覆した状態でアーム操作スイッチ63および十字レバー64を収容可能に突起した形状をなすスイッチカバー72と、スイッチカバー72の突起形状の基端部に設けられ、リング状の弾性部材からなり、観察装置2を被覆した状態で顕微鏡部6の固定部65の基端部を周回するように固定部65に引っ掛けられた取付部73と、を備えているため、適用対象である観察装置2において、操作用の入力部としてアーム操作スイッチ63等が設けられた顕微鏡部6の操作性を良好に保つことが可能となる。
【0055】
また、本実施の形態2によれば、リング状をなす取付部73を固定部65に引っ掛けるだけでよいので、観測装置2への取り付けが一段と容易である。
【0056】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態1および2によってのみ限定されるべきものではない。例えば、取付部を円柱状または多角柱状とする一方、医療用観察装置の固定部に、円柱状または多角柱状をなす取付部を嵌め入れることが可能な溝部を形成し、この溝部へ取付部を嵌め入れることによって入力部カバー部を医療用観察装置に対して固定して取り付けるようにしてもよい。
【0057】
また、従来の手術用顕微鏡のように、鏡筒とは別の場所に各種スイッチが形成されたグリップ部を有する場合であっても、本発明を適用することが可能である。
【0058】
このように、本発明は、特許請求の範囲に記載した技術的思想を逸脱しない範囲内において、さまざまな実施の形態等を含み得るものである。