特許第6367040号(P6367040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367040
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】アームレストの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/75 20180101AFI20180723BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20180723BHJP
   B29C 39/22 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B60N2/75
   B29C39/10
   B29C39/22
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-159385(P2014-159385)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-37054(P2016-37054A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】北野 泰志
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−335927(JP,A)
【文献】 特開2000−236986(JP,A)
【文献】 特開平09−234748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/75
A47C 7/54
B29C 39/10
B29C 39/22
B29C 44/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状表皮内へ芯体を挿入して型内にセットした後、型閉じ及び発泡原料の注入を経て、該芯体が埋設される発泡体を表皮一体発泡成形するアームレストの製造方法において、
シャフトに、軸部に加え、その軸径よりも外径が大の拡径部を該軸部の基端部分に設けて、該シャフトの側周面に加え、該軸部から該拡径部にかけてポリオレフィン系のプラスチックフィルムからなる筒状フィルムを被せて筒状フィルム付きシャフトを形成し、次いで、前記袋状表皮内へ挿入した前記芯体の通孔に通すようにして、該袋状表皮の一側部に設けた開孔から他側部に設けた開口へと前記シャフトを挿通させると共に、該筒状フィルムを介して前記拡径部の天面が該開孔側の前記芯体に係る側板部に当接するようにして、該表皮に前記筒状フィルム付きシャフトを挿通し、且つ該開孔と該開口との間に該筒状フィルムを配設して、芯体及び筒状フィルム付きシャフトをセットした後、型閉じすることを特徴とするアームレストの製造方法。
【請求項2】
前記シャフトは、前記開口側に位置する前記芯体の側板部近くに配される前記軸部の部分に段部を設け、且つその先の軸部の径を細くする一方、前記筒状フィルムは、該段部に対応する位置にテーパ部を設け、さらにその先に前記軸部の径に合わせた小径筒部を延在させた請求項1記載のアームレストの製造方法。
【請求項3】
前記シャフトは先端が先細となるテーパ状にし、且つこれに合わせて、前記筒状フィルムも先端を先細のテーパ状にした請求項1又は2に記載のアームレストの製造方法。
【請求項4】
前記開口から突き出す前記軸部が、開口周縁の表皮上に載置される押え治具に設けた第一孔を挿通し、さらに軸部先端部分に設けた螺子部にナットで螺着固定して、芯体及び筒状フィルム付きシャフトをセットする請求項1又は2に記載のアームレストの製造方法。
【請求項5】
前記筒状フィルムが、その先端部をシール部で封をする有蓋筒状フィルムである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアームレストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両用座席シートに装着されるアームレストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される座席シートのバックレストBRには、乗員Mが水平に倒して使用する肘掛け用アームレストARが取付けられる場合がある(図11)。アームレストARは、規制具9のガイド孔95にストッパーピン22が規制を受けつつ、バックレスト側面BRから外方へ突き出す支軸mに支持され、実線使用状態と鎖線図示の不使用状態との間で行き来できるようになっている。車両座席シートのバックレスト側面BRに固着された支軸mに該アームレストを回動自在に取付けて、乗員Mが腕を置いて楽な姿勢を保つのをサポートする。強度補強用の芯体2がインサートされて一体化した発泡体の表面は、外観を向上させるアームレスト用表皮fに覆われている。
このアームレストARに関しては、袋状表皮f内へ芯体2を挿入、型内にセットした後、発泡原料を注入し、芯体2が埋設される発泡体を表皮一体発泡成形する発明がいくつか提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−117752号公報
【0004】
芯体2をインサートして表皮一体発泡成形するアームレストは、袋内に挿入した芯体2と表皮fとの相対的な位置決めをするシャフト(特許文献1では治具)を双方に係合させて発泡成形を行うが、発泡原料に接着性のあるウレタン原料等が用いられることから離型剤が必須であった。シャフトに離型剤を塗布して発泡成形を行わねばならなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、離型剤を必要することで、いくつかの問題があった。シャフトに離型剤を塗布した後、これを発泡型にセットし発泡成形することになるが、第一に、離型剤が表皮に付いて汚してしまう品質上の問題があった。脱型後、シャフトを抜いて製品にするが、このとき、シャフトと表皮が擦れるため、シャフトに塗布した離型剤がこそぎ落とされる状態になり、表皮端末に離型剤が付いてしまう不具合が発生した。第二の問題として、離型剤の塗布作業や乾燥させる手間と時間を要した。第三の問題として、離型剤を塗布しても接着性のあるウレタンがシャフトに一部付くことから、これを後工程で洗浄除去しなければならず、その分、シャフトを余分に作製しておく必要があった。離型剤の塗布によって、発泡型も該離型剤で汚れることから、この除去作業が必要になる第四の問題も抱えていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するもので、シャフトへの離型剤の塗布をなしにする構成をさぐり、品質向上,生産性向上を果たすアームレストの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、袋状表皮内へ芯体を挿入して型内にセットした後、型閉じ及び発泡原料の注入を経て、該芯体が埋設される発泡体を表皮一体発泡成形するアームレストの製造方法において、シャフトに、軸部に加え、その軸径よりも外径が大の拡径部を該軸部の基端部分に設けて、該シャフトの側周面に加え、該軸部から該拡径部にかけてポリオレフィン系のプラスチックフィルムからなる筒状フィルムを被せて筒状フィルム付きシャフトを形成し、次いで、前記袋状表皮内へ挿入した前記芯体の通孔に通すようにして、該袋状表皮の一側部に設けた開孔から他側部に設けた開口へと前記シャフトを挿通させると共に、該筒状フィルムを介して前記拡径部の天面が該開孔側の前記芯体に係る側板部に当接するようにして、該表皮に前記筒状フィルム付きシャフトを挿通し、且つ該開孔と該開口との間に該筒状フィルムを配設して、芯体及び筒状フィルム付きシャフトをセットした後、型閉じすることを特徴とするアームレストの製造方法にある。請求項2の発明たるアームレストの製造方法は、請求項1で、シャフトは、前記開口側に位置する前記芯体の側板部近くに配される前記軸部の部分に段部を設け、且つその先の軸部の径を細くする一方、前記筒状フィルムは、該段部に対応する位置にテーパ部を設け、さらにその先に前記軸部の径に合わせた小径筒部を延在させたことを特徴とする。請求項3の発明たるアームレストの製造方法は、請求項1又は2で、シャフトは先端が先細となるテーパ状にし、且つこれに合わせて、前記筒状フィルムも先端を先細のテーパ状にしたことを特徴とする。請求項4の発明たるアームレストの製造方法は、請求項1又は2で、開口から突き出す前記軸部が、開口周縁の表皮上に載置される押え治具に設けた第一孔を挿通し、さらに軸部先端部分に設けた螺子部にナットで螺着固定して、芯体及び筒状フィルム付きシャフトをセットすることを特徴とする。請求項5の発明たるアームレストの製造方法は、請求項1〜3で、筒状フィルムが、その先端部をシール部で封をする有蓋筒状フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアームレストの製造方法は、シャフトを使用しながらシャフトへの離型剤の塗布を行わず、且つ脱型後の製品からシャフトを円滑に取り出すことができ、作業性向上,品質向上、コスト低減等に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】アームレストの製造方法の一形態で、(イ)が袋状表皮内に芯体を挿入して表皮と係合させた正面図、(ロ)が(イ)の芯体の斜視図、(ハ)が筒状フィルムとシャフトの斜視図である。
図2図1(ハ)の筒状フィルムにシャフトを挿着後、これを開孔から開口へ挿通させて押え治具を取付けた正面図である。
図3図2のIII-III線矢視図である。
図4図3の要部拡大図である。
図5】発泡型に図3の表皮,芯体,筒状フィルム付きシャフト,押え治具を発泡型にセットした断面図である。
図6図5の後、型閉じし発泡成形した断面図である。
図7図6の発泡成形後、脱型されたアームレストの断面図である。
図8図4に代わる他態様図である。
図9図6に代わる他態様図である。
図10図9に代わる他態様図である。
図11】(イ)本アームレストと対比説明用のアームレストを座席に取着した説明図、(ロ)が(イ)のアームレストの拡大図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアームレストの製造方法について詳述する。
図1図6は本発明に係るアームレストの製造方法の一形態で、図1は(イ)が袋状表皮内に芯体を挿入して表皮と係合させた正面図、(ロ)が(イ)の芯体の斜視図、(ハ)が筒状フィルムとシャフトの斜視図、図2図1(ハ)の筒状フィルムにシャフトを挿着後、これを開孔から開口へ挿通させて押え治具を取付けた正面図、図3図2のIII-III線矢視図、図4図3の要部拡大図、図5は発泡型に図3の表皮,芯体,筒状フィルム付きシャフト,押え治具を発泡型にセットした断面図、図6図5の後、型閉じし発泡成形した断面図、図7図6の発泡成形後、脱型されたアームレストの断面図、図8図4に代わる他態様図、図9図6に代わる他態様図、図10図9に代わる他態様図である。尚、図面を判り易くするため、筒状フィルム付きシャフトは双方を離して描き、また一部図面にて表皮1,芯体2の断面を示すハッチングの図示を省く。
【0011】
アームレストの製造は、これに先立ち、アームレスト用表皮1と芯体2と入れ子部品のシャフト62を有する発泡型6と筒状フィルム7とを準備する。
表皮1は、複数のファブリック表皮片でアームレスト用に縫製され、その袋状表皮内19へ芯体2を挿入できる開口10を備えた袋状体である。ファブリック表皮片にはスラブウレタンやプラスチックフィルムが適宜積層される。アームレストの外形形状に合わせた横長の袋状表皮1は、使用状態下で、乗員の腕arが載る上面部12と、該上面部12の両側縁から下方に延在する側部とを有し、一側部11に開口10を設け、他側部13に開孔17を設けている。発泡型6へのセット前に、開孔17から開口10へとシャフト62を挿通させ、該シャフト62に表皮1を係合させる(詳細後述)。本アームレスト用表皮1は、バックレスト側面側BRの支軸挿通用開孔を、芯体2を袋内へ挿入させる開口10として使用し、該開口10は芯体2が挿通する大きさの開口面積を有する。
本表皮1は、また袋内19での芯体2のセットに伴い開口10に覗く芯体2のストッパーピン22へ向けて、開口周縁10eの一部から半島状に表皮部分15aが突き出し、且つストッパーピン22との対向部位の表皮部分15aに透孔15bを形成した位置決め部15を備える。
【0012】
芯体2はアームレストPの強度補強用部材である。図11のごとく、上板2A1と両側板2A2とで箱形板体2Aのコ字形板部を形成し、U字状軸部材2Bに係る連結部2B2の両端から延びる二本のステー部2B1を、両側板2A2へ溶接した金属製品でもよいが、ここでは図1(ロ)のような合成樹脂成形品とする。アームレスト使用時に、車両前方に向け横長の上板部2aが略水平に配され、その外周縁から折曲,延在した側板部2b,端板部2cが備わる下面開口の箱形成形品とする。支軸mに芯体2が支持されるよう、芯体2の両側板部2bには支軸用通孔20が対向配設される。該通孔20は使用状態下における側板部2bの車両後方側に設けられ、その近くの外壁面2b1にストッパーピン22が取付けられる。
本実施形態の芯体2はさらに堤状リブ26を形成する。リブ26は、芯体2の外壁面2b1で、表皮袋内19に芯体2をセットしたとき、位置決め部15を突き出した開口周縁部101と開口10を挟んで向き合う開口周縁部102に対応する部位で、開口10の周縁10eへ開口10側から接するように隆起形成される。リブ26は、表皮1に芯体2がセットされた状態下、開口周縁10eに沿って突条に設けられる。符号223は止めナット、符号2dは補強部、符号27は発泡原料gの注入用口、符号2eは抜孔を示す。芯体2は、アームレストPの必要強度を確保し、且つアームレストPが心地よい使用感を与えるよう、図1のごとく袋内19の所定位置に配設できる大きさになっている。
【0013】
入れ子部品のシャフト62を有する発泡型6は、図5ごとくの分割型で、下型6aと上型6bとを備える。ヒンジ6nを支点に型閉じすると、両型6a,6bでアームレスト用キャビティ60をつくる(図6)。本実施形態は、図1のストッパーピン22を上向きにして、アームレストPが横置き成形される。
下型型面61で、表皮1の開孔17,芯体2の他側部2b2の方(ストッパーピン22のない方)の支軸用通孔20bの対応位置には、シャフト62を着脱自在に立設,保持する窪み611が設けられる。
【0014】
前記シャフト62は、金属製で、主要部たる軸部622に加え、その軸径よりも外径が大の拡径部621を該軸部622の基端部分に設けている(図1)。拡径部621が該窪み611に挿嵌され、且つその拡径部621が、下型6aに配される表皮1の開孔17を潜り抜け、図3,図5でいえば、拡径部621の天面621aが、筒状フィルム7を介して、他側部2b2の方の支軸用通孔20b周りの下側の芯体側板部2bに当接し、芯体2を支持して、該芯体2が表皮裏面1bから離れて袋内19に収まるようにしている。窪み611へ拡径部621を挿置すると、下型型面61にシャフト62が起立する。シャフト62に筒状フィルム7を被せて筒状フィルム7付きシャフト62とした場合、表皮内19へ挿入した芯体2の通孔20に通すようにして、表皮1の開孔17から開口10へと筒状フィルム7付きシャフト62を挿通させ、且つ開孔17と開口10との間に筒状フィルム7を配設できる。
【0015】
筒状フィルム7は、ポリオレフィン系のプラスチックフィルムからなる細長筒状体である。筒状フィルム7は前記シャフト62の側周面622bに面状フィルムを筒状に巻いて被せた後、粘着テープ等で筒状体に保持させてもよいが、ここではシャフト62に被着できるパイプ状に予め成形している。発泡体を形成する接着力の高いポリウレタン材料等の発泡樹脂原料に対し、接着性に乏しいエチレン系炭化水素からなるプラスチックフィルムで筒状に成形した筒状フィルム7である。筒状フィルム7は、シャフト62に挿通して、その側周面(具体的には軸部622の側周面622b)に被着できる筒径を有する。図1,図3のごとく、筒状フィルム7にシャフト62を挿着して筒状フィルム7付きシャフト62を形成できる。本発明でいう筒状フィルム7には厚みのある筒状シートを含む。
ポリオレフィン系のプラスチックフィルムは、ポリエチレンやポリプロピレン等の汎用プラスチックフィルムで足りるが、ポリウレタン材料等の発泡樹脂原料との非接着性を高めるため、パラフィン等の炭化水素、高級アルコール、脂肪酸などの滑剤を添加したものであるとより好ましくなる。
【0016】
本実施形態は、さらに開口10を覆う大きさがある図2,図3のような盤体からなる押え治具5を準備する。押え治具5には、袋内19にセットされた芯体2の一側部の方の支軸用通孔20aと対向する部位に第一孔50が、ストッパーピン22と対向する部位に第二孔52が設けられる。芯体2に設けた発泡原料gの注入用口27と対向する部位には第三孔57が設けられる。
【0017】
前記表皮1,芯体2,入れ子用シャフト62を有する発泡型6,筒状フィルム7,押え治具5を用い、アームレストPを以下のように製造する。袋状表皮内19へ芯体2を挿入してセットした後、型閉じ及び発泡原料gの注入を経て、該芯体2が埋設される発泡体3を表皮一体発泡成形するが、筒状フィルム7付きシャフト62を用い、シャフト62への発泡原料g、発泡体3の付着防止を図っている。
【0018】
まず、芯体2を表皮1と係合させて袋内19にセットする。具体的には、表皮開口10から芯体2を挿入し、袋内19に芯体2を収める。位置決め部15をめくり上げて開口10から袋内19へ芯体2を挿入する。
次いで、開口10から袋内19へ芯体2の挿入を終えた芯体2入り表皮1に対し、開口10内に覗くリブ26を開口周縁10eに当接させる。また、めくり上げていた前記位置決め部15を開口10内へ向けて倒し、透孔15bにストッパーピン22を挿着する。リブ26を開口周縁10eにあてがい、透孔15bをストッパーピン22に嵌め込むだけで、芯体2が修正移動して表皮内19のほぼ正規位置に収まる。
【0019】
これと相前後して、筒状フィルム7の筒孔78にシャフト62を挿通し、シャフト62の側周面622bに筒状フィルム7を被せて筒状フィルム7付きシャフト62を形成する。
本実施形態の筒状フィルム7は、図1のごとく、軸部622の軸径よりも筒径を若干大きくして該軸部622に被着する主筒部72と、該主筒部72の基端縁から環状に外方へ広がり環形部74を形成する接続部と、環形部74の外周縁から筒状に延在して拡径部621の外周面621bの過半部を被う大径筒部71と、を備える。大径筒部71の筒径は拡径部621の外径よりも僅かに大きい。筒状フィルム7付きシャフト62を形成すると、図5のごとく筒状フィルム7の先端79が軸部622の先端近くに達する状態で、環形部74が天面621aを被い、さらに大径筒部71が拡径部621の上半部を被えるようになっている。筒状フィルム先端79から突き出る軸部622の部分を除き、主筒部72が軸部622に密着被覆する。大径筒部71が拡径部621に密着被覆する。
【0020】
しかる後、表皮1の開口10と開孔17間に、前記筒状フィルム7付きシャフト62を挿通させる。表皮内19へ挿入した芯体2の通孔20に通すようにして、袋状表皮1の一側部11に設けた開口10と表皮1の他側部13に設けた開孔17とを通って、該表皮1に前記筒状フィルム7付きシャフト62を挿通し、且つ該開孔17と該開口10との間に該筒状フィルム7を配設する。図3図4のごとく表皮1の開孔17から芯体2に係る両側板部2bの両支軸用通孔20に、シャフト62の軸部622を挿通させ、筒状フィルム7が少なくとも両通孔20間に配設されるようにして、軸部622の先端を開口10の外へ突出させる。ここでは、軸部622から拡径部621にかけて筒状フィルム7を被せており、筒状フィルム7を介して拡径部621の天面621aが前記開孔17側の芯体2に係る側板部2bに当接し、その先の軸部622が他側部2b2に開設された支軸用通孔20bから開口10へと挿通する。この軸部622の挿通によって、筒状フィルム7の先端79が、図3のごとく開口10側に在る芯体2の側板部2bの通孔20a近くにまで達する。
【0021】
続いて、表皮開口10から突き出る軸部622を押え治具5の第一孔50に挿通させ、軸部622の先端部分にナットNを螺着固定する。シャフト62の軸部622を表皮1の開孔17、芯体2の両通孔20に通して、表皮開口10に現れた軸部622を押え治具5の第一孔50に貫通させた該軸部622の先端部分にナットNで螺着固定する。筒状フィルム7付きシャフト62に表皮1,芯体2を係合、係止させた状態にして、押え治具5と共に一体化セットする。押え治具5が、表皮1の開口10を覆うように取付けられ、該押え治具5と表皮1の袋内19でセットされた芯体2とで、開口10を周回する形でその周縁10eの表皮部位を挟着し、ナットNで締め付ける(図4)。ナットNの締め付けで、該押え治具5と芯体2とで開口10を周回する表皮部位を挟着してシールする。表皮1に、芯体2及び筒状フィルム7付きシャフト62の組み付けセットした一体品が出来る。
【0022】
透孔15bへのストッパーピン22の挿着と共に、表皮1と芯体2へのシャフト軸部622の挿通、さらにシャフト62、押え治具5、及びナットNによる固定が、表皮1に対する芯体2の位置決め及び表皮開口10の芯体2に対する相対的な位置決めセットを確実にする。
と同時に、位置決めを図るシャフト62は、表皮内19に配される該シャフト62の外周面が筒状フィルム7で被われた状態に保たれ、その後の発泡成形でシャフト62に発泡原料が付着しないようになっている。
【0023】
詳しくは、表皮内19に配されるシャフト62の部分が、図3のごとく筒状フィルム7に被われている。軸部622を被う筒状フィルム7に係る主筒部72が、基端から軸部622の基端部分を覆って先端79に延在するが、先端79はストッパーピン22が在る方の側板部2bに設けた通孔20aのきわまで達している。また、筒状フィルム7に係る主筒部72の基端から延在する環形部74がシャフト62の拡径部621の天面621aを被い、さらにここから延在する大径筒部71が拡径部天面621aから、少なくとも表皮1外へ出る拡径部621の外周面621bまで被っている。したがって、表皮内19にシャフト62の外周面が露出する部分はなく、在るとしても、通孔20aのきわまで達する筒状フィルム7の先端79と通孔20aとの僅かの隙間でしかない状態にある。
【0024】
その後、型外で完成させた、前述の表皮1と芯体2及び筒状フィルム7付きシャフト62の組み付け一体品を、下型6aにセットする(図5)。表皮1に対する芯体2の位置決め及び芯体2に対する相対的な表皮開口10の位置決めが、シャフト62と透孔15b付き表皮部分15aと押え治具5とによってなされ、さらに、表皮内19のシャフト62の部分は筒状フィルム7で被われて保護された状態で、シャフト62の拡径部621を窪み611へ挿着して、発泡型6にセットする。
【0025】
次に、ほぼ公知の手順に従い、型閉じ及び発泡原料gの注入を経て、芯体2が埋設される発泡体3を表皮一体発泡成形する。具体的には、上型6bを作動させ型閉じする(図6参照)。上型6bと下型6aとの型閉じで、芯体2がインサートセットされたアームレスト用キャビティ60ができる。続いて、漏斗F等を使って、下型6aのキャビティ60内に配置された表皮1内に、アームレスト成形用ウレタン発泡原液等の発泡原料gを所定量注入する。尚、型閉じ後に発泡原料gを注入したが、型閉じと発泡原料の注入の順序は問わない。
【0026】
しかる後、アームレストPの発泡成形に移る。型閉じ状態を所定時間維持し、芯体2を埋設一体化し、且つ外面を覆う表皮1を一体化するアームレスト形状の発泡体3を発泡成形する(図6)。このとき、シャフト62は、表皮内19に在る部分がポリエチレン等のポリオレフィン系の筒状フィルム7で被われているので、発泡成形過程で、発泡原料gや発泡体3の付着防止が図られる。
かくして、芯体2をインサートしたアームレストPの発泡体3が表皮一体成形される。アームレストPの一体発泡成形を終え、脱型(脱型工程)し、押え治具5,筒状フィルム7付きシャフト62を取り外せば、図7ごとくの所望の品質安定したアームレストPが得られる。
発泡原料g、発泡体3に対し、非接着性のポリオレフィン系のプラスチックフィルムからなる筒状フィルム7で、表皮内19に在るシャフト62の略全域を被っていることから、筒状フィルム7付きシャフト62は、発泡成形を終えたアームレストPからスムーズに抜き取ることができる。
【0027】
図8は、図4に示す筒状フィルム7付きシャフト62に代わる他態様の筒状フィルム7付きシャフト62を用いた拡大図である。本シャフト62は、開口10側に位置する芯体2の側板部2b近くに配される軸部622の部分に段部622dを設け、その先の軸部622の径を細くする。また、筒状フィルム7は段部622dに対応する位置にテーパ部76を設け、さらにその先に軸部622の径に合わせた小径筒部73を延在させる。段部622dやテーパ部76を設けると、表皮内19に収めた芯体2の通孔20に通すようにして、開孔17から開口10へと筒状フィルム7付きシャフト62を挿通させる際、段部622dやテーパ部76がストッパとして働くので、筒状フィルム7の先端79が位置ズレすることとがなくより好ましくなる。
【0028】
図9は、図1図8とはまた別態様の筒状フィルム7付きシャフト62を用いた説明図で、図5の状態から型閉じした断面図に対応する説明断面図である。
筒状フィルム7は、その先端部をシール部75で封をする有蓋筒状フィルム7とする。図示のごとく、押え治具5を用いないことからシャフト62にねじ部622aがない。軸部622の先端側にシール部75が位置し、ここから拡径部621にかけて筒状フィルム7が被う。発泡型6の上型6bは、シャフト62及びストッパーピン22の領域に凹所651を設け、且つ押え治具5が果たしていたシール用型面65を形成する(図9)。
アームレストの製造では、開口10から袋内19へ芯体2の挿入を終えた芯体2入り表皮1で、リブ26を開口周縁に当接させ、またストッパーピン22を透孔15bに挿着する。これと相前後して、表皮1の開孔17から芯体2に係る両側板部2bの両支軸用通孔20へと、筒状フィルム7付きシャフト62を挿通させ、挿通させた筒状フィルム7付きシャフト62の先端部を開口10に覗かせる。
その後、型外で完成させたこの筒状フィルム7付きシャフト62と芯体2入り表皮1との組み付け品を下型6aにセットし、型閉じする(図9)。型閉じにより、凹所651周りの上型型面65と芯体2とで開口10を周回する表皮部位を挟着、シールして、発泡成形時の発泡原料漏れを防ぐ。表皮内19に配されるシャフト62の部分はポリオレフィン系の筒状フィルム7によってすっぽりと被われた状態にあり、発泡成形時に、発泡原料gや発泡体3がシャフト62に付着することがない。他の構成は図1図7での説明と同様でその説明を省く。図1図7で使用したのと同じ符号は同一又は相当部分を示す。
また、図9において、有蓋筒状フィルム7付きシャフト62に代えて、シャフト62の先端を先細となるテーパー状にして、それに合わせて筒状フィルム7も先端を先細のテーパー状にした、図10ごとくの先端テーパーフィルム7付きシャフト62としてもよい。このようにしてもシャフト62の周側面622bのほとんどを筒状フィルム7で覆うことができる。尚、図10のシャフト62はその突端622eを露出させている。
【0029】
このように構成したアームレストの製造方法は、表皮1の開孔17と開口10の間に筒状フィルム7を配設して、芯体2及び筒状フィルム7付きシャフト62をセットした後、型閉じし発泡成形するので、接着力の高いポリウレタン原料gやその発泡体3であっても、筒状フィルム7によってシャフト62への付着が遮断される。そして、筒状フィルム7がポリウレタン原料gやその発泡体3に対し非接着性のポリオレフィン系のプラスチックフィルムからなるので、脱型後に、アームレスト製品から筒状フィルム7付きシャフト62をスムーズに抜き取ることができる。シャフト62を被う筒状フィルム7は発泡原料gと接着性に乏しいポリオレフィン系のプラスチックフィルムでできているので、アームレスト製品から筒状フィルム7付きシャフト62ごと難なく抜き取ることができる。抜き取った後の筒状フィルム7付きシャフト62に、発泡体3等の付着がなく、汚れもないので、そのまま次のアームレスト製造用の筒状フィルム7付きシャフト62として再利用できる。また、筒状フィルム7付きシャフト62の抜け跡は綺麗で、支軸mの取付け用孔としての役割を十分果たす。
従来のごとく離型剤を使用しなくてもアームレストPの発泡成形を円滑実施できる。離型剤を使用しなくて済むので、離型剤が表皮1に付いて汚す品質上の問題や、離型剤の塗布作業や乾燥作業を要する労力及び作業時間の問題は解消する。さらに、離型剤を塗布しても接着性のあるウレタンがシャフト62に一部付くことから、これを後工程で洗浄除去しなければならず、その分、シャフト62を余分に作製しておくストックの問題や、離型剤の塗布によって、該離型剤で発泡型6も汚れることから、この除去作業が必要になるなどの問題も解消し、品質向上、生産性向上、コスト低減等に優れた効果を発揮する。
【0030】
また、芯体2に係る両側板部2bに設けた両通孔20にシャフト62を挿通させると共に、筒状フィルム7が少なくとも両通孔20間に配設されるようにして、表皮1に芯体2及び筒状フィルム7付きシャフト62をセットすると、両通孔20間に筒状フィルム7があるので、表皮内19に在る芯体2の大部分が該筒状フィルム7に被われる格好になり、その後の発泡成形でシャフト62に発泡原料が付着するのを防止できる。そして、両通孔20にシャフト62が挿通するので、シャフト62に芯体2を楽に位置決めできる。
【0031】
さらに、シャフト62に、軸部622と拡径部621を設け、筒状フィルム7を介して拡径部621の天面621aが開孔17側の側板部2bに当接するようにして、開孔17から開口10へとシャフト62を挿通させて、芯体2及び筒状フィルム7付きシャフト62をセットすると、拡径部621の部分でも筒状フィルム7が介在するので、発泡成形でシャフト62への発泡原料gの付着防止に万全を期すことができる。そして、シャフト62に拡径部621を設けると、その天面621aを開孔17側の側板部2bに当接させて、芯体2を表皮裏面1bから離して袋内19に浮く状態で収めることができる。
加えて、シャフト62を入れ子部品にして、開口10から突き出す軸部622が、開口周縁10eの表皮1上に載置される押え治具5に設けた第一孔50を挿通し、さらに軸部先端部分に設けたねじ部622aにナットNで螺着固定できると、発泡型6へのセット前に、型外で、表皮1に芯体2及び筒状フィルム7付きシャフト62を円滑に組み付け、セット固定できる。筒状フィルム7が、その先端部をシール部75で封をする有蓋筒状フィルム7にすると、表皮内19に収まるシャフト62を筒状フィルム7で完全に被うことができ、より一層の品質向上を目指すことができる。
【0032】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。表皮1,芯体2,発泡体3,シャフト62,筒状フィルム7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。
【符号の説明】
【0033】
1 表皮
10 開口
17 開孔
19 袋内(表皮内)
2 芯体
2b 側板部
20 通孔
3 発泡体
5 押え治具
50 第一孔
62 シャフト
621 拡径部
621a 天面
622 軸部
622a ねじ部
622d 段部
7 筒状フィルム
73 小径筒部
75 シール部
76 テーパ部
79 先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
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図11