特許第6367072号(P6367072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367072
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】吸水処理材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/24 20060101AFI20180723BHJP
   A01K 1/015 20060101ALI20180723BHJP
   A01K 23/00 20060101ALI20180723BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20180723BHJP
   B01J 20/32 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B01J20/24 B
   A01K1/015 B
   A01K23/00
   B01J20/30
   B01J20/32
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-206994(P2014-206994)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-73944(P2016-73944A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148977
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100148518
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
(72)【発明者】
【氏名】畑中 忍
(72)【発明者】
【氏名】増山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】細谷 隆広
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−242554(JP,A)
【文献】 特開平07−099857(JP,A)
【文献】 特開昭63−245625(JP,A)
【文献】 特開昭64−085025(JP,A)
【文献】 特開2014−103961(JP,A)
【文献】 特開昭61−074528(JP,A)
【文献】 特開昭62−195229(JP,A)
【文献】 特開2000−279804(JP,A)
【文献】 特開平03−205052(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/072352(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 − 20/34
A01K 1/00 − 3/00
A01K 31/00 − 31/24
B01J 2/00 − 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸収する吸水処理材を製造する方法であって、
発泡剤を含む水溶液を被造粒材料に加える加水工程と、
前記水溶液が加えられた前記被造粒材料を造粒することにより、紙類を主材料とする造粒物を形成する造粒工程と、
を含むことを特徴とする吸水処理材の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記加水工程においては、前記水溶液を前記被造粒材料に加える前に、当該水溶液中で前記発泡剤を反応させる吸水処理材の製造方法。
【請求項3】
請求項に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記加水工程においては、前記水溶液を前記被造粒材料に加える前に、当該水溶液を加熱する吸水処理材の製造方法。
【請求項4】
請求項乃至の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記被造粒材料の重量を1としたとき、前記加水工程において当該被造粒材料に加えられる前記水溶液の重量は、0.9以下である吸水処理材の製造方法。
【請求項5】
請求項に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記被造粒材料の重量を1としたとき、前記加水工程において当該被造粒材料に加えられる前記水溶液の重量は、0.6以下である吸水処理材の製造方法。
【請求項6】
請求項乃至の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記造粒工程において形成された前記造粒物を加熱することにより、当該造粒物を乾燥させる乾燥工程を含む吸水処理材の製造方法。
【請求項7】
請求項乃至の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記造粒工程において形成された前記造粒物の表面に被覆材料を付着させることにより、当該造粒物を覆う被覆層部を形成する被覆工程を含む吸水処理材の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記被覆工程においては、前記造粒物の前記表面の一部のみを覆うように、前記被覆層部を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項9】
請求項又はに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記被覆工程においては、前記造粒物に加水することなしに、当該造粒物の前記表面に前記被覆材料を付着させる吸水処理材の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記発泡剤は、炭酸水素ナトリウムからなる吸水処理材の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記発泡剤は、前記炭酸水素ナトリウム及びクエン酸からなる吸水処理材の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記紙類は、0.3mm以下の粒度に粉砕されたものである吸水処理材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は動物の排泄物その他の液体を吸収する吸水処理材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸水処理材の一種である排泄物処理材が記載されている。この排泄物処理材においては、繊維を含有するコア層と、それを被覆するスキン層とが設けられている。スキン層は、α澱粉及び繊維を含んで構成されている。同文献は、この排泄物処理材の利点として、安心して水洗トイレに流せることを謳っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−104383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、使用後の吸水処理材を水洗トイレに流して処分するには、当該吸水処理材が充分な水解性(水と接触することにより、結合した繊維や粒子が速やかに分離し、水中に分散する性質)を有することが必要である。吸水処理材の水解性が不充分であると、トイレの詰まりの原因になってしまう。この点、従来の吸水処理材には、水解性の面で向上の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、水解性に優れた吸水処理材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による吸水処理材は、液体を吸収する吸水処理材であって、既反応の発泡剤が含有された造粒物を備え、上記造粒物の内部には、上記発泡剤の反応によって発生した気泡が存在することを特徴とする。
【0007】
この吸水処理材においては、既反応の発泡剤が造粒物に含有されている。そして、造粒物の内部には、当該発泡剤の反応時に発生した気泡が存在している。かかる気泡により造粒物の内部に空隙ができるため、当該造粒物は、崩壊しやすい構造となっている。このため、水解性に優れた吸水処理材が実現される。
【0008】
また、本発明による吸水処理材の製造方法は、液体を吸収する吸水処理材を製造する方法であって、発泡剤を含む水溶液を被造粒材料に加える加水工程と、上記水溶液が加えられた上記被造粒材料を造粒することにより、造粒物を形成する造粒工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
この製造方法においては、被造粒材料の造粒に先立って、当該被造粒材料に、発泡剤を含む水溶液が加えられる。これにより、当該発泡剤の反応により発生する気泡を内部に有する造粒物を得ることができる。かかる気泡により造粒物の内部に空隙ができるため、当該造粒物は、崩壊しやすい構造となる。このため、水解性に優れた吸水処理材を製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水解性に優れた吸水処理材、及びその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による吸水処理材の第1実施形態を示す模式図である。
図2図1の吸水処理材が液体を吸収したときの変化を説明するための図である。
図3】本発明による吸水処理材の第2実施形態を示す模式図である。
図4】変形例に係る吸水処理材を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
【0013】
図1は、本発明による吸水処理材の第1実施形態を示す模式図である。吸水処理材1は、液体を吸収する吸水処理材であり、造粒物10を備えている。吸水処理材1は、例えば、猫や犬等の愛玩動物用の排泄物処理材である。
【0014】
造粒物10は、尿等の液体を吸水及び保水する機能を有する。造粒物10は、粒状に成形されている。造粒物10の形状としては、例えば、球、楕円体、円柱が挙げられる。造粒物10は、紙類を主材料としている。ここで、紙類が造粒物10の主材料であるとは、造粒物10を構成する材料全体の中で紙類の占める重量割合が最も大きいということである。紙類は、パルプを主体とする材料をいう。紙類としては、例えば、通常の紙の他にも、塩ビ壁紙分級物(塩ビ壁紙を分級することにより得られる紙)、紙おむつ分級物(紙おむつを分級することにより得られる紙)、紙ナプキン分級物(紙ナプキンを分級することにより得られる紙)、フラッフパルプ、製紙スラッジ、パルプスラッジ等が挙げられる。なお、分級により紙以外の材料を完全に除去することは困難であるため、塩ビ壁紙分級物、紙おむつ分級物及び紙ナプキン分級物には、紙以外の材料がある程度残存していることが通常である。
【0015】
かかる紙類は、1mm以下の粒度(繊維長)に粉砕されている。すなわち、紙類は、スクリーンの目開きが1mm以下である粉砕機を用いて粉砕されたものである。紙類の粒度は、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下である。
【0016】
造粒物10は、吸水時に粘性を有する接着性材料(第1の接着性材料)を含有する。接着性材料としては、例えば、デキストリン、澱粉、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA(ポリビニルアルコール)、又は吸水性ポリマーが挙げられる。吸水性ポリマーは、平均粒径が20μm以下であることが好ましい。ここで、平均粒径とは、多数の粒子の集合体である吸水性ポリマーを篩にかけたときに、50重量%以上の粒子が通過できる最小の目開きをいう。したがって、平均粒径が20μm以下であるとは、吸水性ポリマーを目開き20μmの篩にかけたときに、50重量%以上の粒子が通過できるということである。本実施形態においては、第1の接着性材料としてデキストリンが用いられている。造粒物10に占める第1の接着性材料の重量割合は、10%以上30%未満であることが好ましい。
【0017】
造粒物10には、既反応の発泡剤20が含有されている。発泡剤とは、熱分解等の化学反応により泡を発生させる物質である。本実施形態においては、かかる発泡剤として、炭酸水素ナトリウムが用いられている。炭酸水素ナトリウムが反応(熱分解)すると、二酸化炭素及び水を発生させつつ、炭酸ナトリウムに変化する。したがって、本実施形態において既反応の発泡剤20は、炭酸ナトリウムである。造粒物10の内部には、上記発泡剤の反応によって発生した気泡30が存在している。このように既反応の発泡剤20を含有する造粒物10は、例えば、発泡剤を含む水溶液が加えられた被造粒材料を造粒することにより形成することができる。
【0018】
吸水処理材1が液体を吸収すると、造粒物10は崩壊するように構成されている。ここで、造粒物10が崩壊するとは、当該造粒物10が粒状の形状を維持できない程度に崩れることをいう。吸水処理材1は、複数の造粒物10が動物用トイレ等に敷設された状態で使用される。尿等の液体を受けて崩壊した複数の造粒物10は、図2に示すように、互いに混合し、泥状の固まりである混合物40を形成する。この混合物40においては、もはや個々の造粒物10を区別することができない。
【0019】
本発明による吸水処理材の製造方法の第1実施形態として、吸水処理材1の製造方法の一例を説明する。まず、造粒物10を構成する材料(被造粒材料)を粉砕機で所定の大きさに粉砕し、当該粉砕された被造粒材料を所定の割合でミキサーに投入して混ぜ合わせる。
【0020】
その後、被造粒材料に対する加水を行う。この加水には、発泡剤を含む水溶液(本実施形態においては炭酸水素ナトリウム水溶液)を用いる。すなわち、当該水溶液を被造粒材料に加えることにより、被造粒材料に対する加水を行う(加水工程)。このとき、水溶液の濃度(重量パーセント濃度)は、5%以上であることが好ましい。また、被造粒材料の重量を1としたとき、当該被造粒材料に加えられる水溶液の重量は、0.9以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましい。
【0021】
加水工程においては、水溶液を被造粒材料に加える前に、当該水溶液中で発泡剤を反応させることが好ましい。例えば、水溶液を被造粒材料に加える前に、当該水溶液を加熱することが考えられる。この加熱は、水溶液が沸騰するまで行うことが好ましい。
【0022】
次に、水溶液が加えられた被造粒材料を造粒することにより、造粒物10を形成する(造粒工程)。このとき、液体吸収時に崩壊しやすい造粒物10を得るために、造粒時の被造粒材料に加わる圧縮力が小さくなるようにすることが好ましい。例えば、造粒機のダイスの厚みを小さくすることにより、被造粒材料に加わる圧縮力を小さくすることができる。
【0023】
続いて、所定の寸法の篩目を有する篩に、前工程で製造された造粒物10を通過させる(分粒工程)。これにより、所定の規格を満たす造粒物10のみが抽出される。その後、前工程で抽出された造粒物10を乾燥機で加熱することにより、当該造粒物10を乾燥させる(乾燥工程)。乾燥により、造粒物10の含水率を適宜調整する。これにより、吸水処理材1の保存時にカビ等が発生するのを防ぐことができる。以上により、吸水処理材1が得られる。
【0024】
本実施形態の効果を説明する。吸水処理材1においては、既反応の発泡剤20が造粒物10に含有されている。そして、造粒物10の内部には、発泡剤の反応時に発生した気泡30が存在している。かかる気泡30により造粒物10の内部に空隙ができるため、造粒物10は、崩壊しやすい構造となっている。このため、水解性に優れた吸水処理材1が実現されている。
【0025】
造粒物10は、発泡剤を含む水溶液が加えられた被造粒材料を造粒することにより形成されている。すなわち、被造粒材料の造粒に先立って、当該被造粒材料に、発泡剤を含む水溶液が加えられている。これにより、気泡30を内部に有する造粒物10を容易に得ることができる。
【0026】
加水工程において、水溶液を被造粒材料に加える前に当該水溶液中で発泡剤を反応させる場合、泡立った状態の水溶液が被造粒材料に加えられることになる。これにより、多量の気泡30を内部に有する造粒物10を得ることができる。水溶液を被造粒材料に加える前に当該水溶液を加熱する場合、発泡剤の反応を促進することができる。
【0027】
ところで、造粒物10の内部に多量の気泡を生成する手段としては、被造粒材料に対する加水量を増やすことも考えられる。すなわち、乾燥工程において造粒物を乾燥させると、内部の水分が蒸発し、その部分に気泡が形成される。したがって、被造粒材料に対する加水量を増やし、多量の水分を含む造粒物を形成することにより、乾燥後の造粒物の内部に多量の気泡を生成することができる。しかしながら、このように被造粒材料に対する加水量を増やす場合、乾燥に要する時間が長くなるという問題がある。また、加水量が多すぎると、造粒しにくくなり、造粒物10を粒状に成形するのが困難になるという問題もある。
【0028】
この点、本実施形態においては、発泡剤を含む水溶液を被造粒材料に加えている。かかる手段によれば、被造粒材料に対する加水量を増やすことなく、造粒物10の内部に多量の気泡を生成することができる。これにより、加水に用いられる水を節約するとともに、乾燥に要する時間を短縮することができる。このことは、光熱費の削減、ひいては吸水処理材1の製造コストの削減に資する。
【0029】
このように加水量を抑制する観点から、被造粒材料の重量を1としたとき、当該被造粒材料に加えられる水溶液の重量は、0.9以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましい。
【0030】
乾燥工程においては、造粒工程において形成された造粒物10を加熱することにより、当該造粒物10を乾燥させている。このときの加熱により、未反応の発泡剤の反応を促すことができる。これにより、造粒物10の内部に、より多くの気泡30を生成することができる。
【0031】
本実施形態においては、発泡剤として炭酸水素ナトリウムが用いられている。炭酸水素ナトリウムの反応により得られる炭酸ナトリウムは、比較的強いアルカリ性を示す。これにより、デキストリン中のフラボノイド系色素が黄色に変色するため、黄味がかった色の造粒物10が得られる。このことは、造粒物10ひいては吸水処理材1の美観の向上に資する。しかも、造粒物10が液体を吸収すると黄味がかった色が薄くなるため、色素材料を添加することなく、使用前後で色が変化する吸水処理材1が得られるという利点がある。
【0032】
造粒物10は、吸水処理材1の使用時に崩壊する。すなわち、吸水処理材1が尿等の液体を吸収すると、造粒物10が崩壊するように構成されている。これにより、使用後も造粒物10が崩壊しない場合(造粒物10の粒状の形状が維持される場合)に比して、吸水処理材1の水解性を向上させることができる。
【0033】
造粒物10は、紙類を主材料としている。紙類は、吸水性及び保水性に優れた材料である。ところが、紙類を主材料とする従来の吸水処理材においては、紙類を構成する比較的長い繊維(パルプ)どうしが絡み合って解けにくくなっており、それが水解性の向上を妨げる要因となっていた。この点、本実施形態においては、上述のとおり、発泡剤により造粒物10の内部に気泡30を生成し、それにより崩壊しやすい構造の造粒物10を得ている。このため、紙類を主材料としつつも、水解性に優れた吸水処理材1を実現することができる。
【0034】
上記紙類は、1mm以下の粒度に粉砕されている。このように紙類を細かく粉砕することにより、紙類を構成する繊維どうしが解けやすくなり、吸水処理材1の水解性を向上させることができる。かかる観点から、紙類は、0.5mm以下の粒度に粉砕されていることが好ましく、0.3mm以下の粒度に粉砕されていることがより好ましい。
【0035】
造粒物10は、接着性材料を含有している。これにより、吸水処理材1の使用時、複数の造粒物10からなる混合物40の固まり強度を高めることができる。特に本実施形態においては、各造粒物10が崩壊した状態で混合物40が形成されるため、接着性材料が混合物40の全体に行き渡りやすい。このため、少量の接着性材料であっても、充分な固まり強度を有する混合物40が得られる。接着性材料は、比較的高価な材料である。それゆえ、その使用量を少なくすることは、吸水処理材1の製造コストの削減に資する。かかる観点から、造粒物10に占める接着性材料の重量割合は、30%未満であることが好ましい。他方、接着性材料が少なすぎると、充分な固まり強度が得られなくなってしまう。かかる観点から、造粒物10に占める接着性材料の重量割合は、10%以上であることが好ましい。
【0036】
本実施形態の効果を確認するため、上述の製造方法により吸水処理材1を実際に製造した。なお、被造粒材料としては、80重量%の紙類と20重量%のデキストリンとからなるものを用いた。紙類としては、スクリーンの目開きが0.3mmである粉砕機を用いて粉砕された損紙を用いた。かかる被造粒材料に加えた炭酸水素ナトリウム水溶液の濃度(重量パーセント濃度)は、5%とした。また、被造粒材料の重量を1としたとき、当該被造粒材料に加えた炭酸水素ナトリウム水溶液の重量は0.9とした。
【0037】
製造した吸水処理材1(多数の造粒物10の集合体)に対し、注射器の容器を用いて20mlの水を滴下したところ、水を受けた造粒物10が崩壊し、泥状の固まりが形成された。これを600mlの水が入ったビーカー(容量1000ml)に投入したところ、固まりは、水中で瞬時に分散した。なお、マグネチックスターラーによりビーカー内に水流を生じさせた状態で、固まりを投入した。マグネチックスターラーの回転数は、約450rpmに設定した。
(第2実施形態)
【0038】
図3は、本発明による吸水処理材の第2実施形態を示す模式図である。吸水処理材2は、液体を吸収する吸水処理材であり、造粒物10に加えて被覆層部50を備えている。造粒物10の構成は、第1実施形態で説明したとおりである。
【0039】
被覆層部50は、造粒物10を覆っている。被覆層部50は、造粒物10の表面の少なくとも一部を覆う部分である。本実施形態において被覆層部50は、造粒物10の表面の一部のみを覆っている。造粒物10及び被覆層部50の全体に占める被覆層部50の重量割合は、1%以上13%未満であることが好ましい。被覆層部50の主材料としても、例えば紙類を用いることができる。ただし、被覆層部50の主材料として用いられる紙類は、バージンパルプを主体とするものであることが好ましい。
【0040】
被覆層部50は、吸水時に粘性を有する接着性材料(第2の接着性材料)を含有する。第2の接着性材料としては、上述の第1の接着性材料と同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。本実施形態においては、第2の接着性材料として、平均粒径が20μm以下の吸水性ポリマーが用いられている。
【0041】
吸水処理材2が液体を吸収すると、造粒物10と共に被覆層部50も崩壊する。崩壊した造粒物10及び被覆層部50は、互いに混合して泥状の固まりを形成する。
【0042】
本発明による吸水処理材の製造方法の第2実施形態として、吸水処理材2の製造方法の一例を説明する。まず、第1実施形態で説明した方法により、造粒物10を形成する。次に、造粒物10の表面に、被覆層部50を構成する材料(被覆材料)を付着させることにより被覆層部50を形成する(被覆工程)。このとき、造粒物10に対する加水は行わない。すなわち、本実施形態においては、造粒物10に加水することなしに、造粒物10の表面に被覆材料を付着させる。被覆材料の付着は、例えば、コーティング装置等を用いた散布又は噴霧により行うことができる。その後、分粒工程及び乾燥工程を実行することにより、吸水処理材2が得られる。
【0043】
本実施形態の効果を説明する。吸水処理材2においては、接着性材料を含有する被覆層部50が設けられている。これにより、吸水処理材2の使用時に形成される混合物の固まり強度を高めることができる。
【0044】
吸水処理材2においては、造粒物10及び被覆層部50の双方が崩壊する。このため、上記混合物の形成には、崩壊した造粒物10及び被覆層部50双方の粘性が寄与する。それゆえ、吸水処理材2は、専ら被覆層部の粘性が塊状化に寄与する従来の吸水処理材に比して、固まり強度の点で有利である。
【0045】
このように吸水処理材2においては、造粒物10及び被覆層部50が相俟って混合物の形成に寄与するため、被覆層部50の割合が小さくても充分な固まり強度が得られる。被覆層部50の割合を小さくすることは、材料の調達コストひいては吸水処理材2の製造コストの削減に資する。かかる観点から、造粒物10及び被覆層部50の全体に占める被覆層部50の重量割合は、13%未満であることが好ましい。他方、被覆層部50の割合が小さすぎると、固まり強度を高めるという当該被覆層部50の効果が充分に発揮されなくなってしまう。かかる観点から、造粒物10及び被覆層部50の全体に占める被覆層部50の重量割合は、1%以上であることが好ましい。
【0046】
被覆層部50は、造粒物10の表面の一部のみを覆っている。換言すれば、造粒物10の表面における残りの部分は、被覆層部50に覆われることなく露出している。これにより、吸水処理材2の使用時、造粒物10は、液体を迅速に吸収することができる。このことは、造粒物10の崩壊性を高めるのに有利である。
【0047】
被覆層部50は、接着性材料として吸水性ポリマーを含有している。吸水性ポリマーは液体吸収時に膨潤する性質を有するところ、被覆層部50において膨潤した吸水性ポリマーは、液体が造粒物10に達するのを遮断する。このため、吸水性ポリマーの膨潤は、造粒物10の崩壊性、ひいては吸水処理材2の水解性を低下させる要因となる。この点、吸水性ポリマーは、微細に粉砕されることにより、液体吸収時の膨潤が抑制される。したがって、吸水性ポリマーの膨潤を抑えるため、被覆層部50に含有される吸水性ポリマーの平均粒径は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0048】
被覆工程においては、造粒物10に加水することなしに、造粒物10の表面に被覆材料を付着させている。これにより、造粒物10の表面に、必要以上の量の被覆材料が付着してしまうのを防ぐことができる。また、かかる加水工程を省略することにより、吸水処理材2の製造工程を簡略化することができる。なお、このように加水工程を省略した場合であっても、造粒物10に含まれる水分によって、被覆材料の付着に必要な水分を賄うことができる。
【0049】
被覆層部50の主材料としてバージンパルプを主体とする紙類を用いた場合、古紙パルプを主体とする紙類を用いた場合に比して、吸水処理材2の美観を高めることができる。本実施形態のその他の効果は、第1実施形態で説明したとおりである。
【0050】
本発明による吸水処理材及びその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、炭酸水素ナトリウムからなる発泡剤を例示した。しかし、発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム及びクエン酸からなるものを用いてもよい。その場合、常温であっても発泡剤の反応を促進することができる。また、発泡剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、又は炭酸アンモニウム等を用いてもよい。
【0051】
上記実施形態においては、造粒物10の主材料として紙類を例示した。しかし、造粒物10の主材料としては、紙類以外の吸水性材料を用いてもよい。かかる吸水性材料としては、例えば、プラスチック類又は茶殻が挙げられる。被覆層部50の主材料についても同様である。
【0052】
上記実施形態においては、造粒物10の表面の一部のみが被覆層部50によって覆われる場合を示した。しかし、図4に示すように、造粒物10の表面の全体が被覆層部52によって覆われてもよい。被覆層部52の構成は、造粒物10の表面全体を覆っている点を除いて、被覆層部50と同様である。
【符号の説明】
【0053】
1 吸水処理材
2 吸水処理材
10 造粒物
20 既反応の発泡剤
30 気泡
40 混合物
50 被覆層部
52 被覆層部
図1
図2
図3
図4