特許第6367024号(P6367024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367024消化槽の加熱システム及び汚泥消化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367024
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】消化槽の加熱システム及び汚泥消化システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20180723BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20180723BHJP
   F25B 27/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C02F11/04 ZZAB
   F25B27/00 H
   F25B27/02 Q
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-139811(P2014-139811)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-16351(P2016-16351A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(73)【特許権者】
【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591023479
【氏名又は名称】ダイダン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593190674
【氏名又は名称】株式会社寺田鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】貫上 佳則
(72)【発明者】
【氏名】中尾 正喜
(72)【発明者】
【氏名】長廣 剛
(72)【発明者】
【氏名】早川 慶朗
(72)【発明者】
【氏名】大平 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】寺田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】栂野 良枝
(72)【発明者】
【氏名】上田 憲治
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−036781(JP,A)
【文献】 特開2011−167648(JP,A)
【文献】 実開昭57−076899(JP,U)
【文献】 実開昭58−023700(JP,U)
【文献】 特開昭59−166295(JP,A)
【文献】 実開昭56−017992(JP,U)
【文献】 特表平03−503257(JP,A)
【文献】 米国特許第05207911(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
F25B 27/00
F25B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプを用いず、再生可能エネルギーを熱源として用いて熱媒体を加熱する第1加熱手段と、
前記ヒートポンプを有するとともに、消化処理完了後の汚泥、下水処理水、湖水及び井水のうち少なくとも一つから採取する未利用熱エネルギー及び再生可能エネルギーの少なくともいずれか一方を熱源として用いて、熱媒体を加熱する第2加熱手段と、
前記第1加熱手段により加熱された熱媒体及び前記第2加熱手段により加熱された熱媒体の少なくともいずれか一方と消化槽の汚泥との間で熱交換を行わせて、前記消化槽の汚泥を加熱する熱交換器と
を具備し、
前記第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が所定の第1閾値以上である場合に、前記第1加熱手段を用いて前記消化槽の汚泥を加熱し、
前記第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値未満である場合に、前記第2加熱手段を用いて前記消化槽の汚泥を加熱し、
前記第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値以上であり、かつ、前記熱交換器入口側の熱媒体の温度が所定の第2閾値以下である場合に、前記第1加熱手段により加熱された熱媒体及び前記第2加熱手段により加熱された熱媒体が前記熱交換器に供給される消化槽の加熱システム。
【請求項2】
前記第2加熱手段は、前記第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値未満であり、かつ、前記第2加熱手段入口側の熱媒体の温度が所定の第3閾値未満である場合に、前記再生可能エネルギーを用いて前記第1加熱手段により加熱された熱媒体及び前記未利用熱エネルギーを熱源として用いて熱媒体を加熱する請求項1に記載の消化槽の加熱システム。
【請求項3】
下水等の汚泥を取り込んで嫌気性微生物処理を実行して消化させる消化槽と、
請求項1または請求項2に記載の消化槽の加熱システムと
を備える汚泥消化システム。
【請求項4】
ヒートポンプを用いず、再生可能エネルギーを熱源として用いて熱媒体を加熱する第1加熱工程と、
消化処理完了後の汚泥、下水処理水、湖水及び井水のうち少なくとも一つから採取する未利用熱エネルギー及び再生可能エネルギーの少なくともいずれか一方を熱源として用いて、前記ヒートポンプにより熱媒体を加熱する第2加熱工程と、
前記第1加熱工程により加熱された熱媒体及び前記第2加熱工程により加熱された熱媒体の少なくともいずれか一方と消化槽の汚泥との間で熱交換を行わせて、前記消化槽の汚泥を加熱する熱交工程と
を含み、
前記第1加熱工程により加熱された熱媒体の温度が所定の第1閾値以上である場合に、前記第1加熱工程を用いて前記消化槽の汚泥を加熱し、
前記第1加熱工程により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値未満である場合に、前記第2加熱工程を用いて前記消化槽の汚泥を加熱し、
前記第1加熱工程により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値以上であり、かつ、前記熱交工程を行う熱交換器入口側の熱媒体の温度が所定の第2閾値以下である場合に、前記第1加熱工程により加熱された熱媒体及び前記第2加熱工程により加熱された熱媒体が前記熱交換器に供給される消化槽の加熱方法。
【請求項5】
前記第2加熱工程は、前記第1加熱工程により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値未満であり、かつ、前記第2加熱工程を行う第2加熱手段入口側の熱媒体の温度が所定の第3閾値未満である場合に、前記再生可能エネルギーを用いて前記第1加熱工程により加熱された熱媒体及び前記未利用熱エネルギーを熱源として用いて熱媒体を加熱する請求項4に記載の消化槽の加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化槽の加熱システム及び汚泥消化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水の浄化処理で生ずる汚泥を嫌気性菌等の微生物の作用で消化する汚泥消化システムにおいて、水冷ヒートポンプを用いて汚泥消化槽の汚泥を加熱するシステムが知られている。
例えば、特許文献1には、水冷ヒートポンプを用いて下水から回収した排熱で消化槽内の汚泥を加熱する汚泥消化システムが開示されている。特許文献2には、消化槽(生物反応槽)から排出される消化汚泥中から熱回収する第1の熱交換器と、第1の熱交換器との間でヒートポンプサイクルを構成し、第1の熱交換器で回収された熱により消化槽内の汚泥を所定温度に加熱する第2の熱交換器とを備える汚泥消化システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−36781号公報
【特許文献2】特開2011−167648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の汚泥消化システムは、下水や消化が完了した消化汚泥から熱回収して、ヒートポンプを用いて消化槽内の汚泥を加熱するものであるが、場合によっては採熱量が不足し、消化槽内の汚泥を所望の温度にできないおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、環境負荷の増大抑制及び省エネルギー化を図りながら、消化槽内の汚泥加熱の信頼性を向上させることのできる消化槽の加熱システム及び汚泥消化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、ヒートポンプを用いず、再生可能エネルギーを熱源として用いて熱媒体を加熱する第1加熱手段と、前記ヒートポンプを有するとともに、消化処理完了後の汚泥、下水処理水、湖水及び井水のうち少なくとも一つから採取する未利用熱エネルギー及び再生可能エネルギーの少なくともいずれか一方を熱源として用いて、熱媒体を加熱する第2加熱手段と、前記第1加熱手段により加熱された熱媒体及び前記第2加熱手段により加熱された熱媒体の少なくともいずれか一方と消化槽の汚泥との間で熱交換を行わせて、前記消化槽の汚泥を加熱する熱交換器とを具備し、前記第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が所定の第1閾値以上である場合に、前記第1加熱手段を用いて前記消化槽の汚泥を加熱し、前記第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値未満である場合に、前記第2加熱手段を用いて前記消化槽の汚泥を加熱し、前記第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値以上であり、かつ、前記熱交換器入口側の熱媒体の温度が所定の第2閾値以下である場合に、前記第1加熱手段により加熱された熱媒体及び前記第2加熱手段により加熱された熱媒体が前記熱交換器に供給される消化槽の加熱システムである。
【0007】
本態様によれば、第1加熱手段において再生可能エネルギーを熱源として熱媒体が加熱され、ヒートポンプを備える第2加熱手段において未利用熱エネルギー及び再生可能エネルギーの少なくともいずれか一方を熱源として用いて熱媒体が加熱される。そして、このようにして加熱された熱媒体と消化槽の汚泥との間で熱交換が行われることにより、消化槽の汚泥が加熱される。
このように、本態様によれば、第1加熱手段と第2加熱手段とからなる2つの熱媒生成手段を備えているので、消化槽の汚泥を加熱するためのより多くの熱量を確保することが可能となる。更に、第1加熱手段は再生可能エネルギーを熱源とし、第2加熱手段は未利用熱エネルギー及び再生可能エネルギーの少なくともいずれか一方を熱源としているので、環境負荷の増大を抑制できるとともに、省エネルギー化を図ることができる。
【0008】
またこのような構成によれば、第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が第1閾値以上である場合には、第1加熱手段によって加熱された熱媒体と消化槽の汚泥との間で熱交換が行われることにより汚泥が加熱され、第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が第1閾値未満である場合には、第2加熱手段により加熱された熱媒体と消化槽の汚泥との間で熱交換が行われることにより汚泥が加熱される。
第1加熱手段は、ヒートポンプを起動させる必要がないことから第2加熱手段よりも省エネルギー化を望むことが可能である一方、再生可能エネルギーを熱源とするため、第2加熱手段に比べて熱量が不安定となる。このような特性から、第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が第1閾値以上である場合、換言すると、第1加熱手段によって加熱された熱媒体によって消化槽の汚泥を所望の温度まで加熱できる場合には、第1加熱手段を優先的に利用することにより、省エネルギー化を図ることができる。また、第1加熱手段だけでは、消化槽の汚泥を所望の温度まで加熱できないと判定した場合には、第2加熱手段を用いることにより、安定した汚泥の加熱を行うことが可能となる。
上記「第1の閾値」は、消化槽の汚泥を所望の温度まで加熱可能な熱媒体の温度に設定
されている。
【0009】
第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が第1閾値以上であっても、前記熱交換器入口側の熱媒体温度、換言すると、前記熱交換器に供給される熱媒体の温度が第2閾値以下の場合には、消化槽の汚泥を所望の温度まで加熱できないおそれがある。このため、熱交換器入口側の熱媒体温度が第2閾値以下である場合には、第1加熱手段と第2加熱手段とを併用して消化槽の汚泥を加熱することとしている。これにより、消化槽の汚泥加熱の信頼性を向上させることができる。
上記「第2の閾値」は、消化槽の汚泥を所望の温度まで加熱可能な熱媒体の温度に設定されている。また、第2の閾値は、第1の閾値と同値であってもよい。
【0010】
上記消化槽の加熱システムにおいて、前記第2加熱手段は、前記第1加熱手段により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値未満であり、かつ、前記第2加熱手段入口側の熱媒体の温度が所定の第3閾値未満である場合に、前記再生可能エネルギーを用いて前記第1加熱手段により加熱された熱媒体及び前記未利用熱エネルギーを熱源として用いて熱媒体を加熱することとしてもよい。
【0011】
本発明の第2態様は、下水等の汚泥を取り込んで嫌気性微生物処理を実行して消化させ
る消化槽と、上記の消化槽の加熱システムとを備える汚泥消化システムである。
【0012】
本発明の第3態様は、ヒートポンプを用いず、再生可能エネルギーを熱源として用いて熱媒体を加熱する第1加熱工程と、消化処理完了後の汚泥、下水処理水、湖水及び井水のうち少なくとも一つから採取する未利用熱エネルギー及び再生可能エネルギーの少なくともいずれか一方を熱源として用いて、前記ヒートポンプにより熱媒体を加熱する第2加熱工程と、前記第1加熱工程により加熱された熱媒体及び前記第2加熱工程により加熱された熱媒体の少なくともいずれか一方と消化槽の汚泥との間で熱交換を行わせて、前記消化槽の汚泥を加熱する熱交工程とを含み、前記第1加熱工程により加熱された熱媒体の温度が所定の第1閾値以上である場合に、前記第1加熱工程を用いて前記消化槽の汚泥を加熱し、前記第1加熱工程により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値未満である場合に、前記第2加熱工程を用いて前記消化槽の汚泥を加熱し、前記第1加熱工程により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値以上であり、かつ、前記熱交工程を行う熱交換器入口側の熱媒体の温度が所定の第2閾値以下である場合に、前記第1加熱工程により加熱された熱媒体及び前記第2加熱工程により加熱された熱媒体が前記熱交換器に供給される消化槽の加熱方法である。
【0013】
上記消化槽の加熱方法において、前記第2加熱工程は、前記第1加熱工程により加熱された熱媒体の温度が前記第1閾値未満であり、かつ、前記第2加熱工程を行う第2加熱手段入口側の熱媒体の温度が所定の第3閾値未満である場合に、前記再生可能エネルギーを用いて前記第1加熱工程により加熱された熱媒体及び前記未利用熱エネルギーを熱源として用いて熱媒体を加熱することとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、環境負荷の増大抑制及び省エネルギー化を図りながら、消化槽内の汚泥加熱の信頼性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る汚泥消化システムの概略構成を示したシステム構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る消化槽の加熱システムの制御方法を示したフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る消化槽の加熱システムの制御方法を示したフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る消化槽の加熱システムの第1運転モードについてのシステム構成を示した図である。
図5】本発明の一実施形態に係る消化槽の加熱システムの第2運転モードについてのシステム構成を示した図である。
図6】本発明の一実施形態に係る消化槽の加熱システムの第3運転モードにおいて、熱源水の熱源として消化汚泥のみを用いる場合のシステム構成を示した図である。
図7】本発明の一実施形態に係る消化槽の加熱システムの第3運転モードにおいて、熱源水の熱源として消化汚泥と太陽熱温水を用いる場合のシステム構成を示した図である。
図8】本発明の一実施形態に係る消化槽の加熱システムの第3運転モードにおいて、熱源水の熱源として消化汚泥、下水処理水、及び太陽熱温水を用いる場合のシステム構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る汚泥消化システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る汚泥消化システムの概略構成を示したシステム構成図である。図1に示すように、汚泥消化システム1は、下水等の汚泥を取り込んで嫌気性微生物処理を実行して消化させる消化槽2と、消化槽2に滞留される汚泥を加熱するための消化槽の加熱システム3とを備えている。
【0017】
消化槽2には、汚泥が循環する循環配管L30が設けられている。循環配管L30には、汚泥を圧送するためのポンプPe1が設けられている。
消化槽の加熱システム3は、第1加熱装置(第1加熱手段)11、第2加熱装置(第2加熱手段)12、熱交換器14、及び制御装置10を主な構成として備えている。
第1加熱装置11は、再生可能エネルギーを熱源として用いて熱媒体を加熱するものである。本実施形態では、第1加熱装置11として、太陽熱を利用して熱媒体を加熱する太陽熱パネルを採用する場合について説明するが、この例に限定されず、例えば、地熱を利用して熱媒体を加熱する装置等を利用してもよい。
【0018】
第2加熱装置12は、ヒートポンプを有し、未利用熱エネルギー及び太陽熱等の再生可能エネルギーの少なくともいずれか一方を熱源として熱媒体を加熱するものである。具体的には、未利用熱エネルギー及び太陽熱等の再生可能エネルギーの少なくともいずれか一方を熱源として熱源水を加熱し、加熱後の熱源水を用いて熱媒体を加熱する。なお、ヒートポンプを用いて熱媒体を加熱するための構成や機能については公知のため、詳細な説明は省略する。第2加熱装置12の一例としては、例えば、水熱源ヒートポンプ等が挙げられる。
【0019】
本実施形態では、未利用熱エネルギーとして、消化処理完了後の汚泥(以下「消化汚泥」という。)および下水処理水を用いている。消化汚泥から熱を採取するために、消化汚泥と熱源水との間で熱交換を行う汚泥熱交換器16が設けられている。同様に、下水処理水から熱を採取するために、熱源水との間で熱交換を行う処理水熱交換器17が設けられている。汚泥熱交換器16に消化汚泥を供給する配管L21には、消化汚泥を圧送するポンプPslが設けられ、同様に、処理水熱交換器17に下水処理水を供給する配管L22には、下水処理水を圧送するポンプPswが設けられている。
【0020】
本実施形態では、熱媒体として水を利用するが、これに限定されず、他の媒体であってもよい。また、未利用熱エネルギーの一例として消化汚泥、下水処理水を例示しているが、湖水、井水等の他の未利用熱エネルギーを利用してもよい。
【0021】
第1加熱装置11により加熱された温水(以下「太陽熱温水」という。)は配管L1に送出される。第2加熱装置12により加熱された温水は配管L2に送出される。配管L1と配管L2とは配管L3に接続しており、配管L3を通じてそれぞれの温水が熱交換器14に供給される。熱交換器14は、配管L3を通じて供給される温水と消化槽2の汚泥との間で熱交換させ、汚泥を加熱する。熱交換器14において熱交換を終えることにより温度が低下した低温水は、配管L5に送出される。配管L5は、配管L7と配管L8に分岐し、配管L7を通じて低温水が第2加熱装置12に供給され、配管L8を通じて低温水が第1加熱装置11に供給され、上述のように加熱されて温水が生成される。
【0022】
また、配管L3及び配管L5の間には、熱交換器14をバイパスするバイパス配管L6が接続されている。バイパス配管L6にはバルブBp5が設けられている。夏期などにおいて、配管L3から熱交換器14に供給される温水の温度が高すぎる場合には、バルブBp5の開度を調節することにより、熱交換機14に供給される温水の量が調整され、熱交換器14における熱量が適切な値に調整される。
【0023】
なお、本実施形態において、熱交換器14の入口側にタンクを設け、タンクを経由して熱交換器14に熱媒体が供給される構成としてもよい。タンクを設けることにより、熱交換器14に供給される温水の温度の変動を更に抑制することが期待できる。また、熱交換器14の出口側にタンクを設けることとしてもよい。
【0024】
上記配管L1、L2、L3、L7、L8には、バルブBp3、Bt3、Bt1、Bhp1、Bp1がそれぞれ設けられている。更に、配管L4、L5、L8には、熱媒体である水を圧送するためのポンプPe2、Pt、Ppがそれぞれ設けられている。
【0025】
次に、第2加熱装置12の熱源水の循環経路について説明する。汚泥熱交換器16において消化汚泥との間で熱交換されて加熱された熱源水(例えば、温水)は、配管L11に送出される。処理水熱交換器17において下水処理水との間で熱交換されて加熱された熱源水(例えば、温水)は、配管L12に送出される。配管L11、L12、及び配管L1から分岐した配管L13は、配管L14に接続しており、この配管L14を通じてそれぞれの熱源水(温水)が第2加熱装置12に供給される。ここで、配管L13が配管L1から分岐して配管L14に接続されていることにより、第1加熱装置11により加熱された温水を第2加熱装置12の熱源水としても利用することができる。
【0026】
第2加熱装置12の凝縮器(図示略)において、第2加熱装置12内を循環する冷媒を加熱することで冷やされた熱源水は、配管L15に送出される。配管L15は、配管L16、17、18にそれぞれ分岐され、配管L16を通じて汚泥熱交換器16に、配管L17を通じて処理水熱交換器17に、熱源水が供給される。また、配管L18は、配管L8に接続しており、配管18及び配管8を通じて熱源水(低温水)が第1加熱装置11に供給される。
【0027】
配管L13、L14、L16、L17、L18には、バルブBp4、Bhp2、Bsl、Bsw、Bp2がそれぞれ設けられている。更に、配管L14には、熱源水を圧送するためのポンプPhpが設けられている。
【0028】
配管L1には第1加熱装置11から送出される太陽熱温水の温度(以下「太陽熱温水温度」という)Tpを計測する温度センサS1が、配管L14には第2加熱装置12に供給される熱源水の温度(以下「熱源水入口温度」という)Thpを計測する温度センサS2が、配管L3には熱交換器14の入口側の熱媒体温度(以下「熱交換器入口温度」という)Ttを計測する温度センサS3がそれぞれ設けられている。
【0029】
配管L3には、バルブBt1をバイパスするバイパス流路L20が設けられている。バイパス流路L20には、ボイラ20が設けられ、熱交換器入口温度Ttに応じて、ボイラ20による熱媒体の加熱が可能な構成とされている。バイパス流路L20には、バルブBb1及びボイラ20に温水を圧送するためのポンプPbが設けられている。
【0030】
上記温度センサS1〜S3によって計測された太陽熱温水温度Tp、熱源水入口温度Thp、熱交換器入口温度Ttは制御装置10に送信される。制御装置10は、これらの計測温度に基づいて上述した各種バルブの開度及びポンプを制御する。
【0031】
制御装置10は、例えば、コンピュータシステム(計算機システム)であり、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されているプログラムをCPUが読み出して実行することにより、後述する処理が実現される。
【0032】
次に、制御装置10により実行されるバルブ及びポンプの制御について図2及び図3を参照して説明する。なお、以下に説明する処理は、所定のサンプリング周期で繰り返し実行されるものである。
【0033】
まず、太陽熱温水温度Tpが所定の第1閾値以上であるか否かを判定し(ステップSA1)、第1閾値以上であれば(ステップSA1において「YES」)、第1加熱装置11によって加熱された太陽熱温水により消化槽2の汚泥を加熱する第1運転モードが選択される(ステップSA2)。
【0034】
この場合、図4に示すように、バルブBp3、Bt1、Bp1は開状態、他のバルブは閉状態とされる。図4において、白抜きのバルブは全開状態、黒抜きのバルブは全閉状態を示している。図5から図8においても同様である。また、ポンプPe1、Pe2、Pt、Ppは駆動状態、ポンプPhp、Pb、Psl、Pswは停止状態とされる。また、この場合、第2加熱装置12、ボイラ20、汚泥熱交換器16、処理水熱交換器17は停止状態とされる。なお、本実施形態では、バルブBp3、Bt1、Bp1以外のバルブについては全て閉状態としたが、ポンプPhp、Pbが停止していることを条件に開状態とされていてもよい。この場合でも、バルブBp4については閉状態とされることが必要である。これにより、第1加熱装置11から送出される太陽熱温水のみが熱交換器14に供給される配管接続とされ、この太陽熱温水を用いた消化槽2の汚泥加熱が行われる。
【0035】
次に、熱交換器入口温度Ttが所定の第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップSA3)。この結果、熱交換器入口温度Ttが第2閾値以上である場合には(ステップSA3において「YES」)、図4に示した第1運転モードが継続して選択され、第1加熱装置11からの太陽熱温水による消化槽2の汚泥の加熱が行われる(ステップSA4)。
【0036】
一方、ステップSA3において、熱交換器入口温度Ttが第2閾値未満である場合には、太陽熱温水だけでは熱量不足として、第1加熱装置11と第2加熱装置12とを併用する第2運転モードが選択される(ステップSA5)。また、第2加熱装置12に供給される熱源水は、汚泥熱交換器16において消化汚泥と熱交換されて温められた熱源水とされる(ステップSA6)。
【0037】
具体的には、図5に示すように、図4の状態に対して、バルブBt3、Bhp1が開状態とされるとともに、第2加熱装置12が起動することにより、熱媒体の循環経路に第2加熱装置12が追加される。また、バルブBsl、Bhp2が開状態とされ、ポンプPhpが駆動されることにより、第2加熱装置12に熱源水を供給する配管系統が形成される。そして、汚泥熱交換器16が起動されるとともにポンプPslが駆動されることにより、消化汚泥の熱により熱源水が加熱され、加熱後の熱源水が第2加熱装置12に供給されることとなる。
【0038】
次に、第2加熱装置12の熱源水入口温度Thpが所定の第3閾値以上であるか否かを判定する(ステップSA7)。ここで、第3閾値は、例えば、熱交換をする消化汚泥(例えば、45℃程度)、下水処理水(例えば、冬期18度程度、夏期28℃程度)の温度帯をもとに設定される。この結果、熱源水入口温度Thpが第3閾値以上である場合には(ステップSA7において「YES」)、図5の状態が維持される。他方、ステップSA7において、熱源水入口温度Thpが第3閾値未満である場合には(ステップSA7において「NO」)、第2運転モードにおいて、消化汚泥に加えて排水処理水からも採熱して熱源水を加熱する構成とされる(ステップSA8)。すなわち、この場合には、図5の状態に対して、バルブBswが更に開状態とされるとともに、処理水熱交換器17が起動され、ポンプPswが駆動される。
【0039】
また、ステップSA1において、太陽熱温水温度Tpが第1閾値未満であった場合には(ステップSA1において「NO」)、第1加熱装置11において加熱された太陽熱温水は消化槽2の汚泥加熱に用いずに、第2加熱装置12で加熱された温水のみを用いて消化槽2の汚泥を加熱する第3運転モードが選択される(図3のステップSA9)。このとき第2加熱装置12に供給される熱源水は、汚泥熱交換器16において消化汚泥と熱交換されて温められた熱源水とされる(ステップSA10)。この場合、図6に示すように、バルブBt3、Bt1、Bhp1は開状態、バルブBp1、Bp3が閉状態、ポンプPe1、Pe2、Ptは駆動状態とされることにより、第2加熱装置12と熱交換器14との間を熱媒体が循環する循環経路が形成される。また、第2加熱装置12の熱源水の循環経路については、バルブBsl、Bhp2が開状態、バルブBsw、Bp2、Bp4が閉状態、ポンプPhpが駆動状態とされることで、汚泥熱交換器16において消化汚泥から採熱されて温められた熱源水が第2加熱装置12に熱源として供給されることとなる。この場合、第1加熱装置11及びポンプPpは停止される。
【0040】
次に、第2加熱装置12の熱源水入口温度Thpが所定の第4閾値以上であるか否かを判定する(ステップSA11)。ここで、第4閾値は、例えば、上述した第3閾値と同様、熱交換をする消化汚泥(例えば、45℃程度)、下水処理水(例えば、冬期18度程度、夏期28℃程度)の温度帯をもとに設定されている。この結果、熱源水入口温度Thpが第4閾値以上である場合には(ステップSA11において「YES」)、図6の状態が維持される。一方、ステップSA11において、熱源水入口温度Thpが第4閾値未満である場合には(ステップSA11において「NO」)、消化汚泥からの採熱に加えて第1加熱装置11により加熱された温水を第2加熱装置12の熱源水として利用する(ステップSA12)。この場合、図7に示すように、図6の状態に対して、バルブBp2、Bp4が開状態とされ、ポンプPp及び第1加熱装置11が駆動される。これにより、熱源水の循環経路に第1加熱装置11が含められることとなる。
【0041】
また、図7に示した状態においても熱源水入口温度Thpが第4閾値未満である場合には(ステップSA13において「NO」)、下水処理水からの採熱が加えられ、消化汚泥及び下水処理水から採熱されて温められた熱源水とともに、第1加熱装置11による太陽熱温水が第2加熱装置12に熱源として供給される(ステップSA14)。この場合、図8に示すように、図7に示した状態に対して、バルブBswが更に開状態とされ、処理水熱交換器17が起動されるとともに、ポンプPswが駆動される。
なお、上記の制御において、第1加熱装置11及び第2加熱装置12の両方を駆動しても温水の熱量が不足する場合には、バルブBb1を開状態とするとともに、ポンプPbお及びボイラ20を起動させ、ボイラ20により温水を加熱することで、熱量不足分を補うこととしてもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る汚泥消化システム1及び消化槽の加熱システム3によれば、第1加熱装置11と第2加熱装置12とを備えているので、消化槽2の汚泥を加熱するためのより多くの熱量を確保することが可能となる。これにより、消化槽2の汚泥加熱の信頼性を向上させることができる。更に、第1加熱装置11は再生可能エネルギーを熱源とし、第2加熱装置12は消化汚泥、下水処理水等の未利用熱エネルギーや第1加熱装置11において得られた太陽熱温水を用いて加熱された熱源水を熱源としているので、環境負荷の増大を抑制でき、かつ、省エネルギー化を図ることができる。
【0043】
更に、太陽熱温水温度Tpが第1閾値以上である場合には、太陽熱温水と消化槽2の汚泥との間で熱交換が行われることにより汚泥が加熱され、太陽熱温水温度Tpが第1閾値未満である場合には、第2加熱装置12で生成された温水と消化槽2の汚泥との間で熱交換が行われることにより汚泥が加熱される。ここで、第1加熱装置11は、第2加熱装置12よりも省エネルギー化を望むことが可能である一方、太陽光を熱源とするため、第2加熱装置12に比べて出力が不安定となる。このような特性から、本実施形態では、太陽熱温水が第1閾値以上である場合、換言すると、太陽熱温水によって消化槽2の汚泥を所望の温度まで加熱できる場合には、第1加熱装置11を優先的に利用し、太陽熱温水の熱量が不足する場合に、第2加熱装置12を優先的に利用することとしている。これにより、省エネルギー化と安定した汚泥の加熱とを可能とすることができる。
【0044】
また、太陽熱温水温度Tpが第1閾値以上であり、かつ、熱交換器入口温度Ttが第2閾値以下である場合に、第1加熱装置11と第2加熱装置12との両方を用いて消化槽2の汚泥を加熱するので、天候等に作用されずに安定した汚泥の加熱が可能となり、消化槽2の汚泥加熱の信頼性を向上させることができる。
【0045】
また本実施形態によれば、熱交換器14をバイパスするバイパス配管L6を設け、熱交換器入り口温度Ttが第1閾値よりも大きな値である所定の設定値以上になった場合には、バイパス弁Bp5の開度を調整する。これにより、熱交換器14に供給される熱媒体温度を適度な値に調整することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、熱源水の採熱先を消化汚泥、太陽熱温水、下水処理水の優先順としたが、この順番は、各熱源の温度帯、熱量に応じて設定すればよい。すなわち、温度帯、熱量が大きい順に優先順位を決定すればよい。
【0047】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 汚泥消化システム
2 消化槽
3 消化槽の加熱システム
10 制御装置
11 第1加熱装置
12 第2加熱装置
14 熱交換器
16 汚泥熱交換器
17 処理水熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8