(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1に示す列車1は、軌道4上を運転させる目的で組成された移動体である。列車1は、旅客を輸送するための旅客列車、貨物を輸送するための貨物列車、又は旅客列車と貨物列車とを併結して運転する混合列車などである。列車1は、1両又は複数両の車両1Aによって編成されている。車両1Aは、軌道4上を走行する鉄道車両である。車両1Aは、電車、気動車、機関車、客車又は貨車などである。車両1Aは、車体2と車輪3などを備えている。
【0027】
車体2は、乗客又は貨物を積載し輸送するための構造物である。車輪3は、左右一対のレール5とそれぞれ回転接触する部材である。車輪3は、
図1に示すように、レール頭部の頭頂面と接触して摩擦抵抗を受ける踏面と、脱輪を防止するために車輪3の外周部に連続して形成されたフランジ面などを備えている。
【0028】
図1及び
図2に示す軌道4は、列車1が走行する通路(線路)である。軌道4は、レール5と、まくらぎ6と、レール締結装置7と、道床8などを備えている。
図1及び
図2に示す軌道4は、鉄道線路に敷設される一般的な軌道構造であり、主として道床バラスト8a、レール5及びまくらぎ6によって構成されているバラスト軌道である。
【0029】
レール5は、列車1の車輪3を支持し案内してこの列車1を走行させる部材である。レール5は、
図1に示すように、列車1の車輪3と接触するレール頭部と、まくらぎ6に取り付けられるレール底部(フランジ部)と、レール頭部とレール底部とを繋ぐレール腹部(ウェブ部)などを備えている。
【0030】
図1及び
図2に示すまくらぎ6は、レール5を支持する支持体(支承体)である。まくらぎ6は、左右のレール5の間隔(軌間)を正確に保持するとともに、レール5から伝達される列車荷重を道床8に分散させるために、レール5と道床8との間に設置されている。まくらぎ6は、軌道4の一部を構成する軌道構成部材である。
図1及び
図2に示すまくらぎ6は、レール5に対して直角に並べて敷設される横まくらぎ(一般区間で使用される並まくらぎ)である。まくらぎ6は、例えば、緊張材として使用される鋼材(Prestressing Steel(PC))によってプレストレスが与えられたプレストレスコンクリート製まくらぎ(PCまくらぎ)である。まくらぎ6は、
図2に示すように、レール5の長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、レール5を離散的に支持している。
【0031】
図1及び
図2に示すレール締結装置7は、レール5をまくらぎ6に締結する装置である。レール締結装置7は、レール5とまくらぎ6との間に挿入されて車両走行時に発生する衝撃を緩和する軌道パッドと、レール5の底部上面を押さえ付けてまくらぎ6に締結するばねクリップなどを備えている。
図1及び
図2に示すレール締結装置7は、例えば、ばねクリップの弾性力によってレール5の底部を押圧して、このレール5をまくらぎ6に締結する線ばね式レール締結装置である。
【0032】
道床8は、まくらぎ6を支持する構造体である。道床8は、道床バラスト8aを積層したバラスト層によって構成されたバラスト道床であり、路盤9に荷重を分散し伝達する。道床バラスト8aは、まくらぎ6と路盤9との間に敷き詰められる砂利又は砕石などの粒状体である。道床バラスト8aは、例えば、粒度範囲が19.1〜63.5mmの玄武岩などの岩石である。
【0033】
路盤9は、軌道4を支持する基盤であり、軌道4上を列車1が通過するときの荷重を支持する構造物である。路盤9は、例えば、噴泥や凍上し難い良質な自然土若しくはクラッシャランを用いて十分に締め固めた砕石路盤(土路盤)、アスファルト混合物からなる上部路盤と砕石からなる下部路盤とから構成されたアスファルト路盤(強化路盤)、又は鉄筋コンクリート版及び粒度調整砕石によって構成されたコンクリート路盤などである。
【0034】
軌道変位抑制構造10は、軌道変位を抑制する構造である。軌道変位抑制構造10は、軌道4上を列車1が通過して列車1の荷重が急激に除荷されたときに発生する道床バラスト8aの跳ね上がりを低減することによって軌道変位を抑制する。ここで、軌道変位(軌道不整(軌道狂い))とは、列車1の繰り返し通過などによって軌道4が徐々に変動しレール5の長さ方向の形状が変化する現象である。軌道変位は、例えば、軌道4上を列車1が通過するときにこの列車1の荷重が道床8に加わり、道床8が受けた荷重の繰り返しにより徐々に塑性変形することによって発生し、軌道4の経年的な沈下現象である軌道破壊の要因となる。軌道変位は、列車1の円滑な走行を阻害し、列車1の動揺による乗り心地の悪化、横圧の増加及び輪重抜け現象による脱線の危険性、著大輪重及び横圧による軌道材料の劣化などを発生させる。軌道変位抑制構造10は、
図1及び
図2に示す一体化部材11などを備えている。
【0035】
一体化部材11は、軌道4上を通過する列車1の荷重が除荷されるときに発生する道床バラスト8aの跳ね上がりを抑制するために、この道床バラスト8aとまくらぎ6とを一体化する部材である。一体化部材11は、道床8を構成するバラスト層のうちバラスト上層を構成する上面の道床バラスト8aをまくらぎ6の底面と一体化させることによって、軌道4上を通過する列車1の荷重が急激に除荷されたときに発生するこのバラスト層の上面の道床バラスト8aの跳ね上がりを抑制する。一体化部材11は、
図1及び
図2に示すように、挿入部材12と連結部材13などを備えている。一体化部材11は、道床8と路盤9との間に挿入される挿入部材12とまくらぎ6とを固定することによって、道床バラスト8aとまくらぎ6とを一体化する。
【0036】
挿入部材12は、道床8に挿入される部材である。挿入部材12は、この挿入部材12の上面とまくらぎ6の底面との間で道床バラスト8aを挟み込むことによって、まくらぎ6と道床バラスト8aとを一体化している。挿入部材12は、例えば、剛性を有する鋼製又はコンクリート製の板状部材であり、まくらぎ6の幅及び長さと略同一の幅及び長さに形成されている。挿入部材12は、路盤9内に浸透する雨水などを下方に排出可能なように複数の貫通孔を備えている。挿入部材12は、まくらぎ6と路盤9との間に挿入されており、道床8を構成するバラスト層の下層に挿入されている。
【0037】
連結部材13は、挿入部材12とまくらぎ6との間に道床バラスト8aを挟み込むように、この挿入部材12とこのまくらぎ6とを連結する部材である。連結部材13は、まくらぎ6と挿入部材12とに巻き付けてこれらを結束しており、これらの間に所定の張力を付与している。連結部材13は、挿入部材12とまくらぎ6とを連結することによって、挿入部材12とまくらぎ6との間で道床バラスト8aを加圧し、道床バラスト8aに垂直方向の加圧力を付与する。連結部材13は、
図1に示すように、まくらぎ6の一方の端部と挿入部材12の一方の端部とを連結するとともに、まくらぎ6の他方の端部と挿入部材12の他方の端部とを連結している。連結部材13は、
図1及び
図2に示すように、線状部材13aと張力調整部材13bなどを備えている。線状部材13aは、例えば、挿入部材12とまくらぎ6とに巻き掛けられるワイヤなどである。張力調整部材13bは、線状部材13aに作用する張力を調整する部材である。張力調整部材13bは、例えば、まくらぎ6と挿入部材12とに線状部材13aを巻き掛けた状態で、この線状部材13aの一方の端部と他方の端部との間に所定の張力を発生する張力調整ばねなどである。
【0038】
次に、この発明の第1実施形態に係る軌道変位抑制構造の原理について説明する。
高感度の荷重センサを用いて、10kHz又は20kHzサンプリングによる高速かつ高感度の現場測定及び実物大模型載荷実験を実施すると、列車1の通過時に道床8に加わる荷重に関しては、列車1の車軸の通過頻度は低い周波数領域にあることが確認されている。しかし、実測した衝撃荷重を周波数成分に分けると、列車1の衝撃荷重は概ね数百Hzの高周波領域に存在し、20Hz以下のような低い周波数領域に衝撃荷重の振動成分が存在しないことが確認されている。また、従来、列車1の走行荷重と考えられていた概ね30Hz以下の低い周波数の道床バラスト8aの挙動に関しては、列車1の荷重が加わる載荷時の動きではなく、列車1の荷重が急激に除荷される除荷時の急激な応力解放によることが確認されている。軌道変位の発生メカニズムを道床バラスト8aの摩耗と道床8の沈下及び道床バラスト8aの移動との2つに分けて考えると、道床バラスト8aの摩耗の原因は、衝撃荷重の載荷時における道床バラスト8aの接触部の稜角部での応力集中による。しかし、道床8の沈下及び道床バラスト8aの移動の原因は、道床8を構成するバラスト層のうち表層の道床バラスト8aが非拘束のままで急激に応力解放されたときに、道床8の急激な緩みや道床8の表層の道床バラスト8aの上向きの跳ね上がり挙動による。
【0039】
図1及び
図2に示す軌道変位抑制構造10が存在しない場合には、まくらぎ6と道床バラスト8aとが一体化されていない。このため、軌道4上を列車1が通過して列車1の荷重が急激に除荷されると、道床8の上層の道床バラスト8aが非拘束のままで急激に応力が解放されて、道床8が急激に緩んだり道床バラスト8aが跳ね上がったりする。その結果、道床8を構成するバラスト層の一体性が一瞬でなくなり、個々の道床バラスト8aが単独で運動する。例えば、重力場で多数のボールを空に向かって投げ上げた状態と同じ状態になり、バラスト層が外力に対して全く抵抗力を有さない状態になる。特に、バラスト層の上面では衝撃荷重の載荷時の道床バラスト8aの速度に比べて、衝撃荷重の除荷時の道床バラスト8aの跳ね上がり速度が12倍にも達する。道床8の急激な緩みの発生や道床バラスト8aの跳ね上がり現象に関して、力学の基礎に倣うと道床バラスト8aに作用する加速度の大きさは質量に反比例する。列車1の荷重の除荷時に道床バラスト8a間の一体性や連続性がなくなることで、軽い道床バラスト8aの単独の運動となり、加速度値は局所的に急増し大きな跳ね上がりを引き起こす。その結果、道床バラスト8aの跳ね上がり現象によって道床8に不同沈下、道床バラスト8aの移動や流動現象に繋がる。
【0040】
一方、
図1及び
図2に示す軌道変位抑制構造10が存在する場合には、まくらぎ6と道床バラスト8aとが一体化されている。このため、まくらぎ6と道床バラスト8aとに僅かに拘束力を加えることによって、道床8を構成するバラスト層の一体性が維持されるとともに、まくらぎ6と道床バラスト8aとの一体性も維持される。その結果、道床バラスト8aの移動を抑え、道床8の不同沈下現象の発生が抑えられる。現場測定及び実物大模型載荷実験によると、列車1の荷重の除荷時における道床バラスト8aの跳ね上がり量は数mmであることが確認されている。このため、この数mm程度の道床バラスト8aの変位を抑えるのに十分な非常に小さい拘束力又は結束力をまくらぎ6と道床バラスト8aとに加えるだけで、道床8の上面の道床バラスト8aの跳ね上がりが低減される。
【0041】
現場測定及び実物大模型載荷実験によると、軌道変位の主要因となる100Hz近傍に道床8の上下動の固有振動モードが存在することが確認されている。一方、大規模数値解析によると、まくらぎ6と道床バラスト8aとを一体化した場合には、道床8の上下動の固有振動モードが200〜400Hzに上昇し、軌道変位の原因となる変位振幅の大きさが1/10〜1/20に低減し、軌道変位が根本的に低減されることが確認されている。
【0042】
次に、この発明の第1実施形態に係る軌道変位抑制方法について説明する。
図3に示す軌道変位抑制方法#100は、軌道変位を抑制する方法であり、一体化工程#110を含む。一体化工程#110は、
図1に示す軌道4上を通過する列車1の荷重が除荷されるときに発生する道床バラスト8aの跳ね上がりを抑制するために、この道床バラスト8aとまくらぎ6とを一体化する工程である。一体化工程#110は、道床8に挿入される挿入部材12とまくらぎ6とを連結部材13によって連結する工程を含む。
【0043】
図4(A)に示すように、軌道建設時又は軌道更新時に、路盤9の上面に挿入部材12を設置するとともに連結部材13を挿入部材12に巻き掛ける。次に、
図4(B)に示すように、路盤9上に道床バラスト8aを積層するとともに挿入部材12上にも道床バラスト8aを積層して道床8が敷設される。次に、道床8上にまくらぎ6を設置し、連結部材13をまくらぎ6に巻き掛けて連結部材13の一方の端部と他方の端部とを緊締して、まくらぎ6と挿入部材12とを連結部材13によって所定の張力で連結する。その結果、まくらぎ6と挿入部材12との間に道床バラスト8aが挟み込まれて、まくらぎ6と道床バラスト8aとが一体化される。
【0044】
この発明の第1実施形態に係る軌道変位抑制構造及び軌道変位抑制方法には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、軌道4上を通過する列車1の荷重が除荷されるときに発生する道床バラスト8aの跳ね上がりを抑制するために、この道床バラスト8aとまくらぎ4とを一体化部材11が一体化する。このため、簡単な構造によって道床バラスト8aの跳ね上がりを大幅に抑制し低減することができる。その結果、バラスト層の一体性や連続性を維持することができるため、道床8に発生する不同沈下を抑止することができるとともに、道床バラスト8aの流動現象を抑止することができる。
【0045】
(2) この第1実施形態では、まくらぎ6を支持する道床8に挿入部材12を挿入し、挿入部材12とまくらぎ6との間に道床バラスト8aを挟み込むように、挿入部材12とまくらぎ6とを連結部材13が連結する。このため、まくらぎ6と挿入部材12との間に道床バラスト8aが挟み込まれて、道床8の表面の道床バラスト8aとまくらぎ6の下面とが密着し、列車1の荷重が除荷されたときの道床バラスト8aの跳ね上がりを容易に抑制することができる。その結果、従来の道床安定剤や従来の有道床弾性まくらぎのような対策工に比べて、道床8の表層の道床バラスト8aとまくらぎ6とを一体化させるだけで軌道変位を簡単に抑制することができる。
【0046】
(第2実施形態)
以下では、
図1及び
図2に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図5及び
図6に示すまくらぎ6は、緩衝部材6aを底面に備える弾性まくらぎである。まくらぎ6は、振動騒音の低減及び軌道保守の省力化を図ることを目的として設置される。
図5及び
図6に示すまくらぎ6は、例えば、有道床軌道で使用される有道床弾性まくらぎであり、列車1の通過時に発生する振動の低減するとともに道床バラスト8aの微粒子化を防止する。
【0047】
緩衝部材6aは、道床バラスト8aに作用する衝撃を緩和する部材である。緩衝部材6aは、道床バラスト8aとまくらぎ6との間に挟み込まれる。緩衝部材6aは、例えば、ポリエチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、合成ゴム、天然ゴム、ウレタンゴム又はスチレンゴムなどの弾性体であり、厚さが15mm程度であってまくらぎ6の底面に貼り付けられている。一体化部材11は、道床バラスト8aとまくらぎ6との間に緩衝部材6aを挟み込んだ状態で、挿入部材12とまくらぎ6とを一体化する。
【0048】
次に、この発明の第2実施形態に係る軌道変位抑制方法について説明する。
図7に示す一体化工程#110は、道床バラスト8aに作用する衝撃を緩和する緩衝部材6aを底面に有するまくらぎ6と挿入部材12とを連結部材13によって連結する工程を含む。
図7(A)に示すように、路盤9の上面に挿入部材12を設置して連結部材13を挿入部材12に巻き掛け、路盤9上及び挿入部材12上に道床バラスト8aを積層して道床8が敷設される。次に、道床8上に設置したまくらぎ6に連結部材13を巻き掛けて連結部材13を緊締し、まくらぎ6と挿入部材12とを連結部材13によって所定の張力で連結する。その結果、まくらぎ6の緩衝部材6aと挿入部材12との間に道床バラスト8aが挟み込まれて、まくらぎ6と道床バラスト8aとが一体化される。
【0049】
この第2実施形態に係る軌道変位抑制構造及び軌道変位抑制方法には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第2実施形態では、道床バラスト8aに作用する衝撃を緩和する緩衝部材6aを底面に有するまくらぎ6と挿入部材12とを連結部材13が連結する。このため、列車1が軌道4上を通過するときに道床バラスト8aに作用する衝撃荷重を緩衝部材6aによって緩和することができるとともに、列車1の衝撃荷重が除荷されたときの道床バラスト8aの跳ね上がりをより一層低減することができる。また、弾性まくらぎのような既存の対策工と併用して簡単に軌道変位を抑制することができる。
【0050】
(第3実施形態)
図8及び
図9に示す一体化部材11は、収容部材14とまくらぎ6とを固定することによって、道床バラスト8aとこのまくらぎ6とを一体化する。一体化部材11は、収容部材14と連結部材15などを備えている。収容部材14は、道床バラスト8aを収容する部材である。収容部材14は、例えば、可撓性を有する布製又はポリエチレン製の繊維材からなる土嚢袋のような袋体の内部に道床バラスト8aを充填し収容している。収容部材14は、まくらぎ6と路盤9との間に複数積み上げた状態で路盤9上に設置されている。
【0051】
連結部材15は、まくらぎ6と収容部材14とを連結する部材である。連結部材15は、まくらぎ6と収容部材14とに巻き付けてこれらを結束しており、まくらぎ6と収容部材14との間に所定の張力を付与している。連結部材15は、
図8及び
図9に示すように、線状部材15aと張力調整部材15bなどを備えている。線状部材15aは、例えば、収容部材14とまくらぎ6とに巻き掛けられるワイヤなどである。張力調整部材15bは、線状部材15aに作用する張力を調整する部材である。張力調整部材15bは、例えば、まくらぎ6と収容部材14とに線状部材15aを巻き掛けた状態で、この線状部材15aの一方の端部と他方の端部との間に所定の張力を発生する張力調整ばねなどである。
【0052】
次に、この発明の第3実施形態に係る軌道変位抑制方法について説明する。
図10に示す一体化工程#110は、道床バラスト8aを収容する収容部材14とまくらぎ6とを連結部材15によって連結する工程を含む。
図10(A)に示すように、軌道建設時又は軌道更新時に、道床バラスト8aを充填した収容部材14を路盤9の上面に積み上げた状態で設置するとともに連結部材15を最下層の収容部材14に巻き掛ける。次に、
図10(B)に示すように、路盤9上に道床バラスト8aを散布するとともに最上層の収容部材14上にも道床バラスト8aを散布して道床8が敷設される。次に、道床8上にまくらぎ6を設置し、連結部材15をまくらぎ6に巻き掛けて連結部材15の一方の端部と他方の端部とを所定の張力になるまで緊締して、まくらぎ6と収容部材14とを連結部材15によって連結する。その結果、まくらぎ6と収容部材14とが一体化されて、まくらぎ6と道床バラスト8aとが一体化される。
【0053】
この第3実施形態に係る軌道変位抑制構造及び軌道変位抑制方法には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第3実施形態では、道床バラスト8aを収容する収容部材14とまくらぎ6とを連結部材15が連結する。このため、収容部材14内の道床バラスト8aとまくらぎ6とが一体化し、列車1の荷重が除荷されたときの道床バラスト8aの跳ね上がりを容易に抑制することができる。
【0054】
(第4実施形態)
図11及び
図12に示す収容部材14は、例えば、鋼線を枠状に形成した蛇籠、鋼製網又は型枠などの枠体の内部に道床バラスト8aを充填し収容している。収容部材14は、まくらぎ6と路盤9との間に挟み込まれるように路盤9上に設置されている。
【0055】
次に、この発明の第4実施形態に係る軌道変位抑制方法について説明する。
図13に示す一体化工程#110は、道床バラスト8aを収容する収容部材14とまくらぎ6とを連結部材15によって連結する工程を含む。
図13(A)に示すように、軌道建設時又は軌道更新時に、道床バラスト8aを充填した収容部材14を路盤9の上面に設置するとともに連結部材15を収容部材14に巻き掛ける。次に、路盤9上に道床バラスト8aを散布するとともに収容部材14上にも道床バラスト8aを散布して道床8が敷設される。次に、道床8上にまくらぎ6を設置し、連結部材15をまくらぎ6に巻き掛けて連結部材15の一方の端部と他方の端部とを所定の張力になるまで緊締して、まくらぎ6と収容部材14とを連結部材15によって連結する。その結果、まくらぎ6と収容部材14とが一体化されて、まくらぎ6と道床バラスト8aとが一体化される。この第4実施形態には、第3実施形態と同様の効果がある。
【0056】
(第5実施形態)
図14及び
図15に示す道床8は、高強度人工ブロック16が道床バラスト8aに混入されている。一体化部材11は、高強度人工ブロック16が混入された道床バラスト8aとまくらぎ6とを一体化する。高強度人工ブロック16は、道床8の沈下を抑制する部材である。高強度人工ブロック16は、道床バラスト8aと混合されて道床バラスト8aとともに道床8を構成する。高強度人工ブロック16は、道床バラスト8aとは異質の特性を持つ特定形状の構造体である。高強度人工ブロック16は、例えば、軟鉄、銅、アルミニウムなどの金属材料、炭化物、窒化物などのセラミックス材料、石英などの岩石鉱物系材料、炭素、ガラス系材料、ABS樹脂、アラミド繊維などの合成樹脂材料又はこれらの組み合わせを含有するセメントコンクリートからなる高強度繊維含有コンクリート(高強度繊維補強ブロック)である。高強度人工ブロック16は、道床バラスト8aと同程度の大きさで縦横が50〜60mm程度の立方体である。高強度人工ブロック16は、道床バラスト8aの摩耗を低減することによって道床8の沈下を抑制する。
【0057】
次に、この発明の第5実施形態に係る軌道変位抑制方法について説明する。
図16に示す一体化工程#110は、道床8の沈下を抑制する高強度人工ブロック16が混入された道床バラスト8aとまくらぎ6とを一体化する工程を含む。
図16(A)に示すように、軌道建設時又は軌道更新時に、路盤9の上面に挿入部材12を設置するとともに連結部材13を挿入部材12に巻き掛ける。次に、
図4(B)に示すように、高強度人工ブロック16が混合された道床バラスト8aを路盤9上に散布するとともに挿入部材12上にも散布して道床8が敷設される。次に、道床8上にまくらぎ6を設置し、連結部材13をまくらぎ6に巻き掛けて連結部材13の一方の端部と他方の端部とを緊締して、まくらぎ6と挿入部材12とを連結部材13によって所定の張力で連結する。その結果、まくらぎ6と挿入部材12との間に、高強度人工ブロック16が混合された道床バラスト8aが挟み込まれて、まくらぎ6と道床バラスト8aとが一体化される。
【0058】
この発明の第5実施形態には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第5実施形態では、道床8の沈下を抑制する高強度人工ブロック16が道床バラスト8aに混入されており、この高強度人工ブロック16が混入された道床バラスト8aとまくらぎ6とを一体化部材11が一体化する。このため、バラスト層の摩耗を低減することができるとともに、道床バラスト8aの跳ね返り挙動を抑止することができる。
【0059】
(第6実施形態)
図17及び
図18に示す一体化部材11は、まくらぎ6の両端部に装着される連結部材19を路盤9に固定することによって、道床バラスト8aとまくらぎ6とを一体化する。一体化部材11は、
図17〜
図19に示す装着部材17と、
図19に示す固定部材18と、
図17〜
図20に示す連結部材19と、
図19に示す締結部材20と、
図20に示す固定部材21などを備えている。
【0060】
図17〜
図19に示す装着部材17は、まくらぎ6の両端部に装着される部材である。装着部材17は、例えば、まくらぎ6の両端部に着脱自在に取り付けられる鋼板などの板状部材である。装着部材17は、
図19に示す挿入部17aなどを備えている。挿入部17aは、連結部材19を挿入する部分である。挿入部17aは、外観が円筒状の部材である。挿入部17aは、連結部材19が傾斜した状態で装着部材17に固定されるように、この挿入部17aの中心線が略45°斜めに交差するように装着部材17の表面に溶接などによって固定されている。
【0061】
図19に示す固定部材18は、装着部材17をまくらぎ6に固定する部材である。固定部材18は、
図19に示すように、装着部材17の貫通孔に挿入されてまくらぎ6に形成された穴に固定されるアンカーボルト18aと、このアンカーボルト18aの雄ねじ部に装着されるナット18bなどを備えている。
【0062】
図17〜
図20に示す連結部材19は、装着部材17と路盤9とを連結する部材である。連結部材19は、
図18及び
図19に示すように、上端部がX字状に交差するように配置されており、上端部が装着部材17に着脱自在に固定されており、下端部が路盤9に固定されている。連結部材19は、まくらぎ6と路盤9との間に道床8を挟み込むように所定の張力が付与されており、締結部材20によって張力調整が可能なように着脱自在に緊締されている。連結部材19は、例えば、母材であるコンクリート層21aに定着される長さ50cm程度のアンカーボルトなどの軸状部材である。連結部材19は、
図19に示すように、上端部に雄ねじ部19aを備えている。
【0063】
図19に示す締結部材20は、連結部材19を装着部材17に締結する部材である。締結部材20は、連結部材19の雄ねじ部19aと噛み合う雌ねじ部を有するナット20aを備えている。
図20に示す固定部材21は、連結部材19を路盤9に固定する部材である。固定部材21は、コンクリート層21aと、穴部21bと、接着剤層21cなどを備えている。コンクリート層21aは、路盤9に形成されたコンクリート硬化部である。コンクリート層21aは、路盤9が砕石路盤又はアスファルト路盤の場合にはこの路盤9の一部にコンクリートを打設して形成された部分であり、路盤9がコンクリート路盤の場合にはこのコンクリート路盤の一部である。穴部21bは、コンクリート層21aに形成された凹部である。穴部21bは、コンクリート層21aに所定の深さで斜めに削孔されている。接着剤層21cは、連結部材19の下端部と穴部21bとに間に接着剤を充填して形成される部分である。
【0064】
次に、この発明の第6実施形態に係る軌道変位抑制方法について説明する。
図21に示す一体化工程#110は、まくらぎ6の両端部に装着される装着部材17と路盤9とを連結部材19によって連結する工程を含む。
図21(A)に示すように、軌道建設時又は軌道更新時に、路盤9の上面にコンクリート層21aを形成しこのコンクリート層21aに所定の深さの穴部21bを形成し、連結部材19の下端部をこの穴部21bに挿入し接着剤層21cによって固定する。次に、
図21(B)に示すように、路盤9上に道床バラスト8aを散布して道床8が敷設されて、道床8上にまくらぎ6を設置する。次に、連結部材19の上端部を装着部材17に固定部材21によって所定の締め付け力になるまで締結して、連結部材19を装着部材17に連結するとともに、装着部材17を固定部材18によってまくらぎ6の両端部に固定する。その結果、まくらぎ6と路盤9とが一体化されて、まくらぎ6と道床バラスト8aとが一体化される。
【0065】
この発明の第6実施形態には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第6実施形態では、まくらぎ6の両端部に装着部材17を装着し、軌道4を支持する路盤9と装着部材17とを連結部材19が連結する。このため、連結部材19を固定するための貫通孔などをまくらぎ6に形成するような手間のかかる加工が不要になり、既存のまくらぎ6の端部に装着部材17を固定し、路盤9とまくらぎ6とを連結部材19によって連結するだけで、軌道4の変位を抑制することができる。
【0066】
(第7実施形態)
図22及び
図23に示す一体化部材11は、まくらぎ6と一体に製造される連結部材22を路盤9に固定することによって、道床バラスト8aとまくらぎ6とを一体化する。一体化部材11は、
図22〜
図24に示す連結部材22と
図24に示す固定部材23などを備えている。連結部材22は、まくらぎ6と路盤9とを連結する部材である。連結部材22は、まくらぎ6と一体に製造されており、まくらぎ6の製造段階でまくらぎ6に予め埋設されてまくらぎ6と一体化されている。連結部材22は、例えば、母材であるコンクリート層21aに定着される長さ50cm程度のアンカーボルトなどの軸状部材である。連結部材22は、まくらぎ6の下面の両端部から突出するように配置されており、上端部がまくらぎ6に埋設されて固定されており、下端部が路盤9に固定されている。
【0067】
図24に示す固定部材23は、連結部材22を路盤9に固定する部材である。固定部材23は、コンクリート層23aと、穴部23bと、接着剤層23cなどを備えている。コンクリート層23aは、路盤9に形成されたコンクリート硬化部である。コンクリート層23aは、路盤9が砕石路盤又はアスファルト路盤の場合にはこの路盤9の一部にコンクリートを打設して形成された部分であり、路盤9がコンクリート路盤の場合にはこのコンクリート路盤の一部である。穴部23bは、コンクリート層23aに形成された凹部である。穴部23bは、コンクリート層23aに所定の深さで垂直に削孔されている。接着剤層23cは、連結部材22の下端部と穴部23bとに間に接着剤を充填して形成される部分である。
【0068】
次に、この発明の第7実施形態に係る軌道変位抑制方法について説明する。
図25に示す一体化工程#110は、まくらぎ6と一体に製造されている連結部材22によって、路盤9とまくらぎ6とを連結する工程を含む。
図25(A)に示すように、軌道建設時又は軌道更新時に、路盤9の上面にコンクリート層23aを形成しこのコンクリート層23aに所定の深さの穴部23bを形成し、連結部材22の下端部をこの穴部23bに挿入し接着剤層23cによって固定する。次に、
図25(B)に示すように、路盤9上に道床バラスト8aを散布して道床8が敷設されて、道床8上にまくらぎ6を設置される。その結果、まくらぎ6と路盤9とが一体化されて、まくらぎ6と道床バラスト8aとが一体化される。
【0069】
この発明の第7実施形態には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第7実施形態では、軌道4を支持する路盤9とまくらぎ4とを連結部材22が連結し、この連結部材22がまくらぎ4と一体に製造されている。このため、予め連結部材22をまくらぎ6と一体に製造しておき、路盤9とまくらぎ6とを連結部材22によって連結するだけで、軌道4の変位を抑制することができる。
【0070】
(第8実施形態)
図26及び
図27に示す一体化部材11は、まくらぎ6の底面から突出する挿入部材24を道床8の表層の道床バラスト8aに挿入することによって、道床8の表層の道床バラスト8aとまくらぎ6とを一体化する。一体化部材11は、
図26〜
図28に示す挿入部材24などを備えている。挿入部材24は、まくらぎ6を支持する道床8の表層の道床バラスト8aに挿入される部材である。挿入部材24は、まくらぎ6の底面から突出しており、まくらぎ6の底面に櫛状に形成されている。挿入部材24は、まくらぎ6と一体に製造されており、まくらぎ6の製造段階でまくらぎ6に予め埋設されてまくらぎ6と一体化されている。
挿入部材
24は、例えば、200〜300mm程度の長さであり、300mm程度の一定の間隔をあけて複数本配置されている。
挿入部材
24は、例えば、異形鉄筋又は異形アンカーボルトのような鋼材又は硬質のガラス繊維材などからなる軸状部材である。
挿入部材
24は、図
28に示すように、抜け止め部
24aを備えている。
【0071】
図29に示す抜け止め部
24aは、道床8の表層の道床バラスト8aから挿入部材
24が抜け出すのを防止する部分である。抜け止め部
24aは、挿入部材
24の長さ方向に所定の間隔をあけてこの挿入部材
24の外周面に一体に形成されており、挿入部材
24の引抜を防止する凹凸部である。抜け止め部
24aは、道床8の表層の道床バラスト8aに挿入部材
24が差し込まれたときに、隣接する挿入部材
24間に道床バラスト8aを挟み込むことによって道床バラスト8aを加圧し、道床バラスト8aに水平方向の加圧力を付与する。
【0072】
次に、この発明の第8実施形態に係る軌道変位抑制方法について説明する。
図29に示す一体化工程#110は、道床8の表層の道床バラスト8aにまくらぎ6の底面から突出する複数の挿入部材24を挿入する工程を含む。
図29(A)に示すように、軌道建設時又は軌道更新時に、路盤9の上面に道床バラスト8aを散布する。次に、
図29(B)に示すように、表層の道床バラスト8aに挿入部材24を差し込むように道床バラスト8aの上面にまくらぎ6を設置する。次に、まくらぎ6の下方に道床バラスト8aをつき入れるつき固め作業を実施する。その結果、周囲の道床バラスト8aのつき固めによって挿入部材
24の抜け止め部
24aと道床バラスト8aとが密着してこれらの間に大きな抵抗力が発生する。また、列車1の通過時に道床8に作用する載荷重などによって挿入部材
24間の道床バラスト8aに横圧が作用し、道床バラスト8aが挿入部材
24によって挟み込まれて締め付けられる。その結果、道床8の表層の道床バラスト8aと挿入部材
24とが一体化されて、表層の道床バラスト8aとまくらぎ6とが一体化される。
【0073】
この発明の第8実施形態には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第8実施形態では、道床8の表層の道床バラスト8aに複数の挿入部材24が挿入されており、この複数の挿入部材24がまくらぎ6の底面から突出している。このため、道床8の表層の道床バラスト8aに挿入部材24を挿入するだけで、表層の道床バラスト8aがまくらぎ6と一体化されて、表層の道床バラスト8aが跳ね上がるのを防止することができる。また、第1実施形態〜第7実施形態に比べて構造が簡単になり、施工の手間がかからず施工時間を短縮することができ低コスト化を図ることができる。
【0074】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この第1実施形態、第2実施形態、第4実施形態及び第5実施形態では、道床8と路盤9との間に挿入部材12を挿入する場合を例に挙げて説明したが、挿入部材12の挿入箇所を限定するものではない。例えば、道床8の表層の道床バラスト8aがまくらぎ6と挿入部材12との間に挟み込まれるように、挿入部材12を道床8内に挿入することもできる。また、この第3実施形態及び第4実施形態では、まくらぎ6と路盤9との間の全ての道床バラスト8aを収容部材14内に収容する場合を例に挙げて説明したが、このような収容方法に限定するものではない。例えば、道床8の表層のバラスト8aのみを収容部材14に収容することもできる。さらに、この第1実施形態〜第5実施形態では、連結部材13,15の張力調整部材13b,15bが張力調整ばねである場合を例に挙げて説明したが、張力調整ばね以外にターンバックルなどの張力調整部材によってワイヤの張力を調整することもできる。
【0075】
(2) この第3実施形態では、まくらぎ4と路盤9との間に収容部材14を3つ積み重ねて設置する場合を例に挙げて説明したが、収容部材14の積層数を3つに限定するものではない。例えば、道床8の厚さに応じて収容部材14を任意の個数設置することもできる。また、この第4実施形態では、まくらぎ4と路盤9との間に収容部材14を1つ設置する場合を例に挙げて説明したが、収容部材14の設置個数を1つに限定するものではない。例えば、道床8の厚さに応じて収容部材14を複数個積み重ねて設置することもできる。さらに、この第6実施形態では、連結部材19が所定の張力を発生するように装着部材17と連結部材19とを締結部材20によって締結する場合を例に挙げて説明したが、連結部材19が所定の張力を発生するように連結部材19と装着部材17とを溶接などによって固定することもできる。