【文献】
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【文献】
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【文献】
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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2型糖尿病患者が、少なくとも10mmol/L、少なくとも12mmol/L、又は少なくとも14mmol/Lの食後2時間血漿中グルコース濃度を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組合せ医薬。
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組合せ医薬であって、2型糖尿病の患者が、少なくとも2mmol/L、少なくとも3mmol/L、少なくとも4mmol/L、又は少なくとも5mmol/Lのグルコースエクスカーションを有し、グルコースエクスカーションは、食後2時間血漿中グルコース濃度と食事試験より30分前の血漿中グルコース濃度の差である、上記組合せ医薬。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい態様は、2型糖尿病患者の血糖コントロールに使用する組合せ医薬であり、該組合せ医薬は、
(a)desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩、及び
(b)グリタゾン又は/及び薬学的に許容されるその塩、
を含む。
【0017】
本発明の実施例で示されるように、本明細書に記載される組合せ医薬は、血糖コントロールを改善するために使用できる。本発明において、「血糖コントロールの改善」又は「血糖コントロール」は、特に、耐糖能の改善、食後血漿中グルコース濃度の改善、空腹時血漿中グルコース濃度の改善、HbA
1c値の改善又は/及び空腹時血漿中インスリン濃度の改善を言う。
【0018】
特に、耐糖能の改善には、食後血漿中グルコース濃度の改善又は/及び空腹時血漿中インスリン濃度の改善が含まれる。特に、耐糖能の改善には、食後血漿中グルコース濃度の改善が含まれる。
【0019】
特に、食後血漿中グルコース濃度の改善は、食後血漿中グルコース濃度の低下である。低下とは、特に、血漿中グルコース濃度が、正常血糖値に達する又は少なくともそれらの値に近づくことを意味する。
【0020】
特に、空腹時血漿中グルコース濃度の改善は、空腹時血漿中グルコース濃度の低下である。低下とは、特に、血漿中グルコース濃度が、正常血糖値に達する又は少なくともそれらの値に近づくことを意味する。
【0021】
特に、HbA
1c値の改善は、HbA
1c値の低下である。HbA
1c値の低下は、特に、例えば少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月又は少なくとも1年間治療した後、HbA
1c値が6.5%又は7%未満に低減することを意味する。
【0022】
特に、空腹時血漿中インスリン濃度の改善は、空腹時血漿中インスリン濃度の低下である。血漿中インスリン濃度は、血漿中グルコース濃度と連結している。本明細書に記載されるような治療のもとでは、絶食状態において、血漿中インスリンは、インスリン感受性器官及び組織に継続的なグルコース供給を確保する、又は/及び夜間の低レベルの肝臓のグルコース産出を保持する値、に到達するか又は少なくとも近づき得る。絶食状態では、インスリン濃度は、正常血糖又は正常血糖に近づく血漿中グルコース濃度に関連する値に到達するか又は近づき得る。
【0023】
本発明の関連において、本明細書で用いる「グリタゾン」は、薬学的に許容されるその塩を含む。グリタゾンは、ピオグリタゾン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、及び薬学的に許容されるそれらの塩から選択されればよい。
【0024】
本発明において、グリタゾン、特にピオグリタゾンは、経口的に投与され得る。当業者は、経口投与による2型糖尿病の治療に適切なグリタゾン、特にピオグリタゾンの製剤を承知している。ピオグリタゾンは、それを必要とする患者に、治療効果を誘導するのに十分な量で投与され得る。グリタゾン、特にピオグリタゾンは、少なくとも10mg/日、少なくとも20mg/日、少なくとも30mg/日、又は少なくとも40mg/日の用量で投与され得る。グリタゾン、特にピオグリタゾンの最大1日用量は、50mg/日又は60mg/日であり得る。好ましい投与範囲は、10mg/日〜50mg/日又は30mg/日〜40mg/日である。より好ましい用量は、約30mg/日である。経口投与のためには、グリタゾン、特にピオグリタゾンは、錠剤又はピルのような固体の剤形で製剤化され得る。グリタゾン、特にピオグリタゾンは、適切な薬学的に許容される担体、アジュバント、又は/及び補助物質によって製剤化され得る。
【0025】
本発明の組合せ医薬はさらに、メトホルミン又は/及び薬学的に許容されるその塩を含む。メトホルミンは、1,1−ジメチルビグアナイド(CAS Number 657-24-9)の国際的一般名である。本発明では、用語の「メトホルミン」は、薬学的に許容される如何なるその塩も含む。
【0026】
本発明では、メトホルミンは、経口的に投与され得る。当業者は、経口投与による2型糖尿病の治療のために適切なメトホルミンの製剤化を周知している。メトホルミンは、それを必要とする患者に、治療効果を誘導するのに十分な量で投与され得る。メトホルミンは、少なくとも1.0g/日又は少なくとも1.5g/日の用量で投与され得る。経口投与のためには、メトホルミンは、錠剤又はピルのような固体の剤形で製剤化され得る。メトホルミンは、適切な薬学的に許容される担体、アジュバント、又は/及び補助物質によって製剤化され得る。
【0027】
メトホルミンは、本発明の組合せ医薬中に存在する場合、メトホルミン及びグリタゾン、特にピオグリタゾンは、一つの製剤で、例えば錠剤又はピルのような固体の剤形で提供され得る。メトホルミン及びグリタゾン、特にピオグリタゾンは、適切な薬学的に許容される担体、アジュバント、又は/及び補助物質によって製剤化され得る。
【0028】
本発明では、desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容される塩は、グリタゾン、特にピオグリタゾンの投与に対する付加療法で投与されればよい。
【0029】
本発明において、用語の「付加」、「付加治療」、「付加療法」及び「に加えて(on top of)」は、グリタゾン、特にピオグリタゾン、及びリキシセナチドによる2型糖尿病の治療に関する。同様に、本明細書に開示されるように、メトホルミンによる治療が含まれ得る。グリタゾン、特にピオグリタゾン、及びリキシセナチドは24時間の時間間隔以内に投与され得る。グリタゾン、特にピオグリタゾン、及びリキシセナチドは、それぞれ1日1回投与量で投与されればよい。グリタゾン、特にピオグリタゾン、及びリキシセナチドは、異なる投与経路で投与されてもよい。グリタゾン、特にピオグリタゾンは経口的に投与され得て、そしてリキシセナチドは、非経口的に投与され得る。
【0030】
本発明の薬剤によって治療される患者は、2型糖尿病を患っている患者であればよい。実施例は、これらの患者で、グリタゾン、特にピオグリタゾンと組合せたリキシセナチドの投与が、有利な治療をもたらすことを示している。
【0031】
2型糖尿病を患っている、本発明の薬剤によって治療される患者は、2型糖尿病がグリタゾン、特にピオグリタゾン単独による、例えば、10mg/日〜50mg/日、特に約30mg/日で、少なくとも2か月又は少なくとも3か月間の治療によって適切にコントロールされない、2型糖尿病を患っている患者で有り得る。本発明では、その2型糖尿病が適切にコントロールされない患者は、7%〜10%の範囲のHbA
1c値を有し得る。
【0032】
2型糖尿病を患っている、本発明の薬剤によって治療される患者は、肥満患者であり得る。本発明では、肥満患者は、少なくとも30kg/cm
2の肥満度指数を有し得る。
【0033】
2型糖尿病を患っている、本発明の薬剤によって治療される患者は、正常な体重を有し得る。本発明では、正常な体重を有する患者は、17kg/cm
2〜25kg/cm
2、17kg/cm
2〜<30kg/cm
2、又は<30kg/cm
2の範囲の肥満度指数を有し得る。
【0034】
本発明の薬剤によって治療される患者は、成人患者であってよい。患者は、少なくとも18歳の年齢を有する、又は18〜80歳、18〜50歳、若しくは40〜80歳、若しくは50〜60歳の範囲の年齢を有してもよい。患者は、50歳より若くてもよい。
【0035】
本発明の薬剤によって治療される患者は、好ましくは、例えばインスリン又は/及び関連化合物による抗糖尿病治療を受けていない。
【0036】
本発明の薬剤によって治療される患者は、少なくとも1年間又は少なくとも2年間2型糖尿病を患っているかもしれない。特に2型糖尿病患者では、2型糖尿病が、本発明の薬剤による治療開始の少なくとも1年又は少なくとも2年前に診断されている。
【0037】
2型糖尿病患者は、少なくとも約8%又は少なくとも約7.5%のHbA
1c値を有し得る。患者はまた、約7%〜約10%のHbA
1c値を有し得る。本発明の実施例は、リキシセナチドによる治療が、2型糖尿病患者において、HbA
1c値の低下をもたらすことを示す。
【0038】
本発明のさらにもう1つの態様では、本明細書に記載される組合せ医薬は、本明細書に記載されるように、2型糖尿病を患っている患者におけるHbA
1c値を改善させるために使用できる。
【0039】
本発明のさらにもう1つの態様では、本明細書に記載される組合せ医薬は、本明細書に記載されるように、2型糖尿病を患っている患者における耐糖能を改善させるために使用できる。
【0040】
本発明のさらにもう1つの態様では、本明細書に記載される組合せ医薬は、本明細書に記載されるように、2型糖尿病を患っている患者における食後血漿中グルコース濃度を改善させるために使用すできる。
【0041】
本発明のさらにもう1つの態様では、本明細書に記載される組合せ医薬は、本明細書に記載されるように、2型糖尿病を患っている患者における空腹時血漿中グルコース濃度を改善させるために使用できる。
【0042】
本発明のさらにもう1つの態様では、本明細書に記載される組合せ医薬は、本明細書に記載されるように、2型糖尿病を患っている患者における空腹時血漿中インスリン濃度を改善させるために使用できる。
【0043】
本発明では、正常血糖値は、特に60〜140mg/dL(3,3ビス7,8mM/Lに相当)の血糖濃度である。この範囲は、特に、絶食状態又は/及び食後状態下の血糖濃度を言う。
【0044】
2型糖尿病の患者は、少なくとも10mmol/L、少なくとも12mmol/L、又は少なくとも14mmol/Lの食後2時間血漿中グルコース濃度を有し得る。これらの血漿中グルコース濃度は、正常血糖濃度を上回る。
【0045】
2型糖尿病の患者は、少なくとも2mmol/L、少なくとも3mmol/L、少なくとも4mmol/L、又は少なくとも5mmol/Lのグルコースエクスカーション(glucose excurtion)を有し得る。本発明では、グルコースエクスカーションは、特に食後2時間血漿中グルコース濃度と食事試験前30分の血漿中グルコース濃度の差である。
【0046】
「食後の」とは、糖尿病学の当業者に良く知られた用語である。用語の「食後の」は、食事した後又は/及び実験条件下でのグルコースへの暴露の段階を述べる。健常人では、この段階は、血糖濃度の上昇そしてその後の低下によって特徴付けられる。用語の「食後の」又は「食後の段階」は、通常、食事の後又は/及びグルコースに暴露した後2時間までで終わる。
【0047】
本明細書に開示されるように、2型糖尿病の患者は、少なくとも8mmol/L、少なくとも8.5mmol/L、又は少なくとも9mmol/Lの空腹時血漿中グルコース濃度を有し得る。これらの血漿中グルコース濃度は、正常血糖濃度を上回る。
【0048】
本発明では、desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩は、それを必要とする患者に、治療効果を誘導するのに十分な量で投与され得る。
【0049】
本発明では、desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩は、適切な薬学的に許容される担体、アジュバント、又は/及び補助物質によって製剤化され得る。
【0050】
化合物desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩は、非経口的に、例えば注射(筋肉内又は皮下注射など)によって投与され得る。適切な注射デバイス、例えば、活性成分を含むカートリッジ及び注射針を含むいわゆる「ペン」が知られている。化合物desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩は、適切な量で、例えば投与量当たり10〜15μg又は投与量当たり15〜20μgの範囲の量で投与され得る。
【0051】
本発明では、desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩は、1日用量が10〜20μgの範囲、10〜15μgの範囲、又は15〜20μgの範囲で投与され得る。desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩は、1日当たり1回注射で投与され得る。
【0052】
本発明では、desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩は、液体組成物で提供され得る。当業者は、非経口投与に適切なリキシセナチドの液体組成物を周知している。本発明の液体組成物は、酸性又は生理学的pHを有すればよい。酸性pHは、好ましくはpH1〜6.8、pH3.5〜6.8、又はpH3.5〜5の範囲である。生理学的pHは、好ましくはpH2.5〜8.5、pH4.0〜8.5、又はpH6.0〜8.5の範囲である。pHは、薬学的に許容される希薄な酸(一般にHCl)又は薬学的に許容される希薄な塩基(一般にNaOH)で調整され得る。
【0053】
desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩を含む液体組成物は、適切な防腐剤を含んでもよい。適切な防腐剤は、フェノール、m−クレゾール、ベンジルアルコール及びp−ヒドロキシ安息香酸エステルから選択され得る。好ましい防腐剤は、m−クレゾールである。
【0054】
desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許
容されるその塩を含む液体組成物は、等張化剤を含んでもよい。適切な等張化剤は、グリセロール、乳糖、ソルビトール、マンニトール、グルコース、食塩、CaCl
2などのカルシウム又はマグネシウム含有化合物から選択され得る。グリセロール、乳糖、ソルビトール、マンニトール及びグルコースの濃度は、100〜250mMの範囲であればよい。食塩の濃度は、150mMまでであればよい。好ましい等張化剤は、グリセロールである。
【0055】
desPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩を含む液体組成物は、0.5μg/mL〜20μg/mL、好ましくは1μg/mL〜5μg/mLのメチオニンを含んでもよい。好ましくは、液体組成物はL−メチオニンを含む。
【0056】
本発明のさらに別の態様は、本明細書に記載されるように、医療適用の治療の方法に言及する。例えば、その方法は、本明細書に記載されるような組合せ医薬の投与を含み得る。その方法は、本明細書に記載されるように、2型糖尿病患者を治療する方法、又は/及び2型糖尿病に関連する状態を治療する方法であり得る。患者は、本明細書に定義されるような患者であればよい。
【0057】
本発明のさらなる態様は、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善するための方法であり、該方法はdesPro
36エキセンジン−4(1−39)−Lys
6−NH
2又は/及び薬学的に許容されるその塩を、グリタゾン、特にピオグリタゾンと組合せて、それを必要とする患者に投与することを含む。特に、本明細書に記載されるような組合せ医薬を投与し得る。本発明の方法では、患者は、本明細書に定義された患者であり得る。
【0058】
本発明のさらにもう1つの態様は、本明細書に記載されるように、医療適用の治療のための薬剤の製造のために本明細書に記載されるような組合せ医薬の使用に言及する。例えば、本発明の組合せ医薬は、2型糖尿病患者を治療するための又は/及び2型糖尿病に関連する状態を治療するための薬剤を製造するために使用できる。特に、本発明の組合せ医薬は、血糖コントロールの改善、耐糖能の改善、食後血漿中グルコース濃度の改善、空腹時血漿中グルコース濃度の改善、HbA
1c値の改善又は/及び空腹時血漿中インスリン濃度の改善のための薬剤を製造するために使用できる。患者は、本明細書で定義された患者であり得る。
【0059】
本発明はさらに、以下の実施例及び図面によって説明される。
【実施例】
【0061】
要約
実施例は、ピオグリタゾンで適切にコントロールされない2型糖尿病の患者におけるピオグリタゾンに加えたリキシセナチドの有効性及び安全を評価する、無作為、二重盲検、プラセボ対照、2治療群(2-arm)、アンバランスデザイン、並行群、多施設、多国間治験に言及する。患者あたりのおよその最低二重盲検治験期間は、79週(2週間までのスクリーニング+1週間のならし(run-in)+24週間の主要二重盲検治療+可変延長期間+3日間のフォローアップ)であった。
【0062】
治験は、13か国の150の医療施設で実施した。治験の主な目的は、ピオグリタゾンへの付加治療として、プラセボと比較した血糖コントロールについてのリキシセナチドの有効性を、24週の期間にわたるHbA1c低下(絶対変化)の観点から評価することであった。
【0063】
合計484人の患者を、2つの治療群の1つに無作為に割り付けた(リキシセナチド群に323例及びプラセボ群に161例)。全ての無作為に割り当てられた患者を、治験治療の対象にした。人口統計及びベースライン特性は、一般に治療群間で類似していた。5人の患者(リキシセナチドについて3例及びプラセボについて2例)は、ベースライン後の有効性データが無いため、有効性解析のための修正治療企図(mITT)集団から除外した。全体の治験治療期間中、136例(28.1%)の患者は、時期を早めて治験治療を中止した(リキシセナチドで26.0%及びプラセボで32.3%)。リキシセナチド群について、治療中止の主な理由は「他の理由」(10.5%対プラセボに対して12.4%)、続いて「有害事象」(9.0%対プラセボに対して8.7%)であった。
【0064】
有効性解析は、主な24週の二重盲検治療期間をベースにしている。ベースラインから24週までのHbA1cの最小二乗(LS)平均変化は、リキシセナチド群で−0.90%、及びプラセボ群で−0.34% であった(LS平均差対プラセボ=−0.56%; p−値<.0001)。24週時でHbA1c≦6.5%又は<7%に到達する患者の割合は、リキシセナチド群がプラセボ群よりも有意に高かった(HbA1c≦6.5%に関しては、リキシセナチド群の28.9%対プラセボ群の10.1% ; HbA1c<7%に関しては、リキシセナチド群の52.3%対プラセボ群の26.4%)。コクラン・マンテル・ヘンツェル(CMH)法を用いたHbA1c応答者の解析(24週時でHbA1c≦6.5%又は<7%)も同様に、24週時でリキシセナチドとプラセボの間に有意な治療差(p−値<.0001)を示した。
【0065】
空腹時血糖値(FPG)に関して、プラセボ群と比較して、ベースラインから24週まで有意な低下がリキシセナチド群で観察された(LS平均差対プラセボ=−0.84 mmol/L;p−値<.0001)。体重に関して、リキシセナチド群におけるLS平均低下は、プラセボ群における0.21kgのLS平均上昇と比較して、ベースラインから24週時で0.21kgであり、2群間の差は有意でなかった(LS平均差対プラセボ=−0.41kg)。体重解析では統計的有意差を示せなかったので、多重度調整のためのテスト戦略ごとに、それに続く有効性項目の推測テストは探索的(exploratory)であった。HOMA−βで評価したβ−細胞機能で観察されたリキシセナチド群とプラセボ群の間のLS平均差は−0.25(95%CI:[−6.579〜6.070])であり、関連性のある差は認められない。24週時に救援療法(rescue therapy)を必要とする患者の割合は、プラセボ群(18例[11.3%])と比較して、リキシセナチド群(12例[3.8%])で実質的により低かった。空腹時血漿中インスリン(FPI)に関しては、LS平均低下は、LS平均差が−9.36pmol/L(95%CI[−16.586〜−2.124])であり、リキシセナチド群の方がプラセボ群より大きかった。
【0066】
安全性の解析は、治験全体の治療期間をべースにしている。リキシセナチドは、良好な耐容性を示した。治療中に発現した有害事象(TEAE)を経験した患者の比率は、リキシセナチド群で87.9%及びプラセボ群で83.2%であった。リキシセナチド群の患者の死亡はなかったが、プラセボ群で2名の患者が死亡した。1名は治療中に発現した急性心筋梗塞症を有して死亡に至り、もう1名は多臓器不全での呼吸不全の後、治療後AE(末期衰弱)により死亡した。重篤なTEAEがあった患者の割合は、プラセボ群(9.3%)におけるよりも、リキシセナチド群 (7.4%)で、より低かった。リキシセナチド群で最も一般に報告されたTEAEは、吐き気(26.0対プラセボの13.7%)、続いて鼻咽頭炎(16.4%対プラセボの14.9%)及び頭痛(13.3%対プラセボの11.8%)であった。治験全体の実治療期間の間、プロトコル定義によるの症候性低血糖症は、プラセボ群の7例(4.3%)に比べて、リキシセナチド群では23例(7.1%)あった。症候性低血糖症のどの事象も強度が重篤ではなかった。リキシセナチド群の22例(6.8%)の患者及びプラセボ群の8例(5.0%)は、注射部位反応AEを経験した。合計12人の患者(リキシセナチド群の9例[2.8%]及びプラセボ群の3例[1.9%])で、アレルギー反応評価委員会(ARAC)によってアレルギー反応として判断を下された19の事象が報告された。これらのうち、リキシセナチド群の3人の患者における5つの事象(アレルギー性皮膚炎をもつ1例、じんま疹をもつ1例、並びに血管性浮腫、アナフィラキシー反応及びアレルギー性結膜炎をもつ1例)はおそらくIPに関連すると判断を下された。プラセボ群では、おそらくIPに関連すると判断を下された事象は無かった。治験の中で、膵炎又は甲状腺ガンの症例は報告されなかった。
【0067】
1.目的
1.1 主要目的
この治験の主要目的は、血糖コントロールに対するリキシセナチドの有効性を、ピオグリタゾンで治療された2型糖尿病患者においてピオグリタゾンへの付加治療としてプラセボと比較し、24週の期間にわたる絶対HbA1c低下に関して評価することであった。
【0068】
1.2 重要な(key)一つ又は複数の副次的目的
この治験の副次的目的は:
・リキシセナチドの効果を、
−HbA1c<7%に到達する患者の割合;
−HbA1c≦6.5%に到達する患者の割合;
−空腹時血糖値(FPG);
−体重;
−HOMA−βで評価したβ−細胞機能;
−空腹時血漿中インスリン(FPI);
について評価すること、及び
・リキシセナチドの安全性及び耐容性を評価することであった。
【0069】
2.治験デザイン(trial design)
これは、2型糖尿病患者(リキシセナチド治療群に300例及びプラセボ治療群に150例)でリキシセナチド治療をプラセボと比較するアンバランス型(2:1)、無作為、二重盲検、プラセボ対照、2治療群並行群、多施設、多国間の可変延長期間を備えた治験であった。治験は、アクティブ及びプラセボ治療に関して二重盲検であった。治験薬物量(即ち、活性薬物又はマッチングプラセボ(matching placebo)の投与量)は、盲検化されなかった。患者は、HbA1cのスクリーニング値(< 8%、≧ 8%)及びスクリーニング時のメトホルミン使用(有り、無し)により階層化された。
【0070】
患者当たりのおよその最小二重盲検治験期間は、79週(2週間までのスクリーニング+1週間のならし+24週の主要二重盲検治療+可変延長期間+3日間のフォローアップ)であった。24週の主要二重盲検期間を終了した患者は、最後の無作為化患者に対する76週来院(V25)の予定期日でおよそすべての患者に対して終了する、可変二重盲検延長期間を経験した。
【0071】
治験デザインは、
図1で図示する。
【0072】
3. 主要及び重要な副次的エンドポイント
3.1 主要なエンドポイント
主要有効性項目は、ベースラインから24週までのHbA1cの絶対変化であり、それは、24週時の HbA1c値−ベースラインでのHbA1c値として定義された。
【0073】
患者が、主要24週二重盲検治療期間中に恒久的に治療を中止したか若しくは救援療法を受けたか、又は24週時のHbA1c値を有さなかった場合、治療した期間の主要24週二重盲検の間に最後のベースライン後HbA1c測定値を、24週時のHbA1c値として使用した(繰り越された最終観察(LOCF)手法)。
【0074】
3.2 重要な副次的エンドポイント
3.2.1 重要な副次的有効性エンドポイント
副次的有効性項目に関して、見失った評価/早期中止を取り扱う同じ手順は、主要有効性項目に関するのと同じ手順を適用した。
【0075】
連続項目:
・ベースラインから24週までのFPG(mmol/L)の変化、
・ベースラインから24週までの体重(kg)の変化、
・ベースラインから24週までのHOMA−βで評価したβ−細胞機能の変化;
・ベースラインから24週までのFPI(pmol/L)の変化。
【0076】
カテゴリー項目:
・24週時にHbA1c<7%を備えた患者の割合;
・24週時にHbA1c≦6.5%を備えた患者の割合;
・主要24週二重盲検治療期間の間に救援療法を必要とした患者の割合;
・24週時にベースラインから≧5%の体重減少(kg)した患者の割合。
【0077】
3.2.2 安全性エンドポイント
安全性解析は、症候性低血糖症及び重度の症候性低血糖症、注射部位での局所耐容性、アレルギー性事象(ARACによって判断を下された)、疑似膵炎、カルシトニン増加、バイタルサイン、12誘導心電図及び臨床検査を含む報告されたTEAE及び他の安全性情報をベースにした。
【0078】
主要な心血管事象もまた集められ、心血管事象裁定委員会(CAC)により盲検法で判断を下した。この治験及び他のリキシセナチドのフェーズ3治験からCACによって判断を下され及び確認された事象は、解析のためにプールされ、リキシセナチドの総合的な心疾患の評価のための統計的解析計画をベースにした別の報告書にまとめられる。KRM/CSRは、この治験から判断を下された及び確認されたCV事象の概要を提供しないだろう。
【0079】
4. サンプルサイズ計算前提
サンプルサイズ/検出力計算(power calculation)は、主要項目、ベースラインから24週までのHbA1cの絶対変化をベースに行われた。
【0080】
リキシセナチド治療の300人の患者及びプラセボ治療治療群の150は、96%(又は86%)の検出力(power)を持ち、リキシセナチド群とプラセボ群の間でベースラインから24週までのHbA1cの絶対変化に0.5%(又は0.4%)の差を検出した。この計算から、5%有意水準での両側検定で1.3%の共通標準偏差が推定された。サンプルサイズ計算は、2サンプルt−検定をベースにして、nQuery Advisor(登録商標)5.0を使用して行った。標準偏差は、先に実施された糖尿病の治験(同様に設計された治験の公開データ及び未発表の内部データをベースに)から保守的な方法で、早期脱落を考慮して推定された。
【0081】
5 統計的方法
5.1 解析集団(analysis populations)
修正治療企図(mITT)集団は、少なくとも1用量の二重盲検治験薬(IP)を受けた無作為の患者から成り、有効性項目のベースライン評価及び少なくとも1つのベースライン後評価の両者を有した。
【0082】
安全性集団は、少なくとも1用量の二重盲検IPを受領した全ての無作為の患者と定義された。
【0083】
5.2 主要有効性解析
主要有効性項目(ベースラインから24週までのHbA1cの変化)は、共分散解析(ANCOVA)モデルを用い、治療群(リキシセナチド及びプラセボ)、スクリーニングHbA1cの無作為化階層(<8.0、≧8.0%)、スクリーニング時のメトホルミン使用(有り、無し)の無作為化階層、並びに固定効果としての国及び共変量としてのベースラインHbA1cをで解析した。リキシセナチド及びプラセボのための平均値及び補正平均値の両者、並びにリキシセナチドとプラセボの間の補正平均値差のために構築された95%信頼区間(CI)が提供された。リキシセナチドとプラセボの間の差及び両側95%信頼区間、並びにp−値は、ANCOVAの枠組みの中で推定された。
【0084】
主要有効性項目の主要解析は、mITT集団及び有効性項目のための主要24週二重盲検の実治療期間中に得られた測定をベースに実施した。有効性項目のための主要24週二重盲検の実治療期間は、二重盲検IPの初回投与から二重盲検IP注射のV12/24週の来院の当日又はそれ以前(又は、V12/24週の来院が欠落の場合はD169)の最終投与後3日まで(FPG及びFPIが1日までを除いて)、又は救援療法の導入までの、いずれか最も早い時である。LOCF手順は、24週のHbA1c値としてこの最後に得られるベースライン後の実治療のHbA1c測定(救援療法の導入前)を取ることによって使用された。
【0085】
5.3 重要な副次的有効性解析
第一種過誤のコントロールを確実にするために、ステップダウン試験手順(step down testing procedure)を適用した。主要項目が、α=0.05で統計的に有意な時点で試験手順を実施し、以下の優先順位によって以下の副次的有効性項目を試験することを行った。主要項目がα=0.05で統計的に有意でないことが分かり次第、試験を停止した。
・ベースラインから24週までのFPG(mmol/L)の変化、
・ベースラインから24週までの体重(kg)の変化、
・ベースラインから24週までのHOMA−βで評価したβ−細胞機能の変化、
・24週治療期間中の救援療法を必要とした患者の割合、
・ベースラインから24週までのFPI(mmol/L)の変化。
【0086】
第3.2.1節に記載の全ての24週時の連続的な副次的有効性項目は、主要有効性主要エンドポイントの主要解析のための第5.2節に記載されたと同様のアプローチ及びANCOVAモデルを用いて解析した。リキシセナチドとプラセボの間の治療平均差の調整推定値及び両側95%信頼区間が与えられた。
【0087】
以下の24週のカテゴリー別副次的有効性項目は、無作為化階層(スクリーニングHbA1c[<8.0、≧8.0%]及びスクリーニングメトホルミン使用[有り、無し])で階層化したコクラン・マンテル・ヘンツェル(CMH)法を用いて解析した:
・24週時にHbA1c<7.0%を備えた患者の割合、
・24週時にHbA1c≦6.5%を備えた患者の割合、
・24週二重盲検治療期間中に救援療法を必要とした患者の割合。
【0088】
24週時にベースラインから≧5%の体重減少した患者の数及び割合は、治療群によって示された。
【0089】
可変延長期間中及び治療終了時の全ての有効性主要エンドポイントに対する結果は、記述統計学によってのみ評価された。
【0090】
5.4 安全性解析
安全性解析は、主として治験全体の実治療期間に基づいた。治験全体の実治療期間は、救援状況に関わらず、全治験期間中の二重盲検IPの初回投与からIP投与の最終投与後3日までの期間と定義した。3日の間隔は、IPの半減期に基づいて選択された(半減期の約5倍)。
【0091】
また、24週の二重盲検治療期間の安全性解析は、CSRで纏められることになる。
【0092】
安全性結果の要約(記述統計又は頻度表)は、治療グループによって提示される。
【0093】
6. 結果
6.1 治験患者
6.1.1 患者に対する説明責任
治験は、13か国(オーストリア、カナダ、フランス、ドイツ、ギリシャ、グアテマラ、インド、メキシコ、ペルー、プエルトリコ、ルーマニア、トルコ、及び米国)の150か所の医療施設で実施した。合計906人の患者をスクリーニングし、484例を、2つの治療群の中の1つに無作為に割り当てた。非無作為化の最も共通する理由は、スクリーニング来院時のプロトコルで規定された範囲から外れたHbA1c値であった(906例のスクリーニングした患者のうち283例[31.2%])。
【0094】
484例の無作為に割り当てられた患者はすべて治験治療に付され、5人の患者(リキシセナチド群の3例及びプラセボ群の2例)は、ベースライン後の有効性データが無いため有効性解析のためのmITT集団から除外した。表1は、各解析対象集団に含まれる患者の数を提供する。
【0095】
治験責任医師の臨床プロトコル不遵守及び臨床試験実施に関する基準GCP(Good Clinical Practice)違反のため、リキシセナチド群の1人の患者は、治験依頼者によって中止された。その患者は、113日間投与を受け、安全性と有効性の解析に含めた。
【0096】
【表1】
【0097】
6.1.2 治験の内訳
表2は、各治療群に対する患者の内訳の要約を提供する。総治療期間に、136例(28.1%)の患者(リキシセナチドで26%及びプラセボで32.3%)が治験治療を早期に中止した。リキシセナチド群では、治療中止の主な理由は「その他の理由」(10.5%対プラセボの12.4%)、続いて「有害事象」(9.0%対プラセボの8.7%)であった。
【0098】
同様な結果は24週間の治療期間でも観察され、その場合、合計59例(12.2%)の患者(リキシセナチドで10.8%及びプラセボで14.9%)が治験治療を早期に中止しており、リキシセナチド群の中止の主な理由もまた「その他の理由」(4.0%対プラセボの5.0%)及び「有害事象」(4.0%対プラセボの5.6%)であった。「その他の理由」の種類は、AEに関係ない事が治験責任医師によって確認され、個人的な理由、スケジュールの不一致、移動、注射の不都合、施設閉鎖などを含むがこれらに限定されなかった。総治療期間中のいずれかの理由による治療中止の開始時期は、
図2に示される。プラセボ群と比較して、総治療期間中の中止の割合は、リキシセナチド群でより低かった。治験終了時のリキシセナチド群における約25%から100%までの中止率増加は、874日時に中止した、最も長く従った患者によるものであった。
【0099】
表20の「グリコシル化ヘモグロビン増加」で治療を中止したリキシセナチド群の1人の患者は、表2の有効性の不足としてカウントしたが、AEのために中止したプラセボ群の2人の患者は、治療中止に至った彼らのAEが治療期間前又は治療期間後に起きたため、表20にはカウントしなかった。
【0100】
【表2】
【0101】
6.1.3 人口統計及びベースラインの特性
人口統計及び患者のベースラインの特性は、概して安全性対象集団(表3)の治療群にわたって類似していた。年齢の中央値は56歳、そして52.5%は男性であった。治験集団は、主として白人(83.7%)であり、安全性対象集団の67.6%はBMI≧30kg/m
2を有していた。
【0102】
糖尿病の病歴を含む疾患特性は、2つの治療群(表4)の間で通常同じであった。糖尿病期間の中央値は、7.22年であり、糖尿病発症年齢の中央値は、48歳であった。患者は、ピオグリタゾン療法期間の中央値が0.83年であり1日用量の中央値が30mgであった。スクリーニング時に、患者の81%は、3.37年の中央値期間メトホルミンを使用しており、1日用量の中央値は2000mgであった。
【0103】
ベースラインでのHbA1c、FPG及びHOMA−βは、安全性対象集団(表5)のための治療群にわたって通常比較可能であった。ベースラインでのより高い平均体重は、リキシセナチド群(92.93kg)と比較して、プラセボ群(96.74kg)に観察された。FPIの平均値及び中央値の両者は、リキシセナチド群(それぞれ63.32pmol/L及び46.14pmol/L)に比べてプラセボ群(それぞれ66.07pmol/L及び53.78pmol/L)でより高かった。ベースラインでのHbA1cの平均は、8.07%であった。
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
【0109】
【表8】
【0110】
【表9】
【0111】
6.1.4 投与量及び期間
平均の治療暴露は、プラセボ群における518.6日(74週)と比べて、リキシセナチド群では560.2日(80週)であった(表6)。323例のリキシセナチド治療患者のうち286例(88.5%)は、IPに24週(169日)又はそれ以上暴露され、そして199例(61.6%)は18か月(547日)又はそれ以上の期間暴露された。5人の患者は、CRFの「治療の終わり」のページに最終投与日付が記録されてなく、従って彼らの受療期間は、SAPデータ取扱い規約に従って欠落とした。
【0112】
二重盲検治療の終了時に、リキシセナチド群の患者の92.3%が目標1日用量の20μgに到達し、プラセボ群(97.5%)よりも低くかった(表7)。同様な結果は、24週二重盲検治療期間の終了時にも認められた(リキシセナチドの92.6%に対してプラセボの98.8%)(表8)。漸増の最後の用量は表28に示される。
【0113】
【表10】
【0114】
【表11】
【0115】
【表12】
【0116】
6.2 有効性
6.2.1 主要有効性主要エンドポイント
主要な解析
表9は、主要有効性パラメーターの結果、ベースラインから24週まで(LOCF)のANCOVA解析を用いたHbA1cの変化、を要約する。
【0117】
事前に指定した主要解析から、リキシセナチドによるベースラインから24週までの治療が、プラセボ群と比較して統計的に有意なHbA1cの低下をもたらすことが示された(プラセボ群に対するLS平均差=−0.56%、p−値<.0001)。
【0118】
【表13】
【0119】
図3は、主要24週の二重盲検治療期間中の、HbA1cのベースラインからの平均(±SE)変化を図示する。付録の
図6は、76週までの期間にわたるHbA1cのベースラインからの平均(±SE)変化を図示する。HbA1cの低下は、24週を超えても維持された。
【0120】
副次的解析
表10は、24週時にそれぞれHbA1c≦6.5%又は>7%の治療反応を備えた患者の比率を要約する。CMH法を用いたHbA1c応答者の解析は、リキシセナチド群とプラセボ群の間に統計的に有意な治療差を示した(p−値<.0001)。
【0121】
【表14】
【0122】
6.2.2 重要な副次的有効性主要エンドポイント
FPG、体重、HOMA−β及びFPIのANCOVA解析は、この章に提示される。
図4及び
図5は、FPG及び体重のベースラインから主要24週二重盲検治療期間の長期にわたる平均(±SE)変化を図示する。FPG及び体重のベースラインから76週までの長期にわたる平均(±SE)変化は、付録の
図7及び
図8にそれぞれ示される。主要24週二重盲検治療期間中に救援された患者の割合は、表15に提示される。
【0123】
FPGに関しては、ベースラインから24週までの有意な低下が、プラセボ群と比較したリキシセナチド群に認められた(LS平均差対プラセボ=−0.84mmol/L;p−値<.0001)(表11)。
【0124】
体重に関しては、プラセボ群で0.21kgのLS平均増加と比較して、リキシセナチド群ではLS平均低下は24週時でベースラインから0.21kgであったが、2群間の差は有意でなかった(LS平均差対プラセボ=−0.41kg)(表12)。リキシセナチド群の約9.2%の患者及びプラセボ群の5.1%は、ベースラインから24週までに≧5%の体重減少を有した。
【0125】
体重解析では統計的有意差を示せなかった為、多重度を調整するためのテスト戦略ごとに、それに続く有効性項目の推測テストは探索的であった。
【0126】
HOMA−βで評価したβ−細胞機能に関しては、リキシセナチド群とプラセボ群の間のLS平均差は−0.25(95%CI:[−6.579〜6.070])であり、関連性のある差は認められなかった(表14)。
【0127】
24週に救援療法を必要とする患者の割合は、プラセボ群(18例[11.3%])と比較して、リキシセナチド群(12例[3.8%])で実質的により低かった(表15)。
【0128】
FPIに関しては、LS平均低下は、LS平均差が−9.36pmol/L(95%CI[−16.586〜−2.124])であり、リキシセナチド群の方がプラセボ群より大きかった。
【0129】
【表15】
【0130】
【表16】
【0131】
【表17】
【0132】
【表18】
【0133】
【表19】
【0134】
【表20】
【0135】
6.3 安全性
治験全体の中で実治療期間中に観察された有害事象の概要を、表17に提供する。治療中発生有害事象(TEAE)を経験した患者の割合は、リキシセナチド群で87.9%、プラセボ群で83.2%であった。リキシセナチド群で患者の死亡は無かったが、プラセボ群で2人の患者が死亡した。1例は治療中発生の急性心筋梗塞症を有して死亡に至り、もう1例は多臓器不全による呼吸不全の後、治療後AE(末期衰弱)のため死亡した。重大なTEAEがあった患者の割合は、プラセボ群(9.3%)におけるよりも、リキシセナチド群 (7.4%)の方がより低かった。プラセボ群(7.5%)よりもリキシセナチド群の患者(9.3%)が、高い割合で、治療中止に至るTEAEを経験した。表18、表19、及び表20は、死亡に至るTEAE,重大なTEAE,及び治療中止に至るTEAEを、それぞれ主要SOC、HLGT、HLT、及びPT別に要約する。最も一般的な治療中止に至るTEAEは、リキシセナチド群では吐き気(6例[1.9%])であったが、一方プラセボ群では吐き気のために治療を中止した患者はなかった。
【0136】
付録の表30は、どの治療群であれ、治験全体の実治療期間中の患者の少なくとも1%に起こるTEAEの発生を示す。吐き気は、リキシセナチド群で最も高頻度に報告されたTEAEであった(84例[26.0%]対プラセボの22例[13.7%])。リキシセナチド群で次に最も高頻度に報告されたTEAEは、鼻咽頭炎(53[16.4%]対プラセボの24[14.9%])、続いて頭痛(43[13.3%]対プラセボの19[11.8%])、上気道感染症(41[12.7%]対プラセボの18[11.2%])、下痢(35[10.8%]対プラセボの23[14.3%])、及びめまい(33[10.2%]対プラセボの13[8.1%])であった。
【0137】
【表21】
【0138】
【表22】
【0139】
【表23】
【0140】
【表24】
【0141】
【表25】
【0142】
【表26】
【0143】
【表27】
【0144】
【表28】
【0145】
【表29】
【0146】
【表30】
【0147】
【表31】
【0148】
治験全体の実治療期間中に、合計36例(リキシセナチド群の27例及びプラセボ群の9例)の患者が、「症候性低血糖症」について前指定AE用紙でTEAEを報告した。それらの中で、プラセボ群の7例(4.3%)と比較して、リキシセナチド群の23例(7.1%)は、プロトコル規定に従った症候性低血糖症を有した(表21)。症候性低血糖症の事象はいずれも強度が重度ではなかった。残りの6例(リキシセナチド群の4例及びプラセボ群の2例)における事象は、関連するグルコース値が≧60mg/dLであるか又は症状が報告されなかったため、プロトコル規定の症候性低血糖症定義に合致しなかっ
た。
【0149】
リキシセナチド群の22例(6.8%)の患者及びプラセボ群の8例(5.0%)の患者は、注射部位反応AEを経験した(表22)。注射部位反応AEは、治験責任医師が報告した用語からコード化されたPT又はアレルギー反応判定後のARAC診断からのPTの何れかにおいて、用語の「注射部位」を検索することによって確認された。これらの注射部位反応事象はいずれも強度が重大若しくは重度ではない、又はIP中止に至らなかった。
【0150】
治験責任医師によって、39人の患者で合計56の疑わしいアレルギー事象が報告され、治験全体の実治療期間中に判定するためにARACに送られた。これらのうち、12人の患者(リキシセナチド群の9例[2.8%]及びプラセボ群の3例[1.9%])の19の事象は、ARACによって、リキシセナチド群の3例の5つの事象(アレルギー性皮膚炎を持つ1例、蕁麻疹を持つ1例、並びに血管性浮腫、アナフィラキシー反応及びアレルギー性結膜炎を持つ1例)を含むアレルギー反応として判定され、おそらくIPに関連すると判断を下された(表23)。
【0151】
・患者124713001(リキシセナチド群): 蕁麻疹及び複合アレルギー、同様に掻痒、の病歴を持ち、IP開始後258日(07NOV2009)に、軽度の強度の「針由来のみみず腫れ(WELT FROM NEEDLE)」(PTにコードされた「注射部位蕁麻疹」)の非重篤なTEAEを経験した。一切の矯正治療は行わず、7日後に事象は回復した。事象は、IPに関連するとは考えられなかった。IP摂取の開始後264日から368日までの間に、患者は断続的に1日間のIP投与を停止していた。369日から386日まで、患者は、IPを投与しなかった。387日から393日まで、患者は再度、20μgのIPを毎日注射した。次に、再度、IPの投与は2日間止められ、396日に最終回が投与された。IPは、IP投与開始後396日に、軽度の「治験投薬再開後再発したみみず腫れ(REOCCURING WELTS AFTER RESTARTING STUDY MEDICATION)」(PTにコードされた「蕁麻疹」)の重篤でないTEAEのため、永及的に停止された。この事象は、IPに関係すると考えられた。事象は、何ら矯正治療を行うこと無しに、最終のIP投与後11日に解消した。両者の事象は判定のためにARACに送られたが、第2の事象だけが、ARACによって恐らくIPに関連したアレルギー反応の蕁麻疹(じんま疹)であると判断を下された。
【0152】
・患者642701006(リキシセナチド群):アレルギーの既往の無いこの患者は、IP開始後163日(01OCT2009)に軽度の強度の「アレルギー(ALLERGY)」(PTにコードされた「過敏症」)の重篤でないTEAEを経験した。IP注射30分後に、患者は全身的な掻痒及び眼の発赤を訴え、それは治療することなく自然に消失した。事象は同日に解決した。IPの開始後169日に、中等度の強度の「アレルギー性皮膚炎(ALLERGIC DERMATITIS)」(PTにコードされた「アレルギー性皮膚炎」)の重篤でないTEAEが報告された。IPの投与後25分に、患者は、全身的な掻痒、眼及び舌の腫脹、並びに注射部位の腫脹を訴えた。その事象は同日に解決した。IPの開始後169日に経口用ロラタジン(loratadine)を開始し、矯正治療として7日間投与した。IPの開始後170日に、中等度の強度のアレルギー性皮膚炎(PTにコードされた「アレルギー性皮膚炎」)の重篤でない別のTEAEが報告され、そして同日に解決した。IP投与の直後、患者は、注射部位の腫脹、全身のかゆみ、全身性激発、眼及び舌の腫脹、吐き気を訴えた。3つの事象は全てIPに関係すると考えられ、IPは、170日後の第3の事象のため永久的に中止した。3つの事象は、ARACによっておそらくIPに関連したアレルギー反応(それぞれ、アレルギー性結膜炎、血管性浮腫及びアナフィラキシー反応)と判断を下された。
【0153】
・患者840864001(リキシセナチド群):アレルギー性鼻炎、花粉アレルギー、ほこりアレルギー、腫脹(血管性浮腫)、薬物アレルギー、激発及び皮膚炎の病歴を持ち、IP投与開始後3日目に中等度の強度の「両腕及び腹部の皮膚炎(DERMATITIS ON BILATERAL ARMS AND ABDOMEN)」(PTにコードされた「皮膚炎」)の重篤でないTAEAを経験した。矯正治療として、クリンダマイシンを3日間投与した。IP投与は、一時的にIP投与開始後5日から8日までの間停止した。9日から13日までのIPによる再挑戦は、腹壁を悪化させた。事象は、IPに関連すると考えられ、IPは、13日後永久的に中止した。事象は、IPの永久的中止後12日(21Dec2009)に解決した。この事象は、ARACによって、おそらくIPに関連したアレルギー反応(アレルギー性皮膚炎)であると判断を下された。
【0154】
プラセボ群では、おそらくIPに関連するとしてARACによって判断を下された事象は無かった。
【0155】
プロトコルによれば、繰り返し測定で確認されたアミラーゼ及び/又はリパーゼの正常範囲の上限値(ULN)の2倍を上回る如何なる増加も、モニターし、「疑わしい膵炎」用の前指定AE用紙に記載されることになっている。治験全体の実治療期間中に、リキシセナチド群の2例(0.6%)の患者及びプラセボ群の2例(1.2%)の患者は、前指定AE用紙でTEAEを報告した(表24)。膵炎の症例は、診断又は報告されなかった。
【0156】
実治療期間中のリパーゼ又はアミラーゼの少なくとも1つの値≧3ULNを有した患者は(表25)に要約した。合計7人の患者が、リパーゼの増加(≧3ULN)を経験した:リキシセナチド群で5例[1.6%]、プラセボ群で2例[1.3%]。高いアミラーゼ≧3ULNを有する患者は無かった。
【0157】
プロトコルによれば、繰り返し測定で確認された如何なるカルシトニン値≧20pg/mLも、モニターし、「カルシトニンの増加≧20pg/mL」用の前指定AE用紙に記載されることになっている。治験全体の実治療期間中に、リキシセナチド群の9例(2.8%)の患者及びプラセボ群の4例(2.5%)の患者は、前指定AE用紙に血中カルシトニンの増加を報告した(表26)。リキシセナチド群の9例中の8人の患者はカルシトニン値≧20だが<50ng/Lを有し、そして1人の患者はカルシトニン値≧50ng/Lを有したが、一方プラセボ群では4例中3人の患者はカルシトニン値≧20だが<50ng/Lを有し、そして1人の患者はカルシトニン値≧50ng/Lを有した。リキシセナチド群のさらに1人の患者は、「カルシトニンの増加≧20pg/mL」用の前指定AE用紙に、カルシトニン値≧20だが<50ng/Lの治療後AEを報告した。リキシセナチド群の2例及びプラセボ群の1人の患者は、PTにコードされた「甲状腺新生物」のAEを報告した。
【0158】
・患者642706001(リキシセナチド群):非喫煙者、甲状腺疾患の病歴及び腎不全なし、IPの最終投与後24日に中等度の強度の重篤でない有害事象「甲状腺左葉結節(LEFT THYROID LOBE NODULE)」を経験した。甲状腺の薬物治療は施されなかった。その事象は、IPに関係ないと考えられた。来院15、IP開始後255日に、初めてカルシトニンを測定し、16.4ng/Lであった。IPの最終投与日、カルシトニンは22.2ng/Lであり、1週間後の再測定は18.9ng/Lであった。
【0159】
・患者840738004(リキシセナチド群):35歳の元喫煙者、甲状腺疾患の病歴及び腎不全なし、IPの初回摂取後39日に中等度の強度の「6mmの甲状腺結節左葉(6 mm THYROID NODULE LEFT LOBE)」の重篤でないTEAEを経験した。甲状腺の薬物治療は施されなかった。IPの初回摂取後177日の甲状腺の超音波により、左葉に7×3mmの結節を確認した。IP摂取開始時の最初のカルシトニンは19.7ng/Lであった。IPの初回摂取後262日に、カルシトニン値が20.1ng/Lであったため、中等度の強度の「カルシトニン上昇(ELEVATED CALCITONIN)」の重篤でないTEAEが、カルシトニン上昇用の特定のページに報告された。「カルシトニン上昇」の事象は、IPの初回摂取後376日に治療することなく解決した。9日前に、カルシトニンは16.3ng/Lであった。IP摂取の最終日のカルシトニンは、19.4ng/Lであった。両者の事象は、IPに関係ないと考えられた。
【0160】
治験全体の実治療期間中に少なくとも1つの血清カルシトニン測定値を持つ患者は、ベースラインのカルシトニンレベルの所定の4つの分類に従って表27にまとめてある。合計17人の患者は、治験全体の実治療期間中に、カルシトニン値≧20ng/Lを有した:リキシセナチド群の11例(3.7%)、プラセボ群の6例(4.2%)。彼らのうち、13例(リキシセナチドの9例及びプラセボの4例)は、上記の前指定AE用紙でTEAEを報告した。各治療群の2例は、治験全体の実治療期間中に少なくとも1つのカルシトニン値≧20ng/Lを有したが、前指定AE用紙でTEAEを報告しなかった。複数の≧20だが<50ng/L値を有したプラセボ群の1人の患者について、これは測定が再試験を要求したプロトコル改訂4以前に行われたためであった。他の3人の患者について、これは未確認のカルシトニン上昇が理由であった:各群の1人の患者は≧20だが<50ng/Lの単一の値を有し、リキシセナチド群の1例は≧50ng/Lの単一の値を有したが、彼らの他の前及び/又は後の測定値は<20ng/Lであった。カルシトニン測定は、ほとんどの患者がすでにこの治験で無作為化された後、修正プロトコルに導入された。それ故、ほとんどの患者のベースラインカルシトニン値は利用できなかった。
【0161】
プラセボ群の1例及びリキシセナチド群の2人の患者は、カルシトニン値>50ng/Lを有した(表27)。
【0162】
・患者840782004(リキシセナチド群): 非喫煙者、甲状腺疾患の病歴及び腎不全なし、初回のIP投与日(03AUG2009)のカルシトニンは37.8ng/Lであり、中等度の強度の「カルシトニン上昇(CALCITONIN ELEVATION)」の重篤でないTEAEが1日遅れて報告された。IPは継続した。矯正治療は行われなかった。甲状腺超音波検査は実施しなかった。事象は、IPに関連すると考えられた。治験期間中のさらなるカルシトニン値は64.2、19.3、50、36.5であり、IP開始後260日(19APR2010)の値は29.6ng/Lであった。IPの永久中止(有効性の欠如のため)後43日(24AUG2010)のカルシトニンは、48.1ng/Lであった。
【0163】
・患者040702004(リキシセナチド群):研究期間中の1回の来院時に104ng/Lのカルシトニン値を有した。14日後の再検査では、カルシトニンは3ng/Lであった。研究期間中の初期及び後期のすべての来院におけるカルシトニン値は、<0.6ng/Lと3ng/Lの間だったので、カルシトニンに言及するTEAEの報告は無く、そしてさらなる甲状腺の検査は行なわれなかった。
【0164】
【表32】
【0165】
【表33】
【0166】
【表34】
【0167】
【表35】
【0168】
【表36】
【0169】
【表37】
【0170】
【表38】
【0171】
【表39】
【0172】
【表40】
【0173】
7.付録
【表41】
【0174】
【表42】
【0175】
【表43】
【0176】
【表44】
【0177】
【表45】
【0178】
【表46】
【0179】
【表47】
【0180】
【表48】
【0181】
【表49】
【0182】
【表50】
【0183】
【表51】
【0184】
【表52】
【0185】
【表53】
【0186】
【表54】