特許第6367051号(P6367051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367051
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/38 20060101AFI20180723BHJP
   A23F 5/22 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A23F3/38
   A23F5/22
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-176454(P2014-176454)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49054(P2016-49054A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】日 置 淳 平
【審査官】 北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−140348(JP,A)
【文献】 特開平06−142405(JP,A)
【文献】 特開2009−000062(JP,A)
【文献】 特開平06−205641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00−5/50
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを接触させる工程を含み、ここで該工程が、茶抽出物またはコーヒー抽出物に、水溶性セルロース誘導体を加えたスメクタイト型粘土鉱物を接触させる工程であり、かつ
茶抽出物またはコーヒー抽出物から、接触させたスメクタイト型粘土鉱物を分離する工程を含む、
茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
【請求項2】
水溶性セルロース誘導体が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、並びにカルボキシアルキルセルロースおよびその塩からなる群から選択される一種または二種以上である、請求項1に記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
【請求項3】
アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、並びにカルボキシアルキルセルロースおよびその塩のアルキル基の炭素数が1〜3である、請求項2に記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
【請求項4】
水溶性セルロース誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロースおよびその塩からなる群から選択される一種または二種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
【請求項5】
塩がナトリウム塩である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
【請求項6】
茶抽出物またはコーヒー抽出物と接触させる水溶性セルロース誘導体の濃度が、茶抽出物またはコーヒー抽出物に対して、0.1ppm以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
【請求項7】
スメクタイト型粘土鉱物が、活性白土、酸性白土、サポナイト、ベントナイト、および活性ベントナイトからなる群から選択される一種または二種以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
【請求項8】
水溶性セルロース誘導体が、水溶性セルロース誘導体水溶液である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法に関し、さらに詳細には茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを接触させる工程を含む茶飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茶飲料やコーヒー飲料に含まれるカフェインは、その薬理作用により積極的に摂取して眠気を抑えたい等のニーズがある一方で、カフェイン摂取により睡眠や入眠を妨げられる可能性を懸念して、消費者の中にはカフェイン入り飲料、特に茶飲料やコーヒー飲料を敬遠する者もいる。
【0003】
このため、コーヒー抽出物または茶抽出物からのカフェインの低減を目的とした様々な方法が検討されてきている。例えば、特許文献1には、カフェインを含有する水溶液を活性白土または酸性白土と接触させることにより、水溶液からカテキンの減少を抑えながらカフェインを除去する方法が開示されている。また、特許文献2には、茶抽出物とエタノール水溶物とを混合し、活性炭、酸性白土、または活性白土から選ばれる1種以上と接触させる工程と、タンナーゼで処理する工程を経て得られる風味が改良された精製緑茶抽出物が開示されている。さらに、特許文献3には、茶抽出物をアルカリ性条件下で活性白土および/または酸性白土と接触させることにより、白土から茶抽出物へのミネラル成分の溶出を抑制した精製茶抽出物の製造方法が開示されている。また、特許文献4には、カルボキシメチルセルロース塩を含むことを特徴とする上水処理用凝集剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−142405号公報
【特許文献2】特開2007−104967号公報
【特許文献3】特開2012−231719号公報
【特許文献4】特開2004−113892号公報
【発明の開示】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術を用いて茶飲料またはコーヒー飲料を製造すると、ミネラル成分の茶抽出物またはコーヒー抽出物への溶出に伴い、得られた茶飲料またはコーヒー飲料の外観や香味が、カフェイン低減処理が施されていない本来の茶飲料またはコーヒー飲料と比較して劣る場合があることが判明した。また、特許文献2や特許文献3のような技術を用いて茶飲料またはコーヒー飲料を製造する場合は、使用した有機溶媒を除去する際の香気損失や、アルカリ性条件にするためのpH調整剤の香味に対する影響などを考慮する必要があった。また、特許文献3において添加するアルカリ物質やpHの条件によっては、白土の膨潤や白土の沈降性の低下などにより濁度が上昇する可能性もある。さらに、特許文献4においてはカオリンが水の濁度を表す指標として用いられており、本発明が対象とする茶飲料およびコーヒー飲料の濁度とは必ずしも低減対象は一致せず、また本発明の濁度低減対象成分および該飲料の成分については特許文献4には開示されていない。
【0006】
本発明は、外観や香味が通常の茶飲料およびコーヒー飲料と遜色ない、カフェインが低減された茶飲料およびコーヒー飲料をより簡便に製造する方法を提供することを目的とする。本発明はまた、外観や香味が通常の茶飲料およびコーヒー飲料と遜色ない程度に維持される、カフェインが低減された茶飲料およびコーヒー飲料の濁度低減方法や香味低減抑制方法を提供することも目的とする。
【0007】
本発明者らは、茶飲料およびコーヒー飲料の製造方法において、茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを接触させる工程を含むことにより、カフェイン含有量を低減させつつ、通常の茶飲料や、コーヒー飲料と比較して遜色ない外観や香味を維持できることを見出した。また、一般的に、スメクタイト型粘土鉱物などの吸着剤を用いる場合には、溶媒等との接触面積を高く維持したまま吸着剤を分散させようとするのに対し、特許文献4に記載のカルボキシメチルセルロース塩に代表される水溶性セルロース誘導体のような凝集効果を有する可能性のある物質を用いようとはせず、水溶性セルロース誘導体を用いた場合に上記効果を奏することは意外であった。
【0008】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを接触させる工程を含む、茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(2)水溶性セルロース誘導体が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、並びにカルボキシアルキルセルロースおよびその塩からなる群から選択される一種または二種以上である、(1)に記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(3)アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、並びにカルボキシアルキルセルロースおよびその塩のアルキル基の炭素数が1〜3である、(2)に記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(4)水溶性セルロース誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース塩からなる群から選択される一種または二種以上である、(1)〜(3)のいずれかに記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(5)塩がナトリウム塩である、(2)〜(4)のいずれかに記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(6)茶抽出物またはコーヒー抽出物と接触させる水溶性セルロース誘導体の濃度が、茶抽出物またはコーヒー抽出物に対して、0.1ppm以上である、(1)〜(5)のいずれかに記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(7)スメクタイト型粘土鉱物が、活性白土、酸性白土、サポナイト、ベントナイト、および活性ベントナイトからなる群から選択される一種または二種以上である、(1)〜(6)のいずれかに記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(8)水溶性セルロース誘導体が、水溶性セルロース誘導体水溶液である、(1)〜(7)のいずれかに記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(9)茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを接触させる工程が、茶抽出物またはコーヒー抽出物に、水溶性セルロース誘導体を加えたスメクタイト型粘土鉱物を接触させる工程である、(1)〜(8)のいずれかに記載の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法により製造された、コーヒー飲料または茶飲料。
(11)茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを接触させる、茶飲料またはコーヒー飲料の濁度低減方法。
(12)茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを接触させる、茶飲料またはコーヒー飲料の香味低減抑制方法。
【0009】
本発明の製造方法により製造された茶飲料およびコーヒー飲料は、カフェイン含有量が低減されつつも、スメクタイト型粘土鉱物処理による濁度上昇といった外観上の問題が抑制される。さらに、スメクタイト型粘土鉱物処理による濁度の上昇を抑制することにより、その後工程にある濾過工程における濾過性が改善される。合わせて、香味は通常の茶飲料およびコーヒー飲料と遜色ないことから、カフェインの摂取を控えつつ、茶飲料およびコーヒー飲料本来の香味を味わえる茶飲料およびコーヒー飲料をより簡便に製造できる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、試験1の試験結果を表す。縦軸は相対濁度を表し、横軸は比較例1および各実施例を表す。
図2図2は、試験2の試験結果を表す。縦軸は相対濁度を表し、横軸は比較例1および各実施例を表す。
図3図3は、試験3の試験結果を表す。縦軸は相対濁度を表し、横軸は比較例1および各実施例を表す。
図4図4は、試験4の試験結果を表す。縦軸はカフェイン除去率(%)を表し、横軸は比較例1および各実施例を表す。
図5図5は、試験6の試験結果を表す。縦軸は相対濁度を表し、横軸は比較例1〜4を表す。
図6図6は、試験7の試験結果を表す。縦軸は相対濁度を表し、横軸は比較例1および5〜8を表す。
【発明の具体的説明】
【0011】
茶飲料およびコーヒー飲料の製造方法
本発明の製造方法は、茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを接触させる工程を含む茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法である。本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法は、好ましくは、カフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の製造方法である。
【0012】
本発明の製造方法は、茶飲料およびコーヒー飲料中の濁度を低減できればどのような態様であってもよく、茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とをどのような順序で接触させてもよい。この順序には、逐次および同時が含まれる。
【0013】
本発明の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、(a)水溶性セルロース誘導体を加えた(接触させた)茶抽出物またはコーヒー抽出物と、スメクタイト型粘土鉱物とを接触させる製造方法、(b)茶抽出物またはコーヒー抽出物と、水溶性セルロース誘導体を加えたスメクタイト型粘土鉱物とを接触させる製造方法、(c)スメクタイト型粘土鉱物を接触させた茶抽出物またはコーヒー抽出物に、水溶性セルロース誘導体を加える(接触させる)製造方法、または(d)茶抽出物またはコーヒー抽出物と、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを同時に接触させる製造方法が挙げられる。また、水溶性セルロース誘導体の添加方法は、茶抽出物またはコーヒー抽出物と均一に接触できればよく、直接投入して接触させても、あらかじめ適量の水に溶解してから投入して接触させてもよい。
【0014】
これらの中でも、本発明の製造方法は、前記(b)の態様が好ましい。水溶性セルロース誘導体をスメクタイト型粘土鉱物に加える工程と、茶抽出物またはコーヒー抽出物と、水溶性セルロース誘導体を加えたスメクタイト型粘土鉱物とを接触させる工程との間隔は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、例えば、10秒〜7時間、好ましくは10秒〜2時間である。前記(b)の態様により製造された茶飲料またはコーヒー飲料は、カフェイン含有量を低減させつつ、通常の茶飲料またはコーヒー飲料と比較して遜色ない外観や香味をより維持できる。
【0015】
本発明の製造方法に用いられる茶抽出物は、特に限定されないが、通常の茶抽出液の調製に用いられている方法を用いて製造される茶抽出液やその濃縮液を用いることができる。例えば、茶葉と水(0〜100℃)を混合接触させるか、あるいは、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物を水(0〜100℃)に混合または溶解させることにより、本発明の製造方法に用いられる茶抽出物を得ることができる。また、上記の茶抽出液と、上記の茶エキスや茶パウダーを混合したものを茶抽出物として本発明の製造方法に用いてもよい。茶葉と水を混合接触させた場合には、遠心分離や濾過などの分離手段を用いて茶葉と茶抽出液を分離することができる。
【0016】
茶抽出液の調製に用いられる茶葉は、特に限定されないが、Camellia sinensisに属する茶葉を用いることができ、煎茶、玉露、抹茶、釜炒り茶、番茶、ほうじ茶等の緑茶葉のような不発酵茶に限らず、烏龍茶のような半発酵茶や、紅茶のような発酵茶、プーアル茶のような後発酵茶等も用いることができる。また、抽出液の調製に際し茶葉以外の任意の原料を配合してよい。本発明の製造方法に用いられる茶抽出物に用いられる茶葉は、上記のような茶葉であれば特に限定されるものではないが、好ましくは緑茶、烏龍茶、または紅茶であり、より好ましくは緑茶である。
【0017】
茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物としては、ポリフェノン(三井農林社製)やサンフェノン(太陽化学社製)、テアフラン(伊藤園社製)などの市販品を用いることができる。また、これらの茶濃縮物や茶精製物は、そのまま又は水で溶解もしくは希釈したものを単独で使用しても、複数の種類を混合して用いても、茶抽出液と混合して用いてもよい。
【0018】
本発明の製造方法に用いられるコーヒー抽出物は、特に限定されないが、一般的な方法(例えば、「最新・ソフトドリンクス」(光琳)を参照)により抽出することができる。コーヒー、例えば焙煎したコーヒー豆から各種方法により得られる抽出液(いわゆるレギュラーコーヒー)のほか、コーヒーから抽出した成分を含有する液体がすべて包含され、例えば、コーヒー焙煎豆の冷水、温水、熱水、加圧熱水による抽出液や、プロピレングリコール水溶液、ショ糖脂肪酸エステル等の食品添加物として許容されている界面活性剤の水溶液による抽出液、炭酸ガス等の臨界抽出により得られた抽出液、インスタントコーヒーの溶解液等も包含される。コーヒー抽出液は上述したいずれであってもよいが、コーヒー抽出液は、好ましい態様によれば、焙煎したコーヒー豆を熱水(例えば、コーヒー豆の10倍量)で抽出した後、冷却してコーヒー抽出液とすることが好ましい。また、コーヒー豆からの抽出方法については、特に限定されず、例えば、ボイリング式、エスプレッソ式、サイフォン式、ドリップ式(例えば、ペーパー、ネル)が挙げられる。
【0019】
本発明において、コーヒー抽出液を得るのに用いられるコーヒー豆の種類は特に限定されないが、例えば、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテンが挙げられ、これらの1種または2種以上をブレンドして用いても良い。コーヒー豆種としては、例えば、アラビカ種、ロブスタ種があり、好ましくは、香味の観点から、アラビカ種である。コーヒー豆は1種でもよいし、複数種をブレンドして用いても良い。コーヒー豆を焙煎により焙煎コーヒーとする方法については、特に限定されるものではなく、焙煎温度、焙煎環境についても限定されない。焙煎方法としては直火式、熱風式、半熱風式などが挙げられる。焙煎コーヒーの焙煎度としては特に限定されるものではなく、例えばライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアンいずれを用いても良い。焙煎コーヒーの焙煎度は、L値を用いて表現してもよく、当業者は適宜、豆のL値を選択することができる。L値は、例えば日本電色工業社製の色差計により測定してもよい。なお、焙煎度の異なるコーヒー豆を複数種混合しても良い。
【0020】
本発明の製造方法において、茶抽出物またはコーヒー抽出物にスメクタイト型粘土鉱物を接触させる方法は、茶抽出物またはコーヒー抽出物がスメクタイト型粘土鉱物と接触する限り、特に限定されるものではないが、例えば、接触タンクにより一定量を逐次処理するバッチ処理や、配管内でのドージングおよびホールディングによる処理やスメクタイト型粘土鉱物充填カラムを通液させるカラム処理などの連続処理が挙げられる。
【0021】
本発明の製造方法において用いられるスメクタイト型粘土鉱物とは、2:1層状ケイ酸塩で層間に水分子層を持つ粘土鉱物をいい、膨潤性を持つスメクタイト型粘土鉱物である。
【0022】
本発明の製造方法において用いられるスメクタイト型粘土鉱物は、好ましくは活性白土、酸性白土、サポナイト、ベントナイト、および活性ベントナイトからなる群から選択される一種または二種以上であり、これらの粘度鉱物は天然物であっても、人工的に合成してもよい。本発明の製造方法において用いられるスメクタイト型粘土鉱物は、より好ましくは、酸性白土および活性白土並びにこれらの組合せであり、さらに好ましくは、酸性白土である。
【0023】
本発明の製造方法の好ましい態様として用いられる酸性白土および活性白土は、共に一般的な化学成分として、SiO、Al、Fe、CaO、MgOなどを有するが、本発明の製造方法に使用する場合、SiO/Al比は、3〜12、好ましくは3〜8が好ましい。また、酸性白土および活性白土中に、Fe2〜5質量%、CaO 0〜1.5質量%、MgO 1〜7質量%などを含有する組成のものが好ましい。
【0024】
本発明に使用する酸性白土および活性白土の比表面積(m/g)は、酸性白土の場合には50m/g以上150m/g未満、活性白土の場合には70m/g以上300m/g未満であるものが好ましい。
【0025】
本発明に使用するスメクタイト型粘土鉱物のうち好ましいものとしては、比表面積(m/g)が50以上150未満で、かつ、SiO/Al比が3以上8未満である酸性白土や、比表面積(m/g)が200以上300未満で、かつ、SiO/Al比が3以上11未満である活性白土が挙げられる。
【0026】
上記のような好ましい酸性白土としては、例えば、ミズカエース#20やミズカエース#200、ミズカエース#400、ミズカエース#600、ミズライト(水澤化学社製)などの市販品を用いることができる。また、上記のような好ましい活性白土としては、例えば、ガレオンアースNVZやガレオンアースV2、ガレオンアースNF2(水澤化学社製)などの市販品を用いることができる。また、Clarit100GやClarit125G、Tonsil531N(ズードケミー触媒社製)などの市販ベントナイトもスメクタイト型粘土鉱物として用いることができる。
【0027】
本発明の製造方法において、茶抽出物またはコーヒー抽出物と、スメクタイト型粘土鉱物との接触時間、接触時の温度、および接触させるスメクタイト型粘土鉱物の量は特に限定されるものではなく、茶抽出物およびコーヒー抽出物中のカフェインを除去できれば、接触時間、接触時の温度、および接触させるスメクタイト型粘土鉱物の量はどのようなものであってもよいが、例えば、茶抽出物またはコーヒー抽出物と、スメクタイト型粘土鉱物との接触時間は1秒〜30分間であり、茶抽出物またはコーヒー抽出物と、スメクタイト型粘土鉱物との接触時の温度は0〜30℃である。また、本発明の好ましい態様によれば、茶抽出物と接触させるスメクタイト型粘土鉱物の量は、茶葉10gから抽出された茶抽出物400gに対して、2〜40gであり、茶抽出物とスメクタイト型粘土鉱物との接触時間は1秒〜10分間であり、茶抽出物とスメクタイト型粘土鉱物との接触時の温度は0〜25℃である。さらに、本発明の好ましい態様によれば、コーヒー抽出物と接触させるスメクタイト型粘土鉱物の量は、コーヒー豆50gから抽出されたコーヒー抽出物400gに対して、2〜40gであり、コーヒー抽出物とスメクタイト型粘土鉱物との接触時間は1秒〜10分間であり、コーヒー抽出物とスメクタイト型粘土鉱物との接触時の温度は0〜25℃である。
【0028】
本発明の製造方法において、茶抽出物またはコーヒー抽出物と、スメクタイト型粘土鉱物との接触時のpHは、茶抽出物またはコーヒー抽出物中のカフェインを除去できれば特に限定されるものではないが、pH4.0〜5.9であることが好ましい。従って、茶抽出物またはコーヒー抽出物にスメクタイト型粘土鉱物を接触させる工程は、好ましくはpH4.0〜5.9で処理される工程である。また、スメクタイト型粘土鉱物が酸性白土の場合には、茶抽出物またはコーヒー抽出物と酸性白土とを接触させる場合のpHは4.5〜5.9であることが好ましく、スメクタイト型粘土鉱物が活性白土である場合には、茶抽出物またはコーヒー抽出物と活性白土とを接触させる場合のpHは4.0〜5.4であることが好ましい。
【0029】
本発明の製造方法に用いられる水溶性セルロース誘導体は、セルロースに含まれるヒドロキシル基の一部または全部に、エーテル結合によって官能基が導入されたセルロースエーテルであり、かつ水溶性であるものをいう。本発明の製造方法に用いられる水溶性セルロース誘導体は、本発明の効果を奏するものであれば特に限定されないが、好ましくはアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、並びにカルボキシアルキルセルロースおよびその塩からなる群から選択される一種または二種以上である。より好ましくはアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、並びにカルボキシアルキルセルロースおよびその塩の一種または二種以上のアルキル基の炭素数が1〜3(メチル基、エチル基、イソプロピル基、およびプロピル基)である水溶性セルロース誘導体である。例えば、該アルキル基の炭素数が1であるアルキルセルロースは、メチルセルロースである。
【0030】
アルキルセルロースとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースメチルエチルセルロース、およびプロピルセルロースが挙げられ、ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびイソプロピルセルロースが挙げられ、カルボキシアルキルセルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルエチルセルロースが挙げられ、カルボキシアルキルセルロース塩としては、例えば、カルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩などの一価金属塩)、アンモニウム塩、アミン塩が挙げられ、好ましくはカルボキシアルキルセルロースのアルカリ金属塩であり、より好ましくはカルボキシアルキルセルロースのナトリウム塩(好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム)である。
【0031】
これらの水溶性セルロース誘導体の中でも特に好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース塩(好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム)からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0032】
また、これらの水溶性セルロース誘導体の中でも特により好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース塩(好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム)からなる群から選択される一種または二種以上である。これらの水溶性セルロース誘導体は、飲食品としての安全性の観点および香味の観点から特に優れたものである。
【0033】
本発明の製造方法に用いられる水溶性セルロース誘導体の別の好ましい態様によれば、水溶性セルロース誘導体は、飲食品の安全性の観点から、飲食品として許容されるものであることが好ましく、日本国厚生労働省の食品添加物に関する規制(例えば、食品衛生法)に適合するものであることがより好ましく、さらに好ましくは、飲食品として許容され、かつアルキル基の炭素数が1〜3である(アルキル基がメチル、エチル、イソプロピル、またはプロピル基である)アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、並びにカルボキシアルキルセルロースおよびその塩からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0034】
本発明の製造方法に用いられる水溶性セルロース誘導体の別の好ましい態様によれば、水溶性セルロース誘導体は、水溶性セルロース誘導体水溶液である。茶抽出物またはコーヒー抽出物に接触させる水溶性セルロース誘導体を、あらかじめ水に溶解させた後に、茶抽出物またはコーヒー抽出物に接触させることが好ましい。
【0035】
水溶性セルロース誘導体は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、その粘度は、例えば1%水溶液において10〜30,000mPa・sであり、好ましくは1%水溶液において10〜1,500mPa・sである。水溶性セルロース誘導体の置換度は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば0.1〜3であり、好ましくは0.3〜2である。本発明において、置換度とは、グルコースユニット当たりの、セルロースに含まれるヒドロキシル基の平均置換個数をいう。例えば、セルロースの全グルコースユニットが3であり、セルロースに含まれるヒドロキシル基が置換された個数が全部で3である場合には、置換度は1となる。
【0036】
本発明の製造方法において用いられる水溶性セルロース誘導体における「水溶性」とは、湯または水に溶解し、透明で粘調な水溶液となる性質をいい、好ましくは20℃での、水100gに対する溶質の量が0.1g以上、より好ましくは20℃での、水100gに対する溶質の量が0.1〜10gであることをいう。
【0037】
本発明の製造方法において、茶抽出物またはコーヒー抽出物に接触させる水溶性セルロース誘導体の濃度は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、茶飲料またはコーヒー飲料に対して、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは0.1〜100ppm、さらに好ましくは0.1〜10ppm、特に好ましくは1〜10ppmとなるように加えられる。茶抽出物またはコーヒー抽出物に接触させる水溶性セルロース誘導体の濃度を0.1〜10ppmとすることにより、飲料中のカフェインの除去率を維持しつつ、濁度を低減することができる。また、茶抽出物またはコーヒー抽出物に接触させる水溶性セルロース誘導体の濃度を0.1〜10ppm、好ましくは1〜10ppmとすることにより、茶飲料の香味を維持しつつ、濁度をより顕著に低減することができる。
【0038】
また、本発明の製造方法で得られた茶飲料またはコーヒー飲料は、配合工程、充填工程、殺菌工程などの工程を経て容器詰め茶飲料または容器詰めコーヒー飲料として提供することもできる。
【0039】
本発明の製造方法で得られた茶飲料は、スメクタイト型粘土鉱物および水溶性セルロース誘導体との接触前(処理前)の茶抽出物と比較してカフェイン含有量が、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上低減されたものとすることができる。本発明の製造方法で得られたコーヒー飲料は、スメクタイト型粘土鉱物および水溶性セルロース誘導体との接触前(処理前)のコーヒー抽出物と比較してカフェイン含有量が、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上低減されたものとすることができる。また、茶抽出物、コーヒー抽出物、茶飲料、およびコーヒー飲料中のカフェイン含有量は、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)により測定することができる。また、本発明の製造方法で得られた茶飲料またはコーヒー飲料のカフェイン含有量(濃度)は、例えば10mg/100ml以下、好ましくは2mg/100ml以下、さらに好ましくは1mg/100ml以下である。
【0040】
本発明の製造方法で得られた茶飲料またはコーヒー飲料は、水溶性セルロース誘導体を加えずにスメクタイト型粘土鉱物処理した場合の外観よりも濁度が低減して、好ましいものとなる。すなわち、本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の相対濁度は、水溶性セルロース誘導体を加えずにスメクタイト型粘土鉱物処理した場合に比べて低いことが期待される。濁度の低減は、水溶性セルロース誘導体無添加の茶飲料またはコーヒー飲料の濁度と、水溶性セルロース誘導体添加の茶飲料またはコーヒー飲料の濁度とを測定し、水溶性セルロース誘導体無添加の茶飲料の濁度に比べて、水溶性セルロース誘導体添加の茶飲料またはコーヒー飲料の濁度が低減するか否かにより評価することができる。濁度の測定は当業者に周知であり、例えば、市販されている分光光度計により測定することができる。本発明の製造方法で得られた茶飲料またはコーヒー飲料の相対濁度は、水溶性セルロース誘導体を加えずにスメクタイト型粘土鉱物処理した場合に比べて、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上低減させることができる。
【0041】
本発明の製造方法で得られた茶飲料またはコーヒー飲料は、カフェインが低減されつつ、茶飲料またはコーヒー飲料本来の香味や外観が維持され、香味や外観が通常の茶飲料またはコーヒー飲料と比較して遜色がないものである。従って、本発明の製造方法で得られた茶飲料またはコーヒー飲料は、そのまま飲料として提供することができるが、配合工程、充填工程、殺菌工程などの工程を経て容器詰め飲料として提供することができる。すなわち、本発明によれば、本発明の製造方法により茶飲料またはコーヒー飲料を製造し、次いで、該茶飲料またはコーヒー飲料を配合する工程を含む、容器詰め茶飲料または容器詰めコーヒー飲料の製造方法が提供される。本発明の好ましい態様によれば、本発明の製造方法により製造されたコーヒー飲料または茶飲料が提供される。
【0042】
上記配合工程では、容器詰め茶飲料または容器詰めコーヒー飲料に配合されうる各種任意成分(例えば、酸化防止剤、pH調整剤、保存料、香料)を添加してもよい。また、茶またはコーヒー濃縮物や茶またはコーヒー精製物をスメクタイト型粘土鉱物処理した場合には、容器詰め飲料に適した水を添加して茶飲料に適した濃度まで該茶抽出物を希釈してもよい。
【0043】
また、上記配合工程で得られた配合液を常法に従って殺菌し、容器に充填することができる。殺菌は容器への充填前であっても充填後であってもよい。
【0044】
容器詰め飲料の容器とは、内容物と外気との接触を断つことができる密閉容器を意味し、例えば、PETボトルや瓶等の透明容器や、缶や製紙容器等の不透明容器が挙げられる。特に、本発明の製造方法により製造される茶飲料は、茶飲料の色合いを、容器を通して需要者に演出するため、透明あるいは半透明のPETボトル容器詰め飲料とすることが好ましい。
【0045】
本発明の製造方法の好ましい態様によれば、茶抽出物に、白土と、カルボキシメチルセルロースとを接触させる工程を含む、茶飲料の製造方法が提供される。
【0046】
本発明の製造方法のより好ましい態様によれば、緑茶抽出物に、酸性白土と、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩とを接触させる工程を含む、緑茶飲料の製造方法が提供される。
【0047】
本発明の製造方法のさらに好ましい態様によれば、緑茶抽出物に、酸性白土と、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩の水溶液とを接触させる工程を含む、緑茶飲料の製造方法が提供される。
【0048】
本発明の製造方法のさらに好ましい態様によれば、緑茶抽出物に、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩の水溶液を加えた酸性白土を接触させる工程を含む、緑茶飲料の製造方法が提供される。
【0049】
茶飲料またはコーヒー飲料の濁度低減方法および香味低減抑制方法
本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の濁度低減方法は、茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを接触させることを特徴とする、茶飲料またはコーヒー飲料の濁度低減方法である。本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の濁度低減方法は、好ましくは、カフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の濁度低減方法である。本発明の方法を用いることにより、茶飲料およびコーヒー飲料の外観が、通常の茶飲料およびコーヒー飲料と遜色ない程度に維持される。本発明の茶飲料およびコーヒー飲料中の濁度は、例えば分光光度計を用いて測定することができる。
【0050】
本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の香味低減抑制方法は、茶抽出物またはコーヒー抽出物に、スメクタイト型粘土鉱物と、水溶性セルロース誘導体とを接触させることを特徴とする、茶飲料またはコーヒー飲料の香味低減抑制方法である。本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の香味低減抑制方法は、好ましくは、カフェイン低減茶飲料またはカフェイン低減コーヒー飲料の香味低減抑制方法である。本発明の方法により得られた茶飲料またはコーヒー飲料は、該飲料中のカフェイン含有量が低減され、かつ通常の茶飲料またはコーヒー飲料と遜色ない程度に茶飲料またはコーヒー飲料の香味が維持される。本発明において、香味とは茶またはコーヒーが有する本来の香味を意味する。
【0051】
本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の濁度低減方法および香味低減抑制方法によれば、カフェイン含有量を処理前の茶抽出物またはコーヒー抽出物と比較して、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上低減させることができるとともに、スメクタイト型粘土鉱物処理によって生じる濁度の上昇が抑制され、香味や外観の変化が抑制される点で有利である。本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の濁度低減方法および香味低減抑制方法は、上記の本発明の茶飲料またはコーヒー飲料の製造方法に関する記載に従って実施することができ、例えば工業的生産の際にも処理前の茶抽出物およびコーヒー抽出物と比較したカフェイン含有量の低減割合(カフェイン除去率)を維持しながら実施することができる。
【0052】
本発明の濁度低減方法の好ましい態様によれば、茶抽出物に、白土と、カルボキシメチルセルロースとを接触させることを特徴とする、茶飲料の濁度低減方法が提供される。
【0053】
本発明の香味低減抑制方法の好ましい態様によれば、茶抽出物に、白土と、カルボキシメチルセルロースとを接触させることを特徴とする、茶飲料の香味低減抑制方法が提供される。
【0054】
本発明の濁度低減方法のより好ましい態様によれば、緑茶抽出物に、酸性白土と、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩とを接触させることを特徴とする、緑茶飲料の濁度低減方法が提供される。
【0055】
本発明の香味低減抑制方法のより好ましい態様によれば、緑茶抽出物に、酸性白土と、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩とを接触させることを特徴とする、緑茶飲料の香味低減抑制方法が提供される。
【0056】
本発明の濁度低減方法のさらに好ましい態様によれば、緑茶抽出物に、酸性白土と、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩の水溶液とを接触させることを特徴とする、緑茶飲料の濁度低減方法が提供される。
【0057】
本発明の濁度低減方法のさらに好ましい態様によれば、緑茶抽出物に、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩の水溶液を加えた酸性白土を接触させることを特徴とする、緑茶飲料の濁度低減方法が提供される。
【0058】
本発明の香味低減抑制方法のさらに好ましい態様によれば、緑茶抽出物に、酸性白土と、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩の水溶液とを接触させることを特徴とする、緑茶飲料の香味低減抑制方法が提供される。
【0059】
本発明の香味低減抑制方法のさらに好ましい態様によれば、緑茶抽出物に、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩の水溶液を加えた酸性白土を接触させることを特徴とする、緑茶飲料の香味低減抑制方法が提供される。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。以下の実施例で用いられているカルボキシメチルセルロースは、全てカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0061】
[試験1]水溶性セルロース誘導体の種類と濁度低減効果
(1)緑茶抽出液の調製
緑茶葉100gに対して70℃の熱水4000gを添加し、6分間抽出した。抽出後、
に目開き100μmのメッシュを通し、20℃まで冷却し、緑茶抽出液を得た。
【0062】
(2)緑茶抽出液への白土および水溶性セルロース誘導体処理
下記表1に挙げる種々の水溶性セルロース誘導体を100ppmとなるように水または湯に溶解し、室温になるまで静置した。溶解した水溶性セルロース誘導体溶液40gに、酸性白土(水澤化学社製、ミズカエース#20)8gを懸濁させた後、上記(1)で得られた緑茶抽出液360gに添加し(緑茶抽出液添加後の水溶性セルロース誘導体の濃度は10ppmである)、室温(25℃)で5分間接触させた。5分経過と同時に遠心分離機(久保田製作所社製、5930)を用いて3,000rpm、5分間、室温で遠心分離処理を行い、酸性白土を沈降除去し、上澄みの緑茶抽出液を得た。
【表1】
※表1中、カルボキシメチルセルロースは第一工業製薬社製であり、メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースはダウ・ケミカル社製であり、ヒドロキシプロピルセルロースは日本曹達社製であり、ヒドロキシエチルセルロースはダイセルファインケム社製である。以下の表2〜4および表6も同じである。
【0063】
(3)濁度測定
上記(2)で得られた緑茶抽出液を、分光光度計(日立社製、U−3310)を用いてOD660の吸光度を測定した。得られた吸光度のコントロール区(添加なし)(比較例1)に対する吸光度を相対濁度として算出した。その結果を図1に示す。
【0064】
図1の結果から、緑茶抽出液を白土で処理する際に、水溶性セルロース誘導体を接触させることにより、水溶性セルロース誘導体を添加しない場合と比較して、緑茶飲料の濁度が低減されることがわかった。
【0065】
[試験2]水溶性セルロース誘導体の物性と濁度低減効果
(1)緑茶抽出液の調製
試験1の(1)と同様の処理を行い、緑茶抽出液を得た。
【0066】
(2)緑茶抽出液への白土および水溶性セルロース誘導体処理
下記表2に挙げる種々の物性の水溶性セルロース誘導体溶液について、試験1と同様の手順で水溶性セルロース誘導体溶液と酸性白土および緑茶抽出液とを接触させ、遠心分離処理を行い、緑茶抽出液を得た。水溶性セルロース誘導体の代表例としてカルボキシメチルセルロースを用いた。緑茶抽出液添加後の水溶性セルロース誘導体の濃度は1ppmとなるように調整した。
【表2】
※置換度とは、グルコースユニット当たりの、セルロースに含まれるヒドロキシル基の平均置換個数をいう。粘度は、例えば粘度計(単一円筒形回転粘度計:東機産業株式会社製:型番TVB10M:スピンドルM4×30rpm:25℃)を用いて測定することができる。
【0067】
(3)濁度測定
上記(2)で得られた緑茶抽出液を、試験1と同様にOD660の吸光度を測定した。得られた吸光度のコントロール区(添加なし)(比較例1)に対する吸光度を相対濁度として算出した。その結果を図2に示す。
【0068】
図2の結果から、緑茶抽出液を白土で処理する際に、水溶性セルロース誘導体を接触させることにより、水溶性セルロース誘導体の粘度および置換度などの物性の違いに関わらず、緑茶飲料の濁度が低減することがわかった。
【0069】
[試験3]水溶性セルロース誘導体の添加濃度と濁度低減効果
(1)緑茶抽出液の調製
試験1の(1)と同様の処理を行い、緑茶抽出液を得た。
【0070】
(2)緑茶抽出液への白土および水溶性セルロース誘導体処理
下記表3に挙げる種々の濃度の水溶性セルロース誘導体溶液について、試験1と同様の手順で水溶性セルロース誘導体溶液と酸性白土および緑茶抽出液とを接触させ、遠心分離処理を行い、緑茶抽出液を得た。緑茶抽出液添加後の水溶性セルロース誘導体の濃度が、0.1、1、および10ppmとなるように調整した。
【表3】
【0071】
(3)濁度測定
上記(2)で得られた緑茶抽出液を、試験1と同様にOD660の吸光度を測定した。得られた吸光度のコントロール区(添加なし)(比較例1)に対する吸光度を相対濁度として算出した。その結果を図3に示す。
【0072】
図3の結果から、緑茶抽出液を白土で処理する際に、水溶性セルロース誘導体を接触させることにより、低濃度でも緑茶飲料の濁度が低減されることがわかった。また、水溶性セルロース誘導体の添加濃度が高いほど、濁度低減効果が顕著であることがわかった。
【0073】
[試験4]水溶性セルロース誘導体添加濃度とカフェイン除去率
(1)緑茶抽出液の調製
試験1の(1)と同様の処理を行い、緑茶抽出液を得た。
【0074】
(2)緑茶抽出液への白土および水溶性セルロース誘導体処理
下記表4に挙げる種々の濃度の水溶性セルロース誘導体溶液について、試験3と同様に酸性白土および緑茶抽出液とを接触させ、遠心分離処理を行い、緑茶抽出液を得た。
【表4】
【0075】
(3)カフェイン測定
得られた白土処理緑茶抽出液について、メンブレンフィルター(アドバンテック(株)製DISMIC 親水性PTFE、0.45μm)でろ過した後、高速液体クロマトグラフィーを用いて下記表5に表す条件でカフェイン量を定量した。結果を図4に示す。
【表5】
【0076】
図4の結果から、緑茶抽出液を白土で処理する際に、水溶性セルロース誘導体を接触させた場合であっても、カフェインが十分に除去された緑茶抽出液を得ることができることがわかった。また、水溶性セルロース誘導体の濃度が0.1〜10ppmでカフェインが90%以上除去された緑茶抽出液を得ることができた。
【0077】
[試験5]水溶性セルロース誘導体添加と香味低減抑制効果
(1)緑茶抽出液の調製
試験1の(1)と同様の処理を行い、緑茶抽出液を得た。
【0078】
(2)緑茶抽出液への白土および水溶性セルロース誘導体処理
下記表6に挙げる種々の水溶性セルロース誘導体溶液について、試験1と同様に水溶性セルロース誘導体溶液と酸性白土および緑茶抽出液とを接触させ、遠心分離処理を行い、カフェインの除去された緑茶抽出液を得た。白土処理緑茶抽出液400gを0.2μmメンブランフィルターで濾過し、得られた濾液にL−アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを添加後、イオン交換水で1000gとして、緑茶飲料を得た。
【0079】
(3)香味評価
得られた緑茶飲料について、訓練されたパネリスト6名によって香味について官能評価を行った。香味評価は水溶性セルロース誘導体無添加区(比較例1)をコントロール区(4点)とし、緑茶飲料としての総合的な香味を5段階評価で相対評価した。評価基準は以下に示したとおりである。
【0080】
官能評価基準
5点:香味が良好になっている
4点:コントロール区(比較例1)と同等である
3点:コントロール区(比較例1)よりわずかに劣っている
2点:コントロール区(比較例1)より明らかに劣っている
1点:コントロール区(比較例1)よりかなり顕著に劣っている
【0081】
評価点はさらに以下の評価基準でレベル分けした。◎が比較例1の緑茶飲料(水溶性セルロース誘導体無添加区)の香味に最も近く、○、△、×の順に従って、比較例1の緑茶飲料(水溶性セルロース誘導体無添加区)からの香味の変化が大きくなるものである。結果を表6に示す。
◎:(5段階評価で3.5点以上)
○:(5段階評価で3.0点以上3.5点未満)
△:(5段階評価で2.5点以上3.0点未満)
×:(5段階評価で2.5点未満)
【表6】
【0082】
上記表6の結果から、緑茶抽出液を白土で処理する際に、水溶性セルロース誘導体を接触させた場合であっても、水溶性セルロース誘導体を処理していない場合と比べて香味の点で遜色がない緑茶抽出液を得ることができることがないことがわかり、特にカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを接触させた場合には、より遜色がない緑茶抽出液を得ることができることがわかった。また、水溶性セルロース誘導体の濃度が、試験5の1ppmに示されているように0.1〜10ppm、あるいは1〜10ppmで、香味の点で遜色がない緑茶抽出液を得ることが期待できる。
【0083】
[試験6]濾過助剤添加と濁度低減効果
(1)緑茶抽出液の調製
試験1の(1)と同様の処理を行い、緑茶抽出液を得た。
【0084】
(2)緑茶抽出液への白土および濾過助剤処理
下記表7に挙げる種々の濾過助剤について、100ppmとなるように水に懸濁させた。試験1と同様の手順で濾過助剤分散液と酸性白土および緑茶抽出液とを接触させ(緑茶抽出液添加後の濾過助剤の濃度は10ppmである)、遠心分離処理を行い、カフェインの除去された緑茶抽出液を得た。
【表7】
※表7中、粉末セルロースはシンワフーズケミカル社製であり、珪藻土およびパーライトは昭和化学工業社製である。粉末セルロース、珪藻土、およびパーライトは水不溶性である。
【0085】
(3)濁度測定
上記(2)で得られた緑茶抽出液を、試験1と同様にOD660の吸光度を測定した。得られた吸光度のコントロール区(添加なし)(比較例1)に対する吸光度を相対濁度として算出した。その結果を図5に示す。
【0086】
図5の結果から、緑茶抽出液を白土で処理する際に、種々の濾過助剤を接触させることによっては、緑茶飲料の濁度が低減されないことがわかった。
【0087】
[試験7]増粘安定剤添加と濁度低減効果
(1)緑茶抽出液の調製
試験1の(1)と同様の処理を行い、緑茶抽出液を得た。
【0088】
(2)緑茶抽出液への白土および増粘安定剤処理
下記表8に挙げる、セルロース誘導体以外の種々の増粘安定剤溶液について、100ppm溶液を作製した。試験1と同様の手順で増粘安定剤溶液と、酸性白土および緑茶抽出液とを接触させ(緑茶抽出液添加後の増粘安定剤の濃度は10ppmである)、遠心分離処理を行い、カフェインの除去された緑茶抽出液を得た。
【表8】
※表8中、カラギナンは三栄源エフ・エフ・アイ社製であり、キサンタンガムはCPケルコ社製であり、アルギン酸ナトリウムはキミカ社製であり、およびポリグルタミン酸は明治フードマテリア社製である。
【0089】
(3)濁度測定
上記(2)で得られた緑茶抽出液を、試験1と同様にOD660の吸光度を測定した。得られた吸光度のコントロール区(添加なし)(比較例1)に対する吸光度を相対濁度として算出した。その結果を図6に示す。
【0090】
図6の結果から、緑茶抽出液を白土で処理する際に、セルロース誘導体以外の種々の増粘安定剤を接触させることによっては、緑茶飲料の濁度が低減されないことがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6