(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるシステムでは、加工物の形状に沿って形成されたレールを用いるため、異なる形状の他の加工物を持ち運ぶためには、他の加工物の形状に沿って形成された他のレールを用いた新たなシステムが必要となる。
そのため、複数種類の加工物を持ち運ぶためには、それぞれの加工物に応じた形状のレールを用意するとともに、持ち運ぶ加工物を替えるたびにレールを交換する必要がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、所定方向に沿って曲率を有する複数種類の板状部材ごとに専用部品を用意し、あるいは搬送する板状部材の種類を替えるたびに専用部品の交換作業を行うことなく、板状部材の形状に応じて吸着面の角度を適切に調整して板状部材に吸着することが可能な吸着装置、それを備えた把持装置、および板状部材の搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用する。
本発明の一態様にかかる吸着装置は、多関節駆動機構の先端部に取り付けられるとともに少なくとも所定方向に沿って曲率を有する板状部材に吸着する吸着装置であって、前記多関節駆動機構の前記先端部に取り付けられる支持部と、前記先端部に取り付けられる前記支持部の取付位置を挟むように第1方向に間隔を空けて配置される一対の吸着面を有する一対の吸着機構と、該一対の吸着機構それぞれの前記吸着面の前記第1方向に沿った傾斜角度を調整可能な一対の第1角度調整機構とを備える。
【0007】
本発明の一態様にかかる吸着装置によれば、多関節駆動機構の先端部への取付位置を挟むように第1方向に間隔を空けて配置される一対の吸着機構を、その第1方向と板状部材の曲率を有する所定方向とが一致するように板状部材に近付けることにより、一対の吸着面が板状部材に接触する。一対の吸着面が板状部材に接触した状態で一対の吸着機構が板状部材に吸着することにより、板状部材が多関節駆動機構の先端部に保持される。板状部材は所定方向に曲率を有するが、第1角度調整機構により所定方向と一致した第1方向に沿った吸着面の傾斜角度が調整されるため、曲率を有する板状部材の形状に沿って一対の吸着面がそれぞれ板状部材に吸着する。
【0008】
このように、本発明の一態様にかかる吸着装置によれば、所定方向に沿って曲率を有する複数種類の板状部材ごとに専用部品を用意し、あるいは搬送する板状部材の種類を替えるたびに専用部品の交換作業を行うことなく、板状部材の形状に応じて吸着面の傾斜角度を適切に調整して板状部材に吸着することができる。
【0009】
本発明の一態様にかかる吸着装置において、一対の吸着面のそれぞれは、前記第1方向が短く該第1方向に直交する第2方向に長い矩形状に形成されているものであってもよい。
このようにすることで、第1方向に沿った一対の位置で曲率を有する板状部材をその形状に沿って吸着しつつ、第1方向に直交する第2方向の広い範囲で板状部材を確実に吸着することができる。
【0010】
本発明の一態様にかかる吸着装置においては、前記第2方向に沿って配置される複数対の吸着機構を有し、前記第2方向に隣接する第1の前記一対の吸着機構と第2の前記一対の吸着機構との間に、前記第1の一対の吸着機構が有する前記吸着面の前記第2方向に沿った傾斜角度と前記第2の一対の吸着機構が有する前記吸着面の前記第2方向に沿った傾斜角度とを調整可能な第2角度調整機構を備える構成であってもよい。
【0011】
本構成によれば、所定方向に沿って曲率を有する板状部材が所定方向に直交する方向にも曲率を有するダブルコンター形状(面内の二軸方向で曲率が異なる形状)であっても、第2角度調整機構により所定方向に直交する方向に沿って吸着面の傾斜角度が調整されるため、所定方向に直交する方向に曲率を有する板状部材の形状に沿って一対の吸着面がそれぞれ板状部材に吸着する。
このように、本構成によれば、板状部材のダブルコンター形状に沿って一対の吸着機構により板状部材を確実に吸着することができる。
【0012】
本発明の一態様にかかる把持装置は、上記のいずれかに記載の吸着装置と、先端部に前記吸着装置が取り付けられる多関節駆動機構とを備える。
本発明の一態様にかかる把持装置によれば、所定方向に沿って曲率を有する複数種類の板状部材ごとに専用部品を用意し、あるいは搬送する板状部材の種類を替えるたびに専用部品の交換作業を行うことなく、板状部材の形状に応じて吸着面の角度を適切に調整して板状部材に吸着することができる。
【0013】
本発明の一態様にかかる搬送方法は、多関節駆動機構と該多関節駆動機構の先端部に取り付けられた吸着装置とを備える把持装置により所定方向に沿って曲率を有する板状部材を搬送する搬送方法であって、前記吸着装置は、前記多関節駆動機構の前記先端部に取り付けられる支持部と、前記先端部に取り付けられる前記支持部の取付位置を挟むように第1方向に間隔を空けて配置される一対の吸着面を有する一対の吸着機構と、該一対の吸着機構それぞれの前記吸着面の前記第1方向に沿った傾斜角度を調整可能な一対の第1角度調整機構とを備えており、前記第1角度調整機構により、前記板状部材の前記所定方向の曲率に応じて前記吸着面の前記第1方向に沿った傾斜角度を調整する調整工程と、前記多関節駆動機構により、前記所定方向と前記第1方向とを一致させた状態で前記一対の吸着面を前記板状部材に接触させる接触工程と、前記一対の吸着機構により、前記接触工程により前記一対の吸着面が前記板状部材に接触した状態で該一対の吸着面に前記板状部材を吸着させる吸着工程と、前記多関節駆動機構により、前記吸着工程により前記一対の吸着面に前記板状部材を吸着させた状態で該板状部材を搬送する搬送工程とを備える。
【0014】
本発明の一態様にかかる搬送方法によれば、一対の吸着面が板状部材に接触した状態で一対の吸着機構が板状部材に吸着することにより、板状部材が多関節駆動機構の先端部に保持される。板状部材は所定方向に曲率を有するが、第1角度調整機構により所定方向と一致した第1方向に沿った吸着面の傾斜角度が調整されるため、曲率を有する板状部材の形状に沿って一対の吸着面がそれぞれ板状部材に吸着する。そして、一対の吸着面にそれぞれ板状部材を吸着させた状態で板状部材が搬送される。
【0015】
このように、本発明の一態様にかかる搬送方法によれば、所定方向に沿って曲率を有する複数種類の板状部材ごとに専用部品を用意し、あるいは搬送する板状部材の種類を替えるたびに専用部品の交換作業を行うことなく、板状部材の形状に応じて吸着面の角度を適切に調整して板状部材を吸着して搬送することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所定方向に沿って曲率を有する複数種類の板状部材ごとに専用部品を用意し、あるいは搬送する板状部材の種類を替えるたびに専用部品の交換作業を行うことなく、板状部材の形状に応じて吸着面の角度を適切に調整して板状部材に吸着することが可能な吸着装置、それを備えた把持装置、および板状部材の搬送方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態にかかる組立システム700について、図面を参照して説明する。
本実施形態の組立システム700は、長辺方向の両端部に一対の位置決め孔220,221が形成された複数の板状構造部材200(板状部材)を組立用治具100(位置決め装置)に位置決めし、複数の板状構造部材200を鋲打ち(リベッティング)等の加工により組み立てるシステムである。
【0019】
図1に示す組立用治具100は、長辺方向の両端部に一対の位置決め孔220,221が形成された複数の板状構造部材200を位置決めする装置である。
図1に示すように、組立用治具100は、一対の第1支持部材110aと複数の第2支持部材110bからなる支持部110と、支持部110に取り付けられるとともに支持部110に板状構造部材200を位置決めする一対の位置決め部120,121とを備える。
一対の第1支持部材110aは、軸線Y1に沿って平行に配置される長尺状の部材であり、支持部110が設置される設置面に締結ボルト(図示略)等により固定されている。
【0020】
複数の第2支持部材110bは、一端が一対の第1支持部材110aの一方に固定され、他端が一対の第1支持部材110aの他方に固定される部材である。
図1に示すように、複数の第2支持部材110bのそれぞれは、軸線Y1に直交する軸線X1に沿った方向に延びるように互いに平行に配置されている。
図1に示すように、第2支持部材110bは、第1支持部材110aが設置される設置面に対して軸線X1に沿った中央部が両端部よりも上方に向けて突出したアーチ形状となっている。第2支持部材110bが曲率を持ったアーチ形状となっているのは、板状構造部材200の下面をその形状に沿って支持するためである。複数の第2支持部材110bは、板状構造部材200の下面(第1面)を軸線Y1に沿った複数箇所で支持する。
【0021】
一対の位置決め部120,121は、軸線X1に沿った同一位置に配置されている。軸線Y1に沿った両端側の第2支持部材110bには、軸線X1に沿った異なる3箇所の位置に一対の位置決め部120,121が3組形成されている。これら3組の一対の位置決め部120,121により3枚の板状構造部材200を位置決めすることが可能となっている。
【0022】
図2に示すように、板状構造部材200は、平面視が矩形状であるとともに長辺方向の一端に一対の位置決め孔220,221が形成された板状部材である。板状構造部材200の長辺方向の両端部には、それぞれ外方へ突出するように形成された一対の突出部210,211が形成されている。一対の位置決め孔220,221は、一対の突出部210,211に形成されている。
図3の斜視図に示すように、3枚の板状構造部材200は、軸線X1に沿った異なる3箇所の位置に配置される3組の一対の位置決め部120,121により支持部110に位置決めされる。
【0023】
本実施形態の板状構造部材200は、例えば、航空機の胴体や主翼に用いられる長尺状の構造部材である。長辺方向および短辺方向の長さとしては種々の長さが採用可能であるが、例えば長辺方向が8m〜10m、短辺方向が2m程度である。また、板状構造部材200の厚みは、例えば3mm〜5mmである。
【0024】
また、板状構造部材200の材料としては種々のものが採用可能であるが、例えばアルミニウム合金である。
また、
図2に示す板状構造部材200は、貫通穴が形成されていないものであるが、1箇所あるいは複数箇所に貫通穴(例えば、航空機の胴体に用いられる板状構造部材200の複数箇所に形成される窓取付用の貫通穴)を形成したものとしてもよい。
【0025】
次に、
図4から
図6を参照して、組立システム700により、板状構造部材200を組立用治具100に位置決めする工程について説明する。
図4に示すように、組立システム700は、組立用治具100と、板状構造部材200と、板状構造部材200を把持した状態で移動させる一対の把持装置300,400と、板状構造部材200を供給するために一時的に保持する供給台500と、組立システム700を制御する制御装置600とを備える。
【0026】
一対の把持装置300,400は多関節アーム330,430(多関節駆動機構)を有する垂直多関節ロボットであり、先端部330a,430aに取り付けられる吸着ハンド部310,410(吸着装置)を三次元空間状の任意の位置に任意の姿勢で位置決めすることが可能な装置である。
吸着ハンド部310,410は、負圧の作用により板状構造部材200の上面(第2面)に吸着するものである。
また、多関節アーム330,430の先端部330a,430aには、撮像装置320,420が取り付けられている。
【0027】
撮像装置320は、板状構造部材200の突出部210を撮像して画像情報を取得し、制御装置600へ送信する。制御装置600は、撮像装置320から受信した画像情報と把持装置300に取り付けられる撮像装置320の位置および姿勢とに基づいて、突出部210に形成される位置決め孔220の位置を算出する。
同様に、撮像装置420は、板状構造部材200の突出部211を撮像して画像情報を取得し、制御装置600へ送信する。制御装置600は、撮像装置420から受信した画像情報と把持装置400に取り付けられる撮像装置420の位置および姿勢とに基づいて、突出部211に形成される位置決め孔221の位置を算出する。
【0028】
一対の把持装置300,400は、
図4に実線で示す初期位置から、
図4に破線で示す位置へ吸着ハンド部310,410を移動させ、負圧の作用により板状構造部材200の上面に吸着する。
一対の把持装置300,400は、
図5に示すように、長尺状の板状構造部材200の長辺方向の両端側を吸着ハンド部310,410に吸着させた状態で、互いに協調しながら供給台500に保持された板状構造部材200を組立用治具100へ向けて移動させる。
【0029】
一対の把持装置300,400は、
図6に示すように、組立用治具100の一対の位置決め部120,121の上方に一対の位置決め孔220,221が配置されるように板状構造部材200を移動させる。その後、一対の把持装置300,400は、一対の位置決め部120,121に一対の位置決め孔220,221が位置決めされるように、板状構造部材200を下方に向けて移動させる。
【0030】
次に、本実施形態の多関節アーム330,430の先端部330a,430aに取り付けられる吸着ハンド部310,410について
図7から
図13を参照して説明する。
なお、以下では吸着ハンド部310について詳細に説明するが、吸着ハンド部410は吸着ハンド部310と同様の構造であるため、以下での説明を省略する。
【0031】
図7の平面図に示すように、吸着ハンド部310は、多関節アーム330の先端部330aに取り付けられる支持部311と、先端部330aに取り付けられる支持部311の取付位置P1を挟むように軸線X2方向(第1方向)に間隔を空けて配置される吸着機構312,313とを備える。吸着ハンド部310は、軸線Y2方向の同位置に配置される一対の吸着機構312,313を2組備えている。
【0032】
図7に示すように、支持部311は、軸線Y2に沿って延びるとともに軸線X2方向に間隔を空けて配置される一対の第1支持部材311aと、軸線X2に沿って延びるとともに軸線Y2方向に間隔を空けて配置される一対の第2支持部材311bと、一対の第2支持部材311bに両端が取り付けられる第3支持部材311cと、第3支持部材311cの上面に取り付けられる第4支持部材311dとを有する。一対の第2支持部材311bは、軸線X2方向の両端部がそれぞれ一対の第1支持部材311aに取り付けられている。
【0033】
図8の正面図に示すように、2つの吸着機構313のそれぞれは、2つの第1角度調整機構315を介して支持部311の第1支持部材311aに取り付けられている。
吸着機構313は、第1支持部材311aに取り付けられる吸着部313aと、吸着部313aに取り付けられるスポンジ部313bとを有する。スポンジ部313bの吸着部313aに取り付けられる面の反対側には、板状構造部材200を吸着する吸着面313cが形成されている。
【0034】
また、図示を省略するが、2つの吸着機構312のそれぞれは、2つの第1角度調整機構314を介して支持部311の第1支持部材311aに取り付けられている。
図11に示すように、吸着機構312は、第1支持部材311aに取り付けられる吸着部312aと、吸着部312aに取り付けられるスポンジ部312bとを有する。スポンジ部312bの吸着部312aに取り付けられる面の反対側には、板状構造部材200を吸着する吸着面312cが形成されている。
【0035】
図9(
図8に示す吸着面を底面側からみた図)に示すように、吸着面313cは、軸線X2方向が短く軸線X2に直交する軸線Y2方向に長い矩形状に形成されている。吸着機構313のスポンジ部313bには、平面視が矩形状の16個の貫通穴313dが形成されている。
スポンジ部313bの貫通穴313dに対応する位置の吸着部313aには、それぞれ4つの吸入孔313eが設けられている。吸入孔313eは、負圧源(図示略)に連結されている。
なお、スポンジ部313bに形成する貫通穴313dの数および吸着部313aに設ける吸入孔313eの数は、任意に設定可能である。
【0036】
同様に、吸着面312cは、軸線X2方向が短く軸線X2に直交する軸線Y2方向に長い矩形状に形成されている。吸着機構312のスポンジ部312bには、平面視が矩形状の16個の貫通穴312dが形成されている。
スポンジ部312bの貫通穴312dに対応する位置の吸着部312aには、それぞれ4つの吸入孔312eが設けられている。吸入孔312eは、負圧源(図示略)に連結されている。
なお、スポンジ部312bに形成する貫通穴312dの数および吸着部312aに設ける吸入孔312eの数は、任意に設定可能である。
【0037】
吸着機構312の吸着面312cを板状構造部材200に近接させると、スポンジ部312bの貫通穴312dが形成されない部分のみが板状構造部材200に接触する。スポンジ部312bの貫通穴312dの部分は、板状構造部材200と吸着部312aとスポンジ部312bにより仕切られる閉空間となる。この閉空間内の空気が吸入孔312eから吸入されて外部へ排出されることにより、この閉空間内の圧力が大気圧より低い負圧状態となって板状構造部材200が吸着面312cに吸着する。
【0038】
同様に、吸着機構313の吸着面313cを板状構造部材200に近接させると、スポンジ部313bの貫通穴313dが形成されない部分のみが板状構造部材200に接触する。スポンジ部313bの貫通穴313dの部分は、板状構造部材200と吸着部313aとスポンジ部313bにより仕切られる閉空間となる。この閉空間内の空気が吸入孔313eから吸入されて外部へ排出されることにより、この閉空間内の圧力が大気圧より低い負圧状態となって板状構造部材200が吸着面313cに吸着する。
【0039】
次に、吸着ハンド部310が有する一対の第1角度調整機構314,315について説明する。
図10(
図7に示す吸着ハンド部のA−A矢視図)に示すように、第1角度調整機構314は、吸着機構312を第1支持部材311aに取り付ける機構である。また、第1角度調整機構315は、吸着機構313を第1支持部材311aに取り付ける機構である。
一対の吸着機構312,313は、少なくとも軸線X2方向に沿って曲率を有する板状構造部材200に吸着する一対の吸着面312c,313cを有する機構である。
【0040】
図11(
図10に示す第1角度調整機構314の部分拡大図)に示すように、第1角度調整機構314は、吸着部312aが下面に取り付けられる板状部材314aと、板状部材314aの上面に取り付けられる揺動部材314bと、第1支持部材311aの下面に取り付けられる一対の第1角度調整部材314cと、一対の角度調整部材314cに形成される締結穴の雌ねじに挿入される一対の固定ピン314dと、第1支持部材311aの下面に取り付けられる第2角度調整部材314eとを有する。
【0041】
図11に示す第2角度調整部材314eは、揺動部材314bに形成された貫通穴に挿入される支持軸314fを支持する部材である。
図11中に矢印で示すように、支持軸314fにより支持される揺動部材314bは、支持軸314f回りに揺動可能となっている。
外周面に雄ねじが形成された一対の固定ピン314dは、一対の支持部材314cの締結穴への締結量(固定ピン314dの軸回りの回転量)を調整することにより、その先端位置が調整される。
図11に示すように、揺動部材314bの右側面および左側面に一対の固定ピン314dの先端を突き当てることにより、揺動部材314bの支持軸314f回りの揺動角度θが固定される。
【0042】
図11に示すように、揺動部材314bの支持軸314f回りの揺動角度θは、吸着機構312の吸着面312cの軸線X2に沿った傾斜角度θとなっている。第1角度調整機構314により、吸着機構312の吸着面312cの軸線X2方向(第1方向)に沿った傾斜角度θが調整可能となっている。
なお、
図11においては、第1角度調整機構314について説明したが、第1角度調整機構315の構造も第1角度調整機構314と同様である。
このように、本実施形態の吸着ハンド部310は、一対の吸着機構312,313それぞれの吸着面312c,313cの軸線X2に沿った傾斜角度θを調整可能な一対の第1角度調整機構314,315を備える。
【0043】
図11に示す揺動部材314bに対する板状部材314aの取付位置は、軸線X2に沿って移動可能となっている。揺動部材314bに対する板状部材314aの取付位置は、
図11に示す位置から、
図12に実線で示す位置または
図12に破線で示す位置に移動可能となっている。
揺動部材314bに対する板状部材314aの取付位置を、
図11に示す位置から
図12に実線で示す位置に移動させた場合、
図10に示す一対の吸着機構312,313の配置間隔Dが軸線X2に沿って広がることとなる。また、揺動部材314bに対する板状部材314aの取付位置を、
図11に示す位置から
図12に破線で示す位置に移動させた場合、
図10に示す一対の吸着機構312,313の配置間隔Dが軸線X2に沿って狭まることとなる。
【0044】
このように、本実施形態の一対の第1角度調整機構314,315により、一対の吸着機構312,313の軸線X2方向の配置間隔Dを調整することができる。例えば、板状構造部材200の軸線X2方向の曲率半径が小さい場合には配置間隔Dを狭くし、板状構造部材200の軸線X2方向の曲率半径が大きい場合には配置間隔Dを広くすることで、板状構造部材200の軸線X2方向の曲率に応じた適切な位置に一対の吸着機構312,313を配置し、板状構造部材200を確実に吸着することができる。
【0045】
次に、本実施形態の把持装置300,400により板状構造部材200を搬送する搬送方法について説明する。
本実施形態の把持装置300,400は、以下の手順により供給台500に保持される板状構造部材200を把持して組立用治具100まで搬送する。
第1に、把持装置300,400を操作する操作者は、供給台500の保持される板状構造部材200の形状(曲率)に対して適切な傾斜角度θとなるように第1角度調整機構314,315により吸着面312c,313cの傾斜角度θを調整する(調整工程)。この調整は、第1角度調整機構314が有する固定ピン314dの締結量を調整し、揺動部材314bの支持軸314f回りの揺動角度を調整することにより行われる。この調整は、第1角度調整機構315についても同様の方法により行われる。
【0046】
第2に、把持装置300,400を操作する操作者は、制御装置600に制御指令を入力して多関節アーム330,430を動作させ、一対の吸着機構312,313の一対の吸着面312c,313cを板状構造部材200に接触させる(接触工程)。
制御装置600は、板状構造部材200が曲率を有する方向(
図1,3の軸線X1方向)と吸着ハンド部310,410の軸線X2方向とを一致させた状態で、一対の吸着機構312,313の一対の吸着面312c,313cを板状構造部材200に接触させる。
【0047】
図13は、吸着機構312の吸着面312cを板状構造部材200に接触させた状態を示す図である。なお、
図13に示す破線は、吸着機構312の吸着面312cを板状構造部材200に接触させる前の状態を示している。
図13では、吸着機構312を基準として板状構造部材200が吸着面312cへの接触の前後で移動する図となっているが、実際には板状構造部材200が供給台500の一定の位置に保持されたまま吸着機構312が板状構造部材200に近付く方向に移動する。
【0048】
図13に示すように、吸着機構312のスポンジ部312bは、板状構造部材200に接触させる前よりも厚さが薄くなっている。これは、多関節アーム330がスポンジ部312bを板状構造部材200に押し付ける力によりスポンジ部312bが収縮するからである。スポンジ部312bは、収縮して厚さが薄くなると、側面から内部への空気の流通が遮断あるいは抑制される。これにより、吸着部312aがスポンジ部312bの内部に発生させる負圧により外部の空気がスポンジ312bの内部に流入することが抑制される。
【0049】
多関節アーム330がスポンジ部312bを板状構造部材200に押し付ける力は、例えば、スポンジ部312bの厚さが押し付ける前の半分以下となるように調整するのが望ましい。あるいは、スポンジ部312bの厚さが少なくとも所定厚さ(例えば、10mm)以上収縮するように調整するのが望ましい。
【0050】
第3に、把持装置300,400を操作する操作者は、制御装置600に制御指令を入力して、一対の吸着面312c,313cが板状構造部材200に接触した状態で、一対の吸着面312c,313cに板状構造部材200を吸着させる(吸着工程)。具体的には、吸着ハンド部310,410が吸入孔312e,313eからスポンジ312bの内部の空気を外部へ排出するように制御装置600に制御指令を入力する。
【0051】
第4に、把持装置300,400を操作する操作者は、制御装置600に制御指令を入力して、一対の吸着面312c,313cに板状構造部材200を吸着させた状態で板状構造部材200を組立用治具100へ搬送するよう把持装置300,400を制御する。
以上のようにして、本実施形態の把持装置300,400は、供給台500に保持される板状構造部材200を把持して組立用治具100まで搬送する。
【0052】
以上説明した本実施形態が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の吸着ハンド部310,410によれば、多関節アーム330,430の先端部330a,430aへの取付位置P1を挟むように軸線X2方向に間隔を空けて配置される一対の吸着機構312,313を、その軸線X2方向と板状構造部材200の曲率を有する軸線X1方向とが一致するように板状構造部材200に近付けることにより、一対の吸着面312c,313cが板状構造部材200に接触する。一対の吸着面312c,313cが板状構造部材200に接触した状態で一対の吸着機構312,313が板状構造部材200に吸着することにより、板状構造部材200が多関節アーム330,430の先端部330a,430aに保持される。板状構造部材200は軸線X1方向に曲率を有するが、第1角度調整機構314,315により軸線X1方向と一致した方向に沿った吸着面312c,313cの傾斜角度θが調整されるため、曲率を有する板状構造部材200の形状に沿って一対の吸着面312c,313cがそれぞれ板状構造部材200に吸着する。
【0053】
このように、本実施形態の吸着ハンド部310,410によれば、軸線X1方向に沿って曲率を有する複数種類の板状構造部材200ごとに専用部品を用意し、あるいは搬送する板状構造部材200の種類を替えるたびに専用部品の交換作業を行うことなく、板状構造部材200の形状に応じて吸着面312c,313cの傾斜角度を適切に調整して板状構造部材200に吸着することができる。
【0054】
本実施形態の吸着ハンド部310,410において、一対の吸着面312c,313cのそれぞれは、軸線X2方向が短く軸線X2方向に直交する軸線Y2方向に長い矩形状に形成されている。
このようにすることで、軸線X2方向に沿った一対の位置で曲率を有する板状構造部材200をその形状に沿って吸着しつつ、軸線X2方向に直交する軸線Y2方向の広い範囲で板状構造部材200を確実に吸着することができる。
【0055】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態にかかる組立システムについて図面を参照して説明する。
本実施形態の組立システムは、第1実施形態の組立システム700の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとする。
第1実施形態の組立システム700が備える吸着ハンド部310は、軸線Y2に沿った一対の吸着面312c,313cを軸線Y2と平行に維持するものであった。この第1実施形態の吸着ハンド部310は、軸線Y2方向に曲率を有しない板状構造部材200を吸着することを前提としたものである。
【0056】
それに対して本実施形態の組立システムが備える吸着ハンド部310’は、軸線Y2に沿った一対の吸着面312c’,313c’を軸線Y2に対して傾斜させることが可能な第2角度調整機構316を備えるものである。この本実施形態の吸着ハンド部310’は、軸線Y2方向に曲率を有する板状構造部材200を吸着することが可能な構造である。
【0057】
図14に示すように、本実施形態の吸着ハンド部310’は、軸線Y2方向に沿って配置される3組みの吸着機構312’,313’を有する。なお、
図14は正面図であるため、軸線Y2に沿って配置される3組の吸着機構313’が示されている。
図14中に括弧書きで付した符号は、吸着ハンド部310’を背面側からみた場合の吸着機構312’と吸着面312c’を示している。
【0058】
図14に示すように、本実施形態の吸着ハンド部310’は、軸線Y2方向に隣接する第1の一対の吸着機構312’,313’(
図14中の左側に示す機構)を支持する支持部311’および第2の一対の吸着機構312’,313’(
図14中の中央に示す機構)を支持する支持部311’との間に、それらの軸線Y2方向に沿った一対の吸着面312c’、313c’の傾斜角度を調整可能な第2角度調整機構316を有する。
第2角度調整機構316は、
図14中の中央に示す吸着機構313’の傾斜角度を固定する場合には、中央の吸着機構313’の傾斜角度に対する左側の吸着機構313’の傾斜角度αを調整することが可能である。
【0059】
本実施形態の吸着ハンド部310’によれば、軸線X1方向に沿って曲率を有する板状構造部材200が軸線X1方向に直交する軸線Y1方向にも曲率を有するダブルコンター形状(面内の二軸方向で曲率が異なる形状)であっても、第2角度調整機構316により吸着面312c’,313c’の傾斜角度が調整されるため、軸線X1方向に直交する軸線Y1方向に曲率を有する板状構造部材200の形状に沿って吸着面312c’、313c’が板状構造部材200に吸着する。
このように、本実施形態によれば、板状構造部材200のダブルコンター形状に沿って一対の吸着機構312’,313’により板状構造部材200を確実に吸着することができる。
【0060】
〔他の実施形態〕
多関節アーム330の先端部330aと支持部311の第4支持部材311dを連結する構造として、例えば、
図15に示すフローティング機構318を採用してもよい。
フローティング機構318は、支持部311に先端が球形状の軸部材318aを取り付け、軸部材318aの先端を収容する収容室318bを先端部330aの内部に形成した機構である。
【0061】
軸部材318aの先端が収容室318b内に回転自在に収容されているため、多関節アーム330の先端部330aに対する支持部311の取付角度を一定の許容角度(例えば1度)の範囲で回転させることができる。そのため、多関節アーム330の先端部330aの位置決めに誤差が生じる場合であっても、一定の許容角度(例えば1度)の範囲で誤差を吸収することができる。
【0062】
軸部材318aの先端の球形状部分の外径を、収容室318bの内径よりも微小に小さくしてもよい。このフローティング機構318により、例えば、多関節アーム330の先端部330aに対する支持部311の取付角度を一定の許容角度(例えば1度)の範囲で移動させることができる。そのため、多関節アーム330の先端部330aの位置決めに誤差が生じる場合であっても、一定の許容角度(例えば1度)の範囲で誤差を吸収することができる。
【0063】
以上で説明した第1角度調整機構314,315および第2角度調整機構316は、それぞれモータ等の駆動機構により吸着面312c,313cの傾斜角度を調整可能なものとしてもよい。
この場合、把持装置300,400の操作者は、制御装置600に第1角度調整機構314,315および第2角度調整機構316を制御するための制御指令を入力することにより、吸着面312c,313cの傾斜角度を任意に調整することができる。