(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367085
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】有機性排水処理におけるリン回収及びスケール発生防止方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C02F 5/00 20060101AFI20180723BHJP
C02F 5/10 20060101ALI20180723BHJP
C02F 1/58 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
C02F5/00 620B
C02F5/10 620A
C02F5/10 620B
C02F5/10 620E
C02F5/10 620F
C02F1/58 R
C02F5/10 620C
C02F5/10 620D
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-224347(P2014-224347)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-87541(P2016-87541A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】若菜 正宏
(72)【発明者】
【氏名】関 一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 久文
(72)【発明者】
【氏名】與倉 寛人
(72)【発明者】
【氏名】楠本 勝子
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−017631(JP,A)
【文献】
特開2010−089051(JP,A)
【文献】
特開2006−007011(JP,A)
【文献】
特開2001−038370(JP,A)
【文献】
特開2004−337807(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0211433(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 5/00 − 5/14
C02F 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水処理設備における難溶解性リン酸塩形成反応槽の上澄み水排出部に、スケール分散剤を添加する手段を設け、
前記難溶解性リン酸塩形成反応槽からの上澄み水を受け容れる処理水槽、当該上澄み水と脱水分離液とを混合する分離液槽、当該上澄み水の少なくとも一部を受け容れ、当該難溶解性リン酸塩形成反応槽にマグネシウム源を供給するマグネシウム源溶解槽又はカルシウム源を供給するカルシウム源溶解槽から選択される1槽以上をさらに具備し、当該選択された1槽以上に追加のスケール分散剤を添加する手段を設けたことを特徴とする有機性排水処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水処理におけるリン回収及びスケール発生防止方法及び装置に関し、特に、有機性排水処理におけるリン回収装置からの流出水配管内でのスケールの発生を防止する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屎尿、下水、産業排水等の有機性排水処理過程において、有益なリン回収方法として、リン酸カルシウムやリン酸ヒドロキシアパタイトなどの種結晶となる粒子状の難溶解性塩を添加して、この難溶性塩の表面にリン酸化合物を付着させ、リン酸ヒドロキシアパタイト(以下「HAP」という)として除去する晶析技術、及びリン酸マグネシウムとアルカリ分を添加してリン酸マグネシウムアンモニウム(以下「MAP」という)として水中から溶解性リンを除去する晶析技術が用いられている。MAP回収装置又はHAP回収装置は、処理対象水に難溶解性塩を添加してMAP又はHAPを形成させるMAP反応槽又はHAP反応槽の底部からMAP又はHAPを回収し、難溶解性塩としてリンを除去した上澄み水をMAP反応槽又はHAP反応槽の上部から流出させるように構成されている。しかし、未反応のリン酸カルシウムやリン酸マグネシウムが上澄み水中に残留して排出されるため、流出配管中で、処理対象水中の炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどと結合して析出しスケールとなり、あるいはMAP又はHAPが上澄み水に付随して流出して、流出配管を閉塞させるという問題が生じている。
【0003】
一方、水処理施設におけるスケール発生防止のために、スケール防止剤やスケール洗浄剤を添加する方法が用いられている。スケール防止剤とは、難溶解性塩の形成を防止する薬剤であり、スケール洗浄剤とは難溶解性塩を溶解させる薬剤である。いずれも難溶解性塩の形成を阻害するため、MAP回収装置又はHAP回収装置における難溶解性塩の形成という目的と相反し、有効に利用することが困難であった。
【0004】
これまでに提案されている有機性排水処理におけるスケール防止方法は、処理対象水のpHを酸性に調整してMAPの形成を阻害する方法(特許文献1)など、リン回収のためのMAP形成とは相反する方法である。リン回収後の亜消化槽での脱窒工程において、処理対象水中のリン酸・アンモニア性窒素・マグネシウムの濃度積を8×10
−8以下としてMAP形成を抑制する方法(特許文献2)も提案されているが、リン回収後の流出水を亜消化槽に流入させるまでに、急速凝集混和槽にて凝集剤を添加してリン酸鉄としてリン酸成分を除去することが必要である。また、リン酸成分の除去により脱窒槽におけるMAP形成を防止するが、配管内壁への炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどのスケールについては一切考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-087986号公報
【特許文献2】特開2010-000479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、屎尿、下水、産業排水等の有機性排水処理過程において、リンを回収すると共に、リン回収装置からの上澄み水を送液する配管内壁におけるスケール発生を防止する方法及び装置を提供することにある。
【0007】
より具体的には、有機性排水処理過程において、MAP又はHAPを積極的に形成させて難溶解性塩としてリンを回収すると共に、リン回収後の処理対象水を送液する配管内壁への難溶解性塩の析出を防止する方法及び装置を提供することにある。
【0008】
また、リン回収後の処理対象水をリン回収装置や、塩化マグネシウム溶解槽(MAPの場合)に循環再利用する場合であっても有効な上記方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記相反する要求を満たすために鋭意研究した結果、リン回収設備から配管に至るまでの間に、リン回収設備からの流出水にスケール分散剤を添加することにより、配管内壁へのスケール付着を防止することができることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明によれば、以下の態様が提供される。
[1]有機性排水処理設備における難溶解性リン酸塩形成反応槽の上澄み水排出部に、スケール分散剤を添加することを特徴とする、有機性排水処理におけるリン回収及びスケール発生防止方法。
[2]前記スケール分散剤の添加量は、20mg/L未満であることを特徴とする[1]に記載のリン回収及びスケール発生防止方法。
[3]有機性排水処理設備における難溶解性リン酸塩形成反応槽の上澄み水排出部に、スケール分散剤を添加する手段を設けたことを特徴とする有機性排水処理設備。
[4]前記難溶解性リン酸塩形成反応槽からの上澄み水を受け容れる処理水槽、当該上澄み水と脱水分離液とを混合する分離液槽、当該上澄み水の少なくとも一部を受け容れ、当該難溶解性リン酸塩形成反応槽にマグネシウム源を供給するマグネシウム源溶解槽又はカルシウム源を供給するカルシウム源溶解槽から選択される1槽以上をさらに具備し、当該選択された1槽以上に追加のスケール分散剤を添加する手段を設けたことを特徴とする[3]に記載の有機性排水処理設備。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屎尿、下水、産業排水等の有機性排水処理過程において、リンを回収すると共に、リン回収装置からの上澄み水を送液する配管内壁におけるスケール発生を防止することができる。
【0011】
より具体的には、有機性排水処理過程において、MAP又はHAPを積極的に形成させて難溶解性塩としてリンを回収すると共に、リン回収後の処理対象水を送液する配管内壁への難溶解性塩の析出を防止することができる。特に、リン回収後の上澄み水中にMAP又はHAPが付随して流出した場合に、配管内壁へのMAP又はHAPの付着を防止することができる。
【0012】
また、本発明の方法及び装置は、リン回収後の処理対象水を再びリン回収装置に循環させて再利用する場合であっても、リン回収装置における難溶性塩の形成によるリン回収が可能で且つリン回収装置からの流出配管内壁への難溶性塩の析出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の方法及び装置を適用することができる代表例である屎尿・浄化槽汚泥の処理フローの概略説明図である。
【
図3】本発明の別の実施態様を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の別の実施態様を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の別の実施態様を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の別の実施態様を示す概略説明図である。
【
図7】実施例によるスケール分散剤添加量と反応槽内液面上昇との関係を示すグラフである。
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の方法及び装置を適用することができる代表例である屎尿・浄化槽汚泥の処理フローの概略図である。
【0016】
図1において、屎尿・浄化槽汚泥は、脱水設備2にて脱水汚泥と処理対象水とに分離される。処理対象水の少なくとも一部は、リン回収設備3に送られ、MAPとしてリンを回収した後、生物処理設備4に送られる。生物処理設備4にて生物処理された処理水は、凝集沈殿−砂ろ過又は膜分離−活性炭設備5にてろ過された後、消毒設備6を経て放流される。
【0017】
図2にリン回収設備3の概略を示す。リン回収設備3には、処理対象水に種結晶となる粒子状の難溶解性塩を添加して難溶解性のMAPを形成し、得られた難溶解性のMAPを底部から回収するMAP反応槽30と、溶解性のリンが除去された処理対象水を生物処理設備4に送るための流出配管31が設けられている。MAP反応槽30には、上澄み水を越流させて流出配管31又は流出樋(ロンダー又はトラフ)32に導入するための越流堰33が設けられている。MAP反応槽30の上部には、エアリフトセパレータ30aが設けられている。エアリフトセパレータ30aは、形成されたMAP粒子をエアリフト撹拌し、MAP粒子が上澄み水中に付随して流出することを防止するようになされている。しかし、MAP粒子が上澄み水中に付随して流出することを完全に防止できるわけではなく、微小なMAP粒子は上澄み水と共に流出してしまう。
【0018】
図2のリン回収設備の場合、難溶解性塩形成反応槽の上澄み水排出部である越流堰33又は流出樋32に、スケール分散剤を添加する。さらに、流出配管31の任意の位置にスケール分散剤を添加してもよい。
【0019】
図3は、MAP反応槽30の後段に、MAP反応槽30からの流出水を生物処理設備4に供給する前に貯留する処理水槽7を設けた実施態様を示す。
図3に示す実施態様の場合、MAP反応槽30の越流堰33又は流出樋32に加えて、処理水槽7に、スケール分散剤を添加してもよい。この場合、処理水槽7にて貯留されている間に、残留している少量の難溶解性塩は溶解しやすくなり、配管内壁でのスケール発生を防止できる。
【0020】
図4は、MAP反応槽30にマグネシウム源を提供するための塩化マグネシウム溶解槽8を設けた実施態様を示す。塩化マグネシウム溶解槽8には、MAP反応槽30からの流出水の少なくとも一部を添加する供給配管と、塩化マグネシウム水溶液としてマグネシウムをMAP反応槽30に添加するマグネシウム供給配管と、が連結されている。
図4に示す実施態様の場合、MAP反応槽30の越流堰33又は流出樋32に加えて、塩化マグネシウム溶解槽8に、スケール分散剤を添加してもよい。塩化マグネシウム溶解槽8に供給された少量の残留難溶解性塩は、スケール分散剤により溶解しやすくなり、MAP形成に必要なマグネシウムイオンとなる。また、MAP反応槽30と塩化マグネシウム溶解槽8との間に、
図3に示す処理水槽7を設けてもよい。この場合、スケール分散剤は、処理水槽7及び塩化マグネシウム溶解槽8のいずれか一方又は両方に添加することができる。
【0021】
図5は、MAP反応槽30からの流出水の少なくとも一部を脱水設備2からの分離液と混合した後、生物処理設備4に送る分離液槽9を設けた実施態様を示す。
図5に示す実施態様において、MAP反応槽30の越流堰33又は流出樋32に加えて、分離液槽9に、スケール分散剤を添加してもよい。また、
図4と同様に塩化マグネシウム溶解槽8を設けてもよく、MAP反応槽30からの流出水の少なくとも一部を送り、マグネシウム源を含む溶液としてMAP反応槽30に戻してもよい。塩化マグネシウム溶解槽8を設ける場合には、塩化マグネシウム溶解槽8にスケール分散剤をさらに添加してもよい。また、
図3に示す処理水槽7を設けてもよく、スケール分散剤をさらに添加してもよい。
【0022】
図6は、MAP反応槽30からの流出水を生物処理設備4に供給する前に、処理水槽7に貯留し、一部を塩化マグネシウム溶解槽8に送り、一部を分離液槽9に送る実施態様を示す。スケール分散剤は、MAP反応槽30の越流堰33又は流出樋32に加えて、処理水槽7、塩化マグネシウム溶解槽8及び分離液槽9のいずれか1以上に添加することができる。マグネシウム源として、塩化マグネシウムに変えて、水酸化マグネシウムを用いても良い。
【0023】
図示した実施態様においては、MAP反応槽30を1槽使用しているが、複数のMAP反応槽30を直列に連結して使用することもできる。この場合、各MAP反応槽30の越流堰33又は流出樋32にスケール分散剤を添加してもよいし、最下流のMAP反応槽30の越流堰33又は流出樋32にスケール分散剤を添加してもよい。
【0024】
また、生物処理設備4及び凝集沈殿−砂ろ過又は膜分離−活性炭設備5にて発生する余剰汚泥を前脱水設備2に戻して、新しい処理対象物と混合して脱水処理し、得られる脱水処理水をMAP反応槽30に再循環させて再利用してもよい。
【0025】
また、難溶解性塩形成反応槽としてMAP反応槽を用いて説明したが、HAP反応槽でも他の反応槽でもよい。HAP反応槽の場合には、塩化マグネシウムに代えて塩化カルシウムを添加するためマグネシウム溶解槽及びマグネシウム供給配管の代わりにカルシウム溶解槽及びカルシウム供給配管を用いるが、装置構成としてはほぼ同様である。HAP反応槽における処理対象水は、前脱水設備にて脱水された後、脱窒素槽にて脱窒素処理され、硝化槽にて硝化された後、HAP反応槽に流入する。
【0026】
MAP反応槽及びHAP反応槽はアルカリ源の供給手段など通常のMAP反応槽及びHAP反応槽に必要な装置構成を具備するが、スケール分散剤添加に関連しない一般的なMAP反応槽及びHAP反応槽の装置構成についての説明は割愛する。
【0027】
本発明のリン回収及びスケール発生防止方法は、難溶解性形成反応槽の上澄み水排出部に、スケール分散剤を添加することを特徴とする。上澄み水排出部としては、越流堰又は流出樋が好ましい。スケール分散剤の添加は、難溶解性形成反応槽への処理原水の供給と連動して制御することが好ましく、処理原水の供給時にスケール分散剤を添加し、処理原水の供給停止時にはスケール分散剤も添加しない。スケール分散剤の添加を処理原水の供給と連動させることによって、スケール分散剤の適量を添加することができる。
【0028】
本発明において添加することができるスケール分散剤は、公知のスケール分散剤でよく、アクリル酸系スケール分散剤、マレイン酸系スケール分散剤、リン酸系スケール分散剤、スルホン酸系スケール分散剤及びホスホン酸系スケール分散剤から選択される1種もしくはこれらの2種以上の混合物であることが好ましい。化学式(1):
【0030】
で示されるビス(ポリ−2−カルボキシエチル)ホスホン酸を用いることもできる。
【0031】
ポリアクリル酸系スケール分散剤としては平均分子量500〜50000、好ましくは1000〜10000の範囲にある水溶性ポリマー、ポリマレイン酸系スケール分散剤としては平均分子量200〜20000、好ましくは500〜5000の範囲にある水溶性ポリマー、ホスホン酸系スケール分散剤としては、平均分子量100〜10000、好ましくは100〜1000の範囲にある水溶性ポリマーなどを挙げることができる。水溶性ポリマーとしては、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸(HAPS)、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)、ビス(ポリー2−カルボキシエチル)ホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ヒドロキシエチリデンジスルホン酸(HEDP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTP)などの重合物又は共重合物を挙げることができる。
【0032】
スケール分散剤の添加量は、20mg/L未満が好ましく、2mg/L以上20mg/L未満がより好ましく、2mg/L以上10mg/L以下が最も好ましい。過剰に添加すると、後段の生物処理設備4や凝集沈殿−砂ろ過又は膜分離−活性炭設備5にて発生する余剰汚泥を前脱水設備2に戻して脱水し、得られる脱水処理水を難溶解性塩形成反応槽に循環再して再利用する場合に、難溶解性塩形成反応を阻害する。また、後述するように、20mg/L以上添加してもスケール抑制効果が向上することはなかった。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0034】
図1に示す処理フローの屎尿・浄化槽汚泥処理設備において、リン回収設備3としてMAP反応槽30を用いて、MAP反応槽30の越流堰33にスケール分散剤を添加して、MAP反応槽30からの流出水配管内のスケールの発生及び生物処理設備4からの処理水の性状を調べた。
【0035】
スケール分散剤として、エバスパース2660(水ing株式会社製アクリル酸系ポリマー型スケール分散剤)を用いた。
【0036】
MAP反応槽30からの流出配管を新品にして屎尿・浄化槽汚泥処理を行い、MAP反応槽30の基準水位が50mm上昇した時点で、流出水配管内のスケール発生により閉塞が生じたと評価し、スケール分散剤の添加量を変えて、基準水位が50mm上昇するまでに要した日数を観察した。結果を表1及び
図7に示す。なお、本実験ではスケール分散剤を連続して注入したが、注入方式は間欠でも良い。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から、スケール分散剤を添加することで、流出配管内のスケール発生が抑制されていることがわかる。特にスケール分散剤を2mg/L以上添加することでスケール発生抑制効果が確認できた。スケール分散剤の添加量10mg/Lが最も効果が高く、10mg/Lを越えるとほぼ一定の効果であった。
【0039】
また、スケール分散剤を添加することで、MAP反応槽内の基準水位からの液面上昇が緩やかとなることが確認できた。
【0040】
スケール分散剤添加の有無による処理水の性状の変化を測定した。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2から、スケール分散剤添加による処理水性状の変化は認められず、本発明の方法によっても屎尿・浄化槽汚泥処理に負の影響はなかったことがわかる。
【0043】
スケール分散剤添加によるMAP反応槽30からのリン回収率の変動を求めた結果を表3に示す。スケール分散剤添加有の場合のリン回収率をMAP反応槽30への流入ライン(リン回収槽In側)で測定し、スケール分散剤添加無の場合のリン回収率をMAP反応槽30からの流出ライン(リン回収槽Out側)で測定して比較した。
【0044】
【表3】
【0045】
表3から、スケール分散剤添加によるリン回収率の低下は認められず、スケール分散剤を20mg/L以下の範囲で添加してもMAP結晶は大きく成長し、MAP回収槽底部から回収されるリンの回収には影響がないことが確認できた。