(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367038
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】受容体の細胞内輸送制御による白血病治療のための新規医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5415 20060101AFI20180723BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
A61K31/5415
A61P35/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-157004(P2014-157004)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33123(P2016-33123A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】頼 晋也
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
(72)【発明者】
【氏名】松村 到
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 利雄
【審査官】
伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−509323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 45/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
KIT−D816またはFlt3−ITDを有する急性骨髄性白血病を治療するための、クロルプロマジンを含む医薬組成物。
【請求項2】
他の白血病治療剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
KIT−D816またはFlt3−ITDを有する急性骨髄性白血病を治療するための、クロルプロマジンおよび他の白血病治療剤を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受容体の細胞内輸送制御による白血病治療のための新規医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分子標的薬の開発により慢性骨髄性白血病などの造血器悪性腫瘍の治療成績は画期的に改善した。急性骨髄性白血病(AML)などの造血器腫瘍や、固形腫瘍においても数多くの分子異常が明らかにされており、その発症ならびに病態維持に変異型サイトカイン受容体の関与が報告されている。また、変異型サイトカイン受容体を有する腫瘍は既存の抗腫瘍薬に対し抵抗性を示すことから、新たな治療法が求められている。しかしながら、現在までに有効な分子標的薬は開発されておらず、その開発は急務である。また、臨床応用可能な薬剤の開発には選択性、阻害活性、耐性、有害事象など、解決すべき多くの問題があるのが現状である。
【0003】
造血細胞は、造血因子受容体を介した細胞外からの刺激を細胞内において調節することで恒常性を維持しており、その破綻が白血病をはじめとした造血器腫瘍の発症に深く関わっている。c−KITやFlt3などの受容体型チロシンキナーゼ(RTK)は、リガンド結合後二量体を形成、自己リン酸化することで活性化し、細胞内にシグナルを伝達する。従来、RTKからのシグナル伝達は、細胞膜に存在する受容体からのシグナルに依存すると考えられてきた。しかし近年、シグナリングエンドソームという概念、すなわち細胞膜から細胞内小器官であるエンドソームに取り込まれた後のRTKからも種々のシグナルが細胞内に伝達されることが明らかとなってきており、RTKの細胞内局在の重要性が注目されている。特に急性白血病や、固形腫瘍で認められる恒常的活性型(リガンド非依存性)変異RTKは、膜表面以外の細胞内小器官に局在し、異所性にシグナルを伝達することで腫瘍活性を維持していることが知られているが、その詳細な機構に関しては不明であった。
【0004】
一方、本発明の有効成分であるクロルプロマジン(CPZ)、クロロキン、Pitstopなどのクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤は、一般的に白血病などの造血器腫瘍の治療に用いられることは知られていない。例えば、CPZは、フェノチアジン誘導体のグループに属し、統合失調症、器質性精神病および躁鬱病の躁病相などの治療にヒト用医薬品として広く使用されている。また、CPZやフェノチアジン誘導体の抗癌作用を記載した報告は存在するが(特許文献1および2)、CPZが白血病治療効果を有することは具体的に記載されていない。また、クロロキンやその誘導体は抗マラリア剤などとして使用され得、抗癌作用を記載した報告も存在するが(特許文献3および4)、それらが白血病治療効果を有することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−507647号公報
【特許文献2】特表2010−523719号公報
【特許文献3】特表2009−502954号公報
【特許文献4】特表2012−530697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは上記のような先行技術における課題を解決すべく、臨床使用が可能な新規白血病治療剤の開発のために鋭意研究を重ねた結果、クラスリン被覆小胞(CCV)を介した受容体の細胞内輸送が、活性型変異RTKにおける腫瘍活性の維持に極めて重要であることを見出した。また、クロルプロマジン、クロロキン、Pitstopなどのクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤を用いて、サイトカイン受容体の細胞内外輸送を変化させることで、腫瘍細胞の増殖をin vitroおよびin vivoにおいて顕著に抑制しうることを見出した。さらにクロルプロマジンなどのクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤がKIT−V814(またはD816)やFlt3−ITDなどの活性型変異RTKを有するAMLに対して特に強い抗白血病効果を有し、さらに活性型変異RTKを有する固形腫瘍に対しても強い抗腫瘍効果を示すことを見出し、本発明を完成するに到った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]
白血病を治療するための、クラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤を含む医薬組成物;
【0008】
[2]
クラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤がクロルプロマジン、クロロキン、Pitstop 1(登録商標)、およびPitstop 2(登録商標)からなる群から選択される、上記[1]に記載の医薬組成物;
【0009】
[3]
クラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤がクロルプロマジンである、上記[1]に記載の医薬組成物;
【0010】
[4]
他の白血病治療剤をさらに含む、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の医薬組成物;
【0011】
[5]
急性骨髄性白血病を治療するための、上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の医薬組成物;
【0012】
[6]
活性型変異受容体型チロシンキナーゼを有する急性骨髄性白血病を治療するための、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の医薬組成物;
【0013】
[7]
白血病を治療するための、クラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤および他の白血病治療剤を含むキット;
【0014】
[8]
クラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤がクロルプロマジン、クロロキン、Pitstop 1(登録商標)、およびPitstop 2(登録商標)からなる群から選択される、上記[7]に記載のキット;
【0015】
[9]
クラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤がクロルプロマジンである、上記[7]に記載のキット;
【0016】
[10]
急性骨髄性白血病を治療するための、上記[7]〜[9]のいずれか1つに記載のキット;ならびに
【0017】
[11]
活性型変異受容体型チロシンキナーゼを有する急性骨髄性白血病を治療するための、上記[7]〜[10]のいずれか1つに記載のキット
に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の新規医薬組成物は、既存の抗腫瘍薬と全く異なる機序で作用するため、これまでに有効な治療方法がなかった難知性の種々腫瘍に対する新たな治療薬として用いることができ、特に白血病、とりわけAMLに対する新たな治療薬として有用である。これまでAML治療において有効なRTK阻害薬が開発されていないことから臨床的意義は高い。
【0019】
さらに重要なことは、本発明は有効成分として既知の医薬品を通常用量用いた場合の新たな薬理作用に係るものであるため、新規薬剤開発における有害事象に関する問題点がすでに解決できている。特に、CPZはヒト用医薬品としてすでに承認されており、血液毒性がなく、非血液毒性なども明らかであるため、AMLの治療薬として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、各種細胞株に対するCPZの選択的増殖抑制効果を示している。各種白血病に代表される細胞株において、CPZ添加群の細胞数をDEMSO添加群(コントロール)と比較して相対的に示している。
【
図2】
図2は、CPZによるBaF/KIT−V814の皮下における抗腫瘍効果を示している。KIT−V814導入Ba/F3細胞をヌードマウスに移植し、生理食塩水(NS)、CPZ 5mg/kg、またはCPZ 15mg/kgで処置した各群につき、21日目の状態を示している。
【
図3】
図3は、CPZによるBaF/KIT−V814の骨髄および脾臓における抗腫瘍効果を示している。KIT−V814導入Ba/F3細胞をヌードマウスに移植し、生理食塩水(NS)、またはCPZ 15mg/kgで処置した各群につき、移植後21日目の状態を比較している。骨髄においてはFACSで解析し、定量化した結果を、脾臓においてはその重量を測定し、定量化した結果をそれぞれ示している。
【
図4】
図4は、CPZによるBaF/Flt3−ITDの末梢血および脾臓における抗腫瘍効果を示している。Flt3−ITD導入Ba/F3細胞をヌードマウスに移植し、生理食塩水(NS)、またはCPZ 15mg/kgで処置した各群につき、移植後14日目の状態を比較している。末梢血においてはFACSで解析し、定量化した結果を、脾臓においてはその重量を測定し、定量化した結果をそれぞれ示している。
【
図5】
図5は、in vivoにおけるCPZの抗白血病効果を示している。AML患者の骨髄より単離したAML細胞を重度免疫不全マウス(NOGマウス)に移植し、Flt3−ITDを有する症例1、およびKIT−D816を有する症例2のそれぞれに対し、生理食塩水(NS)投与群、またはCPZ 15mg/kg処置群につき、10週間後における骨髄中のヒトCD45(白血病細胞)陽性細胞の割合をFACSで解析した結果を示している(
図5左)。また、ヒト臍帯血由来のCD34陽性細胞をNOGマウスに移植して同様の処置をした場合の結果も示している(
図5右)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の医薬組成物に用いられるクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤としては、限定されるものではないが、クロルプロマジン、クロロキン、Pitstop 1(登録商標)、およびPitstop 2(登録商標)を挙げることができる。好ましい実施態様では、本発明の医薬組成物に用いられるクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤はクロルプロマジンである。
【0022】
本発明の医薬組成物は、造血器腫瘍や固形腫瘍などの様々な腫瘍の治療に用いることができるが、特に白血病の治療に有用である。本発明の医薬組成物で治療しうる白血病としては、限定されるものではないが、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)を挙げることができる。好ましい実施態様では、本発明の医薬組成物は、急性骨髄性白血病(AML)の治療に用いられる。
【0023】
別の実施態様では、本発明の医薬組成物は、活性型変異受容体型チロシンキナーゼを有する腫瘍、特に活性型変異受容体型チロシンキナーゼを有する急性骨髄性白血病を治療するために用いられる。活性型変異受容体型チロシンキナーゼとしては、限定されるものではないが、KIT−V814、KIT−D816、およびFlt3−ITDなどを挙げることができる。
【0024】
本発明の医薬組成物は、有効成分であるクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤に加えて、必要に応じて、賦形剤(例えば、マンニトール、ソルビトールの如き糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプンの如きデンプン誘導体;または、結晶セルロースの如きセルロース誘導体など)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムの如きステアリン酸金属塩;またはタルクなど)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリビニルピロリドンなど)、崩壊剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムの如きセルロース誘導体など)、防腐剤(メチルパラベン、プロピルパラベンの如きパラオキシ安息香酸エステル類;またはクロロブタノール、ベンジルアルコールの如きアルコール類など)、pH調整剤(例えば、塩酸、硫酸またはリン酸などの無機酸、酢酸、コハク酸、フマル酸またはリンゴ酸等の有機酸、あるいはこれらの塩など)、ならびに希釈剤等の通常使用される医薬製剤用添加剤を、単独または2種以上を混合して配合することができる。
【0025】
本発明の医薬組成物は、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、溶液製剤、懸濁液製剤、もしくは乳化液製剤などの剤形で経口投与することができ、または坐剤、注射剤、静脈内点滴剤、もしくは吸入製剤などの剤形で非経口投与することができる。
【0026】
本発明におけるクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤の投与量は、処置される状態の重篤度、処置される患者の年齢、体重、用いられる剤形等の条件によって適宜変化しうる。ヒトに投与する場合、有効成分が0.01mg/kg/日〜1000mg/kg/日、好ましくは0.1mg/kg/日〜100mg/kg/日、より好ましくは0.5mg/kg/日〜50mg/kg/日の用量となるように投与される。
【0027】
別の実施態様では、本発明の有効成分であるクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤は、他の抗癌剤と併用して用いられる。そのような抗癌剤としては、限定されるものではないが、アルキル化剤、白金製剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、抗腫瘍性植物成分、ホルモン、および分子標的薬などを用いることができ、白血病治療剤として用いられるものが特に好ましい。そのような他の白血病治療剤としては、限定されるものではないが、ダウノルビシン、イダルビシン、シタラビン、エトポシド、ビンカアルカロイド、トレチノイン、三酸化ヒ素、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、L−アスパラギナーゼ、メトトレキサート、イマチニブ、フルダラビン、リツキシマブ、6−メルカプトプリン、タミバロテン、ダサチニブ、ミトキサントロン、ビンデシン、エノシタビン、ニロチニブ、ダサチニブ、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ドキソルビシン、ボスチニブ、ペントスタチン、ネララビン、アザシチジン、アクラルビシン、ブサルファン、ナイムスチン、ラニムスチン、ミトザントロン、ヒドロキシウレア、インターフェロン、およびレナリドマイドなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて、本発明の有効成分であるクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤と併用することができる。
【0028】
本発明の有効成分であるクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤と他の抗癌剤が併用される場合、それらは同時に投与されてもよく、または別々に投与されてもよい。また、そのような併用の場合、本発明の有効成分であるクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤と他の抗癌剤は合剤の形態であってもよく、またはキットの形態であってもよい。
【0029】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1
CPZのAML細胞株に対するin vitroでの選択的抗腫瘍効果
BALL1(ヒトB細胞性白血病細胞株)、HL60(ヒト前骨髄球性白血病細胞株)、TALL−1(ヒトT細胞性白血病細胞株)、KG1(ヒト急性骨髄性白血病細胞株)、THP1(ヒト単球性白血病細胞株)、Kasumi(8;21転座型急性骨髄性白血病細胞株)、K562(ヒト慢性骨髄性白血病細胞株)、HMC1(ヒト肥満細胞性白血病細胞株、KIT−D816変異を有する)、およびMOLM13(ヒト急性骨髄性白血病細胞株、Flt3−ITD変異を有する)の各種白血病細胞株1000個/100μLに対し、DEMSO(コントロール)またはCPZ(7.5mM)をそれぞれ0.1μL添加し、in vitroで72時間培養した。DEMSO添加群(コントロール)の細胞数とCPZ添加群の細胞数をそれぞれATPアッセイにより計測し、DEMSO添加群に対するCPZ添加群の細胞数の増殖倍数(Fold expansion)を計算した。結果を
図1に示す。
【0031】
図1から明らかなように、CPZは様々な白血病細胞株に対して増殖抑制作用を示した。特に、活性型変異RTKであるKIT−D816およびFlt3−ITD変異をそれぞれ有するHMC1およびMOLM13に対して細胞増殖を強く抑制した。
【0032】
実施例2
活性型変異RTKを導入した細胞株に対するCPZのin vivoでの抗腫瘍効果
KIT−V814をIL3依存性細胞株Ba/F3に導入し、ヌードマウスに移植した後、生理食塩水(NS)、またはCPZ 5mg/kgもしくはCPZ 15mg/kgで1日1回処置した各群につき、21日目の状態を観察した。結果を
図2に示す。
【0033】
図2から明らかなように、生理食塩水投与群では顕著な皮下の腫瘤形成が認められた(矢印)。CPZ 5mg/kg投与群においても腫瘤形成が認められたが、その大きさは生理食塩水投与群と比べ、顕著に抑制されていた。またCPZ 15mg/kg投与群では腫瘤形成が認められなかった。
【0034】
次に、GFPでモニタリング可能なKIT−V814導入Ba/F3細胞をヌードマウスに移植した。生理食塩水(NS)またはCPZ 15mg/kgで1日1回処置し、それぞれ移植後21日目の骨髄および脾臓を分析した。骨髄についてはFACSで解析し、定量化した。また、脾臓についてはその重量を測定し、定量化した。結果を
図3に示す。
【0035】
また、GFPでモニタリング可能なFlt3−ITD導入Ba/F3細胞をヌードマウスに移植した。生理食塩水(NS)またはCPZ 15mg/kgで1日1回処置し、それぞれ移植後14日目の末梢血および脾臓を分析した。末梢血についてはFACSで解析し、定量化した。また、脾臓についてはその重量を測定し、定量化した。結果を
図4に示す。なお、
図4の脾臓の写真については、未処置群(CTL)の脾臓の写真も示している
。
【0036】
図3および
図4から明らかなように、生理食塩水(NS)投与群と比較して、CPZ投与群において、GFP陽性細胞の骨髄、脾臓、および末梢血への浸潤が強く抑制されていた。
【0037】
実施例3
AML細胞に対するクラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤のin vivoでの抗腫瘍効果
AML患者の骨髄より単離したAML細胞を重度免疫不全マウス(NOGマウス)に移植し、AMLを発症させた。次いで、Flt3−ITD変異を有する症例1、およびKIT−D816変異を有する症例2のそれぞれに対し、1日1回生理食塩水(NS)を投与した群、またはCPZ 15mg/kgで処置した各群につき、10週間後における骨髄中のヒトCD45(白血病細胞)陽性細胞の割合をFACSで解析し、抗白血病効果を検討した。結果を
図5左に示す。
【0038】
その結果から明らかなように、Flt3−ITDおよびKIT−D816のいずれの症例においても、CPZ投与群は生理食塩水投与群と比べ、ヒトCD45陽性細胞が減少した。すなわち、CPZがin vivoにおいてもAMLに対して強い抗白血病効果を示すことが確認できた。
【0039】
次に、ヒト臍帯血由来のCD34陽性細胞をNOGマウスに移植し、上記AML細胞を移植した場合と同様の処置をした。その結果、CPZ投与群と生理食塩水投与群に有意な差はなく、CPZ投与はCD34陽性細胞の生着および生存には影響しなかった(
図5右)。したがって、CPZはFlt3−ITDおよびKIT−D816などの活性型変異受容体型チロシンキナーゼを有する急性骨髄性白血病の治療に特に有用であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
クラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤を有効成分とする本発明の医薬組成物は、既存の抗腫瘍薬と全く異なる機序で種々腫瘍に作用するため、これまでに有効な治療方法がなかった難知性の腫瘍、例えば白血病、特に急性骨髄性白血病、とりわけ活性型変異受容体型チロシンキナーゼを有する急性骨髄性白血病に対する新たな治療薬として用いることができる。