特許第6367134号(P6367134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367134
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】レーダ装置及びレーダ信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20180723BHJP
   G01S 7/32 20060101ALI20180723BHJP
   G01S 7/295 20060101ALI20180723BHJP
   G01S 13/44 20060101ALI20180723BHJP
   G01S 13/28 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G01S13/90
   G01S7/32 220
   G01S7/295 220
   G01S13/44
   G01S13/28 200
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-26800(P2015-26800)
(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公開番号】特開2016-148642(P2016-148642A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
(72)【発明者】
【氏名】安達 正一郎
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−130950(JP,A)
【文献】 特開昭61−140883(JP,A)
【文献】 特開平10−078481(JP,A)
【文献】 米国特許第4527161(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42,
G01S 13/00−13/95,
CSDB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実開口アンテナの受信信号から取得される目標をレンジ及びドップラ周波数の両軸で追跡し、前記目標の画像中心を得てレンジ圧縮及びAZ圧縮することにより、レンジ−ドップラ周波数軸で目標を画像化するISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar:逆合成開口レーダ)方式のレーダ装置において、
前記実開口アンテナの受信信号から合成開口長に対するN(Nは1以上の自然数)ヒットのパルスを重複も含めてN2ヒットずつのM(Mは2以上の自然数)通りに分割する分割手段と、
前記分割された受信信号毎にドップラ処理とパルス圧縮処理を施し、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理によって複数の極値を持つレンジセルを検出し、検出したセルに対して、ドップラ軸上のΣ信号とΔ信号によるモノパルス処理によりドップラ周波数を算出し、レンジ軸上のΣ信号とΔ信号によるモノパルス処理によりレンジを算出して、M通りのレンジ−ドップラによる位相変化の近似曲線を算出するレンジ−ドップラモノパルス演算手段と、
前記近似曲線をもとにISAR処理のクロスレンジ圧縮のための参照信号を算出する参照信号算出手段と、
前記参照信号に基づいて前記受信信号のレンジ圧縮及びAZ圧縮を行って目標のISAR画像を生成する画像化手段と
を具備するレーダ装置。
【請求項2】
前記画像化手段は、前記AZ圧縮後にポーラフォーマット変換による画像化処理を行う請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
実開口アンテナの受信信号から取得される目標をレンジ及びドップラ周波数の両軸で追跡し、前記目標の画像中心を得てレンジ圧縮及びAZ圧縮することにより、レンジ−ドップラ周波数軸で目標を画像化するISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar:逆合成開口レーダ)方式のレーダ装置において、
前記実開口アンテナの受信信号から合成開口長に対するN(Nは1以上の自然数)ヒットのパルスを重複も含めてN2ヒットずつのM(Mは2以上の自然数)通りに分割する分割手段と、
前記分割された受信信号毎にドップラ処理とパルス圧縮処理を施し、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理によって複数の極値を持つレンジセルを検出し、検出したセルを中心に所定のセルを抽出し、ドップラ軸についての高分解能処理によりドップラ周波数を算出し、レンジ軸についての高分解能処理によりレンジを算出して、M通りのレンジ−ドップラによる位相変化の近似曲線を算出するレンジ−ドップラモノパルス演算手段と、
前記近似曲線をもとにISAR処理のクロスレンジ圧縮のための参照信号を算出する参照信号算出手段と、
前記参照信号に基づいて前記受信信号のレンジ圧縮及びAZ圧縮を行って目標のISAR画像を生成する画像化手段と
を具備するレーダ装置。
【請求項4】
前記画像化手段は、前記AZ圧縮後にポーラフォーマット変換による画像化処理を行う請求項3記載のレーダ装置。
【請求項5】
実開口アンテナの受信信号から取得される目標をレンジ及びドップラ周波数の両軸で追跡し、前記目標の画像中心を得てレンジ圧縮及びAZ圧縮することにより、レンジ−ドップラ周波数軸で目標を画像化するISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar:逆合成開口レーダ)方式のレーダ信号処理方法において、
前記実開口アンテナの受信信号から合成開口長に対するN(Nは1以上の自然数)ヒットのパルスを重複も含めてN2ヒットずつのM(Mは2以上の自然数)通りに分割し、
前記分割された受信信号毎にドップラ処理とパルス圧縮処理を施し、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理によって複数の極値を持つレンジセルを検出し、検出したセルに対して、ドップラ軸上のΣ信号とΔ信号によるモノパルス処理によりドップラ周波数を算出し、レンジ軸上のΣ信号とΔ信号によるモノパルス処理によりレンジを算出して、M通りのレンジ−ドップラによる位相変化の近似曲線を算出し、
前記近似曲線をもとにISAR処理のクロスレンジ圧縮のための参照信号を算出し、
前記参照信号に基づいて前記受信信号のレンジ圧縮及びAZ圧縮を行って目標のISAR画像を生成するレーダ信号処理方法。
【請求項6】
前記ISAR画像の生成は、前記AZ圧縮後にポーラフォーマット変換による画像化処理を行う請求項5記載のレーダ信号処理方法。
【請求項7】
実開口アンテナの受信信号から取得される目標をレンジ及びドップラ周波数の両軸で追跡し、前記目標の画像中心を得てレンジ圧縮及びAZ圧縮することにより、レンジ−ドップラ周波数軸で目標を画像化するISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar:逆合成開口レーダ)方式のレーダ信号処理方法において、
前記実開口アンテナの受信信号から合成開口長に対するN(Nは1以上の自然数)ヒットのパルスを重複も含めてN2ヒットずつのM(Mは2以上の自然数)通りに分割し、
前記分割された受信信号毎にドップラ処理とパルス圧縮処理を施し、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理によって複数の極値を持つレンジセルを検出し、検出したセルを中心に所定のセルを抽出し、ドップラ軸についての高分解能処理によりドップラ周波数を算出し、レンジ軸についての高分解能処理によりレンジを算出して、M通りのレンジ−ドップラによる位相変化の近似曲線を算出し、
前記近似曲線をもとにISAR処理のクロスレンジ圧縮のための参照信号を算出し、
前記参照信号に基づいて前記受信信号のレンジ圧縮及びAZ圧縮を行い目標のISAR画像を生成するレーダ信号処理方法。
【請求項8】
前記ISAR画像の生成は、前記AZ圧縮後にポーラフォーマット変換による画像化処理を行う請求項7記載のレーダ信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、レーダ装置及びレーダ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置にあっては、画像により目標を識別する方法として、目標の重心等をレンジ及びドップラの両軸で追跡して画像中心を取得し、レンジ圧縮及びAZ圧縮することにより、レンジ−ドップラ軸で目標を画像化するISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar:逆合成開口レーダ)処理が知られている(非特許文献1参照)。従来のISAR処理では、重心を算出する際に、レンジ−ドップラ周波数軸の分解能や精度が低いために、誤差が大きく、SN(信号電力/雑音電力)が低くなり、画像が劣化するという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】SAR方式(ISAR)、吉田、‘改定レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.280-283(1996)
【非特許文献2】SAR方式(レンジ圧縮)、大内、“リモートセンシングのための合成開口レーダの基礎”、東京電機大学出版局、pp.131-149(2003)
【非特許文献3】SAR方式(AZ圧縮)、大内、“リモートセンシングのための合成開口レーダの基礎”、東京電機大学出版局、pp.171-178(2003)
【非特許文献4】SAR処理方式(ポーラフォーマット変換再構成処理)、MEHRDAD SOUMEKH,“Synthetic Aperture Radar Signal Processing”, JOHN WILEY & SONS,INC.,pp.319-325(1999)
【非特許文献5】位相モノパルス(位相比較モノパルス)方式、電子情報通信学会、改訂レーダ技術、pp.262-264(1996)
【非特許文献6】振幅モノパルス(振幅比較モノパルス)方式、電子情報通信学会、改訂レーダ技術、pp.260-262(1996)
【非特許文献7】MUSIC、ESPRIT、菊間、アダプティブアンテナ技術、Ohmsha、pp.137-164(2003)
【非特許文献8】空間平均法、菊間、アレーアンテナによる適応信号処理、科学技術出版、pp.163-170,pp.336-337(1999)
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−271115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上述べたように、従来のレーダ装置に適用されるISAR処理では、重心を算出する際に、レンジ−ドップラ周波数軸の分解能や精度が低いために、誤差が大きく、SN(信号電力/雑音電力)が低くなり、画像が劣化するという課題があった。
【0006】
本実施形態は上記課題に鑑みなされたもので、目標重心等の代表点を高精度または高分解能に観測することができ、これによってSNが良好で、劣化の少ないISAR画像を得ることのできる軽減するレーダ装置とそのレーダ信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本実施形態は、実開口アンテナの受信信号から取得される目標をレンジ及びドップラ周波数の両軸で追跡し、前記目標の画像中心を得てレンジ圧縮及びAZ圧縮することにより、レンジ−ドップラ周波数軸で目標を画像化するISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar:逆合成開口レーダ)方式のレーダ装置において、分割手段により、前記実開口アンテナの受信信号から合成開口長に対するN(Nは1以上の自然数)ヒットのパルスを重複も含めてN2ヒットずつのM(Mは2以上の自然数)通りに分割し、レンジ−ドップラモノパルス演算手段により、前記分割された受信信号毎にドップラ処理とパルス圧縮処理を施し、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理によって複数の極値を持つレンジセルを検出し、検出したセルに対して、ドップラ軸上のΣ信号とΔ信号によるモノパルス処理によりドップラ周波数を算出し、レンジ軸上のΣ信号とΔ信号によるモノパルス処理によりレンジを算出して、M通りのレンジ−ドップラによる位相変化の近似曲線を算出し、参照信号算出手段により、前記近似曲線をもとにISAR処理のクロスレンジ圧縮のための参照信号を算出し、画像化手段により、前記参照信号に基づいて前記受信信号のレンジ圧縮及びAZ圧縮を行って目標のISAR画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図。
図2図1に示すレーダ装置において、モノパルス処理部の構成を示すブロック図。
図3図1に示すレーダ装置において、合成開口におけるISAR処理の概要を説明するための概念図。
図4図1に示すレーダ装置において、合成開口による取得データからPRI毎のデータ列を抽出する様子を示す図。
図5図1に示すレーダ装置において、参照信号として生成される近似曲線を示す図。
図6図1に示すレーダ装置において、誤差電圧とレンジとの関係を示す図。
図7図1に示すレーダ装置において、誤差電圧とドップラ周波数との関係を示す図。
図8図1に示すレーダ装置において、レンジ・測角値に基づく座標変換による画像変換の様子を示す図。
図9図1に示すレーダ装置において、SAR画像を取得する手順を示す図。
図10図1に示すレーダ装置において、ポーラフォーマット変換により格子点のデータを生成する様子を示す図。
図11】第2の実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図。
図12図11に示すレーダ装置において、高分解能処理部の構成を示すブロック図。
図13図11に示すレーダ装置において、MUSICスペクトルの算出方法を説明するための図。
図14図11に示すレーダ装置において、複数の目標信号間の平均化処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各実施形態の説明において、同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図1乃至図10を参照して、第1の実施形態に係るレーダ装置について説明する。
【0011】
図1は第1の実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。図1に示すレーダ装置において、アンテナ1は複数のアンテナ素子を配列して大開口アレイを形成してなるフェーズドアレイアンテナであり、送受信器2の送受信部21から特定の周期で繰り返し供給される特定周波数の送信パルス信号(以下、PRF(Pulse Repetition Frequency)信号)を指定方向に送出してその反射波を受信する。送受信器2は、送受信部21において、アンテナ1の複数のアンテナ素子でそれぞれ受信された信号をビーム制御部22からの指示に従って位相制御を施し合成することで、任意の方向に受信ビームを形成してPRF受信信号を取得する。ここで、ビーム制御部22は指定された目標方向の測角値に基づいてΣビーム、ΔAZビーム、ΔELビームを形成するように、送受信部21に対して各ビームに対応する位相制御を施す。これにより、送受信部21はΣ信号、ΔAZ信号、ΔEL信号を生成して信号処理器3の狭帯域処理部Aへ出力する。
【0012】
上記狭帯域処理部Aに入力されたΣ信号、ΔAZ信号、ΔEL信号は、それぞれの系統において、AD(Analog-Digital)変換部311,312,313で系統別にデジタル信号に変換される。デジタル化されたΣ信号、ΔAZ信号、ΔEL信号は、それぞれの系統において、データ抽出部321,322,323に送られる。データ抽出部321,322,323は、サンプリングレートを下げて処理規模を削減するために、入力されたΣ信号、ΔAZ信号、ΔEL信号を所定の周波数フィルタに通した後、PRI(Pulse Repetition Interval)内のデータをレンジセル単位で取得する。各データ抽出部321,322,323で得られたΣ、ΔAZ、ΔELそれぞれのレンジセル信号は、PRI軸FFT(Fast Fourier Transformation)処理部331,332,333によってPRI軸の周波数領域信号に変換された後、レンジ(時間)圧縮部341,342,343によってレンジ軸上でパルス圧縮されてレンジ圧縮信号となる。
【0013】
このうち、Σ系統のレンジ圧縮信号については、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理部35に送られ、そのCFAR処理によって複数の極値を持つレンジセルが検出される。ここで検出されたレンジセルに対し、スレショルド検出部36は、閾値以上の極値を持つレンジセルを検出してそのレンジ圧縮信号を出力する。また、ΔAZ系統、ΔEL系統のレンジ圧縮信号については、それぞれセル検出部371,372に送られ、それぞれΣ系統のスレショルド検出部36で検出されたレンジセルに対応するレンジセルの信号が抽出されて、Σ系統の検出セルの信号と共に測角部38に送られ、ここで目標方向の測角演算が行われる。測角部38で得られた測角値は、目標方向としてビーム制御部22に送られる。
【0014】
一方、上記AD変換部311でデジタル化されたΣ系統の受信信号は、広帯域処理部Bのデータ抽出部39に送られる。このデータ抽出部39では、目標重心等の代表点のドップラ−レンジを観測してビームを目標方向に指向させ、ドップラ−レンジの情報を基にして、AZ圧縮用の際の参照信号を生成するためのデータを抽出する。ここで抽出されたデータは、レンジ圧縮部3Aにてレンジ軸上でパルス圧縮される。このパルス圧縮信号は、AZ圧縮部3Bに送られ、レンジ・ドップラモノパルス演算部3C及び参照信号生成部3Dによって生成される参照信号に基づいてクロスレンジ圧縮(AZ圧縮)された後、ポーラフォーマット変換による画像化部3Eに送られる。画像化部3Eは、レンジ・クロスレンジ圧縮された受信信号に対して2次元FFT処理により周波数領域の信号に変換した後、ポーラフォーマット変換による画像処理を行い、2次元逆FFT処理により時間領域に信号に戻して画像化する。尚、画像化部3Eは、画像品質を向上する場合に用いればよく、省略可能である。
【0015】
ここで、上記レンジ・ドップラモノパルス処理部3Cは、具体的には図2に示すように構成される。まず、Σ系のPRI軸FFT処理部331の出力(Nバンク)は、スレッショルド検出部36の検出結果と共にバンク選定部3C1に入力される。バンク選定部3C1では、スレッショルド検出部36の検出結果に基づいて、最大値を含むバンクが選定される。選定されたバンクの信号はレンジ軸FFT処理部3C2によってレンジ軸上の周波数領域信号に変換されて乗算部3C3に送られる。一方、参照信号生成部3C4は、レンジ軸位相モノパルスで用いるΣ系列の参照信号(例えば線形チャープ信号)を生成する。この参照信号は参照信号FFT処理部3C5で周波数領域信号に変換された後、乗算部3C3に送られ、周波数領域でバンク信号と乗算される。
【0016】
次に、乗算部3C3の出力は、Σ用ウェイト乗算部3C6に送られ、サイドローブを低減したΣ信号を生成するためのΣ用ウェイトが乗算される。Σ用ウェイトが乗算されたΣ信号はΣ逆FFT処理部3C7で時間領域信号に変換されてレンジ軸モノパルス処理部3C8に送られる。また、乗算部3C3の出力は、Δ用ウェイト乗算部3C9に送られ、サイドローブを低減したΔ信号を生成するためのΔ用ウェイトが乗算される。Δ用ウェイトが乗算されたΔ信号はΔ逆FFT処理部3C10で時間領域信号に変換されてレンジ軸モノパルス演算部3C8に送られる。レンジ軸モノパルス演算部3C8は、時間軸上でΣ信号とΔ信号からレンジ軸位相モノパルスによる誤差信号を演算する。この誤差信号はレンジ算出部3C11によってレンジ軸に換算されて参照信号生成部3Dに出力される。
【0017】
一方、Σ系のデータ算出部321の出力PRI(Nヒット)はΔ用ウェイト乗算部3C12でΔ用ウェイトが乗算されてサイドローブが低減されたΔ信号となり、PRI軸FFT処理部3C13でPRI軸上で周波数領域信号に変換され、バンク選定部3C14において、スレッショルド検出部36の検出結果に基づいて最大値を含むΔ信号が選定される。選定されたΔ信号はレンジ圧縮部3C15にてレンジ軸上でパルス圧縮される。このパルス圧縮されたΔ信号は、Σ逆FFR処理部3C7からのΣ信号と共に周波数軸モノパルス部3C16に送られる。周波数軸モノパルス部3C16は、両者の周波数軸位相モノパルスによる誤差信号を演算する。この誤差信号はドップラ算出部3C17によってドップラ軸に換算されて参照信号生成部3Dに出力される。
【0018】
上記構成によるレーダ装置おいて、以下にその信号処理内容を説明する。
【0019】
第1の実施形態では、図3に示すように、搭載レーダによる実開口ビームが常に目標を照射するように制御して、図4に示すように、合成開口時間内でPRI間隔(PRI1〜PRIN)で送信したパルス毎に、PRI内のレンジセル単位でデータを取得し、CPI毎(CPI1〜CPIM)に繰り返し処理する。この取得データを用いてISAR処理を実施してISAR画像を得る。なお、図3は搭載レーダの場合の例であるが、ISAR画像を得られれば、レーダは固定した場合でもよい。
【0020】
図1に示したレーダ装置では、アンテナ1及び送受信器2により、ビーム制御により画像化したい範囲にビームを指向させ、その受信信号を信号処理器3に送る。この信号処理器3では、受信信号をAD変換によりデジタル信号に変換する(311〜313)。ビーム指向方向は、処理規模の小さい狭帯域処理により、目標方向を測角した方向とする。図1の狭帯域処理系統のΣ、ΔAZ及びΔELのAD変換後のデジタル信号を入力として、データ抽出より、サンプリングレートを下げるために、サンプリング周波数を満足するための所定の周波数でフィルタリングした後、サンプリングする(321〜323)。この信号をPRI軸のFFT処理により周波数領域に変換して(331〜333)、レンジ圧縮(パルス圧縮)し(341〜343)、Σ信号に関してはCFAR処理し(35)、スレショルド検出する(36)。この検出したセルに対応するΔAZとΔELのセルを抽出し(371,372)、検出されたΣ信号、抽出されたΔAZ及びΔEL信号を用いて測角する(38)。この測角値の方向にビームを指向制御する。
【0021】
次に、Σ系のPRI軸FFT出力を用いて、目標重心等の代表点のレンジ−ドップラを観測する処理を説明する。図3及び図4に示すように、合成開口のために取得したデータNallの中から、重複を含めてNヒットのPRIデータをPRI1〜PRINまで抽出してCPI(m)(m=1〜M)とすると、CPI毎に上述の処理を行う。このCPI毎に得られたレンジとドップラの観測値により、参照信号生成において、図5に示すように参照信号Ref(AZ圧縮用の参照信号)の近似曲線を算出する。これを定式化すると次の通りである。
【数1】
【0022】
【数2】
【0023】
ここで、本実施形態の主題である目標信号のレンジrとドップラfdの精度を向上する方式として、レンジ軸とドップラ軸でモノパルス処理を用いる方式(特許文献1参照)について述べる。
【0024】
Σ信号とΔ信号を生成するために、PRIデータ列に対するウェイトを用いる方法について説明する。図2を参照して、以下に一連の処理を示す。
【0025】
まず、Σ系のPRI軸FFT処理出力(331〜333)のうち、最大値を含むバンクをバンク選定し(3C1)、それをレンジ軸上でFFT処理する(3C2)。
【数3】
【0026】
次に、後述するレンジ軸位相モノパルスで用いるΣの参照信号(ここでは線形チャープ信号とするが、参非線形チャープ信号、符号変調等、他の変調方式でもよい)を生成する(3C4)。これを表現すると、次式となる。
【数4】
【0027】
この参照信号SrefΣ(t)のサンプル長を入力信号に合わせて0埋めした信号に置き換える。
【数5】
【0028】
この参照信号をFFT処理する(3C5)ことで、参照信号の周波数軸の信号を得る。
【数6】
【0029】
これと入力信号を周波数領域で乗算する(3C3)と次式となる。
【数7】
【0030】
次に、サイドローブを低減し、ΣとΔの信号を生成するためのウェイトをΣ用ウェイト乗算とΔ用ウェイト乗算で設定する(3C6,3C9)。ウェイトは、レンジサイドローブの設定に応じて、テイラーウェイト(引用文献3)等を選定すればよい。
【数8】
【0031】
これらをΣ逆FFT及びΔ逆FFTして(3C7,3C9)、次式を得る。
【数9】
【0032】
尚、SΔの指数関数の項は、ΣとΔの位相ずれを揃えている。
【0033】
また、時間軸tをレンジ軸Rに変換するには、次式の関係により行う。
【数10】
【0034】
(9)式のΣの結果より、振幅が所定のスレショルドを超えた検出セル(時間サンプル)m(m=1〜M)を抽出し、各々の検出セルについてレンジ軸モノパルス演算(3C8)を行うには次式を用いる。
【数11】
【0035】
誤差電圧とレンジについては、図6に示すように、予めレンジに対する誤差電圧をテーブル化しておき、誤差電圧テーブルを作成しておく。(11)式により算出した観測値εにより、テーブルを用いてレンジRmonoを算出し出力する。この手法は、測角手法としての位相モノパルス手法(非特許文献5参照)をレンジ軸(時間軸)に置き換えた手法と言える。
【0036】
以上は、位相モノパルスを用いた手法について述べたが、振幅モノパルス手法(非特許文献6参照)等、他の方式でもよい。
【0037】
他の実施例として、ドップラ周波数の観測精度を向上する方式がある。このために、レンジ軸と同様に、ドップラ軸でモノパルス処理を行う(特許文献1参照)。
【0038】
まず、図2の系統におけるΣ系において、PRI軸FFTの出力の最大値をもつバンクを検出結果を用いてバンク選定し(3C1)、レンジ圧縮(3C2〜3C7)してΣ(f)を得る。一方、Δ系は、PRI信号を入力し、Δ用ウェイト乗算により(3C12)、Nヒットを1からN/2とN/2+1〜Nに2分割し、ウェイトを乗算してPRI軸FFT処理して(3C13)、ドップラ軸のΔ信号を得る。このΔ信号のうち、検出信号(バンク番号)によりバンク選定し(3C14)、レンジ圧縮して(3C15)、Δ(f)信号を得る。このΣ(f)とΔ(f)信号を用いて、次式により周波数軸モノパルス処理(3C16)ための誤差電圧を得る。
【数12】
【0039】
次にドップラ算出(3C17)において、図7に示すように予め保存してあるΣ(f)とΔ(f)の周波数特性を用いて算出した誤差電圧の基準値ε0をテーブル化(ε0と周波数fの対応)しておき、その基準テーブルを用いて、上記の観測値εからドップラ周波数fmonoを算出し出力する。
【0040】
なお、重みづけについては、−1または1以外に、サイドローブを低減するためにテイラーウェイ等のウェイトを乗算してもよい。
【0041】
以上のモノパルス手法で算出したレンジRmonoとドップラfmonoにより、図8のような画像を得ることができる。この複数反射点から、例えば次式の重心演算を行い、目標画像の代表点を抽出する。
【数13】
【0042】
【数14】
【0043】
このCPI毎(m=1〜M)の代表点のレンジRmono_tとドップラfmono_tを(1)及び(2)に代入して、高精度な参照信号を得ることができる。
【0044】
次に、この参照信号を用いて画像化する図1の広帯域処理について述べる。アンテナ1のモノパルス出力Σは、AD変換によりデジタル信号に変換され(311)、データ抽出によりサンプリング出力され(39)、変調信号の波形に対応するレンジ圧縮用の参照信号と相関演算した後(3A)、(1)式により生成した参照信号を用いた相関演算によりAZ圧縮される(3B)。これを定式化すると次の通りである。
【0045】
まずレンジ圧縮について述べる(非特許文献2参照)。レンジ圧縮は、入力信号とレンジ圧縮用信号の相関処理である。これを周波数領域で行う場合について定式化すると、次の通りである。
【数15】
【0046】
【数16】
【0047】
【数17】
【0048】
時間軸上にするには、この信号sを逆フーリエ変換すればよいが、このあとAZ圧縮(非特許文献3参照)を行うために、信号sの(ω、u)軸のままとする。次にクロスレンジ圧縮を行うが、その参照信号は(1)式を用いるものとする。(1)式において、ω軸については同じ値を入れたものとする。
【数18】
【0049】
(17)式と(18)式を乗算して信号csを得る。
【数19】
【0050】
これを用いて、u軸でFFTして信号fcs(ω、ku)を得る。
【数20】
【0051】
FFT画像出力は、fcsのω軸に関する逆FFTにより算出できる。
【数21】
【0052】
次に、より精度の高い画像生成手法として、図9及び図10を参照してポーラフォーマット変換によるSAR画像処理(3E)について述べる(非特許文献4参照)。データ取得(t,u)(ステップS1)、FFTx(ω,u)(ステップS2)、レンジ圧縮及び参照信号乗算(ω,u)(ステップS3)により、パルス圧縮の(17)式の出力sまでの処理は、上述と同様である。そこで、まず、このsを用いて、u軸に関してフーリエ変換する(ステップS4)。
【数22】
【0053】
次にAZ圧縮用の参照信号を生成する。
【数23】
【0054】
また、kx,kyは次式により求めることができる。
【数24】
【0055】
画像中心については、例えば、図1の参照信号生成(3D)で参照信号を生成する際に用いたCPIm(m=1〜M)のレンジと測角(38)のAZ角とEL角を用いるか、レンジ、AZ角、EL角の各々のmに対する近似曲線を算出し、その近似曲線を用いて、次式により算出される位置とする。
【数25】
【0056】
このAZ圧縮参照信号を用いて、次式によりfsmを算出する(ステップS5)。
【数26】
【0057】
fsmを用いて、図9及び図10に示すポーラフォーマット変換を行い、kx、ky軸で格子点のデータF(kx,ky)を生成する(ステップS6)。ポーラフォーマット変換は、取得データを用いて、(kx,ky)軸の格子点のデータを内挿手法等を用いて算出する手法であり、細部については非特許文献4にある説明の通りであるため割愛する。このfsmを用いて、2次元逆FFTによりポーラフォーマット変換を用いた画像を出力する(ステップS7)。
【数27】
【0058】
このポーラフォーマット変換による画像処理は、常に必要ではなく、画像品質を向上する場合に用いればよい。
【0059】
以上のように、第1の実施形態に係るレーダ装置は、ISARにおいて、合成開口長に対するNヒットのパルスを重複も含めてN2ヒットずつのM通りに分割し、各々分割毎にドップラ処理とパルス圧縮処理をして、CFARにより検出後、検出したセルに対してドップラ軸についてΣdとΔdによるモノパルス処理によりドップラを算出し、レンジ軸についてはΣrとΔrによるモノパルス処理によりレンジを算出し、M通りのレンジ−ドップラによる位相変化の近似曲線を算出し、その曲線をもとにISAR処理のクロスレンジ圧縮のための参照信号を算出してISAR画像を得る。このように、高精度または高分解能に目標重心等の代表点を観測するようにしているので、SNが向上し、これによって画像劣化を軽減することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の手法では、目標反射点が少ない場合には有効であるが、反射点が多くなると反射点の混在により代表点を分離できなくなる場合がある。第2の実施形態に係るレーダ装置はその対策手法を備えている。
【0061】
図11は、第2の実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。但し、図11において、図1と同一符号には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0062】
図11において、第1の実施形態と異なる点は、レンジ−ドップラモノパルス演算部3Cに代わり、レンジ−ドップラ高分解能処理部3Fを用いた点にある。すなわち、ビーム制御部22のビーム指向制御により目標方向に指向させた送受信信号は、信号処理器3において、Σ、ΔAZ、ΔEL別にAD変換部311〜313によりデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換されたΣ、ΔAZ、ΔEL信号は、サンプリングレートを低下させるために、データ抽出部321〜323により必要なデータが抽出される。抽出されたデータはPRI軸FFT処理部331〜333によりPRI軸の周波数領域信号に変換された後、レンジ圧縮部341〜343に送られる。このうち、Σ系のPRI軸FFT出力は、本実施形態の特徴とするレンジ−ドップラ高分解能処理部3Fに入力される。このレンジ−ドップラ高分解能処理部3Fの系統の詳細を図12に示し、以下に数式及び図13を用いて説明する。
【0063】
まず、レンジ−ドップラ高分解能処理部3Fの入力信号Sin(ドップラバンク信号)は、Σ系列の抽出データをPRI軸FFTした結果である(図13(a))。
【数28】
【0064】
上記レンジ−ドップラ高分解能処理部3Fにおいて、入力信号(ドップラバンク信号)Sigはレンジ軸(時間軸)FFT処理部3F1によりレンジ軸の周波数領域信号に変換される(図13(b))。
【数29】
【0065】
一方、参照信号生成部3F3において、Σ系列の参照信号(例えば線形チャープ信号)を生成する。線形チャープ信号の場合を表現すると、次式となる。
【数30】
【0066】
この参照信号としては、非線形チャープ信号、符号変調等、他の変調方式でもよい。
【0067】
この参照信号Sref(t)のサンプル長を入力信号に合わせて0埋めした信号に置き換える。
【数31】
【0068】
このようにして生成された時間軸の参照信号を参照信号FFT処理部3F4により周波数軸の信号に変換する。
【数32】
【0069】
この周波数領域の参照信号は乗算部3F2に送られ、周波数領域のレンジ軸ドップラバンク信号と乗算される。これにより、参照信号乗算後のバンク信号は次式となる。
【数33】
【0070】
次に、ウェイト乗算部3F5において、パルス圧縮後のレンジサイドローブを低減するためのウェイトを算出し乗算する。ウェイトは、レンジサイドローブの設定に応じて、一様ウェイト、テイラーウェイト等を選定すればよい。
【数34】
【0071】
次に、ウェイト乗算後のバンク信号をレンジ軸IFFT処理部3F6の逆FFT処理によりレンジ軸の時間領域信号に変換し、ドップラ−レンジ出力部3F7でドップラ−レンジ換算して出力する(図13(c))。
【数35】
【0072】
時間軸tとレンジ軸Rの関係は次式となる。以下、レンジと時間の表記が混在する場合は、次式の関係で換算するものとする。
【数36】
【0073】
この時間(レンジ)軸の信号S(n,t)(時間で表記)に対して、CFAR検出部3F8でCFAR検出を行い、検出があがった時間tsel(p)とドップラ周波数fsel(p)(pは目標番号)を中心にした(N,M)セルを抽出する。
【0074】
次に、ドップラ逆FFT・レンジFFT処理部3F10により、抽出したセルのドプラ軸を逆FFTしてPRI軸に変換し(図13(d))、レンジ軸をFFTしてレンジ周波数軸に変換し、これらの信号をSw(pri、ω)として1次元に並べ替えする(図13(e))。その並べ替えした信号Xを基に、共分散行列Rxxを算出する。以下に定式化する。
【数37】
【0075】
次に、平均相関行列演算部3F11で相関行列を平均化し、その演算結果Rxxを用いて、MUSIC処理部3F12でMUSIC処理し、次式によりMUSICスペクトルを算出する(図13(f))(非特許文献5参照)。
【数38】
【0076】
上記MUSICスペクトルSmusicにおいて、例えばCFAR処理(3F13)によりスレショルドを超える信号の極大値Ω(ft、ωt)を抽出する。ドップラ周波数ftとレンジ周波数ωtより、ドップラ・レンジ出力部3F14において、次式の換算により目標のドップラ周波数ftとレンジRtを算出する。
【数39】
【0077】
【数40】
【0078】
以上は、目標信号間の相関が小さい場合について述べた。レーダの送受信による複数の目標信号は、互いに相関をもつため、(37)式のRxxの相関成分を抑圧するために、平均化処理を行う。このために、図14に示すように、PRI−レンジ周波数軸の行列データにおいて部分行列Swmを抽出し(図14(a))、その抽出された部分行列について逐次Rxxmの算出を行い(図14(b))、その要素毎の平均値の行列をRxxとする。
【数41】
【0079】
この平均Rxxを用いて、(38)〜(40)式により、目標のドップラ(速度)とレンジを算出する。
【0080】
なお、図11及び図12において、レンジ−ドップラ高分解能処理部3Fの内部でレンジ圧縮を実施しているが、図11のΣ系のレンジ圧縮部341の出力等を用いて、重複した処理を削減してもよい。
【0081】
本実施形態は、2次元の信号をもとに、相関行列の平均値を求めてMUSIC処理するのが主旨であり、平均化の手法は、各相関行列の平均値や、Forward-Backward空間平均法(非特許文献8参照)等、他の手法でもよい。
【0082】
以上は、MUSIC処理について述べたが、ESPRIT(非特許文献7参照)等の他の高分解能処理でもよい。
【0083】
このドップラ−レンジ軸の高分解能処理結果を第1の実施形態と同様に図8とすると、図8の複数反射点から、例えば次式の重心演算を行い、代表点を抽出する。
【数42】
【0084】
【数43】
【0085】
この代表点のレンジRhreso_tとドップラfhreso_tを(1)式及び(2)式に代入することで、高精度な参照信号を得ることができ、この参照信号を用いて、高精度なISAR画像を得ることができる。
【0086】
なお、上記の実施形態では、レンジ−ドプラ軸のモノパルス処理や高分解能処理を用いて、AZ圧縮用参照信号を高精度に生成する手法について述べたが、モノパルス処理や高分解能処理を用いずに、図4のCPI1〜CPIMのデータにより観測したレンジとドップラを用いて、(1)及び(2)式に代入して参照信号を得る方式でも適用できる。
【0087】
その他、本実施形態は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…アンテナ、11…送信アンテナ素子、2…送受信器、21…送受信器、22…ビーム制御器、3…信号処理器、311,312,313…AD変換部、A…狭帯域処理部、321〜323…データ抽出部、331〜333…PRI軸FFT処理部、341〜343…レンジ(時間)圧縮部、35…CFAR処理部、36…スレショルド検出部、371,372…セル検出部、38…測角部、B…広帯域処理部、39…データ抽出部、3A…レンジ圧縮部、3B…レンジ圧縮部、3C…レンジ−ドップラモノパルス演算部、3D…参照信号生成部、3E…ポーラフォーマット変換による画像化部、3F…レンジ−ドップラ高分解能処理部、3F1…レンジ軸FFT処理部、3F2…乗算部、3F3…参照信号生成分、3F4…参照信号FFT処理部、3F5…ウェイト乗算部、3F6…レンジ軸IFFT処理部、3F7…ドップラ−レンジ出力部、3F8…CFAR検出部、3F9…ドップラ−レンジセル抽出部、3F10…ドップラ逆FFT/レンジFFT処理部、3F11…平均相関行列演算部、3F12…MUSIC処理部、3F13…CFAR処理部、3F14…ドップラ−レンジ出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14