(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタ材に対して前記集塵電極が設けられた面とは反対の面側に、前記フィルタ材から離隔して設置され、電圧が印加される電界形成用電極を更に備える請求項4に記載の集塵装置。
ガスが導入される入口部を有するケーシングと、前記ケーシング内に設置され、トゲ状の放電トゲ及び前記放電トゲを支持する線状部材の取付枠を有し電圧が印加される放電電極と、板状部材を有し前記ケーシング内において前記放電電極に対向して設置される集塵電極とを備え、前記取付枠は、前記入口部のガス流れに対して傾斜しており、二つの前記取付枠が、前記ガス流れの下流側で互いに接続されて、高圧電源と接続された電極支持材上に自立され、二つの前記取付枠の間において、前記ガス流れの上流側が前記ガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されている集塵装置を用いて、粒子状物質を捕集する集塵方法。
【背景技術】
【0002】
石炭焚きや重油焚きの発電プラントや焼却炉等の産業用燃焼設備では、燃焼によってダスト(例えば粒子状物質)やSOxを含む排ガスが生成される。これらのダストやSOxを除去してから排ガスを大気に排出するため、燃焼設備の下流側の煙道に排ガス処理設備が設置される。
【0003】
排ガス処理設備には、湿式脱硫装置や集塵装置などが設けられる。湿式脱硫装置は、例えば酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)を吸収材として使用し、噴霧スプレーによって吸収材を排ガスに向けて供給する。SOxが吸収材に吸着することによって、排ガスからSOxが除去される。
【0004】
集塵装置は、ダストやミストを除去するため、粒子状物質を帯電させる放電電極と、放電電極に対向して配置される集塵電極などを備える。放電電極でコロナ放電が生じることによって、排ガス中に含まれる粒子状物質は、イオン化する。そして、イオン化した粒子状物質は、集塵電極に捕集される。
特許文献1では、粒子状物質を確実に捕集するため、イオン風によってケーシング中のガス流れを横切る方向へ粒子状物質を加速し、イオン風が通過可能な所定の開口率を有する集塵電極で粒子状物質を捕集する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
集塵装置は、放電電極や集塵電極を保持する構造体が必要になるため、構造体が大掛かりになる場合もあり、集塵装置全体が大型化する。また、集塵装置のガス流入部において、流速が速くなり偏流が発生することで性能が低下する。
【0007】
また、集塵電極は、ダストの詰まりによる差圧の回復や付着した腐食性の硫酸ミストに対する腐食対策を目的として、水による洗浄が行われる。集塵装置の集塵電極について、所定の開口率を有する金網を使用した場合、スプレーノズルを用いて水を噴霧すると、放電電極と集塵電極の間に液滴が存在することになる。その結果、コロナ放電の絶縁耐圧が極端に低下して火花放電を誘発し、運転電圧が降下して捕集効率が悪化する。
【0008】
集塵電極の上部から電極表面に液膜が形成されるように水を流す場合、放電空間に液滴を存在させることなく洗浄が可能になる。しかし、集塵電極が金網のように所定の開口率を有する場合、液膜が広がらず、金網の線に沿って線状に流れてしまう。したがって、金網に水を流す場合、集塵電極が平板である例と比べて、電極表面上に液膜を均一に形成することが難しく、集塵電極が腐食してしまう。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、装置全体の容量をコンパクトにし、捕集効率を高めることが可能な集塵装置、集塵システム及び集塵方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る集塵装置は、ガスが導入される入口部を有するケーシングと、前記ケーシング内に設置され、トゲ状の放電トゲ及び前記放電トゲを支持する取付枠を有し、電圧が印加される放電電極と、板状部材を有し、前記ケーシング内において前記放電電極に対向して設置される集塵電極と、を備え、前記取付枠は、前記入口部のガス流れに対して傾斜しており、二つの前記取付枠が、前記ガス流れの下流側で互いに接続され、二つの前記取付枠の間において、前記ガス流れの上流側が前記ガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されている。
【0011】
この構成によれば、ケーシングの入口部から例えば粒子状物質を含む排ガスが導入されるとき、放電電極でコロナ放電が生じることによって、排ガス中に含まれる粒子状物質は、イオン化し、イオン化した粒子状物質は、集塵電極に捕集される。また、二つの放電電極の取付枠が、ガス流れの下流側で互いに接続され、ガス流れの上流側がガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されていることから、取付枠同士の接続部分を上方に設ける場合、放電電極は下部からの支持のみで自立可能であり、上部における支持が不要である。反対に、取付枠同士の接続部分を下方に設ける場合、取付枠が互いに接続され、断面形状が保持されるため、下部における支持が不要である。また、放電電極は、ガス流れの流れ方向に対して斜めであり、ガス流れの上流側が広いので、ガス流入部における流速の上昇を低減し、偏流の発生を抑制することができる。ここで、集塵電極の板状部材とは、例えば、金網、パンチングメタル等の開口部が形成され、導電性を有する部材である。
【0012】
上記発明において、前記集塵電極は、前記板状部材が前記入口部のガス流れに対して傾斜しており、二つの前記集塵電極が、前記ガス流れの下流側で互いに接続され、前記ガス流れの上流側が前記ガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されてもよい。
【0013】
この構成によれば、集塵電極の板状部材が入口部のガス流れに対して傾斜していることから、ガス流れの上流側と下流側に関わらず、イオン化した粒子状物質が集塵電極を確実に通過する。
二つの集塵電極が、ガス流れの下流側で互いに接続され、ガス流れの上流側がガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されていることから、集塵電極を支持する構造を低減又は省略できる。
【0014】
上記発明において、前記集塵電極の前記板状部材に沿って設けられ、水を噴霧する複数の水噴霧部と、前記板状部材に沿って前記水噴霧部の周囲に設けられ、前記水噴霧部から噴霧された前記水を受けて、前記板状部材に向けて前記水を流す流水板とを更に備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、複数の水噴霧部から噴霧された水が、流水板に当たって拡散し、その後、集塵電極の板状部材に向かって流れる。したがって、水噴霧部から直接集塵電極の板状部材に向けて水を噴霧する場合に比べて、集塵電極の板状部材の表面上に均一に水を流して液膜を形成することができ、集塵電極の腐食を防止できる。
なお、平板における板状部材側の端部は、上方又は下方に曲げ加工されていてもよい。これにより、集塵電極の板状部材に向かって、水をより均一に流すことができる。また、水噴霧部から噴霧される水の方向は、上方、下方又は水平方向であり、水噴霧部に設けられる孔の列数は、1列又は複数列である。
【0016】
上記発明において、前記集塵電極に対して前記放電電極が設けられた面とは反対の面側に設置されたフィルタ材を更に備えてもよい。
この構成によれば、フィルタ材が更に設けられることで、全体の捕集効率を向上させることができる。
【0017】
上記発明において、前記フィルタ材に対して前記集塵電極が設けられた面とは反対の面側に、前記フィルタ材から離隔して設置され、電圧が印加される電界形成用電極を更に備えてもよい。
この構成によれば、電界形成用電極がさらに設けられることで、フィルタ材内に電場が形成され、静電気力によって、帯電した粒子状物質が捕集され、全体の捕集効率を向上させることができる。
【0018】
上記発明において、前記放電電極が前記集塵電極の両面側に設置されてもよい。
この構成によれば、集塵電極の両面側に放電空間が形成されるため、捕集効率を向上させることができる。
【0019】
本発明に係る集塵システムは、上述の集塵装置がガス流れに沿って直列に複数段設置される。
この構成によれば、ガス流れに沿って直列に複数段の集塵装置が設置されるため、捕集効率を向上させることができる。
【0020】
本発明に係る集塵装置は、電圧が印加される放電電極と、金網によって形成された板状部材を有し、前記放電電極に対向して設置される集塵電極と、前記集塵電極の前記板状部材に沿って設けられ、水を噴霧する複数の水噴霧部と、前記板状部材に沿って前記水噴霧部の周囲に設けられ、前記水噴霧部から噴霧された前記水を受けて、前記板状部材に向けて前記水を流す流水板とを備える。
【0021】
本発明に係る集塵方法は、ガスが導入される入口部を有するケーシングと、前記ケーシング内に設置され、トゲ状の放電トゲ及び前記放電トゲを支持する取付枠を有し、電圧が印加される放電電極と、板状部材を有し、前記ケーシング内において前記放電電極に対向して設置される集塵電極とを備え、前記取付枠は、前記入口部のガス流れに対して傾斜しており、二つの前記取付枠が、前記ガス流れの下流側で互いに荷重を支持し、二つの前記取付枠の間において、前記ガス流れの上流側が前記ガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されている集塵装置を用いて、粒子状物質を捕集する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、装置全体の容量をコンパクトにし、捕集効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る集塵装置を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る集塵装置の放電電極と集塵電極を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る集塵装置の第1の変形例を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る集塵装置の第2の変形例を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る集塵装置の第3の変形例を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る集塵装置の第4の変形例を示す縦断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る集塵装置の第5の変形例を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る集塵装置の水洗浄部を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る集塵装置の水洗浄部を示す正面図である。
【
図10A】本発明の一実施形態に係る集塵装置の水洗浄部の平板の実施例を示す縦断面図である。
【
図10B】本発明の一実施形態に係る集塵装置の水洗浄部の平板の実施例を示す縦断面図である。
【
図10C】本発明の一実施形態に係る集塵装置の水洗浄部の平板の実施例を示す縦断面図である。
【
図10D】本発明の一実施形態に係る集塵装置の水洗浄部の平板の実施例を示す縦断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る集塵装置の水洗浄部の第1の変形例を示す縦断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る集塵装置の水洗浄部の第2の変形例を示す縦断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る集塵装置の水洗浄部の第3の変形例を示す縦断面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る集塵装置の第6の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る集塵装置1の構成について説明する。
本実施形態に係る集塵装置1は、例えば、石炭焚きや重油焚きの発電プラントや焼却炉等の産業用燃焼設備の下流側の煙道内に設けられる排ガス処理設備に設置される。また、集塵装置1は、産業用燃焼設備以外に、空気浄化設備用フィルタ(例えば、クリーンルーム用空調フィルタ、ウィルス除去用フィルタ等)等にも使用できる。
【0025】
集塵装置1は、ダストやミスト等の粒子状物質を除去するため、粒子状物質を帯電させる放電電極2と、放電電極2に対向して配置される集塵電極3などを備える。放電電極2及び集塵電極3は、ケーシング4内に設置される。
【0026】
放電電極2は、取付枠5と放電トゲ18を有する。放電トゲ18は、取付枠5に設置され、取付枠5から集塵電極3に向かってトゲ状に設置される。
取付枠5は、線状部材であり、入口部のガス流れに対して傾斜している。ここで、集塵装置1のガス流れの上流部が重力方向下方に位置し、ガス流れの下流側が重力方向上方に位置する。取付枠5は、二つの取付枠5A,5Bを組み合わせて電極支持材14上に自立している。すなわち、二つの取付枠5A,5Bが、ガス流れの下流側で互いに荷重を支持し、ガス流れの上流側がガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されている。例えば、二つの取付枠5A,5Bは、空塔速度が1m/s〜4m/sとなるように、ガス流れ上流側の間隔を広げて設置される。
図1及び
図2に示す例では、複数の取付枠5A,5Bを組み合わせて配置した形状が三角柱であり、底面部がガス流れの上流側であって開口し、側面に取付枠5A,5Bが設けられる。
【0027】
集塵電極3は、金網等によって形成された板状部材6を有し、放電電極2に対向して設置される。集塵電極3の板状部材6は、開口部が形成された導電性を有する部材であり、例えば、金網、パンチングメタル等である。
集塵電極3は、板状部材6が入口部のガス流れに対して傾斜している。集塵電極3は、2枚の板状部材6を組み合わせて電極支持材14上に自立している。2枚の板状部材6が、ガス流れの下流側で互いに荷重を支持し、ガス流れの上流側がガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されている。
集塵電極3は、放電電極2の上方に位置して、放電電極2を覆うように設置されているが、放電電極2と集塵電極3は互いに離隔され、電気的に絶縁されている。
【0028】
電極支持材14は、ケーシング4を貫通し、碍子室17に収容された碍子16と接続される。ケーシング4内を流れるガスが漏れないように、電極支持材14は、ケーシング4の外部にて、例えば筒状部材20で覆われており、筒状部材20の端部は碍子室17によって塞がれる。
【0029】
放電電極2は、ケーシング4に固定された碍子16と、電極支持材14とを介して高圧電源(図示せず。)と接続される。放電電極2が印加されることによって、放電電極2でコロナ放電が生じる。コロナ放電によって、排ガス中に含まれる粒子状物質は、イオン化する。そして、イオン化した粒子状物質は、集塵電極3に捕集される。
【0030】
図1では、集塵装置1において、フィルタ材7が設けられる例について示しているが、フィルタ材7が設置されず集塵電極3のみが設置されてもよい。しかし、集塵装置1は、
図1に示すように、集塵電極3に対して放電電極2が設けられた面とは反対の面側に設置されたフィルタ材7を更に備えることが望ましい。フィルタ材7は、例えば中性能フィルタ等である。フィルタ材7が更に設けられることで、集塵装置1全体の捕集効率を向上させることができる。なお、フィルタ材7は金網より目の細かい仕様であることが望ましい。フィルタ材7の材質は特に限定しない。
【0031】
本実施形態によれば、ケーシング4の入口部から例えば粒子状物質を含む排ガスが導入されるとき、放電電極2でコロナ放電が生じることによって、排ガス中に含まれる粒子状物質は、イオン化し、イオン化した粒子状物質は、集塵電極3に捕集される。また、二つの放電電極2の取付枠5が、ガス流れの下流側で互いに荷重を支持し、ガス流れの上流側がガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されていることから、放電電極2は下部からの支持のみで自立可能であり、上部における支持が不要である。さらに、ガス流れの流れ方向に対して斜めであり、ガス流れの上流側が広いので、ガス流入部における流速の上昇を低減することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、集塵電極3の板状部材6が入口部のガス流れに対して傾斜していることから、ガス流れの上流側と下流側に関わらず、イオン化した粒子状物質が集塵電極3を確実に通過する。
集塵電極3の2枚の板状部材6が、ガス流れの下流側で互いに荷重を支持し、ガス流れの上流側がガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されていることから、板状部材6は下部からの支持のみで自立可能であり、上部における支持が不要である。さらに、ガス流れの流れ方向に対して斜めであり、ガス流れの上流側が広いので、ガス流入部における流速の上昇を低減することができる。
【0033】
なお、集塵電極3のガス流れの上流側端部は、板状部材22によって、集塵電極3とケーシング4との間、又は、隣り合う集塵電極3の間が結合される。これにより、集塵電極3とケーシング4との間、又は、隣り合う集塵電極3の間が板状部材22によって塞がれて、ケーシング4内のガス流れは、ガス流れの下流側で組み合わされた2枚の板状部材6の間を流れるようになり、他の部分にガスが流れることを防止できる。
【0034】
なお、上述した実施形態では、放電電極2の取付枠5と、集塵電極3の板状部材6の縦断面の形状が三角形である場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、放電電極2の取付枠5と、集塵電極3の板状部材6の縦断面の形状は、三角形以外の多角形(例えば、台形、5角形など)でもよい。
【0035】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る集塵装置1の変形例について説明する。
上記実施形態では、フィルタ材7のガス流れ下流側に、他の電極等が設置されない例について説明したが、本変形例では、電界形成用電極24が、フィルタ材7に対して集塵電極3が設けられた面とは反対の面側に設置される。電界形成用電極24は、フィルタ材7から離隔して設置され、電圧が印加される。なお、電界形成用電極24の電源は、放電電極2と同一の電源を使用してもよい。
【0036】
電界形成用電極24は、放電電極2の取付枠5と同様の線状部材である。電界形成用電極24は放電電極2と異なり、トゲ状の放電トゲは設置されない。電界形成用電極24は、フィルタ材7に対向し、入口部のガス流れに対して傾斜している。電界形成用電極24は、二つの枠24A,24Bを組み合わせて電極支持材25から吊り下げられている。すなわち、二つの枠24A,24Bは、ガス流れの上流側で互いに結合され、ガス流れの下流側で電極支持材25と結合されている。
【0037】
本変形例では、電界形成用電極24に電圧が印加されることによって、フィルタ材7内に電場が形成されるため、帯電した粒子状物質が静電気力で効率良くフィルタ材7で捕集される。一方、電界形成用電極24の電源がOFFであったり、電界形成用電極24が設置されない場合、フィルタ材7には、帯電した粒子状物質によって誘起された鏡像電荷により、静電気的な力が作用するが、その力は、電界形成用電極24に電圧が印加される場合に比べて小さい。したがって、本変形例によれば、集塵装置1の捕集効率を向上させることができる。なお、このように電界形成用電極24が設けられる場合、フィルタ材7の材質は非導電性であることが望ましい。
【0038】
また、上述した実施形態では、放電電極2が集塵電極3の片側下方に設置される場合について説明したが、本発明は、この例に限定されない。例えば、
図4に示すように、フィルタ材7が設置されないとき、放電電極2は、集塵電極3の上方と下方の両面側に設置されてもよい。集塵電極3の上方に設置される放電電極2も、上述した下方に設置される放電電極2と同様に、取付枠5と放電トゲ18を有する。上方に設置される放電電極2は、二つの取付枠5C,5Dを組み合わせて電極支持材26から吊り下げられている。すなわち、二つの取付枠5C,5Dは、ガス流れの上流側で互いに結合されている。放電電極2が集塵電極3の両面側に設置されることにより、集塵電極3の両面側に放電空間が形成されるため、捕集効率を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る集塵装置1は、排ガス処理設備において1段のみ設置されてもよいし、ガス流れに沿って直列に複数段設置されてもよい。集塵装置1が複数段設置される集塵システムでは、ガス流れに沿って直列に複数段の集塵装置1が設置されるため、捕集効率を向上させることができる。
【0040】
更に、本実施形態に係る集塵装置1は、放電電極2と集塵電極3の構成が、上述した形状を有する場合に限られない。すなわち、
図5及び
図6に示すように、放電電極2と集塵電極3は、ガス流れ方向に対して斜めの場合に限定されず、ガス流れ方向に対して平行に設置されてもよい。そして、
図5に示すように、フィルタ材7が設けられて、集塵電極3よりもガス流れの下流側に電界形成用電極24が設けられてもよいし、
図6に示すように、集塵電極3よりもガス流れの下流側に放電電極2が設置されてもよい。
【0041】
なお、
図1に示した実施形態では、取付枠5と板状部材6が集塵装置1の設置面に対して垂直方向に自立している例について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、取付枠5と板状部材6の長手方向は、集塵装置1の設置面に対して平行方向、すなわち水平方向に設置されて、電極支持材14から片持ちに固定されてもよい。このとき、ケーシング4内のガス流れは、水平流である。
【0042】
また、
図7に示すように、集塵装置1のガス流れの上流部が重力方向上方に位置し、ガス流れの下流側が重力方向下方に位置するようにしてもよい。このとき、取付枠5は、二つの取付枠5A,5Bを組み合わせて電極支持材27から吊り下げられ、ガス流れの上流側がガス流れの下流側に比べ広くなるように設置されている。すなわち、二つの取付枠5A,5Bが、ガス流れの下流側で互いに接続され、断面形状が保持されるため、下部における支持が不要である。さらに、集塵電極3の2枚の板状部材6も、ガス流れの下流側で互いに接続され、下部における支持が不要である。
【0043】
なお、
図7に示すフィルタ材7には、落下防止のため、背面側に金網等のサポート材が設けられる。また、
図7では、フィルタ材7が設けられる例について説明したが、本変形例は、さらに、上述した電界形成用電極24が設置される例や、フィルタ材7が設置されず集塵電極3のみが設置される例、又は、フィルタ材7が設置されず集塵電極3の背面側にも放電電極5が設置される例にも適用可能である。
【0044】
[水洗浄部について]
次に、
図8〜
図13を参照して、本発明の一実施形態に係る集塵装置1の水洗浄部8について説明する。
水洗浄部8は、
図8及び
図9に示すように、集塵電極3の板状部材6に沿って設けられ、水を下方に噴霧する複数の孔9aを有する水噴霧部9と、板状部材6に沿って水噴霧部9の下部に設けられ、水噴霧部9から噴霧された水を受けて、板状部材6に向けて水を流す平板10とを更に備える。
【0045】
水噴霧部9は、例えば管状部材であり、板状部材6の上部に設置される。水噴霧部9の管壁には、管軸方向に沿って複数の孔9aが形成されている。孔9aかは、水が下方に向けて噴霧される。
【0046】
本実施形態に係る水洗浄部8によれば、水噴霧部9の複数の孔9aから下方に噴霧された水が、平板10に当たって拡散し、その後、集塵電極3の板状部材6に向かって流れる。したがって、水噴霧部9から直接集塵電極3の板状部材6に向けて水を噴霧する場合に比べて、集塵電極3の板状部材6の表面上に均一に水を流して液膜を形成することができ、集塵電極3を均一に洗浄できる。
【0047】
なお、平板10における板状部材6側の端部10aは、
図8や
図10Aに示すように断面が直線のままでもよいし、
図10B〜
図10Dに示すように、板状部材6側の端部10aが下方又は上方に曲げ加工されていてもよい。
図10B、
図10Cは、下方へ折り曲げられた例であり、
図10Cは、折り曲げ部分にRが形成された例である。
図10Dは、上方へ折り曲げられ、堰が形成された例である。これにより、集塵電極3の板状部材6に向かって、水をより均一に流すことができる。
【0048】
また、
図8では、集塵電極3のうち片側の板状部材6の上部に水噴霧部9及び平板10が設置される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、
図11に示すように、集塵電極3の2枚の板状部材6の上部に共通して1本の水噴霧部9が設置されてもよい。この場合、平板10は、2枚の板状部材6に対応して、1本の水噴霧部9に2枚設置される。また、孔9aは、両方の平板10に対応して少なくとも2列で互いに平行に形成される。これにより、
図3及び
図4で示すように、集塵電極3の上方に電界形成用電極24又は放電電極2が設置される場合において、水噴霧部9と集塵電極3の上方に設置された電界形成用電極24又は放電電極2とを離隔することができ、水噴霧部9と電界形成用電極24又は放電電極2との間で放電が生じることを防止できる。
【0049】
また、
図12に示すように、集塵電極3の2枚の板状部材6の上部に共通して設置された1本の水噴霧部9に対応して、流水板31が設置されてもよい。流水板31は、水噴霧部9の上方に設けられ、上部が半円筒31aであり、下部が互いに平行な平板31bである。この水洗浄部8によれば、水噴霧部9の複数の孔9aから上方に噴霧された水が、流水板31の半円筒31aに当たって拡散し、その後、2枚の平板31bを流れて液膜が形成された後、集塵電極3の板状部材6に向かって流れる。その結果、上述した例と同様に、集塵電極3の板状部材6の表面上に均一に水を流して液膜を形成することができ、集塵電極3を均一に洗浄できる。また、水噴霧部9と集塵電極3の上方に設置された電界形成用電極24又は放電電極2とを離隔することができ、水噴霧部9と電界形成用電極24又は放電電極2との間で放電が生じることを防止できる。
【0050】
なお、
図12を用いて、上部2方向に水を噴霧する例について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、水噴霧部9に水平に2列の孔を設け、水平方向に水を噴霧してもよいし、水噴霧部9の最上部に孔を1列設け、真上の1方向のみに水を噴霧して液膜を形成するようにしてもよい。
また、流水板31は、
図13に示すように、上部が曲げ板31cで形成されてもよく、このとき、頂点部分に曲げ板31cの屈曲部分が位置するように設置される。
さらに、流水板31の2枚の平板31bは、集塵電極3に液膜を導くことができれば互いに平行である必要はなく、例えば末広がりに設けてもよい。また、平板31bの下端部を内側へ折り曲げる等の加工をしてもよい。
【0051】
なお、水洗浄部8は、放電電極2と集塵電極3の構成が、上述した形状を有する集塵装置1の場合に限られない。すなわち、
図5及び
図6に示すように、放電電極2と集塵電極3は、ガス流れ方向に対して斜めの場合に限定されず、ガス流れ方向に対して平行に設置されてもよい。このとき、水洗浄部8は、流水板31の2枚の平板31bの下端部が、互いに平行な2枚の集塵電極3の上端に位置するようにそれぞれ設置される。これにより、1枚の集塵電極3ごとに1本の水噴霧部9を設ける場合に比べて、水噴霧部9の設置本数を低減できる。また、流水板31は、ガス流れを遮断することができ、上流側から流れてくるガスを集塵電極3へ向かって流すことができる。
【0052】
また、水洗浄部8は、水噴霧をガス流れの方向の上流側から行うことによって、放電電極2も洗浄できるようにしてもよい。
【0053】
次に、集塵装置1の水洗浄部8の運転方法について説明する。
図1に示すように集塵電極2及び放電電極3が複数列設けられる場合、水洗浄は、例えば2列ごとに行う。なお、
図1では、フィルタ材7を洗浄するための水洗浄部11が更に設けられた例を示している。例えば、水洗浄部8A,8Bと水洗浄部11Aを同時に洗浄開始し、他は洗浄の洗浄部8,11を停止しておく。そして、水洗浄部8Aと水洗浄部11Aによる洗浄を停止し、次に、水洗浄部8B,8Cと水洗浄部11Bによる洗浄を開始する。このとき、他の洗浄部8,11は、停止したままである。その後、水洗浄部8Bと水洗浄部11Bによる洗浄を停止し、次に、水洗浄部8C,8Dと水洗浄部11Cを同時に洗浄開始する。この動作を繰り返し行うことで、集塵装置1全体の運転を停止する必要がない。また、水洗浄を全箇所で同時に行う場合に比べて集塵装置1の圧力損失を低減できる。
なお、水洗浄部11は、
図1では、2枚のフィルタ材7に対して一つ設けられる場合について図示しているが、水洗浄部11は、1枚のフィルタ材7に対して一つずつ設置されてもよい。
【0054】
なお、上述した実施形態に係る集塵装置1のケーシング4内は、隔壁等が設けられていないが、本発明はこの例に限定されない。例えば、集塵装置1は、
図14に示すように、内部において集塵電極2及び放電電極3の列ごとに隔壁で区切られた複数のダクト13を設置してもよい。ダクト13の出口には開閉可能なダンパー12が設置される。そして、集塵電極2及び放電電極3の洗浄時にダンパー12を閉動作する。ダンパー12が閉鎖されているとき、ガスは閉鎖されたダンパー12内の集塵電極2を通過しないため、閉鎖されたダンパー12内の集塵電極2の板状部材6の表面に対して、確実に液膜を形成できる。