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特許6367033放射性廃棄物の固化体の製造方法およびその製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367033
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】放射性廃棄物の固化体の製造方法およびその製造装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20180723BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G21F9/30 517A
   G21F9/12 501B
   G21F9/30 581B
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-148748(P2014-148748)
(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公開番号】特開2016-24076(P2016-24076A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野原 雄介
(72)【発明者】
【氏名】川野 昌平
(72)【発明者】
【氏名】佐谷野 顕生
(72)【発明者】
【氏名】小畑 政道
(72)【発明者】
【氏名】高橋 陵太
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−048187(JP,A)
【文献】 特開平08−217527(JP,A)
【文献】 特開2001−334518(JP,A)
【文献】 特開2009−274910(JP,A)
【文献】 特開2014−044148(JP,A)
【文献】 特開平05−126997(JP,A)
【文献】 特開昭50−053800(JP,A)
【文献】 特開2014−013159(JP,A)
【文献】 斎藤勝義,セラミック材料混練・成形の現状と問題点,粉体工学会誌,日本,1984年,第21巻第6号,第340〜350頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J20/00−20/281
20/30−20/34
B09B1/00−5/00
B09C1/00−1/02
1/06−1/10
G21F9/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性核種を吸着させた無機吸着剤を成形助剤とともに混練して混練体を生成する混練工程と、
前記混練体の含水率を既定の範囲内に調整する調整工程と、
前記混練体を押出成形する成形工程と、
押し出されて棒状となった前記混練体を規定された間隔で切断する切断工程と、
切断された前記混練体を焼成して固化体にする焼成工程と、を含み、
前記混練工程の前段で前記無機吸着剤を乾燥させる吸着剤乾燥工程と、
乾燥された前記無機吸着剤、水および前記成形助剤を一定の比率で供給する比率供給工程と、を含むことを特徴とする放射性廃棄物の固化体の製造方法。
【請求項2】
前記調整工程は、前記混練工程の混練とともに実施されることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物の固化体の製造方法。
【請求項3】
前記切断工程で切断された前記混練体を乾燥させる切断体乾燥工程をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射性廃棄物の固化体の製造方法。
【請求項4】
前記吸着剤乾燥工程および前記切断体乾燥工程の少なくとも一方は、
前記無機吸着剤に含まれる前記放射性核種の核崩壊に基づく自発熱によって乾燥されることを特徴とする請求項3に記載の放射性廃棄物の固化体の製造方法。
【請求項5】
前記成形工程は、減圧された雰囲気下で実施されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の固化体の製造方法。
【請求項6】
前記吸着剤乾燥工程、前記混練工程、前記成形工程、前記切断体乾燥工程および前記焼成工程の少なくとも1工程において、発生する水素を除去することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の固化体の製造方法。
【請求項7】
焼成されて保管容器で保管される前記固化体は、重量、表面線量および固化体線量の少なくとも1つが計測されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の固化体の製造方法。
【請求項8】
放射性核種を吸着させた無機吸着剤および成形助剤を混練して混練体を生成する混練機と、
前記無機吸着剤および前記成形助剤とともに混練される水分量を調整する調整部と、
型孔を有するとともに前記混練体を収容する空洞槽と、
前記型孔から前記混練体を押し出して成形する押出部と、
押し出されて棒状となった前記混練体を規定された間隔で切断する切断部と、
切断された前記混練体を焼成して固化体にする焼成炉と、を備え、
前記調整部は、前記混練機に供給される前の前記無機吸着剤を乾燥させる吸着剤乾燥部であることを特徴とする放射性廃棄物の固化体の製造装置。
【請求項9】
前記調整部は、前記混練機における前記混練体の含水率を計測する計測部を備えることを特徴とする請求項8に記載の放射性廃棄物の固化体の製造装置。
【請求項10】
切断された前記混練体を乾燥させる乾燥機を備えることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の放射性廃棄物の固化体の製造装置。
【請求項11】
前記乾燥機は、切断された前記混練体を積み上げるロボットアームを備えることを特徴とする請求項10に記載の放射性廃棄物の固化体の製造装置。
【請求項12】
前記混練機‐前記押出成形機間、前記押出成形機‐前記乾燥機間および前記乾燥機‐前記焼成炉間の少なくとも1区間に設置されて前記混練体を搬送するコンベアを備えることを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の放射性廃棄物の固化体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、無機吸着剤に放射性核種を吸着させた固化体の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントは、蒸気発生手段、高圧タービン、低圧タービン、復水器、給水ポンプ、給水加熱器を順次経て、再び蒸気発生手段に軽水を戻す循環サイクルを構成している。
【0003】
そして、蒸気発生手段で発生した蒸気によって、高圧タービンおよび低圧タービンを駆動させて発電機を作動させ、発電が実施される。
沸騰水型原子力発電プラント(BWR)においては、原子炉で軽水を沸騰させており、この原子炉が蒸気発生手段を兼ねている。
【0004】
ところで、大地震や大津波によりBWRの供給電源が全て喪失すると、原子炉への給水が停止して空焚き状態となる。
空焚き状態が継続すると、炉心燃料の溶融または原子炉圧力容器の損傷に至る場合がある。
【0005】
一方、このような過酷事故が発生した場合、炉心燃料の崩壊熱を安定的に冷却するため、原子炉圧力容器の内部に外部から冷却水が供給される。
このとき、原子炉圧力容器が損傷していると、この供給されて放射能汚染された冷却水がその損傷部位から漏洩することになる。
【0006】
高濃度な放射能汚染水を大量に浄化する場合、無機吸着剤等の吸着剤を用いた放射線核種の除去が行われる。
このような吸着剤を用いた浄化処理は、吸着剤等の放射性廃棄物が二次的に発生する。
【0007】
これら二次廃棄物は、炉心燃料が溶融したことを想定すると高濃度の放射性セシウム(137Cs)等を含み高い放射線量を示す。
よって、長期的に中間貯蔵および最終的処分をするためには、固化をして安定した形態にする必要がある。
【0008】
137Csおよびストロンチウムなどの放射性核種を含む無機吸着剤の固化技術は、いくつか開示されている。
例えば、これらの放射性核種を合成モルデナイトなどの無機吸着剤に吸着させて、ラバープレスで加圧して成形し、大気炉中において1200℃前後の温度で焼成して固化体にする。
【0009】
また、放射性物質を含むセラミック廃棄物にアルカリ性水溶液を添加してこれらを金属カプセルに充填して、全体を熱間静水圧加圧処理することにより、固化体を成形する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2807381号公報
【特許文献2】特許第3071513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、1200℃程度の高温で焼成すると、無機吸着剤に吸着させた137Csの揮発が懸念される。
例えば、1200℃で3時間保持した場合、無機吸着剤に吸着させた137Csの揮発率は0.02〜0.22%となる。
【0012】
また、放射性物質を含むセラミック廃棄物をアルカリ性水溶液とともに金属カプセルに充填する場合、熱間静水圧加圧処理を行うために大型機械設備を用いなければならない。
さらに、その処理には長時間を要するために、大量の廃棄物処理に適していない。
【0013】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、簡単なプロセスで大量の放射性核種の安定的な最終処分ができるようになるとともに、固化体の製造の際に放射性核種の揮発を抑制する放射性廃棄物の固化体の製造方法およびその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる放射性廃棄物の固化体の製造方法は、放射性核種を吸着させた無機吸着剤を成形助剤とともに混練して混練体を生成する混練工程と、前記混練体の含水率を既定の範囲内に調整する調整工程と、前記混練体を押出成形する成形工程と、押し出されて棒状となった前記混練体を規定された間隔で切断する切断工程と、切断された前記混練体を焼成して固化体にする焼成工程と、を含み、前記混練工程の前段で前記無機吸着剤を乾燥させる吸着剤乾燥工程と、乾燥された前記無機吸着剤、水および前記成形助剤を一定の比率で供給する比率供給工程と、を含むものである。
【0015】
また、本発明にかかる放射性廃棄物の固化体の製造装置は、放射性核種を吸着させた無機吸着剤および成形助剤を混練して混練体を生成する混練機と、前記無機吸着剤および前記成形助剤とともに混練される水分量を調整する調整部と、型孔を有するとともに前記混練体を収容する空洞槽と、前記型孔から前記混練体を押し出して成形する押出部と、押し出されて棒状となった前記混練体を規定された間隔で切断する切断部と、切断された前記混練体を焼成して固化体にする焼成炉と、を備え、前記調整部は、前記混練機に供給される前の前記無機吸着剤を乾燥させる吸着剤乾燥部であるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、簡単なプロセスで大量の放射性核種の安定的な最終処分ができるようになるとともに、固化体の製造の際に放射性核種の揮発を抑制する放射性廃棄物の固化体の製造方法およびその製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態にかかる放射性廃棄物の固化体の製造方法のフローチャート。
図2】第1実施形態にかかる放射性廃棄物の固化体の製造装置の概略構成図。
図3】第1実施形態にかかる製造装置の混練機および混練機に接続される各種部材の拡大断面図。
図4】計測部が混練機の外部に設置された場合の、調整部の一例を示す概略断面図。
図5】混練機およびこの混練機に接続される各種部材の変形例の概略断面図。
図6】混練機およびこの混練機に接続される各種部材の変形例の概略断面図。
図7】(A)は無機吸着剤をチャバサイトとする切断体に対して、焼成時の保持温度を変数として密度を計測した実験結果を示す図、(B)は無機吸着剤を結晶性ケイチタン酸塩とする切断体に対して、焼成時の保持温度を変数として密度を計測した実験結果を示す図。
図8】第2実施形態にかかる放射性廃棄物の固化体の製造方法のフローチャート。
図9】第2実施形態にかかる放射性廃棄物の固化体の製造装置の概略構成図。
図10】第3実施形態にかかる放射性廃棄物の固化体の製造装置の概略構成図。
図11】混練機および押出成形機における排気管の配置の一例を示す概略断面図。
図12】第4実施形態にかかる放射性廃棄物の固化体の製造装置の混練機および混練機に接続される各種部材の拡大断面図。
図13】成形助剤をベントナイトとして無機吸着剤と混練して固化体を製造した実験データを示すテーブル。
図14】成形助剤をカオリンとして無機吸着剤と混練して固化体を製造した実験データを示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる放射性廃棄物の固化体の製造方法(以下、単に「製造方法」という)のフローチャートである。
図2は、第1実施形態にかかる放射性廃棄物の固化体の製造装置10(以下、単に「製造装置10」という)の概略構成図である。
また、図3は、第1実施形態にかかる製造装置10の混練機14および混練機14に接続される各種部材の拡大断面図である。
【0020】
第1実施形態にかかる製造方法は、図1から図3に示されるように、放射性核種を吸着させた無機吸着剤11を成形助剤12とともに混練して混練体13を生成する混練工程(S12〜S18)と、混練体13の含水率を既定の範囲内に調整する調整工程(S14〜S17)と、混練体13を押出成形する成形工程(S19)と、押し出されて棒状となった混練体13aを規定された間隔で切断する切断工程(S20)と、切断された混練体13bを焼成して固化体13cにする焼成工程(S22)と、を含む。
【0021】
さらにこの製造方法は、切断工程(S20)で切断された混練体13b(切断体13b)を乾燥させる切断体乾燥工程(S21)を含む。
【0022】
また、第1実施形態にかかる製造装置10は、図2および図3に示されるように、放射性核種を吸着させた無機吸着剤11および成形助剤12を混練して混練体13を生成する混練機14と、無機吸着剤11および成形助剤12とともに混練される水分量を調整する調整部20と、型孔17を有するとともに混練体13を収容する空洞槽15と、空洞槽15の型孔17から混練体13を押し出して成形する押出部16と、押し出されて棒状となった混練体13aを規定された間隔で切断する切断部22と、切断された混練体(切断体)13bを焼成して固化体13cにする焼成炉23と、を備える。
【0023】
このように構成された製造装置10によって、第1実施形態にかかる製造方法の効率的な実施が可能となる。
そこで、まず、製造装置10について詳述する。
【0024】
混練機14は、放射性核種を吸着させた無機吸着剤11および成形助剤12を混練して混練体13を生成する。
無機吸着剤11および成形助剤12は、モータ29で回転する混練インペラ43によって、水27とともに混練される。
【0025】
無機吸着剤11には、チャバサイトまたは結晶性ケイチタン酸塩を主成分とするものが好適に用いられる。
また、無機吸着剤11はこれらに限定されず、例えば放射性物質を吸着する性質を有する、アルミケイ酸塩、クリノプチロライトまたはハーシュライトなどであってもよい。
【0026】
無機吸着剤11は、例えば、原子力発電所に施設された吸着塔で使用されたものである。
吸着塔において、無機吸着剤11が、直列に接続された複数のベッセル26に収容されて、このベッセル26に通水された放射能汚染水から放射性核種を吸着する。
【0027】
直列に接続されたベッセル群に所定時間通水がされるとその最上流(第1番目)のベッセル26は新しいベッセル26に交換され、第2番目のベッセル26が最上流のベッセル26となる。
同様にして、最上流の第n番目のベッセル26は使用後取り外され、第n+1番目のものが最上流となり、最下流に新規のベッセル26が追加される。
【0028】
取り外されたベッセル26の無機吸着剤11は、一般にベッセル26に収容されたまま、または吸着剤ホッパー31(図9)などに収集されて一時的に保管される。
このように保管された無機吸着剤11を、混練機14に投入して、成形助剤12および水27とともに混練する。
【0029】
なお、無機吸着剤11は、通水されていたベッセル26に収容されていたものであるので、ある程度の水分を既に含んでいることが多い。
混練機14に投入される際のこの無機吸着剤11の水分量が、供給すべき水27の分量以上である場合には、水27の供給を行わなくてもよい。
【0030】
成形助剤12は、無機吸着剤11に添加されて混練されることで、粉体状の無機吸着剤11に可塑性を付与して、押出成形を容易にする。
成形助剤12は、特に粘土系鉱物を主成分とするものが好適に用いられる。
【0031】
適用される粘土系鉱物の成形助剤12としては、ベントナイト、カオリン(カオリナイト)、ハロサイト、クリソタイル、パロイフィライト、タルク、ムスコバイト、フロゴバイト、セイサイト、クロライト、バイデライトまたはバーミキュライト等が挙げられる。
特に、ベントナイトおよびカオリンは、安価で入手しやすく、好適に利用することができる。
【0032】
なお、混練の際、混練による摩擦熱および放射性核種の核崩壊によって、混練体13の温度が100℃を超過することがある。
このような高温で混練を継続すると、混練機14および混練機14に接続される各種機器の劣化または故障の頻度が増加する。
【0033】
また、混練体13の温度を制御しないと、水分の蒸発を加味した水27の調整も困難となる。
そこで、混練機14に第1冷却部35を設けて、混練体13の温度を50℃程度に維持する。
【0034】
調整部20は、無機吸着剤11および成形助剤12とともに混練される水分量を調整する。
混練体13を押出成形によって成形する場合、押し出されてできる押出成形体13aにひび割れを発生させない一方で適切な形状を維持させるには、混練後の混練体13の含水率を適切なものにする必要がある。
【0035】
混練後の混練体13の適切な含水率は、例えば、成形助剤12をベントナイトとする場合は約35%+−0.3%程度と、その範囲が狭い。
成形助剤12がカオリンである場合も、含水率の適切な範囲の幅は、+−0.3%程度と狭い。
つまり、必要な成形助剤12の添加量を最小限に維持して押出成形に適した粘度を有する混練体13aを生成するためには、混練体13の含水率の調整が重要となる。
【0036】
そこで、製造装置10は、調整部20を備えて、混練体13の水分量を調整する。
調整部20は、例えば、混練機14における混練体13の含水率を計測する計測部20a(20)と、混練機14に接続されて混練機14に水27を供給する水供給部20c(20)と、を備える。
【0037】
計測部20aには、例えば、電気抵抗法の一種である4極法に基づく水分計、静電容量法に基づく水分計または誘電率法に基づく水分計などを利用することができる。
なお、これらのいずれの水分計も、その計測値に対して、放射性核種の核崩壊を考慮した補正をする必要がある。
【0038】
また、計測部20aは、混練機14の外部に設置されていてもよい。
例えば、図4は、計測部20aが混練機14の外部に設置された場合の、調整部20の一例を示す概略断面図である。
計測部20aは、図4に示されるように、混練機14の外部に設置されて採取したサンプルの含水率を計測する赤外線計測部20a(20a)であってもよい。
【0039】
赤外線計測部20aは、サンプルを赤外線で乾燥させて、乾燥前後のサンプルの質量の変化からサンプルの含水率を計測するものである。
サンプルは、例えば、混練機14の排出口19の近傍に設けられた採取管20f(20)から赤外線計測部20aへ送られる。
【0040】
採取管20fには、通常は閉止された採取弁20e(20)および採取ポンプ20g(20)が設置される。
混練体13が所定時間だけ混練されると、排出口19付近の混練体13の一部が採取ポンプ20g(20)で吸引されて採取される。
【0041】
計測部20aで計測された含水率の計測値は、例えば、ライン38で製造装置10の外部の制御室46に送信されて、監視員に監視される。
送信される計測値には上限および下限の閾値が設定されて、この閾値を超えると、モニタ47に通知が表示される。
【0042】
そして、この通知に基づいて監視員によって決定された水27の供給量に関する信号は、モニタ47を介して水供給部20cに送られる。
この信号を受けた水供給部20cは、調整弁20d(20)を開放して決定された供給量だけ水27を混練機14に供給する。
なお、成形助剤12を供給することで混練体13の水分量を調整してもよい。
【0043】
また、ライン38は、例えば混練インペラ43のモータ29に接続されて、このモータ29の稼働時間(すなわち混練時間)を調整してもよい。
例えば混練体13の含水率が高すぎる場合であっても、混練体13から水27のみを引き抜くことは容易ではない。
そこで、混練時間を延長させて水27を蒸発させることで、混練体13の含水率を既定の範囲内に調整する。
【0044】
また、ライン38を電源35a(35)に接続して、第1冷却部35の冷却を緩和して混練体13の水分を蒸発させることで含水率を調整してもよい。
なお、このような調整は、ライン38をモータ29、電源35aまたは調整弁20dなどに接続して、監視員を介さずに自動で行うことも当然できる。
【0045】
図3に戻って製造装置10の説明を続ける。
【0046】
混練機14で生成された混練体13は、押出成形機18で押出成形される。
押出成形機18は、型孔17を有するとともに混練体13を収容する空洞槽15と、空洞槽15の型孔17から混練体13を押し出して成形する押出部16と、を備える。
生成された混練体13は、混練機14の排出口19から排出されて、空洞槽15の投入口34へ落下する。
【0047】
落下した混練体13は、押出部16によって空洞槽15の型孔17から押し出されて押出成形体13a(13)となる。
押出部16は、例えば空洞槽15に内設されて駆動部24によって回転されるスクリューである。
【0048】
また、混練機14と同様に、押出成形機18には空洞槽15を冷却する第2冷却部51が設置される。
第2冷却部51も、第1冷却部35と同様に、核崩壊または押出部16の回転による摩擦熱による温度の上昇を防止する。
第2冷却部51によって、例えば型孔17の変形、押出部16の劣化および混練体13の水分の過剰な蒸発などを防止することができる。
【0049】
切断部22は、押出成形体13aを規定された間隔で切断する。
押出成形機18の型孔17の先端付近には、例えば、押出成形体13aを搬送する成形コンベア42a(42)が配置される。
【0050】
型孔17から排出された押出成形体13aは、成形コンベア42aに垂直に切断刃22aを配置させた切断部22によってブロック状に切断されて乾燥機28へ搬送される。
なお、成形コンベア42aは、ゴム製コンベアに比べて放射線照射による劣化が少ない金属製コンベアであることが望ましい。
【0051】
次に、図5および図6を用いて、図3で示した混練機14およびこの混練機14に接続される各種部材の変形例について説明する。
なお、図5および図6では、図3の水27、無機吸着剤11および成形助剤12の記載を省略している。
【0052】
混練機14の排出口19は、必ずしも図3で示されるように押出成形機18の投入口34の直上に配置されていなくてもよい。
例えば、混練機14および押出成形機18の位置関係によっては、図5に示されるように、運搬コンベア42b(42)を介して接続されてもよい。
同様に、ベッセル26および混練機14を運搬コンベア42bで接続してもよい。
【0053】
このように、各部材をコンベア42で接続することで、設計上などの問題で各部材が離れて配置されても、作業員の手作業を介さずに連続で固化体13cの製造をすることができる。
【0054】
また、図6に示されるように、排出口19と投入口34とを溶接などで直接配管60を介して接続してもよい。
排出口19と投入口34とを直接配管60を介して接続することで、投入口34を開口する度に外気が侵入することを防止することができる。
つまり、押出成形機18に混練体13を連続的に供給しても排出口19と投入口34との隙間から外気が侵入せず、第3実施形態で詳述する押出成形機18の減圧を容易にする。
【0055】
図2に戻って説明を続ける。
乾燥機28は、切断体13bを数時間〜数日収容して、この切断体13bを乾燥させる。
乾燥機28における加熱には、無機吸着剤11に含まれる放射性核種の核崩壊に基づく自発熱を用いることができる。
【0056】
無機吸着剤11は、例えば前述したように放射性核種の吸着率が高い最上流のベッセル26に収容されたものである。
このような無機吸着剤11を含む切断体13bは、恒常的に発熱する。
よって、乾燥機28に加熱手段を用いなくとも、切断体13bの自発熱で乾燥機28の温度を上昇させて切断体13bを乾燥させることができる。
ただし、自発熱に加えて乾燥機28に設置した第1ヒータ52で加熱することで、より正確に温度を制御してもよい。
【0057】
乾燥処理の方法には、例えば、乾燥機28に設置されたロボットアーム41で乾燥機28に収容してから加熱する、いわゆるバッチ処理方式を用いることができる。
また、コンベア42を乾燥機28の内部にまで通して、この内部におけるコンベア42の路長を長くとることで、乾燥処理を連続処理方式にすることもできる。
【0058】
焼成炉23は、切断体13bを焼成して固化体13cにする。
焼成炉23では、雰囲気を大気として、1〜5時間焼成される。
また、焼成炉23の設定温度は、700℃〜900℃の範囲内に設定される。
【0059】
ここで、図7(A)は、無機吸着剤11をチャバサイトとする切断体13bに対して、焼成時の保持温度を変数として密度を計測した実験結果を示す図である。
また、図7(B)は、無機吸着剤11を結晶性ケイチタン酸塩とする切断体13bに対して、焼成時の保持温度を変数として密度を計測した実験結果を示す図である。
【0060】
図7(A),図7(B)のいずれにおいても、700℃〜900℃の保持温度で焼成することで、無機吸着剤11の密度を1.2〜2.4g/cmに増加させることができることがわかる。
【0061】
一方、設定温度が700℃よりも低いと、この切断体13bを焼成して得られる固化体13cを十分な圧縮強度となる密度にすることができない。
また、設定温度が900℃よりも高いと、融点・沸点が比較的低い137Csの塩化物が気化して散逸してしまう。
すなわち、焼成炉23の設定温度を700℃〜900℃の範囲内とすることで、137Csを揮発させずに、十分な強度および密度の固化体13cを得ることができることがわかる。
【0062】
焼成された固化体13cは、重量および表面線量が測定された後、例えばロボットアーム41によって、保管容器55に収容されて保管される。
さらに、固化体13cを収容した保管容器55も、同様に重量および表面線量が測定される。
これらの重量および表面線量は、その後の固化体13cの管理に用いられる。
【0063】
なお、以上説明した各部材のうち、例えば、混練インペラ43、押出部16、型孔17または成形コンベア42aなど、特に高温となる部材は、耐摩耗性金属で構成するのが望ましい。
耐摩耗性金属は、例えば、硬度の高いニッケル-クロム系の合金またはタングステンカーバイドなどでコーティングされた金属である。
【0064】
次に、第1実施形態にかかる製造方法について図1を用いて詳述する(適宜、図2および図3参照)。
【0065】
混練工程(S12〜S18)では、放射性核種を吸着させた無機吸着剤11を成形助剤12とともに混練して既定の含水率の混練体13を生成する。
なお、第1実施形態では、混練工程(S12〜S18)には、混練体13の含水率を既定の範囲内に調整する調整工程(S14〜S17)が含まれる。
すなわち、混練と含水率の調整を繰り返しながら最適な含水率の混練体13を生成する。
【0066】
そこで、まず、供給弁56および調整弁20dを開放して、無機吸着剤11、成形助剤12および水27を混練機14に供給する(S11)。
前述したとおり、無機吸着剤11が水分を過剰に含んでいるときは、水27の新たな供給はしなくてもよい。
【0067】
そして、開口部36が蓋部61によって封鎖されて、これら無機吸着剤11、成形助剤12および水27を混練する(S12)。
混練において、連続的にまたは一定時間ごとに計測部20aによって混練中の混練体13の含水率が計測される(S13)。
【0068】
計測された含水率が、適正な範囲の下限以下の場合(S14:YES)、水供給部20cから水27を供給して(S15)、再度混練する(S12へ)。
また、混練体13の含水率が上述の範囲の上限以上の場合(S14:NO:S16:YES)、例えば混練時間を延長させて水27を蒸発させる(S17:S12へ)。
【0069】
なお、前述したように、このような含水率の調整は、制御室46で監視する監視員の決定によってもよいし、計測値に基づくモータ29または水供給部20cなどの自動制御であってもよい。
【0070】
このような混練および調整は、混練体13が適正な含水率で適正な粘度になるまで繰り返される(S14:NO:S16:NO:S18:NO:S12へ)。
そして、十分混練された混練体13を(S18:YES)、押出成形機18の空洞槽15に投入して押出成形をする(S19)。
【0071】
混練体13を投入した後、空洞槽15の空洞部分を蓋部21で密閉する。
そして、真空ポンプ33によって減圧された雰囲気において、混練体13の気泡を除去しながら押出成形をする。
【0072】
そして、押出成形体13aは、切断部22で規定された間隔で切断される(S20)。
次に、切断体13bを、乾燥機28で乾燥させる(S21)。
なお、前述したように、切断体13bの乾燥には、無機吸着剤11に含まれる放射性核種の核崩壊に基づく自発熱を利用することができる。
当然、この自発熱に加えて、第1ヒータ52で加熱して乾燥機28の温度を制御してもよい。
【0073】
そして、切断体13bを、焼成炉23で1〜5時間焼成される(S22)。
この時の焼成温度は、700℃〜900℃の範囲内である。
焼成された固化体13cは、重量および線量が測定された後、保管容器55に収容されて保管される。
さらに、保管容器55も重量および表面線量が測定される。
これらの重量および表面線量は、その後の固化体13cの管理に用いられる。
【0074】
以上のように、第1実施形態にかかる製造方法によれば、簡単なプロセスで大量の放射性核種の安定的な最終処分ができるようになるとともに、固化体13cの製造の際に放射性核種の揮発を抑制する放射性核種の固化体13cを製造することができる。
また、第1実施形態にかかる製造装置10によれば、この製造方法を効率的に実施することができる。
【0075】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態にかかる製造方法のフローチャートである。
図9は、第2実施形態にかかる製造装置10の概略構成図である。
【0076】
第2実施形態にかかる製造方法は、図8に示されるように、調整工程が、混練工程(S33)の前段で無機吸着剤11を乾燥させる吸着剤乾燥工程(S31)と、乾燥された無機吸着剤11、水27および成形助剤12を一定の比率で供給する比率供給工程(S32)と、を含む。
【0077】
また、このような製造方法を実施するために、第2実施形態にかかる製造装置10の調整部20は、図9に示されるように、混練機14に供給される前の無機吸着剤11を乾燥させる吸着剤乾燥部20h(20)を備える。
【0078】
第1実施形態で述べたとおり、対象となる無機吸着剤11は、十分な放射性核種を吸着して、高い放射能を有することが多い。
よって、製造装置10の近傍への作業員の立ち入りを最小限にするために、製造装置10および製造方法は、故障または点検の頻度の低い単純な構造および制御で構成される必要がある。
【0079】
また、大量に発生する無機吸着剤11を効率よく処理するために、製造方法の大部分を連続処理方式にするのが望ましい。
よって、製造方法は、連続処理の途中において無機吸着剤11の初期状態に依存した微細な制御をできるだけ必要としない工程から構成されるのが望ましい。
【0080】
そこで、第2実施形態においては、混練工程(S33)の前段で、まず、吸着剤乾燥工程(S31)として、吸着剤乾燥部20hで無機吸着剤11を乾燥させる。
例えば、無機吸着剤11を完全に乾燥させれば、混練前の無機吸着剤11の含水率の差異は、混練後の混練体13の含水率に影響しなくなる。
乾燥した無機吸着剤11を吸着剤ホッパー31に収集して、ホッパー弁31a(31)によって、一定量ずつ混練機14に供給する。
【0081】
この無機吸着剤11に、水27および成形助剤12を一定量ずつ供給すれば(S32)、混練前に混練体13の各成分の供給比率を正確なものにすることができる。
このような調整工程によって、混練前に混練体13の含水率を正確に調整することができるので、混練機14に計測部20a(図3)を設置する必要がなくなる。
【0082】
また、無機吸着剤11の調整工程前の水分量によらず、一律な制御で含水率の調整が可能となる。
ただし、混練機14に設置された計測部20aと合わせてこのような調整をしてもよい。
【0083】
なお、吸着剤乾燥工程(S31)においても、切断体乾燥工程(S21)と同様に、無機吸着剤11に含まれる放射性核種の核崩壊に基づく自発熱を利用することが望ましい。
当然、乾燥機28と同様に、この自発熱に加えて、第2ヒータ57で吸着剤乾燥部20hを加熱して吸着剤乾燥部20hの温度を制御してもよい。
【0084】
なお、調整工程が比率供給工程(S32)および吸着剤乾燥工程(S31)で構成されること以外は、第2実施形態は第1実施形態と同じ構造および動作手順となるので、重複する説明を省略する。
【0085】
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
また、図8における成形工程(S34)〜焼成工程(S37)は、第1実施形態の成形工程(S19)〜焼成工程(S22)と同一である。
【0086】
このように、第2実施形態にかかる製造方法によれば、第1実施形態の効果に加え、混練工程(S33)において混練体13の含水率の確認および調整をせずに、正確な含水率の混練体13を生成することができる。
また、無機吸着剤11の調整工程前の水分量によらず、一律な制御で含水率の調整が可能となる。
【0087】
この結果、計測部20a(図3)の故障または点検を考慮しなくてよいとともに、製造方法が単純になって、容易に連続処理方式に実行することができる。
【0088】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態にかかる製造装置10の概略構成図である。
【0089】
第3実施形態にかかる製造方法は、第1実施形態または第2実施形態において、吸着剤乾燥工程(S31)、混練工程(S12〜S18,S33)、成形工程(S19,S34)、切断体乾燥工程(S21,S36)および焼成工程(S22,S37)の少なくとも1工程において、発生する水素を除去する。
【0090】
吸着剤乾燥部20h、混練機14、押出成形機18、乾燥機28および焼成炉23における無機吸着剤11または混練体13は、水分を含んでいる。
この水分は、無機吸着剤11に吸着された放射性核種の放射線に分解されて、混練機14の内部に水素を発生させることがある。
【0091】
しかし、吸着剤乾燥部20h、混練機14、押出成形機18、乾燥機28および焼成炉23のいずれも、放射性核種の散逸を防止するために、各々の処理中は開口箇所が封鎖される。
よって、発生した水素は、これらの部材の内部に滞留することとなる。
【0092】
この滞留して濃密化した水素の爆発を防止するために、これらの部材には、図10に示されるように、排気管25が設けられる。
この排気管25は、排気管25を通流する水素を除去する白金またはパラジウムなどの吸着触媒などの水素除去部48に接続される。
さらに、水素除去部48の排気口は、放射性核種を吸着させる放射性核種除去部49に接続される。
【0093】
放射性核種除去部49は、例えば、HEPAフィルタまたは活性炭で構成されるチャコールフィルタなどである。
これら水素除去部48および放射性核種除去部49によって、放射性核種をこれらの部材の外部へ散逸させずに、混練機14の水素による爆発を防止することができる。
【0094】
また、図11は、混練機14および押出成形機18における排気管25の配置の一例を示す概略断面図である。
水素原子は軽く、気体となった水素は、上昇して各部材の上面の近傍に滞留する。
【0095】
そこで、排気管25は、図11に示されるように、この上面または気相部分のできるだけ上部に設けるのが好ましい。
混練など各々の部材の処理中に、排気管25に設けられた排気弁58は開放されて、他の気体とともに水素が排気される。
【0096】
なお、排気管25は、図10に示されるような1つの水素除去部48に集約される配置に限定されず、それぞれ独立していてもよい。
そして、それぞれの排気管25に水素除去部48および放射性核種除去部49を設置してもよい。
【0097】
また、それぞれの排気管25には、混練機14の内部の気体を強制的に排出する排気ポンプ53が設けられていてもよい。
排気ポンプ53で例えば混練機14の内部を減圧すると、混練による混練体13への気体の混入も抑制することができる。
【0098】
気体の混入を抑制することで、第4実施形態で詳述する押出成形機18における気泡の除去がより容易になる。
また、水素の発生量が多い場合に、滞留する水素をより確実に排出することができる。
【0099】
なお、排気管25および水素除去部48によって各工程および各部材で水素を除去すること以外は、第3実施形態は第1実施形態または第2実施形態と同じ構造および製造工程となるので、重複する説明を省略する。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0100】
このように、第3実施形態にかかる製造方法または製造装置10によれば、第1実施形態などの効果に加え、各工程で発生した水素による爆発を防止することができる。
また、排気管25によって混練機14の内部を減圧することで、混練体13への気泡の混入を軽減することができる。
【0101】
(第4実施形態)
図12は、第4実施形態にかかる製造装置10の混練機14および混練機14に接続される各種部材の拡大断面図である。
【0102】
第4実施形態にかかる製造装置10は、図12に示されるように、空洞槽15に、真空ポンプ33が設置された吸気管39を備える。
吸気管39は、図12に示されるように排気管25と兼用されてもよい。
ただし、吸気管39には真空ポンプ33が設置されて、この真空ポンプ33によって他の排気管25よりも確実に空洞槽15の内部の減圧がされる。
【0103】
空洞槽15に混練体13が投入されると、空洞槽15の投入口34は蓋部21で封鎖されて、空洞槽15の空洞部分は密封される。
そして、真空ポンプ33によって、この空洞部分は真空付近まで減圧されて押出成形がなされる。
減圧された雰囲気下で混練体13を押出成形することで、混練体13に含まれる微細な気泡が除去される。
【0104】
なお、吸気管39および真空ポンプ33によって空洞槽15の内部が減圧されること以外は、第4実施形態は第1実施形態から第3実施形態と同じ構造および製造工程となるので、重複する説明を省略する。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0105】
このように、第4実施形態にかかる製造装置10によれば、気泡が除去されることで、第1実施形態などの効果に加え、混練体13が押し出されて成形された押出成形体13aを減容することができるとともに、ひび割れを抑制することができる。
【実施例1】
【0106】
次に、実施形態にかかる放射性廃棄物の固化体13cに関する実施例を図13を用いて説明する。
図13は、成形助剤12をベントナイトとして無機吸着剤11と混練して固化体13cを製造した実験データを示すテーブルである。
図13のテーブルAはチャバサイトを無機吸着剤11の主成分としたときの実験データである。
【0107】
まず、チャバサイトを主成分とする無機吸着剤11を含水量が0%となるまで乾燥させた。
この無機吸着剤11に、無機吸着剤11の約5%のベントナイトおよび全体の質量の約40%となる水27を添加し、混練機14で約10分間混練し、混練体13を作製した。
混練の後の混練体13の水分量は約35%であった。
次に押出成形機18に寸法15×36mmの長方形の型孔17を取り付け、約5kgの混練体13を押出成形機18に投入した。
【0108】
押出速度を30mm/分とし、スクリューで混練しながら型孔17から押出成形を行った。
この押出成形により寸法15×36mmの切断面を有する連続した板棒状の押出成形体13aが得られた。
【0109】
この押出成形体13aを長さ約200mmごとに切断部22で切断し、寸法15×36×200mmの切断体13bを得た。
この切断体13bを、雰囲気を大気とする電気炉で、900℃にて3時間保持し、焼成した。
【0110】
その結果、焼成された固化体13cの寸法が11×27×190mm、減容比(=焼成された固化体13cの体積/原料粉末の体積)が0.39、密度が2.4g/cm137Csの揮発量が0.01%以下(無検出)、となった。
また、この固化体13cからテストピースを3個採取し計測した圧縮強度は、いずれも50MPa以上を示し、固化による強度の上昇を確認することができた。
【実施例2】
【0111】
結晶性ケイチタン酸塩を主成分とした無機吸着剤11に対しても同様の実証実験を行い、図13のテーブルBで示される結果を得た。
ただし、成形助剤12であるベントナイトの分量は、無機吸着剤11の約30%とした。
これは、結晶性ケイチタン酸塩がチャバサイトと比べ粘性が低いため、より多くのベントナイトを入れ、押出成形の際のひび割れを防止したためである。
【0112】
また、押出成形の際のひび割れを防止するため、切断面を25×25mmの正方形とする工夫をしている。
切断面を正方形とすることで、長方形のときと比べ、等方的に負荷がかかり、ひび割れを防止することができるからである。
【0113】
なお、上記以外の設定条件については、チャバサイトを主成分とする無機吸着剤11で行った実験と同様の設定条件に揃えてある。
すなわち、混練時間を10分、混練後の混練体13の水分の含有量を約35%、押出成形機18に投入する混練体13の量を5kg、押出速度を30mm/分、切断の長さを200mmとして切断体13bを作製し、雰囲気を大気とした電気炉で、900℃で3時間保持した。
【0114】
その結果、固化体13cの寸法は19×19×150mmとなり、密度は2.1g/cm、原料粉末に対する減容比は0.56、137Csの揮発量が0.01%以下(無検出)、となった。
また、この固化体13cからテストピースを3個採取し計測した圧縮強度は、いずれも50MPa以上を示し、固化による強度の上昇を確認することができた。
【0115】
以上、実施例1および実施例2から、チャバサイトまたは結晶性ケイチタン酸塩を主成分とする無機吸着剤11にベントナイトを添加して作製した押出成形体13aは、焼成による体積の減少並びに減容比の低下および密度の増加が観察され、圧縮強度は50MPa以上に高められることが実証された。
【実施例3】
【0116】
次に、図14に示すように、チャバサイトおよび結晶性ケイチタン酸塩を無機吸着剤11とし、成形助剤12をカオリンとした実施例を例示する。
ベントナイトに加え、カオリンもまた、安価で容易に入手しやすく、放射線で分解される恐れもなく、放射性廃棄物の固化体13cの作製に好適に利用することができる。
【0117】
図14は、成形助剤12をカオリンとして無機吸着剤11と混練して固化体13cを製造した実験データを示すテーブルである。
図14で、テーブルCおよびテーブルDは、無機吸着剤11をそれぞれチャバサイトおよび結晶性ケイチタン酸塩とした実験データである。
【0118】
なお、成形助剤12をカオリンとしたことおよびカオリンの混合比をベントナイトより多くしたこと以外は、実施例2は実施例1と同じ構造および製造工程となるので、重複する説明を省略する。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は図13と同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0119】
まず、図14のテーブルCの実験データについて説明する。
チャバサイトを主成分とする無機吸着剤11に、この無機吸着剤11の約30%のカオリンおよび適量の水27を添加し、混練機14で約10分間混練し、混練体13を作製した。
混練の後の混練体13の水分量は約29%であった。
【0120】
次に押出成形機18に寸法50×100mmの長方形の型孔17を取り付け、約20kgの混練体13を押出成形機18に投入した。
このときの押出速度は30mm/分とし、スクリューで混練しながら型孔17から押出すことにより成形を行った。
【0121】
この押出成形により寸法50×100mmの切断面を有する連続した板棒状の押出成形体13aが得られるが、これを長さ約200mmごとに切断部22で切断し、寸法50×100×200mmの押出成形体13aを得た。
作製した押出成形体13aを、雰囲気を大気とする電気炉で、900℃にて3時間保持し、焼成した。
【0122】
その結果、固化体13cの寸法が49×98×196mm、減容比が0.67、密度が2.07g/cm137Csの揮発量が0.01%以下(無検出)、となった。
また、この固化体13cからテストピースを3個採取し計測した圧縮強度は、いずれも50MPa以上を示し、固化による強度の上昇を確認することができた。
【0123】
なお、図13のテーブルAで示される実施形態の実験データとの違いは、無機吸着剤11に対するベントナイトの分量に比べ、カオリンの分量は30%と、多く添加している。
これは、カオリンはベントナイトに比べ、粘性が低いことを示しており、添加される成形助剤12の増加に伴い、焼成の後の減容比は0.67と多少高くなる。
【0124】
ただし、減容比は1.0以下であり、十分許容される値である。
また、切断面を50×100mmとし、長さ200mmで切断部22の切断刃22aで切断し、寸法を50×100×200mmとしている。
この寸法以下であれば、自由に寸法を決めることができ、この寸法による差異は、実験の結果にほとんど影響を及ぼさない。
【実施例4】
【0125】
また、結晶性ケイチタン酸塩を主成分とした無機吸着剤11に対しても同様の実証実験を行い、図14のテーブルDで示される結果を得た。
ただし、カオリンの分量は、無機吸着剤11の約60%とした。
【0126】
これは、結晶性ケイチタン酸塩は、チャバサイトと比べ粘性が低いため、より多くのカオリンを入れ、押出成形の際のひび割れを防止したためである。
同様の理由で、水分量を32%と、わずかに多く添加した。
なお、上記以外の設定条件については、無機吸着剤11の主成分をチャバサイトとして行った実験と同様の設定条件に揃えてある。
【0127】
すなわち、混練時間を10分、混練後の混練体13の水分の含有量を35%、押出成形機18に投入する混練体13の量を20kg、押出速度を30mm/分、寸法を50×100×200mmとして押出成形体13aを作製し、雰囲気を大気とした電気炉で、900℃で3時間保持した。
【0128】
その結果、固化体13cの寸法は44×88×176mmとなり、密度は1.68g/cm、減容比は1.0、137Csの揮発量が0.01%以下(無検出)、となった。
また、この固化体13cからテストピースを3個採取し計測した圧縮強度は、いずれも50MPa以上を示し、固化による強度の上昇を確認することができた。
【0129】
以上、実施例3および実施例4から、カオリンを成形助剤12とした場合でも、実施形態のベントナイトを成形助剤12とした場合と同等の効果が得られることが実証された。
【0130】
以上述べた各実施例によって、各実施形態にかかる製造方法で製造された固化体13cは、長期の貯蔵に十分な圧力強度および減容率を有するとともに、製造の際の137Csを揮発させないことが実証された。
【0131】
本実施形態のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0132】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の製造方法によれば、簡単なプロセスで大量の放射性核種の安定的な最終処分ができるようになるとともに、固化体13cの製造の際に放射性核種の揮発を抑制する放射性核種の固化体13cを製造することが可能となる。
また、以上述べた少なくとも一つの実施形態の製造装置10によれば、このような製造方法を効率的に実行することができる。
【0133】
本実施形態のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0134】
10…製造装置、11…無機吸着剤、12…成形助剤、13(13a、13b、13c)…混練体(押出成形体、切断体、固化体)14…混練機、15…空洞槽、16…押出部、17…型孔、18…押出成形機、19…排出口、20(20a、20c、20d、20e、20f、20g、20h)…調整部(計測部、水供給部、調整弁、採取弁、採取管、採取ポンプ、吸着剤乾燥部)、20a(20a)…赤外線計測部、21…蓋部、22(22a)…切断部(切断刃)、23…焼成炉、24…駆動部、25…排気管、26…ベッセル、27…水、28…乾燥機、29…モータ、31(31a)…吸着剤ホッパー(ホッパー弁)、33…真空ポンプ、34…投入口、35(35a)…第1冷却部(電源)、36…開口部、38…ライン、39…吸気管、41…ロボットアーム、42(42a、42b)…コンベア(成形コンベア、運搬コンベア)、43…混練インペラ、46…制御室、47…モニタ、48…水素除去部、49…放射性核種除去部、51…第2冷却部、52…第1ヒータ、53…排気ポンプ、55…保管容器、56…供給弁、57…第2ヒータ、58…排気弁、60…配管、61…蓋部。
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