【実施例】
【0021】
(第1実施例)
図1を参照し、モータ100の基本的な構造について説明する。モータ100は、ロータ10とステータ18とケース34を備えている。ロータ10は、ケース34内に収容されている。ロータ10は、軸受8を介してケース34に回転可能に支持されている。ロータ10は、回転軸26の周りを回転する。ロータ10は、出力部10aと支持部10dとプレート10cと永久磁石10bを備えている。支持部10dには、出力部10aとプレート10cが固定されている。また、支持部10dには、エンコーダ28の回転部28aも固定されている。回転部28aは、プレート10cの中央に設けられている貫通孔を通過して、支持部10dに固定されている。永久磁石10bは、プレート10cの表面に固定されている。永久磁石10bは、回転部28aの周りに配置されている。
【0022】
ステータ18は、コア18aとコイル18bを備えている。ステータ18は、ケース34内に収容されている。ステータ18は、ボルト16によってケース34の底面に固定されている。ロータ10とステータ18は、間隔をおいて対向している。具体的には、コア18aが、永久磁石10bに対向している。ステータ18は、エンコーダ28を囲むように配置されている。なお、コイル18bは、後述する樹脂14で覆われている。
【0023】
ケース34にはフランジ4が設けられている。フランジ4は、回転軸26方向の端部に設けられている。フランジ4を減圧容器(図示省略)の取付面に固定することにより、モータ100が減圧容器に取り付けられる。なお、モータ100は、フランジ4と減圧容器の取付面の間にOリング2を配置した状態で、減圧容器に取り付けられる。そのため、フランジ4と減圧容器の隙間を通じて減圧容器の内外が連通することを防止することができる。フランジ4の内側に、ロータ10の移動を規制する規制板6が配置されている。規制板6は、ケース34に固定されている。
【0024】
ケース34の底面には第1貫通孔24,第2貫通孔30,32が設けられている。第1貫通孔24は、ケース34の底面の中央に設けられており、回転軸26と同軸である。第1貫通孔24内に、エンコーダ28の回転部28aが配置されている。延在部31が、第1貫通孔24の周囲に設けられている。延在部31は、ケース34の底面からロータ10に向けて延びている。エンコーダ28の固定部28bは、ケース34の延在部31に固定されている。固定部28bは、後述する樹脂14で覆われている。なお、エンコーダ28として、ロータリーエンコーダ,レゾルバエンコーダを用いることができる。第1貫通孔24は、封止板20よって封止されている。また、ケース34と封止板20の間にはOリング22が配置されている。Oリング22によって、第1貫通孔24内の環境(減圧環境)とケース34の外部の環境(大気)が遮断されている。
【0025】
第2貫通孔30,32は、第1貫通孔24の周囲に設けられている。配線等(図示省略)が、第2貫通孔30,32を通じて、ケース34の内外を通過することができる。例えば、ステータ18に接続している配線が、第2貫通孔30を通じて、ケース34の外部に至ることができる。また、エンコーダ28に接続している配線が、第2貫通孔32を通じて、ケース34の外部に至ることができる。なお、第2貫通孔30,32は、樹脂14で封止されている。
【0026】
樹脂14は、ケース34の内面とステータ18の隙間、ステータ18のコイル18bの周囲、ケース34の内面とエンコーダ28の固定部28bの隙間、固定部28bの周囲、第2貫通孔30,32に充填されている。また、樹脂14は、ステータ18及びエンコーダ28(固定部28b)の表面も覆っている。すなわち、樹脂14は、第1貫通孔24を除き、ロータ10に対向するケース34内の空間の全てに充填されている。樹脂14は、ロータ10とステータ18の間の隙間にも存在している。樹脂14のロータ10側の表面は平坦である。なお、
図1では、コイル18b,固定部28bの形状を明確にするために、コイル18b,固定部28bの周囲を覆っている樹脂14に対して、部品が存在しない空間を充填している樹脂14とは異なるハッチングを付している。
【0027】
ここで、
図2及び3を参照し、ケース43内に樹脂を充填する工程について簡単に説明する。まず、
図2に示すように、ボルト16を用いてステータ24をケース34に固定し、エンコーダ28の固定部28bをケースに取り付ける。その後、ケース34の底面に下型42を取り付け、ステータ24の上方に上型40を取り付ける。なお、下型42は、第1貫通孔24に嵌る突出部42aを備えている。突出部42aが上型40に接触することにより、上型40とステータ18の間に隙間が設けられる。
【0028】
次いで、ケース34の内部を減圧する。このときに、必要に応じてケース34の温度を調節する。その後、
図3に示すように、注入孔40aからケース34内に樹脂14を充填する。これにより、ケース34とステータ18の間の隙間44、コイル18b及び固定部28bの周囲の空間、第2貫通孔30,32内の空間46,48が樹脂で充填される。換言すると、第1貫通孔24を除き、ケース34内のロータ10に対向する空間の全てが樹脂で充填される。
【0029】
図1に示すように、ケース34の上方(ロータ10に対して、ステータ18とは反対側)は開口している。そのため、モータ100を減圧容器に取り付けると、ロータ10の周囲は減圧容器内と同じ圧力になる。すなわち、減圧容器内を減圧すると、ロータ10の周囲も減圧される。ロータ10は、減圧容器内と同じ減圧環境内に配置されているということができる。それに対して、ステータ18は、樹脂14で覆われている。そのため、減圧容器内を減圧しても、ステータ18の周囲が減圧されることはない。すなわち、ステータ18は、大気中に配置されているということができる。モータ100では、樹脂14で覆われていない空間が減圧環境であり、樹脂14で覆われている空間が大気中ということができる。
【0030】
モータ100の利点を説明する。上記したように、ロータ10は、減圧容器内と同じ減圧環境内に配置されている。ロータ10と対向する部分に配置されている部品(ステータ18等)は、大気中に配置されている。しかしながら、ロータ10と対向するケース34内の空間が樹脂で充填されているので、ロータ10とステータ18の間に隔離板等を配置することなく、減圧容器内の環境(減圧環境)と減圧容器外の環境(大気中)を遮断することができる。ロータ10とステータ18の間に隔離板等を配置するスペースを確保する必要がないので、ロータ10とステータ18の隙間を小さくすることができ、モータ100の回転軸26方向の長さを短くすることができる。
【0031】
モータ100の他の利点について説明する。上記したように、フランジ4がケース34の端部に設けられており、フランジ4を減圧容器の取付面に固定することにより、モータ100が減圧容器に取り付けられる。また、ロータ10は、ケース34内に収容されており、ケース34の端面から突出していない。そのため、モータ100を減圧容器に取り付けても、モータ100を構成している部品が減圧容器内のスペースを狭くすることはない。また、モータ100は、従来よりも回転軸26方向の長さを短くすることができるので、減圧容器の周囲のスペースを従来よりも広く確保することができる。なお、上記した利点は、以下に説明するモータ200,300でも得ることができる。
【0032】
(第2実施例)
図4及び
図5を参照し、モータ200について説明する。モータ200は、モータ100の変形例であり、ケース234の形状がモータ100のケース34と異なる。モータ200について、モータ100と実質的に同じ構造については、モータ100と同一又は下二桁が同一の参照番号を付すことにより、説明を書略することがある。
【0033】
図4に示すように、ケース234の内面に溝が設けられていることを除き、モータ200の主要な部品(ロータ10,ステータ18等)の構造は、モータ100と同一である。
図5を参照し、ケース234の溝234aについて説明する。
図5に示すように、ケース234の内面に溝234aが設けられている。具体的には、回転軸26方向において、2個の溝234aが並んで設けられている。溝234aは、回転軸26の周りを一巡している(
図4も参照)。なお、延在部31にも、2個の溝が並んで設けられている。
【0034】
モータ200では、隣り合う溝234a,234aによって、ケース234の内面に凸部234bが形成されている。樹脂214は、溝234a内にも充填されている。そのため、凸部234bの周囲は、樹脂214によって覆われている。例えば
図6のように樹脂214が収縮すると、樹脂214の体積が減少し、ケース234と樹脂214の間に隙間が生じる。同様に、溝234a内の樹脂214も収縮し、溝234aの側壁と樹脂214の間に隙間が生じる。しかしながら、樹脂214は全体が均一に収縮しようとするので、溝234aの外部の樹脂214がA1方向に収縮する力が、溝234a内の樹脂214を溝234aの側壁に押し付ける。すなわち、樹脂214は、凸部234bの存在空間を狭くするように収縮する。凸部234bの存在空間が縮小することはないので、結果として、樹脂214と凸部234bの接触が維持される。
【0035】
モータ200は、ケース234の内面に凸部234bを設けることにより、樹脂214が収縮しても、凸部234bと樹脂214が接触し続けることができる。すなわち、樹脂214が収縮することによってケース234の内面の多くの位置でケース234と樹脂214の間に隙間が生じても、減圧容器内の環境(ロータ10が配置されている環境)と大気を隔離し続けることができる。モータ200は、モータ100と比較して、より確実に減圧容器内と大気とを隔離し続けることができる。
【0036】
図7及び
図8を参照し、モータ200の変形例を示す。
図7及び8は、ケース234の一部を示しており、モータ200とは異なる形状の凸部を示している。
図7では、ケース234に複数の溝234cが形成されている。溝234cは、深部に向かうに従って幅が狭くなる形状である。隣り合う溝234c,234cによって形成されている凸部234dは、ケース234の内側に向かうに従って幅が狭くなっている。このような形状の凸部234dを形成しても、樹脂214が収縮するときに、樹脂214が凸部234dの存在空間を狭くするように収縮する。そのため、ケース234内に凸部234dを形成しても、樹脂214が収縮したときに、減圧容器内の環境と大気を隔離し続けることができる。
【0037】
図8では、ケース234の底面に凸部234eが設けられている。このような形態であっても、樹脂214が収縮するときに、樹脂214が凸部234eの存在空間を狭くするように収縮する。ケース234内に凸部234eを形成しても、減圧容器内の環境と大気を隔離し続けることができる。
図2に示すモータ200は、凸部234bのみが形成されているが、凸部234bに代え、又は、凸部234bに加え、凸部234d,234eを形成してもよい。
【0038】
(第3実施例)
図9及び
図10を参照し、モータ300について説明する。モータ300は、モータ200の変形例であり、ケース334の形状がモータ200のケース234と異なる。モータ300について、モータ200と実質的に同じ構造については、モータ200と同一又は下二桁が同一の参照番号を付すことにより、説明を書略することがある。
【0039】
図9及び10に示しているように、ケース334の底部に溝52が形成されており、溝52内にOリング50が配置されている。
図10に示すように、Oリング50は、溝52内で変形している。より具体的には、リング50は、樹脂314を充填するときに、樹脂314を充填する圧力によって潰れた状態で溝52内に配置されている。
【0040】
図11に示すように、樹脂314が収縮すると、Oリング50が配置されていない部分では、ケース334と樹脂314の間に隙間が生じる。しかしながら、Oリング50が配置されている部分では、樹脂314の収縮に伴ってOリング50が復元し、Oリング50が樹脂314とケース334の隙間をシールする。そのため、樹脂314が収縮することによってケース334の内面の多くの位置でケース334と樹脂314の間に隙間が生じても、減圧容器内の環境と大気を隔離し続けることができる。なお、
図9に示すように、モータ300は、モータ200と同様に、ケース334の内壁に凸部が設けられている(
図4も参照)。そのため、モータ300は、モータ100及び200と比較して、さらに確実に減圧容器内と大気とを隔離し続けることができる。また、ケースの内壁に凸部が設けられていないモータ(例えば、モータ100)に対して、
図9,10に示している溝52を形成し、溝52内にOリング50を配置してよい。換言すると、溝52内にOリング50を配置していれば、ケース334の内壁に形成されている凸部は削除してもよい。
【0041】
上記実施例のモータの場合、ロータが減圧環境内に配置されており、ケース内のロータに対向する空間が樹脂で充填されている。すなわち、モータが、減圧環境(減圧容器内の環境)を大気から遮断している。例えば、モータ全体を減圧容器内に配置すれば、ロータに対向する空間を樹脂で充填する必要がない。しかしながら、モータを減圧容器内に配置すると、減圧容器内のスペースが狭くなる。上記実施例のモータは、容器内のスペースを狭くすることなく、減圧容器内の環境を大気から遮断することができる。なお、上記実施例のモータを圧力容器(内部が大気圧よりも高い加圧環境を実現する容器)に取り付けても、容器内のスペースを狭くすることなく、圧力容器内の環境を大気から遮断することができる。
【0042】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。