(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記消去対象領域は、石灰化に対応する画像領域、ステントに対応する画像領域、骨に対応する画像領域、軟組織に対応する画像領域、臓器に対応する画像領域うちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の医用画像処理装置。
前記消去対象領域は、石灰化に対応する画像領域、ステントに対応する画像領域、骨に対応する画像領域、軟組織に対応する画像領域、臓器に対応する画像領域うちの少なくとも1つに関連する領域である、請求項1に記載の医用画像処理装置。
前記重ね合わせ画像発生部は、輝度、色、テクスチャまたはシェーディングのうちの少なくとも1つが、前記差分画像または前記造影画像と前記消去対象領域とで異なるように重ね合わせることにより前記重ね合わせ画像を発生する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
前記重ね合わせ画像発生部は、前記差分画像または前記造影画像と前記消去対象領域とのフュージョンレンダリングを施して、前記重ね合わせ画像を発生する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
前記重ね合わせ画像発生部は、前記差分画像と前記消去対象領域とを重ね合わせた第1重ね合わせ画像を発生し、前記造影画像と前記消去対象領域とを重ね合わせた第2重ね合わせ画像を発生する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
前記重ね合わせ画像と、前記非造影画像、前記造影画像または前記差分画像のうちの少なくとも1つの画像とを操作者の入力に応じて切り替えて表示する表示部をさらに備える、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(CT)画像において表示される血管領域のCT値を上げるために、造影剤を使用することがよく知られている。また、造影スキャン(contrast scan)における造影の効果を改善または明瞭化するために、差分処理がよく用いられる。非造影スキャン(non-contrast scan)および造影スキャンは、1つまたは複数の所与の血管に対して実行される。非造影スキャンは、非増強スキャンまたは造影前スキャンとしても知られる。例えば、骨や軟組織を対象とする造影スキャンおよび非造影スキャンに共通の特徴を除去するために、または、造影画像における造影剤によって強調された部分のみを残すために、各対応する画素について造影画像のCT値から非造影画像のCT値が差分処理される。
【0003】
非造影画像と造影画像とを位置合わせするために、2つの画像の画素の位置を正確に解剖学的に対応させる必要がある。
【0004】
画像は、手動で位置合わせすることができる。これはピクセルシフトとしても知られている。例えば、臨床医は、画像を重ねて一方の画像の位置を他方の画像の位置に対して調整することによって、造影画像と非造影画像とを手動で合わせることができる。手動による位置合わせは、一般に線形位置合わせに限定され、画像を合わせる人に依存する。しかし、手動位置合わせを行うことによって、臨床医は、位置合わせ処理中に、造影画像と非造影画像が適切に合わされているかどうか、または位置合わせがあまり良好でない画像領域があるかどうか把握できる。位置合わせ処理を深く理解することによって、臨床医は、位置合わせの結果として発生される画像が信頼できるかどうか判断することができるようになる。差分画像にいくらかでもアーチファクトがあれば、臨床医は、アーチファクトが位置合わせ処理の結果であるのか、それとも、アーチファクトが別の原因によるものなのか判断できる。
【0005】
または、画像は、例えば陽電子放射断層撮影/コンピュータ断層撮影(PET/CT)またはマルチスペクトルCTにおいて、機械的位置合わせによって位置合わせすることができる。現代のシステムでは、ソフトウェアを使用して画像を自動的に位置合わせすることができる。ソフトウェアを使用すると、線形位置合わせまたは非線形位置合わせによって画像を適宜位置合わせすることができる。ソフトウェア位置合わせ処理は、自動的で再現可能に位置合わせすることができ、手動位置合わせよりも複雑な位置合わせが可能である。しかし、差分画像に自動位置合わせ処理を施すとき、臨床医は一般的に、画像の位置合わせに関与しない。従って、臨床医は、位置合わせの精度を把握できない。臨床医は、差分画像内のアーチファクトを容易に把握できないことがある。
【0006】
造影画像から非造影画像を差分する1つの適用例として、冠動脈コンピュータ断層血管造影(Coronary CT Angiography:以下、CCTAと呼ぶ)がある。CCTAを行う際、造影剤が血管に注入される。造影剤が冠動脈中に存在しないとき、非造影画像が得られる。造影剤が冠動脈中に存在するとき、造影画像が得られる。造影剤は、画像における冠動脈領域のCT値を強調させる。
【0007】
CCTAにおいて、石灰化したプラーク(以下、石灰化と呼ぶ)と動脈内腔とを区別するために差分処理が用いられる。差分処理はまた、ステントまたは他の任意の類似した高CT値を有する部位と動脈内腔とを区別するために用いられる。骨は、差分処理によって除去できる高CT値を有する部位である。
【0008】
非造影画像では、石灰化やステントは高CT値を有する。内腔は低CT値を有し、周囲の軟組織の強度に似通っている。造影画像では、石灰化やステントと動脈内腔の両方が高CT値を有する。動脈内腔の高CT値は、造影剤によって引き起こされる。石灰化、特に重度の石灰化のために、臨床医はCCTAデータを直接的に評価することが困難である。内腔と石灰化の両方が高CT値領域として出現するので、石灰化の存在下で内腔を把握することが困難な場合がある。
【0009】
その場合、造影画像から非造影画像を差分処理することが望ましい。差分処理は、造影画像内に存在する内腔の強調を保ちながら石灰化またはステントを造影画像から除去する。
【0010】
図1Aは、従来例に係る、血管内腔領域12を囲む石灰化領域10を含む造影画像である。
図1Aの造影画像は、CCTAによる画像である。
図1Bは、従来例に係る、血管内腔領域12を囲む石灰化領域10を含む非造影画像である。
図1Bの非造影画像は、例えば、カルシウムスコア画像である。
図1Bの非造影画像では、内腔の強調がないので、内腔領域12は背景組織と区別することが困難な場合がある。
【0011】
造影画像から石灰化領域10を除去するため、2つのボリューム中の対応する画素において造影画像のCT値から非造影画像のCT値を差分する。
【0012】
図1Cは、従来例に係る、
図1Aの画像から
図1Bの画像を差分することによって取得される差分画像である。
図1Cの差分画像では、石灰化領域10が差分されているので、内腔領域12は、
図1Aの造影画像においてよりも明確に見ることができる。石灰化領域10がないので内腔領域12の把握はより簡単であり、臨床医は、内腔の寸法(例えば、内腔の直径)と狭窄度とをより容易に推定することができる。
【0013】
差分画像内にアーチファクトが存在する場合がある。例えば、差分処理によりカルシウム領域が抽出されたCT画像では、一般的なアーチファクトとしては、血管壁の近くのダークスポット(dark spot)またはダークリング(dark ring)である。アーチファクトの1つの考えられうる原因は、ハンスフィールドユニット(Hounsfield Unit:以下、HUと呼ぶ)変化と呼ばれる、造影画像と非造影画像との間のCT値の変化である。HU変化アーチファクトは、位置合わせに関連せず、その代わり、主にCTスキャン技術の限界に起因するモーションアーチファクトに関連する。モーションアーチファクトとは、スキャン中の被験者の体動や心拍に起因する動きによるアーチファクトである。
図2Aは、従来例に係る、HU変化によるアーチファクト16を含む差分画像である。
【0014】
アーチファクトは、位置合わせに誤差によって引き起こされることがある。位置合わせ誤差(例えば、ソフトウェア位置合わせによる誤差)は、造影画像内のボクセルが非造影画像内の対応するボクセルに正しく関連付けられないので、CT値の不正確な差分処理を引き起こすことがある。
図2Bは、従来例に係る、位置合わせ誤差によるアーチファクト18(例えば、内腔の左側の黒色の領域)およびHU変化によるアーチファクトを含む差分画像である。
【0015】
差分画像内に存在するアーチファクトは他に、カルシウムブルーミング(Calcium blooming)がある。カルシウムブルーミングは石灰化に隣接する画像領域で発生することがあり、造影剤領域のようなCT値を示す。カルシウムブルーミングは、石灰化領域を実際の物理的範囲よりも大きく見せる。カルシウムブルーミングは、非造影画像よりもCCTA画像において発生しやすい。
【0016】
差分処理はまた、造影画像と非造影画像とを比較する以外の用途にも使用される。差分処理は、例えば、パフュージョン画像を比較するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る医用画像処理装置20を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0021】
図3は、本実施形態に係る、医用画像処理装置20の概略図である。
【0022】
医用画像処理装置20は、制御部22と、表示部26と、コンピュータキーボード、マウスまたはトラックボールなどの入力部28と、記憶部30とを備える。本実施形態において、制御部22は、例えばパーソナルコンピュータまたはワークステーションである。表示部26は、タッチ画面でも良い。この場合、表示部26は入力部28としても機能する。医用画像処理装置20は、CTスキャナ24を含まない。医用画像処理装置20は、CTスキャナ24に接続されている。なお、医用画像処理装置20は、CTスキャナ24を組み込んでも良い。以下、CTスキャナ24は、医用画像処理装置20に接続されているとして説明する。なお、CTスキャナ24は、三次元画像データを取得するように構成された任意のCTスキャナであってもよい。なお、CTスキャナ24は、位置合わせ誤差によるアーチファクトが存在し得るCT以外の他のモダリティにおけるスキャナ、例えばMRIスキャナ、X線スキャナ、またはPETスキャナでも良い。
【0023】
CTスキャナ24によって取得される医用画像のデータは、一旦記憶部30に記憶され、その後にデータ処理部34に出力される。なお、医用画像は、Picture Archiving and Communication System(PACS)の一部を形成するリモートデータストア(図示せず)から供給されても良い。リモートデータストアは、任意のメモリストレージを備えてもよい。
【0024】
制御部22は、医用画像を自動的にまたは半自動的に処理する。制御部22は、後述する
図4のフローと
図5のフローとを実行するように構成された様々なソフトウェアモジュール、または他のソフトウェアコンポーネントをロードおよび実行するように動作可能な中央処理装置(Central Processor unit:CPU)32を含む。なお、CPU32は、
図4のフローのみまたは
図5のフローのみを行うこともできる。
【0025】
制御部22は、データ処理部34と、消去対象領域抽出部36と、レンダリング部38と、重ね合わせ画像発生部39と、位置合わせ処理部40と、差分画像発生部42とを含む。
【0026】
データ処理部34は、医用画像のデータにデータ処理を施すことにより、医用画像を発生する。医用画像とは、具体的には、造影画像、非造影画像および差分画像である。
【0027】
消去対象領域抽出部36は、データ処理部34により発生された非造影画像から、差分画像発生部による差分処理における消去対象領域を抽出する。
【0028】
レンダリング部38は、CT撮影により発生されたボリュームデータをレンダリングする。
【0029】
重ね合わせ画像発生部39は、データ処理部34により取得された差分画像または造影画像に、消去対象領域抽出部36により抽出された消去対象領域を異なる態様で重ね合わせた画像を発生する。異なる態様とは、具体的には、色、輝度、透明度等を変化させる、または模様、陰影、輪郭等を付加することである。
【0030】
位置合わせ処理部40は、データ処理部34により取得された造影画像と非造影画像とに位置合わせ処理を実行する。
【0031】
差分画像発生部42は、データ処理部34により取得された造影画像と非造影画像との差分画像を発生する。
【0032】
本実施形態では、データ処理部34、消去対象領域抽出部36、レンダリング部38、重ね合わせ画像発生部39、位置合わせ処理部40、および差分画像発生部42はそれぞれ、本実施形態の方法を行うために実行可能なコンピュータ可読命令を有するコンピュータプログラムによって、制御部22において実施される。なお、各ユニットは、ソフトウェア、ハードウェア、またはハードウェアとソフトウェアの任意の適切な組合せによって実施することができる。種々のユニットは、1つまたは複数のASIC(Application Specific Integrated Circuits:特定用途向け集積回路)またはFPGA(Field Programmable Gate Arrays)によって実現することができる。また、1つまたは複数のユニットは、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックス処理ユニット)によって実現することができる。
【0033】
制御部22はまた、ハードドライブと他の構成要素とを含み、他の構成要素は、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、データバスと、種々のデバイスドライバを含むオペレーティングシステムと、グラフィックスカードを含むハードウェアデバイス等を含む。説明をわかりやすくするため、上記構成要素は
図3に図示していない。
【0034】
図4は、本実施形態に係る、差分画像に非造影画像の一部を重ね合わせる典型的な流れの一例を示す図である。
図3のシステムは、
図4のフロー図において示される一連のステップを行うように構成される。
【0035】
ここで、非造影画像Aと造影画像Bとは、3次元のボリュームデータであるとする。なお、非造影画像Aと造影画像Bとは、2次元画像でも良い。
【0036】
ステップ50では、データ処理部34は、記憶部30、リモートデータストア(remote data store)または直接的にCTスキャナ24から取得した画像のデータに基づいて、非造影スキャンにより発生された非造影画像(フロー図ではAと呼ばれる)を発生する。本実施形態では、この非造影スキャンは、患者の冠動脈を対象とするカルシウムスコアスキャン(calcium score scan)である。
【0037】
ステップ52では、データ処理部34は、ステップ50で取得された非造影画像と同じ患者かつ同じ解剖学的領域の、造影スキャンにより発生された造影画像を発生する。本実施形態では、造影画像(フロー図ではBと呼ばれる)は、非造影スキャンと同じ検査の一部として撮影された患者の冠動脈を対象とする造影スキャンから発生される。
【0038】
ステップ54では、位置合わせ処理部40は、非造影画像(A)と造影画像(B)との自動的な位置合わせを行う。位置合わせ処理部40は、任意の適切な位置合わせ方法を適用することができる。位置合わせ処理部40は、厳密でない位置合わせステップと厳密な位置合わせステップとの組合せを行う。
【0039】
なお、非造影画像(A)および造影画像(B)が既に互いに位置合わせされてデータ処理部34によって受け取られるとき、ステップ54は省略されても良い。この場合、医用画像処理装置20は、位置合わせ処理部40を有さなくても良い。
【0040】
ステップ56では、差分画像発生部42は、差分画像(フロー図ではCと呼ばれる)を得るために、造影画像(B)から非造影画像(A)を差分する。具体的には、差分画像発生部42は、造影画像(B)内の対応するCT値から非造影画像(A)の各ボクセルのCT値を差分する。ボクセルの対応は、ステップ54の位置合わせ処理により既知である。
【0041】
なお、医用画像は、ステップ50および52でデータ処理部34に供給される前に差分されても良い。この場合、差分画像(C)はステップ50または52でデータ処理部34に供給されるため、ステップ56は省略されても良い。この場合、医用画像処理装置20は、差分画像発生部42を有さなくても良い。
【0042】
差分画像(C)は、1つまたは複数のアーチファクトを有することがある。差分画像(C)は、例えば、
図2Aおよび
図2Bに示されるアーチファクトに類似した差分アーチファクトを有する。
【0043】
画像内の任意の位置における画像アーチファクトは、その位置における被検体を表すものではなく、代わりに測定処理、測定装置または画像処理自体から生じる画像の任意の特徴でもよい。画像アーチファクトは、画像と無関係な特徴でもよい。画像アーチファクトは、例えば、差分誤差、位置合わせ誤差または測定誤差から生じる。
【0044】
ステップ58では、消去対象領域抽出部36は、非造影画像(A)内の少なくとも1つの消去対象領域を抽出する。ここで、消去対象領域とは、非造影画像(A)を造影画像(B)から差分することによって消去される画像領域である。本実施形態では、消去対象は石灰化である。石灰化は、非造影画像において高CT値領域として出現する。なお、消去対象は、ステント、骨、または軟組織(例えば、特定の臓器)などの場合もある。消去対象は、差分画像内の画像アーチファクトを引き起こす任意の対象であっても良い。
【0045】
消去対象領域抽出部36は、非造影画像(A)に強度閾値を適用することによって石灰化領域を抽出する。本実施形態では、強度閾値は180HUである。消去対象領域抽出部36は、各ボクセルに対して、ボクセルのCT値が強度閾値以上かどうか判定する。消去対象領域抽出部36は、強度閾値以上のCT値を有するボクセルを消去対象領域の一部であると判定する。
【0046】
なお、消去対象領域抽出部36は、画像処理によって消去対象領域を抽出しても良い。例えば、消去対象領域抽出部36は、心臓セグメンテーションにより消去対象領域を抽出する。また、消去対象領域抽出部36は、消去対象領域抽出の複数の方法を使用して、消去対象領域を抽出する。消去対象領域抽出部36は、例えば、心臓セグメンテーションと強度閾値とを組み合わせて使用して、消去対象領域を抽出する。
【0047】
消去対象が骨である場合、医用画像における骨領域は、強度閾値を使用してまたは他の方法によって抽出される。パフュージョン検査の場合、消去対象は、1つの組織である場合がある。適切な消去対象を抽出するためには、関連のある解剖学的構造のセグメンテーションを取得するための画像分析が行われる。この関連のある解剖学的構造は任意の適切な解剖学的領域とすることができ、心臓の検査に限定されない。
【0048】
本実施形態では、消去対象領域抽出部36は、非造影画像(A)全体に抽出処理を適用する。なお、消去対象領域抽出部36は、抽出処理を非造影画像の一部に適用しても良い。非造影画像の一部は、例えば、非造影画像におけるアーチファクトを含む一部領域に設定することができる。
【0049】
ステップ60では、消去対象領域抽出部36は、強度閾値より小さい非造影画像(A)内の任意のボクセルの画像値を規定値にパディング(padding)する。ここで、パディングされた規定値をパディング値と呼ぶ。消去対象領域抽出部36は、消去対象領域の一部(画像値が強度閾値以上のボクセル)であると判断されたボクセルに対し、元の画像値を保持する。強度閾値より小さいCT値を有するボクセルの画像値を規定値にパディングすることにより、非造影画像からほとんどの軟組織を除去することができ、カルシウムのみまたはカルシウムを主に残すことができる。
【0050】
ステップ62では、レンダリング部38は、非造影画像における消去対象領域をカラーでレンダリングする。各ボクセルのレンダリングで使用されるカラー強度は、そのボクセルのCT値によって決まる。本実施形態では、ボクセルがレンダリングされるカラー強度は、ボクセルのCT値に等しい。なお、レンダリング部38は、強度の変化に応じて任意の適切な値を使用することができる。レンダリング部38は、規定値にパディングされたボクセルを透明にレンダリングする。
【0051】
ステップ64では、レンダリング部38は、差分画像(C)をグレイスケールでレンダリングする。差分画像(C)内のパディング値を有するボクセルを、黒色でレンダリングする。
【0052】
なお、ステップ58〜62は、ステップ56と64の両方に先行しても、ステップ56および64に続いても、またはステップ56および64と同時に行われても、ステップ56および64を挟んでもよい。
【0053】
ステップ66では、重ね合わせ画像発生部39は、非造影画像からの消去対象領域(カラーでレンダリングされる)と差分画像(グレイスケールでレンダリングされる)とを重ね合わせた重ね合わせ画像を発生する。視覚化は、フュージョン多断面再構成像(Multi-Planar Reconstruction:MPR)により実現される。画像の各ボクセルにおけるフュージョンMPR画像値は、消去対象領域における当該ボクセルの画像値と差分画像(C)における当該ボクセルの画像値とに基づいて計算される。表示部26は、差分画像に消去対象領域を重ね合わせることにより発生された重ね合わせ画像を表示する。
【0054】
なお、消去対象領域はグレイスケールでレンダリングされ、差分画像はカラーでレンダリングされても良い。消去対象領域および差分画像は、視覚的に区別可能な対比する色でレンダリングされても良い。消去対象領域および差分画像は、消去対象領域を差分画像から視覚的に区別可能な異なる態様で重ね合わせられても良い。具体的には、色以外にも、輝度、透明度等を変化させて、または模様、陰影、輪郭等を付加することによって、消去対象領域および差分画像を重ね合わせることにより、視覚的に区別可能にしても良い。
【0055】
フュージョンレンダリングでは、消去対象領域の画像値と差分画像の画像値とをどのように合成するか設定するために、フュージョン用スライダを使用する。このフュージョン用スライダは、消去対象領域における画像値の寄与率と差分画像における画像値の寄与率とが等しくなるように設定される。なお、フュージョン用スライダは、異なる設定を使用しても良い。操作者は、フュージョン用スライダを操作して所望のフュージョン用スライダ値を設定しても良い。重ね合わせ画像発生部39はまた、重ね合わせ画像の発生の態様を、操作者の入力に応じて変えることができる。例えば、重ね合わせ画像発生部39は、操作者の入力に応じて、重ね合わせ画像における消去対象領域または差分画像のフュージョンパラメータ、透明度、色または輝度のうちの1つまたは複数を変えることができる。重ね合わせ画像発生部39は、操作者の入力に応じて、重ね合わせ画像における消去対象領域または造影画像のフュージョンパラメータ、透明度、色、または輝度のうちの1つまたは複数を変えることができる。
【0056】
1つまたは複数の石灰化領域を抽出し、石灰化領域を差分画像から視覚的に区別可能に表示することによって、臨床医は、差分画像内のダークリングアーチファクトまたはダークスポットアーチファクトが石灰化に相当するかどうか判断することができる。詳細には、
図6および
図7で説明する。
【0057】
消去対象領域の画素のうち画像値が閾値以上でかつフュージョンレンダリングにおいて差分値と合成された画素以外は、処理されない。従って、重ね合わせ画像における消去対象領域は、大きな画像処理の結果ではない。重ね合わせ画像における消去対象領域は、非造影画像上で石灰化を良好に表す。従って、臨床医は、アーチファクトが石灰化に相当するという理解の確からしさを高めることができる。
【0058】
図5は、本実施形態に係る造影画像に非造影画像の一部を重ねる典型的な流れの一例を示す図である。
図3のシステムはまた、
図5のフローに示される一連のステップを行うように構成される。なお、医用画像処理装置20は、
図4のフローまたは
図5のフローのみを行っても良い。
図5のフローでは、
図4のフローに使用されたものと同じ非造影画像と造影画像とが使用される。
【0059】
ステップ70では、データ処理部34は非造影画像(A)を受け取る。ステップ72では、データ処理部34は造影画像(B)を受け取る。ステップ74では、位置合わせ処理部40は、非造影画像(A)の造影画像(B)との位置合わせ処理を行う。なお、非造影画像(A)および造影画像(B)を受け取るとき、非造影画像(A)および造影画像(B)は既に位置合わせ処理を施されていても良い。その場合、ステップ74は省略される。
【0060】
ステップ76では、レンダリング部38は、造影画像(B)をグレイスケールでレンダリングし、パディング値を有するボクセルを黒色にレンダリングする。
【0061】
ステップ78では、消去対象領域抽出部36は、非造影画像(A)内の1つまたは複数の消去対象領域を抽出する。消去対象領域抽出において、強度閾値は180HUに設定される。消去対象領域抽出において、強度閾値以上の全てのボクセルが消去対象領域となる。なお、180HUではなく他の強度閾値を使用しても良い。ステップ80では、消去対象領域抽出部36は、CT値が強度閾値より小さいボクセルを規定値にパディングする。その後、パディング値を有するボクセルは透明として、または背景としてレンダリングされる。ステップ82では、レンダリング部は、消去対象領域を形成する非造影画像(A)のボクセルをカラー(例えば、赤色)でレンダリングし、パディング値に設定されているボクセルを透明としてレンダリングする。
【0062】
本実施形態では、
図5のステップ78〜82は
図4のステップ60〜64と同じである。従って、
図4のフローと
図5のフローとの両方を行う関連する実施形態では、
図5のステップ78〜82が省略され、
図4のステップ64の出力は
図5のステップ84への入力として使用される。なお、ステップ76は、ステップ78〜82の後に行われても、ステップ78〜82と同時に行われてもよい。
【0063】
ステップ84では、重ね合わせ画像発生部39は、フュージョンMPRレンダリングを使用して重ね合わせ画像を発生する。画像の各ボクセルの画像値は、消去対象領域における当該ボクセルの画像値と造影画像における当該ボクセルの画像値とに基づいて計算される。次に、重ね合わせ画像発生部39は、発生された重ね合わせ画像を表示部26に表示する。重ね合わせ画像は、非造影画像から取得される任意の抽出された消去対象領域を、造影画像上に重ね合わせて表される。消去対象領域をカラーで、および造影画像をグレイスケールでレンダリングすることによって、消去対象領域を造影画像から視覚的に区別することができる。
【0064】
なお、消去対象領域はグレイスケールでレンダリングされ、造影画像はカラーでレンダリングされても良い。色または他の任意の適切な視覚化方式により、消去対象領域を造影画像、差分画像または重ね合わせ画像から視覚的に区別しても良い。例えば、輝度、色、テクスチャ、およびシェーディングのうちの少なくとも1つが、消去対象領域に対して、造影画像、差分画像または重ね合わせ画像に対するものと異なることにより、視覚的に区別しても良い。
【0065】
非造影画像における石灰化領域を位置的に対応する造影画像に重ね合わせることによって、臨床医が、造影画像と非造影画像とに良好な位置合わせがなされたかどうかを判断することができる。位置合わせが良好である場合、非造影画像から取得された石灰化領域は、造影画像内の石灰化領域の上に適切に重ね合わせられるはずである。位置合わせが良好でない場合、造影画像内の石灰化領域と非造影画像内の石灰化領域とがずれており、部分的にしか重ならない。造影画像との重なりを読影することによって、臨床医は、造影画像と非造影画像との位置合わせが適切かどうか判断することができる。これによって、臨床医は、手動位置合わせ処理と同等の位置合わせの確からしさを担保することができる。
【0066】
図4のフローにおいて発生される重ね合わせ画像および
図5のフローにおいて発生される重ね合わせ画像は、差分画像内のアーチファクトの評価に使用することができる。
図4の重ね合わせ画像を利用して、臨床医は、差分画像内のアーチファクトが石灰化に関連するかどうか識別することができる。
図5の重ね合わせ画像によって、臨床医は、画像の良好な位置合わせがなされたかどうか判断することができる。このような重ね合わせ画像の1つの例が
図6に示されている。
【0067】
図6Aは、本実施形態に係る、非造影(カルシウムスコア)画像の造影(CCTA)画像からの差分により発生された差分画像である。この差分画像は、ダークリングアーチファクト90を含む。臨床医は、ダークリングアーチファクト90を見て、ダークリングアーチファクト90が2つのスキャン間の、例えばモーション(スキャン中の被験者の体動や心拍に起因する動き)によるHU変化によって引き起こされたのか、それともダークリングアーチファクト90が非造影画像の造影画像と位置合わせ誤差によって引き起こされボクセルが差分に対して不適切に合わされているのか、判断することを望む場合がある。
【0068】
図6Bは、本実施形態に係る、差分画像に非造影画像から抽出された消去対象領域92(石灰化領域)を重ね合わせた画像である。
図6Bの画像は、
図4のフローによって発生される。消去対象領域92は、カラーでレンダリングされる。
図6Bの画像に基づいて、臨床医は、差分画像上のダークリングアーチファクト90が非造影画像における石灰化領域92に相当すると判断することができる。
【0069】
図6Cは、本実施形態に係る、造影画像データに非造影画像から抽出された消去対象領域92(石灰化領域)を重ね合わせた画像である。
図6Cの画像は、
図5のフローによって発生される。石灰化領域が画像中に存在すれば、造影画像と非造影画像との両方に高CT値領域として存在するはずである。造影画像に非造影画像から抽出された消去対象領域92が適切に重ね合わせられている場合、非造影画像内で視認できる石灰化領域は、位置的に対応する造影画像内で視認できる石灰化領域を重ね合わせられるはずである。
図6Cでは、石灰化はうまく重ね合わせられている。カルシウムスコア画像からの石灰化領域は、造影画像における石灰化に相当する高強度領域94と実質的に同じである。
図6Cの画像に基づいて、臨床医は、造影画像と非造影画像とに対して良好な位置合わせがなされたと判断することができる。
【0070】
差分画像上での石灰化領域の重ね合わせを調べることによって、臨床医は、アーチファクトが石灰化に相当すると結論づけることができる。造影画像上での消去対象領域の重ね合わせを調べることによって、臨床医は、良好な位置合わせがなされたと結論づけることができる。従って、臨床医は、造影画像と非造影画像との位置合わせは高い確からしさを有すると見なし、
図6Aの差分画像を高い確からしさで読影可能であると決定することができる。例えば、臨床医は、差分画像から読影可能な内腔直径は、物理的内腔の直径を正確に表すと自信を持つことができる。
【0071】
差分画像と
図4の重ね合わせ画像と
図5の重ね合わせ画像の第2の例が、
図7に示されている。
図7の画像は、
図6の画像とは異なる対象の医用画像を表す。
【0072】
図7Aは、本実施形態に係る、非造影画像の造影画像からの差分により発生された差分画像である。
図7Aに示す差分画像は、ダークリングアーチファクト100と、内腔の左にあるダークスポットアーチファクト108とを含む。
【0073】
図7Bは、本実施形態に係る、差分画像(
図7A)に非造影画像から抽出された消去対象領域102(石灰化領域)を重ね合わせた画像である。
図7Bでは、消去対象領域102はカラーでレンダリングされる。消去対象領域102は、
図7Aのダークリングアーチファクトの上に重なると判断される。従って、臨床医は、ダークリングアーチファクトが石灰化102に関連すると決定することができる。
【0074】
図7Cは、本実施形態に係る、造影画像に非造影画像から抽出された消去対象領域102(石灰化領域)を重ね合わせた画像である。画像が適切に位置合わせされている場合、カラーで示される消去対象領域が、石灰化を表す造影画像内の高強度領域と一致すると予想される。しかし、
図7Cは、高強度領域と一致するように見えないカラー領域104を示す。臨床医は、
図7Cの画像を見て、造影画像において消去対象領域と明るい強度の領域との間に重複が欠如していることから、位置合わせ誤差があると決定することができる。臨床医は、内腔の左にあるダークスポットアーチファクト108が位置合わせ誤差によるアーチファクトであると結論づけることができる。従って、臨床医は、差分画像の対応する領域を注意して読影するよう注意することができる。臨床医は、位置合わせが不十分すぎて差分画像を使用することができないと結論づけることがある。あるいは、臨床医は、画像の少なくとも一部がやや誤って位置合わせされていることを知りながら、差分画像を引き続き使用することを選択することがある。場合によっては、臨床医または他の施術者は、手動でまたは自動化された手順を使用して、画像または画像データセットを再度位置合わせまたは他の方法で再度合わせることを選択することがある。
【0075】
差分画像に存在することがある他のアーチファクトとして、ダークスポットおよびダークリングの外部にある造影状強度(contrast-like intensity)がある。例えば、
図7Aの差分画像には、ダークリングアーチファクト100の外部にある造影状強度の領域106がある。
【0076】
図8A〜
図8Cは、
図7A〜
図7Cにおける造影状強度の領域106に、楕円マーク110を付加した図である。
図8Aは、
図7Aに示す画像に、カルシウムブルーミング領域を示す楕円マーク110を付加した画像である。
図8Bは、
図7Bに示す画像に、カルシウムブルーミング領域を示す楕円マーク110を付加した画像である。
図8Cは、
図7Cに示す画像に、カルシウムブルーミング領域を示す楕円マーク110を付加した画像である。
【0077】
図7Aおよび7Bに関して上記で説明したように、臨床医は、ダークリングアーチファクト100が石灰化領域102に相当すると判断することができる。石灰化は血管の外壁に接すると考えられるので、ダークリングは、血管の境界を示すように解釈されることができる。従って、臨床医は、ダークリングまたは石灰化の外側にあるものは血管の一部ではないと判断することができる。
【0078】
臨床医は、
図8A、
図8B、および
図8C上において楕円マーク110によって示される領域は、カルシウムブルーミングの領域(カルシウムブルーミングアーチファクト)であると判断することができる。ステップ58およびステップ78の強度閾値は、カルシウムブルーミングならびに本物のカルシウムを捕捉するように設定される。カルシウムブルーミングは非造影画像よりも造影画像において影響が強いことが知られている。臨床医は、楕円マーク110によって囲まれる区域のCT値を、造影画像において非造影画像に比べてカルシウムブルーミングが増加したと解釈する。臨床医はまた、楕円マーク110内のアーチファクトが
図7Cに関して説明したような位置合わせ誤差であると決定する。臨床医は、造影画像がより大きなカルシウムブルーミングを有することを確認するために、造影画像と共に、対応する非造影画像を読影する。
【0079】
上記の実施形態において発生された重ね合わせ画像を用いて、臨床医は、観察されたアーチファクトの原因を理解して、アーチファクトがあまりに重度なので所与の領域内の差分データを信頼すべきでないと判定できることがある。具体的には、例えば、
図6Bと6Cまたは
図7Bと7Cとを比較することで、アーチファクトを理解することができる。
【0080】
臨床医は、位置合わせされた画像の実際のCT値と相対的な位置関係とを示す重ね合わせ画像を閲覧できる。従って、臨床医は、個々の画像とそれらの画像の組合せとを調べることによって、位置合わせの有効性を直接的に判定することができる。例えば、直接的に取得された非造影画像のCT値に、直接的に取得された造影画像のCT値を重ね合わせる。その場合、発生された重ね合わせ画像は、通常のレンダリング処理以外で実質的に処理されていない。従って、臨床医は、重ね合わせ画像における位置合わせの確からしさを担保することができる。
【0081】
なお、医用画像処理装置20は、位置合わせの確からしさを数値化して表示しても良い。確からしさ計算部112は、造影画像、非造影画像および差分画像のうち少なくとも1つに基づいて、位置合わせの確からしさを示す指標を計算する。具体的には、例えば、確からしさ計算部112は、造影画像、非造影画像および差分画像のうち位置合わせ処理対象の2つの画像に基づいて、位置合わせの確からしさを示す指標を計算する。確からしさの指標は、例えば、相互情報量または差分二乗和である。表示部26は、重ね合わせ画像と確からしさを示す指標とを表示する。なお、表示部26は、確からしさの指標に応じたメッセージを表示しても良い。具体的には、メッセージは、例えば、「位置合わせはほぼ完全に合っている(確からしさ90%以上)」「位置合わせはおおよそ合っている(確からしさ80〜90%)」「位置合わせは合っているかもしれない(確からしさ80%以下)」などである。
【0082】
上記の実施形態において、
図3の医用画像処理装置は、アーチファクトの評価において臨床医が使用できる画像を発生する。上記の実施形態では、重ね合わせの視覚化は、画像全体に対して実行された。なお、
図9のフロー図のように、例えば、臨床医は、アーチファクトまたはアーチファクト領域を選択しても良い。上記の実施形態は、以下の実施形態の態様と組み合わせられても良い。
【0083】
図9は、本実施形態に係る、少なくとも1つのアーチファクトを含む差分画像に関連する画像を選択して見る際の、臨床医の
図3の医用画像処理装置20との典型的なやり取りの一例を示す図である。
【0084】
ステップ120では、データ処理部34は、非造影画像と、造影画像と、差分画像とを発生する。非造影画像データと造影画像データとは、どちらも同じ患者の同じ検査のものとして、CTスキャナ24により収集される。レンダリング部38は、非造影画像の各ボクセルのCT値を造影画像の対応するボクセルのCT値から差分することによって差分画像を発生する。
【0085】
ステップ122では、臨床医は、表示部26に表示された差分画像を読影する。
【0086】
ステップ124では、臨床医は、表示部26に表示された差分画像内におけるアーチファクトまたはアーチファクトを含む領域を選択する。本実施形態では、臨床医は、マウス28を使用して、アーチファクトの上およびその左にある画面上の第1の点をクリックし、アーチファクトの下および右にある画面上の第2の点に選択ボックスをドラッグし、それによってアーチファクトを含む画像の矩形領域を選択する。なお、臨床医は、マウス28のシングルクリックによってアーチファクトそのものの上で1つの点を選択し、消去対象領域抽出部36は、マウスクリックの点を囲む画像の領域を選択しても良い。選択される領域の大きさは、あらかじめ決定されていても良い。例えば、領域の大きさはシステム内の固定パラメータとすることができる。または、臨床医が領域の大きさを決定しても良い。
【0087】
臨床医は、タッチ画面に触れることによって、キーボードコマンドを使用することによって、トラックボールを使用することによって、入力コンソール上のボタンを押すことによって、または任意の適切な入力方法によって、差分画像における点または領域を選択する。臨床医は、消去対象領域抽出のために、複数の点または領域を選択する。
【0088】
臨床医は、差分画像と同時に、非造影画像および/または造影画像を読影する。なお、臨床医は、差分画像を読影する前または後に、非造影画像および/または造影画像を読影しても良い。
【0089】
臨床医は、消去対象領域抽出のために、非造影画像上の点または領域を選択する。臨床医は、例えば、石灰化を含む領域を選択する。臨床医は、消去対象領域抽出のために、造影画像上の点または領域を選択する。
【0090】
臨床医は、差分画像と、造影画像と、非造影画像とを同時に読影し、消去対象領域抽出のために表示された画像のいずれかにおける点または領域を選択することができる。
【0091】
ステップ126では、消去対象領域抽出部36は、ステップ124で選択された領域に対応する非造影画像の一部を選択する。非造影画像と造影画像とは位置合わせされるので、非造影画像、造影画像または差分画像のいずれかにおける点または領域の選択に応じて、非造影画像の適切な部分を取得することが可能である。
【0092】
本実施形態では、消去対象領域抽出部36は、選択された領域に対応する非造影画像の部分領域に強度閾値を適用する。消去対象領域抽出部36は、非造影画像の選択された領域内における強度閾値以上のCT値を有する全てのボクセルを、関連のあるボクセルとして識別する。強度閾値より小さいCT値を有するボクセルは、規定値にパディングする。選択された領域に対応する非造影画像の部分に含まれないボクセルも、規定値にパディングする。なお、消去対象領域抽出のために別の方法が用いられても良い。なお、消去対象領域抽出部36は、選択された領域内から消去対象領域を識別するのではなく、選択された領域全体を消去対象領域と識別しても良い。
【0093】
ステップ128では、臨床医は、差分画像と消去対象領域との重ね合わせ表示を選択する。重ね合わせ画像発生部39は、差分画像と消去対象領域との重ね合わせ画像を発生する。本実施形態では、臨床医は、所定のキーストロークコマンド(keystroke command)、例えば「O」を使用することによって、重ね合わせ表示を選択できる。差分画像を閲覧中に臨床医は、キーボード28上の「O」キーを押下することによって、重ね合わせのない差分画像(例えば、
図6A)と消去対象領域の重ね合わせを持つ差分画像(例えば、
図6B)との間で、表示を切り替えることができる。なお、重ね合わせ画像発生部39は、他の任意の操作者の入力に応じて、重ね合わせ画像と非重ね合わせ画像とを切り替えても良い。非重ね合わせ画像は、例えば、造影画像、非造影画像または差分画像である。
【0094】
ステップ130では、臨床医は、造影画像と消去対象領域との重ね合わせ表示を選択する。重ね合わせ画像発生部39は、差分画像と消去対象領域との重ね合わせ画像を発生する。本実施形態では、造影画像は、差分画像の横に自動的に表示されない。従って、臨床医は最初に造影画像を選択すると、表示部26は造影画像を表示する。臨床医は、次に、例えば「O」キーを押下することによって、重ね合わせ表示に切り替える。臨床医は、「O」キーを使用して、重ね合わせられた造影画像と重ね合わせられていない造影画像とを切り替えることができる。
【0095】
また、表示部26は、造影画像および差分画像、または医用画像の他の任意のペアを、消去対象領域を重ね合わせてまたは消去対象領域を重ねずのどちらかで、同時にまたは連続して表示する。「O」キーを押下することによって、造影画像と差分画像の両方の上で重ね合わせ表示と非重ね合わせ表示とが同時に切り替わる。また、重ね合わせ画像発生部39は、医用画像のペアの異なる一方に表示を切り替えることができる。
【0096】
また、差分画像または造影画像の重ね合わせ表示を呼び出すために、または画像を切り替えるために、異なるコマンドが用いられても良い。例えば、臨床医は、アイコンをクリックしても、コマンドを入力しても、タッチ画面のある領域に触れても、または他の任意の適切な入力方法を使用しても良い。臨床医は、対象となる領域上にマウスを置き、マウスポインタによって示される拡大領域(レンズウィンドウ(lens window))内に重ね合わせ画像を表示させることができる。非造影画像、造影画像、重ね合わせられた造影画像、差分画像および重ね合わせられた差分画像の任意の表示の組合せを閲覧することができる。視覚化は、容易に有効/無効にされても、常に使用可能であってもよい。
【0097】
また、重ね合わせ画像発生部39は、表示画像の横に表示される1つまたは複数の縮小画像を発生する。例えば、臨床医が重ね合わせのない差分画像を閲覧しているとき、重ね合わせられた差分画像の縮小画像が表示される。臨床医が縮小画像を選択すると、重ね合わせられた差分画像が画面全体に表示される。また、臨床医が差分画像を閲覧しているとき、造影画像および非造影画像の縮小画像が表示されても良い。縮小画像を選択すると、その画像が画面全体に表示される。更に、縮小画像を選択すると、対応する画像が、現在見られている画像の横に、または同じ表示部26の別のウィンドウもしくはタブ上に表示されても良い。表示部26は、差分画像、造影画像、非造影画像、重ね合わせられた差分画像、または重ね合わせられた造影画像に関する縮小画像を表示できる。
【0098】
臨床医が差分画像または造影画像の重ね合わせ表示を見る際、フュージョン用スライダが表示部26に表示されることがある。臨床医は、フュージョン用スライダを操作して、フュージョンレンダリングの異なる割合を設定して、消去対象領域と差分画像または造影画像とを合成する。例えば、差分画像の場合、フュージョン用スライダは、フュージョン用スライダが一端に設定されている場合(差分画像100%)、表示される画像は差分画像のみであり、消去対象領域の重ね合わせがない画像である。フュージョン用スライダが他端に設定されている場合(消去対象画像100%)、表示される画像は消去対象領域のみであり、差分画像の重ね合わせがない。フュージョン用スライダが中間位置にある場合(差分画像X%、消去対象画像Y%)、重ね合わせ画像のボクセル毎で、差分画像の画像値の寄与率がX%、消去対象領域の画像値の寄与率はY%である。臨床医は、マウスを使用して、キーボードコマンドを使用して、または他の任意の適切な入力方法によって、フュージョン用スライダを制御することができる。また、臨床医は、フュージョンレンダリングによる重ね合わせ画像のレンダリングに使用されるカラーマップを選択することができる。更に、消去対象領域と差分画像とを合成してフュージョンレンダリングの割合を変化させることができる。
【0099】
臨床医が、視覚化(重ねられた差分画像および/または重ねられた造影画像)を調整して、差分処理の確からしさを解釈することがある。視覚化は、全ての関連のあるデータを結合し、アーチファクトを迅速に理解することできる。視覚化によって、関連のある画像値が、画像処理とは無関係に直接表示される。
【0100】
図9において、臨床医は、重ね合わせられた差分画像と重ね合わせられた造影画像の両方を読影する。また、臨床医は、一方の画像のみを読影することがある。例えば、臨床医は、重ね合わせられた造影画像のみを使用して、位置合わせが良好であるかどうか判断する。
【0101】
図9において、臨床医は、最初に重ね合わせられた差分画像を選択し、次に、重ね合わせられた造影画像を選択しても良い。なお、臨床医がステップ124で点または領域を選択した後に、重ね合わせ画像発生部39が一方または両方の重ね合わせ画像を自動的に発生し、それらを現在表示されている画像の代わりに、またはこれに加えて、表示部26に表示しても良い。
【0102】
上記の実施形態では、冠動脈画像内のアーチファクトを評価するために
図4、
図5、および/または
図9の方法を使用することを説明した。なお、画像は、動脈、静脈、頸動脈、および腎動脈などの血管を含むがこれらに限定されない他の血管に関連するものでも良い。
【0103】
CTデータの処理に関する実施形態について説明してきたが、これらの実施形態は、任意の適切なタイプの医用画像、例えばX線画像、MRI画像またはPET画像を処理するために使用することができる。造影画像および非造影画像に関する実施形態について説明してきたが、差分に適した任意の画像を使用することができる。
【0104】
本明細書において特定のユニットについて説明してきたが、代替実施形態では、これらのユニットの機能のうちの1つまたは複数は、単一のユニット、処理リソース、または他の構成要素によって提供されることができ、または、単一のユニットによって提供される機能は、組み合わせた2つ以上のユニットまたは他の構成要素によって提供されることができる。単一のユニットへの言及は、そのユニットの機能を提供する複数の構成要素が互いから離れていようといまいと、そのような構成要素を包含し、複数のユニットへの言及は、それらのユニットの機能を提供する単一の構成要素を包含する。
【0105】
特定の実施形態について説明してきたが、これらの実施形態は、例として提示したにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。実際、本明細書で説明する新規な方法およびシステムは、さまざまな他の形態で実施することができる。そのうえ、本明細書において説明する方法およびシステムの形態における種々の省略、置き換え、および変更は、本発明の趣旨から逸脱することなく行うことができる。添付の特許請求の範囲およびその等価物は、本発明の範囲に含まれるこのような形態と変形形態とを包含することを意図するものである。