(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動体に搭載され、前記移動体の移動方向軸上で合成開口によりN(N>1)個のパルスを画像化範囲に向けて送受信し、その受信信号から目標を検出して画像化する合成開口(SAR:Synthetic Aperture Radar)レーダ装置において、
前記合成開口の全体のSAR受信信号を周波数領域のパルス圧縮によりレンジ−周波数軸のレンジ−ドップラ(RD:Range Doppler)信号を生成して固定目標画像を含む全体画像を生成する全体画像生成手段と、
前記移動体の移動方向軸に従って取得した1〜N点におけるSAR受信信号に対して、重複を含めてM(M>1)通りの合成開口に分割し、前記分割された合成開口の受信信号をそれぞれ周波数領域に変換してレンジ(X)−周波数(Y)軸のRD信号を生成し、前記RD信号の代表する出力を用いて振幅の最大からP(P>1)番目までの極値を算出し、前記極値における前記M通りの合成開口の出力の位相差を、位相差を横軸にしたヒストグラムにして、度数が所定のスレショルドよりも大きい位相差の目標を固定目標と判定しそれ以外を移動目標として抽出し画像化する移動目標処理手段と、
前記画像化された移動目標を前記全体画像に重畳する画像重畳手段と
を具備する合成開口レーダ装置。
前記移動目標処理手段は、さらに、前記全体画像の中から前記抽出された移動目標のP(P>1)通りの位置(X,Y)を通る±ΔYの範囲のセルを抽出し、抽出セルの信号を時間領域の信号に変換して位相補正量を算出し、この位相補正量により前記抽出された移動目標を位相補正をした後に周波数領域に変換して画像化する請求項1記載の合成開口レーダ装置。
前記移動目標処理手段は、さらに、前記画像化範囲の領域を角度軸でN分割し、各々の分割単位毎に前記移動目標の抽出及び画像化処理を行って合成出力する請求項1記載の合成開口レーダ装置。
前記移動目標処理手段は、前記ヒストグラムにより抽出した位相差と自機高度、自機速度、目標方向、目標距離の少なくともいずれかの入力に対する位置補正量のテーブルを予め作成しておき、そのテーブルを参照して位相補正した移動目標の位置にシンボルまたは抽出した移動目標画像を重畳する請求項1記載の合成開口レーダ装置。
前記非SAR処理は、LPRF(Low Pulse Repetition Frequency)受信信号を取得し、周波数領域に変換してパルスドップラを取得し、レンジ軸に沿ってパルス圧縮し、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理で複数の極値を持つレンジセルを検出し、閾値以上の極値を持つレンジセルを移動目標として検出し、その検出目標を相関追跡することを特徴とする請求項5記載の合成開口レーダ装置。
前記全体画像生成手段及び前記移動目標処理手段は、前記RD信号による画像に対してポーラフォーマット変換による画像再構成処理を施す請求項1記載の合成開口レーダ装置。
移動体に搭載され、前記移動体の移動方向軸上で合成開口によりN(N>1)個のパルスを画像化範囲に向けて送受信し、その受信信号から目標を検出して画像化する合成開口(SAR:Synthetic Aperture Radar)レーダ装置のレーダ信号処理方法において、
前記合成開口の全体のSAR受信信号を周波数領域のパルス圧縮によりレンジ−周波数軸のレンジ−ドップラ(RD:Range Doppler)信号を生成して固定目標画像を含む全体画像を生成し、
前記移動体の移動方向軸に従って取得した1〜N点におけるSAR受信信号に対して、重複を含めてM(M>1)通りの合成開口に分割し、
前記分割された合成開口の受信信号をそれぞれ周波数領域に変換してレンジ(X)−周波数(Y)軸のRD信号を生成し、
前記RD信号の代表する出力を用いて振幅の最大からP(P>1)番目までの極値を算出し、
前記極値における前記M通りの合成開口の出力の位相差を、位相差を横軸にしたヒストグラムにして、度数が所定のスレショルドよりも大きい位相差の目標を固定目標と判定しそれ以外を移動目標として抽出し画像化し、
前記画像化された移動目標を前記全体画像に重畳する合成開口レーダ装置のレーダ信号処理方法。
さらに、前記全体画像の中から前記抽出された移動目標のP(P>1)通りの位置(X,Y)を通る±ΔYの範囲のセルを抽出し、抽出セルの信号を時間領域の信号に変換して位相補正量を算出し、この位相補正量により前記抽出された移動目標を位相補正をした後に周波数領域に変換して画像化する請求項9記載の合成開口レーダ装置のレーダ信号処理方法。
さらに、前記画像化範囲の領域を角度軸でN分割し、各々の分割単位毎に前記移動目標の抽出及び画像化処理を行って合成出力する請求項9記載の合成開口レーダ装置のレーダ信号処理方法。
前記ヒストグラムにより抽出した位相差と自機高度、自機速度、目標方向、目標距離の少なくともいずれかの入力に対する位置補正量のテーブルを予め作成しておき、そのテーブルを参照して位相補正した移動目標の位置にシンボルまたは抽出した移動目標画像を重畳する請求項9記載の合成開口レーダ装置のレーダ信号処理方法。
前記非SAR処理は、LPRF(Low Pulse Repetition Frequency)受信信号を取得し、周波数領域に変換してパルスドップラを取得し、レンジ軸に沿ってパルス圧縮し、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理で複数の極値を持つレンジセルを検出し、閾値以上の極値を持つレンジセルを移動目標として検出し、その検出目標を相関追跡することを特徴とする請求項13記載の合成開口レーダ装置のレーダ信号処理方法。
前記SARの処理は、スポットライトSAR方式、側方監視のストリップマップSAR方式のいずれかを採用する請求項9記載の合成開口レーダ装置のレーダ信号処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各実施形態の説明において、同一部分には同一符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
以下、
図1乃至
図4を参照して、第1の実施形態に係る飛翔体搭載の合成開口レーダ装置について説明する。
【0010】
図1は第1の実施形態に係る合成開口レーダ装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すレーダ装置において、アンテナ1は複数のアンテナ素子を配列して大開口アレイを形成してなるフェーズドアレイアンテナである。
【0011】
送受信器2は送受信部21から合成開口時間(1サイクル)内でPRI(Pulse Repetition Interval)間隔で送出される特定周波数の送信パルス信号(以下、PRF(Pulse Repetition Frequency)信号)をアンテナ1に送り、ビーム制御部22からの指定方向に送出してその反射波を受信する。また、送受信器2は、送受信部21において、アンテナ1の複数のアンテナ素子でそれぞれ受信された信号をビーム制御部22からの指示に従って位相制御を施し合成することで、任意の方向に受信ビームを形成してPRF受信信号を取得する。ここで、ビーム制御部22は、画像化したい範囲にビームを指向させ、そのビームによってアンテナ1により送受信した信号を信号処理器3に送る。
【0012】
上記信号処理器3に入力されたPRF受信信号は、AD(Analog-Digital)変換部31でデジタル信号に変換された後、第1の画像処理系と第2の画像処理系に分配される。
【0013】
第1の画像処理系において、レンジ圧縮部32及びAz圧縮部33は、それぞれ合成開口の受信サイクル毎に、ディジタル化された開口アレイのPRF受信信号をレンジ(距離)方向、クロスレンジ(アジマス角)方向に圧縮処理する。圧縮処理は、入力信号と圧縮用の参照信号との相関処理であり、周波数軸上において、入力信号のFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)結果と参照信号のFFT結果との乗算を行うことで全体画像を得る。この全体画像は画像重畳部34に送られる。
【0014】
一方、第2の画像処理系において、データ分割部35は、PRF受信信号について、画像化領域を角度方向に、所定の分割単位で一部重複させてM分割する。各分割領域のデータは、レンジ圧縮部36及びAz圧縮部37において、必要に応じてポーラフォーマット変換等を含めたFFT(Fast Fourier Transform)処理によるレンジ方向及びクロスレンジ方向の圧縮処理により画像化された後、極大値抽出部38に送られる。この極大値抽出部38は、各分割SAR画像から、最大振幅からP番目までの極大値を抽出する。極大値抽出結果は移動目標抽出部39に送られる。この移動目標抽出部39は、各分割SAR画像の極大値について、分割SAR画像間の位相差を検出し、その位相差がスレショルドを超える画素を移動目標として抽出し、移動目標画像として画像重畳部34に送る。画像重畳部34は全体画像に移動目標画像を重畳することで、固定目標と共に移動目標を表示された画像を出力する。
【0015】
上記構成によるSARレーダ装置において、
図2乃至
図8を参照して、SAR方式による画像処理について述べる。
【0016】
図2は、飛翔体搭載のSARレーダ装置がスポットライトSAR(非特許文献3参照)の場合のフライト軸(飛翔経路)と画像化範囲との位置関係を示している。
図2において、飛翔体Aに搭載されるSARレーダ装置は、実開口ビームを画像化範囲に常に照射するように指向制御し、合成開口時間(1サイクル)内でPRI間隔でパルスを送信し、パルス毎にPRI内のレンジセル単位でデータを取得する。
図3に表示画像の座標系の定義を示す。この取得データを用いてSAR処理を実施して、SAR画像を得る。なお、
図3はスポットライトSARの場合の図であるが、SAR画像を得られるのであれば、側方を観測するストリップマップSAR等の他の方式でもよい。
【0017】
まず、FFT画像(全体画像)の生成方法とFFT画像における移動目標の値を抽出する方法について述べる。
【0018】
第1の画像処理系では、レンジ圧縮部32において、合成開口の受信サイクル毎に、ディジタル化された開口アレイのPRF受信信号をレンジ(距離)方向にパルス圧縮する。パルス圧縮は、入力信号とパルス圧縮用の参照信号との相関処理であり、これを周波数軸上で行う(非特許文献1参照)。周波数軸上では、入力信号のFFT結果と参照信号のFFT結果の乗算を行うことになる。
【数1】
【0019】
時間軸上の信号に変換するには、パルス圧縮後の信号sを逆フーリエ変換すればよいが、この後でAz圧縮部33でクロスレンジ圧縮(非特許文献2参照)を行うために、信号sを周波数軸(ω,u)のままとする。
【0020】
次に、クロスレンジ圧縮用の参照信号fs0を生成する。
【数2】
【0021】
前述の信号sとクロスレンジ圧縮用の参照信号fs0を乗算してクロスレンジ圧縮された信号csを得る。
【数3】
【0022】
これを用いて、u軸でFFTして周波数軸上の信号fcs(ω,ku)を得る。
【数4】
【0023】
レンジ−ドップラ画像(以下RD画像と略す)出力は、参照信号fcsのω軸に関する逆FFTにより算出することができる。
【数5】
【0024】
RD画像では、X軸がパルス圧縮によるレンジ(目標までの往復時間tに比例、t軸)、Y軸がFFTによるクロスレンジ(ドップラー成分に比例、ku軸)に対応する。
【0025】
一方、第2の画像処理系では、移動目標を抽出するために、データ分割部35において、全合成開口長について重複を許容して、ずらしながらM個に分割し、レンジ圧縮部36及びAz圧縮部37により、第1の画像処理系と同様の画像処理により、M個の分割単位毎にRD画像を生成する。この様子を
図4、
図5に示す。
図4(a)は飛翔経路での分割領域を示し、
図4(b)は時間軸上での分割領域を示す。
図5(a)は各分割領域1〜MにおけるSAR分割画像を示し、
図5(b)は各分割領域1〜Mにおける位相抽出結果と分割画像毎の時間に対する位相差算出の流れを示す。
【0026】
次に、上記1〜M個の分割画像から、
図6に示すように、振幅極値を抽出する。
図6(a)は全体画像、
図6(b)は各分割領域1〜Mの分割画像を示している。このように、M通りのSAR画像は振幅強度の配列であり、I(m)(x,y)(m=1〜M)と表現する。ここで、xはレンジ、yはクロスレンジである。
【0027】
続いて、極大値抽出部38において、I(m)(x,y)より、極大値を抽出する。この方式としては、例えば、次の手順とする。
(1)I(m)(x,y)画像の強度をIamp(m)(x,y)として、Iamp(m)の最大値を算出し、最大値となる座標点(x,y)を抽出する。
(2)この最大値となる座標点(x,y)の周囲の所定の範囲の強度をゼロとする。
以降、極大値が所定の振幅以下になるまで(1)、(2)を繰り返して、極大値となる反射点の振幅値Iamp(m)と位相Iphs(m)とその座標(x,y)(m)(m=1〜M)を得ることができる。
【0028】
ここで、分割画像を生成するには、異なるサンプル点のデータが必要であり、合成開口長の全サンプル数をNallとすると、M分割する場合には、Nall=N×M点のサンプル点が必要である。観測ポイント数がそれより少ない場合には、次に示すゼロ埋めとFFTを用いた手法により、サンプル点数を増やしたNall個のデータxzとして処理すればよい。
【数6】
【0029】
サンプル点数を増やす他の方式としては、サンプリング定理を利用して、観測データにsinc関数により重み付けをすることで、サンプリングデータを補間する手法もある(非特許文献6参照)。
【0030】
次に、移動目標と固定目標の場合の画像の違いについて、
図7を用いて説明する。移動目標の場合には、
図7(a)に示すように、レーダ(飛翔体)から見てラジアル方向(視線方向)θsに対する速度ベクトル成分V(Vx,Vy)によりドップラ成分が発生するので、
図7(b)に示すように、目標固定の場合の位相面aに対して目標の速度ベクトルによる位相面のずれbが生じて、観測位相a+bに位相差が発生する。これにより、実際の位置からシフトした位置に画像が生成されることになる(非特許文献4参照)。
【0031】
これを補正するためには、固定目標と移動目標を区分して、移動目標の画像位置を補正する必要がある。この固定目標と移動目標を区分する手法として、対象とする目標により、例えば振幅強度の差もあるが、より確度の高い方法としては、位相差の度数分布による差による手法が考えられる。固定目標の場合、第1の実施形態の複数画像間ではほぼ同等の位相差になり、移動目標では速度に応じて固定目標と異なる位相差となる。これを、各点毎に、位相差に対する度数分布であるヒトストグラムで表現すると、
図8に示すように、固定目標を位相基準にすると、移動目標の基準位相に対する位相差が大きくなる。一般的に移動目標よりも固定目標の方が点数が多い。このため、移動目標抽出部39では、ヒストグラムにおいて度数の多い反射点の位相を基準として、所定の位相スレショルドを超える反射点を抽出することで、全体画像から移動目標のセルを抽出する。
【0032】
ここで、ヒストグラムに用いる位相差としては、具体的には、M個の画像があるため、次式により位相差を算出する。
【数7】
【0033】
この位相差の平均値Iphs_aveを用いて、ヒストグラムを生成すればよい。なお、M個の画像のうち、任意の2枚の画像等を用いて、位相差を算出してもよい。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る合成開口レーダ装置では、フライト軸に従って取得した入力信号(1〜N点)に対して、重複を含めてM通りの合成開口に分割し、FFT(Fast Fourier Transform)したレンジ(X)−周波数(Y)軸の出力のうち、代表する出力を用いて振幅の最大からP番目までの極大値を算出し、その極大値におけるM通りの出力の位相差を、位相差を横軸にしたヒストグラムにして、度数が所定のスレショルドよりも大きい位相差の極大値の位置を固定目標と判定し、それ以外を移動目標として抽出して画像化し、全体画像に重畳するようにしているので、画像化範囲の広さにかかわらず、移動目標を画像化して検出することができ、固定目標と共に移動目標を合わせて表示することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、固定目標と移動目標を位相差により区別して移動目標を抽出し、画像化して全体画像に重畳する手法について述べた。この場合、移動目標の位相の変化により大開口アレイの破面ずれにより移動目標の画像シフトが生じる課題が残る。そこで、第2の実施形態では、画像シフトを補正する手法を述べる。
【0036】
図9は、第2の実施形態に係る飛翔体搭載の合成開口レーダ装置の構成を示すブロック図である。
図9において、
図1に示した第1の実施形態の構成と異なる点は、移動目標抽出部39の後段に、全体画像から移動目標に対応するセルを抽出するセル抽出部3a、抽出したセルの位相から位相補正量を算出する位相補正量算出部3b、算出した位相補正量に基づいて移動目標画像を生成して画像重畳部34に送出する移動目標画像生成部3cを備える点にある。
【0037】
すなわち、第1の実施形態では、広範囲で位相ヒストグラムを生成すると、固定目標と移動目標のヒストグラムが広がり、固定目標と移動目標の弁別を誤るおそれがある。そこで、本実施形態では、移動目標抽出部39で移動目標を抽出した後、セル抽出部3aにおいて、第1の画像処理系から全体画像(
図10(a))を取り込んで抽出した移動目標の極値を含む(X,Y)座標のY軸に沿った±ΔYの範囲のセルを抽出する(
図10(b))。続いて、位相補正量算出部3bにて抽出セルを逆FFTして位相補正量fselとして算出し(
図10(c))、移動目標画像生成部3cにて、位相補正量fselに位相補正係数を乗算し、FFTして移動目標の補正画像を得る(
図10(d))。これを定式化すると次式となる。
【数8】
【0038】
生成した移動目標の画像は、移動目標の位相が補正位相量により補正されているため、画像重畳部34で全体画像に重畳したとき、画像シフトが補正され、固定画像に対して正しい位置に配置することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る合成開口レーダ装置によれば、移動目標の場合は分割画像の位相差を用いて補正位相量を算出し、その補正位相量によって移動目標の位相を補正した後に移動目標の画像化を行うようにしているので、固定画像に対して正しい位置に補正して表示することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、固定目標と移動目標を位相差により区別した後、移動目標の位相を補正し、画像シフトを補正する手法について述べた。この場合、広範囲で位相ヒストグラムを生成すると、固定目標と移動目標のヒストグラムが広がり、固定目標と移動目標の弁別を誤る可能性がある。本実施例では、この移動目標の誤検出を低減するために手法を述べる。
【0041】
図11は、第3の実施形態に係る飛翔体搭載の合成開口レーダ装置の構成を示すブロック図である。
図11において、
図9に示した第2の実施形態の構成と異なる点は、Az圧縮部37と極大値抽出部38の間に角度分割部3dを設け、移動目標画像生成部3cの後段に角度合成部3eを設けたことにある。角度分割部3dは、
図12に示すように、画像化領域を角度方向に、所定の分割角度単位でP分割する。このP分割により区分した移動目標毎に、(8)式及び(9)式を用いて移動目標画像の補正を行った後、角度合成部3eで合成する。このように角度分割して位相補正処理することにより、位相ヒストグラムを作成する範囲が狭くなる。このため、誤検出を低減することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る合成開口レーダ装置では、FFTしたレンジ(X)−周波数(Y)軸の出力のうち、代表する出力を用いて振幅の最大からP番目までの極大値を算出する際に、画像領域を角度軸でN分割し、各々の分割単位毎に極大値を算出し、その極大値におけるM通りの出力の位相差を、位相差を横軸にしたヒストグラムにして、度数が所定のスレショルドよりも大きい位相差の目標を固定目標、それ以外を移動目標点と判定して、全体画像の中からP通りの移動目標位置(X、Y)を通る±ΔYの画像データを抽出し、逆FFTして得られた信号に位相補正量による補正をした後、FFTして移動目標を画像化し、全体画像の固定目標画像に重畳する。したがって、移動目標の場合でも、角度分割した範囲毎に分割画像間の位相差を抽出して、限定した角度範囲における誤検出の少ない処理で、固定目標と移動目標を弁別できるため、移動目標の場合でも画像が生成され、検出することができる。
【0043】
なお、本実施形態は第2の実施形態に適用した場合を説明したが、第1の実施形態に適用すれば同様の効果を実現することができる。
【0044】
(第4の実施形態)
第1乃至第3の実施形態では、移動目標の画像を再構成する手法について述べた。第4の実施形態では、処理を簡易化するために、移動目標の位置を補正してシンボルで表示するか、生成した移動目標を補正した位置にシフトする手法について述べる。
【0045】
図13は、第4の実施形態に係る飛翔体搭載の合成開口レーダ装置の構成を示すブロック図である。
図13において、
図9に示した第2の実施形態と異なる点は、移動目標抽出部39の後段に位置補正量算出部3f、移動目標画像抽出部3g、シンボル作成部3hを備えることにある。
【0046】
すなわち、分割した画像毎に生成して振幅強度の極値を抽出する手法は、第1乃至第3の実施形態と同じである。極値の位相差により、移動目標のシフト位置については、予め位相差と位置ずれの関係を計算してテーブル化し、位置補正量算出部3fに登録しておく。テーブルへの入力パラメータとしては、位相差、自機高度、自機速度、目標のAz・EL角、目標距離等であり、出力がレンジ−クロスレンジ(X−Y)の画像シフト量である。
【0047】
このシフト量を用いて、
図14に示すように、補正前の位置にある移動目標画像の所定範囲を抽出して、補正後の位置に表示する。表示方法としては、
図15(a)に示すように移動目標のシンボルを生成し、
図15(b)に示すように移動目標画像と重畳させてもよい。また、
図16(a)に示すように、移動目標シンボルと固定目標画像と重畳させてもよいし、
図16(b)に示すように、移動目標シンボルと移動目標画像と固定目標画像と重畳させてもよい。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る合成開口レーダ装置では、ヒストグラムにより抽出した位相差と自機高度、自機速度、目標方向(Az・EL角)、目標距離等の入力に対する位置補正量のテーブルを予め作成しておき、そのテーブルを参照して補正した移動目標位置に、シンボルか抽出した移動目標の画像を位置補正して重畳するようにしているので、処理の簡易化を行いつつも、移動目標の位置を補正してシンボルで表示するか、生成した移動目標を補正した位置にシフトすることができる。
【0049】
なお、本実施形態は第2の実施形態に適用した場合を説明したが、第1または第3の実施形態に適用しても同様の効果を実現することができる。
【0050】
(第5の実施形態)
第1乃至第4の実施形態では、複数の分割画像の位相差により移動目標を検出するため、固定目標を移動目標として誤検出する場合も考えられる。この誤検出を少しでも抑圧するためには、画像化範囲を限定すればよい。そこで、第5の本実施形態として、画像化範囲を限定する手法について述べる。
【0051】
図17は、第5の実施形態に係る飛翔体搭載の合成開口レーダ装置の構成を示すブロック図である。
図17において、
図9に示した第2の実施形態の構成と異なる点は、LPRF(Low Pulse Repetition Frequency)等により、SAR処理をしない方式で目標を相関追跡して、移動目標を抽出し、その移動目標の位置を中心に、第1乃至第4のいずれかの実施形態の処理をすることにある。LPRF方式の場合、
図17に示すように、AD変換部31を介してLPRF受信信号を取得し、FFT処理部3iで周波数領域に変換してパルスドップラを取得し、レンジ圧縮部3jでレンジ軸に沿ってパルス圧縮し、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理部3kで複数の極値を持つレンジセルを検出し、移動目標検出部3lで閾値以上の極値を持つレンジセルを移動目標として検出し、移動目標相関追跡部3mでその検出目標を相関追跡する。この相関追跡により、移動目標の方向がわかるため、ビーム制御部22にその相関追跡結果を送り、当該ビーム制御部22によってビームをその方位に向けて、上記SAR処理により高精度に位置を出力する。SAR処理手法としては、第1乃至第4の実施形態に同じであり、移動目標の抽出範囲が限定される効果がある。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る合成開口レーダ装置では、LPRF等のSAR処理をしないCFAR処理等により、目標を相関追跡して、移動目標を抽出し、その移動目標位置を中心にSAR処理を行うようにしたので、移動目標の抽出範囲をLPRFの相関追跡処理により限定できるため、固定目標による誤検出を低減して、効率的に移動目標を抽出及び表示することができる。
【0053】
なお、上記実施形態において、合成開口処理方式については、RD画像について示したが、必要に応じてポーラフォーマット変換による画像再構成処理(非特許文献5参照)を用いてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、スポットライトSAR方式の場合について述べたが、側方監視のストリップマップSAR方式(サイドルッキングマッピングに同じ、非特許文献3参照)の場合でも適用することができる。
【0055】
その他、本実施形態は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。