特許第6367090号(P6367090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367090建築物への航空機衝突検知方法及び装置、並びに建築物の開口部閉塞設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367090
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】建築物への航空機衝突検知方法及び装置、並びに建築物の開口部閉塞設備
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/04 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   E04H9/04
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-231301(P2014-231301)
(22)【出願日】2014年11月14日
(65)【公開番号】特開2016-94750(P2016-94750A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】庄司 圭宏
(72)【発明者】
【氏名】田上 哲治
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−152592(JP,A)
【文献】 特開2015−200124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/04
G21D 3/04
G01H 1/00 − 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物における高さ方向の異なる位置に加速度計が設置され、これら複数の加速度計が計測した前記建築物に生ずる加速度の比が第1閾値を超えたときに、前記建築物への航空機の衝突を検知することを特徴とする建築物への航空機衝突検知方法。
【請求項2】
前記建築物に生ずる前記加速度の比が前記第1閾値を超え、且つ少なくとも1つの前記加速度計が計測した加速度が第2閾値を超えたときに、前記建築物への航空機の衝突を検知することを特徴とする請求項1記載の建築物への航空機衝突検知方法。
【請求項3】
前記加速度計の少なくとも1つが計測した加速度の水平2方向の加速度成分の比を判定することで、航空機の衝突方向を検知することを特徴とする請求項1または2に記載の建築物への航空機衝突検知方法。
【請求項4】
前記加速度計の少なくとも1つが計測した加速度の水平方向の加速度成分の符号を判別することで、航空機が衝突した建築物の位置を検知することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建築物への航空機衝突検知方法。
【請求項5】
建築物における高さ方向の異なる位置に設置されて、前記建築物に生ずる加速度を計測する複数の加速度計と、
前記加速度計にて計測された加速度を用いて演算する演算手段とを有し、
前記演算手段は、複数の前記加速度計が計測した加速度の比が第1閾値を超えたときに、前記建築物への航空機の衝突を検知するよう構成されたことを特徴とする建築物への航空機衝突検知装置。
【請求項6】
前記演算手段は、建築物に生ずる前記加速度の比が前記第1閾値を超え、且つ少なくとも1つの前記加速度計が計測した加速度が第2閾値を超えたときに、前記建築物への航空機の衝突を検知するよう構成されたことを特徴とする請求項5記載の建築物への航空機衝突検知装置。
【請求項7】
前記演算手段は、少なくとも1つの加速度計が計測した加速度の水平2方向の加速度成分の比を判定することで、航空機の衝突方向を検知することを特徴とする請求項5または6に記載の建築物への航空機衝突検知装置。
【請求項8】
前記演算手段は、少なくとも1つの加速度計が計測した加速度の水平方向の加速度成分の符号を判別することで、航空機が衝突した建築物の位置を検知することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の建築物への航空機衝突検知装置。
【請求項9】
HVACを備えた開口部を複数有する建築物の開口部閉塞設備であって、
前記開口部を閉塞させる閉塞手段と、
請求項5または6に記載の建築物への航空機衝突検知装置とを有し、
前記建築物への航空機衝突検知装置における演算手段は、航空機の衝突を検知したときに、前記閉塞手段を動作させて前記開口部を閉塞すると共に、前記HVACを停止させるよう構成されたことを特徴とする建築物の開口部閉塞設備。
【請求項10】
HVACを備えた開口部を複数有する建築物の開口部閉塞設備であって、
前記開口部を閉塞させる閉塞手段と、
請求項7に記載の建築物への航空機衝突検知装置とを有し、
前記建築物への航空機衝突検知装置における演算手段は、航空機の衝突方向を検知したときに、前記航空機の衝突方向に存在する前記開口部を、前記閉塞手段を動作させて閉塞すると共に、この閉塞される開口部が備えた前記HVACを停止させるよう構成されたことを特徴とする建築物の開口部閉塞設備。
【請求項11】
HVACを備えた開口部を複数有する建築物の開口部閉塞設備であって、
前記開口部を閉塞させる閉塞手段と、
請求項8に記載の建築物への航空機衝突検知装置とを有し、
前記建築物への航空機衝突検知装置における演算手段は、航空機の衝突位置を検知したときに、前記航空機が衝突した位置に存在する前記開口部を、前記閉塞手段を動作させて閉塞すると共に、この閉塞される開口部が備えた前記HVACを停止させるよう構成されたことを特徴とする建築物の開口部閉塞設備。
【請求項12】
HVACを備えた開口部を複数有する建築物の開口部閉塞設備であって、
前記開口部を閉塞させる閉塞手段と、
請求項5乃至8のいずれか1項に記載の建築物への航空機衝突検知装置と、
前記開口部に設置され、この開口部に侵入する火炎の温度または爆風の圧力を検出するセンサとを有し、
前記センサは、検出値が所定値を超えたときに、前記建築物への航空機衝突検知装置から前記閉塞手段へ動作指令が送信されるよりも前に、前記閉塞手段を動作させて前記開口部を閉塞するよう構成されたことを特徴とする建築物の開口部閉塞設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、建築物への航空機衝突検知方法及び装置、並びにこの建築物への航空機衝突検知装置を備えた建築物の開口部閉塞設備に関する。
【背景技術】
【0002】
改良型沸騰水型原子炉(ABWR)では、IAEA、10CFR,Regulatory Guide、欧州規制(フィンランド国YVL Guide等)などで要求される航空機衝突防護に対し、建築物の外壁及び屋根を堅牢化することで衝突時の荷重や火炎、爆風に対して、内包する設備を防護する建築構造が検討されている。
【0003】
また、建築物の開口部に対しては、防護扉設置などの物理的閉塞による対策を施すことが検討されている。しかし、HVAC(Heating Ventilation and Air−Conditioning;暖房、換気及び空調設備)を備えた開口部は、その機能要求から常時開口とする必要があり、防護扉などによる物理的閉塞対策が難しい。そこで、このHVACを備えた開口部に対しては航空機の衝突を検知し、この航空機衝突によって生ずる火炎や爆風が開口部を経て建築物内に侵入する前に、その開口部を閉塞する対策が必要になる。
【0004】
ところで、建築物への航空機衝突対策の例が特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載の発明は、超高層建築物の地上一般階に屋上と同様の床排水溝を設け、この床排水溝を地下または屋外に設けた液槽に配管を用いて接続し、衝突航空機から漏出して建築物の内部に侵入した航空機燃料を、衝突階から液槽へ素早く流下させるものである。
【0005】
また、特許文献2には、構造物の開口部を閉塞する開閉板が、地震の振動が予め定められた閾値よりも大きくなったときに前記開口部を閉塞し、前記構造物に固定されることで、建築物の耐震性能を向上させる構造が開示されている。更に、建築物の内部の換気を、温度センサまたは圧力センサの検出値に基づいて制御する発明が、特許文献3及び4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−3241号公報
【特許文献2】特開2010−261264号公報
【特許文献3】特開2005−188819号公報
【特許文献4】特開2011−523009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に記載の発明は、建築物への航空機の衝突に対し建築物の崩壊を防止する対策であるが、建築物への航空機の衝突を検知するものではなく、更に、航空機の衝突により発生する火炎や爆風が、建築物の開口部を経て内部に侵入することを防止するものでもない。
【0008】
本発明における実施形態の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、建築物への航空機の衝突を確実に検知できる建築物への航空機衝突検知方法及び装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明における実施形態の他の目的は、建築物への航空機の衝突により発生する火炎や爆風が建築物の開口部から内部に侵入することを防止できる建築物の開口部閉塞設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態における建築物への航空機衝突検知方法は、建築物における高さ方向の異なる位置に加速度計が設置され、これら複数の加速度計が計測した前記建築物に生ずる加速度の比が第1閾値を超えたときに、前記建築物への航空機の衝突を検知することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の実施形態における建築物への航空機衝突検知装置は、建築物における高さ方向の異なる位置に設置されて、前記建築物に生ずる加速度を計測する複数の加速度計と、前記加速度計にて計測された加速度を用いて演算する演算手段とを有し、前記演算手段は、複数の前記加速度計が計測した加速度の比が第1閾値を超えたときに、前記建築物への航空機の衝突を検知するよう構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
更に、本発明の実施形態における建築物の開口部閉塞設備は、HVACを備えた開口部を複数有する建築物の開口部閉塞設備であって、前記開口部を閉塞させる閉塞手段と、請求項5または6に記載の建築物への航空機衝突検知装置とを有し、前記建築物への航空機衝突検知装置における演算手段は、航空機の衝突を検知したときに、前記閉塞手段を動作させて前記開口部を閉塞すると共に、前記HVACを停止させるよう構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態における建築物への航空機衝突検知方法及び装置によれば、建築物への航空機の衝突を確実に検知できる。また、本発明の実施形態における建築物の開口部閉塞設備によれば、建築物への航空機の衝突により発生する火炎や爆風が建築物の開口部から内部に侵入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1〜第3実施形態における建築物の開口部閉塞設備を、建築物と共に示す構成図。
図2図1の加速度計を示す概略斜視図。
図3】演算装置が実行する航空機の衝突検知等の手順を示すフローチャート。
図4】第4実施形態における建築物の開口部閉塞設備を、建築物と共に示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
【0016】
[A]第1実施形態(図1図2
図1は、第1〜第3実施形態における建築物の開口部閉塞設備を、建築物と共に示す構成図である。この図1に示す建築物(例えば原子炉建屋)10は、1または複数の地下階11と、複数の地上階12とを有する。地上階12には、建築物10の内部と外部を連通する開口部13が複数形成されている。建築物10の内部には、開口部13に関連付けてHVAC(Heating Ventilation and Air−Conditioning;暖房、換気及び空調設備)14が設置されている。開口部13は、地上階12における例えば1階の壁17に形成され、HVAC14は、例えば1階の1階床18に設置される。
【0017】
上述の建築物10には、建築物の開口部閉塞設備としての開口部閉塞設備20が装備される。この開口部閉塞設備20は、開口部13を閉塞する閉塞手段としての閉塞装置21と、建築物10への航空機15の衝突を検知する建築物の航空機衝突検知装置としての航空機衝突検知装置22とを有して構成される。閉塞装置21は、例えばシャッターや扉などである。
【0018】
航空機衝突検知装置22は、建築物10における高さ方向の異なる位置に設置されて、建築物10に生ずる加速度を計測する複数の加速度計(例えば地震計)23A、23B…と、これらの加速度計23A、23B…にて計測された加速度を記録し、これらの加速度を用いて演算する演算手段としての演算装置24と、を備えて構成される。
【0019】
加速度計23A、23B…は、地震や風、建築物10への航空機15の衝突などによって建築物10に生じた振動を加速度として計測するものである。本第1実施形態では、加速度計23Aは、建築物10の地下階11における例えば基礎16に設置されて、この基礎16の振動を加速度として計測する。また、加速度計23Bは、建築物10の地上階12における例えば2階床19に設置されて、この2階床19の振動を加速度として計測する。これらの加速度計23A、23B…は、図2に示すように、水平2方向(x方向、y方向)の加速度成分、及び鉛直1方向(z方向)の加速度成分を計測することが可能である。
【0020】
演算装置24は、建築物10の地上階12における例えば1階床18に設置され、加速度計23A、23B…に電気的に接続されると共に、閉塞装置21及びHVAC14に電気的に接続される。この演算装置24は、複数の加速度計23A、23B…のそれぞれが計測した加速度(x方向、y方向、z方向の各加速度成分を合成したもの)の比が第1閾値を超え、且つ少なくとも一つの加速度計23A、23B…が計測した加速度(同上)が第2閾値を超えたときに、建築物10への航空機15の衝突を検知する。ここで、上述の加速度の比は、例えば加速度計23Aが計測した加速度に対する加速度計23Bが計測した加速度の比である。
【0021】
地震の場合、建築物10の種類によっては、加速度が第2閾値を超えることがあるものも、加速度の比が第1閾値を超えることはない。また、風の場合、建築物10の種類によっては、加速度の比が第1閾値を超えることがあるものの、加速度が第2閾値を超えることはない。従って、加速度の比が第1閾値を超え、且つ加速度が第2閾値を超えた場合を判定することで、建築物10への航空機15の衝突を高精度に検知することが可能になる。
【0022】
従って、第1閾値とは、建築物10に生ずる加速度の比が、地震によっては超えず、且つ風によって超える値である。また、第2閾値とは、建築物10に生ずる加速度が、風によっては超えず、且つ地震によって超える値である。
【0023】
演算装置24は、建築物10への航空機15の衝突を検知したときに、建築物10に設置された全ての閉塞装置21へ動作指令を送信し、この閉塞装置21を動作させて建築物10に存在する全ての開口部13を閉塞する。と同時に、演算装置24は、閉塞される開口部13に関連付けて備えられたHVAC(つまり全てのHVAC14)へ停止指令を送信して、このHVAC14を停止させる。
【0024】
次に、演算装置24が実行する建築物10への航空機15の衝突の検知動作等について、図3を用いて説明する。
演算装置24は、複数の加速度計23A、23B…が計測した加速度を取り込んで、加速度の比を算出する(S1)。
【0025】
次に、演算装置24は、ステップS1にて算出した加速度の比が第1閾値を超えているか否かを判断し(S2)、超えていると判断した場合には、複数の加速度計23A、23B…のうちの少なくとも1つが計測した加速度が第2閾値を超えているか否かを判断する(S3)。
【0026】
演算装置24は、ステップS3において、加速度計23A、23B…のうちの少なくとも1つが計測した加速度が第2閾値を超えていると判断した場合に、航空機15が建築物10に衝突したと判定して(S4)、建築物10の全ての開口部13を各閉塞装置21により閉塞させ、更に、開口部13毎のHVAC14を停止させる(S5)。
【0027】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
(1)航空機衝突検知装置22の演算装置24は、複数の加速度計23A、23B…が計測した加速度の比が第1閾値を超え、且つ少なくとも一つの加速度計23A、23B…が計測した加速度が第2閾値を超えたときに、建築物10への航空機15の衝突を検知する。このため、建築物10への航空機15の衝突を高精度に且つ確実に検知することができる。
【0028】
(2)航空機衝突検知装置22の演算装置24は、建築物10への航空機15の衝突を検知したときに、閉塞装置21を動作させて建築物10の全ての開口部13を閉塞すると共に、全てのHVAC14を停止させる。この結果、建築物10への航空機15の衝突により発生する火炎や爆風が、建築物10の開口部13を経て建築物10の内部に侵入することを確実に防止できる。
【0029】
尚、航空機衝突検知装置22の演算装置24は、建築物10の種類によっては、少なくとも一つの加速度計23A、23B…にて計測された加速度と第2閾値とを比較せず、複数の加速度計23A、23B…にて計測された加速度の比が第1閾値を超えたことによって、建築物10への航空機15の衝突を検知してもよい。
【0030】
(B)第2実施形態(図1図2
本第2実施形態を図1を用いて説明する。この第2実施形態において、第1実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0031】
本第2実施形態における建築物の開口部閉塞設備としての開口部閉塞設備30が第1実施形態の開口部閉塞設備20と異なる点は、建築物への航空機衝突検知装置としての航空機衝突検知装置31の演算装置32が、建築物10への航空機15の衝突を検知すると共に、その衝突方向を検知し、更に、その衝突方向に存在する開口部13、HVAC14をそれぞれ閉塞し、停止させる点である。
【0032】
つまり、演算装置32は、第1実施形態の手順によって建築物10への航空機15の衝突を検知した後に、少なくとも一つの加速度計23A、23B…が計測した加速度の水平2方向(x方向、y方向)の加速度成分の比を判定することで、航空機15の衝突方向を判定する。例えば、x方向加速度成分をAx、y方向加速度成分Ayとしたとき、演算装置32は、これらの比Ay/Axの値が、1よりも極めて大きい(数10倍以上)場合に、y方向加速度成分と平行な方向に航空機15が衝突したと判定し、1よりも極めて小さい(数10分の1以下)場合に、x方向加速度成分と平行な方向に航空機15が衝突したと判定し、1とほぼ等しい場合に、x方向加速度成分とy方向加速度成分に対し斜め方向に航空機15が衝突したと判定する。
【0033】
演算装置32は、建築物10への航空機15の衝突及び衝突方向を検知したときに、建築物10における全ての開口部13のうちで航空機15の衝突方向に存在する開口部13(建築物10が平面視四角形状であれば、航空機15の衝突方向の2壁面に存在する開口部13)を、該当する閉塞装置21へ動作指令を送信することで閉塞する。と同時に、演算装置32は、この閉塞される開口部13が関連付けて備えるHVAC14を、このHVAC14へ停止指令を送信することで停止させる。
【0034】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態においても、第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(3)を奏する。
【0035】
(3)航空機衝突検知装置31の演算装置32は、少なくとも一つの加速度計32A、32B…が計測した加速度の水平2方向の加速度成分の比を判定することで、建築物10への航空機15の衝突方向を検知し、この航空機15の衝突方向に存在する建築物10の開口部13を閉塞装置21により閉塞すると共に、この閉塞される開口部13に関連付けて備えられたHVAC15を停止させる。この結果、航空機15の衝突方向に存在しない開口部13を開口状態に維持でき、この開口部13に関連付けられたHVAC14を運転状態に維持できるので、建築物10の暖房、換気及び空調を確保できる。
【0036】
[C]第3実施形態(図1図2
本第3実施形態を図1を用いて説明する。この第3実施形態において、第1実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0037】
本第3実施形態における建築物の開口部閉塞設備としての開口部閉塞設備40が第1実施形態の開口部閉塞設備20と異なる点は、建築物への航空機衝突検知装置としての航空機衝突検知装置41の演算装置42が、建築物10への航空機15の衝突を検知すると共に、その衝突位置(衝突壁面)を検知し、その衝突位置に存在する開口部13、HVAC14をそれぞれ閉塞し、停止させる点である。尚、このとき演算装置42は、建築物10への航空機15の衝突方向を合わせて検知してもよい。
【0038】
つまり、演算装置42は、第1実施形態の手順によって建築物10への航空機15の衝突を検知し、場合によっては、第2実施形態の手順によって建築物10への航空機15の衝突方向を検知した後に、少なくとも一つの加速度計23A、23B…が計測した加速度の水平方向の加速度成分(x方向加速度成分、y方向加速度成分)における正負の符号を判別することで、航空機10が衝突した建築物10の位置(壁面)を検知する。例えば、演算装置42は、加速度計23A、23B…が計測する水平方向加速度成分に正、負の符号を付し(例えば図2の矢印の向きを正)、航空機15の衝突を検知したときに、正負いずれの符号の水平方向加速度成分の値が大きくなったかを判別することで、建築物10において、値が大きくなった水平方向加速度成分の符号で規定される向きと反対向きの位置(壁面)に航空機15が衝突したと判定する。
【0039】
演算装置42は、建築物10への航空機15の衝突及び衝突位置(衝突壁面)を検知したときに、建築物10における全ての開口部13のうちで航空機15が衝突した位置(壁面)に存在する開口部13を、該当する閉塞装置21へ動作指令を送信することで閉塞する。と同時に、演算装置42は、この閉塞される開口部13が関連付けて備えるHVAC14を、このHVAC14へ停止指令を送信することで停止させる。
【0040】
以上のように構成されたことから、本第3実施形態においても、第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)を奏する。
【0041】
(4)航空機衝突検知装置41の演算装置42は、その少なくとも1つの加速度計23A、23B…が計測した加速度の水平方向の加速度成分の符号を判別することで、建築物10への航空機15の衝突位置(衝突壁面)を検知し、この航空機15の衝突位置(衝突壁面)に存在する建築物10の開口部13を閉塞装置21により閉塞すると共に、この閉塞される開口部13に関連付けて備えられたHVAC14を停止させる。この結果、航空機15の衝突位置(衝突壁面)以外に存在する開口部13を開口状態に維持でき、この開口部13に関連付けられたHVAC14を運転状態に維持できるので、建築物10の暖房、換気及び空調を確保できる。
【0042】
[D]第4実施形態(図4
図4は、第4実施形態における建築物の開口部閉塞設備を、建築物と共に示す構成図である。この第4実施形態において、第1〜第3実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0043】
本第4実施形態の建築物への開口部閉塞設備としての開口部閉塞設備50が第1〜第3実施形態の開口部閉塞設備20、30、40と異なる点は、この開口部閉塞設備50が閉塞装置21と、航空機衝突検知装置22、31または41とを具備するほか、建築物10への航空機15の衝突時に発生する火炎や爆風が建築物10の開口部13に侵入するときに、その火炎の温度や爆風の圧力を検知するセンサ51を備えた点である。
【0044】
つまり、センサ51は、建築物10の開口部13において閉塞装置21の外側に設置され、この閉塞装置21に電気的に接続される。更にセンサ51は、航空機衝突検知装置22の演算装置24、航空機衝突検知装置31の演算装置32または航空機衝突検知装置41の演算装置42に電気的に接続される。そして、このセンサ51は、航空機15が建築物10に衝突したときに発生する火炎の温度が温度所定値を超えたとき、または航空機15が建築物10に衝突したときに発生する爆風の圧力が圧力所定値を超えたときに、演算装置24、32または42から閉塞装置21へ動作指令が送信されるよりも前に、当該センサ51近傍の閉塞装置21へ動作指令を送信してこの閉塞装置21を動作させ、当該センサ51が設置された開口部13を閉塞する。
【0045】
このとき、センサ51が演算装置24、32または42へ信号を送信することで、この演算装置24、32または42は、閉塞される開口部13に関連付けて備えられたHVAC14へ停止信号を送信して、このHVAC14を停止させる。
【0046】
以上のように構成されたことから、本第4実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)と同様な効果を奏するほか、次の効果(5)を奏する。
【0047】
(5)建築物10の開口部13に設置されたセンサ51が、建築物10への航空機15の衝突により発生する火炎の温度または爆風の圧力を検出し、これらの検出値(温度、圧力)が所定値を超えたときに、航空機衝突検知装置22、31または41のそれぞれの演算装置24、32または42から閉塞装置21へ動作指令が送信されるよりも前に、この閉塞装置21へ動作指令を送信して、当該センサ51が設置された開口部13を迅速に閉塞する。このため、建築物10への航空機15の衝突により発生する火炎や爆風が建築物10の開口部13を経て内部に侵入することを迅速かつ確実に防止できる。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
10 建築物
13 開口部
14 HVAC
15 航空機
20 開口部閉塞設備(建築物の開口部閉塞設備)
21 閉塞装置(閉塞手段)
22 航空機衝突検知装置(建築物への航空機衝突検知装置)
23A、23B… 加速度計
24 演算装置(演算手段)
30 開口部閉塞設備(建築物の開口部閉塞設備)
31 航空機衝突検知装置(建築物への航空機衝突検知装置)
32 演算装置(演算手段)
40 開口部閉塞設備(建築物の開口部閉塞設備)
41 航空機衝突検知装置(建築物への航空機衝突検知装置)
42 演算装置(演算手段)
50 開口部閉塞設備(建築物の開口部閉塞設備)
51 センサ
図1
図2
図3
図4