特許第6367020号(P6367020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367020
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   H02K5/10 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-130600(P2014-130600)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2016-10265(P2016-10265A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】島本 光
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−055319(JP,U)
【文献】 特開2002−064964(JP,A)
【文献】 特開平01−060242(JP,A)
【文献】 特開2000−061947(JP,A)
【文献】 特開平07−298531(JP,A)
【文献】 特開平03−277148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00−5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧と異なる圧力に調整される容器内の部材を駆動するアキシャルギャップ構造を有するモータであり、
大気圧と異なる圧力の環境内に配置されているロータと、
ロータの回転軸線と平行な方向にロータに対向して配置されているステータと、
ロータとステータを収容しているケースと、を備えており、
ケースは、前記回転軸線に直交する径方向の外側からロータ及びステータに対向する側部と、前記回転軸線と平行な方向からステータに対向する底部と、を有し、
ロータに対向するケース内の空間が樹脂で充填され
前記樹脂は、ロータに対向するステータ上と、ケースの側部とステータとの間と、ケースの底部とステータとの間と、に設けられ、
ケースの側部の内面およびケースの底部の内面に、前記樹脂が収縮したときにケースと前記樹脂の接触を維持する構造が設けられているモータ。
【請求項2】
ケースの底部の内面に、周囲よりも前記樹脂側に突出している凸部が設けられている請求項に記載のモータ。
【請求項3】
ケースと前記樹脂の間に、Oリングが配置されている請求項又はに記載のモータ。
【請求項4】
ケースの内面に溝が設けられており、
前記Oリングが、前記溝内に配置されている請求項に記載のモータ。
【請求項5】
ケースの側部及び底部は一体的に形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、モータに関する技術を開示する。特に、大気圧と異なる圧力の環境で用いられるモータに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
大気圧と異なる圧力に調整される容器内、例えば、真空容器内の部材を駆動するモータが知られている。このようなモータでは、モータの一部を真空中に配置し、モータの他の一部を大気中に配置することがある。特許文献1には、ロータとステータの間に隔壁を配置したモータが開示されている。隔壁によって、真空容器内の環境と真空容器外の環境を遮断している。特許文献1のモータは、ロータが真空中に位置しており、ステータが大気中に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−277148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のモータでは、隔壁のロータ側(真空側)とステータ側(大気側)で圧力差が生じる。この圧力差によって、隔壁には、隔壁がロータ側に変形する力が加わる。そのため、隔壁が変形しないように隔壁の厚みを厚くしたり、隔壁が変形しても隔壁がロータに接触しないようにロータ,ステータ間の距離を長くすることが必要である。どちらの場合もロータ,ステータ間の距離が長くなり、モータのサイズが大きくなる。本明細書は、上記課題を解決するものであり、小型のモータを実現する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示するモータは、大気圧と異なる圧力に調整される容器内の部材を駆動する。そのモータは、大気圧と異なる圧力の環境内に配置されているロータと、ロータに対向して配置されているステータと、ロータとステータを収容しているケースを備えている。本明細書で開示するモータでは、ロータに対向するケース内の空間が樹脂で充填されている。
【0006】
上記のモータによると、ロータに対向するケース内の空間が樹脂で充填されているので、ロータが配置されている環境の圧力がロータに対向する部品(ステータ等)が配置されている環境の圧力と異なっていても、モータを介して容器の内外が連通し、容器の内外をガスが移動することを防止できる。すなわち、上記のモータは、ロータとステータの間に隔壁等を設けることなく、ロータを容器内と同じ圧力(大気圧と異なる圧力)の環境に配置し、ステータを大気中に配置することができる。上記のモータは、隔壁等を用いる必要がないので、ロータとステータの間の距離を長くすることが不要であり、従来のモータよりもモータのサイズを小型にすることができる。また、ロータとステータの間に隔壁等を設ける必要がないので、モータの効率を向上させることができる。すなわち、電力損失が低減されたモータを実現することができる。
【0007】
なお、「ロータが大気圧と異なる圧力の環境内に配置されている」とは、ロータが容器内に配置されていることを意味するものではない。ロータが容器の外部に配置されており、容器内とロータが配置されている部分が連通しており、ロータの周囲の圧力が容器内の圧力(大気圧と異なる圧力)と等しい形態も含む。なお、「大気圧と異なる圧力」は、減圧環境,加圧環境の双方を含む。「減圧環境」とは、真空又は実質的な真空状態を含み、大気圧より圧力が低い環境のことをいう。また、内部の圧力が大気圧より低い容器は、減圧容器と称することがある。「加圧環境」とは、大気圧より圧力が高い環境のことをいう。内部の圧力が大気圧より高い容器は、圧力容器と称することがある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例のモータの断面図を示す。
図2】第1実施例のモータの製造工程を示す。
図3】第1実施例のモータの製造工程を示す。
図4】第2実施例のモータの断面図を示す。
図5図4の破線Vで囲った部分の拡大図を示す。
図6】第2実施例のモータの特徴を説明するための図を示す。
図7】第2実施例のモータの変形例の部分断面図を示す。
図8】第2実施例のモータの変形例の部分断面図を示す。
図9】第3実施例のモータの断面図を示す。
図10図9の破線Xで囲った部分の拡大図を示す。
図11】第3実施例のモータの特徴を説明するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本明細書で開示するモータの技術的特徴の幾つかを記す。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0010】
モータは、大気圧と異なる圧力に調整される容器内の部材を駆動する。モータは、減圧されている容器内の部材を駆動してもよいし、加圧されている容器内の部材を駆動してもよい。例えば、モータは、真空容器に取り付けられ、真空容器内の部材を駆動してもよい。あるいは、モータは、圧力容器に取り付けられ、圧力容器内の部材を駆動してもよい。なお、以下の説明では、大気圧と異なる圧力の環境(容器内の環境)を、第1環境と称することがある。
【0011】
モータは、ロータとステータとケースを備えていてよい。モータは、アキシャルギャップ構造であってもよいし、ラジアルギャップ構造でもよい。アキシャルギャップモータの場合、ロータがステータよりも第1環境側(容器側)に配置されていてよい。ラジアルギャップモータの場合、ロータがステータの内側に配置されていてよい。ロータは、軸受を介してケースに回転可能に支持されていてよい。ステータは、ケースに固定されていてよい。
【0012】
ロータは、支持部と、プレートと、永久磁石と、出力部を備えていてよい。支持部が、軸受を介してケースに回転可能に支持されていてよい。プレートは、支持部に固定されていてよい。プレートの中心部には貫通孔が設けられていてよい。永久磁石は、プレートの表面に固定されていてよい。永久磁石は、プレートの表面において、プレートの中心部を囲むように配置されていてよい。出力部は、支持部に固定されていてよい。ロータの出力部は、第1環境に露出していてよい。また、ロータ全体が、第1環境に配置されていてもよい。
【0013】
大気圧と異なる圧力に調整される容器にモータを取り付けたときに、ロータが、モータと容器の取り付け面を越えて容器内に位置していなくてよい。すなわち、容器にモータを取り付けたときに、ロータが、モータと容器の取り付け面に対して、容器とは反対側に位置していてよい。また、プレートが、支持部に対して容器とは反対側で、支持部に固定されていてよい。位置検出器(エンコーダ)が、ロータに取り付けられていてよい。エンコーダは、プレートの貫通孔を通過して、支持部に固定されていてよい。
【0014】
ステータは、コアとコイルを備えていてよい。コアは、ケースに固定されていてよい。コイルは、コアの周囲に配置されていてよい。ステータは、ロータと間隔をおいてロータに対向する位置に配置されていてよい。より具体的には、ステータは、ロータの永久磁石に対向して配置されていてよい。ステータは、エンコーダを囲むように配置されていてよい。
【0015】
ケースは、ロータとステータを収容していてよい。ロータの回転軸方向において、ケースの端部にフランジが設けられていてよい。フランジは、容器の取り付け面に固定されてよい。ケースの底面の中央部に、第1貫通孔が設けられていてよい。第1貫通孔の周囲に、ケースの底面から回転軸に沿って延びる延在部が設けられていてよい。さらに、第1貫通孔の周囲に、第2貫通孔が設けられていてよい。複数の第2貫通孔が、ケースの底面に設けられていてよい。また、ケースの底面に、ステータを固定するボルトが通過するボルト孔が設けられていてよい。
【0016】
ケースの内面に、周囲よりも突出している凸部が設けられていてよい。なお、「周囲より突出している凸部」とは、例えば、ケースの内面に平行な2個の溝を形成し、2個の溝の間の残部が溝の底面から突出している形態も含む。すなわち、凸部とは、周囲との相対的な関係で決定するものであり、必ずしもケースの内面に突起を設けた形態に限定されない。
【0017】
ロータに対向するケース内の空間が樹脂で充填されていてよい。樹脂によって、容器の内外の環境がモータを介して連通することを防止することができる。具体的には、ケース内の空間を充填している樹脂が、ケース内の隙間を通じてガスが容器の内外を移動することを防止できる。すなわち、ロータが第1環境内に配置されており、ステータが大気中に配置されている場合であっても、ロータとステータの間に隔離板等を配置することなく、容器内の圧力を維持することができる。樹脂は、ステータのロータと対向する表面を覆っていてよい。より具体的には、樹脂が、ロータとステータの隙間に存在してもよい。なお、樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0018】
樹脂は、ケースの内面に設けられている凸部を覆っていてよい。すなわち、樹脂は、凸部の頂部と側壁に接触していてよい。換言すると、凸部が、樹脂で囲まれていてよい。樹脂は、硬化の過程,又は、硬化後に収縮することがある。樹脂が収縮すると、ケースの内面と樹脂の間に隙間が生じることがある。しかしながら、凸部を覆っている部分の樹脂は、樹脂全体が収縮するために、凸部側に移動しようとする。その結果、凸部を覆っている部分の樹脂は、凸部と接触した状態を維持することができる。ケースの内面に設けられる凸部は、樹脂が収縮したときにケースと樹脂の接触を維持する構造ということができる。
【0019】
ケースと樹脂の間にOリングを配置してもよい。樹脂をケースに充填するときにOリングが圧縮され、樹脂が収縮するときにOリングが復元する。それにより、樹脂が収縮したときにケースの内面と樹脂の間に隙間が生じても、ケースの内面と樹脂の間の隙間をOリングで封止することができる。なお、ケースの内面に溝を設け、その溝内にOリングを配置してもよい。この場合、Oリングの径は、溝の深さより大きくてよい。
【0020】
なお、以下の説明では、減圧容器内にモータを取り付ける例について説明する。しかしながら、本明細書で開示するモータは、圧力容器に取り付けることもできる。
【実施例】
【0021】
(第1実施例)
図1を参照し、モータ100の基本的な構造について説明する。モータ100は、ロータ10とステータ18とケース34を備えている。ロータ10は、ケース34内に収容されている。ロータ10は、軸受8を介してケース34に回転可能に支持されている。ロータ10は、回転軸26の周りを回転する。ロータ10は、出力部10aと支持部10dとプレート10cと永久磁石10bを備えている。支持部10dには、出力部10aとプレート10cが固定されている。また、支持部10dには、エンコーダ28の回転部28aも固定されている。回転部28aは、プレート10cの中央に設けられている貫通孔を通過して、支持部10dに固定されている。永久磁石10bは、プレート10cの表面に固定されている。永久磁石10bは、回転部28aの周りに配置されている。
【0022】
ステータ18は、コア18aとコイル18bを備えている。ステータ18は、ケース34内に収容されている。ステータ18は、ボルト16によってケース34の底面に固定されている。ロータ10とステータ18は、間隔をおいて対向している。具体的には、コア18aが、永久磁石10bに対向している。ステータ18は、エンコーダ28を囲むように配置されている。なお、コイル18bは、後述する樹脂14で覆われている。
【0023】
ケース34にはフランジ4が設けられている。フランジ4は、回転軸26方向の端部に設けられている。フランジ4を減圧容器(図示省略)の取付面に固定することにより、モータ100が減圧容器に取り付けられる。なお、モータ100は、フランジ4と減圧容器の取付面の間にOリング2を配置した状態で、減圧容器に取り付けられる。そのため、フランジ4と減圧容器の隙間を通じて減圧容器の内外が連通することを防止することができる。フランジ4の内側に、ロータ10の移動を規制する規制板6が配置されている。規制板6は、ケース34に固定されている。
【0024】
ケース34の底面には第1貫通孔24,第2貫通孔30,32が設けられている。第1貫通孔24は、ケース34の底面の中央に設けられており、回転軸26と同軸である。第1貫通孔24内に、エンコーダ28の回転部28aが配置されている。延在部31が、第1貫通孔24の周囲に設けられている。延在部31は、ケース34の底面からロータ10に向けて延びている。エンコーダ28の固定部28bは、ケース34の延在部31に固定されている。固定部28bは、後述する樹脂14で覆われている。なお、エンコーダ28として、ロータリーエンコーダ,レゾルバエンコーダを用いることができる。第1貫通孔24は、封止板20よって封止されている。また、ケース34と封止板20の間にはOリング22が配置されている。Oリング22によって、第1貫通孔24内の環境(減圧環境)とケース34の外部の環境(大気)が遮断されている。
【0025】
第2貫通孔30,32は、第1貫通孔24の周囲に設けられている。配線等(図示省略)が、第2貫通孔30,32を通じて、ケース34の内外を通過することができる。例えば、ステータ18に接続している配線が、第2貫通孔30を通じて、ケース34の外部に至ることができる。また、エンコーダ28に接続している配線が、第2貫通孔32を通じて、ケース34の外部に至ることができる。なお、第2貫通孔30,32は、樹脂14で封止されている。
【0026】
樹脂14は、ケース34の内面とステータ18の隙間、ステータ18のコイル18bの周囲、ケース34の内面とエンコーダ28の固定部28bの隙間、固定部28bの周囲、第2貫通孔30,32に充填されている。また、樹脂14は、ステータ18及びエンコーダ28(固定部28b)の表面も覆っている。すなわち、樹脂14は、第1貫通孔24を除き、ロータ10に対向するケース34内の空間の全てに充填されている。樹脂14は、ロータ10とステータ18の間の隙間にも存在している。樹脂14のロータ10側の表面は平坦である。なお、図1では、コイル18b,固定部28bの形状を明確にするために、コイル18b,固定部28bの周囲を覆っている樹脂14に対して、部品が存在しない空間を充填している樹脂14とは異なるハッチングを付している。
【0027】
ここで、図2及び3を参照し、ケース43内に樹脂を充填する工程について簡単に説明する。まず、図2に示すように、ボルト16を用いてステータ24をケース34に固定し、エンコーダ28の固定部28bをケースに取り付ける。その後、ケース34の底面に下型42を取り付け、ステータ24の上方に上型40を取り付ける。なお、下型42は、第1貫通孔24に嵌る突出部42aを備えている。突出部42aが上型40に接触することにより、上型40とステータ18の間に隙間が設けられる。
【0028】
次いで、ケース34の内部を減圧する。このときに、必要に応じてケース34の温度を調節する。その後、図3に示すように、注入孔40aからケース34内に樹脂14を充填する。これにより、ケース34とステータ18の間の隙間44、コイル18b及び固定部28bの周囲の空間、第2貫通孔30,32内の空間46,48が樹脂で充填される。換言すると、第1貫通孔24を除き、ケース34内のロータ10に対向する空間の全てが樹脂で充填される。
【0029】
図1に示すように、ケース34の上方(ロータ10に対して、ステータ18とは反対側)は開口している。そのため、モータ100を減圧容器に取り付けると、ロータ10の周囲は減圧容器内と同じ圧力になる。すなわち、減圧容器内を減圧すると、ロータ10の周囲も減圧される。ロータ10は、減圧容器内と同じ減圧環境内に配置されているということができる。それに対して、ステータ18は、樹脂14で覆われている。そのため、減圧容器内を減圧しても、ステータ18の周囲が減圧されることはない。すなわち、ステータ18は、大気中に配置されているということができる。モータ100では、樹脂14で覆われていない空間が減圧環境であり、樹脂14で覆われている空間が大気中ということができる。
【0030】
モータ100の利点を説明する。上記したように、ロータ10は、減圧容器内と同じ減圧環境内に配置されている。ロータ10と対向する部分に配置されている部品(ステータ18等)は、大気中に配置されている。しかしながら、ロータ10と対向するケース34内の空間が樹脂で充填されているので、ロータ10とステータ18の間に隔離板等を配置することなく、減圧容器内の環境(減圧環境)と減圧容器外の環境(大気中)を遮断することができる。ロータ10とステータ18の間に隔離板等を配置するスペースを確保する必要がないので、ロータ10とステータ18の隙間を小さくすることができ、モータ100の回転軸26方向の長さを短くすることができる。
【0031】
モータ100の他の利点について説明する。上記したように、フランジ4がケース34の端部に設けられており、フランジ4を減圧容器の取付面に固定することにより、モータ100が減圧容器に取り付けられる。また、ロータ10は、ケース34内に収容されており、ケース34の端面から突出していない。そのため、モータ100を減圧容器に取り付けても、モータ100を構成している部品が減圧容器内のスペースを狭くすることはない。また、モータ100は、従来よりも回転軸26方向の長さを短くすることができるので、減圧容器の周囲のスペースを従来よりも広く確保することができる。なお、上記した利点は、以下に説明するモータ200,300でも得ることができる。
【0032】
(第2実施例)
図4及び図5を参照し、モータ200について説明する。モータ200は、モータ100の変形例であり、ケース234の形状がモータ100のケース34と異なる。モータ200について、モータ100と実質的に同じ構造については、モータ100と同一又は下二桁が同一の参照番号を付すことにより、説明を書略することがある。
【0033】
図4に示すように、ケース234の内面に溝が設けられていることを除き、モータ200の主要な部品(ロータ10,ステータ18等)の構造は、モータ100と同一である。図5を参照し、ケース234の溝234aについて説明する。図5に示すように、ケース234の内面に溝234aが設けられている。具体的には、回転軸26方向において、2個の溝234aが並んで設けられている。溝234aは、回転軸26の周りを一巡している(図4も参照)。なお、延在部31にも、2個の溝が並んで設けられている。
【0034】
モータ200では、隣り合う溝234a,234aによって、ケース234の内面に凸部234bが形成されている。樹脂214は、溝234a内にも充填されている。そのため、凸部234bの周囲は、樹脂214によって覆われている。例えば図6のように樹脂214が収縮すると、樹脂214の体積が減少し、ケース234と樹脂214の間に隙間が生じる。同様に、溝234a内の樹脂214も収縮し、溝234aの側壁と樹脂214の間に隙間が生じる。しかしながら、樹脂214は全体が均一に収縮しようとするので、溝234aの外部の樹脂214がA1方向に収縮する力が、溝234a内の樹脂214を溝234aの側壁に押し付ける。すなわち、樹脂214は、凸部234bの存在空間を狭くするように収縮する。凸部234bの存在空間が縮小することはないので、結果として、樹脂214と凸部234bの接触が維持される。
【0035】
モータ200は、ケース234の内面に凸部234bを設けることにより、樹脂214が収縮しても、凸部234bと樹脂214が接触し続けることができる。すなわち、樹脂214が収縮することによってケース234の内面の多くの位置でケース234と樹脂214の間に隙間が生じても、減圧容器内の環境(ロータ10が配置されている環境)と大気を隔離し続けることができる。モータ200は、モータ100と比較して、より確実に減圧容器内と大気とを隔離し続けることができる。
【0036】
図7及び図8を参照し、モータ200の変形例を示す。図7及び8は、ケース234の一部を示しており、モータ200とは異なる形状の凸部を示している。図7では、ケース234に複数の溝234cが形成されている。溝234cは、深部に向かうに従って幅が狭くなる形状である。隣り合う溝234c,234cによって形成されている凸部234dは、ケース234の内側に向かうに従って幅が狭くなっている。このような形状の凸部234dを形成しても、樹脂214が収縮するときに、樹脂214が凸部234dの存在空間を狭くするように収縮する。そのため、ケース234内に凸部234dを形成しても、樹脂214が収縮したときに、減圧容器内の環境と大気を隔離し続けることができる。
【0037】
図8では、ケース234の底面に凸部234eが設けられている。このような形態であっても、樹脂214が収縮するときに、樹脂214が凸部234eの存在空間を狭くするように収縮する。ケース234内に凸部234eを形成しても、減圧容器内の環境と大気を隔離し続けることができる。図2に示すモータ200は、凸部234bのみが形成されているが、凸部234bに代え、又は、凸部234bに加え、凸部234d,234eを形成してもよい。
【0038】
(第3実施例)
図9及び図10を参照し、モータ300について説明する。モータ300は、モータ200の変形例であり、ケース334の形状がモータ200のケース234と異なる。モータ300について、モータ200と実質的に同じ構造については、モータ200と同一又は下二桁が同一の参照番号を付すことにより、説明を書略することがある。
【0039】
図9及び10に示しているように、ケース334の底部に溝52が形成されており、溝52内にOリング50が配置されている。図10に示すように、Oリング50は、溝52内で変形している。より具体的には、リング50は、樹脂314を充填するときに、樹脂314を充填する圧力によって潰れた状態で溝52内に配置されている。
【0040】
図11に示すように、樹脂314が収縮すると、Oリング50が配置されていない部分では、ケース334と樹脂314の間に隙間が生じる。しかしながら、Oリング50が配置されている部分では、樹脂314の収縮に伴ってOリング50が復元し、Oリング50が樹脂314とケース334の隙間をシールする。そのため、樹脂314が収縮することによってケース334の内面の多くの位置でケース334と樹脂314の間に隙間が生じても、減圧容器内の環境と大気を隔離し続けることができる。なお、図9に示すように、モータ300は、モータ200と同様に、ケース334の内壁に凸部が設けられている(図4も参照)。そのため、モータ300は、モータ100及び200と比較して、さらに確実に減圧容器内と大気とを隔離し続けることができる。また、ケースの内壁に凸部が設けられていないモータ(例えば、モータ100)に対して、図9,10に示している溝52を形成し、溝52内にOリング50を配置してよい。換言すると、溝52内にOリング50を配置していれば、ケース334の内壁に形成されている凸部は削除してもよい。
【0041】
上記実施例のモータの場合、ロータが減圧環境内に配置されており、ケース内のロータに対向する空間が樹脂で充填されている。すなわち、モータが、減圧環境(減圧容器内の環境)を大気から遮断している。例えば、モータ全体を減圧容器内に配置すれば、ロータに対向する空間を樹脂で充填する必要がない。しかしながら、モータを減圧容器内に配置すると、減圧容器内のスペースが狭くなる。上記実施例のモータは、容器内のスペースを狭くすることなく、減圧容器内の環境を大気から遮断することができる。なお、上記実施例のモータを圧力容器(内部が大気圧よりも高い加圧環境を実現する容器)に取り付けても、容器内のスペースを狭くすることなく、圧力容器内の環境を大気から遮断することができる。
【0042】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0043】
10:ロータ
14:樹脂
18:ステータ
34:ケース
100:モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11