(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367074
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ダイの空気抜き方法
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20180723BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20180723BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20180723BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B05D3/00 B
B05D1/26 Z
B05C5/02
B05C11/10
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-207282(P2014-207282)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-73950(P2016-73950A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】山田 実
(72)【発明者】
【氏名】西村 研治
【審査官】
市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−176351(JP,A)
【文献】
特開2012−020214(JP,A)
【文献】
特開2013−166134(JP,A)
【文献】
特開2004−283779(JP,A)
【文献】
特開2014−094356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00−21/00
B05D1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に搬送されるウエブに塗工液を、前端部から吐出して塗工するダイの空気抜き方法において、
下面が平らに形成された第1本体と、
前記第1本体の前記下面に相対向するように配された第2本体と、
前記第1本体と前記第2本体に挟まれたシート状のシムと、
前記第2本体の前記上面に設けられた前記塗工液を溜めるための液溜め部と、
前記液溜め部に前記塗工液を供給するための供給口と、
前記第2本体の前記上面と前記第1本体の前記下面との間にある前記シムによって形成された前記塗工液の吐出通路と、
前記吐出通路の前端部に設けられたスリット状の前記塗工液の吐出口と、
前記液溜め部の左右両側部であって、前記第2本体の左右両側部を貫通した左右一対の空気抜き孔と、
を有するダイと、
前記吐出口を塞ぐ着脱自在なカバーとを有し、
前記ダイの前記吐出口を前記カバーで閉塞し、
前記供給口から前記液溜め部に前記塗工液を供給し、
前記ダイの左右一対の前記空気抜き孔から、前記液溜め部に溜まっている空気を抜く、
ダイの空気抜き方法。
【請求項2】
前記供給口が、前記第2本体の後面に設けられている、
請求項1に記載のダイの空気抜き方法。
【請求項3】
前記第2本体の前記供給口から前記液溜め部に向かう供給通路が、前記供給口から前後方向に延びた後に、前ほど上に傾斜して前記液溜め部に至る、
請求項2に記載のダイの空気抜き方法。
【請求項4】
横方向に搬送されるウエブに塗工液を、下端部から吐出して塗工するダイの空気抜き方法において、
前面が平らに形成された第1本体と、
前記第1本体の前記前面に相対向するように配された第2本体と、
前記第1本体と前記第2本体に挟まれたシート状のシムと、
前記第2本体の後面に設けられた前記塗工液を溜めるための液溜め部と、
前記液溜め部に前記塗工液を供給するための供給口と、
前記第2本体の前記後面と前記第1本体の前記前面との間にある前記シムによって形成された前記塗工液の吐出通路と、
前記吐出通路の下端部に設けられたスリット状の前記塗工液の吐出口と、
前記液溜め部の左右両側部であって、前記第2本体の左右両側部を貫通した左右一対の空気抜き孔と、
を有するダイと、
前記吐出口を塞ぐ着脱自在なカバーとを有し、
前記ダイの前記吐出口を前記カバーで閉塞し、
前記供給口から前記液溜め部に前記塗工液を供給し、
前記ダイの左右一対の前記空気抜き孔から、前記液溜め部に溜まっている空気を抜く、
ダイの空気抜き方法。
【請求項5】
前記供給口が、前記第2本体の前面に設けられている、
請求項4に記載のダイの空気抜き方法。
【請求項6】
前記ウエブが前記ダイに対し前から後、又は、後から前に搬送されている、
請求項4に記載のダイの空気抜き方法。
【請求項7】
左右一対の前記空気抜き孔に前記塗工液の排出管がそれぞれ接続され、前記排出管にバルブがそれぞれ設けられている、
請求項1又は4に記載のダイの空気抜き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブに塗工液を塗工するダイ
の空気抜き方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、長尺状のウエブに塗工液を塗工する場合には、ウエブを一定の速度で搬送させ、ダイを用いて塗工を行っている。このダイは、第1本体と第2本体とシムとより形成され、その内部に液溜め部が設けられている。ポンプによって塗工液を液溜め部に供給し、この液溜め部からスリット状の吐出口を経て塗工液を吐出し、ウエブの片面に塗工している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−94510号公報
【特許文献2】特開2001−179156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなダイによって塗工液をウエブに塗工するときに、ポンプから供給された塗工液に空気が混じっていたり、ダイ内部に空気が残っていると、この空気が塗工液に混じり、ウエブの塗工層に気泡が混じったり、塗工厚さが均一で塗工されないという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、ダイ内部の空気を抜くことができる
ダイの空気抜き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、縦方向に搬送されるウエブに塗工液を、前端部から吐出して塗工するダイ
の空気抜き方法において、下面が平らに形成された第1本体と、前記第1本体の前記下面に相対向するように配された第2本体と、前記第1本体と前記第2本体に挟まれたシート状のシムと、前記第2本体の前記上面に設けられた
前記塗工液を溜めるための液溜め部と、
前記液溜め部に前記塗工液を供給するための供給口と、前記第2本体の前記上面と前記第1本体の前記下面との間にある前記シムによって形成された
前記塗工液の吐出通路と、前記吐出通路の前端部に設けられたスリット状の
前記塗工液の吐出口と、
前記液溜め部の左右両側部であって、前記第2本体の左右両側部を貫通した左右一対の空気抜き孔と、を有するダイ
と、前記吐出口を塞ぐ着脱自在なカバーとを有し、前記ダイの前記吐出口を前記カバーで閉塞し、前記供給口から前記液溜め部に前記塗工液を供給し、前記ダイの左右一対の前記空気抜き孔から、前記液溜め部に溜まっている空気を抜く、ダイの空気抜き方法である。
【0007】
また、本発明は、横方向に搬送されるウエブに塗工液を、下端部から吐出して塗工するダイ
の空気抜き方法において、前面が平らに形成された第1本体と、前記第1本体の前記前面に相対向するように配された第2本体と、前記第1本体と前記第2本体に挟まれたシート状のシムと、前記第2本体の後面に設けられた
前記塗工液を溜めるための液溜め部と、
前記液溜め部に前記塗工液を供給するための供給口と、前記第2本体の前記後面と前記第1本体の前記前面との間にある前記シムによって形成された
前記塗工液の吐出通路と、前記吐出通路の下端部に設けられたスリット状の
前記塗工液の吐出口と、
前記液溜め部の左右両側部であって、前記第2本体の左右両側部を貫通した左右一対の空気抜き孔と、を有するダイ
と、前記吐出口を塞ぐ着脱自在なカバーとを有し、前記ダイの前記吐出口を前記カバーで閉塞し、前記供給口から前記液溜め部に前記塗工液を供給し、前記ダイの左右一対の前記空気抜き孔から、前記液溜め部に溜まっている空気を抜く、ダイの空気抜き方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ダイの両側部に設けた左右一対の空気抜き孔から空気が抜け、ダイ内部に空気が残らない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1における空気を抜いている状態のダイの縦断面図である。
【
図6】実施形態2における空気を抜いている状態のダイの縦断面図である。
【
図7】実施形態2における塗工中のダイの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態におけるダイ10と、そのダイ10の空気抜きの方法について図面に基づいて説明する。
【0012】
実施形態1のダイ10を用いた塗工装置1について、
図1〜
図5に基づいて説明する。
【0013】
(1)塗工装置1の構造
塗工装置1の構造について
図4、
図5に基づいて説明する。塗工装置1には、本実施形態のダイ10が横方向(水平方向)に配されている。このダイ10の前端部近傍にフィルム、金属箔、金属網、布帛、紙などの長尺状のウエブWが下から上に案内ロール2と案内ロール3によって一定の搬送速度で縦方向に搬送され、ウエブWの片面に塗工液がダイ10によって塗工される。塗工液は、タンク4に溜められ、ポンプ5によって供給管6からダイ10に供給される。また、後から説明するようにダイ10の空気抜き孔28から排出された空気の混じった塗工液は、排出管30を経てタンク4に循環する。
【0014】
(2)ダイ10の構造
ダイ10の構造について
図1〜
図3に基づいて説明する。ダイ10は、金属製の略直方体であって水平に配され、その長手方向がウエブWの幅方向と平行に配されている。ウエブWに面するダイ10の前部は、先細りとなった縦断面が三角形状であって、その前端部にはスリット状の吐出口22が設けられ、ウエブWの幅方向に塗工液を吐出する。ダイ10は、
図3に示すように第1本体である上本体12と、第2本体である下本体14と、上本体12と下本体14により挟まれたU字状の薄いシート状のシム17とよりなり、複数のボルトによって固定されている。
【0015】
上本体12の前面は前ほど下に傾斜し、下面は平らな面で形成されている。
【0016】
下本体14の前面は前ほど上に傾斜し、上面には凹部によって液溜め部16が形成されている。液溜め部16は、
図2、
図3に示すように幅方向に広がっている。
図1に示すように液溜め部16は前ほど小さくなり、連続して吐出通路20が幅方向に形成されている。吐出通路20は、上本体12と下本体14に挟まれたシム17の切欠き部分18によって形成され、この吐出通路20の前端部はスリット状の吐出口22となっている。すなわち、U字状のシム17の中央にある切欠き部分18の幅方向の寸法によって塗工幅が決定される。
【0017】
下本体14の後面中央部には塗工液を供給する供給口24が形成され、供給通路26によって液溜め部16の後面中央部に接続されている。この供給通路26は、
図1に示すように、供給口24から横方向(水平方向)に形成され、その後に屈曲して前ほど上に傾斜するように形成されて液溜め部16に至る。
【0018】
下本体14の両側部、すなわちダイ10の両側部には左右一対の空気抜き孔28が形成されている。この空気抜き孔28は、液溜め部16の後部上端部に形成され、下本体14の両側部をそれぞれ水平に貫通している。
【0019】
供給口24には、ポンプ5から塗工液を供給するための供給管6が接続されている。空気抜き孔28には排出管30が接続され、この排出管30の途中にはバルブ32が設けられ、排出管30の先端部の排出口はタンク4に配されている。
【0020】
(3)空気抜きの方法と塗工方法
次に、ダイ10の空気抜きの方法と、塗工方法について説明する。
【0021】
第1に、
図1、
図2に示すように作業者は、幅方向に広がったスリット状の吐出口22にカバー23を被せて吐出口22を閉塞する。例えば、カバー23としては、シリコン接着テープであって、吐出口22に貼り付けて気密状態に閉塞する。
【0022】
第2に、作業者は、左右一対のバルブ32,32を開状態とする。
【0023】
第3に、作業者は、ポンプ5を駆動させ、タンク4内部にある塗工液をダイ10に一定の圧力で供給する。ポンプ5から供給された塗工液は、供給管6を通じて供給口24からダイ10内部に入り、供給通路26を通って液溜め部16に浸入する。この浸入した塗工液は、供給管6内部にある空気(気泡)、吐出通路20及び液溜め部16内部にある空気(気泡)を押しながら浸入する。液溜め部16に浸入した塗工液は液溜め部16を満たすようになると、押された空気(気泡)は左右一対の空気抜き孔28,28から排出され、排出管30を通じてタンク4に流れる。
【0024】
第4に、作業者は、排出管30からタンク4に排出される塗工液を観察する。排出物は、最初は空気だけであるが次第に塗工液が混じるようになり、その後に塗工液のみが排出される状態になるので、このときに、作業者はダイ10から空気が完全に抜かれたと判断して左右一対のバルブ32,32を閉じると共に、ポンプ5を一旦停止させる。
【0025】
第5に、作業者は、吐出口22を閉塞しているカバー23を取り外す。
【0026】
第6に、作業者は、
図5に示すように、案内ロール2,3によってウエブWを下から上に縦方向に搬送させる。
【0027】
第7に、
図4に示すように、作業者は、ポンプ5を再び駆動させ、ダイ10の吐出口22から所定の幅と所定の厚みで塗工液をウエブWに塗工する。この場合に、塗工幅は、吐出口22の幅(シム17の切欠き部分18の幅)によって決定され、塗工厚さはポンプ5によって供給される単位時間当たり(例えば、1分当たり)の塗工液の供給量によって決定される。
【0028】
(4)効果
本実施形態の塗工装置1であると、塗工前にダイ10内部にある空気を左右一対の空気抜き孔28から抜くため、塗工中に塗工液に空気(気泡)が混じることがない。
【0029】
また、液溜め部16は下本体14に形成され、かつ、空気抜き穴28が液溜め部16の両側部にある上端部に設けられているため、液溜め部16などから排出される空気(気泡)は必ず空気抜き孔28に至り排出される。そのため、液溜め部16の他の部分に空気(気泡)が残った状態にならない。特に、上本体12の下面は平らな面で形成されているため、空気が入る余地がなく、必ずこの空気抜き孔28の位置に空気(気泡)が至ることとなる。また、吐出通路20に空気(気泡)が入り込んでいても、塗工を開始した最初の時点で全ての空気が排出されるため、ウエブWが一定の搬送速度に至った状態では、塗工層に空気が混じることはない。
【0030】
また、供給通路26は、供給口24側が横方向(水平方向)に延び、その後上に傾斜しているため、この供給通路26内部に空気が溜まることがない。すなわち空気は上方に移動しようとするため、必ず液溜め部16に空気が塗工液によって押されることとなる。
【0031】
(5)変更例
上記実施形態では、供給口24を下本体14の後面中央部に設けたが、これに代えて、下本体14の下面中央部に設け、液溜め部16の下面から塗工液を供給してもよい。
【0032】
次に、実施形態2の塗工装置1について
図6と
図7に基づいて説明する。
【0033】
本実施形態と実施形態1の塗工装置の相違点は、実施形態1ではダイ10を横方向(水平方向)に配したが、本実施形態では
図6に示すように縦方向(垂直方向)に配する。そのため、本実施形態では、
図7に示すように、ウエブWを横方向(水平方向)に前から後に搬送させ、ウエブWの上面に塗工液を塗工する。
【0034】
本実施形態のダイ10は、前本体34と後本体36とシム17より形成されている。前本体34の後面は平らな面であり、この平らな面にシム17を挟んで後本体36を固定する。
【0035】
後本体36の前面には液溜め部16が形成され、シム17には切欠き部分18が形成されている。シム17を挟んで前本体34と後本体36とを組み合わせた場合に、切欠き部分18によって吐出通路20が形成され、ダイ10の下端にスリット状の吐出口22が形成される。
【0036】
後本体36の後面には供給口24が形成され、この供給口24から液溜め部16に真っ直ぐに供給通路26が形成されている。
【0037】
後本体36にある液溜め部16の両側部の上端部には左右一対の空気抜き孔28が形成されている。
【0038】
本実施形態の塗工装置1であっても、
図6に示すようなウエブWの上面に塗工液を塗工する前に、
図7に示すようにカバー23によって吐出口22をカバーし、ポンプ5によって塗工液を供給して液溜め部16に溜まっている空気を左右一対の空気抜き孔28から抜く。そのため、塗工前に液溜め部16などに溜まっている空気を抜くことができ、塗工層に空気が混じることがない。
【0039】
また、液溜め部16の両側部上端部に空気抜き孔28が設けられているため、空気を確実に抜くことができる。
【0040】
上記実施形態2では、
図6に示すようにウエブWを前から後に搬送させたが、これに代えてダイ10に対し、ウエブWを後から前に搬送させてもよい。
【0041】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・塗工装置、10・・・ダイ、12・・・上本体、14・・・下本体、16・・・液溜め部、17・・・シム、20・・・吐出通路、22・・・吐出口、24・・・供給口、26・・・供給通路、28・・・空気抜き孔、30・・・排出管、32・・・バルブ