特許第6367080号(P6367080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367080
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】電動ウインチの駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/28 20060101AFI20180723BHJP
   B66D 5/18 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B66C13/28
   B66D5/18
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-216773(P2014-216773)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-84205(P2016-84205A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹也
(72)【発明者】
【氏名】稗方 孝之
(72)【発明者】
【氏名】河合 宏明
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩司
(72)【発明者】
【氏名】野木 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】笹井 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】下村 耕一
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−241602(JP,A)
【文献】 特開平07−097176(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/143628(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00−15/06
B66C 19/00−23/94
B66D 1/00− 5/34
H02P 21/00−25/03
H02P 25/04
H02P 25/10−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ウインチを駆動するための装置であって、
前記電動ウインチのウインチドラムに連結されて当該ウインチドラムを回転させるとともに当該ウインチドラムの回転に伴う回生電力の生成が可能な交流電動機と、
前記交流電動機にその駆動のための電力を供給する直流電源と、
この直流電源と前記交流電動機との間に介在するインバータと、
前記交流電動機の巻下げ方向の回転時に前記インバータにおいて発生する電圧よりも前記直流電源に印加される電圧を低下させる降圧回路と、
この降圧回路と並列に設けられ、当該降圧回路をバイパスして前記インバータから前記直流電源への電流の流れ込みを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切換可能な定常駆動回路と、
前記交流電動機の駆動を制御するフリーフォール制御部と、を備え、このフリーフォール制御部は、前記交流電動機の巻下げ方向の回転速度が予め設定された降圧判定速度を超えかつ前記ウインチドラムの制動の指示が与えられている場合に前記定常駆動回路を前記阻止状態にするとともに前記降圧回路を作動させて回生電力を生じさせる降圧制御を行い、前記交流電動機の巻下げ方向の回転速度が前記降圧判定速度以下である場合に前記降圧回路を停止させて前記定常駆動回路を前記許容状態にする、電動ウインチの駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動ウインチの駆動装置であって、前記フリーフォール制御部に前記制動の指示を与えるための手段として、当該制動力の大きさを指示するように操作される制動操作器をさらに備え、前記フリーフォール制御部は、当該制動操作器により指示される制動力が大きいほど前記降圧回路による降圧度合いを小さくするように前記降圧制御を行う、電動ウインチの駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の電動ウインチの駆動装置であって、前記直流電源と前記インバータとの間に介在するとともに前記定常駆動回路と並列に設けられ、前記直流電源から前記インバータに与えられる電圧を当該直流電源の電圧よりも上昇させる昇圧回路をさらに備え、前記フリーフォール制御部は、前記交流電動機の巻下げ方向の回転速度が予め設定された昇圧判定速度を超えかつ前記ウインチドラムの制動の指示が与えられていない場合に前記定常駆動回路を前記阻止状態にするとともに前記昇圧回路を作動させて昇圧制御を行う、電動ウインチの駆動装置。
【請求項4】
請求項3記載の電動ウインチの駆動装置であって、前記フリーフォール制御部は、前記交流電動機の回転速度が高いほど前記昇圧回路による昇圧度合いを大きくするように前記昇圧制御を行う、電動ウインチの駆動装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の電動ウインチの駆動装置であって、前記フリーフォール制御部は、前記交流電動機の回転速度が予め設定された最大許容速度であって前記降圧判定速度及び前記昇圧判定速度よりも高い速度を超える場合に前記制動の指示の有無にかかわらず強制的に前記降圧回路に降圧動作を行わせる、電動ウインチの駆動装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電動ウインチの駆動装置であって、前記定常駆動回路は、前記直流電源と前記インバータとを結ぶ経路中に設けられ、当該経路を導通させる状態と切断する状態とに切換えられるスイッチング素子と、このスイッチング素子と並列に設けられ、前記直流電源から前記インバータへ向かう電流の通過のみを許容するダイオードと、を含む、電動ウインチの駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等に用いられる電動ウインチを駆動する装置であってフリーフォール制御機能を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クレーン等に搭載されて吊作業を行うためのウインチとして、電動機により駆動される電動ウインチを用いることが検討されている。この電動ウインチの使用は、対象物の巻下時にその対象物の降下により発生する運動エネルギー(電動機の回転エネルギー)を電気エネルギーに変換して回収する、すなわち回生する、ことが可能な利点がある。
【0003】
このような回生機能を備えた電動ウインチ及びその駆動装置として、特許文献1に開示されたものが知られている。ここに開示される電動ウインチは、クレーンに搭載され、当該電動ウインチを駆動する装置は、電動機と、当該電動機に電力を供給するとともに前記電動ウインチの巻下げ時に前記モータの発電により生成された回生電力を蓄えるバッテリーと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−71810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クレーンの巻下げ時に特有の動作として、吊り荷を自由落下に近い速度で降下させる、いわゆるフリーフォール動作があるが、従来の電動ウインチにおいて当該フリーフォール動作を行いながら回生を行おうとすると、回路電圧が過度に上昇してバッテリー等を破損に至らせるおそれがある。すなわち、当該フリーフォール動作では、吊り荷がその自由落下での速度に近い速度で降下するのに伴って電動ウインチのウインチドラムさらにはこれに連結される電動機が高速で回転し、これにより当該電動機に過大な誘起電圧が生じてこれがバッテリーに印加されることにより当該バッテリーを破損に至らせるおそれがある。
【0006】
この事態は、前記バッテリー及び電動機を含む駆動装置をクラッチによって前記ウインチドラムから切り離すことによって回避することが可能であるが、その場合、フリーフォール中での回生電力の回収はできない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決すること、すなわち、フリーフォール動作を行いながら回生電力を安全に回収することが可能な電動ウインチの駆動装置を提供すること、を目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らは、前記電動ウインチのウインチドラムを回転させるための交流電動機及びこれに接続されるインバータと、前記交流電動機の駆動のための直流電源と、の間に降圧回路を介在させ、フリーフォール動作時に前記インバータにおいて発生した電圧を前記降圧回路によって降下させることにより、前記直流電源に過度の電圧が印加されるのを防ぐことに想到した。しかし、前記降圧回路の駆動は一般に大きなエネルギーロス(例えば当該降圧回路に含まれるスイッチング素子の頻繁なオンオフ動作によるスイッチング損失)を伴うため、電動ウインチの駆動効率の著しい低下は免れ得ない。
【0009】
本発明は、当該駆動効率の著しい低下を避けながら前記の目的を達することが可能な電動ウインチの駆動装置を提供するものである。具体的に、この装置は、前記電動ウインチのウインチドラムに連結されて当該ウインチドラムを回転させるとともに当該ウインチドラムの回転に伴う回生電力の生成が可能な交流電動機と、前記交流電動機にその駆動のための電力を供給する直流電源と、この直流電源と前記交流電動機との間に介在するインバータと、前記交流電動機の巻下げ方向の回転時に前記インバータにおいて発生する電圧よりも前記直流電源に印加される電圧を低下させる降圧回路と、この降圧回路と並列に設けられ、当該降圧回路をバイパスして前記インバータから前記直流電源への電流の流れ込みを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切換可能な定常駆動回路と、前記交流電動機の駆動を制御するフリーフォール制御部と、を備える。このフリーフォール制御部は、前記交流電動機の巻下げ方向の回転速度が予め設定された降圧判定速度を超えかつ前記ウインチドラムの制動の指示が与えられている場合に前記定常駆動回路を前記阻止状態にするとともに前記降圧回路を作動させて回生電力を生じさせる降圧制御を行い、前記交流電動機の巻下げ方向の回転速度が前記降圧判定速度以下である場合に前記降圧回路を停止させて前記定常駆動回路を前記許容状態にする。
【0010】
この装置によれば、前記電動ウインチを用いてフリーフォール動作を行いながら、著しい効率の低下を伴うことなくかつ安全に、当該フリーフォール動作時に交流電動機において発生する電力を回収することができる。具体的に、当該フリーフォール動作に伴う交流電動機の回転(巻下げ方向の回転)速度が前記降圧判定速度以下の場合には、フリーフォール制御部が定常駆動回路を許容状態に切換えることにより、当該交流電動機において発生した電力がインバータさらには定常駆動回路を経由して、すなわち降圧回路をバイパスして、直流電源に送られることが可能であり、これにより、前記降圧回路を経由する場合に比べて高い効率で回生を行うことができる。その一方、前記フリーフォール動作に伴う前記交流電動機の回転速度が前記降圧判定速度を超える場合、すなわち当該交流電動機の誘起電圧が高い場合、には、フリーフォール制御部が定常駆動回路を阻止状態にするとともに降圧回路を作動させて降圧制御を行うことにより、当該交流電動機での高い誘起電圧にかかわらず、前記直流電源に印加される電圧を安全な電圧に抑えて当該直流電源を構成するバッテリーその他の破損を回避しながら、前記交流電動機が生成する電力を回収することができる。
【0011】
本発明に係る駆動装置は、前記フリーフォール制御部に前記制動の指示を与えるための手段として、当該制動力の大きさを指示するように操作される制動操作器をさらに備え、前記フリーフォール制御部は、当該制動操作器により指示される制動力が大きいほど前記降圧回路による降圧度合いを小さくするように前記降圧制御を行うことが、好ましい。当該降圧度合いが小さいほど、回生動作による制動作用は大きくなるため、前記制動操作器と前記降圧制御との組み合わせは、オペレータの意思により合致した電動ウインチの動作を可能にする。
【0012】
前記降圧制御は、例えば、前記降圧回路がコイルのインダクタンス及びスイッチング素子を含んでいる場合、当該スイッチング素子のオンオフのデューティ比によって行うことが、可能である。この場合、当該スイッチング素子のオンオフによるエネルギーロスが大きいため、前記定常駆動回路の並設による効果は特に顕著となる。
【0013】
本発明に係る駆動装置は、前記直流電源と前記インバータとの間に介在するとともに前記定常駆動回路と並列に設けられ、前記直流電源から前記インバータに与えられる電圧を当該直流電源の電圧よりも上昇させる昇圧回路をさらに備え、前記フリーフォール制御部は、前記交流電動機の巻下げ方向の回転速度が予め設定された昇圧判定速度を超えかつ前記ウインチドラムの制動の指示が与えられていない場合に前記定常駆動回路を前記阻止状態にするとともに前記昇圧回路を作動させて昇圧制御を行うことが、好ましい。
【0014】
当該昇圧回路による昇圧は、前記交流電動機及びインバータから直流電源への電流の流れ込みによる回生動作さらにはこれに起因する交流電動機の制動を阻止または抑制し、これにより、降下速度の低下を抑止して、制動を指示しないというオペレータの意思に即したフリーフォールの制御を実現することを可能にする。具体的に、フリーフォール動作での交流電動機の回転速度が高くてその誘起電圧が直流電源の電圧に対して相対的に高い場合、当該交流電動機が生成する電力によりインバータから直流電源に電流が流れ込む回生動作が生じ、この回生動作は前記交流電動機に対する制動作用を伴うため、オペレータがブレーキの指示を与えていないにもかかわらず当該交流電動機の回転速度が抑えられてしまう。前記昇圧回路が行う昇圧動作は、前記交流電動機及びインバータから前記直流電源への電流の流れ込み、すなわち回生動作、を阻止または抑制し、これにより、当該回生動作による前記交流電動機の制動を阻止または抑制して、当該交流電動機の回転速度をオペレータが求める速度に近づけることを可能にする。
【0015】
この場合、前記フリーフォール制御部は、前記交流電動機の回転速度が高いほど前記昇圧回路による昇圧度合いを大きくするように前記昇圧制御を行うことが、好ましい。当該昇圧制御は、過度の昇圧動作を回避しながら、前記回生動作による前記交流電動機の制動を阻止または抑制することを、可能にする。
【0016】
また、前記フリーフォール制御部は、前記交流電動機の回転速度が予め設定された最大許容速度であって前記降圧判定速度及び前記昇圧判定速度よりも高い速度を超える場合に前記制動の指示の有無にかかわらず強制的に前記降圧回路に降圧動作を行わせる強制降圧制御を行うことが、好ましい。この強制降圧制御は、前記交流電動機の過剰な速度による回転に起因して当該交流電動機その他の構成要素が破損するのを防ぐことを可能にする。
【0017】
前記定常駆動回路としては、例えば、前記直流電源と前記インバータとを結ぶ経路中に設けられ、当該経路を導通させる状態と切断する状態とに切換えられるスイッチング素子と、このスイッチング素子と並列に設けられ、前記直流電源から前記インバータへ向かう電流の通過のみを許容するダイオードと、を含むものが、好適である。この定常駆動回路は、前記ダイオードによって前記直流電源から前記交流電動機への電力の供給は常に許容しながら、前記スイッチング素子のオンオフによって前記許容状態と前記阻止状態とに切換えられることが可能である。
【0018】
なお、前記フリーフォール制御部は、前記交流電動機の巻下げ方向の回転速度が前記降圧判定速度以下(昇圧制御も行う場合は降圧判定速度以下でかつ昇圧判定速度以下)のとき、前記交流電動機について指定される制動力に応じて前記インバータの操作による回生制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、フリーフォール動作を行いながら、著しい効率の低下を行うことなく、回生電力を安全に回収することが可能な電動ウインチの駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る電動ウインチ及びその駆動装置の構成を示す模式図である。
図2】前記駆動装置に含まれる駆動回路を示す図である。
図3】前記駆動装置に含まれるコントローラの主要な機能構成を示すブロック図である。
図4】前記コントローラが行う主要な制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、この実施の形態に係る電動ウインチ及びその駆動装置を備えたクレーンの要部を示す。このクレーンは、起伏可能なブーム2と、吊り用のロープ4と、を備え、前記電動ウインチは水平軸回りに回転可能なウインチドラム10を含む。前記ロープ4のうち、その一方の端を含む部分が前記ウインチドラム10に巻き付けられ、他方の端を含む部分が前記ブーム2の先端に設けられたシーブ3から垂下する。当該他方の端にはフック装置6が接続され、これに吊り荷8が係合される。
【0023】
前記電動ウインチは、前記ウインチドラム10の巻上げ方向及び巻下げ方向の回転により、前記吊り荷8を昇降させることが可能である。前記巻下げ方向の回転に基づく動作には、いわゆるフリーフォール動作が含まれる。このフリーフォール動作では、前記吊り荷8がその自由落下の速度に近い速度で降下することを許容するように、前記ウインチドラム10の駆動の制御が行われる。
【0024】
前記電動ウインチの駆動装置は、交流電動機16と、駆動回路18と、コントローラ20と、ウインチ操作器22と、制動操作器23と、フリーフォール許可スイッチ24と、を備える。
【0025】
前記交流電動機16は、回転可能な出力軸を有する。この出力軸は、減速機12、クラッチ14等を介して前記ウインチドラム10の回転軸に連結される。従って、この交流電動機16の作動により前記ウインチドラム10が回転駆動されることが可能である。また、当該交流電動機16は、前記ウインチドラム10の巻下げ方向の回転時に前記出力軸が連れ回り回転することによって回生電力を生成する機能を有する。
【0026】
前記駆動回路18は、直流電源を含み、前記交流電動機16に電力を供給してその出力軸を回転させる一方、巻下げ動作時に前記交流電動機16が生成した電力を回収して蓄える回生動作を行う機能を有する。
【0027】
前記コントローラ20は、後に詳述するように、前記駆動回路18に含まれる構成要素に制御信号を入力することにより、当該駆動回路18の作動を制御する。当該コントローラ20には、その制御動作に必要な信号として、前記交流電動機16に内蔵された図略のエンコーダが生成する回転検出信号や、前記ウインチ操作器22、制動操作器23及びフリーフォール許可スイッチ24が生成する指令信号が入力される。
【0028】
前記ウインチ操作器22は、中立位置から巻上側及び巻下側にそれぞれ操作されることが可能な操作レバー26を有する。ウインチ操作器22は、当該操作レバー26の操作方向及び操作量に対応して巻上げ指令信号または巻下げ指令信号を生成し、これをコントローラ20に入力する。
【0029】
前記制動操作器23は、前記フリーフォール動作中におけるウインチドラム10及び交流電動機16の制動に係る指示をコントローラ20に付与するためのものである。具体的に、前記制動操作器23は、踏込み操作を受けるブレーキペダル28を含み、このブレーキペダル28の踏込みに対応した制動指令信号を生成して前記コントローラ20に入力する。前記制動指令信号は、制動力の大きさを指示するための信号である。前記制動操作器23は、前記ブレーキペダル28の踏込み量が大きいほど大きな制動力を指示する制動指令信号を生成する。
【0030】
前記フリーフォール許可スイッチ24は、オペレータがコントローラ20にフリーフォール動作の許可を与えるための操作を受ける。具体的に、フリーフォール許可スイッチ24は、オン状態に操作されたときにフリーフォール許可信号を生成して前記コントローラ20に入力する。
【0031】
図2は、前記駆動回路18の具体的な構成を示す。この駆動回路18は、バッテリー30と、インバータ32と、昇降圧コンバータ34と、定常駆動回路36と、平滑用コンデンサ37と、を備える。
【0032】
前記バッテリー30は、直流電源としての機能と、蓄電器としての機能と、を併有する。具体的に、当該バッテリー30は、前記交流電動機16の駆動、主に巻上げ方向の駆動、に必要な電力を当該交流電動機16に供給する一方、当該交流電動機16の巻下げ方向の回転(フリーフォール動作時の回転を含む)に伴って当該交流電動機16が生成する回生電力を蓄える機能を有する。
【0033】
前記インバータ32は、前記交流電動機16と前記バッテリー30との間に介在し、両者間での電力の授受に必要な直流/交流の変換を行う。具体的に、図2に例示される交流電動機16は、U相、V相及びW相を有する3相交流電動機であり、前記インバータ32は各相に対応した複数のスイッチング部38(スイッチング素子とダイオードとの組み合わせ)を有する。
【0034】
前記昇降圧コンバータ34は、前記バッテリー30と前記インバータ32との間に介在し、降圧回路としての機能と昇圧回路としての機能と、を併有する。前記降圧回路としての機能は、前記交流電動機16が巻下げ方向に回転して誘起電圧を生じさせることにより前記インバータ32のバッテリー側の端子対の間に発生する電圧よりも、前記バッテリー30に印加される電圧を低下させる機能である。前記昇圧回路としての機能は、前記バッテリー30から前記インバータ32のバッテリー側端子対の間に与えられる電圧を当該バッテリー30の端子間の電圧よりも上昇させる機能である。
【0035】
具体的に、前記昇降圧コンバータ34は、インダクタンスを有するチョークコイル40と、降圧用スイッチング素子42と、昇圧用スイッチング素子44と、降圧用ダイオード46と、昇圧用ダイオード48と、を有する。前記チョークコイル40は、前記バッテリー30と直列に配置され、当該バッテリー30の正端子に接続される。前記降圧用スイッチング素子42は、前記チョークコイル40と前記インバータ32の高圧側端子との間に介在し、前記昇圧用スイッチング素子44は、前記チョークコイル40と前記インバータ32の低圧側端子との間に介在する。前記降圧用ダイオード46は、前記昇圧用スイッチング素子44と並列に配置されながら前記チョークコイル40と前記インバータ32の低圧側端子との間に介在する。前記昇圧用ダイオード48は、前記降圧用スイッチング素子42と並列に配置されながら前記チョークコイル40と前記インバータ32の高圧側端子との間に介在する。
【0036】
前記定常駆動回路36は、前記バッテリー30の正端子と前記インバータ32の高圧側端子との間で前記昇降圧コンバータ34と並列に設けられる回路であって、当該昇降圧コンバータ34をバイパスして前記インバータ32から前記バッテリー30の正端子への電流の流れ込みを許容する許容状態と、これを阻止する阻止状態とに切換可能な回路である。
【0037】
具体的に、この実施の形態に係る定常駆動回路36は、互いに並列に配置されたスイッチング素子50とダイオード52とを併有する。前記スイッチング素子50は、前記バッテリー30の正端子と前記インバータ32の高圧側端子とを結ぶ経路中に設けられ、当該経路を導通させるオン状態と切断するオフ状態とに切換えられる。従って、このスイッチング素子50のオンオフにより、前記定常駆動回路36が前記許容状態と前記阻止状態とにそれぞれ切換えられる。前記ダイオード52は、前記スイッチング素子50のオンオフにかかわらず前記バッテリー30の正端子から前記インバータ32へ向かう電流の通過は許容する一方、インバータ32からバッテリー30へ向かう電流の通過は阻止する。
【0038】
前記昇降圧コンバータ34の降圧回路としての動作、換言すれば回生動作、は、前記定常駆動回路36のスイッチング素子50がオフに切換えられた状態(阻止状態)での前記降圧スイッチング素子42のオンオフ切換によって達成される。具体的に、当該降圧スイッチング素子42がオンの時はインバータ32から当該降圧スイッチング素子42及びチョークコイル40を経由してバッテリー30に電流が流れ込むことにより当該チョークコイル40にエネルギーが蓄えられると同時にチョークコイル40には電流の増加を妨げる向きの逆起電力が発生し、バッテリー30の正端子と前記インバータ32の高圧側端子との間に電位差を与える。その後、当該スイッチング素子42がオフに切換えられると、チョークコイル40にはそれまで当該チョークコイル40に流れていた電流を維持しようとする向きの起電力が発生し、当該コイル40→バッテリー30→降圧用ダイオード46を順に経由する電流が形成される。以上のようにして降圧動作が達成される。
【0039】
従って、前記降圧スイッチング素子42のオンオフにより、前記降圧動作が行われるとともに、そのオンのデューティ比の設定によって、降圧度合い、さらには制動力の大きさ、を制御することが可能である。具体的に、前記降圧スイッチング素子42のオンのデューティ比が高いほど、前記バッテリー30に印加される電圧が上昇し、よって降圧度合いが小さくなる。一方、回生動作により交流電動機16に与えられる制動力は大きくなる。
【0040】
前記昇降圧コンバータ34の昇圧回路としての動作は、前記定常駆動回路36のスイッチング素子50がオフに切換えられた状態(阻止状態)での前記昇圧スイッチング素子44のオンオフ切換によって達成される。具体的に、当該昇圧スイッチング素子44がオンの時はバッテリー30→チョークコイル40→昇圧スイッチング素子44を順に経由する電流が形成されることにより当該チョークコイル40にエネルギーが蓄えられる。その後、当該スイッチング素子42がオフに切換えられると、バッテリー30の正端子からチョークコイル40及び昇圧用ダイオード48を経由してインバータ32に流れ込む電流が形成されるとともに、チョークコイル40にそれまで当該チョークコイル40に流れていた電流を維持しようとする向きの起電力が発生し、その分だけ前記インバータ32のバッテリー側端子対の間に与えられる電圧が前記バッテリー30の端子間電圧よりも高くなる。このようにして昇圧動作が達成される。
【0041】
従って、前記昇圧スイッチング素子44のオンオフにより、前記昇圧動作が行われるとともに、そのオンのデューティ比の設定によって、昇圧度合いを制御することが可能である。具体的に、前記昇圧スイッチング素子44のオンのデューティ比が高いほど、前記チョークコイル40における電圧が上昇し、よって昇圧度合いが大きくなる。
【0042】
前記平滑用コンデンサ37は、前記インバータ32と前記昇降圧コンバータ34との間において、当該インバータ32のバッテリー側端子対同士の間に介在する。
【0043】
図3は、前記駆動回路18の動作を制御するための前記コントローラ20の主要な機能構成を示す。このコントローラ20は、図3に示される制御モード判定部56、通常制御部58及びフリーフォール制御部60を含む。
【0044】
制御モード判定部56は、コントローラ20に入力される信号により把握される運転状態が、予め設定されたフリーフォール開始条件に該当するか否かを判断し、該当する場合にはフリーフォール制御部60にフリーフォール制御を行わせ、それ以外の場合には通常制御部58に通常制御を行わせる。また、フリーフォール制御中に所定のフリーフォール停止条件を満たす場合にフリーフォール制御を停止させて通常制御に切換える。前記フリーフォール開始及び停止条件は、種々設定が可能であり、この実施の形態に係る条件については後に詳述する。
【0045】
前記通常制御部58は、通常制御、すなわち前記フリーフォール制御以外の制御を行う。具体的に、通常制御部58は、前記ウインチ操作器22の操作レバー26に与えられる巻上げ側の操作または巻下げ側の操作に基づき、駆動回路18のインバータ32に制御信号を入力して交流電動機16の巻上げ駆動または巻下げ駆動を制御する。
【0046】
前記フリーフォール制御部60は、前記フリーフォール制御、すなわち前記フリーフォール動作の制御を行う。そのための機能として、当該フリーフォール制御部60は、図3に示されるフリーフォール制御モード判定部62、通常フリーフォール制御部64、降圧制御部65及び昇圧制御部66を有する。
【0047】
前記フリーフォール制御モード判定部62は、交流電動機16の回転速度に基づき、通常フリーフォール制御、降圧制御及び昇圧制御のいずれを行うかを判定する。具体的に、当該フリーフォール制御モード判定部62は、前記交流電動機16の回転速度が予め設定された定格速度V1以下であるか否かを判定し、当該定格速度V1以下である場合には通常フリーフォール制御部64に通常フリーフォール制御動作を行わせ、当該定格速度V1を超える場合には降圧制御部65または昇圧制御部66に降圧制御または昇圧制御を行わせる(降圧/昇圧の具体的な判定については後に詳述する。)。従って、この実施の形態に係る前記定格速度V1は、本発明にいう降圧判定速度及び昇圧判定速度に相当する。
【0048】
前記交流電動機16の回転速度は、前記交流電動機16に内蔵されたエンコーダの出力する回転検出信号から算出されることが可能である。また、この実施の形態における前記定格速度V1は、バッテリー30の最大電圧に相当するインバータ32の端子間電圧に対応した交流電動機16の回転速度に設定されている。
【0049】
前記通常フリーフォール制御部64は、前記通常フリーフォール制御、すなわち、昇圧制御、降圧制御のいずれも伴わないフリーフォール制御を実行する。この装置の特徴として、当該通常フリーフォール制御部64は、前記通常制御と同様、前記定常駆動回路36のスイッチング素子50をオンにするとともに昇降圧コンバータ34の各スイッチング素子46,48をオフに維持した状態で、つまり当該昇降圧コンバータ34を経由せずに、通常フリーフォール制御を実行する。
【0050】
前記降圧制御部65及び前記昇圧制御部66は、前記昇降圧コンバータ34を用いた降圧制御及び昇圧制御をそれぞれ行う。
【0051】
次に、このコントローラ20が行う具体的な制御動作を、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0052】
まず、コントローラ20の制御モード判定部56は、現在の運転状態が予め設定されたフリーフォール開始条件に該当するか否かを判定する。この実施の形態に係るフリーフォール開始条件は次のとおりである。
【0053】
1)フリーフォール許可スイッチ24がオン(フリーフォール許可)であること(ステップS1)。
【0054】
2)制動操作器23のブレーキペダル28がフル操作されていること、すなわち最も深い位置まで踏み込まれていること(ステップS2)。
【0055】
3)ウインチドラム10について設けられたパーキングブレーキが作動していること(ステップS3)。
【0056】
なお、ステップS2においてブレーキペダルがフル踏込みから少し緩められた場合にパーキングブレーキを自動的に解除したり、ブレーキペダル28が一定以上踏み込まれた後にパーキングブレーキを作動させたりしてもよい。さらに、そのパーキングブレーキの解除や作動に時間遅れを与えれば、油圧システムでの操作感をオペレータに与えることも可能である。
【0057】
制御モード判定部56は、現在の運転状態が前記フリーフォール開始条件を満たす場合(ステップS1〜S3のいずれにおいてもYES)、フリーフォール制御部60にフリーフォール制御を行わせ、それ以外の場合(ステップS1〜S3の少なくとも一つにおいてNO)、通常制御部58に通常制御を行わせる(ステップS4)。
【0058】
前記通常制御は、前記ウインチ操作器22の操作レバー26に与えられる巻上げ側の操作または巻下げ側の操作に基づき、駆動回路18のインバータ32に制御信号を入力して交流電動機16の巻上げ駆動または巻下げ駆動を行わせる制御であるが、前記通常制御部58は、当該通常制御を、前記昇降圧コンバータ34を経由せずに行う。すなわち、通常制御部58は、当該通常制御を行う場合に、定常駆動回路36のスイッチング素子50をオンにして当該定常駆動回路36を許容状態にするとともに、昇降圧コンバータ34の各スイッチング素子46,48をオフに維持する。このことは、昇降圧コンバータ34における各スイッチング素子46,48のオンオフによるエネルギーロスを回避して前記通常制御を効率よく行うことを可能にする。
【0059】
一方、前記フリーフォール制御を行う場合、前記フリーフォール制御部60のフリーフォール制御モード判定部62は、交流電動機16の実際の回転速度Vと予め設定された定格速度V1との対比に基いて、通常フリーフォール制御を行うか降圧または昇圧制御を行うか、を判定する。具体的に、フリーフォール制御モード判定部62は、前記回転速度Vが前記定格速度V1以下の場合は(ステップS5でNO)通常フリーフォール制御部64に通常フリーフォール制御を行わせ(ステップS6)、当該回転速度Vが当該定格速度V1を超える場合には(ステップS5でYES)降圧制御部65または昇圧制御部66に降圧制御または昇圧制御を行わせる(ステップS9〜S11)。
【0060】
前記通常フリーフォール制御(ステップS6)は、制動操作器23におけるブレーキペダル28の踏込み操作量に基いて行われる。具体的に、通常フリーフォール制御部64は、前記ブレーキペダル28の踏込み操作量に対応した制動トルクを演算し、この制動トルクが得られるような回生電流制御を行う。この通常フリーフォール制御での回生電流制御は、専らインバータ32を用いて行われ、昇降圧コンバータ34は用いられない。すなわち、通常フリーフォール制御部64は、この通常フリーフォール制御を行うにあたり、前記の通常制御時と同様、定常駆動回路36のスイッチング素子50をオンにして当該定常駆動回路36を許容状態にするとともに、昇降圧コンバータ34の各スイッチング素子46,48をオフに維持する。このことは、昇降圧コンバータ34における各スイッチング素子46,48のオンオフによるエネルギーロスを回避して前記降圧制御及び昇圧制御以外のフリーフォール制御を効率よく行うことを可能にする。
【0061】
前記回転速度Vが前記定格速度V1を超える場合であって(ステップS5でYES)、当該回転速度Vが最大許容速度V2(>V1)以下である場合(ステップS7でYES)、前記フリーフォール制御モード判定部62は、ブレーキペダル28の踏込み操作の有無によって、降圧制御を行うか昇圧制御を行うかの判断を行う(ステップS8)。具体的に、前記フリーフォール制御モード判定部62は、ブレーキペダル28の踏込み操作がある場合(ステップS8でYES)すなわちオペレータに電動ウインチの制動の意思があると判断される場合に、降圧制御部65に降圧制御を行わせ(ステップS9)、前記踏込み操作がない場合(ステップS8でNO)すなわちオペレータに電動ウインチの制動の意思がないと判断される場合に、昇圧制御部66に昇圧制御を行わせる(ステップS10)。
【0062】
ステップS9において、前記降圧制御部65は、次の降圧制御動作を行う。
【0063】
a)定常駆動回路36のスイッチング素子50をオフにして当該定常駆動回路36を阻止状態にする。
【0064】
b)昇降圧コンバータ34の昇圧用スイッチング素子44をオフに維持する一方で降圧用スイッチング素子42をオンオフさせることにより、当該昇降圧コンバータ34に降圧動作を行わせる。
【0065】
c)ブレーキペダル28の踏込み操作量に対応した制動力(制動トルク)さらにはこれに対応する回生電流及び回生電圧を演算し、当該回生電圧を得るための前記降圧用スイッチング素子44のオンのデューティ比を決定し、このデューティ比によって当該降圧用スイッチング素子42をオンオフさせる。具体的には、ブレーキペダル28の踏込み操作量が大きいほど、すなわち、指定される制動力が大きいほど、大きなデューティ比(スイッチング素子44のオンのデューティ比)を設定する。すなわち降圧度合いを小さくする。
【0066】
このように、昇降圧コンバータ34の降圧回路としての機能を用いた回生制御(制動制御)は、交流電動機16が定格速度V1よりも高い速度で回転していてインバータ32のバッテリー側端子間電圧が高いにもかかわらず、バッテリー30の端子間電圧を許容範囲内に抑えながらオペレータの意思に即した制動及び回生電力の蓄電(バッテリー30の充電)を行うことを、可能にする。すなわち、前記フリーフォール動作では、吊り荷4がその自由落下での速度に近い速度で降下するため、通常の巻下げ作業に比べて交流電動機16が回転する速度がきわめて高くなる可能性があり、この場合に交流電動機16が発生させる回生電圧は、通常仕様のバッテリーの最大電圧を大きく上回ることになる。しかし、前記降圧回路を利用した回生動作は、インバータ32からバッテリー30に入力される電圧を適正に降下させて当該バッテリー30等を有効に保護しながら、回生電力を回収することを可能にする。
【0067】
一方、ステップS10において、前記昇圧制御部66は、次の昇圧制御動作を行う。
【0068】
a)定常駆動回路36のスイッチング素子50をオフにして当該定常駆動回路36を阻止状態にする。
【0069】
b)昇降圧コンバータ34の降圧用スイッチング素子42をオフに維持する一方で昇圧用スイッチング素子44をオンオフさせることにより、当該昇降圧コンバータ34に昇圧動作を行わせる。
【0070】
c)フリーフォール動作による交流電動機16の回転速度Vに対抗してこの回転速度Vと等しい速度で交流電動機16を回す(すなわち交流電動機16に制動力を与えない)ために必要なインバータ32の電圧を算定し、この電圧とバッテリー30の最大電圧との差に相当する分だけ昇圧するのに必要な前記昇圧用スイッチング素子44のオンのデューティ比を決定し、このデューティ比によって当該昇圧用スイッチング素子44をオンオフさせる。具体的には、前記回転速度Vが大きいほど、大きなデューティ比(前記昇圧用スイッチング素子44のオンのデューティ比)を設定する。すなわち昇圧度合いを大きくする。
【0071】
この昇圧制御は、交流電動機16が定格速度V1よりも高い速度で回転しているにもかかわらず、当該交流電動機16からインバータ32を経由してバッテリー30に回生電流が流れ込むことに起因する制動力の発生を阻止または抑制することができ、これにより、制動を与えないというオペレータの意思に即した回転速度Vの確保を可能にする。
【0072】
一方、前記回転速度Vが前記最大許容速度V2を上回る場合(ステップS7でNO)、フリーフォール制御モード判定部62は、前記ブレーキペダル28の踏込み操作に関係なく降圧制御部65に強制降圧制御を行わせる(ステップS11)。この強制降圧制御は、前記フリーフォール動作によって交流電動機16の回転速度Vが過度に上昇して当該交流電動機16その他の構成要素を破損させることを未然に防ぐため、強制的に降圧制御すなわち回生制御を行って当該交流電動機16に制動を与える制御である。従って、この強制降圧制御では、大きな制動トルクを得るための高いデューティ比(降圧用スイッチング素子42のオンのデューティ比)が設定されることが好ましい。
【0073】
以上のようにして、ステップS5〜S11のフリーフォール制御動作が継続されるが、制御モード判定部56は、そのフリーフォール制御動作中での運転状態が予め設定されたフリーフォール停止条件を満たしているか否かを監視し、満たしていると判断した場合に(ステップS12でYES)、フリーフォール制御を解除して制御モードを通常制御に切換える(ステップS4)。このフリーフォール停止条件は、前記フリーフォール開始条件の設定と同様のコンセプトで設定されることが可能であり、例えば次のような条件が設定される。
【0074】
1)交流電動機16の回転速度Vが予め設定された最小速度V0(例えば定格速度V1の1%の速度)以下まで低下したこと。
【0075】
2)フリーフォール許可スイッチ24がオン(フリーフォール許可)であること(前記ステップS1に対応)。
【0076】
3)制動操作器23のブレーキペダル28がフル操作されていること、すなわち最も深い位置まで踏み込まれていること(前記ステップS2に対応)。
【0077】
4)ウインチドラム10について設けられたパーキングブレーキが作動していること(前記ステップ3に対応)。
【0078】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されず、例えば次のような形態をとることが可能である。
【0079】
1)昇圧回路は適宜省略可能である。例えば、前記実施の形態に係る昇降圧コンバータ34に代えて降圧専用コンバータが駆動回路18に含まれてもよい。
【0080】
2)本発明に係るインバータ、降圧回路及び昇圧回路の具体的な構成は、前記実施の形態において示されるものに限定されない。これらの回路には、従来から知られている回路であって同等の機能を持つものが適用されることが可能である。また、定常駆動回路も、前記許容状態と前記阻止状態とに切換えられることが可能なものであれば、その具体的な構成は限定されない。
【0081】
3)本発明に係る直流電源は前記バッテリー30に限定されない。当該直流電源は、例えば、エンジンに直結された発電機または発電所から配電された系統電源とA/Dコンバータとの組み合わせであってもよい。この場合、生成された回生電力は敷地内での利用や、当該発電機または当該系統電源に接続された負荷への給電に利用されてもよい。
【0082】
4)本発明に係る降圧判定速度及び昇圧判定速度は必ずしも前記定格速度V1に限られない。また、降圧判定速度と昇圧判定速度との間に差が与えられてもよい。例えば、両判定速度のうちの降圧判定速度が前記定格速度V1よりも低い速度に設定されてもよい。
【0083】
5)本発明では、バッテリーへの過大の回生電力の導入をより確実に防ぐために当該バッテリーまたはコンデンサと並列に電力消費用の抵抗体が接続されることを妨げない。この場合、当該抵抗体と直列に、当該抵抗体への電流の導入をオンオフさせるスイッチング素子が配設されるのがよい。
【符号の説明】
【0084】
10 ウインチドラム
16 交流電動機
18 駆動回路
20 コントローラ
23 制動操作器
28 ブレーキペダル
30 バッテリー(直流電源)
32 インバータ
34 昇降圧コンバータ(降圧回路及び昇圧回路)
36 定常駆動回路
50 スイッチング素子
52 ダイオード
60 フリーフォール制御部
62 フリーフォール制御モード判定部
64 通常フリーフォール制御部
65 降圧制御部
66 昇圧制御部
図1
図2
図3
図4