特許第6367050号(P6367050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367050
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】X線管装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/00 20060101AFI20180723BHJP
   H01J 35/16 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01J35/00 Z
   H01J35/16
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-175400(P2014-175400)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-51560(P2016-51560A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】東芝電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿武 秀郎
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−007100(JP,U)
【文献】 特開2010−211939(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0096037(US,A1)
【文献】 米国特許第05876229(US,A)
【文献】 米国特許第04577339(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J35/00−35/32
H05G1/00−2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するハウジングと、前記ハウジング内に充填された絶縁油と、前記開口を液密に閉塞する接続端子部と、前記ハウジングに収容され電線を介して前記接続端子部に接続され前記電線を介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、を備え、
前記接続端子部は、
ポリブチレンテレフタレート樹脂を利用して形成され貫通孔を有する端子支持体と、
前記電線に接続され前記貫通孔に挿通された端子と、
前記ハウジングの内部にて前記端子支持体の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成され前記貫通孔を全周に亘って取囲んだ皮膜と、
エポキシ樹脂を利用して形成され前記貫通孔を取囲む全域に設けられ前記ハウジングの内部にて前記皮膜及び端子にそれぞれ接着され前記貫通孔と前記端子との間の隙間を全周に亘って閉塞した閉塞部材と、を備えるX線管装置。
【請求項2】
前記閉塞部材は、前記端子と前記電線との接続部を埋め尽くしている請求項1に記載のX線管装置。
【請求項3】
前記ハウジングの内部にて前記端子支持体の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成され前記皮膜から外れて位置した他の皮膜と、
ポリブチレンテレフタレート樹脂を利用して形成され前記ハウジングの内部にて前記端子を覆ったカバー部材と、
前記カバー部材の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成された第3の皮膜と、
エポキシ樹脂を利用して形成されそれぞれ前記他の皮膜及び第3の皮膜に接着され前記他の皮膜及び第3の皮膜とともに前記カバー部材を前記端子支持体に接着させる接着部材と、をさらに備える請求項1に記載のX線管装置。
【請求項4】
開口を有するハウジングと、前記ハウジング内に充填された絶縁油と、前記開口を液密に閉塞する接続端子部と、前記ハウジングに収容され電線を介して前記接続端子部に接続され前記電線を介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、を備え、
前記接続端子部は、
ポリブチレンテレフタレート樹脂を利用して形成され貫通孔を有する端子支持体と、
前記電線に接続され前記貫通孔に挿通された端子と、
前記貫通孔を取囲み前記端子支持体と前記端子との間に介在したOリングと、
前記ハウジングの内部にて前記端子支持体の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成された皮膜と、
ポリブチレンテレフタレート樹脂を利用して形成され前記ハウジングの内部にて前記端子を覆ったカバー部材と、
前記カバー部材の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成された他の皮膜と、
エポキシ樹脂を利用して形成されそれぞれ前記皮膜及び他の皮膜に接着され前記皮膜及び他の皮膜とともに前記カバー部材を前記端子支持体に接着させる接着部材と、を備えるX線管装置。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂は、湿気硬化型ポリウレタン樹脂である請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線管装置。
【請求項6】
前記湿気硬化型ポリウレタン樹脂は、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂である請求項5に記載のX線管装置。
【請求項7】
前記一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマである溶質と、有機溶剤からなる溶媒と、から構成された樹脂である請求項6に記載のX線管装置。
【請求項8】
前記一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートである溶質と、有機溶剤からなる溶媒と、から構成された樹脂である請求項6に記載のX線管装置。
【請求項9】
前記ポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネートである請求項8に記載のX線管装置。
【請求項10】
前記負荷部は、X線管である請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線管装置。
【請求項11】
陰極、前記陰極から電子ビームが照射されることによりX線を放出する陽極ターゲット、前記陽極ターゲットを回転自在に支持する陽極ターゲット回転機構、並びに前記陰極、陽極ターゲット及び陽極ターゲット回転機構を収容した真空外囲器を有し、前記ハウジングに収容されたX線管をさらに備え、
前記負荷部は、前記陽極ターゲット回転機構を回転させるための推進力を発生する回転駆動部である請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線管装置。
【請求項12】
陰極、前記陰極から電子ビームが照射されることによりX線を放出する陽極ターゲット、並びに前記陰極及び陽極ターゲットを収容した真空外囲器を有し、前記ハウジングに収容されたX線管をさらに備え、
前記負荷部は、前記電子ビームを偏向させる偏向部である請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線管装置は、X線管と、X線管を収納し開口を有するハウジングと、X線管とハウジングとの間の空間に充填された絶縁油と、ハウジングに取付けられ上記開口を液密に閉塞する接続端子部と、を備えている。接続端子部は、エポキシ樹脂を利用して形成され貫通孔を有する端子支持体と、上記貫通孔に挿通された端子と、を有している。上記端子は電線を介してX線管に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2588401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、安価であり信頼性に優れるX線管装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るX線管装置は、
開口を有するハウジングと、前記ハウジング内に充填された絶縁油と、前記開口を液密に閉塞する接続端子部と、前記ハウジングに収容され電線を介して前記接続端子部に接続され前記電線を介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、を備え、
前記接続端子部は、
ポリブチレンテレフタレート樹脂を利用して形成され貫通孔を有する端子支持体と、
前記電線に接続され前記貫通孔に挿通された端子と、
前記ハウジングの内部にて前記端子支持体の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成され前記貫通孔を全周に亘って取囲んだ皮膜と、
エポキシ樹脂を利用して形成され前記貫通孔を取囲む全域に設けられ前記ハウジングの内部にて前記皮膜及び端子にそれぞれ接着され前記貫通孔と前記端子との間の隙間を全周に亘って閉塞した閉塞部材と、を備える。
【0006】
また、一実施形態に係るX線管装置は、
開口を有するハウジングと、前記ハウジング内に充填された絶縁油と、前記開口を液密に閉塞する接続端子部と、前記ハウジングに収容され電線を介して前記接続端子部に接続され前記電線を介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、を備え、
前記接続端子部は、
ポリブチレンテレフタレート樹脂を利用して形成され貫通孔を有する端子支持体と、
前記電線に接続され前記貫通孔に挿通された端子と、
前記貫通孔を取囲み前記端子支持体と前記端子との間に介在したOリングと、
前記ハウジングの内部にて前記端子支持体の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成された皮膜と、
ポリブチレンテレフタレート樹脂を利用して形成され前記ハウジングの内部にて前記端子を覆ったカバー部材と、
前記カバー部材の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成された他の皮膜と、
エポキシ樹脂を利用して形成されそれぞれ前記皮膜及び他の皮膜に接着され前記皮膜及び他の皮膜とともに前記カバー部材を前記端子支持体に接着させる接着部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示したX線管装置の一部を拡大して示す断面図であり、ハウジング本体、X線放射窓、ゴム部材、ねじ、及びX線遮蔽部を示す図である。
図3図3は、図1に示したX線管を示す断面図である。
図4図4は、図1に示したX線管装置の一部を拡大して示す他の断面図であり、陽極用のリセプタクル及びケーブルを示す図である。
図5図5は、図1に示したX線管装置の一部を拡大して示す他の断面図であり、陰極用のリセプタクル及びケーブルを示す図である。
図6図6は、図1に示したX線管装置の一部を拡大して示す他の断面図であり、ステータコイル用の接続端子部及びケーブルを示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係るX線管装置の一部を拡大して示す断面図であり、陽極用のリセプタクル及びケーブルを示す図である。
図8図8は、第3の実施形態に係るX線管装置の一部を拡大して示す断面図であり、陽極用のリセプタクル及びケーブルを示す図である。
図9図9は、比較例1に係るX線管装置の一部を拡大して示す断面図であり、陽極用のリセプタクル及びケーブルを示す図である。
図10図10は、上記比較例1に係るX線管装置の一部を拡大して示す他の断面図であり、ステータコイル用の接続端子部及びケーブルを示す図である。
図11図11は、比較例2に係るX線管装置の一部を拡大して示す断面図であり、陽極用のリセプタクル及びケーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
始めに、本発明の実施形態の基本構想について説明する。
X線管装置は、X線管と、X線管を収納し開口を有するハウジングと、X線管とハウジングとの間の空間に充填された絶縁油と、ハウジングに取付けられ上記開口を液密に閉塞する接続端子部と、を備えている。接続端子部は、電気絶縁性樹脂を利用して形成され貫通孔を有する端子支持体と、上記貫通孔に挿通された端子と、を有している。
【0009】
端子支持体に利用する電気絶縁性樹脂としては、エポキシ(EP)樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、不飽和ポリエステル(UP)樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性の樹脂を挙げることができる。何れの樹脂も、端子に対する接着性に優れ、耐絶縁油性、絶縁性及び耐熱性を有している。
【0010】
一方、上記樹脂は、熱硬化性樹脂であるため、成形性が悪いと言う問題を有している。熱硬化性樹脂を利用する場合、例えば、射出成形による端子支持体の作製の歩留りが低下するため、端子支持体を安価に製造する上で障害となっている。また、上記樹脂は、高価であると言う問題も有している。
【0011】
ところで、近年、一般撮影に使用されるX線管装置において、X線管装置の低コスト化が強く求められている。このため、接続端子部を低コストで製造することができる材料を利用して端子支持体を形成することが好ましい。
【0012】
そこで、端子支持体に利用する材料として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を挙げることができる。PBT樹脂は、エンジニアリングプラスチックであり、熱可塑性の樹脂であり、耐熱性、耐絶縁油性に優れているとともに、容易にリサイクル可能であるため環境性能が優れている。また、PBT樹脂は、材料コストが低く、射出成形で端子支持体を、端子と一体に、かつ安価に成形することができ得る。接続端子部の製造コストの低減を図ることができる。このため、PBT樹脂は、端子支持体の材料として最適な材料である。なお、接続端子部の端子は、銅や黄銅のような良導性(電気良導性)の金属を利用して形成されている。
【0013】
しかしながら、本願発明者の経験上、PBT樹脂と金属(端子)との接着強度が、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)と金属(端子)との接着強度に比べて劣ることが分かっている。そのため、PBT樹脂を利用して端子支持体を形成した場合、端子と端子支持体との間の界面に絶縁油の第1リークパスが形成され、上記第1リークパスを伝って絶縁油がハウジングの外部に漏れるという不具合が発生する恐れがある。
【0014】
また、ハウジングの外部への絶縁油の漏洩を防止するため、端子と端子支持体との間の界面をエポキシ樹脂のようなポッティング材でシーリングする手段を採ることが考えられる。しかし、本願発明者の経験上、PBT樹脂を利用した端子支持体と、エポキシ樹脂を利用したポッティング材と、の接着強度が低いことが分かっている。そのため、ポッティング材による十分なシーリング効果が得られず、端子支持体とポッティング材との間の界面に絶縁油の第2リークパスが形成され、上記第2リークパス及び第1リークパスを伝って絶縁油がハウジングの外部に漏れるという不具合が発生する恐れがある。
【0015】
このため、PBT樹脂を利用して安価にX線管装置を形成する場合においても、接続端子部の信頼性を確保できる技術が求められている。
そこで、本発明の実施形態においては、絶縁油の漏洩の原因を解明し、この漏洩の問題を解決することにより、安価であり信頼性に優れるX線管装置を得ることができるものである。次に、上記漏洩の問題を解決するための手段及び手法について説明する。
【0016】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0017】
まず、第1の実施形態に係るX線管装置について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図である。
図1に示すように、X線管装置10は、大まかにハウジング20と、ハウジング20内に収納された回転陽極型のX線管30と、X線管30とハウジング20との間の空間に充填された絶縁油7と、高電圧絶縁部材6と、回転駆動部としてのステータコイル9と、ケーブル210,220,230と、リセプタクル300,400と、接続端子部600と、を備えている。
【0018】
X線管装置10は、図示しない循環冷却システムをさらに備えていてもよい。この場合、ハウジング20には、図示しない絶縁油7の導入口及び排出口が形成されている。循環冷却システムは、例えば、ハウジング20内の絶縁油7を放熱及び循環させる冷却器と、冷却器をハウジング20の導入口及び排出口に液密及び気密に連結する導管(ホースなど)とを備えている。冷却器は、循環ポンプ及び熱交換器を有している。循環ポンプは、ハウジング20側から取り入れた絶縁油7を熱交換器に吐出し、絶縁油7の流れをハウジング20内に作り出す。熱交換器は、ハウジング20及び循環ポンプ間に連結され、絶縁油7の熱を外部に放出する。
【0019】
ハウジング20は、筒状に形成されたハウジング本体20eと、蓋部(側板)20f、20g、20hとを有している。ハウジング本体20e、蓋部20f、20g、20hは、金属材料又は樹脂材料で形成されている。この実施形態において、ハウジング本体20e、蓋部20f、20g、20hはアルミニウム合金を用いた鋳物で形成されている。樹脂材料を使用する場合は、ねじ部など強度を必要とする個所や、樹脂の射出成形で成形し難い個所、またハウジング20の外部への電磁気ノイズの漏洩を防止する図示しない遮蔽層など、部分的に金属を併用しても良い。
【0020】
後述する高電圧供給端子44が位置する側のハウジング本体20eの開口部には、環状の段差部が形成されている。上記段差部の内周面には、環状の溝部が形成されている。X線管装置の管軸に沿った方向において、蓋部20fの周縁部はハウジング本体20eの段差部に接触している。ハウジング本体20eの上記溝部にはC形止め輪20iが嵌合されている。
【0021】
C形止め輪20iは、管軸に沿った方向における、ハウジング本体20eに対する蓋部20fの位置を規制している。この実施形態において、蓋部20fのがたつきを防止するため、蓋部20fの位置は固定されている。高電圧供給端子44が位置する側のハウジング本体20eの開口部は、蓋部20f及びC形止め輪20iなどにより液密に閉塞されている。
【0022】
ゴム部材2aはOリングを形成している。ゴム部材2aはハウジング本体20eと蓋部20fとの間に設けられている。ゴム部材2aは、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を有している。
【0023】
後述する高電圧供給端子54が位置する側のハウジング本体20eの開口部の内周面には、環状の溝部が形成されている。蓋部20gはハウジング本体20eの内部に位置している。蓋部20hは蓋部20gに対向している。蓋部20gは、絶縁油7が出入りする開口部20kを有している。蓋部20hには、雰囲気としての空気が出入りする通気孔20mが形成されている。
【0024】
ハウジング本体20eの上記溝部にはC形止め輪20jが嵌合されている。C形止め輪20jは、蓋部20hがゴム部材2bの周縁部(シール部)へ応力を加えている状態を保持している。ゴム部材2bのシール部はOリングのように形成されている。上記のことから、高電圧供給端子54が位置する側のハウジング本体20eの開口部は、蓋部20g、蓋部20h、C形止め輪20j及びゴム部材2bなどにより液密に閉塞されている。
【0025】
ゴム部材2bのシール部は、ハウジング本体20eと蓋部20gと蓋部20hとの間に設けられている。ゴム部材2bは、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を有している。
【0026】
この実施形態において、ゴム部材2bはゴムベローズ(ゴム膜)であり、絶縁油7に接している。ゴム部材2bは、ハウジング20内において、蓋部20g及び蓋部20hで囲まれた領域を、第1空間と、第2空間とに仕切っている。第1空間は、開口部20kと繋がった空間であり、絶縁油7が存在する空間である。第2空間は、通気孔20mと繋がった空間であり、外気が存在する空間である。ゴム部材2bは、絶縁油7の体積変化を吸収し、絶縁油7の圧力調整を行っている。
【0027】
図2は、図1に示したX線管装置10の一部を拡大して示す図であり、ハウジング本体20e、X線放射窓20w、ゴム部材2c、ねじ20s、及びX線遮蔽部520,540を示す図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、ハウジング本体20eは、X線透過領域R1に対向したX線放射口20oを有している。X線放射口20oは、ハウジング本体20eの一部を貫通して形成されている。ハウジング20は、X線放射窓20wを有している。X線放射窓20wは、X線を透過しハウジング20外部に放射する。
【0029】
なお、後述するX線遮蔽部520及び540は、X線放射口20oにおけるハウジング20外部へのX線の放射を妨げることのないように設けられている。このため、X線遮蔽部540は、X線放射口20oの側縁に設けられている。
【0030】
X線放射窓20wは、ハウジング20の外側に位置している。X線放射窓20wは、機械的強度の高い材料を利用して形成することができる。この実施形態において、X線放射窓20wは、アルミニウムを利用して形成されているが、他の金属材料や樹脂などを利用して形成することも可能である。X線放射窓20wは凹型形状を有し、X線管30とX線放射窓20wとの間隔の低減を図っている。
【0031】
X線放射窓20wに対向したハウジング本体20eの外壁には、取付け面が形成されている。X線放射口20oを囲むようにハウジング本体20eの取付け面には枠状の溝部が形成されている。X線放射窓20wは、上記取付け面に対向した状態で、上記取付け面に接触され、締め具としてのねじ20sによりハウジング本体20eに固定されている。ねじ20sは、X線放射窓20wに形成された貫通孔を通り、ハウジング本体20eに形成されたねじ穴に締め付けられている。X線放射窓20wはX線放射口20oを閉塞している。
【0032】
ゴム部材2cはOリングを形成している。ゴム部材2cは、ハウジング本体20eの取付け面に形成された溝部に設けられている。ゴム部材2cは、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を有している。
【0033】
図3は、図1に示したX線管30を示す断面図である。
図1及び図3に示すように、X線管30は、真空外囲器31を備えている。真空外囲器31は、真空容器32を有している。真空容器32は、例えば、ガラス、又は銅、ステンレス及びアルミニウム等の金属で形成されている。この実施形態において、真空容器32はガラスで形成されている。なお、真空容器32を金属で形成する場合、真空容器32は、X線透過領域R1に対向した開口を有している。そして、真空容器32の開口は、X線を透過する材料としてのベリリウムで形成されたX線透過窓で気密に閉塞されている。真空外囲器31の一部は、高電圧絶縁部材50で形成されている。本実施形態において、高電圧絶縁部材50は、電気絶縁性のガラスで形成されている。
【0034】
X線管30は、陽極ターゲット35及び陰極36を有している。
陽極ターゲット35は、真空外囲器31内に設けられている。陽極ターゲット35は、円盤状に形成されている。陽極ターゲット35は、この陽極ターゲットの外面の一部に設けられた傘状のターゲット層35aを有している。ターゲット層35aは、陰極36から照射される電子が衝突することによりX線を放出する。陽極ターゲット35は、モリブデン合金などの金属で形成されている。
【0035】
陽極ターゲット35の外側面や、陽極ターゲット35でのターゲット層35aとは反対側の表面には、放熱を高めるために黒色化処理が施されている。ターゲット層35aは、タングステン合金等の金属で形成されている。陽極ターゲット35は、管軸を中心に回転自在である。このため、陽極ターゲット35の軸線は、管軸と平行である。
【0036】
陰極36は、真空外囲器31内に設けられている。陰極36は、陽極ターゲット35に照射する電子を放出する。低膨張合金であるKOV部材55は、真空外囲器31内で高電圧供給端子54を覆っている。ここでは、高電圧供給端子54はガラス製の高電圧絶縁部材50に封着され、KOV部材55は高電圧絶縁部材50に摩擦ばめを利用して固定されている。KOV部材55には、陰極支持部材37が取付けられている。陰極36は、陰極支持部材37に取付けられている。高電圧供給端子54は、陰極支持部材37の内部を通って陰極36に接続されている。
【0037】
X線管30は、固定軸11、回転体12、軸受け13及びロータ14を備えている。固定軸11は、円柱状に形成されている。固定軸11の外周の一部には突出部が形成され、突出部は真空外囲器31に気密に取付けられている。固定軸11には、高電圧供給端子44が電気的に接続されている。固定軸11は回転体12を回転可能に支持する。回転体12は、筒状に形成され、固定軸11と同軸的に設けられている。回転体12の外面にロータ14が取り付けられている。回転体12には、陽極ターゲット35が取付けられている。軸受け13は、固定軸11と回転体12の間に形成されている。回転体12は、陽極ターゲット35とともに回転可能に設けられている。上記固定軸11、回転体12、軸受け13及びロータ14は、陽極ターゲット回転機構を形成している。上記陽極ターゲット回転機構は、陽極ターゲット35を回転自在に支持する。
【0038】
この実施形態において、高電圧供給端子44及び高電圧供給端子54は、金属端子である。高電圧供給端子54は、陰極36に負の高電圧を印加するともに陰極36の図示しないフィラメント(電子放出源)にフィラメント電流を供給する。高電圧供給端子44は、固定軸11、軸受け13及び回転体12を介して陽極ターゲット35に正の高電圧を印加する。これにより、陽極ターゲット35は陰極36に比べて高い電位に設定される。
【0039】
X線管30の固定軸11は高電圧絶縁部材6にも固定されている。高電圧絶縁部材6はハウジング20に、直接又はステータコイル9などを介して間接的に固定されている。高電圧絶縁部材6は、一端が円錐形をし、他端が閉塞した管状に形成されている。高電圧絶縁部材6は、固定軸11と、ハウジング20及びステータコイル9との間を電気的に絶縁するものである。
【0040】
図1及び図2に示すように、X線管装置10は、鉛で形成されたX線遮蔽部510、520、530、540をさらに備えている。これらのX線遮蔽部は、少なくとも鉛を含むX線不透過材で形成されていればよく、鉛合金等で形成されていてもよい。
【0041】
図1に示すように、X線遮蔽部510は、管軸に沿った方向にターゲット層35aと対向したハウジング20の一端側に設けられている。X線遮蔽部510は、ターゲット層35aから放射されるX線を遮蔽するものである。X線遮蔽部510は、第1遮蔽部511及び第2遮蔽部512を有している。
【0042】
第1遮蔽部511は、管軸に沿った方向にターゲット層35aと対向した側の蓋部20gに貼り付けられている。第1遮蔽部511は、蓋部20g全体を覆っている。第1遮蔽部511は、開口部20kと対向した個所が開口して形成され、開口部20kによる絶縁油7の出入りを維持している。
【0043】
第2遮蔽部512は、第1遮蔽部511上に設けられている。第2遮蔽部512は、開口部20k付近からハウジング20の外部に出射する恐れのあるX線を遮蔽するものである。
【0044】
X線遮蔽部520は円筒状に形成されている。X線遮蔽部520の一端部は、第1遮蔽部511に近接している。このため、X線遮蔽部510及びX線遮蔽部520間の隙間から出射する恐れのあるX線を遮蔽することができる。
【0045】
X線遮蔽部520は、管軸に沿って第1遮蔽部511から陽極ターゲット35(ターゲット層35aの表面の延長線上)を越える位置まで延出している。この実施形態において、X線遮蔽部520は、第1遮蔽部511からステータコイル9と対向する位置まで延出している。X線遮蔽部520は、必要に応じてハウジング20に固定されている。
【0046】
X線遮蔽部530は、筒状に形成され、ハウジング20の筒部20r内に設けられている。X線遮蔽部530の一端部は、X線遮蔽部520に近接している。X線遮蔽部530は、必要に応じて筒部20rに固定されている。ここでは、X線遮蔽部530は、筒部20rの内壁に形成された突出部に固定されている。なお、上記突出部は、X線遮蔽部530の位置決めにも利用されている。このため、筒部20rから出射する恐れのあるX線を遮蔽することができる。
【0047】
図2に示すように、X線遮蔽部540は、枠状に形成され、ハウジング20のX線放射口20oの側縁に設けられている。X線遮蔽部540の一端部は、X線遮蔽部520に近接している。X線遮蔽部540は、必要に応じてX線放射口20oの側縁に固定されている。
【0048】
図1及び図3に示すように、X線管30とハウジング20との間に保持部材8、及びゴム部材2d、2eが設けられている。X線管装置10は、複数のゴム部材2d、2eを有している。この実施形態において、X線管装置10は、3個のゴム部材2dと3個のゴム部材2eとを有している。ゴム部材2dは等間隔に位置し、ゴム部材2eも等間隔に位置している。
保持部材8は、環状に形成され、X線管30及びハウジング20にそれぞれ間隔を置いて位置している。保持部材8は、機械的強度の高い樹脂材料で形成されている。
【0049】
ゴム部材2dは、保持部材8に取付けられ、ハウジング20の内壁に接触している。この実施形態において、ゴム部材2dはX線遮蔽部520に接触している。ゴム部材2eは、保持部材8に取付けられ、X線管30(真空外囲器31)の外面に接触している。保持部材8及びゴム部材2d、2eは、管軸に直交した方向におけるハウジング20に対するX線管30の位置ずれを防止している。ゴム部材2d、2eは、X線管30に生じる振動のハウジング20への伝達量を軽減する。
【0050】
ステータコイル9は、複数個所でハウジング20に固定されている。ステータコイル9は、高電圧絶縁部材6に対してX線管30の反対側に位置している。ステータコイル9は、ロータ14の外面に対向して真空外囲器31の外側を囲んでいる。
【0051】
ステータコイル9は、ロータ14、回転体12及び陽極ターゲット35を回転させるものである。ステータコイル9は、上記陽極ターゲット回転機構を回転させるための推進力を発生する。ステータコイル9に所定の電流が供給されることでロータ14に与える磁界を発生するため、陽極ターゲット35などが所定の速度で回転される。
絶縁油7は、X線管30が発生する熱の少なくとも一部を吸収するものである。
【0052】
X線管装置10は、ハウジング20の開口を液密に閉塞する接続端子部を備えている。本実施形態において、接続端子部としては、筒部20qの開口を液密に閉塞するリセプタクル300と、筒部20rの開口を液密に閉塞するリセプタクル400と、蓋部20fの開口を液密に閉塞する接続端子部600と、を挙げることができる。
【0053】
図4は、図1に示したX線管装置10の一部を拡大して示す他の断面図であり、陽極用のリセプタクル300及びケーブル210を示す図である。
図1及び図4に示すように、陽極用のリセプタクル300は、筒部20qの内部に位置し、筒部20qに取付けられている。リセプタクル300は、端子支持体としてのハウジング301と、端子302と、皮膜303と、閉塞部材304と、を備えている。
【0054】
ハウジング301は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を利用して形成されている。ハウジング301は、筒部20q(ハウジング20)の外側に開口した桶状に形成されている。ハウジング301は、ほぼ軸対称なコップ形状であると言うことができる。ハウジング301は、底部301aと、底部301aから突出して設けられた筒部301bと、を有している。底部301aと筒部301bとで囲まれた空間にプラグが差込まれるため、ハウジング301のプラグ差込口がハウジング20の外側に開口していると言うことができる。
【0055】
ハウジング301は、ハウジング301の底部301aに形成された貫通孔301hを有している。筒部301bの開口側の端部において、筒部301bの外面には、環状の突出部が形成されている。
【0056】
端子(高電圧供給端子)302は、ハウジング301と一体射出成型により、貫通孔301hに挿通された状態でハウジング301の底部301aに取付けられている。ここで、端子302にはケーブル210の電線が接続されている。陽極ターゲット35は、ケーブル210の電線等を介して端子302に接続されている。陽極ターゲット35には、上記端子302及び電線等を介して電圧が与えられる。
【0057】
皮膜303は、ハウジング20の内部にて、ハウジング301の底部301aの表面(外面)上にポリウレタン樹脂を利用して形成されている。皮膜303は、貫通孔301hを全周に亘って取囲んでいる。このため、皮膜303は、隙間無しに貫通孔301hを取囲んでいる。
【0058】
閉塞部材304は、エポキシ樹脂を利用して形成されている。閉塞部材304は、エポキシ樹脂を利用したポッティング材である。閉塞部材304は、貫通孔301hを取囲む全域に設けられている。閉塞部材304は、ハウジング20の内部にて、皮膜303及び端子302にそれぞれ液密に接着されている。閉塞部材304は、貫通孔301hと端子302との間の隙間に絶縁油7が伝わらないように絶縁油7を遮断している。
【0059】
その結果、端子302と閉塞部材304との界面、皮膜303と閉塞部材304との界面に、それぞれ絶縁油7のリークパスが形成される事態を回避することができる。このため、端子302の周辺において、ハウジング20の外部への絶縁油7の漏洩を防止することができる。
【0060】
さらに、本実施形態において、リセプタクル300は、皮膜305と、カバー部材306と、皮膜307と、接着部材308と、をさらに備えている。
皮膜305は、ハウジング20の内部にてハウジング301の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成され、皮膜303から外れて位置している。この実施形態において、ハウジング301は、筒部301cをさらに有している。筒部301cは、底部301aに対して筒部301bの反対側に位置し、底部301aから突出して設けられている。筒部301cは、端子302、皮膜303及び閉塞部材304を取囲んでいる。筒部301cの内周面に皮膜305が形成されている。
【0061】
カバー部材306は、PBT樹脂を利用して形成されている。カバー部材306は、ハウジング20の内部にて、端子302や、端子302とケーブル210の電線との接続部を覆っている。このため、端子302(端子302とケーブル210の電線との接続部)と、周辺の接地電位部との間における良好な絶縁性を保持することができる。
【0062】
皮膜307は、カバー部材306の表面(外面)上にポリウレタン樹脂を利用して形成されている。この実施形態において、皮膜307は、隙間を置いて皮膜305と対向している。
【0063】
接着部材308は、エポキシ樹脂を利用して形成されている。接着部材308は、エポキシ樹脂を利用したポッティング材である。接着部材308は、それぞれ皮膜305及び皮膜307に接着されている。接着部材308は、皮膜305及び皮膜307とともにカバー部材306をハウジング301に接着させている。
【0064】
筒部20qの段差部には、雌ねじの加工がなされている。リングナット310は、側面に雄ねじの加工がなされている。リングナット310は、筒部20qの段差部に締め付けられ、ハウジング301及びゴム部材2fを押圧している。ゴム部材2fはOリングで形成されている。ゴム部材2fは、筒部20qとリセプタクル300との間に設けられ、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を有している。
【0065】
リセプタクル300及びリセプタクル300に挿入される図示しないプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル300に連結した状態で、プラグから端子302に高電圧(例えば、+70乃至+80kV)が与えられる。
【0066】
図5は、図1に示したX線管装置10の一部を拡大して示す他の断面図であり、陰極用のリセプタクル400及びケーブル220を示す図である。
図1及び図5に示すように、リセプタクル400は、リセプタクル300と同様に形成されている。
【0067】
陰極用のリセプタクル400は、筒部20rの内部に位置し、筒部20rに取付けられている。リセプタクル400は、端子支持体としてのハウジング401と、端子402と、皮膜403と、閉塞部材404と、を備えている。
【0068】
ハウジング401は、PBT樹脂を利用して形成されている。ハウジング401は、筒部20r(ハウジング20)の外側に開口した桶状に形成されている。ハウジング401は、ほぼ軸対称なコップ形状であると言うことができる。ハウジング401は、底部401aと、底部401aから突出して設けられた筒部401bと、を有している。底部401aと筒部401bとで囲まれた空間にプラグが差込まれるため、ハウジング401のプラグ差込口がハウジング20の外側に開口していると言うことができる。
【0069】
ハウジング401は、ハウジング401の底部401aに形成された貫通孔401hを有している。筒部401bの開口側の端部において、筒部401bの外面には、環状の突出部が形成されている。
【0070】
端子(高電圧供給端子)402は、ハウジング401と一体射出成型により、貫通孔401hに挿通された状態でハウジング401の底部401aに取付けられている。ここで、端子402にはケーブル220の電線が接続されている。陰極36は、ケーブル220の電線等を介して端子402に接続されている。陰極36には、上記端子402及び電線等を介して電圧が与えられる。
【0071】
皮膜403は、ハウジング20の内部にて、ハウジング401の底部401aの表面(外面)上にポリウレタン樹脂を利用して形成されている。皮膜403は、貫通孔401hを全周に亘って取囲んでいる。このため、皮膜403は、隙間無しに貫通孔401hを取囲んでいる。
【0072】
閉塞部材404は、エポキシ樹脂を利用して形成されている。閉塞部材404は、エポキシ樹脂を利用したポッティング材である。閉塞部材404は、貫通孔401hを取囲む全域に設けられている。閉塞部材404は、ハウジング20の内部にて、皮膜403及び端子402にそれぞれ液密に接着されている。閉塞部材404は、貫通孔401hと端子402との間の隙間に絶縁油7が伝わらないように絶縁油7を遮断している。
【0073】
その結果、端子402と閉塞部材404との界面、皮膜403と閉塞部材404との界面に、それぞれ絶縁油7のリークパスが形成される事態を回避することができる。このため、端子402の周辺において、ハウジング20の外部への絶縁油7の漏洩を防止することができる。
【0074】
さらに、本実施形態において、リセプタクル400は、皮膜405と、カバー部材406と、皮膜407と、接着部材408と、をさらに備えている。
皮膜405は、ハウジング20の内部にてハウジング401の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成され、皮膜403から外れて位置している。この実施形態において、ハウジング401は、筒部401cをさらに有している。筒部401cは、底部401aに対して筒部401bの反対側に位置し、底部401aから突出して設けられている。筒部401cは、端子402、皮膜403及び閉塞部材404を取囲んでいる。筒部401cの内周面に皮膜405が形成されている。
【0075】
カバー部材406は、PBT樹脂を利用して形成されている。カバー部材406は、ハウジング20の内部にて、端子402や、端子402とケーブル220の電線との接続部を覆っている。このため、端子402(端子402とケーブル220の電線との接続部)と、周辺の接地電位部との間における良好な絶縁性を保持することができる。
【0076】
皮膜407は、カバー部材406の表面(外面)上にポリウレタン樹脂を利用して形成されている。この実施形態において、皮膜407は、隙間を置いて皮膜405と対向している。
【0077】
接着部材408は、エポキシ樹脂を利用して形成されている。接着部材408は、エポキシ樹脂を利用したポッティング材である。接着部材408は、それぞれ皮膜405及び皮膜407に接着されている。接着部材408は、皮膜405及び皮膜407とともにカバー部材406をハウジング401に接着させている。
【0078】
筒部20rの段差部には、雌ねじの加工がなされている。リングナット410は、側面に雄ねじの加工がなされている。リングナット410は、筒部20rの段差部に締め付けられ、ハウジング401及びゴム部材2gを押圧している。ゴム部材2gはOリングで形成されている。ゴム部材2gは、筒部20rとリセプタクル400との間に設けられ、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を有している。
【0079】
リセプタクル400及びリセプタクル400に挿入される図示しないプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル400に連結した状態で、プラグから端子402に高電圧(例えば、−70乃至−80kV)が与えられる。
【0080】
図6は、図1に示したX線管装置10の一部を拡大して示す他の断面図であり、ステータコイル用の接続端子部及びケーブルを示す図である。
図1及び図6に示すように、接続端子部600は、端子支持体601と、端子602と、皮膜603と、閉塞部材604と、を備えている。
【0081】
端子支持体601は、PBT樹脂を利用して形成されている。端子支持体601は、ハウジング20の内部から外部に向かって延在した複数の貫通孔601hを有している。端子支持体601は、蓋部20fに固定されている。本実施形態において、端子支持体601は、締め具としてのねじ605により蓋部20fに固定されている。ねじ605は、端子支持体601に形成された貫通孔を通り、蓋部20fに形成されたねじ穴に締め付けられている。ゴム部材2hはOリングを形成している。ゴム部材2hは、蓋部20fと端子支持体601との間に設けられ、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を有している。
【0082】
各端子602は、端子支持体601と一体射出成型により、対応する貫通孔601hに挿通された状態で端子支持体601に取付けられている。ここで、端子602には各ケーブル230の電線が一対一で接続されている。ステータコイル9は、ケーブル230の電線等を介して端子602に接続されている。ステータコイル9には、上記端子602及び電線等を介して電力(主に電流)が与えられる。
【0083】
皮膜603は、ハウジング20の内部にて、端子支持体601の表面上にポリウレタン樹脂を利用して形成されている。皮膜603は、貫通孔601hを全周に亘って取囲んでいる。このため、皮膜603は、隙間無しに貫通孔601hを取囲んでいる。少なくとも、皮膜603は、隙間無しに、貫通孔601hの集合体を束ねるように取囲んでいればよい。
【0084】
閉塞部材604は、エポキシ樹脂を利用して形成されている。閉塞部材604は、エポキシ樹脂を利用したポッティング材である。閉塞部材604は、貫通孔601hを取囲む全域に設けられている。閉塞部材604は、ハウジング20の内部にて、皮膜603及び端子602にそれぞれ液密に接着されている。閉塞部材604は、貫通孔601hと端子602との間の隙間に絶縁油7が伝わらないように絶縁油7を遮断している。
【0085】
その結果、端子602と閉塞部材604との界面、皮膜603と閉塞部材604との界面に、それぞれ絶縁油7のリークパスが形成される事態を回避することができる。このため、端子602の周辺において、ハウジング20の外部への絶縁油7の漏洩を防止することができる。
【0086】
さらに、本実施形態において、閉塞部材604は、端子602とケーブル230の電線との接続部を埋め尽くしている。すなわち、閉塞部材604は、上記接続部を覆い、上記接続部に密着している。このため、端子602(端子602とケーブル230の電線との接続部)と、周辺の接地電位部との間における良好な絶縁性を保持することができる。
上記のように本実施形態に係るX線管装置が形成されている。
【0087】
このように構成されたX線管装置では、接続端子部600を介してステータコイル9に所定の電力を印加することでロータ14が回転し、陽極ターゲット35が回転する。次に、リセプタクル300、400に所定の高電圧を印加する。
【0088】
リセプタクル300に印加された高電圧は、ケーブル210、高電圧供給端子44、固定軸11、軸受け13及び回転体12を介して陽極ターゲット35に供給される。リセプタクル400に印加された高電圧は、ケーブル220及び高電圧供給端子54を介して陰極36に供給される。
【0089】
これにより、陰極36から放出された電子は陽極ターゲット35のターゲット層35aに衝突し、陽極ターゲット35からX線が放射される。X線は、真空容器32(又はX線透過窓)及びX線放射窓20wを通ってハウジング20の外部へ放射される。
【0090】
次に、上記閉塞部材304,404,604及び接着部材308,408の形成に利用する材料について説明する。
上述したように、閉塞部材304,404,604及び接着部材308,408は、エポキシ樹脂を利用して形成されている。エポキシ樹脂は、絶縁油7中で使用されるガラスやセラミクスまたは金属用の接着剤として性能上優れているためである。本実施形態において、エポキシ樹脂として、2液性の常温硬化型エポキシ樹脂を利用している。その他のエポキシ樹脂として、紫外線硬化型エポキシ樹脂を利用することもできる。紫外線硬化型エポキシ樹脂としては、1液紫外線硬化型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0091】
なお、エポキシ樹脂としては、各種の2液性のエポキシ樹脂を利用することも可能である。2液性のエポキシ樹脂としては、例えば、ノガワケミカル製のダイアボンド2310A(常温硬化型)、ナガセケミテックス製のAV138/HV998(常温硬化型)、ペルノックス製のビスタックNM-103A/NM-103B(70℃硬化型)、ペルノックス製のME-105/HY-680(常温硬化型)を挙げることができる。
【0092】
次に、上記皮膜303,305,307,403,405,407,603に利用する材料について説明する。
上述したように、皮膜303,305,307,403,405,407,603は、ポリウレタン樹脂を利用して形成されている。ここで、ポリウレタン樹脂を利用した皮膜(皮膜303,305,307,403,405,407,603)をポリウレタン樹脂皮膜と言う。PBT樹脂からなる部材(ハウジング301,401、カバー部材306,406、及び端子支持体601)を総称してPBT樹脂部材と言う。エポキシ樹脂を利用した部材(閉塞部材304,404,604及び接着部材308,408)を総称してエポキシ樹脂部材と言う。PBT樹脂部材の表面に、ポリウレタン樹脂皮膜を設け、ポリウレタン樹脂皮膜にエポキシ樹脂部材を接着させている。
【0093】
上記ポリウレタン樹脂としては、湿気硬化型ポリウレタン樹脂を挙げることができる。さらに、湿気硬化型ポリウレタン樹脂としては、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0094】
ポリウレタン樹脂皮膜に一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂を利用する場合、ポリウレタン樹脂皮膜は、低粘度の一液性塗料を、常温で塗布し、空気中の湿気の作用で硬化させて形成できるため、安価である。上記のように、ポリウレタン樹脂を利用したポリウレタン樹脂皮膜は、エポキシ樹脂部材に対するPBT樹脂部材の接着プライマとして望ましい。上記接着力の改善効果が高いためである。上記のことは、本願発明者らによって初めて見出されたものである。
【0095】
一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂としては、(1)主成分がイソシアネート基末端のウレタンプレポリマである溶質と有機溶剤からなる溶媒とから構成された樹脂、(2)主成分がポリイソシアネートである溶質と有機溶剤からなる溶媒とから構成された樹脂、を利用することができ、上記樹脂について上記接着性の改善効果が得られることを確認することができた。また、ポリウレタン樹脂皮膜は、PBT樹脂部材への密着性が高いことも確認している。さらにまた、絶縁油7中で長期使用した場合にも、上記接着性の劣化は少なく、製品の寿命に悪影響を及ぼさないことを確認することができたものである。
【0096】
上記(1)の樹脂としては、株式会社ソテックのファンデーション#129とファンデーション#129LLE、大日本塗料(株)のMC−PUR、(株)デュプレックスジャパンのセプター101Pを挙げることができる。
【0097】
上記(2)の樹脂としては、株式会社ソテックのファンデーション#123とファンデーション#123LLEを挙げることができる。ファンデーション#123の一般名は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)プレポリマである。上記のように、ポリイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネートを利用することができる。
【0098】
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線管装置10によれば、X線管装置10は、ハウジング20と、ハウジング20内に充填された絶縁油7と、接続端子部と、負荷部と、を備えている。接続端子部としては、筒部20qの開口を液密に閉塞するリセプタクル300と、筒部20rの開口を液密に閉塞するリセプタクル400と、蓋部20fの開口を液密に閉塞する接続端子部600と、を挙げることができる。
【0099】
ハウジング20に収容される負荷部としては、X線管30(陽極ターゲット35及び陰極36)、並びにステータコイル9を挙げることができる。陽極ターゲット35はケーブル210の電線等を介してリセプタクル300に接続され、陽極ターゲット35には上記電線等を介して電圧が与えられる。陰極36は、ケーブル220の電線等を介してリセプタクル400に接続され、陰極36には上記電線等を介して電圧が与えられる。ステータコイル9は、ケーブル230の電線等を介して接続端子部600に接続され、ステータコイル9には上記電線等を介して電力が与えられる。
【0100】
リセプタクル300は、ハウジング301、端子302、皮膜303、閉塞部材304、皮膜305、カバー部材306、皮膜307、及び接着部材308を備えている。リセプタクル400は、ハウジング401、端子402、皮膜403、閉塞部材404、皮膜405、カバー部材406、皮膜407、及び接着部材408を備えている。接続端子部600は、端子支持体601と、端子602と、皮膜603と、閉塞部材604と、を備えている。
【0101】
ハウジング301,401、カバー部材306,406、及び端子支持体601は、PBT樹脂を利用して形成されている。このため、安価なX線管装置の製造に寄与することができる。
【0102】
PBT樹脂部材(ハウジング301、カバー部材306、ハウジング401、カバー部材406又は端子支持体601)の表面上に、ポリウレタン樹脂皮膜(皮膜303,305,307,403,405,407又は603)が形成されている。ポリウレタン樹脂皮膜はPBT樹脂部材への密着性が高い。ポリウレタン樹脂皮膜に対するエポキシ樹脂部材(閉塞部材304、接着部材308、閉塞部材404、接着部材408、又は閉塞部材604)の接着強度は、PBT樹脂部材に対するエポキシ樹脂部材の接着強度より高い。このため、エポキシ樹脂部材をポリウレタン樹脂皮膜に強固に、かつ、液密に接着させることができる。
【0103】
このため、端子302,402,602の周辺において、ハウジング20の外部への絶縁油7の漏洩を防止することができる。
また、カバー部材306がハウジング301に接着された状態や、カバー部材406がハウジング401に接着された状態を維持することができるため、端子(端子302又は402)と、周辺の接地電位部との間における良好な絶縁性を長期にわたって保持することができる。一方、閉塞部材604は、端子602とケーブル230の電線との接続部を埋め尽くしているため、端子602と、周辺の接地電位部との間における良好な絶縁性を保持することができる。
上記のことから、安価であり信頼性に優れるX線管装置10を得ることができる。
【0104】
次に、第2の実施形態に係るX線管装置について説明する。本実施形態に係るX線管装置10は、リセプタクル300,400以外、上記第1の実施形態に係るX線管装置10と同様に形成されている。ここでは、本実施形態に係るリセプタクル300を代表して説明する。なお、リセプタクル400は、リセプタクル300と同様に形成されている。図7は、第2の実施形態に係るX線管装置10の一部を拡大して示す断面図であり、陽極用のリセプタクル300及びケーブル210を示す図である。
【0105】
図7に示すように、リセプタクル300は、ハウジング301、端子302、皮膜303、及び閉塞部材304を備えている。リセプタクル300は、上述した皮膜305、カバー部材306、皮膜307、及び接着部材308無しに形成されている。閉塞部材304は、端子302とケーブル210の電線との接続部を埋め尽くしている。この実施形態において、閉塞部材304は、底部301aと筒部301cとで囲まれた空間に充填されたエポキシ樹脂で形成されている。
【0106】
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線管装置10によれば、X線管装置10は、ハウジング20と、ハウジング20内に充填された絶縁油7と、リセプタクル300と、リセプタクル400と、接続端子部600と、X線管30(陽極ターゲット35及び陰極36)と、ステータコイル9と、を備えている。
【0107】
このため、本実施形態は、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
ハウジング301,401、及び端子支持体601は、PBT樹脂を利用して形成されているため、安価なX線管装置の製造に寄与することができる。
【0108】
PBT樹脂部材(ハウジング301、ハウジング401、又は端子支持体601)の表面上に、ポリウレタン樹脂皮膜(皮膜303,403,又は603)が形成されている。エポキシ樹脂部材(閉塞部材304、閉塞部材404、又は閉塞部材604)をポリウレタン樹脂皮膜に強固に、かつ、液密に接着させることができる。このため、端子302,402,602の周辺において、ハウジング20の外部への絶縁油7の漏洩を防止することができる。
【0109】
また、閉塞部材(閉塞部材304,404,又は604)は、端子(端子302,402,または602)とケーブル(ケーブル210,220,又は230)の電線との接続部を埋め尽くしているため、端子と、周辺の接地電位部との間における良好な絶縁性を長期にわたって保持することができる。
上記のことから、安価であり信頼性に優れるX線管装置10を得ることができる。
【0110】
次に、上記第2の実施形態の変形例1に係るX線管装置10について説明する。本変形例1は、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
リセプタクル300は、皮膜303の替わりに上記皮膜305を備えている。皮膜305は、筒部301cの内周面に全周に亘って形成されている。閉塞部材304は、ハウジング20の内部にて、皮膜305及び端子302にそれぞれ液密に接着されている。閉塞部材304は、貫通孔301hと端子302との間の隙間に絶縁油7が伝わらないように絶縁油7を遮断している。このため、端子302の周辺において、ハウジング20の外部への絶縁油7の漏洩を防止することができる。なお、リセプタクル400はリセプタクル300と同様に形成されている。
【0111】
次いで、上記第2の実施形態の変形例2に係るX線管装置10について説明する。本変形例2は、上記第2の実施形態や上記変形例1と同様の効果を得ることができる。さらに、本変形例2は、上記第2の実施形態や上記変形例1と比べて一層信頼性に優れたX線管装置10を得ることができる。
【0112】
リセプタクル300は、皮膜303だけでなく皮膜305も備えている。閉塞部材304は、ハウジング20の内部にて、皮膜303、皮膜305及び端子302にそれぞれ液密に接着されている。なお、リセプタクル400はリセプタクル300と同様に形成されている。
【0113】
次に、第3の実施形態に係るX線管装置について説明する。本実施形態に係るX線管装置10は、リセプタクル300,400以外、上記第1の実施形態に係るX線管装置10と同様に形成されている。ここでは、本実施形態に係るリセプタクル300を代表して説明する。なお、リセプタクル400は、リセプタクル300と同様に形成されている。図8は、第3の実施形態に係るX線管装置10の一部を拡大して示す断面図であり、陽極用のリセプタクル300及びケーブル210を示す図である。
【0114】
図8に示すように、リセプタクル300は、皮膜303及び閉塞部材304無しに形成されている。リセプタクル300は、ハウジング301、端子302、皮膜305、カバー部材306、皮膜307、及び接着部材308を備えている。リセプタクル300は、締め具としてのナット320及びOリング330をさらに備えている。
【0115】
ナット320は、端子302に設けられた雄ねじに締め付けられ、端子302を底部301aに固定している。Oリング330は、ハウジング20の内部に位置し、底部301aに形成された枠状の溝部に設けられている。Oリング330は、貫通孔301hを取囲み、底部301aと端子302との間に介在している。底部301a、端子302及びOリング330は、Oリング330を押圧している。Oリング330は、貫通孔301hと端子302との間の隙間に絶縁油7が伝わらないように絶縁油7を遮断している。
【0116】
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線管装置10によれば、X線管装置10は、ハウジング20と、ハウジング20内に充填された絶縁油7と、リセプタクル300と、リセプタクル400と、接続端子部600と、X線管30(陽極ターゲット35及び陰極36)と、ステータコイル9と、を備えている。
【0117】
このため、本実施形態は、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
ハウジング301,401、カバー部材306,406、及び端子支持体601は、PBT樹脂を利用して形成されているため、安価なX線管装置の製造に寄与することができる。
【0118】
PBT樹脂部材(端子支持体601)の表面上に、ポリウレタン樹脂皮膜(皮膜603)が形成されている。エポキシ樹脂部材(閉塞部材604)をポリウレタン樹脂皮膜に強固に、かつ、液密に接着させることができる。リセプタクル300において、Oリング330は、貫通孔301hを取囲み、底部301aと端子302との間に介在している。リセプタクル400もリセプタクル300と同様に形成されている。このため、端子302,402,602の周辺において、ハウジング20の外部への絶縁油7の漏洩を防止することができる。
【0119】
カバー部材306がハウジング301に接着された状態を維持することができる。同様に、カバー部材406がハウジング401に接着された状態を維持することができる。このため、端子(端子302又は402)と、周辺の接地電位部との間における良好な絶縁性を長期にわたって保持することができる。一方、閉塞部材604は、端子602とケーブル230の電線との接続部を埋め尽くしているため、端子602と、周辺の接地電位部との間における良好な絶縁性を保持することができる。
上記のことから、安価であり信頼性に優れるX線管装置10を得ることができる。
【0120】
次に、比較例1に係るX線管装置について説明する。本比較例1に係るX線管装置10は、リセプタクル300,400、及び接続端子部600以外、上記第1の実施形態に係るX線管装置10と同様に形成されている。ここでは、リセプタクル300,400のうちリセプタクル300を代表して説明する。なお、リセプタクル400は、リセプタクル300と同様に形成されている。
【0121】
図9は、比較例1に係るX線管装置10の一部を拡大して示す断面図であり、陽極用のリセプタクル300及びケーブル210を示す図である。
図9に示すように、リセプタクル300は、皮膜303,305,307及び閉塞部材304無しに形成されている。接着部材308(エポキシ樹脂部材)は、ハウジング301(PBT樹脂部材)及びカバー部材306(PBT樹脂部材)に直に接着されている。金属で形成される端子302とハウジング301との間の界面に絶縁油7のリークパスが形成される恐れがあるが、本比較例1の場合、さらに、接着部材308とハウジング301との間の界面や、接着部材308とカバー部材306との間の界面の接着強度が不十分であるため、カバー部材306をハウジング301に強固に接着することが困難であり、カバー部材306がハウジング301から外れる恐れがある。このため、比較例1では、端子302と、周辺の接地電位部との間における良好な絶縁性を保持することが困難である。
リセプタクル400においても、リセプタクル300と同様の問題を有している。
【0122】
図10は、比較例1に係るX線管装置10の一部を拡大して示す他の断面図であり、ステータコイル9用の接続端子部600及びケーブル230を示す図である。
図10に示すように、接続端子部600は、皮膜603無しに形成されている。閉塞部材604(エポキシ樹脂部材)は、端子支持体601(PBT樹脂部材)に直に接着されている。金属で形成される端子602と端子支持体601との間の界面に絶縁油7のリークパスが形成される恐れがあるが、本比較例1の場合、さらに、閉塞部材604と端子支持体601との間の界面に、絶縁油7の他のリークパスが形成される恐れがある。このため、比較例1では、端子602の周辺において、ハウジング20の外部への絶縁油7の漏洩を防止することが困難である。
上記のことから、比較例1では、信頼性に優れるX線管装置10を得ることはできないものである。
【0123】
次に、比較例2に係るX線管装置について説明する。本比較例2に係るX線管装置10は、リセプタクル300,400以外、上記第2の実施形態に係るX線管装置10と同様に形成されている。ここでは、リセプタクル300,400のうちリセプタクル300を代表して説明する。なお、リセプタクル400は、リセプタクル300と同様に形成されている。
【0124】
図11は、比較例2に係るX線管装置10の一部を拡大して示す断面図であり、陽極用のリセプタクル300及びケーブル210を示す図である。
図11に示すように、リセプタクル300は、皮膜303無しに形成されている。閉塞部材304(エポキシ樹脂部材)は、ハウジング301(PBT樹脂部材)に直に接着されている。金属で形成される端子302とハウジング301との間の界面に絶縁油7のリークパスが形成される恐れがあるが、本比較例2の場合、さらに、閉塞部材304とハウジング301との間の界面に、絶縁油7の他のリークパスが形成される恐れがある。このため、比較例2では、端子302の周辺において、ハウジング20の外部への絶縁油7の漏洩を防止することが困難である。
【0125】
リセプタクル400においても、リセプタクル300と同様の問題を有している。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0127】
例えば、ケーブル210,220,230は、電線のみで形成されていてもよい。すなわち、ケーブルは、電線を覆う電気絶縁物無しに形成されていてもよい。但し、電線が電気絶縁物で覆われていた方が、ケーブルと周辺の導電部との間における良好な絶縁性を保持し易いため望ましい。
【0128】
X線管装置10は、ハウジングに収容され、電線を介して接続端子部に接続され、上記電線を介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部を少なくとも1つ備えていればよい。上述した実施形態は、上述したステータコイル9、陽極ターゲット35及び陰極36にだけではなく、種々の負荷部に適用可能である。負荷部としては、例えば、陰極36から陽極ターゲット35に照射される電子ビームを偏向させる偏向部であってもよい。偏向部としては、X線管の真空外囲器の外側で、電子ビームの軌跡を取り囲む位置に設けられ、電力(主に電流)が与えられる磁気偏向部を挙げることができる。
【0129】
X線管装置は、陽極ターゲット35及び陰極36にそれぞれ高電圧を印加する中性点接地型に限定されるものではなく、陽極接地型や、陰極接地型を採っていてもよい。
この発明の実施形態は、上述したX線管装置10に限らず、各種の回転陽極型X線管装置及び各種の固定陽極型X線管装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0130】
7…絶縁油、9…ステータコイル、10…X線管装置、11…固定軸、12…回転体、14…ロータ、20…ハウジング、20f…蓋部、20r,20q…筒部、30…X線管、31…真空外囲器、35…陽極ターゲット、36…陰極、210,220,230…ケーブル、300,400…リセプタクル、600…接続端子部、301,401…ハウジング、601…端子支持体、301h,401h,601h…貫通孔、302,402,602…端子、303,305,307,403,405,407,603…皮膜、304,404,604…閉塞部材、306,406…カバー部材、308,408…接着部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11