特許第6367042号(P6367042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367042
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ボリコナゾールを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20180723BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20180723BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20180723BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A61K31/506
   A61K47/38
   A61K47/36
   A61K9/20
   A61P31/10
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-161102(P2014-161102)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-37463(P2016-37463A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】593077308
【氏名又は名称】共和薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 史恭
(72)【発明者】
【氏名】小泉 寛和
(72)【発明者】
【氏名】山下 順也
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102133202(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103040833(CN,A)
【文献】 特公昭59−047600(JP,B1)
【文献】 家庭薬研究,1993年,No.12,p.41-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボリコナゾールと賦形剤と崩壊剤とを含む錠剤からなり、
前記賦形剤は、カルメロースカルシウムを含むか、または一部又は全部がα化デンプンからなるコアと、βデンプンからなるシェルとを有するコアシェル型部分α化デンプン粒子を含み、
前記崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムを含み、
前記錠剤の重量に対するボリコナゾールの含有量が40重量%以上である医薬品組成物。
【請求項2】
前記賦形剤はカルメロースカルシウムを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記カルメロースカルシウムの含有量は、錠剤質量に対して10 〜 30質量%である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ボリコナゾールの粒子径 d90 が 150μm 以下10μm以上である、請求項1〜3の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記錠剤は、素錠と、それを被覆する皮膜とを有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボリコナゾールを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ボリコナゾールは、下記一般式で示される医薬有効成分である。ボリコナゾールは、いくつかの真菌感染症の治療に有用であり、市販の医薬品として利用されている。ボリコナゾールを含む医薬品組成物として、経口投与用のフィルムコート錠のほか、注射用投与用の液剤や粉末などが提案されている。
【化1】
【0003】
ボリコナゾールを含む錠剤として、ブイフェンド(登録商標)として市販されているもののほか、ボリコナゾールと共に水不溶性ポリマーとを含む錠剤とが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−509283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでに提案されているボリコナゾールを含む錠剤は、医薬有効成分であるボリコナゾールに対して比較的多量の賦形剤が添加されており、結果として1錠あたりのサイズが大きくなっていた。例えば、ブイフェンド200mg錠として市販されている、1錠あたり200mgのボリコナゾールを含む錠剤は、1錠あたりの総重量が約600mgとなっていた。したがって、1錠あたりの総重量を低減し、サイズを小さくすることができれば、服用の容易性が高まり、服薬コンプライアンスの向上も期待できる。
【0006】
そこで本発明は、ボリコナゾールを含む錠剤からなり、錠剤の重量に対するボリコナゾールの含有量が40重量%以上である医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示す医薬組成物に関する。
[1] ボリコナゾールと賦形剤と崩壊剤とを含む錠剤からなり、
前記賦形剤は、カルメロースカルシウムを含むか、または一部又は全部がα化デンプンからなるコアと、βデンプンからなるシェルとを有するコアシェル型部分α化デンプン粒子を含み、
前記崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムを含み、
前記錠剤の重量に対するボリコナゾールの含有量が40重量%以上である医薬品組成物。
[2]前記賦形剤はカルメロースカルシウムを含む、[1]に記載の医薬組成物。
[3]前記カルメロースカルシウムの含有量は、錠剤質量に対して10〜30 質量%である、
[1]または[2]に記載の医薬組成物。
[4]前記ボリコナゾールの粒子径 d90 は150μm以下10μm以上である、[1]〜[3]
の何れかに記載の医薬組成物。
[5]前記錠剤は、素錠と、それを被覆する皮膜とを有する、[1]〜[4]の何れか
に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により提供される医薬組成物は、ボリコナゾールを含有する錠剤であって、賦形剤の含有量が比較的低減されているため、その錠剤サイズが小さい。そのため、それを服用する患者のストレスを軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1. 錠剤について
本発明の医薬組成物は、ボリコナゾールを有効成分として含有する錠剤からなる。錠剤は、その重量が 550mg 以下であることが好ましく、500mg 以下であることがより好ましく、450mg 以下であることがさらに好ましい。錠剤の重量を小さくすることで、そのサイズを小型化することができる。1錠あたりの錠剤サイズは、平均錠径を15mm以下、好ましくは12mm以下とすることができ、錠厚みを6mm以下、好ましくは5mm以下とすることができる。また、錠剤は、素錠(裸錠)であってもよいが、フィルムコート錠であってもよい。
【0010】
1-1. ボリコナゾールについて
ボリコナゾールとは、C16H14F3N5Oの化学組成式で表され、分子量349.31を有する物質である。またボリコナゾールの化学名は、(2R,3S)-2-(2,4-ジフルオロフェニル)-3-(5-フルオロピリミジン-4-イル)-1-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)ブタン-2-オールである。ボリコナゾールは、結晶質であっても非晶質であってもよい。
【0011】
錠剤におけるボリコナゾールの含有量は、錠剤重量に対して40重量%以上であることが好ましく、45重量%以上であることがより好ましい。また、1錠あたりのボリコナゾールの絶対量は、100mg以上、好ましくは200mg以上であることが好ましい。
【0012】
ボリコナゾールは、粉末状であることが好ましく、その粒径は特に限定されないものの、粒径d90が150μm以下10μm以上であることが好ましく、100μm以下20μm以上であることがより好ましい。また、ボリコナゾールの粒径d50 は、50μm以下5μm以上であることが好ましい。ボリコナゾールの粒径は、粒度分布測定装置マスターサイザー2000 (乾式分散)によって測定され得る。ボリコナゾールの粒径を一定以下とすると、錠剤中のボリコナゾールの含有割合が高めても、ボリコナゾールの溶出率を低下させにくくなる。
【0013】
1-2. 賦形剤について
錠剤には、ボリコナゾールとともに賦形剤が含まれている。賦形剤は、少なくともカルメロースカルシウム、またはコアシェル型部分α化デンプン粒子を含む。コアシェル型部分α化デンプン粒子は、コアとシェルを有する構造を有し、コアの一部又は全部がα化デンプンからなり、シェルがβデンプンからなる。つまり、コアシェル型部分α化デンプン粒子とは、デンプン粒子のコア部分のみが選択的にα化されている粒子である。コアシェル型部分α化デンプン粒子は、市販(旭化成)されている製品名PCSとして入手可能である。
【0014】
賦形剤にこれらを添加することで、錠剤を安定化させる(例えば、変色を抑制する)ことができ、かつ苛酷条件下で保存しても、ボリコナゾールの溶出が低下しにくくなる。錠剤におけるカルメロースカルシウムおよびコアシェル型部分α化デンプン粒子の含有量は、錠剤質量に対して10 〜 30質量%、好ましくは15 〜 30質量%であることが好ましい。
【0015】
また、賦形剤の選択によって、錠剤中のボリコナゾールが患者の血液に取り込まれる速度と量に影響があるので、賦形剤にはカルメロースカルシウムを含むことが好ましい場合がある。
【0016】
錠剤には、カルメロースカルシウムとともに他の賦形剤が含まれていてもよい。他の賦形剤の例には、乳糖水和物、ブドウ糖、白糖、マンニトール、デキストリン、部分α化デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムおよび結晶セルロースなどが含まれる。錠剤における賦形剤の含有量は 30 〜 50 質量%であることが好ましい。また、賦形剤の総量に対するカルメロースカルシウムおよびコアシェル型部分α化デンプン粒子の量は、20 〜 60 質量%であればよい。
【0017】
1-3. 結合剤について
錠剤には、結合剤が含まれていてもよい。結合剤の例には、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、デンプン、ゼラチン、シロップ、トラガントゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどが含まれる。錠剤に含まれる結合剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましい。結合剤の含有量が過剰に多いと錠剤の安定性が低下する、例えば、長時間保存された錠剤が変色したりしやすくなる場合がある。
【0018】
1-4. 崩壊剤について
錠剤には、ボリコナゾールとともに崩壊剤が含まれていてもよい。崩壊剤の例には、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプングリコール酸ナトリウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、加工デンプン、ケイ酸カルシウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどが含まれる。錠剤中における崩壊剤の含有量は1〜10質量%であればよい。
【0019】
1-5. 滑沢剤について
錠剤には、滑沢剤が含まれていてもよい。滑沢剤の例には、ステアリン酸、その塩(ステアリン酸Na、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Caなど)およびそのエステル体(フマル酸ステアリルNa)、タルク、コロイド状二酸化ケイ素などが含まれる。錠剤中における滑沢剤の含有量は0.25〜5質量%であればよい。
【0020】
1-6. フィルムコートについて
前述の通り、錠剤はフィルムコート錠であってもよい。フィルムコート錠とすることで、錠剤の変色(特に、素錠部分の変色)を抑制することができる。フィルムコート成分は特に限定されず、糖類を含むコーティング剤(タルクなど)と着色剤(酸化チタンなど)とを含むことができ、フィルムコートは市販のオパドライ(登録商標)などのプレミックスコーティング剤を用いて製膜することができる。
【0021】
錠剤には、さらに光沢化剤が含まれていてもよい。光沢化剤の例には、カルナウバロウ、サラシミツロウなどが含まれる。
【0022】
2. 錠剤の製造方法について
本発明の医薬組成物の錠剤は、発明の効果を損なわない限り任意の方法で製造され得る。以下には、錠剤の製法フローの例を説明する。
【0023】
2-1. ボリコナゾールの用意
ボリコナゾールは、好ましくは微粉砕することで、その粒径 d90 を150μm以下10μm以上とすることが好ましい。微粉砕する手段の例には、ピンミル、高圧ホモジナイザーやジェットミルが含まれ、目的とする粒径に応じて選択すればよく、湿式粉砕であっても乾式粉砕であってもよい。
【0024】
2-2. 造粒/整粒
ボリコナゾールと、賦形剤と、任意の添加剤とを混合し造粒する。造粒は、乾式であってもよいが、水を用いた湿式であることが好ましい。造粒品は、スクリーンメッシュで任意のサイズに整粒することが好ましい。整粒後のサイズは特に限定されないが、1mm以下とすればよい。
【0025】
2-3. 混合顆粒の調製
整粒後の造粒品と崩壊剤とを混合し、さらに滑沢剤を混合させることで、混合顆粒を得ることができる。
【0026】
2-4. 打錠
打錠により「素錠」を得る。打錠の手段は特に限定されない。
【0027】
2-5. コーティング
得られた錠剤をコーティングしてもよい。
【0028】
2-6. 包装など
錠剤は、PTP包装されていることが好ましい。例えば、ポリ塩化ビニルフィルムなどの透明プラスチックフィルムに錠剤を充填してから、アルミニウム箔などの金属箔をラミネート(加熱シール)することで、錠剤をPTP包装することができる。
【0029】
3. 錠剤の用途
本発明の医薬組成物は、患者に経口投与されることによって、真菌による感染症を治療するために用いられることができる。一回当たりの投与量は、特に限定されないが、ボリコナゾールの量に換算して300mg以下であることが好ましい。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
表1に示す組成に従って、粒径d90 が26μmのボリコナゾールと、乳糖水和物と、カルメロースカルシウムとを混合攪拌機に入れ、10分間混合した。さらに、ポビドンを精製水に溶解した水溶液を投入して、混合し、造粒品を得た。造粒品を、棚式乾燥機にて60℃, 12時間乾燥した。造粒乾燥品を、スクリーン径 0.8 mmのスクリーンメッシュに通して整粒品を得た。
【0031】
得られた整粒品と、クロスカルメロースナトリウムを容器回転型混合器に入れ、10 分間混合した。その後、ステアリン酸マグネシウムを入れ、2 分間混合して、混合品を得た。得られた混合品を、ロータリー式打錠機を用いて、錠剤質量 400 mgとなるように打錠して、素錠を得た。
【0032】
得られた素錠を、全自動糖衣フィルムコーティング装置に入れ、コーティング剤と着色剤と精製水とからなるコーティング液を素錠にスプレーした。スプレー終了後、60 ℃になるまで乾燥し、乾燥終了後にカルナバロウを添加して艶出しを行い、フィルムコーティング錠を得た。
【0033】
得られたフィルムコーティング錠を、PTP包装機を用いて、ポリ塩化ビニルフィルムに充填した。さらに、アルミニウム箔を加熱シールした。シール品を裁断し、PTP包装品とした。
【0034】
[実施例2]
乳糖水和物およびカルメロースカルシウムの含有量をそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして素錠を得た。ただし、フィルムコーティング錠にはしなかった。
【0035】
[実施例3]
カルメロースカルシウムに代えてコアシェル型部分α化デンプン粒子(PCS, 旭化成ケミカルズ)を用いたこと以外は、実施例1と同様にフィルムコーティング錠を作製し、それをPTP包装品とした。
【0036】
[実施例4]
ポビドン及び乳糖水和物の含有量を変更したこと以外は、実施例3と同様にフィルムコーティング錠を作製し、それをPTP包装品とした。
【0037】
[比較例1]
カルメロースカルシウムに代えて部分α化デンプン(スターチ1500, 日本カラコン)を用いるとともに、各添加物の量を増量した(1.5倍)こと以外は、実施例1と同様にフィルムコーティング錠を作製し、それをPTP包装品とした。
【0038】
[比較例2]
カルメロースカルシウムに代えて部分α化デンプン(スターチ1500, 日本カラコン)を用いたこと以外は、実施例1と同様にフィルムコーティング錠を作製し、それをPTP包装品とした。
【表1】
【0039】
[溶出性の確認]
まず、実施例1、実施例3、比較例1および比較例2で得られたフィルムコーティング錠と、実施例2で得られた素錠の溶出性を確認した。溶出試験の条件を以下の通りとした。溶出液の希釈率とは、溶出液の濃度を測定機器の測定許容範囲内に入れるために、溶出液を希釈した倍率である。標準物質の希釈率とは、標準物質濃度を測定許容範囲内に入れるために、標準物質を希釈した倍率である。測定試料が100%溶出したときに、上記希釈率で希釈したときと同じ濃度になるように、標準溶液の希釈倍率を設定した。
溶出液:水
溶出液量:900ml
パドル回転数:50rpm
採取液量:10ml
溶出液の希釈率:8
標準物質の希釈率:800
標準物質の換算係数:1
表示量(1錠中の主薬含量):200mg
採取時間:5分後、10分後、15分後、30分後、45分後
【0040】
サンプル1個についての溶出試験を、溶出液900mLを用い、パドル法により毎分50回転として行う。溶出試験を開始してから規定時間後に、溶出液10mLを正確に量りとる。直後に、37±0.5℃に加温した試験液(水)10mLを正確に注意して溶出液に補う。量りとった溶出液10 mlを、孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、初めの濾液5mLを除き、続いて得た濾液1mLを正確に量りとる。量りとった濾液に、試験液(水) 7mLを正確に加えて試料溶液とする。
別に、定量用ボリコナゾール約22mgを精密に量り、メタノールに溶かし、正確に20mLとする。この溶液5mLを正確に量り、試験液(水)を加えて正確に200mLとし、標準溶液とする。
試料溶液及び標準溶液につき、試験液(水)を対照として紫外可視吸光度測定法により試験を行い。波長256nmにおける吸光度AT及びASを測定する。以下の計算式に基づいて、溶出率を算出する。
【0041】
【数1】
【0042】
測定結果を表2に示す。
【表2】
【0043】
比較例1 と比較例2 とを比較すると、ボリコナゾールの含有量を一定(200mg)としたまま、錠剤重量を低減させる(比較例1: 約600mgから、比較例2: 約400mgに)ことで、ボリコナゾールの溶出速度が低下したことがわかる(溶出時間5-15分を参照)。実施例1 および実施例3 においても、比較例1 と比較してボリコナゾールの溶出性がやや低下したものの、低下の程度は抑えられることが分かった。一方、実施例2 では、実施例1や3 と比較して、ボリコナゾールの溶出性がやや低下した。
【0044】
次に、各実施例および比較例で得られたフィルムコーティング錠の安定性を確認した。具体的には、苛酷条件下での保存後のボリコナゾールの溶出性の変化と、錠剤の変色とについて確認した。
【0045】
[溶出性の変化(溶出挙動)]
実施例1、実施例3、および比較例1 で得られたフィルムコーティング錠(PTP包装品)を苛酷条件下(55℃/75%RH)にて保存した。0 時間経過時、1週間、2週間及び4週間経過時のフィルムコーティング錠の、ボリコナゾールの溶出挙動を調べた。溶出挙動は、溶出性の確認のときと同様の手順で行った。これらの測定結果を、表3〜5に示した。
【0046】
【表3】
【表4】
【表5】
【0047】
表5に示されるように、比較例1 のフィルムコーティング錠は、苛酷条件下に保存後にボリコナゾールの溶出性が低下していることがわかる(保存時間4weeks, 溶出時間5-15分を参照)。これに対して、表3および4に示されるように、実施例1 および3 のフィルムコーティング錠は、苛酷条件下にて保存されても、ボリコナゾールの溶出性の変化が抑制されていることがわかる。
【0048】
[錠剤の変色I]
実施例1、比較例1 で得られたフィルムコーティング錠(未包装品)を、苛酷条件下(55℃/75%RH)にて保存した。0 時間経過時、2週間及び4週間経過時のフィルムコーティング錠の色差 dE*(ab) をそれぞれ測定した。また、0 時間経過時、2週間及び4週間経過時のフィルムコーティング錠からフィルムコーティングを剥離した錠剤の色差 dE*(ab) をそれぞれ測定した。錠剤の色差の測定は、分光式色彩計 Spectro Color Meter SE 2000 (日本電色社) を用いて行った。これらの測定結果を、表6に示した。ここで色差とは、白色の標準板との色差を意味する。
【表6】
【0049】
表6に示されるように、比較例1のフィルムコーティング錠と比較して、実施例1のフィルムコーティング錠は苛酷条件にて保存されても色の変化が抑制されていることがわかる。
【0050】
[錠剤の変色II]
実施例3 及び4 で得られたフィルムコーティング錠(未包装品)、比較例1 で得られたフィルムコーティング錠(包装品)を、苛酷条件(55℃/75%RH)にて保存した。0 時間経過時、1週間、2週間および4週間経過時のフィルムコーティング錠の色差 dE*(ab) をそれぞれ測定した。測定結果を表7に示した。
【表7】
【0051】
表7に示されるように、実施例3 及び4 のフィルムコーティング錠は、未包装であるにも係らず、比較例1の包装品よりも変色が抑制されていることがわかる。さらに、実施例3 および4 とを比較すると、結合剤であるポビドンの含有量が高すぎると(実施例3: 約2%、実施例4: 約4%)、錠剤の変色が生じやすくなることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に医薬組成物は、ボリコナゾールを含む錠剤であって、一錠あたりの重量とサイズが低減されている。そのため、それを服用する患者の負担を減らすことができ、服用コンプライアンスを高めることができる。