特許第6367175号(P6367175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367175
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/12 20100101AFI20180723BHJP
【FI】
   H01L33/12
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-251601(P2015-251601)
(22)【出願日】2015年12月24日
(62)【分割の表示】特願2014-89637(P2014-89637)の分割
【原出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-136619(P2016-136619A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2015年12月25日
【審判番号】不服2017-10988(P2017-10988/J1)
【審判請求日】2017年7月24日
(31)【優先権主張番号】61/580,729
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】317016523
【氏名又は名称】アルパッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】布谷 伸仁
(72)【発明者】
【氏名】赤池 康彦
(72)【発明者】
【氏名】夏目 嘉徳
(72)【発明者】
【氏名】古川 和由
【合議体】
【審判長】 居島 一仁
【審判官】 森 竜介
【審判官】 星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−73619(JP,A)
【文献】 特開2013−140941(JP,A)
【文献】 特開2007−251112(JP,A)
【文献】 特開2001−313436(JP,A)
【文献】 特開2003−347587(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0101413(US,A1)
【文献】 特開平1−259578(JP,A)
【文献】 特開2000−183401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
LED層と、
前記基板と前記LED層との間に設けられ、金インジウム合金からなる接合層と、
前記基板と前記接合層との間に配置され、純金からなる第1の緩衝層と、
前記接合層と前記LED層との間に配置され、純金からなる第2の緩衝層と、
を備えた半導体発光素子。
【請求項2】
前記第2の緩衝層と前記LED層との間に設けられ、純銀からなる反射層をさらに備えた請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1または第2の緩衝層の厚さは0.1〜1μmである請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記接合層と前記第1の緩衝層との間に配置され、チタンを含む層と、白金を含む層とを有するバリア層をさらに備えた請求項1〜のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記接合層と前記第2の緩衝層との間に配置され、チタンを含む層と、白金を含む層とを有するバリア層をさらに備えた請求項1〜のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記バリア層は、
チタンを含む第1層と、
チタンを含む第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に配置され、白金を含む第3層と、
を有した請求項4または記載の半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)層及び支持基板を備えたLEDでは、LED層と支持基板との間に金合金等の接合層を有するものがある。
【0003】
この種のLEDでは、ダイシング等の製造時、LED層、支持基板及び接合層などの界面が剥離してしまう場合があり、歩留まりが低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−129621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、界面剥離が生じにくい半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る半導体発光素子は、基板と、LED層と、前記基板と前記LED層との間に設けられ、金インジウム合金からなる接合層と、前記基板と前記接合層との間に配置され、純金からなる第1の緩衝層と、前記接合層と前記LED層との間に配置され、純金からなる第2の緩衝層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
図2】(a)〜(c)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程断面図である。
図3】(a)及び(b)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程断面図である。
図4】第1の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程断面図である。
図5】第2の実施形態に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
図6】(a)〜(c)は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程断面図である。
図7】第3の実施形態に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
図8】第4の実施形態に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
図9】第5の実施形態に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
図10】比較例に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
図11】比較例に係る半導体発光素子の製造方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
本実施形態に係る半導体発光素子は、薄膜型LEDである。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体発光素子1においては、例えば、単結晶のシリコン(Si)からなる支持基板10が設けられている。支持基板10上には、バリア層11が設けられている。バリア層11は、例えば、チタン(Ti)層21、白金(Pt)層22及びチタン(Ti)層23がこの順に積層された(Ti/Pt/Ti)3層膜である。
【0010】
バリア層11上には、接合層12が設けられている。接合層12は金インジウム(Au−In)合金により形成されている。接合層12の厚さは、例えば1〜5μm程度である。接合層12上には、バリア層13が設けられている。バリア層13は、バリア層11と同様な(Ti/Pt/Ti)3層膜である。
【0011】
バリア層13上には、緩衝層14が設けられている。緩衝層14は接合層12よりも軟質である。例えば、緩衝層14を形成する材料のヤング率は、接合層12の形成する材料のヤング率よりも低い。緩衝層14は金(Au)を含む材料、例えば、純金により形成されている。緩衝層14の厚さは例えば0.1〜1μmであり、例えば0.4μmである。
【0012】
緩衝層14上には、バリア層15が設けられている。バリア層15の構成は、バリア層11と同様である。バリア層15上には、反射層16が設けられている。反射層16は、銀(Ag)を含む材料からなり、例えば、純銀からなる。なお、反射層16は、アルミニウム(Al)により形成されていてもよい。
【0013】
反射層16上には、LED層17が設けられている。LED層17は、電力が供給されることにより発光する層である。LED層17においては、支持基板10側から順に、p形層25、発光層26及びn形層27が積層されている。LED層17の構造は、例えば、インジウム−アルミニウム−ガリウム−リン(InAlGaP)の4元系成分からなるMQW(Multiple Quantum Well:多重量子井戸)構造である。
LED層17上の一部には、上部電極層18が設けられている。また、支持基板10の下面上の全面には、下部電極層19が設けられている。
【0014】
バリア層11は、支持基板10と接合層12との間の反応を抑制する層である。バリア層13は、接合層12と緩衝層14との間の反応を抑制する層である。バリア層15は、緩衝層14と反射層16との間の反応を抑制する層である。なお、各バリア層は、ニッケル(Ni)を含む層により形成されていてもよい。反射層16は、LED層17から下方に向けて出射された光を、上方に向けて反射する層である。
【0015】
次に、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法について説明する。
図2(a)〜(c)、図3(a)及び(b)、図4は、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程断面図である。
【0016】
先ず、図2(a)に示すように、支持基板10を用意する。支持基板10には、例えば、シリコンウェーハを用いる。そして、支持基板10上にチタン層21(図1参照)、白金層22(図1参照)及びチタン層23(図1参照)をこの順に堆積させることにより、バリア層11を形成する。次に、金を含む材料、例えば、純金を堆積させて、バリア層11上に接合層31を形成する。接合層31の厚さは、完成後の半導体発光素子1における接合層12(図1参照)の厚さの半分程度とする。このようにして、支持基板10上にバリア層11及び接合層31が積層された支持部材41が作製される。
【0017】
一方、図2(b)に示すように、結晶成長用基板30を用意する。結晶成長用基板30には、例えば、単結晶のガリウムヒ素(GaAs)基板を用いる。そして、結晶成長用基板30上に、n形層27(図1参照)、発光層26(図1参照)及びp形層25(図1参照)をこの順にエピタキシャル成長させることにより、LED層17を形成する。
【0018】
次に、例えば銀を堆積させて、LED層17上に反射層16を形成する。次に、チタン、白金及びチタンをこの順に堆積させて、バリア層15を形成する。次に、金を含む材料、例えば純金を堆積させて、バリア層15上に緩衝層14を形成する。次に、緩衝層14上にバリア層13を形成する。次に、金を含む材料、例えば、純金を堆積させて、バリア層13上に接合層32を形成する。接合層32の厚さは、完成後の半導体発光素子1における接合層12(図1参照)の厚さの半分程度とする。このようにして、結晶成長用基板30上にLED層17、反射層16、バリア層15、緩衝層14、バリア層13及び接合層32がこの順に積層されたLED部材42が作製される。
【0019】
次に、図2(c)に示すように、接合層31上又は接合層32上の少なくとも一方に、インジウム層33を形成する。そして、支持部材41の接合層31と、LED部材42の接合層32とを、インジウム層33を介して当接させることにより、支持部材41とLED部材42とを重ね合わせる。この段階では、接合層31と接合層32との間には、多数のボイド(図示せず)が存在する。
【0020】
次に、図3(a)に示すように、熱処理を施し、インジウム層33を溶融させる。これにより、インジウム層33が液相となり、ボイドを埋める。また、インジウム層33を構成するインジウム原子は、接合層31及び接合層32の内部に拡散し、接合層31及び32を構成する金原子と反応して、金インジウム合金を形成する。これにより、接合層31及び接合層32は、インジウム層33を介して接合されて、金インジウム(Au−In)合金からなる1枚の接合層12となる。この過程において、純金からなる接合層31及び32は、金インジウム合金からなる接合層12に変化するため、硬質になり、粘性が低下する。
【0021】
但し、このとき、接合層32内に拡散したインジウム原子は、バリア層13によって拡散を阻止されるため、緩衝層14内に侵入して緩衝層14を構成する金と反応することはない。このため、緩衝層14の組成は純金のままである。従って、緩衝層14は、接合後の接合層31及び32、すなわち、金インジウム合金からなる接合層12よりも軟質である。
【0022】
次に、図3(b)に示すように、結晶成長用基板30(図3(a)参照)を除去する。次に、LED層17における結晶成長用基板30に接していた面上の一部に、上部電極層18を形成する。また、支持基板10の下面上の全面に下部電極層19を形成する。次に、シンター処理を行う。すなわち、熱処理を施すことにより、上部電極層18をLED層17にオーミック接続させると共に、下部電極層19を支持基板10にオーミック接続させる。
【0023】
次に、図4に示すように、上述のようにして作製された積層体、すなわち、下部電極層19、支持基板10、バリア層11、接合層12、バリア層13、緩衝層14、バリア層15、反射層16、LED層17及び上部電極層18からなる積層体43を、ブレード50によってダイシングする。ブレード50は、例えば円板状であり、回転することによって積層体43を局所的に除去する。この結果、積層体43が複数個の半導体発光素子1に切り分けられる。このようして、半導体発光素子1が製造される。
【0024】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
図2(c)に示す工程において、支持部材41上にLED部材42を搭載する際に、接合層31と接合層32との間には、多数のボイドが発生する。このとき、仮に、インジウム層33を設けずに、金からなる接合層31と接合層32とを直接当接させると、金は流動性が低いため、図3(a)に示す熱処理を行っても、これらのボイドが消滅せずに接合層12内に残留し、接合強度が低くなってしまう。
【0025】
そこで、本実施形態においては、接合層31及び接合層32を、インジウム層33を挟んで当接させた上で加熱している。これにより、インジウム層33が液体化して流動し、ボイドを埋める。すなわち、接合層31と接合層32とを液相拡散接合によって強固に接合させることができる。但し、これにより、接合層12は金インジウム合金となり、硬くなってしまう。
【0026】
本実施形態においては、接合層12と反射層16との間に、接合層12よりも軟質で粘性が高い緩衝層14を配置している。これにより、図4に示すダイシング工程において、積層体43に印加される機械的な応力及び衝撃を、緩衝層14が緩和することができる。この結果、ダイシング工程において、積層体43における各層の界面で剥離が生じることを抑制できる。これにより、半導体発光素子1を高い歩留まりで製造することができ、コストを低く抑えることができる。特に、緩衝層14を金によって形成することにより、特に軟質で、導電性が高く、腐食しにくい緩衝層を実現することができる。
【0027】
更に、本実施形態においては、接合層12と緩衝層14との間にバリア層13を設けている。これにより、図3(a)に示す接合に際しても、図3(b)に示すシンター処理に際しても、接合層12内を拡散するインジウム原子が緩衝層14内に進入することを抑制でき、緩衝層14を軟質な純金の状態に保つことができる。また、支持基板10と接合層12との間にバリア層11を設け、緩衝層14と反射層16との間にバリア層15を設けているため、これらの基板及び層の間の反応も抑制することができる。
【0028】
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
図5に示すように、本実施形態に係る半導体発光素子2は、前述の第1の実施形態に係る半導体発光素子1(図1参照)と比較して、接合層12と緩衝層14とが逆に配置されている点が異なっている。すなわち、支持基板10上に、バリア層11、緩衝層14、バリア層13、接合層12、バリア層15、反射層16及びLED層17が、この順に積層されている。
【0029】
図6(a)〜図6(c)は、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程断面図である。
先ず、図6(a)に示すように、支持基板10上に、チタン、白金及びチタンをこの順に堆積させて、バリア層11を形成する。次に、金を含む材料、例えば純金を堆積させて、バリア層11上に緩衝層14を形成する。次に、緩衝層14上にバリア層13を形成する。次に、金を含む材料、例えば、純金を堆積させて、バリア層13上に接合層31を形成する。このようにして、支持基板10上にバリア層11、緩衝層14、バリア層13及び接合層31が積層された支持部材46が作製される。
【0030】
一方、図6(b)に示すように、結晶成長用基板30上にLED層17を形成する。次に、例えば銀を堆積させて、LED層17上に反射層16を形成する。次に、反射層16上にバリア層15を形成する。次に、金を含む材料、例えば、純金を堆積させて、バリア層15上に接合層32を形成する。このようにして、結晶成長用基板30上にLED層17、反射層16、バリア層15及び接合層32がこの順に積層されたLED部材47が作製される。
【0031】
以後の製造方法は、前述の第1の実施形態と同様である。すなわち、図6(c)に示すように、接合層31と接合層32とを、インジウム層33を介して当接させる。次に、接合層31及び接合層32に含まれる金とインジウム層33に含まれるインジウムとを反応させることにより、接合層31と接合層32とを接合させる。これにより、金インジウム合金からなる接合層12が形成される。次に、結晶成長用基板30を除去する。次に、図5に示すように、LED層17上に上部電極雄18を形成すると共に、支持基板10の下面上に下部電極層19を形成する。次に、熱処理を施すことにより、上部電極層18をLED層17にオーミック接続させると共に、下部電極層19を支持基板10にオーミック接続させる。そして、支持基板10、バリア層11、緩衝層14、バリア層13、接合層12、バリア層15、反射層16及びLED層17からなる積層体をダイシングして切り分ける。これにより、本実施形態に係る半導体発光素子2が製造される。
【0032】
本実施形態によっても、前述の第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。本実施形態における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0033】
次に、第3の実施形態について説明する。
図7は、本実施形態に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
図7に示すように、本実施形態に係る半導体発光素子3においては、緩衝層14が2層設けられており、支持基板10と接合層12との間、及び、接合層12と反射層16との間にそれぞれ配置されている。また、バリア層13も2層設けられており、各緩衝層14と接合層12との間にそれぞれ配置されている。すなわち、支持基板10上に、バリア層11、緩衝層14、バリア層13、接合層12、バリア層13、緩衝層14、バリア層15、反射層16及びLED層17が、この順に積層されている。
【0034】
このような半導体発光素子3は、図6(a)に示す支持部材46、及び図2(b)に示すLED部材42をそれぞれ作製して、インジウム層33を介して接合し、その後、上部電極層18及び下部電極層19を形成し、ダイシングすることによって製造することができる。
【0035】
本実施形態によれば、緩衝層14が接合層12を挟んで2層設けられているため、ダイシングの際の層間の剥離をより確実に防止することができる。
本実施形態における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0036】
次に、第4の実施形態について説明する。
図8は、本実施形態に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
図8に示すように、本実施形態に係る半導体発光素子4においては、前述の第1の実施形態に係る半導体発光素子1(図1参照)の構成に加えて、反射層16とLED層17との間に、導電性合金化抑制層48が設けられている。導電性合金化抑制層48は、反射層16及びLED層17との間で合金化反応せず、且つ、電気的な導通を確保できる構造を持つ層であり、光を透過させる層であることが好ましい。導電性合金化抑制層48としては、例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide:スズドープ酸化インジウム)層を用いることができる。
【0037】
本実施形態においては、導電性合金化抑制層48を設けることにより、反応層16とLED層17との間に合金化反応層が形成されることを防止し、この合金化反応層が光の吸収層となって反射効率が低下することを防止できる。
本実施形態における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0038】
次に、第5の実施形態について説明する。
図9は、本実施形態に係る半導体発光素子を例示する断面図である。
図9に示すように、本実施形態に係る半導体発光素子5においては、前述の第1の実施形態に係る半導体発光素子1(図1参照)の構成に加えて、反射層16とLED層17との間に、電流狭窄層49が設けられている。電流狭窄層49は、LED層17に供給される電流の電流経路上に任意のパターンで選択的に配置された絶縁性の層であり、例えば、シリコン酸化層又はシリコン窒化層等の電気的な絶縁層を用いることができる。
【0039】
本実施形態においては、電流狭窄層49を設けることにより、LED層17に供給される電流の電流密度を調整することができる。
本実施形態における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0040】
なお、電流狭窄層49の配設位置は反射層16とLED層17との間には限定されず、LED層17に供給される電流の電流経路に介在できる位置であればよい。また、前述の第4の実施形態における導電性合金化抑制層48(図8参照)及び本実施形態における電流狭窄層49は、双方設けてもよい。
【0041】
なお、前述の各実施形態においては、接合層31及び32を金により形成し、インジウム層33を介して接合することにより、接合層12を金インジウム合金により形成し、一方、緩衝層14を金により形成する例を示したが、これには限定されない。緩衝層14は接合後の接合層12よりも軟質であれば、ダイシングに伴うストレスを緩和する効果が得られる。
【0042】
次に、比較例について説明する。
図10は、本比較例に係る半導体発光素子を例示する断面図であり、
図11は、本比較例に係る半導体発光素子の製造方法を例示する図である。
【0043】
図10に示すように、本比較例に係る半導体発光素子101においては、緩衝層14(図1参照)が設けられていない。また、接合層12と緩衝層14との間に配置されるバリア層13(図1参照)も設けられていない。
【0044】
図11に示すように、このような半導体発光素子101を製造しようとすると、ダイシング工程において、いずれかの界面で剥離が発生することが多い。特に、密着性が低い界面、例えば、半導体と金属の界面である支持基板10とバリア層11との界面、及び、バリア層15と反射層16との界面で、剥離が頻発する。これは、緩衝層14が設けられていないため、ダイシングに伴う機械的なストレスが緩和されず、積層体における最も弱い部分に集中するためと考えられる。この結果、半導体発光素子101は、歩留まりが低く、製造コストが高くなる。
【0045】
以上説明した実施形態によれば、ダイシング工程において剥離が生じにくい半導体発光素子及びその製造方法を実現することができる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明及びその等価物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1、2、3、4、5:半導体発光素子、10:支持基板、11:バリア層、12:接合層、13:バリア層、14:緩衝層、15:バリア層、16:反射層、17:LED層、18:上部電極層、19:下部電極層、21:チタン層、22:白金層、23:チタン層、25:p形層、26:発光層、27:n形層、30:結晶成長用基板、31:接合層、32:接合層、33:インジウム層、41:支持部材、42:LED部材、43:積層体、46:支持部材、47:LED部材、48:導電性合金化抑制層、49:電流狭窄層、50:ブレード、101:半導体発光素子
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