特許第6367088号(P6367088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367088
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】クレーン装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/48 20060101AFI20180723BHJP
   B66C 13/22 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B66C13/48 B
   B66C13/22 Y
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-230179(P2014-230179)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-94266(P2016-94266A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 智子
(72)【発明者】
【氏名】森 真史
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−501054(JP,A)
【文献】 特開平11−005688(JP,A)
【文献】 特開2013−052985(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/046038(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 − 15/06
B66C 1/00 − 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の対向する爪を有し、前記一対の対向する爪を吊り上げ対象物の吊り孔に両側から挿入して前記吊り上げ対象物を吊り上げる吊り具と、
前記一対の対向する爪の一方の爪先に、他方の爪先を向くように設けられたカメラと、
前記吊り上げ対象物に対する前記吊り具の位置ずれを強調するように、前記カメラで撮影された画像に所定の処理を施す画像処理部と、を備え
前記画像処理部は、前記画像の上部又は下部を左右反転する処理を施すクレーン装置。
【請求項2】
前記吊り具は、前記一対の対向する爪を複数組の一対の対向する爪に分割可能であり、
前記カメラは、各組の一方の爪先に、同組の他方の爪先を向くように各々設けられている請求項に記載のクレーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール状物体(吊り上げ対象物)の巻芯に両側から挿入される一対の挿入体を備えた吊り具が昇降台に取り付けられると共に、挿入体の近傍にカメラが設置された搬送装置(クレーン装置)が知られており、この搬送装置では、カメラで撮影された巻芯部分の写像に基づいて、巻芯と挿入体との位置合わせを自動で行うようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−199056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クレーン装置においては、吊り上げ対象物と吊り具との位置ずれの有無を、吊り具に設けられたカメラで撮影された画像を見て作業者が判断する場合がある。しかしながら、位置ずれが僅かである場合、作業者が画像を一目見ただけで当該位置ずれの有無を判断することは困難である。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、吊り上げ対象物と吊り具との位置ずれの有無を容易に判断できるクレーン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクレーン装置は、一対の対向する爪を有し、一対の対向する爪を吊り上げ対象物の吊り孔に両側から挿入して吊り上げ対象物を吊り上げる吊り具と、一対の対向する爪の一方の爪先に、他方の爪先を向くように設けられたカメラと、吊り上げ対象物に対する吊り具の位置ずれを強調するように、カメラで撮影された画像に所定の処理を施す画像処理部と、を備える。
【0007】
このクレーン装置によれば、一対の対向する爪の一方の爪先に設けられたカメラで、他方の爪先と吊り上げ対象物とを撮影し、撮影された画像に所定の処理を施すことにより、吊り上げ対象物に対する吊り具の位置ずれを強調することができる。このため、吊り上げ対象物と吊り具との位置ずれの有無を容易に判断できる。
【0008】
ここで、画像処理部は、画像の上部又は下部を左右反転する処理を施してもよい。これにより、吊り上げ対象物と吊り具との位置ずれが有る場合、画像の上部と下部との境界において、吊り上げ対象物が不連続にずれて表示される。これに対し、吊り上げ対象物と吊り具との位置ずれが無い場合、画像の上部と下部との境界において、吊り上げ対象物が連続的にずれの無いように表示される。従って、作業者が画像を一目見ただけで、吊り上げ対象物と吊り具との位置ずれの有無を容易に判断できる。特に、僅かな位置ずれであってもその存在を容易に認識できるため、その位置ずれを消すように吊り具を移動させることで、吊り上げ対象物に対する吊り具の位置を高精度に決めることができる。
【0009】
また、吊り具は、一対の対向する爪を複数組の一対の対向する爪に分割可能であり、カメラは、各組の一方の爪先に、同組の他方の爪先を向くように各々設けられていてもよい。これにより、1個の吊り上げ対象物に対しては、一対の対向する爪を分割せずに一体として使用することで、上述したように吊り上げ対象物に対する吊り具の位置ずれを強調することができる。このため、各吊り上げ対象物と、対応する吊り具との位置ずれの有無を容易に判断できる。また、複数個の吊り上げ対象物に対しては、一対の対向する爪を複数組の一対の対向する爪に分割して使用し、各々の爪先に設けられたカメラで撮影された画像に所定の処理を施すことにより、各吊り上げ対象物と、対応する吊り具との位置ずれを強調することができる。このため、各吊り上げ対象物と、対応する吊り具との位置ずれの有無を容易に判断できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吊り上げ対象物と吊り具との位置ずれの有無を容易に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るクレーン装置を示す概略正面図である。
図2図1に示すクレーン装置の概略側面図である。
図3】クレーン装置の機能ブロック図である。
図4】吊り具及び吊り上げ対象物を示す概略斜視図である。
図5】位置ずれが有る場合の画像を示す図である。
図6】位置ずれが無い場合の画像を示す図である。
図7】第2実施形態における吊り具及び吊り上げ対象物を示す概略斜視図である。
図8】第3実施形態における吊り具及び吊り上げ対象物を示す概略斜視図である。
図9】位置ずれが有る場合の画像を示す図である。
図10】位置ずれが無い場合の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係るクレーン装置を示す概略正面図、図2は、図1に示すクレーン装置の概略側面図である。図1及び図2に示すように、クレーン装置1は、天井クレーンであり、例えば円筒形状に巻かれた鋼板であるコイル等の吊り上げ対象物Cを吊り上げ及び移動するものである。クレーン装置1は、ガーダー2、トロリー3、吊り具4、カメラ5、及び運転室30を備えている。なお、クレーン装置1は、天井クレーンに限定されず、橋形クレーン、ダブルリンク式ジブクレーン等であってもよい。
【0013】
吊り上げ対象物Cは、略円筒形状の軸心位置に、一端から他端へ略円筒形状に貫通した巻芯等の吊り孔Hを備えている。なお、吊り上げ対象物Cとしては、このような吊り孔Hを備えていれば、コイルに限定されず、例えば製紙ロール等であってもよい。また、吊り上げ対象物Cの外形の形状及び大きさも特に限定されるものではなく、例えば、後述する一対の対向する爪9A,9Bを挿入可能な大きさを有する吊り孔Hを有していればよい。
【0014】
ガーダー2は、トロリー3及び吊り具4の荷重を支持するものであり、建屋の天井付近に、両壁に亘って略水平に横架される。このガーダー2は、ガーダー2の延在方向に対し直交する水平方向に移動可能となっており、この方向にトロリー3及び吊り具4を移動させることができる。
【0015】
トロリー3は、ガーダー2の上を、ガーダー2の延在方向に沿って横行する。これにより、トロリー3は、ガーダー2の延在方向に沿って吊り具4の位置を移動させることができる。また、トロリー3は、垂下されたワイヤーロープ7を巻き上げ/巻き下げする巻上装置(不図示)を有している。
【0016】
吊り具4は、吊り上げ対象物Cを保持/解放するものであり、トロリー3から垂下されたワイヤーロープ7に吊り下げられている。吊り具4は、トロリー3の巻上装置によりワイヤーロープ7が巻き上げられることで上方へ移動し、一方、巻上装置によりワイヤーロープ7が巻き下げられることで下方へ移動する。吊り具4は、基部8と、一対の対向する爪9A,9Bと、を有している。基部8は、その上面側にワイヤーロープ7が接続されると共に、その下面側に一対の対向する爪9A,9Bが設けられている。
【0017】
一対の対向する爪9A,9Bは、基部8に近い上部側の回動中心軸線(不図示)を中心として各々回動して爪同士を開閉できるものであっても、爪同士の間隔が広がり、また狭まるようにして、爪9A,9Bの少なくとも一方が水平移動して開閉できるものであってもよい。
【0018】
一対の対向する爪9A,9Bの各爪先9a,9bは、互いに向き合い正対するように突設されている。そして、一対の対向する爪9A,9Bが閉じることにより、爪先9a,9bを有する突出部9e,9f(図2参照)が吊り上げ対象物Cの吊り孔Hにそれぞれ両側から挿入される。これにより、吊り具4は、吊り上げ対象物Cを保持できる。なお、ここでいう「保持」とは、一対の対向する爪9A,9Bの互いに対向する内側の面9c,9d(図2参照)が吊り上げ対象物Cに当接していても、当接していなくてもよい。当接している場合、一対の対向する爪9A,9Bから吊り上げ対象物Cに対し、挟み込むように力を加えて把持することで、保持することになる。一方、当接していない場合、巻上装置によるワイヤーロープ7の巻き上げ/巻き下げに際し、一対の対向する爪9A,9Bの突出部9e,9fが吊り孔Hに引っ掛けられることで、保持することになる。
【0019】
カメラ5は、一対の対向する爪9A,9Bの一方の爪先9aに、他方の爪先9bを向くように設けられている。従って、カメラ5で撮影された画像は、その画面中央に他方の爪先9bが映ることになる。また、一対の対向する爪9A,9Bの間に吊り上げ対象物Cが位置している場合、カメラ5で撮影された画像において、他方の爪先9bは、吊り上げ対象物Cの吊り孔Hを介して映ることになる(図5(a)、図6(a)参照)。なお、カメラ5としては、特に限定されず、あらゆるカメラを適用することができる。例えば、カメラ5は、動画で撮影できるカメラであってもよく、また、所定のタイミングで静止画を撮影できるカメラであってもよい。
【0020】
図3は、クレーン装置の機能ブロック図である。図3に示すように、運転室30は、作業者によって行われる各種入力操作を受け付ける操作部31、当該入力操作等に基づきクレーン装置1を制御する制御部32、及び画像を表示する表示部33を備えている。
【0021】
制御部32は、駆動機構制御部34、カメラ制御部35、及び画像処理部36を有している。駆動機構制御部34は、ガーダー2の移動、トロリー3の横行、吊り具4の上下方向への移動、及び一対の対向する爪9A,9Bの開閉といったクレーン装置1の駆動を制御する。カメラ制御部35は、カメラ5による画像の撮影を制御すると共に、カメラ5で撮影された画像データをカメラ5から入力し、画像処理部36へ出力する。画像処理部36は、吊り上げ対象物Cに対する吊り具4の位置ずれを強調するように、カメラ制御部35から入力された画像データに所定の処理を施す。具体的には、画像処理部36は、カメラ5で撮影された画像を上部と下部とに分割して、画像の上部を左右反転し、反転画像を画像の下部と合成する。
【0022】
続いて、第1実施形態に係るクレーン装置1の作用について説明する。図4は、吊り具及び吊り上げ対象物を示す概略斜視図、図5は、位置ずれが有る場合の画像を示す図であり、図5(a)は、位置ずれが有る場合のカメラ画像を示す図、図5(b)は、位置ずれが有る場合のカメラ画像に対し画像処理された画像を示す図である。また、図6は、位置ずれが無い場合の画像を示す図であり、図6(a)は、位置ずれが無い場合のカメラ画像を示す図、図6(b)は、位置ずれが無い場合のカメラ画像に対し画像処理された画像を示す図である。なお、この第1実施形態は、1個の吊り上げ対象物Cを吊り上げる場合に適用されるものである。
【0023】
まず、作業者の操作によって、図2に示すように、一対の対向する爪9A,9Bが開かれると共に、ガーダー2、トロリー3、及び吊り具4がそれぞれ駆動され、図4に示すように、一対の対向する爪9A,9Bの間に吊り上げ対象物Cが位置する状態にされる。このとき、吊り上げ対象物Cと吊り具4との正確な位置合わせはまだ行われていない。
【0024】
吊り上げ対象物Cは、吊り孔Hが一端から他端へ略円筒形状に貫通しているため、図5(a)では、吊り孔Hの開口端E1,E2が円形状に画像に映っている。なお、図5図6中において、カメラ5に近い側の開口端E1を示す円の内側に、カメラ5から遠い側の開口端E2を示す円が映っている。ここで、図5(a)においては、カメラ5が設けられた爪先9a側から見て、吊り上げ対象物Cに対して吊り具4が右側へ寄るように位置ずれが有る。この場合、吊り孔Hの開口端E1,E2は、画像中では左側へ寄ることになる。
【0025】
ここで、画像処理部36は、図5(a)に示す画像に対し、画像を上部と下部とに分割して、画像の上部を左右反転し、反転画像を図5(a)の画像の下部と合成する。すると、画像は図5(b)に示すように表示される。すなわち、図5(b)に示すように、画像の上部と下部との境界において、吊り孔Hの開口端E1,E2が不連続にずれて表示され、吊り上げ対象物Cと吊り具4との位置ずれが強調される。図5(b)に示す画像処理された画像は、表示部33に表示される。
【0026】
次に、作業者は、図5(b)に示す画像を見ながらクレーン装置1を操作することで、吊り上げ対象物Cと吊り具4との位置合わせを行う。
【0027】
そして、作業者の位置合わせにより、吊り上げ対象物Cと吊り具4との位置ずれが無くなると、図6(a)に示すように、吊り孔Hの開口端E1,E2は、画像中では左右の中央に位置することになる。
【0028】
画像処理部36は、図6(a)に示す画像に対し、画像を上部と下部とに分割して、画像の上部を左右反転し、反転画像を図6(a)の画像の下部と合成する。すると、画像は図6(b)に示すように表示される。すなわち、図6(b)に示すように、画像の上部と下部との境界において、吊り孔Hの開口端E1,E2が連続的にずれの無いように表示される。
【0029】
以上説明したように、第1実施形態に係るクレーン装置1によれば、一対の対向する爪9A,9Bの一方の爪先9aに設けられたカメラ5で、他方の爪先9bと、吊り上げ対象物Cの吊り孔Hの開口端E1及びE2とを撮影し、撮影された画像に所定の処理を施すことにより、吊り上げ対象物Cに対する吊り具4の位置ずれを強調することができるため、吊り上げ対象物Cと吊り具4との位置ずれの有無を容易に判断できる。
【0030】
また、画像処理部36は、画像の上部を左右反転する処理を施し、吊り上げ対象物Cと吊り具4との位置ずれが有る場合、画像の上部と下部との境界において、吊り上げ対象物Cが不連続にずれて表示させる一方で、吊り上げ対象物Cと吊り具4との位置ずれが無い場合、画像の上部と下部との境界において、吊り上げ対象物Cが連続的にずれの無いように表示させるため、作業者が画像を一目見ただけで、吊り上げ対象物Cと吊り具4との位置ずれの有無を容易に判断できる。
【0031】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態における吊り具及び吊り上げ対象物を示す概略斜視図である。図7に示すように、第2実施形態に係るクレーン装置の吊り具14にあっては、基部18に、一対の対向する爪19A,19B、及び一対の対向する爪29A,29Bを二組有し、各組の一方の爪先19a,29aに、同組の他方の爪先19b,29bを向くように各々カメラ15,16が設けられ、更に、基部18には、一対の対向する爪19A,19Bと一対の対向する爪29A,29Bとの間隔(ガーダー2の延在方向の間隔)を調節できる機構(不図示)が設けられている。そして、この第2実施形態では、二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bを各組に分割した状態とすることで、2個の吊り上げ対象物C,Cを各組の爪により同時に吊り上げることができる。
【0032】
具体的には、作業者の操作によって、一対の対向する爪19A,19Bが開かれ、ガーダー2、トロリー3、及び吊り具14がそれぞれ駆動され、一対の対向する爪19A,19Bの間に吊り上げ対象物Cが位置すると共に、一対の対向する爪29A,29Bが開かれ、更に、一対の対向する爪19A,19Bに対する間隔が調節され、吊り上げ対象物Cの近くに並置された別の吊り上げ対象物Cが一対の対向する爪29A,29Bの間に位置する状態にされる。
【0033】
そして、二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bの各組において、図5及び図6に示すように、第1実施形態と同様にして吊り上げ対象物Cと、吊り具14の爪との位置合わせを各々の組で行う。これにより、2個の吊り上げ対象物C,Cを同時に吊り上げることができる。
【0034】
以上説明したように、第2実施形態に係るクレーン装置の吊り具14にあっては、一組の一対の対向する爪を、二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bに分割可能であり、カメラ15,16は、各組の一方の爪先29a,19aに、同組の他方の爪先29b,19bを向くように各々設けられているため、2個の吊り上げ対象物C,Cに対して、一組の一対の対向する爪を二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bに分割して使用し、各組の一方の爪先29a,19aに設けられたカメラ15,16で撮影された画像に所定の処理をそれぞれ施すことにより、各吊り上げ対象物C,Cと、対応する爪との位置ずれを強調することができ、各吊り上げ対象物C,Cと、対応する爪との位置ずれの有無を容易に判断できる。なお、所定の処理としては、カメラ15で撮影した画像に対し、画像を上部と下部とに分割して、画像の上部を左右反転し、反転画像を画像の下部と合成しており、また、カメラ16で撮影した画像に対しても同様に、画像を上部と下部とに分割して、画像の上部を左右反転し、反転画像を画像の下部と合成している。
【0035】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態における吊り具及び吊り上げ対象物を示す概略斜視図である。図8に示すように、第3実施形態に係るクレーン装置の吊り具14にあっては、第2実施形態における二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bを合わせて一体化し、一組の爪部となっている。そして、この第3実施形態では、二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bを一体化した状態とすることで、1個の吊り上げ対象物Cを吊り上げることができる。
【0036】
ここで、前述したように、二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bについて、各組の一方の爪先19a,29aには、それぞれ各組の他方の爪先19b,29bを向くように各々カメラ15,16が設けられている。従って、ここでは、二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bが一体化した後の爪先において、カメラ15,16は、爪先の左右に多少離れて配置されることとなる。
【0037】
図9は、位置ずれが有る場合の画像を示す図であり、図9(a)は、位置ずれが有る場合のカメラ16によるカメラ画像を示す図、図9(b)は、位置ずれが有る場合のカメラ15によるカメラ画像を示す図、図9(c)は、位置ずれが有る場合のカメラ画像に対し画像処理された画像を示す図である。また、図10は、位置ずれが無い場合の画像を示す図であり、図10(a)は、位置ずれが無い場合のカメラ16によるカメラ画像を示す図、図10(b)は、位置ずれが無い場合のカメラ15によるカメラ画像を示す図、図10(c)は、位置ずれが無い場合のカメラ画像に対し画像処理された画像を示す図である。
【0038】
ここで、図9(a)、図9(b)においては、カメラ15,16がそれぞれ設けられた爪先29a,19a側から見て、吊り上げ対象物Cに対して吊り具14が左側へ寄るように位置ずれがある。
【0039】
画像処理部36は、図9(a)に示すカメラ画像を上部と下部とに分割した下部側の画像と、図9(b)に示すカメラ画像を上部と下部とに分割した上部側の画像を更に左右反転した画像と、を合成する。この場合、合成した画像は図9(c)に示すように表示される。図9(c)では、画像の上部と下部との境界において、吊り孔Hの開口端E1,E2が不連続にずれて表示され、位置ずれが強調される。図9(c)に示す画像処理された画像は、表示部33に表示される。
【0040】
次に、作業者は、図9(c)に示す画像を見ながらクレーン装置を操作することで、吊り上げ対象物Cと吊り具14との位置合わせを行う。
【0041】
そして、作業者の位置合わせにより、吊り上げ対象物Cと吊り具14との位置ずれが無くなると、吊り孔Hの開口端E1,E2は、図10(a)に示すように、カメラ16による画像では図9(a)に比して多少左に移動し、また、図10(b)に示すように、カメラ15による画像では図9(b)に比して多少左に移動し、その結果、図10(c)に示すように、画像処理された画像の上部と下部との境界において、吊り孔Hの開口端E1,E2が連続的にずれの無いように表示される。
【0042】
以上説明したように、第3実施形態に係るクレーン装置の吊り具14にあっては、一組の一対の対向する爪を、二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bに分割せずに一体として使用することで、1個の吊り上げ対象物Cに対して、吊り上げ対象物Cに対する吊り具14の位置ずれを強調することができ、吊り上げ対象物Cと吊り具14との位置ずれの有無を容易に判断できる。
【0043】
また、図7図8で説明したように、吊り具14は、二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bを一体化して一組の一対の対向する爪とすることができる一方で、吊り具14は、一体化した一組の一対の対向する爪を、二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bに分割可能であり、従って、クレーン装置は、吊り上げ対象物Cを1個ずつ吊り上げるか、或いは2個ずつ吊り上げるかを適宜選択して使用できる。
【0044】
なお、本発明に係るクレーン装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、画像処理部36は、カメラ5で撮影された画像を上部と下部とに分割して、画像の上部を左右反転し、反転画像を画像の下部と合成しているが、画像処理部36は、画像の下部を左右反転し、反転画像を画像の上部と合成してもよい。また、第3実施形態でも同様に、左右反転を上下逆にして行ってもよい。
【0045】
また、第2実施形態において、吊り具14は、一組の一対の対向する爪を、二組の一対の対向する爪19A,19B、29A,29Bに分割可能であったが、三組以上の一対の対向する爪に分割できてもよい。この場合も、各組の一方の爪先に、同組の他方の爪先を向くように各々カメラが設けられ、各カメラで撮影された画像に所定の処理を施すことによって、各吊り上げ対象物と、対応する吊り具の位置ずれを強調することができる。このため、3個以上の各吊り上げ対象物と、対応する吊り具の爪との位置ずれの有無を容易に判断できる。
【符号の説明】
【0046】
1…クレーン装置、4…吊り具、5…カメラ、9A,9B…爪、9a,9b…爪先、36…画像処理部、C…吊り上げ対象物、H…吊り孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10