(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンベヤフレームの一端側に配置されるヘッドプーリ、及び前記コンベヤフレームの他端側に配置されるテールプーリに架設された無端ベルトを走行させ前記無端ベルトの表面を搬送面として搬送物を搬送するベルトコンベヤ装置用の駆動装置において、
前記無端ベルトの帰り側で前記無端ベルトの裏面が巻き掛けられることで回転駆動時に前記無端ベルトを走行させる駆動プーリと、
前記駆動プーリの中心軸を出力軸とし、前記駆動プーリを回転させる駆動モータと、
前記駆動モータを支持することで前記駆動プーリの中心軸を受け、前記駆動プーリより前記ヘッドプーリ寄りの前記コンベヤフレームから下に延設される位置で、回動部材支持軸を介して軸支される回動部材と、
を備え、
前記駆動プーリに巻き掛けられ、ヘッドプーリ側及びテールプーリ側にそれぞれ延びる前記無端ベルトの各々に、中心軸を含む前記駆動プーリと前記駆動モータと前記回動部材との重量を1/2ずつ受け持たせて下方へ引っ張り、
前記搬送面に載置される前記搬送物の重量や前記無端ベルトのコンベヤベッド及び各プーリとの摩擦抵抗に抗って、回転駆動する前記駆動プーリにより引っ張られる前記無端ベルトの帰り側の前記ヘッドプーリから前記駆動プーリまでの第1ベルト部に掛かる張力と、回転駆動する前記駆動プーリにより排出される前記テールプーリまでの第2ベルト部に掛かる張力との張力差が、前記回動部材支持軸に掛かる駆動モータトルク反力となり、
回転駆動する前記駆動プーリにより引っ張られて前記第1ベルト部が伸びることで増加する張力増加分をΔT(回転駆動する前記駆動プーリにより排出されて前記第2ベルト部が縮むことで減少する張力減少分と等値)とし、
中心軸を含む前記駆動プーリと前記駆動モータと前記回動部材との重量合計をWdとし、
前記駆動プーリの半径をRとし、
前記回動部材支持軸から前記駆動プーリの中心軸までの距離をr
と各々定義したときに、
張り側:前記第1ベルト部の張力 Tt=(Wd/2)+ΔT×(1+(R/r))
縮み側:前記第2ベルト部の張力 Ts=(Wd/2)−ΔT×(1−(R/r))
である関係となる前記駆動モータトルク反力が発生し、これを前記回動部材を下方へ回転させる回転駆動力に変換することで、前記無端ベルトをテークアップすることを特徴とするベルトコンベヤ装置用の駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のベルトコンベヤ装置について説明する。
図1に示すように、ベルトコンベヤ装置10は、2つのプーリ11,12、コンベヤフレーム13、無端ベルト14及び駆動装置20から構成される。このベルトコンベヤ装置10は、例えば食品、医薬品、化粧品や自動車部品などの軽量の搬送物(約10kgまでの搬送物)を搬送するベルトコンベヤ装置である。このベルトコンベヤ装置10は、搬送物を例えば
図1中y方向に搬送する。
【0018】
上述した2つのプーリ11,12のうち、搬送物の搬送方向(
図1中y方向)の下流側に配置されるプーリ11をヘッドプーリ11、搬送方向の上流側に配置されるプーリ12をテールプーリ12とそれぞれ称する。また、ヘッドプーリ11及びテールプーリ12に架設され、コンベヤフレーム13の上面ベッド部に緩み無く載置される無端ベルト14のうち、ヘッドプーリ11に向けて走行する前記ベッド部上にあり表面で搬送面をなす上部部分を往き側と称し、ヘッドプーリ11から折り返してベッド部の下方へ導かれ、テールプーリ12に向けて走行する下部部分を帰り側と称する。
【0019】
上述したヘッドプーリ11、テールプーリ12は、アルミニウムなどの金属パイプ短管の両端面を閉止する鏡板の中心に孔を開けて軸を嵌合するように形成される。またコンベヤフレーム13は、アルミニウムなどの金属材料を押し出し/引き抜き成形した材料などを組合せて、ボルト等で締結して形成される。なお、
図1においては、ベルトコンベヤ装置10を設置するための脚などの部品については記載を省略している。
【0020】
ヘッドプーリ11は、ヘッドプーリ11の軸方向が搬送方向と直交し且つコンベヤフレーム13の上面と平行な面上に含まれるように、コンベヤフレーム13の長手方向における一端側に配置される。このヘッドプーリ11は、軸受け部15,16を介してコンベヤフレーム13に軸着される。このヘッドプーリ11は、軸方向における中央部分に、溝部11aを有している。溝部11aは、ヘッドプーリ11の外周面の全周に亘って設けられている。溝部11aは、巻き掛けられる無端ベルト14の内周面で、且つ無端ベルト14の幅方向の中央部分に全周に亘って設けられる突条部14aが入り込む。
【0021】
テールプーリ12は、テールプーリ12の軸方向がヘッドプーリ11の軸方向と平行となるように、コンベヤフレーム13の長手方向における他端側に配置される。このテールプーリ12は、軸受け部17,18を介してコンベヤフレーム13に軸着される。このテールプーリ12は、ヘッドプーリ11と同様に、軸方向における中央部分に、溝部12aを有している。溝部12aは、テールプーリ12の外周面の全周に亘って設けられている。溝部12aは、巻き掛けられる無端ベルト14の内周面で、且つ無端ベルト14の幅方向の中央部分に全周に亘って設けられる突条部14aが入り込む。
【0022】
なお、上述したヘッドプーリ11及びテールプーリ12は、コンベヤフレーム13に軸着されると、各プーリの軸方向(
図1中x方向)において、ヘッドプーリ11の溝部11a、テールプーリ12の溝部12aの位置と、コンベヤフレーム13の上面に設けられた溝部13aの位置とが同位置となる。なお、コンベヤフレーム13の溝部13aは、走行する無端ベルト14の走行方向(
図1中y方向)に沿って、コンベヤフレーム13の上面に延設される。
【0023】
ベルトコンベヤ装置10は、コンベヤフレーム13に軸着されたヘッドプーリ11及びテールプーリ12に無端ベルト14が架設される。したがって、ヘッドプーリ11及びテールプーリ12に架設される無端ベルト14の往き側に位置するベルト部分の上面つまり表面が搬送物の搬送面となる。一方、ヘッドプーリ11及びテールプーリ12に架設された無端ベルト14の帰り側では、無端ベルト14は、駆動装置20のスナブプーリ31,32、駆動プーリ33に、スナブプーリ31、駆動プーリ33、スナブプーリ32の順で巻き掛けられる。
【0024】
図2から
図4に示すように、駆動装置20は、スナブプーリ31,32、駆動プーリ33、駆動モータ34、回動部材35及びサイドフレーム36,37を有している。ここで、サイドフレーム36,37は、コンベヤフレーム13の側部から下に延設される位置に配置され、コンベヤフレーム13に固定される。なお、
図2においては、サイドフレーム36,37をコンベヤフレーム13に固定するボルト及びナットについては記載を省略している。スナブプーリ31,32は、ベルトコンベヤ装置10の機長が極端に短くなった場合などは省略されても良い。
【0025】
スナブプーリ31は、駆動装置20をコンベヤフレーム13に取り付けたときに、ヘッドプーリ11側に位置するように、サイドフレーム36及びサイドフレーム37に軸着される。このスナブプーリ31は、ヘッドプーリ11によりテールプーリ12側に折り返された帰り側の無端ベルト14を、略水平から下向きに向くようにベルト表面側を巻き掛けて、駆動プーリ33に向けて折り返す。このスナブプーリ31は、無端ベルト14が巻き掛けられる円筒状のプーリ部31aと、スナブプーリ31の回転中心となる支軸31bと、プーリ部31aの両端部にそれぞれ内嵌されて設けられ、支軸31bが嵌合挿通されるベアリング31cとから構成される。そして、端部を面取りされた支軸31bを、後述するサイドフレーム36,37の切欠き部36cに回動不能に嵌合させる。つまり、スナブプーリ31は、無端ベルト14が走行するときには、プーリ部31aのみが回転するようになっている。
【0026】
スナブプーリ32は、駆動装置20をコンベヤフレーム13に取り付けたときに、テールプーリ12側に位置するように、サイドフレーム36及びサイドフレーム37に軸着される。このスナブプーリ32は、テールプーリ12によりヘッドプーリ11側に折り返された帰り側の無端ベルト14を、略水平から下向きに向くようにベルト表面側を巻き掛けて、駆動プーリ33に向けて折り返す。このスナブプーリ32は、無端ベルト14が巻き掛けられる円筒状のプーリ部32aと、スナブプーリ32の回転中心となる支軸32bと、プーリ部32aの両端部にそれぞれ内嵌されて設けられ、支軸32bが嵌合挿通されるベアリング32cとから構成される。そして、端部を面取りされた支軸32bを、後述するサイドフレーム36,37の切欠き部37cに回動不能に嵌合させる。つまり、スナブプーリ32は、無端ベルト14が走行するときには、プーリ部32aのみが回転するようになっている。
【0027】
駆動プーリ33は、無端ベルト14における搬送面とは反対側である裏側の面を外周面に対面させるように巻き掛けることができるように、搬送物の搬送方向において、スナブプーリ31とスナブプーリ32との間に位置するように配置される。また、駆動プーリ33は、軸方向の中心が、無端ベルト14の幅方向の中心と一致する位置に配置される。
【0028】
駆動プーリ33は、外周面において、駆動プーリ33の軸方向における中央部分に、溝部33aが全周に亘って設けられている。駆動プーリ33の溝部33aには、無端ベルト14を駆動プーリ33に巻き掛けたときに、無端ベルト14の裏面に設けられた突条部14aが挿入される。但し、無端ベルト14に突条部14aが設けられていない場合、溝部33aも不要である。
【0029】
駆動プーリ33の軸方向の一端側の中心部分には駆動プーリ33の中心軸と同軸となる挿入孔33bが設けられている。挿入孔33bは、平行キー40が挿入されるキー溝33cが設けられている。
【0030】
駆動モータ34は、モータブラケット38を介して回動部材35の下面に固定される。したがって、駆動モータ34は、回動部材35に対して吊設される。モータブラケット38はプレート状をしており、駆動プーリ33と面し且つ出力軸34aが突出する駆動モータ34の筐体面に、駆動プーリ33のすぐ近傍に取り付けられる。つまり、駆動モータ34は、出力軸34aに片持ちで嵌合される駆動プーリ33と面し且つ出力軸34aが突出する筐体面に、プレート状のモータブラケット38を取り付けて、モータブラケット38によって回動部材35の中央部の下面に吊設された状態で保持される。これにより、出力軸34aの長さ中間に搬送方向に対する材料の厚みによりリジッドな支点が形成でき、出力軸34aに係る曲げモーメントを最小にすることができる。また、支点になるモータブラケット38の駆動プーリ33の反対側に重量のある駆動モータ34が位置するので、駆動プーリ33に係るモータブラケット38との離れによるモーメントは、駆動モータ34の重力によるモータブラケット38との離れに起因するモーメントによりバランスするように働くこととなる。また、モータブラケット38は、厚みは薄いが、搬送方向に平行な幅寸法は稼げるので、その幅方向の部材によりねじれに強く、よって出力軸34aに掛かるモーメントに対して強い支点となる。
【0031】
駆動モータ34は、モータブラケット38に固定された状態で、その出力軸34aに駆動プーリ33を保持する。この駆動プーリ33を保持する構造は、以下に挙げられる。まず、駆動モータ34の出力軸34aを駆動プーリ33に設けられた挿入孔33bに挿入させ、駆動モータ34の出力軸34aに設けられたキー溝34bを、駆動プーリ33に設けられた挿入孔33bに設けられたキー溝33cに対峙させる。そして、キー溝34bとキー溝33cとが対峙することで生成される空間に平行キー40を挿入する。この平行キー40の挿入により、駆動モータ34の出力軸34aに対する駆動プーリ33の回転方向における相対位置が固定される。図示は省略するが、駆動プーリ33の外周面にはねじ孔が設けられている。したがって、キー溝34bとキー溝33cとが対峙することで生成される空間に平行キー40を挿入した後、駆動プーリ33の外周面に設けられたねじ孔に内ねじを螺合させ内ねじを締め付け、平行キー40をキー溝33c側に押し付ける。この内ねじの締め付けにより、駆動モータ34の出力軸34aに対する駆動プーリ33の軸方向における相対位置が固定される。
【0032】
回動部材35は、無端ベルト14の幅方向を長手方向としたプレート状の部材である。この回動部材35の長手方向における一端部には、長手方向に対して所定の角度傾斜する2つの支持片35a,35bが設けられ、これら支持片35a,35bが
図2中下方(−z方向)に90°折り曲げられている。同様にして、回動部材35の長手方向における他端部にも、長手方向に対して所定の角度傾斜する2つの支持片35c,35dが設けられ、
図2中下方(−z方向)に90°折り曲げられている。これら支持片35a,35b,35c,35dの先端部分には、開口41a,41b,41c,41dがそれぞれ設けられている。ここで、支持片35aに設けられる開口41aと支持片35cに設けられる開口41cは、見通しで中心軸が同軸となる開口となっている。また、支持片35bに設けられる開口41b及び支持片35dに設けられる開口41dも、見通しで中心軸が同軸となる開口となっている。
【0033】
上述した回動部材35は、サイドフレーム36,37の、駆動プーリ33よりヘッドプーリ11寄りのコンベヤフレーム13から下に延設される位置で、回動部材支持軸であるピン43を介して軸支される。回動部材35を軸支する方法としては、以下の方法が挙げられる。まず、回動部材35の支持片35aに設けられる開口41aに対して、回動部材35の長手方向における中心側からフランジ42を挿通させた後、ピン43を挿通させる。フランジ42に挿通されたピン43の先端は、サイドフレーム36の開口36aに挿通される。このピン43の先端には、ねじ部が形成されている。ピン43の先端をサイドフレーム36の開口36aに挿通させると、ピン43のねじ部がサイドフレーム36から突出するので、このねじ部にスペーサ44及びワッシャ45を取り付け、ナット46を螺合させる。
【0034】
同様にして、回動部材35の支持片35cに設けられる開口41cに対して、回動部材35の長手方向における中心側からフランジ42を挿通させた後、ピン43を挿通させる。フランジ42に挿通されたピン43の先端は、サイドフレーム37の開口37aに挿通される。このピン43の先端には、ねじ部が形成されている。ピン43の先端をサイドフレーム37の開口37aに挿通させると、ピン43のねじ部がサイドフレーム37から突出するので、ねじ部にスペーサ44及びワッシャ45を取り付け、ナット46を螺合させる。
【0035】
ここで、ピン43にナット46を螺合させた状態では、ピン43の円筒部分がフランジ42内に位置する。上述したように、支持片35aの開口41a及び支持片35cの開口41cはそれぞれ同軸に設けられている。したがって、サイドフレーム36,37に回動部材35を取り付けると、支持片35aの開口41a及び支持片35cの開口41cに、フランジ42を介してそれぞれ挿通されるピン43の円筒部を回動軸として、回動部材35が回動することが可能となる。
【0036】
サイドフレーム36,37は、上述したスナブプーリ31,32を軸着するためにも設けられる。サイドフレーム36の上端部で、且つ、
図2中y方向における両端部には、クランク状の切欠き部36c,36dがそれぞれ設けられる。また、同様にして、サイドフレーム37の上端部で、且つ、
図2中y方向における両端部には、クランク状の切欠き部37c,37dがそれぞれ設けられる。サイドフレーム36の切欠き部36cとサイドフレーム37の切欠き部37cには、スナブプーリ31の支軸31bが挿通される。また、サイドフレーム36の切欠き部36dとサイドフレーム37の切欠き部37dには、スナブプーリ32の支軸32bが挿通される。クランク状の切欠き部36c,36d,37c,37dとも、下段の水平部と上段の水平部とは、スナブプーリ31,32の支軸31b,32bの面取りされた2面が回転せずにわずかな隙間をすべって水平移動可能となっている。また、クランク状の切欠き部36c,36d,37c,37dとも、中央の縦方向の切欠き部では、支軸31b,32bの面取りされない曲面部分が余裕で通過できるよう少し間隔が広くなっている。
【0037】
これらサイドフレーム36,37の内側で、上述した切欠き部の上段の水平部に対応する位置には、テークアップ機構を構成するストッパボルト47a,47b,47c,47dが設けられる。例えばストッパボルト47aは、切欠き部36cの突き当て面に突き当てられたスナブプーリ31の支軸31cの
図2中左側端部の外周面に押し当てられる。また、ストッパボルト47cは、切欠き部37cの突き当て面に突き当てられたスナブプーリ31の支軸31cの
図2中右側端部の外周面に押し当てられる。ストッパボルト47a,47cの先端をスナブプーリ31の支軸31cの外周面に押し当てることで、
図2中y方向におけるスナブプーリ31の位置を固定する。
【0038】
また、ストッパボルト47bは、切欠き部36dの突き当て面に突き当てられたスナブプーリ32の支軸32cの
図2中左側端部の外周面に押し当てられる。また、ストッパボルト47dは、切欠き部37dの突き当て面に突き当てられたスナブプーリ32の支軸32cの
図2中右側端部の外周面に押し当てられる。ストッパボルト47b,47dの先端をスナブプーリ32の支軸32cの外周面に押し当てることで、
図2中y方向におけるスナブプーリ32の位置を固定する。
【0039】
なお、これらストッパボルト47a,47b,47c,47dの先端を対応するスナブプーリの支軸に押し当てることで、無端ベルト14に対して所定量の張力を付加することができる。ここで、ストッパボルトによって付加する張力としては、例えば無端ベルト14の加重の1〜2%であることが好ましい。
【0040】
ベルトコンベヤ装置の稼働時に無端ベルトに張力を掛ける原理を
図5から
図11を用いて説明する。以下では、ベルトコンベヤ装置の各部に対して、
図1〜
図4とは異なる符号を付して説明する。また、駆動モータの回転中心の高さ方向(z方向)の位置と、ブラケット(回動部材)の回転中心の高さ方向(z方向)の位置とが、同一位置に設定される場合で、さらに駆動装置の位置がコンベヤ機長の中央で、搬送物が機長の中央にある場合を例に挙げて説明する。ベルトコンベヤ装置50が稼働すると、無端ベルト51には、駆動装置(詳細には、駆動プーリ56、駆動モータ57及び回動部材61)の自重による成分、無端ベルト51の走行時に生じる搬送物60や無端ベルト51の荷重に基づく動摩擦抵抗成分、及び駆動モータ56の駆動時に駆動モータ56に作用する反力の成分が、無端ベルト51に掛かる張力となる。
【0041】
以下では、駆動装置の位置をコンベヤ機長の中央とした場合を説明するが、駆動装置の位置をコンベヤ機長の中央からヘッドプーリ側へ移動させた場合でも、回転駆動する駆動プーリ56により引っ張られる無端ベルト51の搬送物60からヘッドプーリ52を介して折り返される帰り側ベルトの駆動プーリ56までに掛かる張力によるベルト伸び量と、回転駆動する駆動プーリ56により排出される無端ベルト51の駆動プーリ56から帰り側ベルトがテールプーリ53を介して折り返され往き側ベルトとして搬送物60までの部分に掛かる張力によるベルト縮み量と、が同一となることで、無端ベルトの全体長が変化しないようにした場合も同様である。
(A)駆動装置の自重による成分
図5に示すように、ベルトコンベヤ装置50において、無端ベルト51は、ヘッドプーリ52及びテールプーリ53に巻き掛けられた後、スナブプーリ54,55のそれぞれに巻き掛けられる。スナブプーリ54,55に巻き掛けられた無端ベルト51は下方に折り返された後、駆動プーリ56に巻き掛けられる。ここで、駆動装置を構成する駆動プーリ56及び駆動モータ57の自重をWdとし、スナブプーリ54及び駆動プーリ56間のベルト部分(張り側のベルト部)に掛かる張力をTt1、駆動プーリ56及びスナブプーリ55間のベルト部分(緩み側のベルト部)に掛かる張力をTs1とする。張り側のベルト部に掛かる張力Tt1と、緩み側のベルト部に掛かる張力Ts1とは等しいことから、張り側のベルト部に掛かる張力Tt1、緩み側のベルト部に掛かる張力Ts1は、(1)式で示される。
【0042】
Tt1=Ts1=Wd/2・・・(1)
(B)無端ベルトの走行時に生じる搬送物や無端ベルトの荷重に基づく動摩擦抵抗成分
図6に示すように、ベルトコンベヤ装置50を駆動したときに、張り側のベルト部に掛かる張力T1と、縮み側(緩み側)のベルト部に掛かる張力T2との関係は(2)式で示される。
【0043】
T1=T
0+ΔT,T2=T
0−ΔT・・・(2)
ここで、T
0は、ベルトコンベヤ装置50の製造時(つまり組み込まれてベルトを張った直後で停止している状態)に無端ベルト51に掛かる張力である。また、ΔTは、無端ベルト51や、搬送される搬送物60の荷重や頭尾部プーリの回転抵抗に基づいた、駆動プーリ56の駆動時にベルトの伸び縮みによって生じる張力の変動分である。
図7は、無端ベルト51に掛かる荷重と、張り側のベルト部に掛かる張力T1及び緩み側のベルト部に掛かる張力T2との関係を示すグラフである。ベルトコンベヤ装置50を稼働させると、無端ベルト51には、無端ベルト51の自重や、搬送される搬送物60からの荷重に基づいた張力の変動が生じる。この張力の変動分ΔTは、搬送する搬送物の自重が大きい程、大きな値となる。したがって、ベルトコンベヤ装置50の稼働時に張り側のベルト部に働く張力をTt2、ベルトコンベヤ装置50の稼働時に緩み側のベルト部に働く張力をTs2とすると、張力Tt2及び張力Ts2は以下の(3)式で表すことができる。
【0044】
Tt2=ΔT,Ts2=−ΔT・・・(3)
(C)駆動モータ57の駆動時に駆動モータ57に作用する反力の成分
図8に示すように、ベルトコンベヤ装置50を稼働させたときに無端ベルト51に掛かる慣性モーメントM1は、無端ベルト51が走行するときの有効張力をTe、駆動プーリ56の半径をRとすると、(4)式で表すことができる。
【0045】
M1=Te×R・・・(4)
駆動モータ57は、符号61aを回動中心として回動する回動部材61に固定される。したがって、駆動モータ57を駆動させたときには、回動部材61には、駆動プーリ56の回転方向とは逆方向に、駆動モータ57の慣性モーメントM1と同一の大きさの慣性モーメントM2が発生する。回動部材61の回動中心61aから駆動モータ57の回転中心57aまでの半径をr、無端ベルトを押し下げる力をfとすると、回動部材61に掛かる慣性モーメントM2は、(5)式で表すことができる。
【0046】
M2=f×r・・・(5)
上述したように、回動部材61に掛かる慣性モーメントM2は、駆動モータ57の慣性モーメントM1と同一の大きさとなる。したがって、無端ベルト51を押し下げる力fは、(4)式及び(5)式から、以下の(6)式にて表すことができる。
f=(R/r)×Te・・・(6)
上述したように、張り側のベルト部に掛かる張力の大きさと、緩み側のベルト部に掛かる張力の大きさは等しい。したがって、張り側のベルト部に掛かる張力をTt3、緩み側のベルト部に掛かる張力をTs3とすると、(7)式が成り立つ。
【0047】
Tt3=Ts3=f/2・・・(7)
ここで、無端ベルト51が走行するときの有効張力Teは、(8)式で表すことができる。
【0048】
Te=Tt−Ts=2ΔT・・(8)
したがって、(6)式及び(8)式を(7)式に代入することで、張り側のベルト部に掛かる張力Tt3、緩み側のベルト部に掛かる張力Ts3は、(9)式で表すことができる。
【0049】
Tt3=Ts3=f/2=ΔT×(R/r)・・・(9)
上述したように、無端ベルト51の張り側のベルト部及び緩み側のベルト部には、上述した(A)から(C)に示す成分の張力が加わる。したがって、張り側のベルト部に掛かる張力Ttは、(10)式で表すことができる。
【0050】
Tt=Tt1+Tt2+Tt3=(Wd/2)+ΔT+ΔT×(R/r)
=(Wd/2)+ΔT(1+(R/r))・・・(10)
同様にして、緩み側のベルト部に掛かる張力Tsは、(11)式で表すことができる。
【0051】
Ts=Ts1+Ts2+Ts3=(Wd/2)−ΔT+ΔT×(R/r)
=(Wd/2)−ΔT(1−(R/r))・・・(11)
例えば駆動プーリ56の半径Rと、回動部材61の回動中心61aから駆動モータ57の回転中心57aまでの距離rとが等しくなる場合、R/r=1となる。したがって、(10)式及び(11)式は、(12)式及び(13)式で表すことができる。
【0052】
Tt=(Wd/2)+2×ΔT・・・(12)
Ts=Wd/2 ・・・(13)
図9は、R/r=1となるときの、無端ベルト51に掛かる荷重と、張り側のベルト部に掛かる張力Tt及び緩み側のベルト部に掛かる張力Tsとの関係を示すグラフである。搬送する搬送物60の無端ベルト51への荷重が大きくなるにしたがって、張り側のベルト部に掛かる張力Ttも大きくなる。一方、緩み側のベルト部に掛かる張力Tsは、ベルトコンベヤ装置50にて搬送物60を搬送する場合であっても、搬送しない場合であっても一定の値(Wd/2)となる。
【0053】
また、回動部材61の回動中心61aから駆動モータ57の回転中心57aまでの距離rが駆動プーリ56の半径Rの2倍となる場合、R/r=0.5となる。したがって、上述した(10)式及び(11)式は、(14)式及び(15)式で表すことができる。
【0054】
Tt=(Wd/2)+1.5×ΔT・・・(14)
Ts=(Wd/2)−0.5×ΔT・・・(15)
図10は、R/r=0.5となるときの、無端ベルト51に掛かる荷重と、張り側のベルト部に掛かる張力Tt及び緩み側のベルト部に掛かる張力Tsとの関係を示すグラフである。搬送する搬送物60の無端ベルト51への荷重が大きくなるに従い、張り側のベルト部に掛かる張力Ttは、大きくなる。一方、搬送する搬送物60の無端ベルト51への荷重が大きくなるに従い、緩み側のベルト部に掛かる張力Tsは小さくなる。
【0055】
次に、駆動プーリ56の半径Rと、回動部材61の回動中心61aから駆動モータ57の回転中心57aまでの距離rの関係について考える。上述した(6)式に示すように、無端ベルト51を押し下げる力fは、無端ベルト51に掛かる張力Teが一定であれば、駆動プーリ56の半径Rと回動部材61の回動中心61aから駆動モータ57の回転中心57aまでの距離rの比(R/r)に依存する。比(R/r)が小さい、言い換えれば回動部材61の回動中心61aから駆動モータ57の回転中心57aまでの距離rが大きければ大きいほど、無端ベルト51を押し下げる力fは小さくなる。無端ベルト51を押し下げる力fが小さいと、駆動モータ57の駆動時に、無端ベルト51をz方向に押し付けることができなくなり、駆動プーリ56と無端ベルト51との間でスリップが生じることになる。したがって、搬送する搬送物60の荷重や、駆動モータ57の回転力を考慮して、駆動プーリ56の半径Rや、回動部材61の回動中心61aから駆動モータ57の回転中心57aまでの距離rを設定することが好ましい。
【0056】
図11は、無端ベルト51に掛かる荷重と、張り側のベルト部に掛かる張力及び緩み側のベルト部に掛かる張力との関係を示すグラフである。ここで、符号62に示す線は、駆動モータを固定した場合の張り側のベルト部に掛かる張力の変化を示す線である。符号63に示す線は、駆動モータを固定した場合の緩み側のベルト部に掛かる張力の変化を示す線である。符号64に示す線は、駆動モータを固定した場合の張り側のベルト部に掛かる張力と緩み側のベルト部に掛かる張力との合計値の変化を示す線である。
【0057】
また、符号65に示す線は、駆動プーリ56及び駆動モータ57を回動させる場合の張り側のベルト部に掛かる張力を示す線である。符号66に示す線は、駆動プーリ56及び駆動モータ57を回動させる場合の緩み側のベルト部に掛かる張力の変化を示す線である。符号67に示す線は、駆動プーリ56及び駆動モータ57を回動させる場合の張り側のベルト部に掛かる張力と緩み側のベルト部に掛かる張力との合計値の変化を示す線である。
【0058】
図11に示すように、駆動モータを固定したベルトコンベヤ装置の無端ベルトに掛ける張力Tfは、駆動プーリ及び駆動モータを回動させるベルトコンベヤ装置の無端ベルトに掛ける張力Tmよりも大きく設定する必要がある。言い換えれば、本実施形態に示すベルトコンベヤ装置では、駆動モータを固定したベルトコンベヤ装置に比べて、無端ベルトに掛ける張力を低く設定することができる。また、駆動モータを固定したベルトコンベヤ装置は、無端ベルトに掛かる荷重が例えばW
0を超えると、回転する駆動プーリと無端ベルトとの間でスリップが生じ、安定して無端ベルトを走行させることができなくなる。一方、本実施形態に示すベルトコンベヤ装置は、無端ベルトに掛かる荷重が増えた場合であっても、張り側のベルト部や無端ベルト全体に掛かる張力は増加するが、回転駆動する駆動プーリと無端ベルトとの間でスリップは発生せず、安定して無端ベルトを走行させることができる。
【0059】
このように、本実施形態に示すベルトコンベヤ装置においては、従来のベルトコンベヤ装置に対して、製造時に無端ベルトに掛ける張力を低く設定でき、また、ベルトコンベヤ装置の稼働時に安定して搬送物を搬送させることができるという利点がある。
【0060】
図12(a)、
図12(b)に示すように、ベルトコンベヤ装置10の駆動モータ34を駆動させると、駆動プーリ33には、無端ベルト14を押し下げる(図中u方向に押圧する)力fが駆動モータ34に加わる。この無端ベルト14を押し下げる力fによって、駆動モータ34及び回動部材35がピン43を回動中心にして回動する。その結果、駆動プーリ33が回動することで、無端ベルト14に対して張力を掛けることが可能となる。
【0061】
また、従来のベルトコンベヤ装置では、テークアップ機構を構成するテークアップボルトをスナブプーリの回転軸に突き当てて、無端ベルトに張力を掛けている。一方、本実施形態に示すベルトコンベヤ装置10では、非稼働時には、駆動モータ34及び駆動プーリ33の自重のみが無端ベルト14に張力として掛かる。したがって、本実施形態に示すベルトコンベヤ装置は、従来のベルトコンベヤ装置に比べて、非稼働時に無端ベルト14に掛かる張力を抑えることができる。その結果、無端ベルト14が巻き掛けられるヘッドプーリ11、テールプーリ12、スナブプーリ31,32及び駆動プーリ33のそれぞれに影響する応力を抑えることができ、これらプーリの消耗を抑えることができる。
【0062】
また、従来のベルトコンベヤ装置においては、例えばテークアップボルトなどを用いてテークアッププーリを無端ベルトに押し当てて無端ベルトに張力を掛けている。テークアップボルトは、締め付けることでテークアッププーリを無端ベルトに押し当てることが可能となるが、このテークアップボルトの締め付け具合は難しく、個人差がある。また、駆動プーリを回転させたときに無端ベルトとの間のスリップの発生を防止するためには、テークアッププーリを無端ベルトに強く押し当てる必要がある。その結果、テークアップボルトを締め付けすぎ、無端ベルト14に必要以上の張力を付加してしまうことが多い。
【0063】
しかしながら、本実施形態に示すベルトコンベヤ装置では、駆動モータ34を駆動させたときに回転する無端ベルト14の張り側ベルト部に掛かる張力と、緩み側ベルト部に掛かる張力との差を利用して、駆動プーリ33を無端ベルト14に押し付けるので、ベルトコンベヤ装置10の製造時に、テークアップボルトの締め付けなど、無端ベルト14に張力を掛ける作業を行わずに済むという利点がある。
【0064】
本実施形態では、搬送物の搬送方向をy方向とすることを前提にしているため、回動部材35に設けられる支持片35a,35b,35c,35dのうち、支持片35aに設けられる開口41a及び支持片35cに設けられる開口41cを用いて、回動部材35をサイドフレーム36,37に軸支させているが、搬送物の搬送方向が−y方向とする場合には、回動部材35に設けられる支持片35a,35b,35c,35dのうち、支持片35bに設けられる開口41b及び支持片35dに設けられる開口41dを用いて、回動部材35をサイドフレーム36,37に軸支させればよい。この場合、プーリ12がヘッドプーリとなり、また、プーリ11がテールプーリとなる。
【0065】
本実施形態では、駆動プーリ33を駆動モータ34の出力軸34aに固定した駆動装置20を例示しているが、これに限定される必要はなく、駆動モータが内蔵されたプーリを駆動プーリとして用いた駆動装置であってもよい。以下、駆動モータが内蔵されたプーリをモータプーリと称する。この場合、
図13に示すように、この駆動装置69では、モータプーリ70は、回転軸70aの両端部をブラケット71,72により軸支した状態で回動部材35に固定される。つまり、モータプーリ70は回動部材35に吊設される。
図13においては、モータプーリ70の駆動モータ70aを点線で示している。このように、モータプーリ70を用いることで、駆動装置の構成を簡易なものとすることができる。なお、
図1から
図4に示す駆動装置と、
図13に示す駆動装置との相違点は、
図1から
図4に示す駆動装置では、回動部材35に対してモータブラケット38を用いて吊設した駆動モータ34の出力軸34aに駆動プーリ33を固定しているのに対して、
図13に示す駆動装置では、モータプーリ70をブラケット71,72を用いて回動部材に吊設する点である。したがって、
図1〜
図4と同一の構成に対しては、
図13において同一の符号を付している。この場合も、モータプーリ70をブラケット71,72を用いて回動部材35に吊設する、
図13に示す駆動装置を用いた場合であっても、本実施形態の駆動装置と同一の作用効果を有している。
【0066】
本実施形態では、ヘッドプーリ11及びテールプーリ12に架設した無端ベルト14の帰り側を、スナブプーリ31,32によって駆動プーリ33に向けて折り返すベルトコンベヤ装置10を例示しているが、これに限定される必要はなく、ヘッドプーリ及びテールプーリに架設した無端ベルトの帰り側を駆動プーリに巻き掛けたベルトコンベヤ装置に、本実施形態の構成を用いることも可能である。
【0067】
図14及び
図15は、ヘッドプーリ及びテールプーリに架設した無端ベルトの帰り側を駆動プーリに巻き掛けたベルトコンベヤ装置の構成を示す図である。このベルトコンベヤ装置90は、2つのベルトコンベヤ装置の間を中継するためのベルトコンベヤ装置である。このベルトコンベヤ装置90は、ヘッドプーリ91、テールプーリ92が、コンベヤフレーム93に、又はサイドフレーム94,95に軸支される。コンベヤフレーム93の下面には、yz平面における断面が略S字形状からなるブラケット96の一端部がボルトにより固定される。そして、このブラケット96の他端部には、蝶番97が固定される。なお、この蝶番97は、2枚の羽部97a,97bと、軸部97cとから構成される。この蝶番97は、例えば軸筒部97cがヘッドプーリ91側に位置した状態で、一方の羽部97aがブラケット96に、他方の羽部97bがモータブラケット98にそれぞれ固定される。したがって、モータブラケット98に固定される駆動モータ99や、駆動モータ99の出力軸に固定される駆動プーリ100は、それぞれモータブラケット98によって吊設される。このベルトコンベヤ装置90の場合、蝶番97の構成を設けることで、モータブラケット98をw方向に回動させることが可能となる。このベルトコンベヤ装置においても、その稼働時に、駆動プーリ100がw方向に回動するので、無端ベルト101に対して搬送物を搬送する際に必要となる張力を適切に掛けることが可能となる。したがって、このような構成のベルトコンベヤ装置においても、本実施形態と同様の効果を有することができる。