特許第6367105号(P6367105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

特許6367105干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法
<>
  • 特許6367105-干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法 図000002
  • 特許6367105-干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法 図000003
  • 特許6367105-干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法 図000004
  • 特許6367105-干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法 図000005
  • 特許6367105-干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法 図000006
  • 特許6367105-干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法 図000007
  • 特許6367105-干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法 図000008
  • 特許6367105-干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法 図000009
  • 特許6367105-干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367105
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/24 20090101AFI20180723BHJP
   H04W 52/38 20090101ALI20180723BHJP
   H04W 16/32 20090101ALI20180723BHJP
【FI】
   H04W52/24
   H04W52/38
   H04W16/32
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-251428(P2014-251428)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-116007(P2016-116007A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100145698
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 俊介
(72)【発明者】
【氏名】北藪 透
【審査官】 吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/042730(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0109420(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/118212(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/040609(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/128576(WO,A1)
【文献】 特表2013−526203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の基地局と通信可能であり、当該基地局を制御することで当該基地局による干渉を抑制する干渉制御装置であって、
前記基地局以外の他の基地局と通信する複数の無線通信装置から、当該無線通信装置における前記基地局の送信電波の受信電力を示す受信情報を取得する取得部と、
前記受信情報が示す前記受信電力が閾値よりも高い前記複数の無線通信装置から得られた前記受信情報に基づいて、前記基地局が前記他の基地局の通信領域に対して干渉を与える干渉領域の広さを推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記干渉領域が所定の基準値よりも広い場合に、前記基地局の送信電力を制御すると判定する判定部と、
前記判定部が前記基地局の送信電力を制御すると判定した場合に、前記基地局に対して送信電力を下げるよう要求する要求部と、
を備える干渉制御装置。
【請求項2】
前記要求部は、前記他の基地局の受信電力を希望電力とするSINRに対して、前記基地局の送信電波の受信電力が干渉電力として与える影響を、前記受信情報として、当該受信情報に基づいて前記基地局に対して送信電力を下げるよう要求する、
請求項1に記載の干渉制御装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記基地局からの干渉を受けている第1無線通信装置及び第2無線通信装置の夫々の前記他の基地局に対する方向から算出される角度に基づいて、前記干渉領域の広さを推定し、
前記判定部は、前記角度が、所定角度以上である場合に、前記基地局に対する制御を行うと判定する、
請求項に記載の干渉制御装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記基地局からの干渉を受けている第1無線通信装置及び第2無線通信装置の距離に基づいて、前記干渉領域の広さを推定し、
前記判定部は、前記距離が所定距離以上である場合に、前記基地局に対する制御を行うと判定する、
請求項又はに記載の干渉制御装置。
【請求項5】
前記要求部は、
送信電力の低下量を算出する低下量算出部、
を備える請求項1からのいずれか1項に記載の干渉制御装置。
【請求項6】
前記要求部は、前記他の基地局の受信電力を希望電力とし前記他の基地局以外の基地局の受信電力を干渉電力とした場合の前記無線通信装置におけるSINRの改善量を、送信電力の低下量に関連付けて前記基地局に対する前記要求を行う、
請求項に記載の干渉制御装置。
【請求項7】
前記要求部は、前記他の基地局の受信電力を希望電力とし前記他の基地局以外の基地局の受信電力を干渉電力とした場合の前記無線通信装置におけるSINRが改善する前記無線通信装置の数を、送信電力の低下量に関連付けて前記基地局に対する前記要求を行う、
請求項又はに記載の干渉制御装置。
【請求項8】
前記要求部は、
前記基地局に対して干渉を抑制する指向方向を算出する方向算出部、
を備える請求項1からのいずれか1項に記載の干渉制御装置。
【請求項9】
前記方向算出部は、前記基地局の受信電力が最も強い無線通信装置を起点とした他の無線通信装置に対する方向を、前記指向方向として算出する、
請求項に記載の干渉制御装置。
【請求項10】
前記方向算出部は、複数の前記無線通信装置の夫々から得られる前記基地局の受信電力の分布状況から前記基地局の位置を推定し、当該位置を起点とした他の無線通信装置に対する方向を、前記指向方向として算出する、
請求項に記載の干渉制御装置。
【請求項11】
前記方向算出部は、前記無線通信装置が受信した前記基地局の受信電力、又は、前記無線通信装置が受信した前記他の基地局の受信電力を希望電力とし前記無線通信装置が受信した前記基地局の受信電力を干渉電力とした場合のSINR、に基づいて前記指向方向を算出する、
請求項から10のいずれか1項に記載の干渉制御装置。
【請求項12】
前記基地局の種別に応じて制御対象とするか否かを決定する決定部、
を更に備える請求項1から11のいずれか1項に記載の干渉制御装置。
【請求項13】
制御対象の基地局と、前記基地局と通信可能な干渉制御装置とを備え、
前記干渉制御装置は、
前記基地局以外の他の基地局と通信する複数の無線通信装置から、当該無線通信装置における前記基地局の送信電波の受信電力を示す受信情報を取得する取得部と、
前記受信情報が示す前記受信電力が閾値よりも高い前記複数の無線通信装置から得られた前記受信情報に基づいて、前記基地局が前記他の基地局の通信領域に対して干渉を与える干渉領域の広さを推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記干渉領域が所定の基準値よりも広い場合に、前記基地局の送信電力を制御すると判定する判定部と、
前記判定部が前記基地局の送信電力を制御すると判定した場合に、前記基地局に対して送信電力を下げるよう要求する要求部と、
を有し、
前記制御対象の基地局は、
前記干渉制御装置から送信電力を下げる要求を受け付けると、自局の送信電力の低下が自局に接続されている無線通信装置に与える影響に基づいて、前記送信電力を制御する制御部、
有する通信システム。
【請求項14】
制御対象の基地局による干渉を抑制する干渉制御方法であって、
前記基地局以外の他の基地局と通信する複数の無線通信装置から、当該無線通信装置における前記基地局の送信電波の受信電力を示す受信情報を取得するステップと、
前記受信情報が示す前記受信電力が閾値よりも高い前記無線通信装置から得られた前記受信情報に基づいて、前記基地局が前記他の基地局の通信領域に対して干渉を与える干渉領域の広さを推定するステップと、
推定した前記干渉領域が所定の基準値よりも広い場合に、前記基地局の送信電力を制御すると判定するステップと、
前記基地局の送信電力を制御すると判定した場合に、前記基地局に対して送信電力を下げるよう要求するステップと、
を含む干渉制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象の基地局による干渉を抑制する干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の発展に伴い、通信事業者には、無線通信可能な通信エリアを適切に構築することが求められている。従来のマクロ局(基地局)の多くは、半径数百メートルから十数キロメートルの通信エリア(マクロセル)を構築しているが、マクロ局だけでは電波の不感地帯が生じてしまう。このような不感地帯に対しては、フェムト局を設置し、半径十数メートル程度の通信エリア(フェムトセル)を構築し対応することとしている。
【0003】
ところで、フェムト局を設置した場合、マクロ局の電波との干渉により却って通信を阻害する可能性があるため、フェムト局の設置には、マクロ局の電波との干渉を抑制する工夫が求められている。
【0004】
この点、非特許文献1には、フェムト局がマクロ局(又は他のフェムト局)に与える干渉を抑えるために、マクロ局が送信する信号の受信電力を測定し、その測定値をもとにフェムト局の送信電力を決定する方法、即ち、他局の存在に合わせて送信電力に制限を加える方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kimura, Otonari, and Seki, “Autonomous downlink interference control for LTE femtocells in residential deployment,” PIMRC 2013, pp. 392-396, Sept. 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1において提案されている方法では、与えている干渉の度合いを考慮することなくフェムト局の送信電力に制限を加えるため、フェムト局に接続している無線端末のスループットが低下したり、無線端末がフェムト局に繋がらなくなったりしてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、制御対象の基地局の送信電力に対して不要な制限をかけることなく、当該基地局による干渉を抑制する干渉制御装置、通信システム及び干渉制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様においては、制御対象の基地局と通信可能であり、当該基地局を制御することで当該基地局による干渉を抑制する干渉制御装置であって、前記基地局以外の他の基地局と通信する複数の無線通信装置から、当該無線通信装置における前記基地局の送信電波の受信情報を取得する取得部と、取得した前記受信情報に基づいて、前記基地局に対して送信電力を下げるよう要求する要求部と、を備える干渉制御装置を提供する。
【0009】
また、前記要求部は、前記基地局の前記送信電波の受信電力、又は、前記他の基地局の受信電力を希望電力とするSINRに対して、前記基地局の送信電波の受信電力が干渉電力として与える影響を、前記受信情報として、当該受信情報に基づいて前記基地局に対して送信電力を下げるよう要求することとしてもよい。
【0010】
また、前記無線通信装置から得られた前記受信情報に基づいて、前記基地局が前記他の基地局の通信領域に対して干渉を与える干渉領域の広さを推定する推定部と、前記推定部が推定した前記干渉領域の広さに基づいて、前記基地局に対する制御を行うか判定する判定部と、を更に備え、前記要求部は、前判定部が前記基地局に対する制御を行うと判定すると、前記基地局に対して送信電力を下げるよう要求することとしてもよい。
【0011】
また、前記推定部は、前記基地局からの干渉を受けている第1無線通信装置及び第2無線通信装置の夫々の前記他の基地局に対する方向から算出される角度に基づいて、前記干渉領域の広さを推定し、前記判定部は、前記角度が、所定角度以上である場合に、前記基地局に対する制御を行うと判定することとしてもよい。
【0012】
また、前記推定部は、前記基地局からの干渉を受けている第1無線通信装置及び第2無線通信装置の距離に基づいて、前記干渉領域の広さを推定し、前記判定部は、前記距離が所定距離以上である場合に、前記基地局に対する制御を行うと判定することとしてもよい。
【0013】
また、前記要求部は、送信電力の低下量を算出する低下量算出部を備えることとしてもよい。
【0014】
また、前記要求部は、前記他の基地局の受信電力を希望電力とし前記他の基地局以外の基地局の受信電力を干渉電力とした場合の前記無線通信装置におけるSINRの改善量を、送信電力の低下量に関連付けて前記基地局に対する前記要求を行うこととしてもよい。
【0015】
また、前記要求部は、前記他の基地局の受信電力を希望電力とし前記他の基地局以外の基地局の受信電力を干渉電力とした場合の前記無線通信装置におけるSINRが改善する前記無線通信装置の数を、送信電力の低下量に関連付けて前記基地局に対する前記要求を行うこととしてもよい。
【0016】
また、前記要求部は、前記基地局に対して干渉を抑制する指向方向を算出する方向算出部を備えることとしてもよい。
【0017】
また、前記方向算出部は、前記基地局の受信電力が最も強い無線通信装置を起点とした他の無線通信装置に対する方向を、前記指向方向として算出することとしてもよい。
【0018】
また、前記方向算出部は、複数の前記無線通信装置の夫々から得られる前記基地局の受信電力の分布状況から前記基地局の位置を推定し、当該位置を起点とした他の無線通信装置に対する方向を、前記指向方向として算出することとしてもよい。
【0019】
また、前記方向算出部は、前記無線通信装置が受信した前記基地局の受信電力、又は、前記無線通信装置が受信した前記他の基地局の受信電力を希望電力とし前記無線通信装置が受信した前記基地局の受信電力を干渉電力とした場合のSINR、に基づいて前記指向方向を算出することとしてもよい。
【0020】
また、前記基地局の種別に応じて制御対象とするか否かを決定する決定部を更に備えることとしてもよい。
【0021】
本発明の第2の態様においては、上述の干渉制御装置と、前記制御対象の基地局とを備える通信システムであって、前記制御対象の基地局は、前記干渉制御装置から送信電力を下げる要求を受け付けると、自局の送信電力の低下が自局に接続されている無線通信装置に与える影響に基づいて、前記送信電力を制御する制御部を備える通信システムを提供する。
【0022】
本発明の第3の態様においては、制御対象の基地局による干渉を抑制する干渉制御方法であって、前記基地局以外の他の基地局と通信する複数の無線通信装置から、当該無線通信装置における前記基地局の送信電波の受信情報を取得するステップと、取得した前記受信情報に基づいて、前記基地局に対して送信電力を下げるよう要求するステップと、を含む干渉制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、制御対象の基地局の送信電力に対して不要な制限をかけることなく、当該基地局による干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】干渉制御装置の概要を示す図である。
図2】干渉制御装置を含む通信システムの全体像を示す図である。
図3】干渉制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】無線通信装置から取得するレポートの一例を示す図である。
図5】推定部による干渉領域の広さの推定方法の一例を示す図である。
図6】フェムト局に要求する送信電力の低下量の算出方法の一例を示す図である。
図7】フェムト局に要求する指向方向の算出方法の一例を示す図である。
図8】干渉制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図9】第2実施形態の干渉制御装置を含む通信システムのシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[干渉制御装置1の概要]
初めに、図1を参照して、本発明の干渉制御装置1の概要について説明する。
干渉制御装置1は、干渉抑制制御の対象である基地局5と通信可能に設けられる。なお、基地局5は、複数の送信アンテナを備え指向性制御が可能な無線基地局であり、アンテナの指向性を制御することで通信エリアを構築する。
【0026】
干渉制御装置1は、基地局5以外の基地局と通信する複数の無線通信装置6(UE:User Equipment)から取得した、当該無線通信装置6における基地局5の送信電波の受信電力等に関するレポートに基づき、基地局5に対して送信電力を下げるよう要求する。なお、基地局5以外の基地局と通信する無線通信装置6にとって、基地局5の送信電波は干渉電波として捉えられることになる。
【0027】
複数の無線通信装置6の夫々からレポートを受信すると、干渉制御装置1は、レポートを送信した無線通信装置6の位置情報に基づいて、基地局5が干渉を与えている範囲を推定し、推定の結果に基づいて基地局5に干渉抑制のための対応をさせるか決定する。例えば、干渉制御装置1は、基地局5が干渉を与えている範囲が広い場合に、干渉抑制のための対応をさせると決定し、基地局5が干渉を与えている範囲が狭い場合に、当該対応をさせないと決定する。
【0028】
その結果、基地局5に干渉抑制のための対応をさせる必要がある場合、干渉制御装置1は、無線通信装置6の位置情報及びレポートに基づいて、基地局5が干渉を与えている方向及び当該方向における干渉の度合いを推定し、干渉を抑制する方向及び当該方向に対する送信電力の低下量を、基地局5に対してフィードバックする。
基地局5では、干渉制御装置1からの通知を受けると、通知された方向に対する送信電力を下げることで、当該方向に対する干渉を抑制する。
【0029】
このように、干渉制御装置1では、制御対象の基地局5からの干渉を受けている無線通信装置6のレポートに基づいて干渉抑制のための対応をさせるため、必要な場合に限り干渉を抑制させることになり、制御対象の基地局5の送信電力に対して不要な制限をかけることなく、当該基地局5による干渉を抑制することができる。
例えば、無線通信装置6のレポートに基づいて基地局5が干渉を与えている範囲を推定することで、干渉範囲が狭い場合にまで干渉抑制のための対応をさせることを防止でき、また、レポートに基づいて干渉を与えている方向を推定することで、干渉が発生していない方向に対してまで送信電力を低下させてしまうことを防止できる。その結果、基地局5に接続している無線通信装置のスループットを不要に低下してしまうことがなく、基地局5が構築する通信エリアにおける通信状態を好適に維持することができる。
【0030】
<第1実施形態>
以下、本発明の干渉制御装置1の第1実施形態について説明する。図2は、第1実施形態の干渉制御装置1を含む通信システムSの全体像を示す図である。図2に示すように、通信システムSは、マクロ局1Aと、フェムト局5と、無線通信装置6とを含んで構成される。なお、第1実施形態では、干渉制御装置1は、マクロ局1A内に含まれることとする。
【0031】
フェムト局5は、ユーザ宅等の任意の地点に設置された無線基地局であり、制御対象の基地局5に相当する。フェムト局5は、少なくとも送信アンテナを複数備えることで下り信号の指向性を制御することができ、半径数十メートル程度の狭い通信エリアを構築する。
無線通信装置6は、マクロ局1Aと通信する任意の通信装置であり、例えば、携帯電話、スマートフォン、PC、タブレットPC、ゲーム機等であってもよく、また、ユーザ宅内にセンサネットワークを構築する場合に用いられる各種センサ等であってもよい。
【0032】
無線通信装置6は、マクロ局1Aと通信するため、フェムト局5の送信電波は干渉電波としてあらわれる。第1実施形態の干渉制御装置1では、無線通信装置6がマクロ局1Aに送信するレポート(Measurement Report)に基づいて、フェムト局5に対して送信電力を下げるように要求する。
【0033】
[マクロ局1A(干渉制御装置1)の構成]
図3は、本発明の干渉制御装置1を備えるマクロ局1Aの機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、マクロ局1Aは、干渉制御装置1と、送受信部4Aとを含んで構成され、送受信部4Aから送信される信号の振幅・位相を調整することで、送信する電波の送信パターンを制御する。なお、マクロ局1Aの通信方式は、TDD(Time Division Duplex)であってもよく、また、FDD(Frequency Division Duplex)であってもよい。
【0034】
送受信部4Aは、送信アンテナ及び受信アンテナを含んで構成される。本実施形態では、マクロ局1Aにおいて、無線通信装置6の位置を推定する到来方向推定が可能であることが好ましく、送受信部4Aは、例えば、受信する電波の指向性を制御可能な複数の受信アンテナを含んで構成される。なお、送受信部4Aは、指向性を制御可能な複数の送信アンテナを備えることとしてもよく、また、送受信兼用のアンテナを備えることとしてもよい。
マクロ局1A(干渉制御装置1)は、送受信部4Aを介して複数の無線通信装置6と通信し、送受信部4A又は所定の有線回線を介して複数のフェムト局5と通信する。
【0035】
干渉制御装置1は、記憶部2と、制御部3とを含んで構成される。
記憶部2は、ROM及びRAM等のメモリ又はハードディスク等の記憶媒体である。記憶部2は、制御部3を動作させるためのプログラム及び制御部3が動作する際に生成されるデータを記憶する。また、記憶部2は、無線通信装置6から受信したレポート等を記憶する。
【0036】
制御部3は、取得部31と、決定部32と、推定部33と、判定部34と、要求部35と、を含んで構成される。
取得部31は、送受信部4Aを介して、マクロ局1Aと通信する複数の無線通信装置6からレポート(受信情報)を取得する。ここで、取得部31が取得するレポートの一例を図4に示す。図4に示すように、取得部31は、夫々の無線通信装置6における各基地局の電波の受信電力の測定結果を記憶する。図4に示す例の場合、「UE1」の無線通信装置6は、自身が通信するマクロ局1A以外の「ID_11」の基地局及び「ID_12」の基地局からも電波を受信していることが分かる。取得部31は、無線通信装置6から電波の受信情報を取得すると、当該受信情報を記憶部2に記憶する。
【0037】
決定部32は、基地局の種別に基づいて、制御対象とするか否かを決定する。複数のマクロ局を用いて通信ネットワークを構築する場合、夫々のマクロ局による通信エリアの一部が重複することがある。このような場合に夫々のマクロ局を干渉抑制の対象とするのは好ましくないため、決定部32は、無線通信装置6が電波を受信している複数の基地局の中から、制御すべき基地局5(本実施形態では、フェムト局5)を決定する。
【0038】
ここで、決定部32の決定方法は任意であるが、本実施形態では、例えば、基地局のBSIDに基づいて、制御対象とするか否かを決定する。具体的には、マクロ局等の制御が必要ない基地局に対して、「ID_101」以上のBSIDを割り振り、基地局をBSIDの値によって複数のグループに分類する。そして、BSIDが「ID_1〜ID_100」までの基地局を制御対象とし、「ID_101」以上の基地局については、制御対象外とする。
また、BSIDに基地局が収容可能な無線通信装置の数(例えば、8や400)を対応付けておき、基地局の収容可能数に基づいて制御対象とするか否かを決定することとしてもよい。マクロ局は収容可能数が多く、フェムト局は数能可能数が少ないため、収容可能数が少ないBSIDの基地局を制御対象とする。
【0039】
推定部33は、無線通信装置6から取得したレポートに基づいて、フェムト局5がマクロ局1Aに対して干渉を与える干渉領域の広さを推定し、判定部34は、推定した干渉領域の広さに基づいて、フェムト局5に対する制御を行うか否かを判定する。具体的には、判定部34は、推定した干渉領域が判定基準以上の広さである場合にフェムト局5に対する制御を行うと判定し、推定した干渉領域が判定基準未満の広さである場合にフェムト局5に対する制御を行わないと判定する。
なお、判定部34は、干渉領域の広さだけでなく、フェムト局5からの干渉を受けている無線通信装置6の台数も加味して、フェムト局5に対する制御を行うか否かを判定することとしてもよい。一例として、干渉領域が狭い場合であっても、多くの無線通信装置6が干渉を受けている場合には、判定部34は、フェムト局5に対する制御を行うと判定する等してもよい。
【0040】
ここで、推定部33による干渉領域の広さの推定方法は任意であるが、その一例を図5に示す。なお、本実施形態では、マクロ局1Aと無線通信装置6とが作る角度、又は複数の無線通信装置6の間の距離に基づいて、干渉領域の広さを推定する。
【0041】
[角度に基づく干渉領域の推定]
図5(A)に示すように、推定部33は、フェムト局5からの干渉を受けている複数の無線通信装置6の夫々のマクロ局1Aに対する方向から、夫々の方向がなす角度θを算出し、干渉領域の広さを推定する。判定部34は、推定の結果、角度θが、判定基準角度以上である場合にフェムト局5に対する制御を行うと判定し、判定基準角度未満である場合にフェムト局5に対する制御を行わないと判定する。
【0042】
なお、無線通信装置6の方向の推定は、マクロ局1Aから無線通信装置6に送信するダウンリンク信号に基づいて行うこととしてもよく、また、無線通信装置6からマクロ局1Aに送信するアップリンク信号に基づいて行うこととしてもよい。
ダウンリンク信号に基づく方向の推定は、例えば、マクロ局1Aがセクタ分割しており、セクタのビーム幅が十分に狭い場合には、無線通信装置6が接続しているセクタから方向を推定することができる。また、アップリンク信号に基づく方向の推定は、MUSIC法等の到来方向推定アルゴリズムを利用して推定することができる。
また、例えば、マクロ局1Aが各方向に異なる値を報知信号として送信し、無線通信装置6からこの報知信号の値の報告を受けることで、方向の推定を行うこととしてもよい。
【0043】
[距離に基づく干渉領域の推定]
図5(B)に示すように、推定部33は、フェムト局5からの干渉を受けている複数の無線通信装置6の間の距離Lに基づいて、干渉領域の広さを推定する。判定部34は、推定の結果、距離Lが、判定基準距離以上である場合にフェムト局5に対する制御を行うと判定し、判定距離未満である場合にフェムト局5に対する制御を行わないと判定する。
【0044】
なお、無線通信装置6間の距離は、マクロ局1Aと第1の無線通信装置6との間の距離A、マクロ局1Aと第2の無線通信装置6との間の距離B、第1の無線通信装置6の方向と第2の無線通信装置6の方向とがなす角度θと、が分かれば余弦定理を用いて推定することができる。
角度θの推定方法は上述したため、マクロ局1Aと無線通信装置6との間の距離の推定方法について説明する。
【0045】
(伝搬損失に基づく距離推定)
マクロ局1Aにとって、自身の送信電力は既知であるので、無線通信装置6から取得したレポート(自局の受信電力)を参照することで、マクロ局1Aと無線通信装置6との間の伝搬損失を得ることができる。また、マクロ局1Aにとって、自身の周波数も既知であるので、自由空間伝搬損失のモデル式を用いることで、マクロ局1Aと無線通信装置6との間の伝搬損失から、マクロ局1Aと無線通信装置6との間の距離を算出することができる。なお、自由空間伝搬損失のモデル式は、既に公知の任意のモデル式を用いることができ、例えば、以下のような二乗側のモデル式を用いることができる。
伝搬損失=32.4+20log(f)+20log(d/1000)
なお、fは、マクロ局1Aの周波数であり、dは、マクロ局1Aと無線通信装置6との間の距離である。
【0046】
(フレームタイミングに基づく距離推定)
また、マクロ局1Aと無線通信装置6との間の距離は、伝搬損失ではなく、無線通信装置6からのアップリンク信号のフレームタイミングの遅延時間によって推定することとしてもよい。マクロ局1Aが送信した報知信号に対して無線通信装置6から応答を受けるまでの時間は、マクロ局1Aと無線通信装置6との間の距離に比例する。そこで、マクロ局1Aのダウンリンク信号のフレームタイミングと、当該ダウンリンク信号に対応する無線通信装置6のアップリンク信号の到達時間との差から、マクロ局1Aと無線通信装置6との間の距離を推定することとしてもよい。
【0047】
[無線通信装置6のフィルタリング]
以上のような推定部33による干渉領域の推定は、フェムト局5からの干渉を受けている複数の無線通信装置6から取得したレポートに基づき行われる。ここで、フェムト局5からの干渉を受けている無線通信装置6としては、レポートにおいてフェムト局5の送信電波を受信したことを報告した全ての無線通信装置6を対象としてもよく、また、当該報告をした一部の無線通信装置6を対象としてもよい。
【0048】
一部の無線通信装置6のみを対象とする場合、一例として、フェムト局5の送信電波の受信電力が閾値よりも高い無線通信装置6のみを対象とし、受信電力が閾値よりも低い無線通信装置6については、対象外とすることとしてもよい。また、SINR(Signal to interference plus noise ratio)が高い無線通信装置6については、マクロ局1Aとの間の通信品質が劣化していないため、SINRが閾値よりも低い無線通信装置6のみを対象とし、SINRが閾値よりも高い無線通信装置6については、対象外とすることとしてもよい。
なお、SINRとしては、マクロ局1Aの送信電波の受信電力を希望電力とする一方で、フェムト局5の送信電波の受信電力のみを干渉電力としてもよく、また、マクロ局1A以外の全ての基地局の送信電波の受信電力を干渉電力としてもよい。
【0049】
また、無線通信装置6が屋内に存在する場合、壁等の遮蔽物の影響により受信電力が減衰してしまうため、屋外にいる場合と比べて伝搬損失と距離との関係が異なってしまう。そこで、伝搬損失に基づき距離を推定する場合には、屋内に存在する無線通信装置6を対象外とすることとしてもよい。
なお、角度に基づき干渉領域を推定する場合には、無線通信装置6が存在する方向を推定可能であればよいため、屋内に存在するか否かは、考慮する必要はない。
【0050】
ここで、無線通信装置6が屋内に存在するか否かは、任意の方法により判定することができ、例えば、無線通信装置6が補足しているGPS衛星の数の通知を無線通信装置6から受け、既定の補足数未満の場合には当該無線通信装置6が屋内に存在すると判定することができる。また、無線通信装置6のダウンリンク信号のフレームタイミングの遅延時間と、伝搬損失とを組み合わせて、屋内に存在するか否かを判定することとしてもよい。具体的には、ダウンリンク信号のフレームタイミングの遅延時間が近い複数の無線通信装置6は、マクロ局1Aから略同心円状の距離に存在するとみなすことができる。これら複数の無線通信装置6の夫々の伝搬損失を比較し、所定値(例えば、複数の無線通信装置6の伝搬損失の平均値等)よりも既定値(例えば、20dB)以上大きい伝搬損失の無線通信装置6は、屋内に存在すると判定することができる。
【0051】
もちろん、屋内に存在する場合に屋内浸透損を加味して距離推定を行うのであれば、屋内に存在するか否かに応じて対象/対象外とする必要はない。屋内浸透損を用いる場合の自由空間伝搬損失のモデル式としては、例えば、以下のようなモデル式を用いることができる。
伝搬損失=32.4+20log(f)+20log(d/1000)+α
例えば、無線通信装置6が屋内に存在する場合、αを20とし、屋外に存在する場合、αを0とする。
【0052】
図3に戻り、要求部35は、判定部34がフェムト局5に対する制御を行うと判定すると、無線通信装置6から取得したレポートに基づいて、フェムト局5に対して送信電力を下げるよう要求する。なお、無線通信装置6から取得したレポートとしては、無線通信装置6におけるフェムト局5の送信電波の受信電力を用いることとしてもよく、また、無線通信装置6のSINRに対してフェムト局5の送信電波の受信電力が干渉電力として与える影響を用いることとしてもよい。
また、無線通信装置6のSINRに対してフェムト局5の送信電波の受信電力が干渉電力として与える影響は、例えば、「フェムト局5の送信電波があるとした場合の無線通信装置6のSINR」と「フェムト局5の送信電波がないとした場合の無線通信装置6のSINR」とを比較することで特定することができる。
【0053】
ここで、要求部35による要求は、送信電力の低下量と送信電力を下げる指向方向とのいずれか一方又は双方を含むこととしてもよい。そこで、要求部35は、低下量算出部351と、方向算出部352と、を含んで構成される。
【0054】
[送信電力の低下量の算出]
低下量算出部351は、フェムト局5に対して要求する送信電力の低下量を算出する。図6(A)に模式的に示すように、フェムト局5の周囲に当該フェムト局5から干渉を受けている無線通信装置6が存在する状況では、フェムト局5の送信電力の低下量に応じてSINRが改善する無線通信装置6の台数が異なることになる。このとき、無線通信装置6の分布状況は一様ではないため、無線通信装置6の分布状況によっては、フェムト局5の送信電力を不要に低下させてしまうことになる。
【0055】
そこで、低下量算出部351は、フェムト局5に対して要求する低下量に関連付けて、干渉抑制の重要性を示す重要度を算出する。具体的には、低下量算出部351は、無線通信装置6のSINRの改善量、及びSINRが改善する無線通信装置6の台数に基づき、夫々の低下量に対する重要度を算出する。
例えば、図6(B)に示すように、低下量算出部351は、SINRが改善する無線通信装置6の数に比例した値を重要度として算出する。図6(B)に示す例の場合、低下量を3dBとした場合には、SINRが改善する無線通信装置6の台数が少なく、重要度が低い一方で、低下量を6dBとした場合には、SINRが改善する無線通信装置6の台数が多く、重要度が高いことが分かる。
【0056】
なお、図6(B)に示す例では、SINRが3dB以上改善する無線通信装置6の台数に基づいて重要度を算出しているが、SINRの実際の改善量は、無線通信装置6において夫々異なるため、低下量算出部351は、無線通信装置6の台数を実際の改善量に基づき重み付けした上で、重要度を算出することとしてもよい。一例として、低下量算出部351は、5台の無線通信装置6においてSINRが3dB改善する場合と、5台の無線通信装置6においてSINRが5dB改善する場合とでは、後者の重要度を高く算出することとしてもよい。
【0057】
また、重要度の算出方法として、各無線通信装置6のSINRの改善量の和を重要度としてもよい。例えば、フェムト局の送信電力を3dB低下させたときに、4台の無線通信装置6のSINRが夫々3dB,2dB,1dB,0dB改善したのであれば、重要度は6(dB)となる。
また、SINRが十分に高い無線通信装置6は、改善量の和を算出する無線通信装置6に含めないようにしてもよい。閾値として、例えば、SINR=20dBを設定した場合、SINRが20dB以上に改善したとしても0dB改善として扱う。
【0058】
[指向方向の算出]
フェムト局5がダウンリンク信号の指向性を制御可能な場合、干渉を受けている無線通信装置6が実際に存在する方向のみ送信電力を低下させることが好ましい。そこで、方向算出部352は、フェムト局5が干渉を抑制する指向方向を算出する。
【0059】
上述したように、マクロ局1Aでは、レポートを報告した無線通信装置6の方向及び距離を算出できるため、干渉制御装置1は、レポートを報告した際の無線通信装置6の位置を特定することができる。干渉制御装置1は、無線通信装置6から取得したレポート(フェムト局5の受信電力等)を特定した位置に応じてマッピングすることで、図7(A)に示すように、フェムト局5の受信電力に応じた無線通信装置6の分布状況を特定することができる。
【0060】
方向算出部352は、特定した分布状況に基づいて、フェムト局5が干渉を与えている方向を特定し、当該方向を干渉を抑制する指向方向として算出する。ここで、方向の特定には、起点を特定する必要があるところ、方向算出部352は、起点を以下の方法により特定する。
【0061】
例えば、フェムト局5の位置が干渉制御装置1にとって既知である場合、方向算出部352は、フェムト局5の位置を起点とする。他方、フェムト局5の位置が干渉制御装置1にとって既知でない場合、方向算出部352は、フェムト局5の受信電力が最も強い無線通信装置6の位置、又は特定した分布状況から推定されるフェムト局5の位置、を起点とする。
フェムト局5の受信電力が最も強い無線通信装置6は、フェムト局5の近傍に位置しているため、方向算出部352は、当該無線通信装置6の位置を疑似的にフェムト局5の位置とする。また、電波は距離に応じて減衰するため、フェムト局5の受信電力に基づく無線通信装置6の分布は、フェムト局5を中心とした同心状になる。そこで、方向算出部352は、無線通信装置6の分布状況から中心部を算出し、当該推定部をフェムト局5の位置と推定する。
【0062】
このようにして起点を特定すると、方向算出部352は、特定した起点から、フェムト局5の送信電波の受信強度が所定以上である無線通信装置6が存在する方向を、フェムト局5が干渉を与えている方向として特定する。なお、フェムト局5の送信電波の受信強度が所定以上である無線通信装置6が複数存在する場合には、方向算出部352は、幅を持たせた方向を特定することとしてもよく、また、複数の方向を特定することとしてもよい。また、方向算出部352は、複数の無線通信装置6から任意の無線通信装置6を選択し、当該無線通信装置6の存在する方向を特定することとしてもよい。
【0063】
なお、図7(A)(B)に示す例では、無線通信装置6におけるフェムト局5の受信電力に基づいて、フェムト局5が干渉を与えている方向を特定することとしているが、当該方向は、無線通信装置6におけるSINRに基づいて特定することとしてもよい。このとき、無線通信装置6におけるSINRは、当該無線通信装置6から取得したレポートに基づいて特定できるため、干渉制御装置1では、フェムト局5の送信電力を低下させた場合のSINRの分布状況も取得することができる。方向算出部352は、この分布状況と方向の起点とから、上述と同様にフェムト局5が干渉を与えている方向を特定することができる。
【0064】
ここで、フェムト局5の受信電力に基づいて方向を特定した場合、フェムト局5に要求する低下量に関わらず同一の方向が特定されることになる。これに対して、無線通信装置6におけるSINRに基づいて方向を特定する場合、フェムト局5の受信電力(干渉電力)だけでなくマクロ局1Aの受信電力(希望電力)も加味することになるため、図7(C)に示すように、フェムト局5に要求する低下量に応じて方向が異なることになる。
【0065】
図3に戻り、要求部35は、このようにして算出した送信電力の低下量及び送信電力を下げる指向方向に、上述の重要度を関連付けてフェムト局5に対して通知することで、フェムト局5に対して送信電力を下げるよう要求する。
なお、要求部35による要求は、マクロ局1Aの送受信部4Aを介して行うこととなるが、マクロ局1Aからフェムト局5に対して電波を発信することで当該要求をマクロ局1Aが直接行うこととしてもよく、また、マクロ局1Aからフェムト局5の信号を検出可能な無線通信装置6を経由して、フェムト局5に対する要求を間接的に行うこととしてもよい。また、干渉制御装置1とフェムト局5とを有線回線で接続している場合には、要求部35による要求は、有線により行うこととしてもよい。
【0066】
フェムト局5では、干渉制御装置1から要求を受けると、要求通りに自局の送信電力を下げることとしてもよく、また、自局の送信電力の低下が自局に接続されている無線通信装置に与える影響に基づいて、自局の送信電力及び指向方向を制御することとしてもよい。具体的には、フェムト局5は、自局と通信する無線通信装置のSINRの低下度合いと通知された重要度とを比較して、例えば、自局と通信する無線通信装置のSINRを所定以上に確保できる範囲で、自局の送信電力及び指向方向を制御することとしてもよい。
一例として、重要度として上述のように各無線通信装置6のSINRの改善量の和を使う場合、フェムト局5は、送信電力を低下させた場合の自局と通信する無線通信装置のSINRの和を影響度として算出し、通知された重要度と算出した影響度とを比較し、自局の送信電力及び指向方向を制御する。例えば、低下量を3dBとした場合に、フェムト局5と通信する2台の無線通信装置のSINRが夫々3dB低下するのであれば、影響度は6(dB)と算出することができる。フェムト局5は、通知された重要度と影響度とに所定のウェイトをかけて比較し、自局の制御をすることができる。ウェイトのかけ方としては、自局と通信する無線通信装置のSINRに基づいて行うことができ、例えば、当該SINRが低い場合には影響度のウェイトを大きくして、送信電力を下げすぎて自局に接続されている無線通信装置が圏外になることを防ぐ。
【0067】
[干渉制御装置1の処理]
以上、本発明の干渉制御装置1の構成について説明した。続いて、図8を参照して、干渉制御装置1の処理の流れについて説明する。
ステップS1において、干渉制御装置1の取得部31は、マクロ局1Aと通信する無線通信装置6から当該無線通信装置6が受信している電波の受信強度に関するレポートを取得する。続いて、ステップS2において、干渉制御装置1の決定部32は、無線通信装置6に対して干渉を与えている基地局が制御対象の基地局5(例えば、フェムト局5)であるか否かを判定する。具体的には、決定部32は、ステップS1で取得したレポートから、無線通信装置6に対して干渉を与えている基地局の種別(BSID)を特定し、当該種別が制御対象の基地局の種別に一致するか否かに応じて、ステップS2の判定を行う。
【0068】
フェムト局5が無線通信装置6に対して干渉を与えている場合、ステップS3において、干渉制御装置1の推定部33は、フェムト局5が干渉を与えている干渉領域を推定する。具体的には、推定部33は、フェムト局5の干渉を受けている複数の無線通信装置6とマクロ局1Aとにより形成される角度や、干渉を受けている複数の無線通信装置6間の距離に基づいて、基地局5の干渉領域を推定する。
【0069】
続いて、ステップS4において、干渉制御装置1の判定部34は、推定した干渉領域が広いか否かを判定する。判定部34は、干渉領域が判定基準以上の広さである場合、処理をステップS5に移し、干渉領域が判定基準未満の広さである場合、処理を終了する。
【0070】
ステップS5において、干渉制御装置1の要求部35は、フェムト局5に対して要求する送信電力の低下量及び干渉を抑制する指向方向を算出する。具体的には、要求部35の低下量算出部351は、フェムト局5の送信電力を低下させた場合にSINRが改善する無線通信装置6の台数及びSINRの改善量に基づいて、フェムト局5の送信電力の低下量を算出する。また、要求部35の方向算出部352は、無線通信装置6から取得したレポートから得られる無線通信装置6の分布状況に基づき、フェムト局5が干渉を抑制する指向方向を算出する。
【0071】
続いて、ステップS6において、要求部35は、ステップS5で算出した低下量及び指向方向に基づいて、所定の方向に対する送信電力を下げるようにフェムト局5に対して要求する。
この要求を受けると、フェムト局5では、例えば、自局と通信する無線通信装置のSINRの低下度合いと通知された重要度とを比較して、自局の送信電力及び指向方向を制御する。
【0072】
[干渉制御装置1の効果]
以上、本発明の干渉制御装置1の第1実施形態について説明した。本発明の干渉制御装置1によれば以下の効果を期待できる。
干渉制御装置1では、フェムト局5に対して送信電力を下げるよう要求するところ、当該要求を、マクロ局1Aと通信する複数の無線通信装置6から取得したレポートに基づき行う。ここで、マクロ局1Aと通信する無線通信装置6にとって、フェムト局5の送信電波は干渉電波としてあらわれるため、干渉制御装置1では、フェムト局5が実際に与えている干渉の度合いを考慮してフェムト局5に対する要求を行うことができる。その結果、干渉の度合いが低い場合にまで送信電力を低下させてしまうことを防止でき、制御対象のフェムト局5の送信電力に対して不要な制限をかけることなく、フェムト局5による干渉を抑制することができる。
【0073】
特に、干渉制御装置1では、フェムト局5が干渉を与えている干渉領域が広い場合に限りフェムト局5に対して送信電力を下げるよう要求すると共に、当該要求時には、マクロ局1Aと通信する無線通信装置6のSINRの改善量を加味した送信電力の低下量や、干渉を抑制する指向方向も併せて指示する。
これにより、フェムト局5では、無線通信装置6の通信を干渉しない範囲で送信電力を低下させれば足り、フェムト局5の送信電力に対して不要な制限をかけることなく、フェムト局5による干渉を抑制することができる。
【0074】
また、干渉制御装置1では、基地局の種別(BSID)に基づいて、制御対象とするか否かを決定するため、不要な基地局にまで送信電力を下げるよう要求してしまうことを防止できる。
【0075】
<第2実施形態>
続いて、図9を参照して、本発明の干渉制御装置1の第2実施形態について説明する。第1実施形態では、干渉制御装置1をマクロ局1Aの内部に設けることとしていたが、第2実施形態では、干渉制御装置1をネットワーク側(サーバ)に設けることとしている。
【0076】
具体的には、図9に示すように、干渉制御装置1(サーバ)は、インターネット等のネットワークNを介して、複数のマクロ局1Aの夫々及び複数のフェムト局5の夫々と接続される。干渉制御装置1は、マクロ局1Aと通信する無線通信装置6のレポート及び当該レポート報告時の無線通信装置6の位置情報等を、ネットワークNを介してマクロ局1Aの夫々から収集し、収集した情報をもとに第1実施形態と同様に、フェムト局5に対して送信電力を下げるように要求する。
【0077】
なお、干渉制御装置1(サーバ)からフェムト局5に対する要求は、ネットワークNを経由して直接行うこととしてもよく、また、フェムト局5に近いマクロ局1Aを経由して行うこととしてもよく、また、マクロ局1Aに接続しておりフェムト局5の信号を検出可能な無線通信装置6を経由して行うこととしてもよい。
【0078】
また、フェムト局5の位置情報がサーバ上に保持されている場合には、同情報を保持したサーバにアクセスすることで、フェムト局5の位置情報を特定することとしてもよい。
また、一のマクロ局1Aから収集した情報だけでなく、複数のマクロ局1Aから収集した情報を総合して、フェムト局5が無線通信装置6に対して与えている干渉を特定することとしてもよい。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。特に、装置の分散・統合の具体的な実施形態は以上に図示するものに限られず、その全部又は一部について、種々の付加等に応じて、又は、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0080】
例えば、上記実施形態では、フェムト局5が干渉を与えている干渉領域の広さを、無線通信装置6から取得したレポート(電波強度やSINR)に基づいて推定することとしている。この点、レポート報告時の無線通信装置6の位置情報(GPS情報)をレポートと共に取得することで、干渉領域の広さを推定することとしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1・・・干渉制御装置
1A・・・マクロ局
2・・・記憶部
3・・・制御部
31・・・取得部
32・・・決定部
33・・・推定部
34・・・判定部
35・・・要求部
351・・・低下量算出部
352・・・方向算出部
4A・・・送受信部
5・・・フェムト局
6・・・無線通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9