【実施例】
【0016】
次に、本発明の実施例について説明する。
図2は、本発明の第1の実施例に係る車載装置の構成を示すブロック図であり、当該車載装置が走行支援装置を実現する。同図に示すように、車載装置10は、入力部100、処理ユニット110、ナビゲーション部120、データ通信部130、車内バスインターフェース140、表示部150、音声出力部160、記憶部170、制御部180等を含んで構成される。このような構成は、一例であって、車載装置10は、これ以外にも他の機能を包含するものであってもよい。
【0017】
入力部100は、入力キーデバイス、音声入力認識装置、タッチパネル等を含み、ユーザーからの指示を受け取る。処理ユニット110は、車両に搭載された撮像カメラから撮像データを受け取り、撮像データの画像処理等を実行する。本例では、処理ユニット110は、車両の前方に搭載されたフロントカメラFCからの撮像データD1と、車両の後方に搭載されたリアカメラRCからの撮像データをD2とを受け取る。
【0018】
図3は、フロントカメラとリアカメラの撮像範囲を説明する図である。同図に示すように、フロントカメラFCは、自車Mの前方に取付けられ、自車Mの前方を撮像する。フロントカメラFCによる撮像範囲すなわち視野角θ
Fは、少なくとも自車の前方の白線L1、L2を撮像し、白線L1、L2の画像認識が可能となる角度に調整される。リアカメラRCは、自車Mの後方に取付けられ、自車Mの後方を撮像する。リアカメラRCによる撮像範囲すなわち視野角θRは、自車の後方の白線L1、L2を撮像し、白線L1、L2の画像認識が可能となる角度の要件を満足し、かつ自車Mの後側方の死角となる領域を撮像可能な角度の要件を満足する。それ故、1つの好ましい態様では、リアカメラRCには、視野角θ
Rが視野角θ
Fよりも大きくなるようなレンズが用いられる。但し、視野角θ
Rと視野角θ
Fとの関係はこれに限らず、同じであってもよいし、反対に視野角θ
Rが視野角θ
Fよりも小さくてもよい。
【0019】
処理ユニット110は、
図4に示すように、フロントカメラFCからの撮像データD1とリアカメラRCからの撮像データD1を入力し、いずれか一方の撮像データを選択する選択部112と、選択部112によって選択された撮像データの画像処理等を行う信号処理部114とを有する。選択部112は、制御部180からの選択信号SELによって入力の切換えを行う。信号処理部114は、例えば、システムLSIやDSPなどのチップを含み、撮像データの画像処理を行う。1つの好ましい態様では、撮像データの中から道路の白線(追い越し禁止の黄色線なども含む)を検出したり、撮像データの中から、人、自転車、二輪車、車等の障害物を検出する。検出方法は、公知の画像解析技術を用いて行うことができる。信号処理部114で処理された結果は、制御部180へ提供され、制御部180は、処理された結果を利用して、車線逸脱の判定や後方の障害物の判定を行う。
【0020】
ナビゲーション部120は、自車位置周辺の道路地図を表示したり、目的地までの経路を探索し、経路案内等を行う。ナビゲーション部120に必要とされる自車位置は、GPS衛星を利用した測位情報および/または車両に搭載されたジャイロセンサや加速度センサ等を利用した測位情報から算出される。道路地図データや施設データ等は、記憶部170から読み出すことも可能であるし、データ通信部130を介して、道路地図データを配信するサーバーにアクセスし、そこから取得するようにしもてよい。また、ナビゲーション部120は、ナビゲーション機能を実行している間に、フロントカメラFCやリアカメラRCによって撮像された撮像データを表示させることも可能である。例えば、ディスプレイを2画面に分割し、一方の画面に自車位置周辺等の道路地図を表示させ、他方の画面に撮像された画像を表示させることができる。
【0021】
データ通信部130は、外部と無線または有線によるデータ通信の送受を可能にする。例えば、ネットワークを介してサーバーに接続したり、車内に持ち込まれたスマートフォンなどの携帯端末などの外部機器との接続も可能にする。通信機能を有する携帯端末が接続された場合には、その携帯端末自身が保持するデータ通信機能を利用することも可能である。
【0022】
車内バスI/F140は、車内バスに接続され、車両の種々の情報を取得する。例えば、車両の速度情報、車両のウィンカー情報、車両のギアポジション情報などを取得する。取得された情報は、後述するようにフロントカメラFCからの撮像データD1とリアカメラRCからの撮像データD2の切替制御に利用される。さらに取得された情報は、ナビゲーション部120においても利用される。
【0023】
表示部150は、受け取った画像データを処理し、ディスプレイに表示する。例えば、処理ユニット110で処理された画像データを受け取り、自車の前方画像または自車の後方画像を表示する。さらに表示部150は、ナビゲーション部120からの画像データを受け取り、ナビゲーション画像とともにフロントカメラ/リアカメラで撮像された画像を表示させる。
【0024】
音声出力部160は、ナビゲーション部120による音声案内やその他記憶部170から読み出された音声データ等を出力する。さらに、フロントカメラFCやリアカメラRCで撮像された撮像データに基づき、車線逸脱や後方障害物があると判定された場合に、警報を出力することができる。
【0025】
記憶部170は、車載装置で使用されるデータやアプリケーション等のプログラムデータ等を記憶することができる。1つの態様では、記憶部170は、ナビゲーション部120で利用される地図データベースや施設データベースを記憶する。地図データベースには、リンク情報(道路)やノード情報(交差点)が記憶される。ノード情報には、道路を識別する情報に加えて、道路の属性を表す情報が含まれる。例えば、道路の車線数、道路の幅員、追い越し禁止区間の設定、制限速度、カーブ区間(曲率を含む)などである
【0026】
制御部180は、例えば、マイクロプロセッサやマイクロコントローラを含み、ROM/RAMあるいは記憶部170に記憶されたプログラム等を実行することにより各部を制御する。本実施例では、制御部180は、自車の走行支援を行うための走行支援プログラムを実行する。当該走行支援プログラムは、フロントカメラFCとリアカメラRCの撮像データの切換制御や、安全運転を損なうような場合に警報等を発する。
【0027】
本実施例の走行支援プログラムの機能的な構成を
図5に示す。本実施例の走行支援プログラム200は、車線数取得部210、属性情報取得部220、速度情報取得部230、車両状態取得部240、車線逸脱判定部250、後方障害物判定部260、選択決定部270および警報出力部280等含む。
【0028】
車線数取得部210は、自車が走行している道路の車線数を含む車線情報を取得する。1つの態様では、ナビゲーション部120によって自車位置がマップマッチングされている道路の車線情報を、記憶部170の道路データベースから取得する。他の態様では、フロントカメラまたはリアカメラで撮像された撮像データから車線数を検知できる場合には、この車線数を取得するようにしてもよい。さらに他の態様では、自車が走行している道路の車線数を、データ通信手段を介して外部のサーバーから取得するようにしてもよい。
【0029】
属性情報取得部220は、自車が走行している道路の属性情報を取得する。属性情報には、上記したように例えば、道路の幅員、追い越し禁止区間の設定、制限速度、カーブ区間(曲率を含む)などが含まれる。
【0030】
速度情報取得部230は、車内バスI/F140を介して自車の速度情報を取得する。車両状態取得部240は、車内バスI/F140を介して、例えば、ギアポジションやウィンカー情報を取得する。なお、本実施例では、道路の車線数、属性情報、速度情報、車両状態を含む情報を総括して、自車の走行状況情報と定義している。
【0031】
車線逸脱判定部250は、信号処理部114からの撮像データの解析結果に基づき、自車が車線を逸脱しているか否かを判定する。好ましい例では、自車と白線との距離が一定値よりも小さくなったとき、車線逸脱と判定することができる。あるいは他の例では、一定期間内に、自車と白線との距離が減少傾向にあるとき、車線逸脱と判定することができる。車線逸脱に利用される白線は、フロントカメラFCによる撮像データ、またはリアカメラRCによる撮像データのいずれであってもよい。つまり、双方の撮像データに基づき車線逸脱の判定を行うことができる。但し、夜間は、自車のヘッドライトにより前方の白線が照射され、その結果、リアカメラによる白線の検出精度よりもフロントカメラによる白線の検出精度が高くなる。それ故、車線逸脱の判定精度も、フロントカメラの撮像データを利用した方が高くなる。
【0032】
後方障害物判定部260は、信号処理部114からの撮像データの解析結果に基づき、後方の障害物の有無を判定する。後方障害物判定は、リアカメラRCからの撮像データが選択されているときに行われる。
【0033】
選択決定部270は、フロントカメラFCまたはリアカメラRCのいずれの撮像データを選択するのかを決定し、その決定結果に従い選択信号SELを選択部112へ出力する。選択決定部270は、上記した走行状況情報に基づき選択を決定する。選択決定部270は、例えば、自車が走行している道路の車線数が2車線以上(追い越し可能区間)である場合は、リアカメラRCを選択させ、車線数が1車線(追い越し禁止区間)である場合には、フロントカメラFCを選択させる。選択決定部270の詳細の動作については後述する。
【0034】
警報出力部280は、車線逸脱判定部250により車線逸脱があると判定されたとき、および/または後方障害物判定部260により死角を含む後方に障害物があると判定されたとき、表示部150または音声出力部160から警報を出力させる。
【0035】
次に、本発明の第1の実施例に係る走行支援動作について、
図6のフローチャート参照して説明する。自車の走行開始に伴い、走行支援プログラムが起動される。好ましい態様では、ナビゲーション部120も起動され、表示部150に自車位置周辺の道路地図が表示されるものとする。
【0036】
まず、車線数取得部210によって自車が走行している道路の車線数が取得される(S100)。選択決定部270は、車線数に基づきフロントカメラFCまたはリアカメラRCの選択を行う。具体的には、車線数が1車線であるか否かを判定し(S102)、車線数が1車線である場合には、フロントカメラFCを選択させ(S104)、車線数が2車線以上である場合には、リアカメラRCを選択させる(S106)。選択部112は、選択決定部270で決定された選択信号SELに応じて撮像データを選択する。
【0037】
図7(A)は、自車が2車線の道路を走行している状態を示し、
図7(B)は、自車が1車線の道路を走行している状態を示す。自車が2車線の道路を走行している場合、後側方(死角)から自車Mに接近する他車Pを監視する必要がある。このため、リアカメラRCが選択される。一方、自車が1車線の道路を走行している場合、後側方(死角)から自車Mに接近する他車は、原則的に少ないと考えられる。このため、フロントカメラFCが選択される。
【0038】
次に、処理ユニットの信号処理部114は、選択された撮像データを画像処理することで、白線を検出する(S108)。白線情報は、フロントカメラFCまたはリアカメラRCのいずれが選択された場合であっても、検出が可能である。次に、車線逸脱判定部250は、検出された白線情報に基づき自車が車線を逸脱するか否かを判定する(S110)。車線逸脱であると判定された場合には、警報出力部280は、表示部150や音声出力部160に警報を出力させる(S112)。また、選択された撮像データは、ナビゲーション画面とともに表示部150に表示されるようにしてもよい。
【0039】
フロントカメラFCおよびリアカメラRCのいずれからの撮像データを使用しても白線検知をすることが可能であり、リアカメラRCを選択すれば、車線逸脱判定と後方障害物判定を同時に行うことができるが、夜間走行時には、リアカメラRCによる白線検出の性能が劣化する。そこで本実施例は、後方からの危険性が少ないような場合には、フロントカメラFCを選択することで、車線逸脱判定の精度を高めている。
【0040】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、選択決定部270は、車線数に基づきフロントカメラFCまたはリアカメラRCを選択するようにしたが、第2の実施例では、自車が走行している道路の属性情報を加味してカメラの選択を行う。
【0041】
属性情報取得部220は、自車が走行している道路の属性情報を記憶部170の地図データベースから取得する。選択決定部270は、取得された属性情報から、車線数が1車線であっても、道路の直線区間が一定距離以上ある場合には、リアカメラRCを選択させる。直線区間が長い場合には、後側方から追い越し車両が接近する可能性があるためである。リンク情報に直線区間の距離情報が含まれていない場合には、リンクの始点から終点までの形状から適宜直線区間を判定するようにしてもよい。
【0042】
他の態様として、選択決定部270は、取得された属性情報から、追い越し区間であるか否かを判定し、追い越し区間であれば、リアカメラRCを選択させ、追い越し区間でなければ、フロントカメラカメラFCを選択させる。追い越し区間であるか否かは、例えば、法定により追い越し禁止(黄色線)が設定されているか否かによって決定される。但し、そのような追い越し禁止が設定されていない場合であっても、カーブ区間である場合や、道路の幅員が一定値以下であれば、事実上、追い越すことは難しいので、追い越しがないと判定してもよい。カーブ区間か否かは、リンク情報に道路の曲率が含まれていれば、当該曲率が一定値以上か否かによって決定し、曲率が含まれていない場合には、道路形状から推定するようにしてもよい。
【0043】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例では、車線情報や属性情報に加え、自車の速度情報に基づきカメラの選択を行う。速度情報取得部230は、車内バスI/F140を介して自車の速度情報を取得する。本実施例では、選択決定部270は、速度情報が一定速度以上であるか否かを判定し、一定速度以上の場合のみフロントカメラFCまたはリアカメラRCの選択を行い、一定速度未満の場合には、車線情報や属性情報に関係なくリアカメラRCを選択する。
【0044】
図8は、本発明の第3の実施例の動作を説明するフローチャートである。先ず、速度情報取得部230により、自車の速度情報が取得される(S200)。次に、選択決定部270は、速度情報が一定速度以上(例えば、60km/h)であるか否かを判定する(S202)。一定速度未満と判定された場合には、選択決定部270は、車線情報や属性情報による判定を行わず、リアカメラRCを選択させる(S106)。一定速度以上と判定された場合は、第1の実施例で示したように、ステップS100〜S112のフローに従いカメラの選択が行われる。
【0045】
第3の実施例では、自車の走行速度が一定速度未満の場合は、車線情報に関わらず、車線逸脱の判定性能が低いリアカメラRCを選択している。これは、低速時では、高性能な車線逸脱判定が重要でなくなり、後側方の障害物の監視が重要になるためである。例えば、渋滞時や交差点近傍において低速走行をしているとき、後側方の死角から二輪車等の追い越し等が生じることがあり、これに的確に対処することができる。
【0046】
さらに第3の実施例では、自車の速度が一定速度未満の場合にリアカメラを選択させているが、例外を設定しても良い。例えば、入力部100からのユーザー設定によって、低速走行時の動作モードを実行させることも可能である。低速走行時の動作モードは、例えば、フロントカメラFCからの撮像データにより信号機を認識すること、あるいはフロントカメラFCからの撮像データにより前方障害物の有無を判定することなどである。低速走行時に、このような動作モードを実行させたい場合には、自車の速度が一定速度未満になった場合には、常にフロントカメラを選択させるようにしてもよい。
【0047】
さらに第3の実施例では、自車の速度が一定速度未満の場合にリアカメラを選択させているが、低速走行時のみならず、停車時や後退時においても常にリアカメラを選択させるようにしても良い。この場合、車両状態取得部240は、車内バスI/F140を介してギアポジションやサイドブレーキの情報を取得し、選択決定部270は、ギアポジションが後退であるとき、あるいはサイドブレーキがオンしているとき、リアカメラRCを選択させる。停車時、後退時には、車線逸脱判定は不要であることが多く、反面、そのような場合には、後側方の死角に、歩行者、自転車、その他物体などの障害物が存在することが多く、それらの監視が必要になる。それ故、リアカメラRCを選択させることが望ましい。
【0048】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。第4の実施例では、車線情報、属性情報等に加え、後方障害物の判定および車線逸脱の判定を考慮して、より的確なカメラの選択を行う。
図9は、第4の実施例に係る走行支援の動作フローである。第1の実施例のときと同様に、車線数取得部210によって自車が走行している道路の車線数が取得され(S300)、選択決定部270によって車線が1車線か2車線以上かが判定される(S302)。1車線である場合には、選択決定部270は、フロントカメラFCを選択させ(S304)、2車線以上である場合には、選択決定部270は、リアカメラRCを選択させる(S306)。
【0049】
次に、選択決定部270は、車線逸脱判定部250および後方障害物判定部260の判定結果を監視し、後方から障害物の接近がなく(S308)、かつ車線逸脱がないと判定されたとき(S310)、選択決定部270は、フロントカメラFCを選択させる(S304)。なお、この判定基準は、警報出力部280による警報を出力する判定基準と異なるものであってもよく、例えば、警報出力部280による判定基準よりもより厳しい基準としてもよい。なぜなら、自車の後方を全く監視しない期間が発生することになるためである。
【0050】
フロントカメラFCへの切り替え後、選択決定部270は、フロントカメラFCからの撮像データに基づく車線逸脱の判定を監視し、車線逸脱がありと判定された場合には、リアカメラRCを選択させる(S306)。さらに選択決定部270は、車両状態取得部240からウィンカーを出したことが検出された場合にも、リアカメラRCを選択させる(S306)。これらの2つの動作は、いずれも自車の後側方の監視または確認を必要とするものであるからである。リアカメラRCが選択された後、後方障害物がなく(S308)、車線逸脱がなければ(S310)、再び、フロントカメラFCへ切り替えられる。
【0051】
このように第4の実施例は、2車線以上の車線を走行中であっても一時的にフロントカメラFCに切り替え可能とし、切り替え後、自車後方の安全確認が必要となった場合には、再びリアカメラRCに切り替えることで、フロントカメラFCとリアカメラRCの切り換えタイミングを走行状態に応じてフレキシブルに制御することができる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。