(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数枚の基板を上下方向に並べて収納可能なフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の外部から内部にパージガスを供給可能な給気部材と、この給気部材からのパージガスを容器本体の内部後方から正面方向に供給可能なパージユニットとを備えた基板収納容器であって、
パージユニットを中空に形成し、このパージユニットの内部に、容器本体の底部後方の給気部材に連通するパージガス用の導入路を設け、この導入路に、パージガスを循環させるエンドレスの循環路を接続し、パージユニットを容器本体の内部後方に立て設けてその正面を容器本体の正面方向に向けるとともに、このパージユニットの正面には、循環路のパージガスを吹き出す吹出口を設けたことを特徴とする基板収納容器。
パージユニットを中空の略箱形に形成してその正面を着脱自在のパージプレートとし、このパージプレートに、循環路に対向する複数の吹出口を略等間隔に配列し、パージプレートと循環路との間に、濾過用のフィルタを介在させた請求項1記載の基板収納容器。
パージユニットの内部に、略トラック形の循環路を形成してその直線部を容器本体の上下方向に向け、循環路の直線部下方と下方の湾曲部のいずれかに導入路を接続した請求項1又は2記載の基板収納容器。
パージユニットを中空の略柱形に形成してその内部には導入路を設け、この導入路に略トラック形の循環路を接続し、パージユニットの正面に、循環路のパージガスを吹き出す複数の吹出口を並べ設けた請求項1記載の基板収納容器。
パージユニットを、容器本体の上下方向に伸びる前後一対のユニットハウジングに分割し、前部のユニットハウジングに複数の吹出口を並べて穿孔し、後部のユニットハウジング内に導入路を形成し、
循環路を、略筒形の配管により略トラック形に形成するとともに、配管を前後一対の配管部材に分割し、前部の配管部材を前部のユニットハウジング内に設けて複数の吹出口に連通させ、後部の配管部材を、後部のユニットハウジング内に設けて前部の配管部材に接離可能に対向させ、この後部の配管部材を導入路に接続するようにした請求項4記載の基板収納容器。
【背景技術】
【0002】
従来におけるFOUP等の基板収納容器は、
図11に部分的に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを上下方向に並べて収納可能なフロントオープンボックスの容器本体1と、この容器本体1の開口した正面を閉鎖する蓋体とを備え、容器本体1の底板の前後部に、一対の給気バルブと排気バルブとがそれぞれ配設されており、これら給気バルブと排気バルブとにより、内部の空気がパージされるとともに、窒素ガス等の不活性ガス(
図11の矢印参照)に置換されることで、半導体ウェーハWの表面酸化や汚染、配線の腐食が防止される(特許文献1、2参照)。
【0003】
容器本体1は、その左右両側壁の内面に、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対の支持片が対設され、この一対の支持片が上下方向に所定の間隔で配列されており、上下方向に隣接する支持片と支持片との間に、半導体ウェーハWの周縁部に摺接する断面略V字形のスロットが凹み形成されている。この容器本体1は、パージ装置70の付設された蓋体開閉装置71に搭載され、この蓋体開閉装置71により、開口した正面に蓋体が嵌合されたり、正面から蓋体が取り外されたりする。
【0004】
一対の給気バルブと排気バルブとは、例えばパージ装置70から容器本体1の内部に不活性ガスを給気する一対の給気バルブが容器本体1の底板後方にそれぞれ嵌着され、容器本体1の内部から外部に空気を排気する一対の排気バルブが容器本体1の底板前方にそれぞれ嵌着されている。
【0005】
一対の給気バルブには、不活性ガスの流通制御に資する観点から、中空の円柱形等に形成されたタワーノズル60の下端部がそれぞれ装着される。この一対のタワーノズル60は、容器本体1の上下方向に指向し、周壁の上下方向に複数の吹出口が並んで穿孔されており、この複数の吹出口から吹き出る不活性ガスの流れが交差しないよう装着角度が調整される(特許文献3参照)。
【0006】
このような基板収納容器は、容器本体1の正面が蓋体に閉鎖された状態でパージ装置70の付設された蓋体開閉装置71に搭載されると、パージ装置70から容器本体1の内部に不活性ガスが各給気バルブを経由して給気され、タワーノズル60の周壁上下方向に並んだ複数の吹出口から不活性ガスが半導体ウェーハWに接触しつつ蓋体方向に吹き出て容器本体1内に充満する。不活性ガスが容器本体1内に充満すると、容器本体1内の空気が外部に各排気バルブを経由してパージされ、容器本体1内の気体が空気から不活性ガスに置換されることとなる。
【0007】
ところで、基板収納容器は、一般的には容器本体1の正面が蓋体により閉鎖された状態でパージされるが、容器本体1内の相対湿度を一定水準以下に均一に低下させたい場合には、容器本体1の正面から蓋体が蓋体開閉装置71により取り外され、容器本体1の正面が開口した状態でパージされることがある(特許文献4参照)。
【0008】
この容器本体1の正面が開口した状態でパージされる場合には
図11に示すように、EFEM(Equipment Front End Module)72に併設された蓋体開閉装置71に基板収納容器の容器本体1が搭載され、この容器本体1の正面から蓋体が蓋体開閉装置71により取り外された後、EFEM72天井のファンフィルターユニット73から床方向に大量のクリーンエア(同図の矢印参照)がダウンフローされるとともに、パージ装置70から容器本体1内に不活性ガスが給気バルブを介して供給される。
【0009】
供給された不活性ガスは、タワーノズル60の下端部から上部に流動し、タワーノズル60の各吹出口から半導体ウェーハWに接触しつつ、容器本体1の開口した正面方向に吹き出ることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、優れた効果が期待できるものの、容器本体1の給気バルブにタワーノズル60の開口した下端部が単に装着されるに止まるので、容器本体1の半導体ウェーハW間における湿度にバラツキ、換言すれば、容器本体1の支持片間における湿度にバラツキが生じ、不具合が発生するおそれが考えられる。この点について詳しく説明すると、タワーノズル60の内部に給気された不活性ガスは、タワーノズル60の下方から上方に流動するにしたがい、タワーノズル60の上方側に徐々に蓄積されて圧力が高まり、下方の吹出口よりも上方の吹出口から強く大量に吹き出すので、タワーノズル60の上下方向で吹き出し量に差異が生じることとなる。
【0012】
タワーノズル60の高さに依存して各吹出口からの不活性ガスの吹き出し量に差異が生じると、複数枚の半導体ウェーハWを整列収納した容器本体1の支持片間における湿度がばらつき、半導体ウェーハWを支持する支持片によっては湿度が低下しないので、容器本体1内の相対湿度を均一に下げることができないおそれが考えられる。
【0013】
この問題は、
図11に示すように、容器本体1の正面を開口させて不活性ガスに置換する場合、容器本体1の正面下方付近で不活性ガスと大量にダウンフローされたクリーンエアとが部分的に衝突し、容器本体1内の空気が不活性ガスに置換されずに滞留(同図の折り返しの矢印参照)したり、半導体ウェーハWを支持する支持片間における湿度のバラツキが大きくなるので、より重大で深刻となる。
【0014】
係る問題を解消する手段としては、タワーノズル60の高さに応じ、吹出口の大きさを変更するという方法があげられる。しかしながら、ユーザによっては、不活性ガスの供給条件が異なったり、クリーンエアのダウンフローの流量が相違するので、吹出口の大きさを変更するという方法では、最適なタワーノズル60を必ずしも得ることができず、係る問題を解消することは困難である。
【0015】
本発明は上記に鑑みなされたもので、基板を支持する支持片間における湿度がばらつくのを低減することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明においては上記課題を解決するため、複数枚の基板を上下方向に並べて収納可能なフロントオープンボックスの容器本体と、この容器本体の外部から内部にパージガスを供給可能な給気部材と、この給気部材からのパージガスを容器本体の内部後方から正面方向に供給可能なパージユニットとを備えたものであって、
パージユニットを中空に形成し、このパージユニットの内部に、容器本体の底部後方の給気部材に連通(連なり通る)するパージガス用の導入路を設け、この導入路に、パージガスを循環させるエンドレスの循環路を接続し、パージユニットを容器本体の内部後方に立て設けてその正面を容器本体の正面方向に向けるとともに、このパージユニットの正面には、循環路のパージガスを吹き出す吹出口を設けたことを特徴としている。
【0017】
なお、パージユニットを中空の略箱形に形成してその正面を着脱自在のパージプレートとし、このパージプレートに、循環路に対向する複数の吹出口を略等間隔に配列し、パージプレートと循環路との間に、濾過用のフィルタを介在させることができる。
また、パージユニットの内部に、略トラック形の循環路を形成してその直線部を容器本体の上下方向に向け、循環路の直線部下方と下方の湾曲部のいずれかに導入路を接続することができる。
【0018】
また、パージユニットの下部側方に、給気部材用の接続管を設け、パージユニットの内部を複数のパージ空間に分割し、パージ空間の側部に、接続管に連通してパージ空間の下部から上方向に伸びるパージガス用の導入路を形成するとともに、この導入路に、パージ空間の上下部間に亘る大きなトラック形の循環路を形成することもできる。
また、パージユニットを中空の略柱形に形成してその内部には導入路を設け、この導入路に略トラック形の循環路を接続し、パージユニットの正面に、循環路のパージガスを吹き出す複数の吹出口を並べ設けることが可能である。
【0019】
また、パージユニットを、容器本体の上下方向に伸びる前後一対のユニットハウジングに分割し、前部のユニットハウジングに複数の吹出口を並べて穿孔し、後部のユニットハウジング内に導入路を形成し、
循環路を、略筒形の配管により略トラック形に形成するとともに、配管を前後一対の配管部材に分割し、前部の配管部材を前部のユニットハウジング内に設けて複数の吹出口に連通させ、後部の配管部材を、後部のユニットハウジング内に設けて前部の配管部材に接離可能に対向させ、この後部の配管部材を導入路に接続することが可能である。
さらに、パージユニットの循環路内の圧力バラツキを3Pa以下とすることが好ましい。
【0020】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくとも各種のウェーハや液晶ガラス等が含まれる。容器本体は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。この容器本体の内部両側には、基板を略水平に支持する一対の支持片を対向させて設け、この一対の支持片を上下方向に所定の間隔で配列することができる。容器本体の底部前方には、容器本体の内部から外部に気体を排気可能な排気部材を取り付けることができる。
【0021】
パージガスには、少なくとも各種の不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガス)とドライエア等が含まれる。このパージガスの循環路内の圧力や圧力バラツキは、パージガスの流速を用いた各種の解析により、測定することができる。また、循環路の形は、上流部に下流部が合流するエンドレスであれば、特に限定されるものではなく、トラック形、リング形、枠形等に形成することができ、少なくとも一部が容器本体の上下方向や左右幅方向に蛇行していても良い。吹出口の形も、必要に応じ、溝形、円形、楕円形、三角形や台形等の多角形とすることができる。
【0022】
本発明によれば、基板収納容器をパージする場合には、蓋体開閉装置等に基板収納容器を搭載し、容器本体の外部から内部にパージガスを供給する。すると、パージガスは、容器本体の給気部材からパージユニットの導入路と循環路とに順次導入され、循環路からパージユニット正面の吹出口を通過して吹き出る。
【0023】
この際、パージガスが循環路の一部に滞留することなく、流動して循環しながら吹き出るので、パージユニット内の圧力や湿度のバラツキが抑制され、圧力や湿度の均一化が図られたり、パージガスの劣化防止が図られる。吹出口からパージガスが吹き出すと、このパージガスが基板に接触しつつ複数枚の基板間を経由して容器本体の正面方向に流出し、容器本体内の気体が外部にパージされ、パージガスに置換される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、導入路に、パージガスを循環させるエンドレスの循環路を接続し、パージユニットを容器本体の内部後方に立て設けてその正面を容器本体の正面方向に向けるとともに、このパージユニットの正面には、パージガス用の吹出口を設けるので、基板を支持する支持片間における湿度がばらつくのを低減することができるという効果がある。
【0025】
請求項2記載の発明によれば、パージユニットのパージプレートを取り外せば、汚れたフィルタ等を簡単に交換することができるので、メンテナンス作業の簡素化や容易化を図ることができる。また、循環路に対応するよう複数の吹出口を略等間隔に配列するので、パージユニットの内部圧力の均一化に貢献することができる。
請求項3記載の発明によれば、パージユニット内の上下部間に亘る領域に大きな循環路を縦長に形成することができるので、問題化しやすい最上段と最下段の基板間における湿度のバラツキが大きくなるおそれを有効に排除することができる。
【0026】
請求項4又は5記載の発明によれば、パージガスがパージユニットの循環路を循環しながら吹出口から容器本体の正面方向に吹き出るので、循環路内の圧力バラツキを0〜3Pa以下に抑制することができ、パージユニットの上下方向でパージガスの吹き出し量に差異が生じるのを低減することが可能になる。したがって、基板を収納した容器本体内の湿度がばらつき、容器本体内の相対湿度を均一に下げることができないおそれを排除することができる。また、パージユニットの構成の多様化を図ることができる。
【0027】
請求項6記載の発明によれば、パージユニットの循環路内の圧力バラツキを3Pa以下とするので、パージユニットの吹出口から吹き出すパージガスの流速の一定化に資することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図6、
図11の一部に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを整列収納可能な容器本体1と、この容器本体1の正面を嵌合閉鎖する着脱自在の蓋体11と、容器本体1の正面を嵌合閉鎖した蓋体11を施錠する施錠機構15と、容器本体1の外部から内部に不活性ガスを供給可能な一対の給気バルブ20と、容器本体1の内部から外部に空気を排気可能な一対の排気バルブ30と、一対の給気バルブ20からの不活性ガスを容器本体1の内部後方から正面方向に供給可能なパージユニット40とを備え、このパージユニット40を容器本体1の内部後方に位置させ、このパージユニット40の正面に、循環路46の不活性ガスを流出させる複数の吹出口42を設けるようにしている。
【0030】
各半導体ウェーハWは、
図1に示すように、例えば表面に回路パターンが形成されたφ300mmやφ450mmの薄く丸いシリコンウェーハからなり、図示しない専用のロボット装置のアームにより、容器本体11の内部に水平に支持収納されたり、取り出されたりする。
【0031】
容器本体1、蓋体11、施錠機構15、一対の給気バルブ20、一対の排気バルブ30、及びパージユニット40は、所定の樹脂を含有する成形材料により射出成形されたり、ブロー成形される。この成形材料に含まれる樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0032】
容器本体1は、
図1ないし
図4に示すように、正面の開口したフロントオープンボックスタイプに成形され、底板2にインターフェイスとなる平坦なボトムプレート3が下方から螺着されており、このボトムプレート3がパージ装置70の付設された蓋体開閉装置71等に対する位置決め機能や固定機能を発揮する。
【0033】
容器本体1の左右両側壁の内面には、半導体ウェーハWの周縁部両側を略水平に支持する左右一対の支持片4が対設され、この一対の支持片4が容器本体1の上下方向に所定の間隔で配列されており、各支持片4が容器本体1の前後方向に指向する長板に形成されるとともに、この支持片4の表面先端部には、半導体ウェーハWの前方への飛び出しを規制する飛び出し防止段差部5が半導体ウェーハWの肉厚以上の厚さで一体形成される。
【0034】
容器本体1の底板2における後部両側付近には、容器本体1の背面壁6に近接する給気バルブ20用の取付孔7がそれぞれ丸く貫通して穿孔され、底板2における前部両側付近には、排気バルブ30用の取付孔7がそれぞれ丸く貫通して穿孔される。各取付孔7は、半導体ウェーハWの円滑な出し入れに資するよう、半導体ウェーハWの底板2に対する投影領域から外れる箇所に穿孔される。また、容器本体1の天板中央部には、半導体製造工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジ8が着脱自在に装着され、容器本体1の正面内周における上下部の両側には、蓋体11用の施錠穴がそれぞれ穿孔される。
【0035】
容器本体1の両側壁の中央部には、握持操作用に機能するグリップ部9がそれぞれ着脱自在に装着される。また、容器本体1の両側壁の下部には、搬送用のサイドレール10がそれぞれ選択的に装着される。
このような容器本体1は、蓋体開閉装置71に位置決めして搭載され、開口した正面に蓋体11が圧入して嵌合された状態でパージされたり、EFEM72に併設された蓋体開閉装置71に位置決めして搭載され、蓋体開閉装置71により正面からシール状態の蓋体11が取り外された後、正面が開口した状態でパージされる。
【0036】
蓋体11は、
図1に示すように、容器本体1の開口した正面内に圧入して嵌合される蓋本体12と、この蓋本体12の開口した正面を被覆する表面プレート14と、容器本体1の正面内周と蓋本体12との間に介在される密封封止用のシールガスケットとを備え、蓋本体12と表面プレート14との間に施錠用の施錠機構15が介在して設置される。
【0037】
蓋本体12は、基本的には底の浅い断面略皿形に形成され、内部に補強用や取付用のリブが複数配設されており、半導体ウェーハWに対向する対向面である裏面の中央部付近に、半導体ウェーハWとの接触を回避する凹部が形成されるとともに、この凹部には、半導体ウェーハWの周縁部前方を弾発的に保持するフロントリテーナ13が装着される。
【0038】
蓋本体12の裏面周縁部には枠形の嵌合溝が凹み形成され、この嵌合溝内に、容器本体1の正面内周に圧接する弾性のシールガスケットが密嵌されており、蓋本体12の周壁における上下部の両側には、容器本体1の施錠穴に対向する施錠機構15用の出没孔が貫通して穿孔される。
表面プレート14は、横長の正面矩形に形成され、補強用や取付用のリブ、螺子孔等が複数配設される。この表面プレート14の両側部には、施錠機構15用の操作孔がそれぞれ穿孔される。
【0039】
施錠機構15は、
図1に部分的に示すように、蓋体11の蓋本体12における左右両側部にそれぞれ軸支され、外部から回転操作される左右一対の回転プレートと、各回転プレートの回転に伴い蓋体11の上下方向にスライドする複数の進退動プレートと、各進退動プレートのスライドに伴い蓋本体12の出没孔から出没して容器本体1の施錠穴に接離する複数の施錠爪とを備えて構成される。
【0040】
各回転プレートは、蓋体11の表面プレート14の操作孔に対向し、この操作孔を貫通した蓋体開閉装置71の操作キーにより回転操作される。この回転プレートの周縁部付近には、湾曲した一対のカム溝が所定の間隔をおいて切り欠かれ、各カム溝に進退動プレートの末端部の連結ピンがスライド可能に嵌入される。
【0041】
各給気バルブ20は、
図1に部分的に示すように、例えば容器本体1の内部に臨む略円筒形の第一のハウジング21と、この第一のハウジング21の開口下部にOリングを介し着脱自在に嵌合されて容器本体1の外部に露出する略円筒形の第二のハウジングとを備え、これら第一、第二のハウジングが螺子を介して螺合されており、蓋体開閉装置71に容器本体1が位置決めして搭載される際、蓋体開閉装置71のパージ装置70に接続される。
【0042】
第一、第二のハウジングの外周面には平面略リング形の係止フランジがそれぞれ周設され、これらの係止フランジが容器本体1の取付孔7の周縁部に上下方向からOリングを介して係止することにより、容器本体1の底板2に給気バルブ20が強固に嵌着固定されて容器本体1の背面壁6に近接する。
【0043】
第一のハウジング21は、その開口した上端部が容器本体1内に露出し、内部に濾過用のフィルタ22が収納される。また、第二のハウジングは、第一のハウジング21よりも低く短く形成され、下部に接続用の継手が必要に応じて一体形成されており、パージ装置70からの不活性ガスを第一のハウジング21方向に供給する。
【0044】
各排気バルブ30は、
図1に部分的に示すように、例えば容器本体1の底板2における前部両側付近の取付孔7にOリングを介し嵌合される円筒形のケース31を備え、このケース31には、空気の流通を制御する逆止弁である開閉弁がコイルバネを介し上下動可能に内蔵されており、ケース31の開口した上下部には、濾過用のフィルタ32がそれぞれ嵌合される。このような排気バルブ30は、蓋体開閉装置71に容器本体1が位置決めして搭載され、給気バルブ20が不活性ガスを給気すると、正面が蓋体11により閉鎖された容器本体1内の空気を蓋体開閉装置71のパージ装置70に排気するよう機能する。
【0045】
パージユニット40は、
図1ないし
図3、
図5、
図6に示すように、例えば中空の箱形に形成され、内部に、容器本体1の一対の給気バルブ20に連通する不活性ガス用の導入路45がそれぞれ形成されており、各導入路45に、不活性ガスを循環させてその圧力を略均一化させるエンドレスの循環路46が接続される。
【0046】
パージユニット40は、縦長の薄く浅い箱形に形成されてその開口した正面に一対のパージプレート41が着脱自在に覆着され、この一対のパージプレート41に、複数の吹出口42がそれぞれ配列して穿孔されるとともに、各パージプレート41と循環路46との間に、不活性ガス中の微粒子を除去する縦長のメンブレンフィルタ43が介在されており、容器本体1の背面壁6内面寄りに立設されて正面のパージプレート41が容器本体1の正面方向に向けられる。
【0047】
パージユニット40は、容器本体1の背面壁6内面の中央部付近に対向し、下部両側には、下方に伸びる接続管がそれぞれ接続されており、各接続管が給気バルブ20に接続支持される。このパージユニット40は、必要に応じ、容器本体1の底板2後方、側壁後方、背面壁6、天板後方に超音波溶着、螺子結合、凹凸結合等の方法で固定される。
【0048】
パージユニット40の内部は、
図5や
図6に示すように、左右一対のパージ空間44に分割され、各パージ空間44がメンブレンフィルタ43に対応する正面矩形の縦長に区画形成される。各パージ空間44の側部には、接続管に連通してパージ空間44の下部から上方向に傾斜しながら伸びる不活性ガス用の導入路45が略I字の短い溝形に区画形成され、この導入路45の下流の上端部には、トラック(track)形で溝形の循環路46が一体形成されており、この循環路46が導入路45からの不活性ガスを周方向に循環させる。
【0049】
循環路46は、パージ空間44の上下部間に亘る大きな縦長に形成され、左右一対の長い直線部47と上下一対の短い半円弧形の湾曲部48のうち、一対の長い直線部47が容器本体1の上下方向にそれぞれ指向する。この循環路46の導入路45に隣接する直線部47の下方は、導入路45の下流と一体化される。循環路46の上流部と下流部とが合流する合流部、具体的には導入路45に隣接する直線部47の下方と下方の湾曲部48の上端部との接続部については、不活性ガスの圧力に変動を来すおそれがあるので、不活性ガスの圧力が略均一になるよう、必要に応じ、合流部の幅や深さが調整される。
【0050】
各パージプレート41は、
図2、
図3、
図5、
図6に示すように、各メンブレンフィルタ43や各パージ空間44に対応する正面矩形で縦長の薄板に形成され、複数の吹出口42がトラックを描いて循環路46に対向するよう等間隔に並設されるとともに、各吹出口42が円形に形成されてメンブレンフィルタ43に対向しており、この吹出口42が複数枚の半導体ウェーハW間に循環路46の不活性ガスを吹き出すよう機能する。
【0051】
上記構成において、容器本体1の正面を蓋体11により閉鎖した状態でパージする場合には、蓋体開閉装置71に基板収納容器の容器本体1を位置決め搭載し、容器本体1の外部から内部に不活性ガスを供給すれば良い。すると、不活性ガスは、
図1、
図3、
図6に矢印で示すように、蓋体開閉装置71のパージ装置70から給気バルブ20を経由してパージユニット40の接続管に流入し、この接続管を流通して導入路45と循環路46とに順次導入され、この循環路46からメンブレンフィルタ43を通過して各吹出口42から吹き出る。
【0052】
この際、不活性ガスが循環路46を滞留することなく、時計方向あるいは反時計方向に流動して循環(
図6の矢印参照)し、循環路46内の圧力バラツキが0〜3Pa以下となるので、パージユニット40の内部圧力が略均一化する。循環路46内の圧力バラツキは、0〜3Pa以下が最も好ましいが、0.1〜2.9Pa以下、あるいは0.2〜2.8Pa以下であれば、実用上、パージユニット40の内部圧力が略均一化する。
【0053】
各吹出口42から不活性ガスが吹き出すと、この不活性ガスが半導体ウェーハWに接触しつつ複数枚の半導体ウェーハW間を経由して容器本体1の正面方向に流出し、容器本体1内の空気が排気バルブ30により外部にパージされ、不活性ガスに置換される。
【0054】
これに対し、容器本体1の正面を開口させた状態でパージする場合には、EFEM72に併設された蓋体開閉装置71に容器本体1を位置決め搭載し、この容器本体1から蓋体11を蓋体開閉装置71により取り外した後、EFEM72天井のファンフィルターユニット73から床方向に大量のクリーンエアをダウンフローするとともに、容器本体1の外部から内部に不活性ガスを供給する。
【0055】
すると、不活性ガスは、上記同様、蓋体開閉装置71のパージ装置70から給気バルブ20、パージユニット40の接続管、導入路45を順次経由して循環路46に導入され、この循環路46を循環しつつ、メンブレンフィルタ43を通過して各吹出口42から吹き出る。この際にも、不活性ガスが循環路46を時計方向あるいは反時計方向に流動して循環し、循環路46内の圧力バラツキが0〜3Pa以下となるので、パージユニット40の内部圧力が略均一化する。循環路46内の圧力バラツキは、上記と同様、0〜3Pa以下が最も好ましいが、0.1〜2.9Pa以下、あるいは0.2〜2.8Pa以下であれば良い。
【0056】
各吹出口42から不活性ガスが吹き出ると、この不活性ガスが半導体ウェーハWに接触しつつ複数枚の半導体ウェーハW間を経由して容器本体1の正面方向に流出し、容器本体1内の空気が排気バルブ30により外部にパージされ、不活性ガスに置換される。
【0057】
上記構成によれば、不活性ガスがパージユニット40の上方側に徐々に蓄積されるのではなく、パージユニット40の循環路46を循環しながらパージ空間44の上下方向に流れ、各吹出口42から吹き出るので、不活性ガスが圧力の不均衡により、下方の吹出口42よりも上方の吹出口42から強く大量に吹き出る事態が減少する。したがって、パージユニット40の上下方向で不活性ガスの吹き出し量に差異が生じるのを有効に抑制することができるので、半導体ウェーハWを収納した容器本体1の支持片4間における湿度がばらつき、容器本体1内の相対湿度を均一に下げることができないおそれを排除することができる。
【0058】
特に、従来、問題となった最上段と最下段の半導体ウェーハWを支持する支持片4間における湿度のバラツキが大きくなるおそれをきわめて有効に排除することができる。また、パージユニット40の高さに応じ、吹出口42の大きさを変更する作業を省略することが可能になる。また、パージユニット40が薄く形成され、容器本体1の前後方向に大きなスペースを占有しないので、容器本体1の内部後方に容易に設置することが可能となる。
【0059】
また、パージユニット40のパージプレート41を取り外せば、不活性ガスにより、汚れたメンブレンフィルタ43を簡単に交換することができるので、メンテナンス作業の簡素化や容易化を図ることが可能になる。また、パージユニット40に循環路46を簡単に一体成形することができるので、パージユニット40の製造の円滑化、迅速化、容易化が大いに期待できる。さらに、循環路46に対応するよう複数の吹出口42を等間隔に並設するので、パージユニット40の内部圧力の均一化に貢献することができる。
【0060】
次に、
図7ないし
図10は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、パージユニット40を、一対の給気バルブ20に上方からそれぞれ直接接続される中空のタワーノズル形に形成し、一対のパージユニット40の内部にエンドレスの循環路46をそれぞれ一体化するようにしている。
【0061】
各パージユニット40は、例えば下端部が開口した前後一対のユニットハウジング50・50Aを組み合わせることで構成され、各ユニットハウジング50・50Aが断面半円形や溝形等に区画形成されて容器本体1の上下方向に伸長される。前後一対のユニットハウジング50・50Aは、前部のユニットハウジング50と後部のユニットハウジング50Aとが完全に分離していても良いが、複数のヒンジにより左右に並べて開閉揺動可能に接続されていても良い。また、給気バルブ20と別体でも良いが、必要に応じ、一体化することも可能である。
【0062】
前部のユニットハウジング50には、循環路46の一部に連通する複数の吹出口42が左右に並べて等間隔に穿孔され、各吹出口42が円形に形成されて循環路46の不活性ガスを容器本体1の正面方向に吹き出すよう機能する。また、後部のユニットハウジング50Aの内部下方には、給気バルブ20に連通する短い導入路45が溝形に区画形成される。この導入路45については、例えば筒形の配管を前後に二分割して一対のユニットハウジング50・50Aの内部にそれぞれ対向可能に一体形成することもできる。
【0063】
各循環路46は、例えば円筒形等からなる筒形の配管により、一対の長い直線部47が容器本体1の上下方向に指向する縦長のトラック形に形成され、配管が前後に二分割されて前後一対の配管部材51・51Aを形成しており、各配管部材51・51Aが断面半円弧形に湾曲してユニットハウジング50・50Aの内部に一体化される。前部の配管部材51は、前部のユニットハウジング50の内部周縁に一体化され、複数の吹出口42に対向して連通する。
【0064】
後部の配管部材51Aは、後部のユニットハウジング50Aの内部周縁に一体化されて前部の配管部材51に接離可能に対向し、導入路45に隣接する直線部47の下方が導入路45の下流と一体化される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0065】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、不活性ガスがパージユニット40の循環路46を循環しながら各吹出口42から吹き出るので、循環路46内の圧力バラツキを0〜3Pa以下にすることができ、パージユニット40の上下方向で不活性ガスの吹き出し量に差異が生じるのを有効に抑制することができるのは明らかである。
【0066】
したがって、半導体ウェーハWを収納した容器本体1の支持片4間における湿度がばらつき、容器本体1内の相対湿度を均一に下げることができないおそれを有効に排除することができる。さらに、パージユニット40の構成の多様化を図ることもできる。
【0067】
なお、上記実施形態では給気バルブ20にパージユニット40の接続管を直接接続したが、給気バルブ20に接続管を継手部材を介して接続しても良い。また、パージユニット40にパイプ製の導入路45と循環路46とをそれぞれ後から内蔵しても良い。また、パージユニット40の内部を複数のパージ空間44に分割したり、単一のパージ空間44としても良い。また、導入路45の下流と循環路46の直線部47下方とを一体形成しても良いが、導入路45の下流と循環路46の直線部47中央付近とを一体形成したり、導入路45の下流と循環路46下方の湾曲部48とを一体形成することもできる。
【0068】
また、必要に応じ、循環路46の直線部47上方や上方の湾曲部48を部分的に細くしたり、形成深さを浅くすることにより、パージユニット40の上部から吹き出すパージガスの吹き出し量を増大させることができる。さらに、必要に応じ、導入路45、循環路46の直線部47下方や下方の湾曲部48を部分的に太くしたり、形成深さを深くすることにより、パージユニット40の下部から吹き出すパージガスの吹き出し量を低下させることも可能である。