特許第6367068号(P6367068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367068
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】フューエルデリバリパイプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   F02M55/02 310C
   F02M55/02 330D
   F02M55/02 350Z
   F02M55/02 360C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-200233(P2014-200233)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-70169(P2016-70169A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 英二
(72)【発明者】
【氏名】山岸 義忠
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−097690(JP,A)
【文献】 実開昭63−045205(JP,U)
【文献】 実開昭50−151526(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を備えた燃料流通路を有するパイプ本体と、
前記開口部から圧入されることで前記燃料流通路を塞ぐ閉塞部材と、を備え、
前記閉塞部材は、当該閉塞部材を前記燃料流通路の内方に向かって先細りとするテーパ面を有し、前記テーパ面の少なくとも一部が、前記圧入によって前記燃料流通路の内面と摺動することで削られて、当該閉塞部材の外周が前記燃料流通路の内面に当接してなるものとされ、
前記閉塞部材は、当該閉塞部材を前記燃料流通路の外方に向かって先細りとする他のテーパ面を有し、
前記他のテーパ面は、前記テーパ面に対して前記燃料流通路の外方に配され、
前記テーパ面と前記他のテーパ面とによって構成される角部が、前記圧入によって前記燃料流通路の内面と摺動することで削られてなることを特徴とするフューエルデリバリパイプ。
【請求項2】
前記閉塞部材は、平板状部材をプレス成形してなるものとされ、当該閉塞部材の外周部が当該閉塞部材の中央部に対して前記燃料流通路の外方に屈曲された形状をなすことを特徴とする請求項1に記載のフューエルデリバリパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フューエルデリバリパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関等において、燃料供給管から供給される燃料を各気筒に設けられたインジェクタに分配するフューエルデリバリパイプが用いられている(例えば、下記特許文献1)。特許文献1には、フューエルデリバリパイプを構成する連通管の一端部が、閉塞部材である端部キャップによって塞がれているものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−320422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の閉塞部材は連通管の一端部に対して圧入される場合がある。圧入時には、閉塞部材及び連通管に応力が作用し、その際の閉塞部材及び連通管における亀裂や破損の発生をより確実に抑制するためには、圧入時に生じる応力を低減させることが求められる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、閉塞部材を圧入する際の応力を低減させつつ、確実にパイプの端部を閉塞させることが可能なフューエルデリバリパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフューエルデリバリパイプは、開口部を備えた燃料流通路を有するパイプ本体と、前記開口部から圧入されることで前記燃料流通路を塞ぐ閉塞部材と、を備え、前記閉塞部材は、当該閉塞部材を前記燃料流通路の内方に向かって先細りとするテーパ面を有し、前記テーパ面の少なくとも一部が、前記圧入によって前記燃料流通路の内面と摺動することで削られて、当該閉塞部材の外周が前記燃料流通路の内面に当接してなることに特徴を有する。
【0007】
上記構成において、閉塞部材を開口部に圧入する際には、テーパ面の一部が削られる。これにより、閉塞部材の寸法が開口部の寸法により近いものとなり、圧入時に閉塞部材及びパイプ本体に作用する応力を低減することができる。このようにすれば、製造時の寸法誤差に起因して、閉塞部材の寸法が大きくなった場合であっても、圧入時に閉塞部材の寸法を小さくすることができ、好適である。また、テーパ面の一部が削られることで、閉塞部材の外周は、燃料流通路の内面に対して面当たりし易くなり、シール性をより高くすることができる。
【0008】
また、前記閉塞部材は、当該閉塞部材を前記燃料流通路の外方に向かって先細りとする他のテーパ面を有し、前記他のテーパ面は、前記テーパ面に対して前記燃料流通路の外方に配され、前記テーパ面と前記他のテーパ面とによって構成される角部が、前記圧入によって前記燃料流通路の内面と摺動することで削られてなるものとすることができる。
【0009】
圧入時に削られる部分を角部とすることで、応力集中が起こり易く、より容易にこれを削ることができる。このため、圧入時において閉塞部材及びパイプ本体に作用する応力をより一層低減することができる。
【0010】
また、前記閉塞部材は、平板状部材をプレス成形してなるものとされ、当該閉塞部材の外周部が当該閉塞部材の中央部に対して前記燃料流通路の外方に屈曲された形状をなすものとすることができる。
【0011】
上記構成において、フューエルデリバリパイプの燃料流通路内に燃料が流入した際には、閉塞部材における燃料流通路の内方側の面に圧力が作用する。この圧力が作用すると、屈曲された形状をなす外周部は燃料流通路の内面から反力を受け、その屈曲した部分が広がる方向に力を受けることとなり、閉塞部材の外周が燃料流通路の内面に対して押し付けられることとなる。このため、閉塞部材の外周と燃料流通路の内面とのシール性をより高くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、閉塞部材を圧入する際の応力を低減させつつ、確実にパイプの端部を閉塞させることが可能なフューエルデリバリパイプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1の燃料供給装置を備える自動車の構成を模式的に示す斜視図
図2図1の燃料供給装置が備えるフューエルデリバリパイプを示す断面図
図3図2において閉塞部材を拡大して示す断面図
図4】パイプ本体に対して閉塞部材を圧入する過程を示す断面図
図5】パイプ本体を開口部側から視た図
図6】実施形態2の燃料供給装置が備えるフューエルデリバリパイプの閉塞部材を示す断面図
図7】実施形態2においてパイプ本体に対して閉塞部材を圧入する過程を示す断面図
図8】実施形態2においてパイプ本体を開口部側から視た図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図5によって説明する。図1は、本実施形態の燃料供給装置10を備える自動車の構成を示す斜視図である。燃料供給装置10は、自動車14の車体15に装備され、燃料タンク16からエンジン17に燃料を供給するものとされ、燃料供給ポンプ11と、フィルタ12と、圧力調整装置13と、燃料移送管P1と、燃料供給管P2と、燃料帰還管P3と、フューエルデリバリパイプ20(以下「デリバリパイプ20」という)と、を備えている。
【0015】
燃料供給ポンプ11は、燃料タンク16内部の燃料を加圧する。加圧された燃料は、燃料移送管P1によって燃料タンク16からエンジン17へと移送される。移送された燃料は、フィルタ12によって濾過され、圧力調整装置13を介して燃料供給管P2に送られる。燃料供給管P2に供給される際の燃料の圧力は、圧力調整装置13によって調整される。燃料供給管P2に送られた燃料の一部は、燃料供給管P2に接続されるデリバリパイプ20によってエンジン17へ供給され、残りの燃料は、燃料帰還管P3を通って燃料タンク16へと戻される。
【0016】
ここで、燃料とは、ガソリン、高濃度アルコール含有燃料、又はガソリンとアルコールとの混合燃料を広く含む。また、アルコールは、例えば、メタノール、エタノール、ブタノールおよびプロパノールが利用可能である。
【0017】
次に、デリバリパイプ20の構成について説明する。デリバリパイプ20は、図2に示すように、主管であるパイプ本体30と、パイプ本体30の一端部に装着される閉塞部材50と、パイプ本体30の外周面に設けられたインジェクタ取付部21と、を備えている。パイプ本体30は、例えば金属製(スチール、ステンレス、アルミ、銅など。ここでは炭素鋼(STKM17C)。)とされ、図2に示すように、直線状に伸びる管状部材とされる。パイプ本体30の内部には、断面視円形状の燃料流通路35が形成されている。燃料流通路35は、パイプ本体30の長手方向に沿って延びている。パイプ本体30の長手方向における一端部には、燃料供給管P2に接続されるインレット31が形成されている。インレット31を経由して、燃料供給ポンプ11からの燃料が燃料流通路35内に導入される構成となっている。
【0018】
インジェクタ取付部21は、連通孔21Aを有する円筒状をなしており、パイプ本体30の長手方向に沿って複数設けられている。連通孔21Aは、燃料流通路35の軸に対して直交する方向に貫通されており、各連通孔21Aは、燃料流通路35とそれぞれ連通されている。インジェクタ取付部21には、インジェクタ22が取り付けられる。これにより、燃料流通路35の燃料が各連通孔21Aを通じて各インジェクタ22に供給される構成となっている。
【0019】
燃料流通路35は、パイプ本体30の長手方向における他端側(インレット31と反対側)に開口部36を備えている。閉塞部材50は、開口部36から圧入されることで燃料流通路35の一端部を塞ぐ構成となっている。なお、このような閉塞部材50は、プラグやキャップなどと呼ばれる場合もある。また、閉塞部材50の圧入は、例えば、専用の圧入装置などを用いて行う。閉塞部材50は、例えば金属製(スチール、ステンレス、アルミ、銅など)の平板状部材(ここでは冷間圧延鋼板(SPC270))をプレス成形してなるものとされ、図5に示すように、平面視(パイプ本体30を開口部側から視た状態)において円形状をなしている。
【0020】
図3に示すように、閉塞部材50は、その外周部53が中央部52に対して燃料流通路35の外方(図3の左側、つまりパイプ本体30の開口端側)に屈曲された形状をなしている。具体的には、中央部52は、燃料流通路35の軸線L1と直交する方向に沿って延在するものとされ、外周部53は、中央部52から燃料流通路35の外方(図3の左側)に傾斜しつつ、中央部52から内面36Aに向かって延びている。閉塞部材50における外方(図3の左側、つまりパイプ本体30の開口端側)の面には、中央部52及び外周部53によって構成される凹部51が形成されており、この凹部51は、平面視円形状をなし、開口側に向かうにつれて径が大きくなるお椀型とされる。
【0021】
閉塞部材50は、その外周において、燃料流通路35の内面36Aに当接するものとされる。また、閉塞部材50の外周部53における端側部分は、外周に向かうにつれて、燃料流通路35に対する圧入の方向(図3の左右方向)における長さが小さくなるものとされる。また、閉塞部材50は、燃料流通路35の内方(燃料流通路35の延設方向における中央側、図3の右側)に向かうにつれて径が小さくなるテーパ面55Aと、燃料流通路35の外方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ面55B(他のテーパ面)と、を有している。テーパ面55Aは、閉塞部材50を燃料流通路35の内方に向かって先細りとするものとされ、テーパ面55Bは、閉塞部材50を燃料流通路35の外方に向かって先細りとするものとされる。また、テーパ面55Bは、テーパ面55Aに対して燃料流通路35の外方に配されている。
【0022】
図4に示すように、閉塞部材50の外径R2は、燃料流通路35に圧入する前の状態では、燃料流通路35の内径R1に対して、わずかに大きい値で設定されている。この状態では、テーパ面55A及びテーパ面55Bによって、内面36Aに向かうにつれて先細りする角部56が構成されている。そして、閉塞部材50を燃料流通路35に対して圧入する過程では、閉塞部材50の角部56(テーパ面55Aとテーパ面55Bの境界部)が、内面36Aに摺動することで削られる。その結果、燃料流通路35に圧入された状態では、図3に示すように、閉塞部材50の外周(角部56が削られてなる面取り部57)が内面36Aに対して当接されている。なお、閉塞部材50の圧入方向を基準とした場合において、テーパ面55Aの角度D1は、テーパ面55Bの角度D2よりも大きいものとされる。また、燃料流通路35に圧入された閉塞部材50と内面36Aとは、例えば、ろう付けや溶接等の接合手段によって接合されている。
【0023】
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態において、閉塞部材50を燃料流通路35に圧入する際には、テーパ面55A,55Bの一部(角部56)が削られる。この結果、閉塞部材50の外径は、燃料流通路35の内径により近いものとなる。これにより、圧入時に閉塞部材50及びパイプ本体30に作用する応力を低減することができる。このようにすれば、製造時の寸法誤差に起因して、閉塞部材50の外径が大きくなった場合であっても、圧入時に閉塞部材50の外径を小さくすることができ、好適である。また、テーパ面55A,55Bの一部が削られることで、閉塞部材50の外周は、燃料流通路35の内面36Aに対して面当たりし易くなり、シール性をより高くすることができる。
【0024】
また、閉塞部材50は、閉塞部材50を燃料流通路35の外方に向かって先細りとする他のテーパ面55Bを有し、テーパ面55Bは、テーパ面55Aに対して燃料流通路35の外方に配され、テーパ面55Aとテーパ面55Bとによって構成される角部56が、圧入によって燃料流通路35の内面36Aと摺動することで削られている。この場合、圧入時に削られる部分が角部56であるため、応力集中が起こり易く、より容易にこれを削ることができる。この結果、圧入時において閉塞部材50及びパイプ本体30に作用する応力をより一層低減することができる。
【0025】
また、閉塞部材50は、平板状部材を折り曲げることで成形されており、閉塞部材50の外周部53が中央部52に対して燃料流通路35の外方に屈曲された形状をなしている。本実施形態において、フューエルデリバリパイプ20の燃料流通路35内に燃料が流入した際には、閉塞部材50における燃料流通路35の内方側の面に圧力が作用する。この圧力が作用すると、屈曲された形状をなす外周部53は燃料流通路35の内面36Aから反力を受け、その屈曲した部分が広がる方向に力を受けることとなり、閉塞部材50の外周が燃料流通路35の内面36Aに対して押し付けられることとなる。このため、閉塞部材50の外周と燃料流通路35の内面36Aとのシール性をより高くすることができる。
【0026】
また、本実施形態のように、平板状部材をプレス成形することで閉塞部材50とすれば、平板状部材の角を角部56として用いることができ、容易に閉塞部材50を成形することができる。
【0027】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図6ないし図8によって説明する。実施形態2の燃料供給装置においては、閉塞部材の構成が上記実施形態1と相違する。実施形態2において、フューエルデリバリパイプ120の閉塞部材150は、図6に示すように、例えば金属製(スチール、ステンレス、アルミ、銅など)の平板状部材(ここでは冷間圧延鋼板(SPC270))をプレス成形してなるものとされ、図8に示すように、平面視(パイプ本体30を開口部36側から視た状態)において円形状をなしている。
【0028】
図6に示すように、閉塞部材150は、その外周部153が中央部152に対して燃料流通路35の外方(図6の左側、つまりパイプ本体30の開口端側)に屈曲された形状をなしている。言い換えると、閉塞部材150は、断面視U字状をなし、閉塞部材150における外方(図6の左側)の面には、中央部152及び外周部153によって構成される凹部151が形成されている。
【0029】
閉塞部材150の外径R3は、図7に示すように、燃料流通路35の内径R1に対して、わずかに大きい値で設定されている。また、閉塞部材150は、燃料流通路35の内方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ面155Aと、燃料流通路35の外方に向かうにつれて径が小さくなるテーパ面155Bと、を有している。これにより、燃料流通路35に閉塞部材150を圧入する際には、テーパ面155Aに対して開口部36の角部37(開口端面36Bと内面36Aによって構成される角部)が食い込み、テーパ面155Aの一部が削られる。また、燃料流通路35に圧入された閉塞部材150と内面36Aとは、例えば、ろう付けや溶接等の接合手段によって接合されている。圧入時にテーパ面155Aの一部が削られることで、閉塞部材50と角部37との当接箇所において、閉塞部材150の外径は、燃料流通路35の内径により近いものとなる。この結果、圧入時に閉塞部材150及びパイプ本体30に作用する応力を低減することができる。
【0030】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。具体的には、上記実施形態では、パイプ本体30の断面形状及び燃料流通路35が円形状であるフューエルデリバリパイプを例示したが、これに限定されない。例えば、パイプ本体30の断面形状は、多角形であっても良い。
【符号の説明】
【0031】
20,120…フューエルデリバリパイプ、30…パイプ本体、35…燃料流通路、36…開口部、36A…燃料流通路の内面、50,150…閉塞部材、52,152…閉塞部材の中央部、53,153…閉塞部材の外周部、55A,155A…テーパ面、55B…テーパ面(他のテーパ面)、56…角部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8