(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367025
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】位置決め装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20180723BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20180723BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20180723BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20180723BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20180723BHJP
F16C 35/073 20060101ALI20180723BHJP
F16C 35/077 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
F16H25/22 Z
H02K7/06 A
F16H25/20 E
F16C19/36
F16C41/00
F16C35/073
F16C35/077
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-140530(P2014-140530)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-17570(P2016-17570A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【弁理士】
【氏名又は名称】飛永 充啓
(72)【発明者】
【氏名】高田 声一
【審査官】
塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−310174(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/088691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
F16C 19/36
F16C 35/073
F16C 35/077
F16C 41/00
F16H 25/20
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸に対するナットの相対的な回転運動を当該ねじ軸に対する当該ナットの相対的な直線運動に変換し、当該ねじ軸に対して当該ナットが目的の位置で停止すると、ブレーキ力によって当該位置に保持可能な位置決め装置において、
前記ナットに連結された内輪、前記内輪を取り囲む外輪、並びに前記内輪及び前記外輪間で転がる転動体を有する転がり軸受と、
前記外輪に連結され、前記内輪を介して前記ナットに駆動力を与える複合振動子型ステータと、
前記外輪に軸方向一方側から突き当る予圧用ナットと、
前記予圧用ナットにねじ込む予圧用ボルトと、
前記予圧用ナットの内側で前記ステータ及び前記予圧用ボルトによって軸方向に圧縮された予圧用ばねと、
前記ステータを周方向に回り止めすると共に径方向に支持する係止片と、
前記外輪にねじ込む固定ボルトと、
を備え、
前記予圧用ナット及び前記係止片は、前記固定ボルトによって前記外輪に締結されていることを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記内輪に連結され、前記内輪の回転運動を物理信号に変換するエンコーダと、
前記外輪に連結され、前記物理信号を出力信号に変換するセンサ回路と、
をさらに備え、
前記ステータは、前記転がり軸受を境とした軸方向一方側に配置され、前記エンコーダ及び前記センサ回路は、前記転がり軸受を境とした軸方向他方側に配置されている請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記転がり軸受は、クロスローラ軸受になっている請求項1又は2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記ナット及び前記ねじ軸は、すべりねじ又はボールねじになっている請求項1から3のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記内輪にねじ込む取付けボルトをさらに備え、
前記ナットは、前記取付けボルトを用いた締結によって前記内輪に連結されている請求項1から4のいずれか1項に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記ナット及び前記内輪間に介在するスペーサをさらに備え、
前記ナット及び前記スペーサは、前記締結によって前記内輪に連結されている請求項5に記載の位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ねじ軸に対するナットの相対的な回転運動を当該ねじ軸に対する当該ナットの相対的な直線運動に変換し、当該ねじ軸に対して当該ナットが目的の位置で停止すると、ブレーキ力によって当該位置に保持可能な位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の位置決め装置は、ロボット、工作機等に備わる二体の一方を他方に対して相対的に直線移動させる目的で使用されている。その二体の一方に、ねじ軸又はナットの一方が固定され、他方に、ねじ軸又はナットの他方が固定される。ねじ軸及びナットは、すべりねじ又はボールねじ(以下、「送りねじ」と総称する。)になっている。位置決め装置は、ナットを回転させるためのアクチュエータを備えている。そのアクチュエータとして、従来から超音波モータが採用されている(特許文献1、2)。
【0003】
中でも、複合振動子型ステータを用いた特許文献2の位置決め装置は、高出力化が可能で、低速回転も可能である。ステータの停止時には、ステータを出力側へ押し付ける予圧力がブレーキ力となるため、ナットを目的位置に保つことができる。このように、複合振動子型ステータを採用すると、減速機や電磁ブレーキの組み込みが不要となり、簡素な構造の位置決め装置にすることができる。また、特許文献2の位置決め装置は、ロータ部を径方向に支持するベアリングの外部にステータを配置しているため、ベアリングが超音波モータからの摩耗粉の影響を受け難く、ベアリングの損傷防止にも有利なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4137479号公報
【特許文献2】特開平6−113570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の位置決め装置は、ケースの内側にステータ、ナット等を収容し、ステータでナットを直接に駆動し、ステータの節部をベアリング、円環板、支持用の固定ボルトを用いてケース端面に連結した構造となっている。このため、特許文献2の位置決め装置には、送りねじの送り速度やねじ軸の大きさ等を変更するとき、ナット寸法の変更に伴い、ステータとナットの接触位置や、ステータの連結先であるケース端面位置について変更を要することがあり、こうなると、送りねじ以外の変更部品が多くなってしまう。
【0006】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、複合振動子型ステータで駆動する送りねじの変更に対応し易い位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、この発明は、ねじ軸に対するナットの相対的な回転運動を当該ねじ軸に対する当該ナットの相対的な直線運動に変換し、当該ねじ軸に対して当該ナットが目的の位置で停止すると、ブレーキ力によって当該位置に保持可能な位置決め装置において、前記ナットに連結された内輪、前記内輪を取り囲む外輪、並びに前記内輪及び前記外輪間で転がる転動体を有する転がり軸受と、前記外輪に連結され、前記内輪を介して前記ナットに駆動力を与える複合振動子型ステータと、を備える構成を採用した。
【0008】
ステータを転がり軸受の外輪に連結し、ナットを内輪に連結すると、ステータとナットが転がり軸受を介して連結される。このため、内輪を介してステータの駆動力をナットに与えることが可能になる。すなわち、内輪及びステータ間の入力経路は、内輪及びナット間の出力経路から独立している。このため、入力経路を変更することなく、送りねじを変更することが可能である。また、入力経路の変更が不要であれば、内輪及びステータの位置関係の変更がなく、内輪と共に転がり軸受を構成する外輪とステータとの連結構造についても変更が不要である。したがって、上記構成によれば、内輪に連結する出力側部品のみの変更で送りねじの変更に対応することが可能である。なお、出力側部品とは、ステータが生み出す駆動力によって内輪と一体に回転させられる部品のことをいう。
【0009】
この発明においては、前記内輪に連結され、前記内輪の回転運動を物理信号に変換するエンコーダと、前記外輪に連結され、前記物理信号を出力信号に変換するセンサ回路と、
をさらに備え、前記ステータは、前記転がり軸受を境とした軸方向一方側に配置され、前記エンコーダ及び前記センサ回路は、前記転がり軸受を境とした軸方向他方側に配置されていることが好ましい。このようにすると、転がり軸受にステータ及び回転センサ(エンコーダ及びセンサ回路)をユニット化し、ステータで駆動する内輪の回転運動を出力信号に変換し、その出力信号に基づいてステータの制御を行うことが可能になる。これにより、送りねじの正確な送りが可能になる。
【0010】
また、前記転がり軸受は、クロスローラ軸受になっていることが好ましい。前記外輪に前記ステータを連結し、前記内輪をステータで直接に駆動すると、前記転がり軸受は、ステータ由来の複雑な荷重を同時に受けることになる。クロスローラ軸受は、内外輪間に円筒ころを直交配列で組み込んだ軸受なので、様々な方向の荷重を同時に受けつつコンパクト化を図ることが可能、という特徴をもっている。したがって、この発明において、転がり軸受にクロスローラ軸受を採用すると、複雑な荷重に対応しつつ転がり軸受の寸法を抑え、位置決め装置のコンパクト化を図ることができる。
【0011】
前記ナット及び前記ねじ軸は、すべりねじ又はボールねじとして設けられている。出力側部品及びねじ軸を変更することで、転がり軸受及びステータを変更することなく送りねじの形式を切り替えることが可能である。
【0012】
また、この発明においては、前記内輪にねじ込む取付けボルトをさらに備え、前記ナットは、前記取付けボルトを用いた締結によって前記内輪に連結されているとよい。このようにナットをボルト締結で内輪に連結しておけば、出力側部品を変更する場合に、内輪の雌ねじ部を利用して仕様の異なる出力側部品を内輪に連結することができる。
【0013】
例えば、前記ナット及び前記内輪間に介在するスペーサをさらに備える場合、前記ナット及び前記スペーサは、前記締結によって前記内輪に連結することができる。
【0014】
また、この発明においては、前記外輪に軸方向一方側から突き当る予圧用ナットと、前記予圧用ナットにねじ込む予圧用ボルトと、前記予圧用ナットの内側で前記ステータ及び前記予圧用ボルトによって軸方向に圧縮された予圧用ばねと、前記ステータを周方向に回り止めすると共に径方向に支持する係止片と、前記外輪にねじ込む固定ボルトと、をさらに備え、前記予圧用ナット及び前記係止片は、前記固定ボルトによって前記外輪に締結されていることが好ましい。予圧用ばねの圧縮量の調整により、ステータを内輪に押し付ける予圧力(ステータ停止時にブレーキ力となる)を調整することができる。係止片がステータを回り止めするため、ステータによる内輪駆動を実現することができる。また、予圧用ナット及び係止片を固定ボルトで外輪に締結すれば、予圧用ばね及び予圧用ボルトを介してステータの軸方向位置を所定に定めると共に、係止片によってステータの径方向位置も所定に定めることができる。すなわち、複合振動子型ステータに必須の回り止め及び予圧構造のみでステータを外輪に連結することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、上記構成の採用により、内輪に連結する出力側部品のみの変更で送りねじの変更に対応することが可能なため、送りねじの変更に対応し易い位置決め装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る位置決め装置の全体構成を示す縦断正面図
【
図3】
図1の送りねじをボールねじに変更した例を示す縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の一例としての第1実施形態を添付図面の
図1、
図2に基づいて説明する。
【0018】
第1実施形態に係る位置決め装置は、ねじ軸10と、ナット20と、転がり軸受30と、複合振動子型ステータ40と、予圧連結手段50と、回転センサ60とを備える。
【0019】
ねじ軸10及びナット20は、ねじ軸10に対するナット20の相対的な回転運動をねじ軸10に対するナット20の相対的な直線運動に変換する送りねじとして機能する。ねじ軸10の中心軸線に沿った方向が「軸方向」に相当し、その軸方向に直角な方向が「径方向」に相当する。
【0020】
ねじ軸10は、JIS規定のメートル台形ねじを外周に形成した雄ねじ部品になっている。ナット20は、ねじ軸10に対応の台形ねじを内周に形成した雌ねじ部品になっている。ねじ軸10及びナット20は、互いの台形ねじで直接に螺合するすべりねじとして設けられている。
【0021】
転がり軸受30は、ナット20に連結された内輪31と、内輪31を取り囲む外輪32と、内輪31及び外輪32間で転がる複数の転動体33とを有する。転がり軸受30は、前述のすべりねじのナット20を径方向及び軸方向に支持する。
【0022】
転がり軸受30は、クロスローラ軸受になっている。すなわち、転動体33は、円筒ころからなる。内輪31及び外輪32は、それぞれV溝状の軌道を形成する環状体からなる。内輪31及び外輪32は、同心円状に配置されている。複数の転動体33は、内輪31及び外輪32の軌道間に介在する。これら転動体33は、周方向に交互に90°異なる向きで配置されている。このように、クロスローラ軸受として設けられた転がり軸受30は、内外輪31、32間に円筒ころからなる転動体33を直交配列で組み込んでいるので、円筒ころの優れた負荷性能によって軸方向荷重、径方向荷重、モーメント荷重などの様々な方向の荷重を同時に受けることが可能なため、コンパクト化を図ることができる。ひいては、位置決め装置のコンパクト化を図ることができる。
【0023】
内輪31は、ナット20に形成された第1軸受座部20aに嵌合されている。第1軸受座部20aは、ナット20の軸方向一方側の端部外周に形成されている。内輪31を第1軸受座部20aに軸方向一方側から軸方向他方側に向かって嵌合することによって、ナット20に対する内輪31の軸方向位置及び径方向位置を仮決めすることが可能となっている。
【0024】
なお、転動体33の周方向間隔を保つ手段(図示省略)として、保持器又はセパレータを適宜に採用することができる。また、内輪31、外輪32は、剛性に優れている点を考慮し、軌道全部を形成した1個の環状部品からなるものを採用している。内輪31、外輪32は、剛性に問題がない場合、適宜、複数の環状部品で軌道を形成する分割型の軌道輪に変更してもよい。
【0025】
ステータ40は、軸方向の振動と周方向の振動を組み合わせることによって回転方向の駆動力のみをステータ40と直接に接触するロータに与える。ステータ40は、連結予圧手段50によって外輪32に連結されている。
【0026】
ステータ40は、ステータヘッド42と、節部43と、第1圧電素子44と、第2圧電素子45と、ステータボトム46とを有する。
【0027】
中空ボルト41は、ねじ軸10を軸方向に挿通可能な中空軸状の雄ねじ部品になっている。中空ボルト41は、内輪31から軸方向一方側へ離れたところに配置される。ステータヘッド42は、中空ボルト41よりも軸方向他方側へ突出しており、その突出端部で内輪31の側面に軸方向一方側から軸方向他方側に向かって押し付けられている。この押し付けは、予圧連結手段50によって実現されている。
【0028】
節部43は、ステータヘッド42と共に第1圧電素子44を軸方向に挟持している。第1圧電素子44は、軸方向に振動する。また、節部43は、ステータボトム46と共に第2圧電素子45を軸方向に挟持している。
【0029】
ステータボトム46は、第2圧電素子45を中空ボルト41に対して抜け止めする。第2圧電素子45は、周方向に振動する。第1圧電素子44、第2圧電素子45は、それぞれ高周波電流を発生する電源装置(図示省略)に接続される。第1圧電素子44、第2圧電素子45にそれぞれ所定の交流電圧が印加されることにより、第1圧電素子44、第2圧電素子45の振動が組み合わされ、ステータヘッド42から、ロータとして設けられた内輪31の側面へ回転方向の駆動力のみが与えられる。このようにステータ40が駆動するとき、第1圧電素子44及び第2圧電素子45間に介在する節部43は、振動モードの節部になる。このようなステータ40は、一般に、ボルト締めランジュバン型複合振動子と称されている。
【0030】
なお、第1圧電素子44、第2圧電素子45は、それぞれ中空ボルト41を取り囲む環状体になっている。また、ステータヘッド42、節部43、ステータボトム46は、それぞれ中空ボルト41に対応の雌ねじ部品になっているため、中空ボルト41に螺着することができる。節部43は、中空ボルト41の一部として形成してもよい。また、内輪31とステータ40間に摩擦部材等の他部材を介在させ、内輪31を間接的に駆動するようにしてもよい。
【0031】
予圧連結手段50は、ステータ40を外輪32に連結すると共に、ステータ40を内輪31に押し付ける。
【0032】
予圧連結手段50は、予圧用ナット51と、予圧用ボルト52と、予圧用ばね53と、係止片54と、固定ボルト55とを有する。
【0033】
予圧用ナット51は、外輪32の側面に軸方向一方側から軸方向他方側に向かって突き当る雌ねじ部品になっている。ステータヘッド42は、予圧用ナット51の内側で外径を部分的に拡大したばね受け部42aを有する。予圧用ばね53は、ステータ40及び予圧用ナット51間の環状空間に挿入可能なコイルばねになっている。予圧用ボルト52は、予圧用ナット51に対応の雄ねじ部品になっている。予圧用ばね53は、ステータ40及び予圧用ナット51間の環状空間に軸方向一方側から軸方向他方側に向かって挿入することにより、ばね受け部42aに軸方向に突き当る状態となる。この状態で予圧用ナット51にねじ込む予圧用ボルト52により、予圧用ばね53は、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって圧縮される。このようにステータ40と予圧用ボルト52によって軸方向に圧縮された予圧用ばね53は、ステータ40を内輪31の側面に軸方向一方側から軸方向他方側に向かって押し付ける予圧力を発生している。第1圧電素子44及び第2圧電素子45が振動しないステータ40の停止状態において、その予圧力は、内輪31を停止させるブレーキ力として作用する。予圧用ばね53の圧縮量を予圧用ボルト52のねじ込み量で調整すれば、ステータ40を内輪31に押し付ける予圧力(ブレーキ力)を調整することができる。
【0034】
固定ボルト55は、外輪32に形成された第1雌ねじ部32aに対応の雄ねじ部品になっている。第1雌ねじ部32aは、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって形成されている。予圧用ナット51及び係止片54は、固定ボルト55を軸方向一方側から軸方向他方側に向かって挿通し、さらに第1雌ねじ部32aにねじ込む締結によって、外輪32に連結されている。この連結状態において、係止片54は、ステータ40を周方向に回り止めすると共に径方向に支持する。
【0035】
より具体的に述べると、係止片54は、節部43に向かって径方向に突出した先端部54aを有する。節部43は、先端部54aと周方向両側に係合可能な係止受け部43aを有する。係止受け部43aは、
図1、
図2に示すように、軸方向に沿った溝状に形成されている。節部43の係止受け部43a以外の外周部分は、係止片54の内周部分と円弧状で径方向に重なっている。この重なり領域、係止受け部43a及び先端部54aは、周方向等配に存在している。これら重なり領域により、係止片54によるステータ40の径方向支持が実現されている。なお、複合振動子型のステータ40においては、ステータ40を回り止めしなければ、内輪31に駆動力を有効に与えることができない。このため、ステータ40において振動モードの節部となる節部43でステータ40の回り止めを行うことが必須である。
【0036】
予圧用ナット51及び係止片54を固定ボルト55で外輪32に締結すれば、予圧用ばね53及び予圧用ボルト52を介してステータ40の軸方向位置を所定に定めると共に、係止片54によってステータ40の径方向位置も所定に定めることができる。すなわち、ステータ40に必須の回り止め及び予圧構造のみでステータ40を外輪32に連結することができる。なお、固定ボルト55は、周方向等配で複数個所に設けられている。
【0037】
上述のように予圧連結手段50によってステータ40を外輪32に連結すると、ステータ40は、転がり軸受30を境とした軸方向一方側に配置されている状態となる。この状態で、内輪31及び中空ボルト41は、同一の中心軸線上に配置されている。転がり軸受30の軸受穴の内径と中空ボルト41の内径とが一致しているので、ねじ軸10の外径は、中空ボルト41の内径の範囲内で変更することが可能である。なお、軸受穴の内径は、内輪31に形成された円筒状の内径面の直径である。中空ボルト41の内径は、中空ボルト41の軸方向全長に亘って円筒状に形成された内径面の直径である。
【0038】
回転センサ60は、内輪31の回転運動を出力信号に変換する。この出力信号に基づいて第1圧電素子44、第2圧電素子45の電圧印加制御を行うことが可能である。
【0039】
回転センサ60は、エンコーダ61と、エンコーダホルダ62と、取付けボルト63と、センサ回路64と、センサホルダ65と、ホルダ固定ボルト66とを有する。
【0040】
エンコーダ61は、S極とN極を周方向に交互に有する磁気エンコーダになっており、軸回りの回転運動を磁気的な物理信号に変換する。エンコーダ61は、エンコーダホルダ62に固定されている。エンコーダホルダ62は、エンコーダ61の変形を防止する環状部品になっている。
【0041】
エンコーダホルダ62には、軸方向に貫通した第1ボルト通し穴62aが形成されている。内輪31には、雌ねじ部31aが、軸方向他方側から軸方向一方側に向かって形成されている。ナット20の軸方向他方側の端部には、軸方向に貫通した第2ボルト通し穴20bが形成されている。内輪31が第1軸受座部20aに嵌合されている状態で、第2ボルト通し穴20b、雌ねじ部31a及び第1ボルト通し穴62aは、軸方向に連通する。取付けボルト63は、雌ねじ部31aに対応の雄ねじ部品になっている。ナット20及びエンコーダホルダ62は、取付けボルト63を軸方向他方側から軸方向一方側に向かって第1ボルト通し穴62a、第2ボルト通し穴20bに通し、さらに雌ねじ部31aにねじ込む締結によって、内輪31に連結されている。これにより、エンコーダ61、ナット20及び内輪31は、内輪31をステータ40で駆動することによって一体に回転することになる。なお、取付けボルト63は、周方向等配で複数個所に設けられている。
【0042】
センサ回路64は、前述の磁気的な物理信号を電気的な信号に変換する。センサ回路64は、磁気センサを回路基板に実装したものとなっている。回路基板には、磁気センサの出力を所定の出力信号に整える信号処理回路、電源回路、配線接続端子といった適宜の回路要素が設けられる。センサ回路64は、センサホルダ65に固定されている。
【0043】
センサホルダ65は、センサ回路64の変形を防止する環状部品になっている。センサホルダ65には、外輪32に嵌合する第2軸受座部65aが形成されている。センサホルダ65を第2軸受座部65aに軸方向他方側から軸方向一方側に向かって嵌合することによって、外輪32に対するセンサホルダ65の軸方向位置及び径方向位置を仮決めすることが可能となっている。
【0044】
また、センサホルダ65には、この位置決め装置を搬送装置、旋盤等の他装置に取り付けるために使用可能な取付穴65bが形成されている。予圧連結手段50は、外輪32の外径(転がり軸受30の軸受外径)以下の外径に設定されており、取付穴65bの使用を阻害しない。
【0045】
また、センサホルダ65には、軸方向に貫通した第3ボルト通し穴65cが形成されている。外輪32には、軸方向他方側から軸方向一方側に向かって第2雌ねじ部32bが形成されている。外輪32が第2軸受座部65aに嵌合されている状態で、第3ボルト通し穴65c及び第2雌ねじ部32bは、軸方向に連通する。ホルダ固定ボルト66は、第2雌ねじ部32bに対応の雄ねじ部品になっている。センサホルダ65は、ホルダ固定ボルト66を軸方向他方側から軸方向一方側に向かって第3ボルト通し穴65cに通し、さらに第2雌ねじ部32bにねじ込む締結によって、外輪32に連結されている。これにより、センサ回路64は、外輪32に対する内輪31の回転運動を出力信号に変換することが可能となる。なお、ホルダ固定ボルト66は、周方向等配で複数個所に設けられている。第1雌ねじ部32a及び第2雌ねじ部32bは、外輪32を軸方向に貫通した穴の内壁面に加工した例を図示したが、周方向に位相の異なった配置で形成することも可能である。
【0046】
上述のようにエンコーダ61、センサ回路64を対応の内輪31、外輪32に連結すると、エンコーダ61及びセンサ回路64は、転がり軸受30を境とした軸方向他方側に配置されている状態となる。この配置状態で、ナット20、回転センサ60は、内輪31及び外輪32から軸方向一方側へ食み出ておらず、ステータ40や予圧連結手段50と接触しない。
【0047】
また、上述ようにエンコーダ61、センサ回路64を対応の内輪31、外輪32に連結すると、内輪31と一体に回転するエンコーダ61は、ステータ40で駆動する内輪31の回転運動を物理信号に変換し、内輪31に対して静止する外輪32と一体化されたセンサ回路64は、その物理信号を出力信号に変換することができる。したがって、この位置決め装置は、その出力信号に基づいてステータ40の第1圧電素子44、第2圧電素子45の制御を行い、送りねじの正確な送りが可能である。
【0048】
上述のようにステータ40を転がり軸受30の外輪32に予圧連結手段50で連結し、ナット20を内輪31に取付けボルト63で連結すると、ステータ40とナット20が転がり軸受30を介して連結される。このため、内輪31を介してステータ40の駆動力をナット20に与えることが可能になる。すなわち、内輪31及びナット20間の出力経路は、取付けボルト63と、軸受座部20a及び内輪31の嵌め合い面とによって構成されている。一方、内輪31及びステータ40間の入力経路は、ステータヘッド42と、内輪31の軸方向一方側の側面とによって構成されているので、前述の出力経路から独立している。このため、第1実施形態に係る位置決め装置は、前述の入力経路及び予圧連結手段50を変更することなく、内輪31に連結する出力側部品のみの変更で、送りねじ(ねじ軸10、ナット20)の変更に対応することが可能である。
【0049】
図1のすべりねじから、送り速度の異なるボールねじへ変更した例を
図3に示す。
図3のボールねじは、ねじ軸70及びナット80の螺旋溝間にボール(図示省略)を循環可能に介在させたものであり、例えば、特許文献2に開示された構造のものを採用することができる。ボールねじへの変更に伴い、ねじ軸70及びナット80が小径化されている。転がり軸受30、ステータ40及び予圧連結手段50は、
図1のものから変更がない。
【0050】
第1実施形態においては、内輪31の雌ねじ部31aを利用して仕様の異なる出力側部品を内輪31に連結することができる。
図3の変更例では、エンコーダホルダ90が、ナット80及び内輪31間に介在するスペーサになっている。エンコーダホルダ90は、エンコーダ61及びセンサ回路64間の磁気ギャップを
図1と同じに維持可能な形状に変更されている。ナット80及びエンコーダホルダ(スペーサ)90は、取付けボルト63を内輪31の雌ねじ部31aにねじ込む締結によって内輪31に連結することができる。このように、第1実施形態によれば、送りねじの変更に対応し易い位置決め装置を提供することができる。この発明の技術的範囲は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載に基づく技術的思想の範囲内での全ての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0051】
10 ねじ軸
20 ナット
30 転がり軸受
31 内輪
31a 雌ねじ部
32 外輪
32a 第1雌ねじ部
32b 第2雌ねじ部
33 転動体
40 ステータ
41 中空ボルト
42 ステータヘッド
43 節部
44 第1圧電素子
45 第2圧電素子
46 ステータボトム
50 予圧連結手段
51 予圧用ナット
52 予圧用ボルト
53 予圧用ばね
54 係止片
55 固定ボルト
60 回転センサ
61 エンコーダ
62 エンコーダホルダ
63 取付けボルト
64 センサ回路
65 センサホルダ
70 ねじ軸
80 ナット
90 エンコーダホルダ(スペーサ)