特許第6367064号(P6367064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367064
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/00 20060101AFI20180723BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20180723BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20180723BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20180723BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20180723BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20180723BHJP
   F16J 15/447 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
   F01D11/00
   F01D25/24 P
   F02C7/28 Z
   F16J15/52
   F16J3/04 Z
   F16J15/16 Z
   !F16J15/447
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-190782(P2014-190782)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-61250(P2016-61250A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 紀和
(72)【発明者】
【氏名】岩井 章吾
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−285924(JP,A)
【文献】 特開2014−015927(JP,A)
【文献】 特開2002−155703(JP,A)
【文献】 特開2014−020319(JP,A)
【文献】 米国特許第5265412(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/00
F01D 25/24
F02C 7/28
F16J 3/04
F16J 15/16
F16J 15/447
F16J 15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の流路を形成する第1筒部と、
前記第1筒部の一方の端部側に配置され、前記流路の下流側に配置される第2筒部と、
前記第1筒部と前記第2筒部との間に配置される中間筒部と、
前記第1筒部内に設けられる静翼と、
前記静翼の直下流に設けられる動翼と、
前記動翼の先端と前記第1筒部との間に設けられ、前記作動流体よりも温度の低い冷却媒体が流れる流路を前記第1筒部との間に形成する入熱防止部と、
前記第1筒部と前記中間筒部との間に設けられ、径方向の位置ずれに追従する第1シール部と、
前記第2筒部と前記中間筒部との間に設けられ、軸方向の位置ずれに追従する第2シール部と、
を有するタービン
【請求項2】
作動流体の流路を形成する第1筒部と、
前記第1筒部の一方の端部側に配置され、前記流路の下流側に配置される第2筒部と、
前記第1筒部と前記第2筒部との間に配置される中間筒部と、
前記第1筒部内に設けられる静翼と、
前記静翼の直下流に設けられる動翼と、
前記動翼の先端と前記第1筒部および前記中間筒部との間に設けられ、前記作動流体よりも温度の低い冷却媒体が流れる流路を前記第1筒部および前記中間筒部との間に形成する入熱防止部と、
前記第2筒部と前記中間筒部との間に設けられ、径方向の位置ずれに追従する第1シール部と、
前記第1筒部と前記中間筒部との間に設けられ、軸方向の位置ずれに追従する第2シール部と、
を有するタービン。
【請求項3】
前記第1シール部は、嵌合構造を有する
請求項1または2に記載のタービン
【請求項4】
前記第2シール部は、接触フィンを有するシール部材を具備する
請求項1から3のいずれかに記載のタービン
【請求項5】
前記第2シール部は、ベローズを有する
請求項1から3のいずれかに記載のタービン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シール構造およびタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素、燃料、および酸素を燃焼器に導入し、発生した燃焼ガスでタービンを回転させて発電するCOサイクル発電システムの開発が進められている。COサイクル発電システムによれば、発電とCO回収とを同時に行うことができ、高効率な発電を行うことができる。以下、COサイクル発電システムに用いられるタービンをCOタービンと記す。
【0003】
COタービンは、作動流体である燃焼ガスの温度が高く、かつケーシングの内外における圧力差が大きい。このため、従来のシール構造では、ケーシングを構成する隣接する部材の間を十分にシールできない。例えば、蒸気タービンの場合、ケーシングの内外における圧力差は30MPa程度と大きいが、作動流体の温度は600℃程度と低い。一方、ガスタービンの場合、作動流体の温度は1000℃以上と高いが、ケーシングの内外における圧力差は3MPa程度と低い。COタービンの場合、ケーシングの内外における圧力差が30MPa程度と大きく、かつ作動流体の温度が1000℃以上と高い。
【0004】
図10は、COタービンの最終段落付近の一例を示す断面図である。COタービン100は、静止部品111と回転部品112とを有する。静止部品111は、円筒形状の内部ケーシング113および図示しない外部ケーシングを有する。
【0005】
ケーシング113の内側には、周方向に複数の静翼114を有する静翼翼列が設けられる。静翼114は、内側から順に、内側シュラウド115、静翼本体116、および外側シュラウド117を有する。静翼114には、さらに、燃焼ガスからケーシング113への入熱を防止するための延長部118が設けられる。また、静翼翼列の直下流側には、タービンロータ121のロータホイール122に周方向に一定間隔で植設された複数の動翼123を有する動翼翼列が設けられる。静翼翼列と動翼翼列とは、軸方向に沿って交互に配設されている。静翼翼列と、この静翼翼列の直下流側の動翼翼列とで、一つのタービン段落が構成されている。なお、図中、符号124は、燃焼ガスの流れを示す。また、図中、符号125は、冷却媒体の流れを示す。
【0006】
ケーシング113は、例えば、燃焼ガスの流れの上流側から下流側に向かって、第1筒部126および第2筒部127を有する。図示しないが、第1筒部126は、第2筒部127側の端部以外の部分で固定される。また、第2筒部127は、第1筒部126側の端部以外の部分で固定される。第1筒部126と第2筒部127との間は、シール部128によりシールされる。第1筒部126の内面は延長部118により覆われており、第1筒部126と延長部118との間に流れる冷却媒体により、第1筒部126が冷却される。
【0007】
シール部128は、例えば、接続フィンを有するシール部材を具備する。このようなシール部材については、接続フィンを除いた部分が第2筒部127の内側部分に収容され、接続フィンが第1筒部126の外面に接触する。
【0008】
上記構造のCOタービン100の場合、第1筒部126の内面には冷却媒体が接触するために温度が低くなる一方、第2筒部127の内面には燃焼ガスが接触するために温度が高くなる。
【0009】
第1筒部126の温度よりも第2筒部127の温度が高くなると、第1筒部126の熱膨張による径方向の伸び(熱伸び)に比べて第2筒部127の径方向の熱伸びが大きくなる。このような径方向の熱伸びの違いにより、第1筒部126と第2筒部127との間に径方向の位置ずれが発生する。また、軸方向についても、第1筒部126と第2筒部127との互いの方向への熱伸びにより、軸方向の位置ずれが発生する。図示されるシール部128の場合、軸方向の位置ずれには追従できるが、径方向の位置ずれには十分に追従できない。
【0010】
また、シール部128として、図11に示されるものが挙げられる。図11に示されるシール部128は、第1筒部126および第2筒部127の内面に設けられた一対の溝部と、この一対の溝部に収容された環状のシール部材とを有する。このようなシール部128については、ケーシング113の内外の圧力差により、溝部の側面にシール部材が押し付けられてシールされる。しかし、このようなシール部128の場合、径方向の位置ずれには追従できるが、軸方向の位置ずれには十分には追従できない。
【0011】
さらに、シール部128として、図12に示されるものが挙げられる。図12に示されるシール部128は、第1筒部126の端面と第2筒部127の端面とに跨る薄板状のシール部材を有する。このようなシール部128については、シール部材の弾性変形により、第1筒部126と第2筒部127との径方向および軸方向の位置ずれに追従できる。しかし、ケーシング113の内外の圧力差が大きくなると、強度不足によりシール部材が破損するおそれがある。一方、シール部材の強度を高くすると弾性変形しにくくなり、径方向および軸方向の位置ずれに十分に追従できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−140945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記したように、温度が異なる一対の筒部の間をシールする場合、径方向および軸方向の双方の位置ずれに追従する必要がある。本発明が解決しようとする課題は、温度が異なる一対の筒部の間をシールできるシール構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
実施形態のタービンは、第1筒部、第2筒部、中間筒部、静翼、動翼、入熱防止部、第1シール部、および第2シール部を有する。第1筒部は、タービンの作動流体の流路を形成する。第2筒部は、第1筒部の一方の端部側であって、第1筒部よりも下流側に配置される。中間筒部は、第1筒部と第2筒部との間に配置される。静翼は、第1筒部内に設けられる。動翼は、静翼の直下流に設けられる。入熱防止部は、動翼の先端と第1筒部との間に設けられ、作動流体よりも温度の低い冷却媒体が流れる流路を第1筒部との間に形成する。第1シール部は、第1筒部と中間筒部との間に設けられ、径方向の位置ずれに追従する。第2シール部は、第2筒部と中間筒部との間に設けられ、軸方向の位置ずれに追従する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態のシール構造(熱伸び発生前)の断面図である。
図2】第1の実施形態のシール構造(熱伸び発生後)の断面図である。
図3】第2の実施形態のCOタービン(熱伸び発生前)を示す断面図である。
図4】第2の実施形態のCOタービン(熱伸び発生後)を示す断面図である。
図5】第2の実施形態のガスタービン設備の系統図である。
図6】第3の実施形態のCOタービン(熱伸び発生前)を示す断面図である。
図7】第3の実施形態のCOタービン(熱伸び発生後)を示す断面図である。
図8】第4の実施形態のCOタービン(熱伸び発生前)を示す断面図である。
図9】第5の実施形態のCOタービン(熱伸び発生前)を示す断面図である。
図10】従来のシール部が適用されたCOタービンの第1の例を示す断面図である。
図11】従来のシール部が適用されたCOタービンの第2の例を示す断面図である。
図12】従来のシール部が適用されたCOタービンの第3の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1図2は、第1の実施形態のシール構造を示す断面図である。
図1は、熱伸び発生前の状態を示している。図2は、熱伸び発生後の状態を示している。なお、図1図2には、中心軸に対して一方の径方向側の断面のみを示している。
【0018】
本実施形態のシール構造10は、第1筒部11の温度に比べて第2筒部12の温度が高くなるものに好適に用いられる。
【0019】
シール構造10は、第1筒部11、第2筒部12、および中間筒部13を有する。第1筒部11、第2筒部12、および中間筒部13は、それぞれの中心軸が一致するように設けられる。第2筒部12は、第1筒部11の軸方向の一方の端部側に配置される。図示しないが、第1筒部11は、第2筒部12側の端部を除いた部分で固定される。また、第2筒部12は、第1筒部11側の端部を除いた部分で固定される。
【0020】
中間筒部13は、第1筒部11と第2筒部12との径方向の間に配置されるとともに、第1筒部11と第2筒部12との軸方向の間に配置される。また、中間筒部13は、第1筒部11側が第1筒部11の端部の外側に配置され、かつ第2筒部12側が第2筒部12の端部の内側に配置される。なお、中間筒部13は、その温度が第1筒部11の温度よりも第2筒部12の温度に近くなるように構成される。特に、中間筒部13は、その温度が第2筒部12の温度と等しくなるように構成されることが好ましい。
【0021】
第1シール部14は、径方向の位置ずれに追従するものであり、第1筒部11と中間筒部13との間に設けられる。具体的には、第1筒部11と中間筒部13とが径方向に重なり合う部分に設けられる。
【0022】
第1シール部14は、嵌合構造を有する。嵌合構造は、第1筒部11に設けられた嵌合凸部11aおよび嵌合凹部11bと、中間筒部13に設けられた嵌合凸部13aおよび嵌合凹部13bとから構成される。
【0023】
嵌合凸部11a、嵌合凹部11bは、第1筒部11における第2筒部12側の端部に設けられる。嵌合凸部11aは、嵌合凹部11bよりも第2筒部12側に設けられる。嵌合凸部11aは、外側に凸状となるように設けられ、嵌合凹部11bは、内側に凹状となるように設けられる。
【0024】
嵌合凸部13a、嵌合凹部13bは、中間筒部13における第1筒部11側の端部に設けられる。嵌合凸部13aは、嵌合凹部13bよりも第1筒部11側に設けられる。嵌合凸部13aは、内側に凸状となるように設けられ、嵌合凹部13bは、外側に凹状となるように設けられる。
【0025】
嵌合凸部11aの嵌合凹部11b側の表面と、嵌合凸部13aの嵌合凹部13b側の表面とは、第1筒部11、第2筒部12、および中間筒部13からなる部分の内外の圧力差により互いに接触する。この一対の表面の接触により、第1筒部11と中間筒部13との間がシールされる。また、この一対の表面が摺動することにより、第1筒部11と中間筒部13との間の径方向の位置ずれに追従する。
【0026】
第2シール部15は、軸方向の位置ずれに追従するものであり、第2筒部12と中間筒部13との間に設けられる。具体的には、第2筒部12と中間筒部13とが径方向に重なり合う部分に設けられる。
【0027】
第2シール部15は、接触フィンを有するシール部材を具備する。シール部材は、接触フィンを除いた部分が第2筒部12の内側部分に収容され、接触フィンが中間筒部13の外面に接触する。中間筒部13に接触フィンが接触することにより、第2筒部12と中間筒部13との間がシールされる。また、中間筒部13と接触フィンとが摺動することにより、第2筒部12と中間筒部13との間の軸方向の位置ずれに追従する。
【0028】
第1筒部11の温度に比べて第2筒部12の温度が高くなった場合、第1筒部11の径方向の熱伸びに比べて第2筒部12の径方向の熱伸びが大きくなり、第1筒部11の壁部に対して第2筒部12の壁部が径方向の外側へと移動する(図2)。
【0029】
この際、中間筒部13の温度が第1筒部11の温度よりも第2筒部12の温度に近いと、第2筒部12と同様、第1筒部11の壁部に対して中間筒部13の壁部が径方向の外側へと移動する。このとき、第1筒部11と中間筒部13との間には径方向の位置ずれに追従する第1シール部14が設けられていることから、第1筒部11と中間筒部13との間が有効にシールされる。
【0030】
また、第1筒部11および第2筒部12は軸方向にも熱伸びするが、第2筒部12と中間筒部13との間に設けられた軸方向に位置ずれする第2シール部15により有効にシールされる。特に、第2筒部12と中間筒部13との壁部の径方向の外側への移動量がほぼ等しく、第2筒部12と中間筒部13との間の隙間が常に一定に保たれることから、軸方向に位置ずれする第2シール部15により有効にシールされる。
【0031】
以上説明したように、シール構造10によれば、第1筒部11と第2筒部12との間に中間筒部13を有することで、第1筒部11と第2筒部12との間の位置ずれを、径方向の位置ずれと軸方向の位置ずれに分割できる。このため、径方向の位置ずれに追従する第1シール部14と、軸方向の位置ずれに追従する第2シール部15とにより、第1筒部11と第2筒部12との間を有効にシールできる。
【0032】
また、第1筒部11または第2筒部12の一方の筒部の温度と中間筒部13の温度とを近くすることで、これらの径方向の熱伸びが近くなり、これらの間の径方向の隙間を常に一定に保つことができる。このため、軸方向の位置ずれに追従する第2シール部15により、これらの間を有効にシールできる。
【0033】
一方、第1筒部11または第2筒部12の他方の筒部と中間筒部13との間の径方向の隙間は大きくなるが、これらの間には軸方向の位置ずれが発生しないことから、径方向の位置ずれに追従する第1シール部37により有効にシールできる。また、第1シール部14の構造として嵌合構造を適用することで、大きな位置ずれにも追従できる。
【0034】
なお、第1筒部11、第2筒部12、および中間筒部13は、中間筒部13の温度が第2筒部12の温度よりも第1筒部11の温度に近くなるように構成されてもよい。中間筒部13の温度が第2筒部12の温度よりも第1筒部11の温度に近くなるように構成される場合、第1筒部11と中間筒部13との間に軸方向の位置ずれに追従する第2シール部15が設けられ、第2筒部12と中間筒部13との間に径方向の位置ずれに追従する第1シール部14が設けられることが好ましい。
【0035】
(第2の実施形態)
図3図4は、第2の実施形態のCOタービン20を示す断面図である。
なお、図3は、熱伸び発生前の状態を示している。図4は、熱伸び発生後の状態を示している。
【0036】
COタービン20は、実質的に第1の実施形態のシール構造を有するものである。COタービン20は、静止部品20aおよび回転部品20bを有する。静止部品20aは、円筒形状の内部ケーシング21および図示しない外部ケーシングを有する。ケーシング21の内側には、周方向に複数の静翼22を有する静翼翼列が設けられる。静翼22は、内側から順に、内側シュラウド23、静翼本体24、および外側シュラウド25を有する。また、静翼翼列の直下流側には、タービンロータ26のロータホイール27に周方向に一定間隔で植設された複数の動翼28を有する動翼翼列が設けられる。静翼翼列と動翼翼列とは、軸方向に沿って交互に配設される。静翼翼列と、この静翼翼列の直下流側の動翼翼列とで、一つのタービン段落が構成される。
【0037】
ケーシング21の内側には、静翼翼列および動翼翼列を有する円環状の燃焼ガス通路が形成される。燃焼ガスは、矢印31に示されるように、図中の左側から右側へと流れる。動翼28の周囲には、静翼22から延長される延長部32が設けられる。延長部32は、燃焼ガスからケーシング21への入熱を防止するために設けられる。また、ケーシング21と延長部32との間には、矢印33に示されるように、図中の左側から右側へと冷却媒体が流れる。冷却媒体としては、例えば、COサイクル発電システムにおける超臨界流体の二酸化炭素が用いられる。冷却媒体は、ケーシング21の外側から外側シュラウド25の内部に導入され、さらに外側シュラウド25に設けられた孔部を通してケーシング21と延長部32との間に供給される。
【0038】
ケーシング21は、第1筒部34、第2筒部35、中間筒部36、第1シール部37、および第2シール部38を有する。第1筒部34、第2筒部35は、燃焼ガスの流路を形成し、第1筒部34の下流側に第2筒部35が配置される。第1シール部37は、第1筒部34と中間筒部36との間に設けられ、嵌合構造を有する。第2シール部38は、第2筒部35と中間筒部36との間に設けられ、嵌合構造を有しない。
【0039】
第1筒部34は、第2筒部35側の端部に嵌合凸部34aおよび嵌合凹部34bを有する。嵌合凸部34aは、嵌合凹部34bよりも第2筒部35側に設けられる。嵌合凸部34aは、外側に凸状となるように設けられ、嵌合凹部34bは、内側に凹状となるように設けられる。
【0040】
第2筒部35は、第1筒部34側の端部が第1筒部34における第2筒部35側の端部を外側から覆うように設けられる。
【0041】
中間筒部36は、一方の端部側が第1筒部34と第2筒部35との径方向の間に設けられ、他方の端部側が第1筒部34における第2筒部35側の端面を覆うように設けられる。
【0042】
中間筒部36は、第1筒部34側に嵌合凸部36aおよび嵌合凹部36bを有する。嵌合凸部36aは、嵌合凹部36bよりも第1筒部34側に設けられる。嵌合凸部36aは、内側に凸状となるように設けられ、嵌合凹部36bは、外側に凹状となるように設けられる。
【0043】
中間筒部36の外径は、軸方向に一定である。また、中間筒部36の内径は、嵌合凸部36aおよび嵌合凹部36bを除いた部分については、第1筒部34側が第1筒部34とほぼ同様であり、反対側に向かって徐々に拡大しており、燃焼ガスに接触できるようになっている。
【0044】
第1シール部37は、第1筒部34に設けられた嵌合凸部34aおよび嵌合凹部34bと、中間筒部36に設けられた嵌合凸部36aおよび嵌合凹部36bとから構成される嵌合構造を有する。第2シール部38は、第2筒部35の内側部分に収容された接触フィンを有するシール部材を具備する。
【0045】
延長部32は、第1筒部34における第2筒部35側の端部まで設けられており、中間筒部36の内面を覆わずに第1筒部34の内面を覆っている。これにより、第1筒部34が燃焼ガスに接触せずに冷却媒体に接触し、第2筒部35および中間筒部36が冷却媒体に接触せずに燃焼ガスに接触する。
【0046】
ここで、冷却媒体の流量は、燃焼ガスの流量に比べて非常に少ない。また、冷却媒体は、第1筒部34と延長部32との間から流れ出ると同時に燃焼ガスと混ざり合う。このような理由から、冷却媒体は、第1筒部34と延長部32との間から流れ出たときにはもはや冷却媒体としては存在しない。従って、第2筒部35および中間筒部36は、実質的に燃焼ガスのみと接触する。
【0047】
第2筒部35および中間筒部36に燃焼ガスが接触する場合、第2筒部35および中間筒部36の温度がほぼ等しくなる。このため、第2筒部35および中間筒部36の径方向の熱伸びが同程度となり、第1筒部34の壁部に対して中間筒部36および第2筒部35の壁部が径方向の外側へと移動する(図4)。
【0048】
第1筒部34と中間筒部36との間には、径方向の位置ずれに追従する第1シール部37が設けられている。このため、第1筒部34と中間筒部36との間は、第1シール部37によりシールされる。
【0049】
一方、第1筒部34および第2筒部35は軸方向にも熱伸びするが、第2筒部35と中間筒部36との間に設けられた軸方向に位置ずれする第2シール部38により有効にシールされる。特に、第2筒部35の壁部の径方向の外側への移動量と中間筒部36の壁部の径方向の外側への移動量とがほぼ等しく、第2筒部35と中間筒部36との間の隙間が常に一定に保たれることから、軸方向に位置ずれする第2シール部38により有効にシールされる。
【0050】
第2筒部35と中間筒部36との径方向の熱伸びをほぼ等しくする観点から、第2筒部35と中間筒部36との構成材料は同様とすることが好ましい。第2筒部35、中間筒部36の構成材料としては、耐熱性に優れるニッケル基合金が好ましい。一方、第1筒部34の構成材料は、必ずしも耐熱性が要求されず、また生産コストの観点から、鉄基合金が好ましい。
【0051】
図5は、COタービン20が適用されるガスタービン設備40の系統図である。
ガスタービン設備40は、例えば、COサイクル発電システムに用いられる。
【0052】
燃焼器41には、酸素および燃料が供給されて燃焼する。また、燃焼器41には、この燃焼以前に燃焼器41において発生した二酸化炭素が供給される。二酸化炭素は、例えば、酸素に混合されて燃焼に利用される。燃料および酸素の流量は、例えば、それぞれが完全に混合した状態において量論混合比(理論混合比)となるように調整される。燃料としては、例えば、天然ガス、メタンなどの炭化水素や、石炭ガス化ガスなどが使用される。
【0053】
燃焼器41から排出された、二酸化炭素および水蒸気からなる燃焼ガス(作動流体)は、COタービン20に導入される。COタービン20において膨張仕事をした燃焼ガスは、第1の熱交換器42を通り、さらに第2の熱交換器43を通る。第2の熱交換器43を通る際、水蒸気が凝縮して水となる。水は、配管44を通り外部に排出される。なお、COタービン20には、発電機45が連結される。
【0054】
水蒸気が分離された二酸化炭素は、圧縮機46で昇圧されて超臨界流体となる。昇圧された二酸化炭素の一部は、第1の熱交換器42において加熱され、燃焼器41に供給される。燃焼器41に供給された二酸化炭素は、例えば、燃焼器41の上流側から燃料や酸化剤とともに燃焼領域に噴出される。
【0055】
COタービン20を冷却する場合には、第1の熱交換器42における流路の途中から分岐してCOタービン20に接続する配管が設けられる。この配管を通して、超臨界流体の二酸化炭素の一部が冷却媒体としてCOタービン20に導入される。
【0056】
昇圧された二酸化炭素の残りは、系統の外部に排出される。外部に排出された二酸化炭素は、例えば、回収装置により回収される。また、外部に排出された二酸化炭素は、例えば、石油採掘現場で利用されているEOR(Enhanced Oil Recovery)にも利用することができる。上記した系統において、例えば、燃焼器41において燃料と酸素を燃焼させることで生成した二酸化炭素の生成量に相当する分の二酸化炭素が系統の外部に排出される。
【0057】
(第3の実施形態)
図6図7は、第3の実施形態のCOタービン20を示す断面図である。図6は、熱伸び発生前の状態を示している。図7は、熱伸び発生後の状態を示している。なお、本実施形態のCOタービン20は、ケーシング21の部分を除いて第2の実施形態のCOタービン20と同様の構造を有する。
【0058】
ケーシング21は、第1筒部34、第2筒部35、中間筒部36、第1シール部37、および第2シール部38を有する。第1シール部37は、第2筒部35と中間筒部36との間に設けられ、嵌合構造を有する。第2シール部38は、第1筒部34と中間筒部36との間に設けられ、嵌合構造を有しない。
【0059】
第1筒部34は、軸方向に一定の外径を有する。第2筒部35は、第1筒部34に対して軸方向に間隔を空けて設けられる。第2筒部35は、第1筒部34側の端部に嵌合凸部35aおよび嵌合凹部35bを有する。嵌合凸部35aは、嵌合凹部35bよりも第1筒部34側に設けられる。嵌合凸部35aは、内側に凸状となるように設けられ、嵌合凹部35bは、外側に凹状となるように設けられる。
【0060】
第2筒部35における嵌合凸部35aおよび嵌合凹部35bを除いた部分については、第1筒部34側の内径が第1筒部34の内径と同様であり、第1筒部34側とは反対側に向かって内径が徐々に拡大する。
【0061】
中間筒部36は、第1筒部34側が第1筒部34の外側に位置し、第2筒部35側が第2筒部35の内側に位置するように設けられる。中間筒部36は、第2筒部35側に嵌合凸部36aおよび嵌合凹部36bを有する。嵌合凸部36aは、嵌合凹部36bよりも第2筒部35側に設けられる。嵌合凸部36aは、外側に凸状となるように設けられ、嵌合凹部36bは、内側に凹状となるように設けられる。中間筒部36のうち第1筒部34と第2筒部35との軸方向の間に配置される部分の内径は、第1筒部34の内径と同様である。
【0062】
第1シール部37は、第2筒部35に設けられた嵌合凸部35aおよび嵌合凹部35bと、中間筒部36に設けられた嵌合凸部36aおよび嵌合凹部36bとから構成される嵌合構造を有する。第2シール部38は、中間筒部36の内側部分に収容された接触フィンを有するシール部材を具備する。
【0063】
本実施形態のケーシング21では、第1筒部34および中間筒部36の双方の内面を覆うように延長部32が設けられる。また、中間筒部36の第2筒部35側の端面は、燃焼ガスに接触しないように、軸方向に対して垂直に設けられる。
【0064】
第1筒部34および中間筒部36に冷却媒体が接触する場合、第1筒部34および中間筒部36の温度がほぼ等しくなる。このため、第1筒部34および中間筒部36の径方向の熱伸びがほぼ等しくなり、第1筒部34および中間筒部36の壁部に対して第2筒部35の壁部が径方向の外側へと移動する(図7)。
【0065】
第2筒部35と中間筒部36との間には、径方向の位置ずれに追従する第1シール部37が設けられている。このため、第2筒部35と中間筒部36との間は、第1シール部37によりシールされる。
【0066】
一方、第1筒部34および第2筒部35は軸方向にも熱伸びするが、第1筒部34と中間筒部36との間に設けられた軸方向に位置ずれする第2シール部38により有効にシールされる。特に、第1筒部34の壁部の径方向の外側への移動量と中間筒部36の壁部の径方向の外側への移動量とがほぼ等しく、第1筒部34と中間筒部36との間の隙間が常に一定に保たれることから、軸方向に位置ずれする第2シール部38により有効にシールされる。
【0067】
第1筒部34と中間筒部36との径方向の熱伸びをほぼ等しくする観点から、第1筒部34と中間筒部36との構成材料は同様とすることが好ましい。第1筒部34、中間筒部36の構成材料としては、必ずしも耐熱性が要求されず、また生産コストの観点から、鉄基合金が好ましい。一方、第2筒部35の構成材料は、耐熱性に優れるニッケル基合金が好ましい。
【0068】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態のCOタービン20を示す断面図である。なお、図8は、熱伸び発生前の状態を示している。
【0069】
本実施形態のCOタービン20は、第2シール部38を除いて第2の実施形態のCOタービン20と同様の構造を有する。本実施形態のCOタービン20は、第2シール部38がベローズを有する。ベローズによれば、第2筒部35と中間筒部36との間の軸方向および径方向の位置ずれに追従できる。また、第2筒部35と中間筒部36との間にベローズを設けることで、燃焼ガスがベローズに直接接触することを抑制でき、ベローズの損傷を抑制できる。ベローズは、例えば、外縁が第2筒部35の内面に固定され、内縁が中間筒部36の外面に固定される。
【0070】
(第5の実施形態)
図9は、COタービン20の第5の実施形態を示す断面図である。なお、図8は、熱伸び発生前の状態を示している。
【0071】
本実施形態のCOタービン20は、第2シール部38を除いて第3の実施形態のCOタービン20と同様の構造を有する。本実施形態のCOタービン20は、第2シール部38がベローズを有する。ベローズによれば、第1筒部34と中間筒部36との間の軸方向および径方向の位置ずれに追従できる。また、第1筒部34と中間筒部36との間にベローズを設けることで、燃焼ガスがベローズに直接接触することを抑制でき、ベローズの損傷を抑制できる。ベローズは、例えば、外縁が中間筒部36の内面に固定され、内縁が第1筒部34の外面に固定される。
【0072】
以上、シール構造が適用されたCOタービンについて説明したが、シール構造が適用されるタービンはCOタービンに限定されない。シール構造が適用されるタービンとしては、公知の蒸気タービンまたはガスタービンでもよい。シール構造が適用されるタービンとしては、冷却構造を有するために部材間に位置ずれが発生しやすい冷却タービンが好ましく、このようなものとしてはガスタービンまたはCOタービンが挙げられ、特にCOタービンが好ましい。なお、シール構造は、タービンへの適用に限定されず、他の装置等に適用してもよい。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
10…シール構造、11…第1筒部、11a…嵌合凸部、11b…嵌合凹部、12…第2筒部、13…中間筒部、13a…嵌合凸部、13b…嵌合凹部、14…第1シール部、15…第2シール部、20…COタービン、21…ケーシング、22…静翼、23…内側シュラウド、24…静翼本体、25…外側シュラウド、26…タービンロータ、27…ロータホイール、28…動翼、31…燃焼ガスの流れ、32…延長部、33…冷却媒体の流れ、34…第1筒部、34a…嵌合凸部、34b…嵌合凹部、35…第2筒部、35a…嵌合凸部、35b…嵌合凹部、36…中間筒部、36a…嵌合凸部、36b…嵌合凹部、37…第1シール部、38…第2シール部、40…ガスタービン設備、41…燃焼器、42、43…熱交換器、44…配管、45…発電機、46…圧縮機。
図1
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