【実施例】
【0030】
[実施例1]
表1に示す組成に従って、粒径d90 が26μmのボリコナゾールと、乳糖水和物と、カルメロースカルシウムとを混合攪拌機に入れ、10分間混合した。さらに、ポビドンを精製水に溶解した水溶液を投入して、混合し、造粒品を得た。造粒品を、棚式乾燥機にて60℃, 12時間乾燥した。造粒乾燥品を、スクリーン径 0.8 mmのスクリーンメッシュに通して整粒品を得た。
【0031】
得られた整粒品と、クロスカルメロースナトリウムを容器回転型混合器に入れ、10 分間混合した。その後、ステアリン酸マグネシウムを入れ、2 分間混合して、混合品を得た。得られた混合品を、ロータリー式打錠機を用いて、錠剤質量 400 mgとなるように打錠して、素錠を得た。
【0032】
得られた素錠を、全自動糖衣フィルムコーティング装置に入れ、コーティング剤と着色剤と精製水とからなるコーティング液を素錠にスプレーした。スプレー終了後、60 ℃になるまで乾燥し、乾燥終了後にカルナバロウを添加して艶出しを行い、フィルムコーティング錠を得た。
【0033】
得られたフィルムコーティング錠を、PTP包装機を用いて、ポリ塩化ビニルフィルムに充填した。さらに、アルミニウム箔を加熱シールした。シール品を裁断し、PTP包装品とした。
【0034】
[実施例2]
乳糖水和物およびカルメロースカルシウムの含有量をそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして素錠を得た。ただし、フィルムコーティング錠にはしなかった。
【0035】
[実施例3]
カルメロースカルシウムに代えてコアシェル型部分α化デンプン粒子(PCS, 旭化成ケミカルズ)を用いたこと以外は、実施例1と同様にフィルムコーティング錠を作製し、それをPTP包装品とした。
【0036】
[実施例4]
ポビドン及び乳糖水和物の含有量を変更したこと以外は、実施例3と同様にフィルムコーティング錠を作製し、それをPTP包装品とした。
【0037】
[比較例1]
カルメロースカルシウムに代えて部分α化デンプン(スターチ1500, 日本カラコン)を用いるとともに、各添加物の量を増量した(1.5倍)こと以外は、実施例1と同様にフィルムコーティング錠を作製し、それをPTP包装品とした。
【0038】
[比較例2]
カルメロースカルシウムに代えて部分α化デンプン(スターチ1500, 日本カラコン)を用いたこと以外は、実施例1と同様にフィルムコーティング錠を作製し、それをPTP包装品とした。
【表1】
【0039】
[溶出性の確認]
まず、実施例1、実施例3、比較例1および比較例2で得られたフィルムコーティング錠と、実施例2で得られた素錠の溶出性を確認した。溶出試験の条件を以下の通りとした。溶出液の希釈率とは、溶出液の濃度を測定機器の測定許容範囲内に入れるために、溶出液を希釈した倍率である。標準物質の希釈率とは、標準物質濃度を測定許容範囲内に入れるために、標準物質を希釈した倍率である。測定試料が100%溶出したときに、上記希釈率で希釈したときと同じ濃度になるように、標準溶液の希釈倍率を設定した。
溶出液:水
溶出液量:900ml
パドル回転数:50rpm
採取液量:10ml
溶出液の希釈率:8
標準物質の希釈率:800
標準物質の換算係数:1
表示量(1錠中の主薬含量):200mg
採取時間:5分後、10分後、15分後、30分後、45分後
【0040】
サンプル1個についての溶出試験を、溶出液900mLを用い、パドル法により毎分50回転として行う。溶出試験を開始してから規定時間後に、溶出液10mLを正確に量りとる。直後に、37±0.5℃に加温した試験液(水)10mLを正確に注意して溶出液に補う。量りとった溶出液10 mlを、孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、初めの濾液5mLを除き、続いて得た濾液1mLを正確に量りとる。量りとった濾液に、試験液(水) 7mLを正確に加えて試料溶液とする。
別に、定量用ボリコナゾール約22mgを精密に量り、メタノールに溶かし、正確に20mLとする。この溶液5mLを正確に量り、試験液(水)を加えて正確に200mLとし、標準溶液とする。
試料溶液及び標準溶液につき、試験液(水)を対照として紫外可視吸光度測定法により試験を行い。波長256nmにおける吸光度A
T及びA
Sを測定する。以下の計算式に基づいて、溶出率を算出する。
【0041】
【数1】
【0042】
測定結果を表2に示す。
【表2】
【0043】
比較例1 と比較例2 とを比較すると、ボリコナゾールの含有量を一定(200mg)としたまま、錠剤重量を低減させる(比較例1: 約600mgから、比較例2: 約400mgに)ことで、ボリコナゾールの溶出速度が低下したことがわかる(溶出時間5-15分を参照)。実施例1 および実施例3 においても、比較例1 と比較してボリコナゾールの溶出性がやや低下したものの、低下の程度は抑えられることが分かった。一方、実施例2 では、実施例1や3 と比較して、ボリコナゾールの溶出性がやや低下した。
【0044】
次に、各実施例および比較例で得られたフィルムコーティング錠の安定性を確認した。具体的には、苛酷条件下での保存後のボリコナゾールの溶出性の変化と、錠剤の変色とについて確認した。
【0045】
[溶出性の変化(溶出挙動)]
実施例1、実施例3、および比較例1 で得られたフィルムコーティング錠(PTP包装品)を苛酷条件下(55℃/75%RH)にて保存した。0 時間経過時、1週間、2週間及び4週間経過時のフィルムコーティング錠の、ボリコナゾールの溶出挙動を調べた。溶出挙動は、溶出性の確認のときと同様の手順で行った。これらの測定結果を、表3〜5に示した。
【0046】
【表3】
【表4】
【表5】
【0047】
表5に示されるように、比較例1 のフィルムコーティング錠は、苛酷条件下に保存後にボリコナゾールの溶出性が低下していることがわかる(保存時間4weeks, 溶出時間5-15分を参照)。これに対して、表3および4に示されるように、実施例1 および3 のフィルムコーティング錠は、苛酷条件下にて保存されても、ボリコナゾールの溶出性の変化が抑制されていることがわかる。
【0048】
[錠剤の変色I]
実施例1、比較例1 で得られたフィルムコーティング錠(未包装品)を、苛酷条件下(55℃/75%RH)にて保存した。0 時間経過時、2週間及び4週間経過時のフィルムコーティング錠の色差 dE*(ab) をそれぞれ測定した。また、0 時間経過時、2週間及び4週間経過時のフィルムコーティング錠からフィルムコーティングを剥離した錠剤の色差 dE*(ab) をそれぞれ測定した。錠剤の色差の測定は、分光式色彩計 Spectro Color Meter SE 2000 (日本電色社) を用いて行った。これらの測定結果を、表6に示した。ここで色差とは、白色の標準板との色差を意味する。
【表6】
【0049】
表6に示されるように、比較例1のフィルムコーティング錠と比較して、実施例1のフィルムコーティング錠は苛酷条件にて保存されても色の変化が抑制されていることがわかる。
【0050】
[錠剤の変色II]
実施例3 及び4 で得られたフィルムコーティング錠(未包装品)、比較例1 で得られたフィルムコーティング錠(包装品)を、苛酷条件(55℃/75%RH)にて保存した。0 時間経過時、1週間、2週間および4週間経過時のフィルムコーティング錠の色差 dE*(ab) をそれぞれ測定した。測定結果を表7に示した。
【表7】
【0051】
表7に示されるように、実施例3 及び4 のフィルムコーティング錠は、未包装であるにも係らず、比較例1の包装品よりも変色が抑制されていることがわかる。さらに、実施例3 および4 とを比較すると、結合剤であるポビドンの含有量が高すぎると(実施例3: 約2%、実施例4: 約4%)、錠剤の変色が生じやすくなることがわかる。