(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凝縮水戻り配管は、U字型に曲がり内部に水封水を蓄えた部分であるU字水封シールを有し、前記ドライウェル共通部壁を貫通してドライウェルに開口していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の静的格納容器冷却フィルタベントシステム。
前記オーバフロー配管の前記ドライウェル内の先端にスプレイ・スパージャをさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の静的格納容器冷却フィルタベントシステム。
前記ガス供給配管は、一端が前記熱交換器の前記入口プレナムに接続され前記外部ウェル内を通りもう一端が前記ドライウェル共通部壁の部分で前記ドライウェル内に接続されて、前記ドライウェル内のガスを前記熱交換器に導くことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の静的格納容器冷却フィルタベントシステム。
前記ガス供給配管の前記ドライウェル内の部分にスクリーンをさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の静的格納容器冷却フィルタベントシステム。
前記スクラビングプールは内部に除染水を蓄えたフィルタベント容器であり、前記ガスベント配管の先端はフィルタベント容器の入口配管に接続されフィルタベント容器は出口配管により前記外部ウェルの内部に開口していることを特徴とする請求項14に記載の静的格納容器冷却フィルタベントシステム。
【背景技術】
【0002】
従来の原子力プラントの静的格納容器冷却系について
図11から
図14によりその概要を説明する。
【0003】
図11は、従来の静的格納容器冷却系の構成の例を示す立断面図である。
図11において、炉心1は原子炉圧力容器2の内部に収納されている。原子炉圧力容器2は、原子炉格納容器3内に収納されている。原子炉格納容器3は円筒形状をしている(
図12を参照。)。
【0004】
原子炉格納容器3の内部は、原子炉圧力容器2を収納するドライウェル4と、ウェットウェル5とに区分けされており、ドライウェル4とウェットウェル5とは原子炉格納容器3の一部を構成する。ウェットウェル5は内部に圧力抑制プール6を形成している。圧力抑制プール6の上方にはウェットウェル気相部7が形成されている。ドライウェル4とウェットウェル5の外壁部は一体化して原子炉格納容器3の円筒状の外壁部を構成している。ドライウェル4の天井部は平板になっておりこの部分をドライウェル4のトップスラブ4aと呼ぶ。
【0005】
原子炉格納容器3の雰囲気は、沸騰水型軽水炉の場合には、窒素により置換され酸素濃度を低く制限されている。また、沸騰水型軽水炉の場合には、原子炉格納容器3は原子炉建屋100の内部に収納されている。
【0006】
原子炉格納容器3は、一般にその材質により、鋼製原子炉格納容器、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)、プレストレスコンクリート製原子炉格納容器(PCCV)、スチール・コンクリート複合構造(SC造)原子炉格納容器(SCCV)など様々のものがある。RCCVとPCCVの場合には内面に鋼製ライナが張られている。
図11ではRCCVの例を示している。
図12に示すように、RCCVは外壁部分は円筒形状をしている。
【0007】
原子炉圧力容器2は、RPVスカート62およびRPVサポート63を介して、円筒状のペデスタル61により支持されている。ペデスタル61は、鋼製、コンクリート製、両者の複合構造等がある。ドライウェル4のうち原子炉圧力容器2の下方であって、ペデスタル61の円筒状の壁により囲まれるペデスタル61の内側の空間を、ペデスタルキャビティ61aという。ABWRのRCCVの場合はペデスタル61の円筒状の壁はウェットウェル5とドライウェル4の境界の壁を形成していて特にこの空間を下部ドライウェルと呼んでいる。
【0008】
原子炉圧力容器2の上方に原子炉格納容器上蓋10が配置され、その上方に水遮蔽11が配置されている。
【0009】
原子炉圧力容器2からは主蒸気配管71がドライウェル4の外部に延びている。主蒸気配管71には、逃がし安全弁(Safety Relief Valve、「SRV」)72が設けられており、逃がし安全弁72が動作したときに圧力抑制プール6内に原子炉圧力容器2の蒸気が放出されるように、逃がし配管73が圧力抑制プール6内に水没するように設けられている。
【0010】
ドライウェル4と圧力抑制プール6はLOCAベント管8により連結されている。LOCAベント管8はたとえば10本など複数個設置されるが
図11では2本のみを表示している(
図12を参照)。LOCAベント管8は圧力抑制プール6のプール水に水没している部分に水平ベント管8aがありプール水中に開口している。RCCVの場合は、水平ベント管8aは一つのLOCAベント管8に縦方向に3本設置されている。また、RCCVの場合はLOCAベント管8はペデスタル61の円筒状の壁の内部を通って設置されている。そのためRCCVの場合は、このペデスタル61の円筒状の壁をベント壁とも言う。ベント壁は厚さが約1.7mの鉄筋コンクリート製で内側と外側の表面は鋼製である。LOCAベント管8とペデスタル61は原子炉格納容器3の一部を構成する。
【0011】
ウェットウェル気相部7内のガスをドライウェル4内に還流する目的で、真空破壊弁9が設けられている。真空破壊弁9はたとえば8個など複数個設置されるが、
図11では1個のみを表示している。
【0012】
真空破壊弁9は、ウェットウェル5の壁面に設ける方法、ウェットウェル5の天井に設ける方法、LOCAベント管8に設ける方法がある。真空破壊弁9は、ウェットウェル5内の圧力がドライウェル4内の圧力よりも高くなり、その差圧が設定圧力を超えると作動して開く。真空破壊弁9の設定圧は、たとえば約2psi(約13.79kPa)である。真空破壊弁9は、原子炉格納容器3の一部を構成する。
【0013】
原子炉格納容器3の外部に、静的格納容器冷却系12の冷却水プール13が設けられ、内部に冷却水14が蓄えられている。
図11では冷却水プール13はタンク型の例を示しているがプール型のものもある。プール型の場合も上部は上蓋で覆われている。
図11では、冷却水プール13等は原子炉建屋100の内部に設置されている例を示しているが、隣接する補助建屋等の内部に設置される場合もある。
【0014】
冷却水プール13の水面の上方の気相部から、環境に蒸気を放出する排気口15が設けられている。排気口15の出口には虫よけのスクリーンが設けられることがある。冷却水プール13の位置は、一般に原子炉格納容器3の上部に設けられているが、原子炉格納容器3の横に設けることもできる。
【0015】
冷却水プール13の内部には、冷却水14に少なくとも一部が水没するように、熱交換器16が設置されている。
【0016】
熱交換器16は複数個設置される場合が多いが、
図11では1基のみを表示してある。熱交換器16は入口プレナム17、出口プレナム18および伝熱管19を有する(
図13参照)。
【0017】
図11では、伝熱管19のみが冷却水プール13の内部に設置され、入口プレナム17と出口プレナム18(
図13)は冷却水プール13の外部に突出している例を示しているが、この例には限定されない。たとえば、熱交換器16全体が、入口プレナム17と出口プレナム18を含めて冷却水プール13の内部に設置される例もある。
【0018】
入口プレナム17には、ドライウェル4内のガスを供給するガス供給配管20が接続されている。ガス供給配管20の一端はドライウェル4に接続されている。
【0019】
出口プレナム18には凝縮水戻り配管21とガスベント配管22が接続されている。凝縮水戻り配管21の一端は原子炉格納容器3の内部に接続されている。
図11では一例としてLOCAベント管8の内部に導かれているが、この例には限定されない。ドライウェル4の内部に導く例や圧力抑制プール6に導く例もある。
【0020】
しかし、LOCAベント管8の内部に導く方法にはLOCA時にLOCAベント管8の圧損を増加させるという課題がある。また、ドライウェル4に導く場合には水封のためにPCCSドレンタンクをドライウェル4内に設置する必要がありドライウェル4内のスペースに余裕がないと採用できないという課題がある。さらに、圧力抑制プール6に導く方法は凝縮水戻り配管21のPCV外での長さが長くなり放射性物質の漏洩の可能性が増大するという課題がそれぞれある。
【0021】
ガスベント配管22は、その一端がウェットウェル5の内部に導かれ、圧力抑制プール6内に水没するように設置されている。ガスベント配管22の圧力抑制プール6内の水没水深は、LOCAベント管8の圧力抑制プール6内の開口部の最上端の水没水深よりも浅くなるように設置される。
【0022】
図13は、従来の静的格納容器冷却系の熱交換器の例を示す立断面図である。
図13により、従来の静的格納容器冷却系12の熱交換器16の構造について横型熱交換器の例で説明する。
【0023】
図13おいて、出口プレナム18は、入口プレナム17の下方に設けられている。多数のU字型の伝熱管19が管板23に接続し、伝熱管19の直管部が水平に設置されている。
図13では簡略化して2本のみを表示している。伝熱管19の外部には冷却水14(
図11参照)が満たされている。伝熱管19の入口は、入口プレナム17に開口している。また、伝熱管19の出口は出口プレナム18に開口している。
【0024】
入口プレナム17にはガス供給配管20が接続し、ドライウェル4内の窒素、水素、水蒸気等の混合ガスを入口プレナム17に供給する。この混合ガスは伝熱管19内に導かれ、水蒸気は凝縮して凝縮水となり、伝熱管19の出口から出口プレナム18内に流出し、出口プレナム18内の下部に溜まる。
【0025】
出口プレナム18の下部には、凝縮水戻り配管21が接続されていて、出口プレナム18内の凝縮水を、重力により原子炉格納容器3の内部に還流する。また、出口プレナム18の上部には、ガスベント配管22が接続されている。伝熱管19内で凝縮しない窒素、水素等の非凝縮性ガスは、伝熱管19から排出され出口プレナム18の上部に溜まる。
【0026】
ガスベント配管22の先端は、圧力抑制プール6に導かれていて、出口プレナム18内の非凝縮性ガスは、ガスベント配管22を通り圧力抑制プール6内のプール水を押し下げてプール水中にベントされた後、ウェットウェル気相部7に移行する。
【0027】
なお、伝熱管19の形状はU字型に限定されない。鉛直方向に直管部のある伝熱管19を、縦型に設置する構造のものもある。入口プレナム17は、必ず出口プレナム18よりも上に位置する。これにより伝熱管19内で凝縮した凝縮水を重力により出口プレナム18に導く。横型の利点は耐震性に優れていることと、冷却水14の有効活用ができることである。一方、縦型の利点は凝縮水の排出性が良いことである。
【0028】
次に、このように構成された従来の静的格納容器冷却系12の機能について説明する。
【0029】
ドライウェル4内で配管が破断する冷却材喪失事故(LOCA)が発生すると、原子炉圧力容器2から水蒸気が発生してドライウェル4内の圧力が急上昇し、ドライウェル4内のガス(主に窒素と水蒸気)が、静的格納容器冷却系12のガス供給配管20を通り熱交換器16に供給される。
【0030】
熱交換器16の出口プレナム18内に溜まった非凝縮性ガスは、ガスベント配管22を通り圧力抑制プール6内に排出される。この非凝縮性ガスの排出は、ドライウェル4とウェットウェル5との圧力差によって行なわれる。
【0031】
LOCA時には、ドライウェル4内の圧力はウェットウェル5内の圧力よりも高いため、非凝縮性ガスの排出は円滑に行なわれる。その結果、しばらくするとドライウェル4内のガスはほとんど水蒸気だけになる。この状態になると、熱交換器16はドライウェル4内の水蒸気を効率良く凝縮し、凝縮水を原子炉格納容器3内に還流することができる。
【0032】
なお、LOCA発生直後は、冷却材から大量の蒸気が発生し、ドライウェル4内のガスのウェットウェル5への急激なベントは、主にLOCAベント管8を通り行なわれる。
【0033】
水蒸気は圧力抑制プール6内で凝縮し、非凝縮性の窒素は圧力抑制プール6内では凝縮せずにウェットウェル気相部7に移行する。このLOCAベント管8からの急激なベントにより、ドライウェル4内の窒素はたとえばLOCA後1分程度でほとんどウェットウェル5に移行してしまう。
【0034】
その後はベント流量が少なくなり、ガスベント配管22の圧力抑制プール6内の水没水深は、LOCAベント管8の水没水深よりも浅く設定されているので、ドライウェル4内のガスはLOCA後しばらくするとガスベント配管22を経由してウェットウェル5にベントされるようになる。
【0035】
このように、ベント流量が静定し、炉心燃料の崩壊熱に応じて発生する水蒸気はLOCAの破断口からドライウェル4に放出され、LOCAベント管8ではなくガス供給配管20から熱交換器16に導かれて冷却される設計になっている。
【0036】
その結果、炉心燃料の崩壊熱は、外部の冷却水14に伝熱されるので、圧力抑制プール6の水が高温化して原子炉格納容器3の圧力が高くなることを防止することができる。静的格納容器冷却系12は、このように外部動力を一切使用せずに、原子炉格納容器3を静的に冷却できるように設計されている。
【0037】
次に、全交流電源喪失(Station Blackout、以下「SBO」ともいう。)等の過渡事象が発生した場合は、炉心で発生した崩壊熱は炉蒸気により逃がし安全弁72を通り圧力抑制プール6に導かれる。炉蒸気が圧力抑制プール6で凝縮することにより崩壊熱はプール水に伝達されプール水の温度が徐々に上昇する。一定時間が経過すると、プール水が飽和になり崩壊熱相当の蒸気がウェットウェル気相部7に連続的に流入しウェットウェル気相部7を加圧する。これにより真空破壊弁9が作動して、ウェットウェル気相部7内の窒素と蒸気はドライウェル4内に流入する。これによりドライウェル4が加圧されドライウェル4内の窒素と蒸気がガス供給配管20により静的格納容器冷却系12の熱交換器16に導かれて、蒸気は凝縮する。
【0038】
しかし、非凝縮性ガスである窒素はそのまま熱交換器16の内部に滞留するため静的格納容器冷却系12は機能を停止してしまう。ガスベント配管22が熱交換器16から圧力抑制プール6に導かれているが、SBO時にはウェットウェル気相部7の圧力が上昇するため熱交換器16内の非凝縮性ガスをウェットウェル気相部7にベントできないためである。
【0039】
このような課題を解決するために特許文献1においては、ドライウェル4およびウェットウェル5の外部に外部ウェル32を設けてその中に蓄えられた水封プールの内部にガスベント配管22を導き、熱交換器16内に滞留した非凝縮性ガスを外部ウェル32内に放出する方法が開示されている(特許文献1の
図2を参照)。ここで外部ウェル32内は窒素で置換されているため仮に水素がベントされた場合でも爆轟を防止できるように配慮されている。
【0040】
また、特許文献2では、ガス供給配管20をウェットウェル気相部7に接続してウェットウェル気相部7内の蒸気と窒素を直接熱交換器16に導き、熱交換器内に滞留した窒素等の非凝縮性ガスをガスベント配管22上に設けた排気ファン24を用いてドライウェル4内に排出する方法が開示されている(特許文献2の
図2を参照)。なお、いずれの場合にもガス供給配管20、凝縮水戻り配管21、ガスベント配管22は原子炉格納容器3の外部に設置されている。
【0041】
さらに、全交流電源喪失(SBO)等の過渡事象発生時に炉心溶融に至った場合に備えて、欧米に建設されるABWRでは、ペデスタルキャビティ61aの内部に、溶融弁64とLOCAベント管8からペデスタル61の壁を貫通し溶融弁64に接続する下部ドライウェル冠水配管65が設けられている。この溶融弁64と下部ドライウェル冠水配管65はLOCAベント管8の全てに設置されている。溶融弁64は、下部ドライウェル61aの温度が約260℃に達すると、低融点のプラグ部分が溶融して開になる。炉心溶融事故時には、炉心溶融物が原子炉圧力容器2の底部を溶融貫通してペデスタルキャビティ61a内に落下する。これによりペデスタルキャビティ61a内の温度が急激に上昇すると、溶融弁64が開になり、LOCAベント管8内の冷却水が下部ドライウェル冠水配管65を通りペデスタルキャビティ61a内に流入して炉心溶融物を冠水して冷却する。
【0042】
溶融弁64と同じ用途で、落下して来た高温の炉心溶融物に水をかけるための弁として、他に爆破弁とバネ式弁がある。ESBWR(Economic Simplified Boiling Water Reactor:高経済性単純化沸騰水型原子炉)は爆破弁を用いている。また、EPR(European Pressure Reactor:欧州加圧水型炉)はバネ式弁を用いている。その際に発生する大量の蒸気は、LOCAベント管8の開口部66から上部ドライウェルに流入し、さらにガス供給配管20を通り、静的格納容器冷却系12の熱交換器16に導かれて凝縮する。この際熱交換器16内に滞留する非凝縮性ガスは、ガスベント配管22でウェットウェル5内にベントされる。この状態ではドライウェル4内の圧力の方がウェットウェル5内の圧力よりも高いため、非凝縮性ガスは効率よくウェットウェル気相部7にベントされる。凝縮水は、凝縮水戻り配管21でLOCAベント管8に戻され再び下部ドライウェル冠水配管65を通り炉心溶融物の冷却に使用される。
【0043】
また、LOCAベント管8内のプール水は、水平ベント管8aを通り圧力抑制プール6からも供給されている。
【0044】
上記の溶融弁64と下部ドライウェル冠水配管65には、溶融弁64が開になった後に、ドライウェル4内の圧力が上昇すると下部ドライウェル61a内に溜まった高温水が圧力抑制プール6内に逆流し圧力抑制プール水を高温化させるという課題があった。この逆流防止対策を実施することは、下部ドライウェル冠水配管65の下部ドライウェル61aの部分は事故時には高温になり機器の作動を期待することができず、LOCAベント管8内の部分はベント管の安全機能の妨げとなることから機器を設置することが困難であり、対策の実施は困難であった。
【0045】
また、特許文献2の
図4では、熱交換器16で凝縮された凝縮水を凝縮水戻り配管21によりPCCSドレンタンク76に導く方法が開示されている。さらに、PCCSドレンタンク76の気相部にはオーバフロー配管77が設けられ、原子炉格納容器3内にオーバフロー水を戻すことが開示されている。しかし、ここで凝縮水戻り配管21、PCCSドレンタンク76、オーバフロー配管77はいずれも原子炉格納容器3の外部に設置されるためこれらの機器から放射性物質が外部の環境に漏洩する恐れがある。
【0046】
特許文献3では、PCCSドレンタンクをドライウェル内に設けPCCSドレンタンク内の冷却水を注水配管を用いて原子炉格納容器内に重力により注水する方法が開示されている。しかし、この方法では、PCCSドレンタンクはドライウェル内に設置するため、ABWRに供されるRCCVの場合には既にスペースの余裕がなく、この方法を実施することが不可能であった。
【0047】
次に、従来のフィルタベントシステムについて、
図14により説明する。フィルタベントシステム50は、チェルノビル原子力発電所の事故の後、欧州の原子力プラントで採用されている。
【0048】
図14は、従来のフィルタベントシステムの設計例を示す立断面図である。フィルタベントシステム50は、除染水52を蓄えたフィルタベント容器51と、原子炉格納容器3内のガスを除染水52に導く入口配管53と、フィルタベント容器51の気相部のガスを環境に放出する出口配管54とを有する。出口配管54の上部は排気塔75内を通っている。
【0049】
フィルタベント容器51等の設置場所は建屋内に限定されない。フィルタベント容器51等は、既設炉に後から設置される場合は、原子炉建屋の外部に設置されることが多い。一方、建設当初から設置する場合は原子炉建屋等の内部に設置されることもある。
【0050】
除染水52の内部にベンチュリスクラッバ55を設置し、入口配管53から導かれるガスをベンチュリスクラッバ55に通すタイプのものがあるが、ベンチュリスクラッバ55は必須ではない。また、フィルタベント容器51の気相部に金属ファイバフィルタ56を設置するタイプのものがあるが、金属ファイバフィルタ56は必須ではない。
【0051】
図14では、ベンチュリスクラッバ55と金属ファイバフィルタ56の両方を設けた場合について示している。入口配管53には、一例として、隔離弁57が1個、また、これと並列にラプチャディスク58が、また、ラプチャディスク58の前後に常時開の隔離弁59a、59bが設置されている。隔離弁57は、2個が直列に接続されていてもよい。
【0052】
また、出口配管54には出口弁60が設置されているが必須ではない。電動弁の代わりにラプチャディスクを用いることも多い。従来のフィルタベントシステムでは、入口配管53は、原子炉格納容器3内のガスを取入れるため、一端が原子炉格納容器3に直接接続されている。フィルタベントシステムは、CsI等の粒子状放射性物質はDF(Decontamination Factor:除染係数)1000〜10000程度で効率良く除去できるが放射性希ガスと有機ヨウ素は除去できないため、作動時にはこれらの放射性物質が出口配管54を通り環境に放出される。
【0053】
従来のフィルタベントシステムのフィルタベント容器51は大きさに制限があり、除染水(スクラビング水)の容量は100m
3以下のものが多い。このため放射性物質を除去するとその発熱により除染水52が蒸発して失われていく。したがって、実際の過酷事故時には除染水を外部から補給する必要があった。
【0054】
紛体分離器として、M.O.Morse(1886)によるサイクロン・セパレータがあり、製材所や石油精製施設等で一般に広く使用されている。サイクロン・セパレータは遠心分離器の原理を応用したものである。固体の混じった液体、気体を漏斗状または円筒のサイクロンの円周方向から気体、液体の流速により渦を描く様に流し込む。この際、気体、液体の排出方向はサイクロンの円の中心から上方向に排出する。固体は、遠心分離され、壁面に衝突しその後重力により落下、下に溜まる仕組みである。気体、液体は円の中心から排出されるため、固体成分の多くが除去されたものとなる。分離された個体を回収するために、サイクロンの下部に回収容器を設けているものが多い。サイクロン・セパレータは、入口から流入する流体の速度が大きいほど遠心力が大きくなり除去効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、
図1〜
図10を参照して本発明の実施形態に係る静的格納容器冷却フィルタベントシステムおよびこれを用いた原子力プラントについて説明する。ここで、前述の従来技術と同一または類似の部分について、また下記の実施形態どうしで同一または類似の部分については、共通の符号を付して、重複説明は省略し要部のみを説明する。
【0073】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる静的格納容器冷却フィルタベントシステムの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。また、
図2は、本発明の第1の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す平面図である。
図1および
図2に示す実施形態は、RCCVと呼ばれる原子炉格納容器を使用しているが、原子炉格納容器の型式はRCCVに限定されない。圧力抑制プールによる圧力抑制機能を持つ全ての圧力抑制型の原子炉格納容器に普遍的に適用される。また、材質もSC造や鋼製など他のものも使用可能である。
【0074】
図1において、炉心1は原子炉圧力容器2の内部に収納されている。原子炉圧力容器2は、原子炉格納容器3内に収納されている。原子炉格納容器3は円筒形状をしている(
図2を参照)。
【0075】
原子炉格納容器3の内部は、原子炉圧力容器2を収納するドライウェル4と、ウェットウェル5とに区分けされており、ドライウェル4とウェットウェル5とは原子炉格納容器3の一部を構成する。ウェットウェル5は内部に圧力抑制プール6を形成している。圧力抑制プール6の上方にはウェットウェル気相部7が形成されている。ドライウェル4とウェットウェル5の外壁部は一体化して原子炉格納容器3の円筒状の外壁部を構成している。ドライウェル4の天井部は平板になっておりこの部分をドライウェル4のトップスラブ4aと呼ぶ。原子炉格納容器3内の雰囲気は窒素で置換する。
【0076】
本実施形態においては、さらに、ドライウェル4とウェットウェル5の外部に外部ウェル32を設ける。外部ウェル32はドライウェル共通部壁4bを介してドライウェル4と隣接し、ウェットウェル共通部壁5aを介してウェットウェル5と隣接している。外部ウェル32の天井部は平板でこの部分を外部ウェル32のトップスラブ32aと呼ぶ。外部ウェル32内の雰囲気は窒素で置換する。外部ウェル32はドライウェル4およびウェットウェル5と同等の耐圧性と気密性を有する。
【0077】
外部ウェル32の材質は、鉄筋コンクリート製(RC)、SC造、鋼製など原子炉格納容器3と同じもの全てが使用可能である。鉄筋コンクリート製の場合は、原子炉格納容器3と同様に内面にライナが敷設される。
図2に示すように、本実施形態における外部ウェル32の平面形状は矩形でドライウェル4およびウェットウェル5の外壁の一部を囲むように構成されているが、外部ウェル32の平面形状はこれに限定されない。ドライウェル4およびウェットウェル5の外壁の少なくとも一部を囲むように隣接していれば任意の形状で良い。たとえば、台形、多角形、三日月型、部分的な円環形、完全な円環形などがある。
【0078】
さらに、外部ウェル32内に内部に水を貯えたスクラビングプール33を設け、上部を上蓋33aで覆う(
図3参照)。上蓋33aとプール水の間には空間33bを設ける。上蓋33aの上部に空間33bに開口した第1の出口配管33cを設ける。第1の出口配管33cの一端に金属ファイバフィルタ(フィルタ)34を接続して設ける。さらに、金属ファイバフィルタ34に接続して他端が外部ウェル32の内部に開口する第2の出口配管34aを設ける。
【0079】
図3に、スクラビングプール33と金属ファイバフィルタ34周りの詳細な構成を示す。空間33bはガスベント配管22からドライウェル4内のガスがベントされる際に水位上昇が発生した場合に必要となる。また、上蓋33aは地震時のスロッシングで水が流出することを防止するために必要である。
【0080】
金属ファイバフィルタ34は、図では1個のみを表示しているが複数個設置することもある。たとえば、PCCSの熱交換器16を4基設置し、ガスベント配管22を4本設置し、金属ファイバフィルタ34を4基設置する。あるいは、PCCSの熱交換器16を4基設置し、ガスベント配管22を2本に統合し、金属ファイバフィルタ34を2基設置するなどが考えられる。スクラビングプール33、上蓋33a、空間33bは一体化したタンクとしても良い。
【0081】
図1に示すように、原子炉格納容器3および外部ウェル32の上部に冷却水プール13が設けられ、内部に冷却水14を蓄えている。冷却水プール13はプール型とタンク型のいずれでも良い。
図1ではプール型のものを表示している。プール型の場合は上部を上蓋で覆う。また、冷却水プール13の上部の気相部分には環境へ蒸気を放出する排気口15が設けられている。
【0082】
冷却水プール13内には熱交換器16が設置されている。熱交換器16の少なくも一部は冷却水14に水没するように設置される。本実施形態では、熱交換器16は冷却水14に完全に水没するように設置される例を示している。熱交換器16の入口プレナム17にはガス供給配管20が接続されている。本実施形態では、ガス供給配管20の他端は、原子炉格納容器3のトップスラブ32aを貫通してドライウェル4内に開口している。
【0083】
また、熱交換器16の出口プレナム18の下部に凝縮水戻り配管21が接続されている。凝縮水戻り配管21は、外部ウェル32のトップスラブ32aを貫通して外部ウェル32の内部を通り、先端がウェットウェル5の内部の圧力抑制プール6に浸漬するように設置されている。このように凝縮水戻り配管21は外部ウェル32の内部を通るように設置されるので、凝縮水が漏洩してCsI等の放射性物質が直接環境に放出されない構造となっている。
【0084】
ドライウェル4内の雰囲気には炉心溶融事故が発生した場合には、CsI等の粒子状放射性物質が大量に含まれているが、熱交換器16で蒸気が凝縮する際にCsI等の粒子状放射性物質は凝縮水にほとんど移行する。そのCsIを大量に含んだ凝縮水は凝縮水戻り配管21により圧力抑制プール6のプール水に還流し保持されるので、本実施形態の静的格納容器冷却フィルタベントシステムは、原子炉格納容器3内に浮遊する粒子状放射性物質を静的に除去するように構成されている。
【0085】
したがって、本実施形態では、全交流電源喪失(SBO)により炉心溶融事故に至った場合であっても、あたかも動的な格納容器スプレイにより粒子状放射性物資を除去して圧力抑制プール6のプール水に還流しているのと同等の効果が得られる。また、凝縮水戻り配管21はLOCAベント管8の内部に設置しないのでLOCA時にLOCAベント管の圧損を増大させることがない構造となっている。
【0086】
さらに、熱交換器16の出口プレナム18の上部にはガスベント配管22が接続されている。ガスベント配管22は外部ウェル32のトップスラブ32aを貫通して外部ウェル32の内部を通り、先端はさらにスクラビングプール33のプール水の中に浸漬して設置されている。このようにガスベント配管22は外部ウェル32の内部を通るように設置されるので、ガスが漏洩して放射性希ガス、有機ヨウ素、CsI等の放射性物質が直接環境に放出されない構造となっている。この内、CsI等の粒子状放射性物質は、スクラビングプール33のプール水で除去され、さらに、金属ファイバフィルタ34により水滴等にキャリーオーバされたものも除去される構成になっている。
【0087】
これにより、CsI等の粒子状放射性物質が環境に放出されて土地が汚染され周辺住民の方達に長期間の移住をしていただく必要性を削除することが可能となっている。また、放射性希ガスと有機ヨウ素は第2の出口配管34aから外部ウェル32の内部に放出され外部ウェル32の内部に保持される。これにより従来のフィルタベントシステムが作動時に放射性希ガスと有機ヨウ素を環境に直接放出するため、事前に周辺住民の方達に緊急避難をしていただいたりヨウ素剤を服用していただいたりする必要性を削除することが可能になっている。
【0088】
また、本実施形態では、過酷事故時に大量に発生する水素についても、ガスベント配管22により外部ウェル32の内部に放出されるため、ドライウェル4およびウェットウェル5の過酷事故時の圧力を十分低く保つことが可能である。外部ウェル32の内部の雰囲気は窒素で置換されているので、大量の水素が閉じ込められても爆轟することがない。
【0089】
また、本実施形態では、下部ドライウェルを冠水するためにペデスタル61の壁を貫通し一端が下部ドライウェル(ペデスタルキャビティ)61a内に導かれ他端が圧力抑制プール6内に開口する冠水配管68を設ける。冠水配管68の下部ドライウェル61a内の部分には冠水弁67を設ける。また、冠水配管68の圧力抑制プール6内の部分には逆止弁(冠水逆止弁)69を設ける。逆止弁69を設けたことでドライウェル4内の圧力が上昇した場合でも下部ドライウェル61a内の高温水が圧力抑制プール6に逆流することを防止できる。また、逆止弁69は圧力抑制プール6内にあるのでLOCAベント管8の事故時の安全機能を妨げることがない。冠水配管68の設置位置はLOCAベント管8と重ならないようにたとえば、LOCAベント管とLOCAベント管の中間の位置として全体で10個設置する(
図2を参照)。
【0090】
冠水弁67は従来と同じ溶融弁を使用することが可能である。しかし、溶融弁以外にもSBO時に作動用電源を必要としないものは全て使用可能である。たとえば、爆破弁は作動に火薬を使用するので採用可能である。また、バネ式弁も作動にバネの力を使用するので採用可能である。さらに、信頼性を向上させるため、たとえば、10個の冠水弁の内5個を爆破弁として残りの5個をバネ式弁にすることがある。また、5個を溶融弁として残りの5個を爆破弁とすることがある。あるいは、溶融弁、爆破弁、バネ式弁の少なくとも2種類以上を混在して使用することがある。
【0091】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係わる静的格納容器冷却フィルタベントシステムの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。
【0092】
本実施形態においては、凝縮水戻り配管21はU字型に曲がった部分(「U字水封シール」と呼ぶ)35を有しドライウェル共通部壁4bを貫通してドライウェル4の内部に導かれる。U字水封シール35には内部に水を蓄えておく。また、凝縮水戻り配管21のドライウェル4内の先端にはスプレイ・スパージャ36が設置されている。スプレイ・スパージャ36は
図4ではドライウェル4の側壁に接するように描かれているが、この位置に限定されない。たとえば、ドライウェル4の天井に取り付けることでも良い。ドライウェル4内であって熱交換器16の出口プレナム18よりも低い位置であれば、重力で流れが生じるので、ドライウェル4のトップスラブ4aに取り付けることでも良い。また、凝縮水戻り配管21の熱交換器16とU字に曲がった部分(U字水封シール)35の間の部分に逆止弁(凝縮水逆止弁)37を設ける。逆止弁37はU字に曲がった部分(U字水封シール)35から熱交換器16に逆流する流れを防止する方向に設置される。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0093】
このように構成される本実施形態にあっては、凝縮水をドライウェル4の内部に散布することができるためドライウェル4の温度を低く維持することが可能になる。LOCAを起因事象として炉心溶融事故に至った場合には、炉心燃料から放出されるCsI等の放射性物質が配管の破断部分からドライウェル4内に放出されドライウェル4内に沈着する。これらの沈着した放射性物質が発生する崩壊熱によりドライウェル4内の温度が上昇する。これを放置すると原子炉格納容器3が過温破損するおそれがある。
【0094】
しかし、本実施形態では、ドライウェル4内に散布される凝縮水によりドライウェル4内の温度を低く制限して静的に原子炉格納容器の過温破損を防止することができる。スプレイ・スパージャ36を設けると注水を液滴化して除熱効果をさらに高めることができる。U字水封シール35があるので、ドライウェル4内のガスが凝縮水戻り配管21を逆流して伝熱管19をバイパスしてガスベント配管22によりスクラビングプール33にベントされることを防止できる。逆止弁37によりさらに確実に逆流を防止することができる。
【0095】
[第3の実施形態]
図5は、本発明の第3の実施形態に係わる静的格納容器冷却フィルタベントシステムの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。
【0096】
本実施形態においては、外部ウェル32の内部にPCCSドレンタンク38を設ける。PCCSドレンタンク38は内部に水封用の水を貯え上部に気相部を有している。この気相部からドライウェル4の内部までオーバフロー配管39を設け、その先端にスプレイ・スパージャ36を設ける。凝縮水戻り配管21の一端はPCCSドレンタンク38の水の中に浸漬している。凝縮水戻り配管21には逆止弁(凝縮水逆止弁)37を設け、PCCSドレンタンク38から熱交換器16への水の逆流を防止する構造となっている。また、PCCSドレンタンク38内水位計(図示せず)を設ける。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
【0097】
このように構成された本実施形態では、U字水封シール35(
図4)に比べて水封用の水をより多く確保できるようになる。水封用の水が多いと、逆流が発生した際の凝縮水戻り配管21内の逆圧防止に効く水頭圧を大きくすることが可能となる。また、PCCSドレンタンク38は外部ウェル32の内部に格納されているので、凝縮水に含まれるCsIなどの放射性物質を環境に直接漏洩する恐れがない。
【0098】
これにより、全交流電源喪失時に万一炉心燃料が損傷し放射性物質と水素が発生しても環境への放出と水素の爆轟を防止することが可能になる。また、過酷事故時の状態が長期化しても原子炉格納容器が過温破損することがなくなる。
【0099】
[第4の実施形態]
図6は、本発明の第4の実施形態に係わる静的格納容器冷却フィルタベントシステムの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。
【0100】
本実施形態においては、PCCSドレンタンク38の下部から注水配管40をペデスタルキャビティ61aの内部まで接続する。注水配管40のペデスタルキャビティ61a内の部分には注入弁41を設ける。また、注水配管40の外部ウェル32内の部分には元弁42を設ける。元弁42は通常時は開にしておく。PCCSドレンタンク38の内部に水を蓄えたドレン・ピット43を設け凝縮水戻り配管21の一端はこのドレン・ピット43内の水に浸漬している。注入弁41は溶融弁、爆破弁、バネ式弁のいずれも使用可能である。また、これらを複数並列に組み合わせて使用することも可能である。その他の構成は、第3の実施形態と同様である。
【0101】
本実施形態によれば注入弁41を開にすることによりPCCSドレンタンク38の内部に蓄えた水を重力により下部ドライウェル61aの内部に注水することが可能である。冠水弁67が多重故障により開失敗した場合のバックアップとして、PCCSドレンタンク38内の水を下部ドライウェル(ペデスタルキャビティ)61a内に落下した炉心溶融の冷却に使用することが可能になる。
【0102】
PCCSドレンタンク38内の水が注水に使用されて水位が低下しても、ドレン・ピット43内には水が残留するので、凝縮水戻り配管21を水封する機能は維持される。ドレン・ピット43には凝縮水戻り配管21から常に凝縮水が供給されPCCSドレンタンク38内にオーバフローするため、PCCSドレンタンク38は注水配管40により炉心溶融物の冷却を継続可能となる。
【0103】
PCCS12の熱交換器16に供給される蒸気はPCCSドレンタンク38が注水した水が下部ドライウェル61a内で炉心溶融物によって加熱されることにより発生する。つまり、本実施形態では、蒸気の発生と凝縮水の供給が継続して循環しつつ原子炉格納容器内の熱はPCCS12の熱交換器16から冷却水14に伝達されさらに排気口15から大気中に放出される。
【0104】
[第5の実施形態]
図7は、本発明の第5の実施形態に係わる静的格納容器冷却フィルタベントシステムの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。
【0105】
本実施形態においては、ガス供給配管20は、一端が熱交換器16の入口プレナム17に接続され外部ウェル32内を通り、もう一端がドライウェル共通部壁4bの部分でドライウェル4内に接続されてドライウェル4内のガスを熱交換器16に導く構造とする。また、ガス供給配管20のドライウェル4内の部分にスクリーン20aを設ける。その他の構成は、第1の実施形態ないし第4の実施形態と同様である。
【0106】
このように構成された本実施形態においては、ガス供給配管20が外部ウェル32内を通るので、ガス供給配管20内の放射性ガスや水素が配管から漏洩しても、放射性ガスおよび水素は外部ウェル32内に閉じ込められて環境に放出されることが抑制される。また、外部ウェル32内の雰囲気は窒素により置換されているので、水素が漏洩して来ても爆轟することを防止可能となる。スクリーン20aにより、LOCA時の急激なブローダウン時等にドライウェル4内に飛散する断熱材の破片等のルースパーツが熱交換器16の内部に吸引されることを防止できる。
【0107】
[第6の実施形態]
図8は、本発明の第6の実施形態に係わる静的格納容器冷却フィルタベントシステムの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。
【0108】
本実施形態では、サイクロン・セパレータ45を外部ウェル32の内部に設けて、ガス供給配管20の一端をサイクロン・セパレータ45の出口に接続する。また、サイクロン・セパレータ45の入口からドライウェル4の内部まで延びる入口配管46を設ける。さらに、入口配管46のドライウェル4内の一端にはスクリーン47を設ける構造とする。その他の構成は、第4の実施形態と同様である。
【0109】
このように構成された本実施形態では、LOCA時の急激なブローダウン時等にドライウェル4内に飛散する断熱材の破片等のルースパーツが熱交換器16の内部に吸引されることを防止できる。破片等のルースパーツはスクリーン47でほとんど除去される。一部の微細な固体についてはスクリーン47では除去されないが、微細な固体は入口配管46によりサイクロン・セパレータ45内に導かれて除去される。除去された微細な固体はサイクロン・セパレータ45の下部に設置されている回収容器に回収される。過酷事故時の入口配管46内のガス流量は蒸気だけでも約25000m
3/hと非常に大きいため、サイクロン・セパレータ45は高効率で微細固体を除去できる。その結果、伝熱管19がドライウェル4内の破片等のルースパーツで目詰まりすることを防止できる。
【0110】
[第7の実施形態]
図9は、本発明の第7の実施形態に係わる静的格納容器冷却フィルタベントシステムの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。
【0111】
本実施形態においては、ガス供給配管20上に新たに通常時閉の隔離弁(ガス供給隔離弁)20bを設ける。隔離弁20bは電動弁、溶融弁、爆破弁、バネ式弁のいずれであっても良い。さらに新たにウェットウェル5内のガスを熱交換器16に導くウェットウェル・ガス供給配管48を設ける。ウェットウェル・ガス供給配管48の一端は、ウェットウェル共通部壁5aの部分を貫通してウェットウェル気相部7内に開口している。ウェットウェル・ガス供給配管48の他端は、ガス供給配管20の入口プレナム17と隔離弁20bとの間の部分に接続する。また、他の構成例として、当該ウェットウェル・ガス供給配管48の他端を熱交換器16の入口プレナム17に接続してもよい。ウェットウェル・ガス供給配管48は外部ウェル32内を通る。
【0112】
さらに、ウェットウェル・ガス供給配管48上には逆流防止装置49が設けられ、入口プレナム17内のガスが逆流してウェットウェル気相部7に流入することを防止する構造となっている。逆流防止装置49は、逆止弁、真空破壊弁のいずれであっても良い。ガス供給配管20上の隔離弁20bの設置位置は、
図9では外部ウェル32の内部としているが、ドライウェル4内でも良いし外部ウェル32のトップスラブ32aの上部であっても良い。このように隔離弁20bの機能はガス供給配管20を隔離することであるので、隔離弁20bはガス供給配管20上の任意の位置であって良い。
【0113】
このように構成された本実施形態にあっては、LOCA時のブローダウン時等のドライウェル4内の急激な圧力上昇が発生する場合であっても、ガス供給配管20は隔離弁20bにより閉鎖されているためドライウェル4内で発生する可能性のある断熱材の破片等のルースパーツが熱交換器16に流入することが完全に防止される。ドライウェル4内のガスはLOCAベント管8を通り圧力抑制プール6を経てウェットウェル気相部7に達する。その際、プール水で蒸気が凝縮され、CsI等の放射性物質が除去され、ルースパーツも除去される。
【0114】
その結果、主に非凝縮性ガスの窒素、水素、放射性希ガス、有機ヨウ素がウェットウェル気相部7に達する。これらのガスはさらに、ウェットウェル・ガス供給配管48により熱交換器16に導かれ、さらにガスベント配管22によりスクラビングプール33を経て外部ウェル32内に放出される。この過程でウェットウェル気相部7のガスに大量の蒸気は含まれていないため、スクラビングプール33の水が蒸気の熱で高温化することが防止される。そのためスクラビングプール33の保有水量を少なくすることが可能になる。たとえば、100m
3以下で十分となる。
【0115】
全交流電源喪失(SBO)時に炉心溶融を防止できる場合には、原子炉圧力容器2内の蒸気は逃がし安全弁(SRV)72(
図11参照)により圧力抑制プール6に伝わり、プール水が高温化して飽和に達すると、ウェットウェル気相部7に蒸気が発生する。この場合は、ウェットウェル気相部7内の蒸気はウェットウェル・ガス供給配管48により熱交換器16に供給され凝縮される。この場合の蒸気流量は崩壊熱相当であり、熱交換器16により全量凝縮される。したがって、ガスベント配管22により蒸気がスクラビングプール33に移行してプール水を高温化することがない。
【0116】
全交流電源喪失(SBO)時に炉心溶融が発生し、炉心溶融物が原子炉圧力容器2の底部を溶融貫通して下部ドライウェル61a内に落下した場合は、冠水弁67が作動して炉心溶融物を冠水して冷却する。その際大量の蒸気が発生して開口部66を通り上部ドライウェルに移行する。この場合も、蒸気はLOCAベント管8を通り圧力抑制プール6で凝縮される。その際発生した水素は、ウェットウェル気相部7に移行して、さらにウェットウェル・ガス供給配管48により熱交換器16に移行し、さらにガスベント配管22によりスクラビングプール33を経て外部ウェル32の内部に放出される。その過程で、水素に随伴していた放射性物質は圧力抑制プール6とスクラビングプール33とで2度にわたり除去される。圧力抑制プール6の水が飽和に達すると蒸気凝縮能力はなくなるが、その後はウェットウェル・ガス供給配管48によりウェットウェル気相部7内の蒸気は静的格納容器冷却系12の熱交換器16によって凝縮される。
【0117】
ガスベント配管22は外部ウェル32の内部に導かれているので、熱交換器16の内部に滞留する非凝縮性ガスは効率良く外部ウェル32の内部に排出される。これはウェットウェル気相部7の圧力が外部ウェル32内の圧力よりも高く維持されているからである。そのためウェットウェル・ガス供給配管48をウェットウェル気相部7に接続していても特許文献2のように動的なファンを用いて熱交換器16の内部に滞留する非凝縮性ガスをドライウェル4内に強制的にベントする必要がない。
【0118】
したがって、ガス供給配管20上に設けられた隔離弁20bを開にする必要性はないが、もし、隔離弁20bを開にした場合には、炉心溶融物の冷却で発生するドライウェル4内の蒸気を直接ガス供給配管20により熱交換器16に導き凝縮できるので、ドライウェル4の圧力・温度をより低く維持する効果が得られる。隔離弁20bを開にする場合には、冠水弁67が開になりドライウェル4内の大量の蒸気の発生が収束してから実施する。隔離弁20bを開にするとガス供給配管20とウェットウェル・ガス供給配管48とが連通してドライウェル4内のガスがウェットウェル気相部7に逆流するおそれがあるが、ウェットウェル・ガス供給配管48上に逆流防止装置49が設けられているためガスの逆流が発生することは防止される。
【0119】
[第8の実施形態]
図10は、本発明の第8の実施形態に係わる静的格納容器冷却フィルタベントシステムの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。
【0120】
本実施形態においては、スクラビングプール33(
図1〜
図9)として除染水52を内部に蓄えたフィルタベント容器51を設け、ガスベント配管22の先端をフィルタベント容器51の入口配管53に接続し、フィルタベント容器51は出口配管54により外部ウェル32内に開口する構造とする。また、フィルタベント容器51の内部に金属ファイバフィルタ56やベンチュリスクラッバ55を設けた構造とする。
【0121】
このように構成された本実施形態にあっては、既に開発されている高性能なフィルタベントシステムのフィルタベント容器を使用することができるのでさらに高効率で放射性物質の除去が行える効果がある。
【0122】
[その他の実施形態]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。