特許第6367185号(P6367185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367185
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】炭水化物の選択的酸化
(51)【国際特許分類】
   C07H 1/00 20060101AFI20180723BHJP
   C07H 15/04 20060101ALI20180723BHJP
   C07H 15/232 20060101ALI20180723BHJP
   C07H 15/203 20060101ALI20180723BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20180723BHJP
   C07C 49/337 20060101ALI20180723BHJP
   C07C 45/29 20060101ALI20180723BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
   C07H1/00CSP
   C07H15/04 A
   C07H15/232
   C07H15/203
   B01J31/22 Z
   C07C49/337
   C07C45/29
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-518356(P2015-518356)
(86)(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公表番号】特表2015-527976(P2015-527976A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】NL2013050439
(87)【国際公開番号】WO2013191549
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年6月17日
(31)【優先権主張番号】12172787.9
(32)【優先日】2012年6月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/671,833
(32)【優先日】2012年7月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514265131
【氏名又は名称】レイクスユニフェルシテイト フローニンゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ミナールド、アドリアーン ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー、マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ゴットゥムッカラ、アディティア ラクシュミー ナラシンハ ラジュ
(72)【発明者】
【氏名】デ フリース、ヨハネス ゲラルダス
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン、アンドレアス アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン、アンドレアス
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 PAEIVI MAEKI-ARVELA,THE EFFECT OF PALLADIUM DISPERSION AND PROMOTERS ON LACTOSE OXIDATION KINETICS,RESEARCH ON CHEMICAL INTERMEDIATES,2010年 6月 1日,V36 N4,P423-442
【文献】 Chem. Pharm. Bull.,1989年,Vol.37, No.9,pp.2344-2350
【文献】 Tetrahedron Letters,1996年,Vol.37, No.20,pp.3453-3456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以上の第二級ヒドロキシル官能基を含む炭水化物基質の1つの第二級ヒドロキシル官能基の位置選択的酸化の方法であって、
一酸化された炭水化物を得るために、遷移金属触媒錯体の存在下、溶媒中で前記炭水化物基質を、キノン、酸素、空気、過酸化物、及びヒドロペルオキシドからなる群から選択される酸化剤と接触させることを含み、
前記炭水化物基質はメチル−α/β−グルコピラノシドであり、かつ前記1つの第二級ヒドロキシル官能基はC3の位置のヒドロキシル基であり、又は、前記炭水化物基質はネアミン系アミノグリコシドであり、かつ前記1つの第二級ヒドロキシル官能基はネアミン主鎖の環IのC3の位置のヒドロキシル基であり、
前記遷移金属触媒錯体は、[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)、又は、(ビス[N−(2,6−ジメチルフェニル)イミノ]アセナフテン)−Pd−(OAc)及び[(ビス[N−(2,6−ジメチルフェニル)イミノ]アセナフテン)−Pd−(CHCN)](OTf)の組み合わせである、
方法。
【請求項2】
前記遷移金属触媒錯体は、前記炭水化物基質に対して0.01〜10mol%のモル比で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化反応は、水、若しくは、DMSO、DMF、THF、ジオキサン、アセトニトリル、HMPA、NMPから選択される有機溶媒、又は、これらのいずれかの混合物を含む溶媒中で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応は、4:1から20:1(v/v)の比率のアセトニトリル/水混合物中、DMSO中、4:1から20:1(v/v)の比率のジオキサン/水混合物中、または4:1から20:1(v/v)の比率のジオキサン/DMSO混合物中で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記グルコピラノシドは、前記第二級ヒドロキシル基上に保護基を担持しない、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ネアミン系アミノグリコシド、ネオマイシン、アプラマイシン、ネアミン、アミカシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、フラマイセチン、及びイセパマイシンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
2以上の第二級ヒドロキシル官能基を含む炭水化物基質の1つの第二級ヒドロキシル官能基の位置選択的酸化する工程であって、
一酸化された炭水化物を得るために、遷移金属触媒錯体の存在下、溶媒中で前記炭水化物基質を、キノン、酸素、空気、過酸化物、及びヒドロペルオキシドからなる群から選択される酸化剤と接触させることを含み、
前記炭水化物基質はメチル−α/β−グルコピラノシドであり、かつ前記1つの第二級ヒドロキシル官能基はC3の位置のヒドロキシル基であり、又は、前記炭水化物基質はネアミン系アミノグリコシドであり、かつ前記1つの第二級ヒドロキシル官能基はネアミン主鎖の環IのC3の位置のヒドロキシル基であり、
前記遷移金属触媒錯体は、[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)、又は、(ビス[N−(2,6−ジメチルフェニル)イミノ]アセナフテン)−Pd−(OAc)及び[(ビス[N−(2,6−ジメチルフェニル)イミノ]アセナフテン)−Pd−(CHCN)](OTf)の組み合わせである工程と、
前記一酸化された炭水化物、さらなる誘導体化反応に供する工程と、を含む、炭水化物誘導体の製造方法。
【請求項8】
前記ネアミン系アミノグリコシド、ネオマイシン、アプラマイシン、ネアミン、アミカシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、フラマイセチン、及びイセパマイシンからなる群から選択される、請求項に記載の炭水化物誘導体の製造方法。
【請求項9】
前記さらなる誘導体化反応は、還元、還元性アミノ化、アセタール化、ジアゾ化、ヒドロシアン化、イミナート化(imination)、ヒドラジン化(hydrazination)、オキシム化(oximation)、脱酸素化、アルキル化、またはこれらの組み合わせを含む、請求項7または8に記載の炭水化物誘導体の製造方法。
【請求項10】
チル−β−3−ケトマルトシド、メチル−β−3−ケトセロビオシド、(6−O−ベンゾイル)−メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース、(6−O−tert−ブチル−ジフェニルシリル)−メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース、およびメチル−3−アセトアミド−α−D−リボ−ヘキサピラノシド、3’−ケト−ネオマイシンB、チオフェニル−β−D−リボ−ヘキソピラノシド−3−ウロース、フェニル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロースからなる群から選択される糖類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭水化物化学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類などの炭水化物は、医薬品のための基本単位(building blocks)として、および医薬品、食品または飼料材料自体として、(原材料として)化学物質の生産において重要である。例えば、出発原料として容易に入手可能な炭水化物の位置選択的酸化は、貴重な生成物に転換され得るポリヒドロキシケトンを与え得る。残念ながら、ほとんどの炭水化物は化学的に取り扱いが困難である。炭水化物の転換において最も挑戦的な態様の1つは、等価または非常に類似した反応性ヒドロキシル基を区別することである。例えば、糖類中の特定の第二級ヒドロキシル基の酸化は、その酸化方法では、異なるヒドロキシル基間を区別できないので、多くは生成物の混合をもたらす。
【0003】
それゆえ、化学合成において保護基戦略が最もよく用いられ、個々のアルコール基は、選択的保護および脱保護を介して、酸化剤との反応に曝されまたは隠されたりし得る。
【0004】
例えば、メチルアロースは、還元および脱保護(非特許文献1)に支持されているように、2つの反応工程においてC(2)OH、C(4)OHおよびC(6)OHの保護によってメチルグルコースから通常作製される。別の例として、アロースは、通常、全4工程を必要とするプロセス(非特許文献2)において、(ジアセトングルコースに対する)保護、酸化、還元および脱保護することにより、グルコースから作製される。保護された3−デオキシ−3−アミノグルコースの合成は、通常、メチルグルコピラノシド(非特許文献3)から8工程で達成される。
【0005】
現在の保護−脱保護アプローチは、合成の工程の総数が増加し、全体の収率が減少するので、高価で、時間とエネルギーを消費し、原子経済的でない。したがって、保護されていない炭水化物の使用が非常に好ましい。
【0006】
保護されていない炭水化物において、第一級ヒドロキシル基の選択的酸化は、当技術分野で知られている。第一級アルコールと第二級とを直接区別することができる選択的酸化剤は、保護基の使用に代わる魅力的な代替手段を提供することが示されている。例えば、Liuら(非特許文献4)は、保護されていない第一級ヒドロキシル基が存在したとしても、グリコシドの特定の第二級ヒドロキシル基の選択的酸化のためのジブチルスズオキシド−ブロミン(dibutyltin oxide-bromine)法を報告している。また、Arterburn(非特許文献5)によるレビューおよびそこに引用された文献も参照されたい。しかしながら、複数の第二級ヒドロキシル基を有する保護されていない化合物内の1つの第二級ヒドロキシル基の選択的触媒酸化は知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Carbohyd. Chem. 1994, 13, 4, 611-617
【非特許文献2】Carbohyd. Res. 1972, 24, 192-197
【非特許文献3】Carbonhydorate Res. 1991, 210, 233-245
【非特許文献4】Chem. Pharm. Bull. 41(3) 491-501
【非特許文献5】Tetrahedron 57(2001)9765-9788
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、2以上の第二級ヒドロキシル基が存在するグリコシドにおける第二級ヒドロキシル基の位置選択的酸化を可能にする方法を提供することを捜し求めた。好ましくは、彼らは、保護されていない炭水化物の使用を可能し、経済的に魅力的であり、および/または現在炭水化物誘導体の合成のために必要な工程の数を減少させる、高い収率(>50%)を有する方法を目指した。より好ましくは、この方法は、温和な条件で、保護されていない炭水化物、例えば、単糖類または二糖類のいくつかの第二級ヒドロキシル基のうち1つを選択的に酸化することができるべきである。
【0009】
驚くべきことに、これらの目的の少なくともいくつかは、同種の遷移金属錯体触媒を使用することによって満たされ得ることがわかった。例えば、パラジウム触媒を用いることにより、メチルグルコースからのメチルアロースの合成は、従来の5工程からたった2工程に減少した。別の例として、メチルグルコピラノシドから保護された3−デオキシ−3−アミノグルコースの合成は、8から4工程に減少し、収率が大幅に向上した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、一酸化された炭水化物基質を得るために、少なくとも1つの遷移金属原子と少なくとも1つの窒素原子を含む1以上のリガンドとを含む遷移金属触媒錯体の存在下、溶媒中で炭水化物基質を酸化剤と接触させることを含む、2以上の第二級ヒドロキシル官能基を含む炭水化物基質の1つの第二級ヒドロキシル官能基の位置選択的酸化の方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
化学では、位置選択的反応は、結合の生成又は切断の方向は、他のすべての可能な方向に比べて優先的に起こる反応である。区別が完全であれば、反応は完全に(100%)位置選択的と言及され、又は、他の部位における反応生成物に比べてある部位における反応生成物が優勢であれば、部分的(x%)と言及される。区別は、本分野において、高いまたは低い位置選択性のように半定量的に言及される場合がある。従って、ここで用いられる、「位置選択的酸化」という用語は、部分的及び完全位置選択性の両方を含む。これは、炭水化物基質の1つの位置異性体または構造異性体に有利である酸化反応に関し、当該反応において他の酸化生成物の収率よりもより高い収率をもたらす。本発明によれば、酸化が位置選択的である度合いを変え得る。典型的には、本発明の方法は、他の酸化生成物より少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも2.5倍、最も好ましくは少なくとも3倍過剰に主要な酸化生成物を生じる。
【0012】
ここで用いられているように、遷移金属は、その原子が周期表の3〜12族である元素である。1つの実施形態において、本発明の方法において使用される遷移金属触媒錯体は、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、マンガン又は鉄を含む。好ましくは、遷移金属触媒錯体は、パラジウムを含む。例えば、触媒錯体は、少なくとも1つの遷移金属原子、好ましくはパラジウム原子および少なくとも1つの窒素原子を含む1以上のリガンドを含む。1つの態様において、遷移金属触媒錯体は、フェナントロリンリガンドが必要に応じて置換されたパラジウムフェナントロリン錯体である。例えば、触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)によって非常に良好な結果が得られた。他の実施形態において、触媒錯体は、パラジウムビス(アリール)アセナフテンキノンジイミン(BIAN)錯体であり、BIANリガンドは必要に応じて置換されている。それらの便利な合成に加えて、BIANリガンドは重要な利点、すなわち強固なパラジウム錯体形成、二量体化を阻止する立体的バルク、および酸化に対する耐性を有している。BIANリガンド(N. J. Hillら、Dalton transaction(ケンブリッジ、英国:2003)2009, 9226, 240-253参照)は、重合(D. J. Tempelら、J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 6686-6700)、水素化(A. M. Kluwer et al. (J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 15470-80)、および酸化的ヘック(Heck)反応(Gottumukkala et al., The Journal of organic chemistry 2011, 76, 3498-501)用に従来より用いられてきた。パラジウム触媒がアルコールの酸化について広く調査され、第一級および第二級アルコールの酸化にとって控えめな化学選択性及び似たような割合を呈する。Painterら(Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 9456-9459)は、酸化剤としてベンゾキノンまたは空気を使用したグリセロールおよび1,2−プロパンジオール中の第二級アルコールの化学選択的酸化のためのパラジウムフェナントロリン触媒を用いた。重要なのは、グリセロールおよび1,2−プロパンジオールはそれぞれ1つの第二級ヒドロキシル基のみを含むことであり、本発明に示されるような、触媒がいくつかの第二級アルコールのうちの1つを選択的に酸化することができることをこの分野において教示も提案もされていない。
【0013】
当業者は、通常の最適化によって、酸化反応条件を決定し得る。遷移金属触媒錯体は、炭水化物基質に対して0.1〜8モル%のような0.01〜10モル%、好ましくは1〜6モル%のモル比で好ましく使用される。任意の適切な酸化剤が使用され得る。1つの実施形態において、酸化剤は、酸素、空気、キノン、過酸化物またはヒドロペルオキシドである。例えば、酸化剤は、ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノンまたはtert−ブチルペルオキシベンゾエートである。
【0014】
例えば、周囲の空気、酸素雰囲気(1気圧)またはOのバルーンのような好気的条件下で反応は行われ得る。空気が経済的な理由のために好ましい。方法は、0〜100℃、例えば10〜70℃の間、好ましくは室温付近で行われるときに良好な結果が得られた。全反応時間は、特定の状況に依存し得る。典型的な保温期間は、約1〜48時間の範囲である。
【0015】
酸化反応は、任意の適切な溶媒または溶媒混合物中で行われ得る。攪拌が推奨される。それは、水、有機溶媒またはそれらの混合物中で実施され得る。適切な有機溶媒は、DMSO、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、アセトニトリル、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)又はこれらの任意の混合物を含む。1つの実施形態において、溶媒はDMSOである。他の実施形態において、それは、4:1から20:1(v/v)の比率のアセトニトリル/水の混合物または4:1〜20:1(v/v)の比率のジオキサン/水の混合物のような有機溶媒と水との混合物である。さらに他の実施形態において、溶媒は、4:1から20:1(v/v)の比率のジオキサン/DMSOの混合物である。炭化水素基質は、反応の溶媒における溶解度を向上されるように修飾され得る。例えば、ネアミン系抗生物質は、反応溶媒への溶解度を向上させるために、そのカルバメート誘導体に変換され得る。
【0016】
理解され得るように、本発明による方法は、最小量の保護基を保持するだけの炭水化物基質の酸化に有利に適用される。1つの実施形態において、それは、2以上の第二級ヒドロキシル基上に保護基を保持していない。ここに記載されている「保護基」という用語は、化学修飾からヒドロキシル基を保護する任意の部分を表す。例えば、ヒドロキシル基(−OH)は、それが合成の特定の工程に関与することを保護するためにアセチル基(−OOCCH)に変換され得る。この場合には、アセチル基は保護基である。後に容易に元のヒドロキシル基に戻され得る。
【0017】
当業者は、本発明が対象とする任意の炭水化物基質上で実施され得ることを理解し得る。ここで用いられている、炭水化物という用語は、糖類の同義語である。炭水化物(糖類)は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、および多糖類の4つの化学物質のグループに分けられる。より小さな(低分子量)である炭水化物である、単糖類および二糖類は、一般的に砂糖と呼ばれる。天然糖類は、一般的に、一般式(CHO)で表され、nが3以上である、単糖類と呼ばれる単純な炭水化物から構成されている。例えば、炭水化物基質は、単糖、オリゴ糖(例えば、二糖、三糖)、または多糖である。典型的な基質は、デンプン、デンプン誘導体、セルロース、セルロース誘導体、キチン、イノシトール、およびイノシトールから誘導される化合物を含む。オリゴ糖の例は、ヘパリンである。
【0018】
1つの実施形態において、炭水化物基質は、単糖である。典型的な単糖は、H−(CHOH)(C=O)−(CHOH)H、つまり、多くのヒドロキシル基が加えられたアルデヒドまたはケトンの構造を有し、ヒドロキシル基は大抵アルデヒドまたはケトン官能基の一部ではない各炭素原子上にある。単糖類の例は、グルコース、フルクトース、およびグリセルアルデヒドである。しかしながら、一般的に「単糖類」と呼ばれるいくつかの生物学的物質はこの式(例えば、ウロン酸およびフコースなどのデオキシ糖)に準拠しておらず、この式に準拠する多くの化学物質(例えば、ホルムアルデヒドCHOおよびイノシトール(CΗO))はあるが、単糖類であると考えられていない。単糖の開鎖形態は、多くの場合、アルデヒド/ケトンのカルボニル基の炭素(C=O)およびヒドロキシル基(−OH)が反応して新しいC−O−C橋状結合を有するヘミアセタールを形成する閉環形態と共存する。
【0019】
特定の態様において、本発明は、以下のスキームに従って炭水化物基質としてメチル−α−D−グルコピラノシドを用いるアロースの製造方法を提供する。
【0020】
【化1】
【0021】
アロースは、アルドヘキソース糖とグルコースのC−3エピマーである。これは、アフリカの低木バイオレット・プロテア(Protea rubropilosa)の葉の6−O−シンナミルグリコシドとして存在する希少な単糖である。淡水藻のOchromas malhamensisからの抽出物には、この砂糖が含まれるが、その絶対配置は知られていない。それは水に溶け、特にメタノールには不溶である。
【0022】
複数の単糖類は、多種多様な方法において一緒に結合してオリゴ糖または多糖と呼ばれるものになり得る。一般的に言えば、オリゴ糖という用語は、単糖分子の数が少ない(2〜10)からなる炭水化物の群のいずれかを指す。
【0023】
例えば、炭水化物は、二糖である。2つ結合した単糖類が二糖類と呼ばれ、これらは、最も単純な多糖類である。二糖類の例は、マルトース、ラクトース、トレハロース、およびスクロースである。それらは、1つの単糖からの水素原子および他からヒドロキシル基の損失を生じる、脱水反応を介して形成されたグリコシド結合として知られている共有結合によって一緒に結合された2つの単糖単位から構成されている。修飾されていない二糖類の式は、C122211である。数多くの種類の二糖類があるが、一握りの二糖類は特に注目すべきである。例えば、以下に開示されるメチルマルトシドおよびメチルセロビオシドの酸化である。
【0024】
1つのD−ガラクトース分子と1つのD−グルコース分子から構成された二糖、ラクトースは、哺乳動物の乳中に天然に存在する。ラクトースの体系的な名前は、O−β−D−ガラクトピラノシル−(1→4)−D−グルコピラノースである。注目すべきその他の二糖類は、マルトース(α−1,4結合した2つのD−グルコース)およびセロビオース(β−1,4結合した2つのD−グルコース)が含まれる。
【0025】
さらに別の実施形態において、炭水化物基質は多糖である。多糖類は、グリコシド結合によって互いに結合した繰り返しモノマー単位を有する長い炭水化物分子である。それらは、直鎖状から高く分岐した構造に及ぶ。多糖類は、C(HO)の一般式を有し、ここでxは、大抵200及び2500間の大きな数字である。ポリマー主鎖中の繰り返し単位は、しばしば、六個の単糖類であることを考慮すると、一般式も(C10として表され得て、ここで、nは40≦n≦3000を満たす。多糖類は、繰り返し単位のわずかな修飾を含むだけで、全く異質であることがよくある。構造によっては、これらの高分子は、単糖基本単位とは異なる特性を有し得る。これらは、非晶質でありまたは水にさえ不溶であり得る。多糖内のすべての単糖が同じ種類の場合、多糖は、ホモ多糖またはホモグリカンと呼ばれるが、複数の種の単糖が存在する場合、それらは、ヘテロ多糖類またはヘテログリカンと呼ばれる。デンプンやグリコーゲンのような貯蔵多糖類や、セルロースやキチンのような構造多糖類が例に含まれる。デンプン(グルコースのポリマー)、植物における貯蔵多糖として使用され、アミロースおよび分枝アミロペクチンの両方の形態で発見されている。多糖類はまた、カロースまたはラミナリン、クリソラミナリン、キシラン、アラビノキシラン、マンナン、フコイダンおよびガラクトマンナンを含む。
【0026】
他の態様において、炭水化物基質は、グリコシドである。グリコシドは、炭水化物が、グリコシド結合を介した他の(非炭水化物)基とそのアノマー炭素を介して結合している任意の分子である。グリコシドは、O−(O−グリコシド)、N−(グリコシルアミン)、S−(チオグリコシド)、C−(C−グリコシド)またはハル(ハロゲン−グリコシド)グリコシド結合によって結合され得る。好ましい実施形態において、本発明は、O−グリコシド、S−グリコシド、N−グリコシド、C−グリコシド、またはハロゲン−グリコシドの位置選択的酸化のための方法を提供する。1つの実施形態において、基質は、例えば、メチルグルコシド(メチルα/β−グルコピラノシド)などのO−C−Cアルキルグリコシドである。驚くべきことに、C3の位置のヒドロキシル基のみが対応する3−オキソ−メチルグルコシドに酸化されていることが分かった。
【0027】
特定の態様において、炭水化物基質は、ネアミン系アミノグリコシド、好ましくはネオマイシン、アプラマイシン、ネアミン、アミカシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、フラマイセチン、イセパマイシンまたはその誘導体からなる群から選択される。1つの実施形態において、本発明の方法は、ネアミン主鎖の環Iの3位のヒドロキシル基の選択的酸化を可能にする。これは、特に、ヒドロキシル基のATP−依存性リン酸化を触媒する細菌ホスホトランスフェラーゼ(APH)による不活性化負電荷の導入といった、細菌酵素による修飾に耐性ある新規な抗生物質の類似体を提供するために修飾反応の多種多様性を広げる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、ネアミン系アミノグリコシドの1つの第二級ヒドロキシの位置選択的酸化のための方法を提供し、一酸化ネアミン系アミノグリコシドを生成するために遷移金属触媒錯体が存在する溶媒中のアミノグリコシド基質を酸化剤と接触させることを含む。
【0028】
本発明による方法の1つの実施形態において、一酸化された炭水化物は、さらに誘導体化反応に供される。さらなる誘導体化は、ケトンおよび/または関心のある他の任意の位置で行われ得る。さらなる誘導体化は、化学的または酵素的に行われ得る。例えば、誘導体化は、還元、還元的アミノ化、アセタール化、ジアゾ化、ヒドロシアン化、イミノ化、オキシム化、ヒドラジン化、脱酸素化、アルキル化およびそれらの任意の組み合わせを含む。事前の保護または脱保護工程を最小化または回避するための手順は、もちろん好ましい。
【0029】
1つの態様において、さらなる誘導体化は、例えば、アロースを与えるためのケトグルコースの還元のような還元を含む。他の態様において、誘導体化は、ジアミノグルコースへのケトN−アセチルアミノグルコースの還元的アミノ化のような還元的アミノ化を含む。さらなる実施形態において、一酸化された炭水化物は、酸化ネアミン系アミノグリコシド系抗生物質である。酸化(および必要に応じてケトンのさらなる誘導体化)は、細菌リン酸化による不活性化に対する抗生物質耐性を与える。酸化された抗生物質は、さらに、細菌リン酸化による不活性化に対する抗生物質耐性を与える2−デオキシ−ストレプタミン環のN−1またはN−3位置のような、ケトンおよび/または関心のある他の位置でさらに誘導体化され得る。
【0030】
本出願は、多くの興味深い商用的適用を見出す。例えば、これは、より容易に利用可能な炭水化物から自然またはレアな(天然でない)炭水化物の選択的合成のために、天然でない炭水化物およびアミノ糖、デオキシ糖、フルオロ糖のような関連する化合物の作製のために、またはそれらの挙動を変更する目的で、糖脂質、糖ポリケチド(glycopolyketides)、糖タンパク質の選択的修飾のために用いられ得る。また、それは、炭水化物の機能を調査するために、他の分子に炭水化物を結合する能力を提供する。例えば還元アミノ化を介してケト官能基で炭水化物をフルオロフォア、例えばビオチンのような化学プローブまたは化学的タグとカップリングすることにより、親の炭水化物の機能および/または局在化(例えば、細胞内)は、決定され得る。
【0031】
また、本発明の方法により得られる化合物が提供される。1つの実施形態において、それは、1つの第二級ヒドロキシル基だけがケトンに酸化された二糖類または多糖類である。例えば、それは、1以上の第二級ヒドロキシル基と1つケトンを含有する炭水化物である。1つの実施形態において、それは、1以上の第二級ヒドロキシル基および1つのケトンを含むO−グリコシド、グリコシルアミン、チオグリコシド、C−グリコシドまたはハロゲン−グリコシドである。特定の態様において、本発明は、メチル−2−デオキシ−β−D−エリスロ−ヘキソピラノシド−3−ウロース、メチル−β−3−ケトマルトシド、メチル−β−3−ケトセロビオシド、(6−O−ベンゾイル)−メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース、(6−O−tert−ブチル−ジフェニルシリル)−メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース、メチル−3−アセトアミド−α−D−リボ−ヘキサピラノシド、3’−ケト−ネオマイシンB、チオフェニル−β−D−リボ−ヘキソピラノシド−3−ウロースおよびフェニル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロースからなる群から選択される化合物を提供する。
【0032】
これらの化合物は、当技術分野において開示されておらず、例えば、医療診断のための医薬品または化合物の合成においてそれらの使用の例を見出されていない。
【0033】
実験
実施例1:オキソ−グルコピラノシドの合成
一般手順A(溶媒としてアセトニトリル/水)
メチルグリコシド(4mmol,1.0当量)および2,6−ジクロロベンゾキノン(12mmol,3.0当量)をアセトニトリル/脱イオン水(10:1,0.3M)に懸濁させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(0.1mmol,2.5mol%)を加え、TLC(DCM/MeOH 5:1)によって示されるように、反応が終わるまで混合物を室温で攪拌した。トルエン(50mL)を加え、混合物を水(7mL)で2回抽出した。合わさった水層を一度エチルエーテル(35mL)で洗浄し、濾過し、純粋なケト糖を与えるために真空下で濃縮した。
【0034】
【化2】
【0035】
一般手順B(溶媒としてDMSO)
メチルグリコシド(0.84mmol,1.0当量)および2,6−ジクロロベンゾキノン(2.5mmol,3.0当量)をDMSO(0.3−0.9M)に溶解させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(0.021mmol,2.5mol%)を加え、NMR分光法によって示されるように反応が終了するまで混合物を室温で攪拌した。10mLの水を加え、混合物を濾過し、沈殿物を水(3×2mL)で洗浄した。水層を活性炭カラム(活性炭10g)に通過させた。活性炭カラムは4カラム容量分の水で洗浄され、続いて生成物を水/アセトニトリル3:1(3カラム容量)で抽出した。粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した(自動化され、粗生成物を活性炭上に塗布した、溶離液:DCM/アセトン/MeOH/水混合物)。
【0036】
一般手順C(溶媒としてジオキサン/水および酸化剤として2,6−ジクロロベンゾキノン)
メチルグリコシド(0.15mmol,1.0当量)および2,6−ジクロロベンゾキノン(0.45mmol,3.0当量)をジオキサン/脱イオン水(5:1,0.3M)に懸濁させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(0.1mmol,2.5mol%)を加え、TLC(DCM/MeOH 5:1)によって示されるように、反応が終わるまで混合物を室温で攪拌した。トルエン(2mL)を加え、混合物を水(0.26mL)で2回抽出した。合わさった水層を一度エチルエーテル(1.3mL)で洗浄し、濾過し、純粋なケト糖を与えるために真空下で濃縮した。
【0037】
一般手順D(溶媒としてジオキサン/DMSOおよび酸化剤として2,6−ジクロロベンゾキノン)
メチルグリコシド(0.15mmol,1.0当量)および2,6−ジクロロベンゾキノン(0.45mmol,3.0当量)をジオキサン/DMSO(10:1または20:1,0.3M)に懸濁させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(0.1mmol,2.5mol%)を加え、TLC(DCM/MeOH 5:1)によって示されるように、反応が終わるまで混合物を室温で攪拌した。トルエン(2mL)を加え、混合物を水(0.26mL)で2回抽出した。合わさった水層を一度エチルエーテル(1.3mL)で洗浄し、濾過し、純粋なケト糖(まだDMSOを含む)を与えるために真空下で濃縮した。
【0038】
一般的手順E(溶媒としてジオキサン/水および酸化剤としてベンゾキノン)
メチルグリコシド(0.25mmol,1.0当量)およびベンゾキノン(0.75mmol,3.0当量)をジオキサン/脱イオン水(5:1,0.3M)に懸濁させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(1.25μmol,0.5mol%)を加え、TLC(DCM/MeOH 5:1)によって示されるように、反応が終わるまで混合物を室温で攪拌した。トルエン(2mL)を加え、混合物を水(0.26mL)で2回抽出した。合わさった水層を一度エチルエーテル(1.3mL)で洗浄し、濾過し、純粋なケト糖を与えるために真空下で濃縮した。
【0039】
一般的手順F(溶媒としてジオキサン/DMSOおよび酸化剤としてベンゾキノン)
メチルグリコシド(0.25mmol,1.0当量)および2,6−ジクロロベンゾキノン(0.75mmol,3.0当量)をジオキサン/DMSO(10:1または20:1,0.3M)に懸濁させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(1.25μmol,0.5mol%)を加え、TLC(DCM/MeOH 5:1)によって示されるように、反応が終わるまで混合物を室温で攪拌した。トルエン(2mL)を加え、混合物を水(0.26mL)で2回抽出した。合わさった水層を一度エチルエーテル(1.3mL)で洗浄し、濾過し、純粋なケト糖(まだDMSOを含む)を与えるために真空下で濃縮した。
【0040】
実施例2:メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロースの合成
【0041】
【化3】
【0042】
メチル−α−グルコピラノシド(777mg,4.0mmol,1.0当量)を、一般的手順Aに従って、アセトニトリル/水(13.4mL,10:1,基質中0.3M)中に2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン(2.12g,12.0mmol,3.0当量)および[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(105mg,2.5mol%)を用いて3時間以内で酸化させた。メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(751mg,3.9mmol)を暗褐色の固体として収率98%で単離させた。H NMR[1](400MHz,298K,DMSO−d):δ=4.95(d,J=4.2Hz,1H),4.29(dd,J=4.2,1.5Hz,1H),4.07(dd,J=9.8,1.4Hz,1H),3.69(dd,J=11.9,1.9Hz,1H),3.59(dd,J=11.9,4.9Hz,1H),3.46(ddd,J=9.7,4.9,1.8Hz,1H),3.26(s,3H)。13C NMR(50MHz,DMSO−d):δ=206.1,102.2,75.4,74.6,71.9,60.7,54.4。C12Na([M+Na])について計算されたHRMS(ESI):215.0526,検出:215.0523IRVmax/cm−1:3436(OH),2947(C−H),1736(C=O),1031(C−O)
【0043】
実施例3:メチル−β−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロースの合成
【0044】
【化4】
【0045】
メチル−β−グルコピラノシド(777mg,4.0mmol,1.0当量)を、一般的手順Aに従って、アセトニトリル/水(13.4mL,10:1,基質中0.3M)中に2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン(2.12g,12.0mmol,3.0当量)および[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(105mg,2.5mol%)を用いて5時間以内で酸化させた。メチル−β−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(686mg,3.6mmol)を暗褐色の固体として収率89%で単離させた。H NMR[2][3](400MHz,298K,DMSO−d):δ=4.20(d,J=8.0Hz,1H),4.05(dd,J=10.2,1.6Hz,1H),3.97(dd,J=8.0,1.6Hz,1H),3.73(dd,J=11.9,1.7Hz,1H),3.58(dd,J=12.0,5.1Hz,1H),3.45(s,3H),3.21(ddd,J=10.2,5.1,1.7Hz,1H)。13C NMR(50MHz,298K,DMSO−d):δ=206.3,104.8,76.6,76.6,72.2,60.8,56.2。C12Na([M+Na])について計算されたHRMS(ESI):215.0526,検出:215.0523IRVmax/cm−1:3382(OH),2953(C−H),1738(C=O),1036(C−O)
【0046】
実施例4:メチル−2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース
【0047】
【化5】
【0048】
メチル−N−アセチル−グルコサミン−ピラノシド(941mg,4mmol,1.0当量)を、一般手順Aに従って、アセトニトリル/水(13.4mL,10:1,基質中0.3M)中に2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン(2.12g,12.0mmol,3.0当量)および[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(105mg,2.5mol%)を用いて4時間以内で酸化させた。メチル−2−(アセチルアミノ)−2−デオキシ−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(792mg,3.4mmol)を暗褐色の固体として85%で単離させた。H NMR[4](400MHz,298K,DMSO−d):δ=8.02(d,J=8.2Hz,1H),5.49(d,J=6.0Hz,1H),4.98(d,J=4.0Hz,1H),4.84(s,1H),4.77(dd,J=7.9,3.7Hz,1H),4.17(dd,J=9.5,5.5Hz,1H),3.71(d,J=11.7Hz,1H),3.66−3.57(m,1H),3.57−3.49(m,1H),3.26(s,3H),1.91(s,3H)。13C NMR(50MHz,DMSO−d):δ=203.0,169.7,100.6,75.6,72.2,60.7,58.6,54.5,22.2。C15NOH([M+H])について計算されたHRMS(ESI):234.0972,検出:234.0972,C15Na([M+Na]):256.0792,検出:256.0790IRIRVmax/cm−1:3296(OH),2878(C−H),1734(C=O),1035(C−O)
【0049】
実施例5:(6−O−tert−ブチル−ジフェニルシリル)−メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(OxTBDPS−MGlc)の合成
【0050】
【化6】
【0051】
メチル−C6−TBDPS−α−グルコピラノシド(364mg,0.84mmol,1.0当量)および2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン(447mg,2.53mmmol,3.0当量)をDMSO(0.93mL,0.9M)に溶解させ、[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(22mg,2.5mol%)を加えた。混合物を30分間、室温で撹拌した。水(12mL)を加えて反応をクエンチさせ、得られた沈殿物をデカントした。沈殿物を移すためにMeOH/EtOに溶かした。真空中で溶かした沈殿物を濃縮することにより粗生成物が774mg得られ、それはシリカカラムクロマトグラフィー(溶離液:DCM 0%〜3%における1:1のアセトン/MeOHの勾配)により精製された。純粋な239mgの(6−O−tert−ブチル−ジフェニルシリル)−メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(0.56mmol,66%)を白色泡状物として単離させた。H NMR(400MHz,CDOD):δ7.82−7.64(m,4H),7.54−7.28(m,6H),5.08(d,J=4.3Hz,1H),4.40(dd,J=4.3,1.4Hz,1H),4.34(dd,J=9.8,1.4Hz,1H),4.00(d,J=3.3Hz,2H),3.74(dt,J=9.7,3.3Hz,1H),3.40(s,3H),1.07(s,9H)。13C NMR(101MHz,CDOD):δ=207.2,136.9,136.9,134.8,134.7,131.0,131.0,128.9,103.8,77.0,76.3,73.6,64.8,55.8,27.4,20.3。C2330SiNa([M+Na])について計算されたHRMS(ESI):453.1704,検出:453.1643。
【0052】
実施例6:(6−O−ベンゾイル)−メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(OxBzMGlc)の合成
【0053】
【化7】
【0054】
(6−O−ベンゾイル)−メチル−α−D−グルコピラノシド(251mg,0.84mmol,1.0当量)および2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン(447mg,2.53mmol,3.0当量)をDMSO(0.93mL,0.9M)に溶解させ、[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(22mg,2.5mol%)を加えた。混合物を1時間、室温で撹拌した。水(10mL)を加えて反応をクエンチさせ、得られた沈殿物を濾過してフィルターを水(1×10mL,1×5mL)で洗浄した。水層を活性炭カラム(10gの活性炭)に通した。活性炭カラムは、カラム体積の4.5倍の水、カラム体積の3倍の水/アセトニトリル(3:1)により洗浄され、続いて、粗生成物409mgを与えるカラム体積の3倍のDCM/アセトン/メタノール/水(56/20/20/4)で生成物を溶出した。粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(自動化、溶離液:DCM/MeOHの勾配0−10%)により精製した。113mgの純粋な(6−O−ベンゾイル)−メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(45%)を白色泡状物として単離した。
【0055】
H NMR(400MHz,CDOD):δ=8.09−8.03(m,2H),7.65−7.58(m,1H),7.52−7.46(m,2H),5.08(d,J=4.3Hz,1H),4.72(dd,J=11.9,2.2Hz,1H),4.57(dd,J=11.9,5.7Hz,1H),4.48(dd,J=4.3,1.5Hz,1H),4.34(dd,J=10.0,1.4Hz,1H),3.99(ddd,J=9.9,5.6,2.1Hz,1H),3.42(s,3H)。13C NMR(101MHz,CDOD):δ=206.3,167.8,134.6,131.3,130.7,129.8,103.8,76.2,74.2,74.0,65.3,55.9。C1416Na([M+Na])について計算されたHRMS(ESI):319.0788,検出:319.0739
【0056】
実施例7:メチル−β−3−ケトマルトシド(Methyl-β-3-ketomaltosid)の合成
【0057】
【化8】
【0058】
メチル−β−マルトシド(300mg,0.84mmol,1.0当量)を、一般手順Bに従って、DMSO(0.94mL,0.9M)中に2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン(447mg,2.53mmol,3.0当量)および[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(22mg,2.5mol%)を用いて3.5時間以内で酸化させた(87%変換したところで反応を止めた)。10mLの水を加え、混合物を濾過して沈殿物を水(4×2mL)で洗浄した。水層を活性炭カラム(10gの活性炭)に通した。活性炭カラムは、カラム体積の4倍の水により洗浄され、続いて、生成物を水/アセトニトリル3:1(カラムの2倍の体積)で溶出した。NMRによれば純度〜70%の308mgの生成物を真空中で濃縮後単離させた。20mgの混合した分留とともにカラムクロマトグラフィー(溶離液:DCM/アセトン/MeOH/水56:20:20:4)後、125mgの純粋なメチル−β−ケトマルトシド(0.25mmol,42%)を単離させた。H NMR(400MHz,CDOD):δ=5.62(d,J=4.5Hz,1H)4.45(d,J=4.5,1.6Hz,1H),4.25(dd,J=9.6,1.5Hz,1H),4.15(dd,J=7.8Hz,1H),3.92−3.70(m,5H),3.60−3.55(m,2H),3.51(s,3H),3.34−3.31(m,1H),3.21−3.15(m,1H)。13C NMR(101MHz,CDOD):δ=207.2,105.4,104.8,80.6,78.0,77.7,76.6,76.4,74.8,73.4,62.6,62.1,57.5。C132211Na([M+Na])について計算されたHRMS(ESI):377.1054,検出:377.1048
【0059】
実施例8:メチル−β−3−ケトセロビオシド(Methyl-β-3-ketocellobioside)の合成
【0060】
【化9】
【0061】
メチル−β−セロビオシド(300mg,0.84mmol,1.0当量)を、一般手順Bに従って、DMSO(0.94mL,0.9M)中に2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン(447mg,2.53mmol,3.0当量)および[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(22mg,2.5mol%)を用いて2時間以内で酸化させた。88mgの純粋なメチル−β−3−ケトセロビオシド(0.25mg,30%)を、38mg(13%)の出発物質とともにカラムクロマトグラフィー(溶離液:DCM/アセトン/MeOH/水 56:20:20:4)後、単離させた。H NMR(400MHz,CDOD):δ=4.55(d,J=7.9Hz,1H),4.25(dd,J=10.2,1.5Hz,1H),4.22(d,J=7.8Hz,1H),4.19(dd,J=8.0,1.6Hz,1H),3.95(dd,J=12.1,2.0Hz,1H),3.88(qd,J=12.2,3.1Hz,3H),3.78(dd,J=12.1,5.0Hz,1H),3.66(t,J=9.2Hz,1H),3.56(t,J=9.0Hz,1H),3.53(s,3H),3.44−3.34(m,2H),3.24(dd,J=9.0,8.0Hz,1H)。13C NMR(101MHz,CDOD):δ=206.8,105.9,105.4,80.5,78.4,78.4,76.6,76.53,75.0,73.6,62.5,61.6,57.5。
【0062】
132211Na([M+Na])について計算されたHRMS(ESI):377.1054,検出:377.1002。
【0063】
実施例9:様々な酸化剤の比較
酸素(溶媒としてのMeCN/水)
メチル−α−グルコピラノシド(100mg,0.52mmol,1.0当量)をアセトニトリル/脱イオン水(10:1,0.3M)に懸濁させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(13mg,13μmol,2.5mol%)を加え、混合物を酸素雰囲気の下(1気圧)、室温(rt)で撹拌させた。H−NMRによって示されるように43時間後に69%変換したところで反応が停止した。
【0064】
酸素(溶媒としてDMSO)
メチル−α−グルコピラノシド(100mg,0.52mmol,1.0当量)をDMSO(0.57mL,0.3M)に溶解させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(13mg,13μmol,2.5mol%)を加え、混合物を酸素雰囲気(1気圧)の下、室温で撹拌させた。H−NMRによって示されるように43時間後に45%変換したところで反応が停止した。
【0065】
tert−ブチルペルオキシベンゾエート(溶媒としてDMSO)
メチル−α−グルコピラノシド(30mg,0.15mmol,1.0当量)およびtert−ブチルペルオキシベンゾエート(74μL,0.46mmol,3.0当量)をDMSO(0.17mL,0.9M)に溶解させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(4mg,3.8μmol,2.5mol%)を加え、混合物を室温で撹拌した。H−NMRによって示されるように13日後に67%変換したところで反応が停止した。
【0066】
酸化剤としての空気(酸素)(溶媒としてDMSO)
メチル−α−グルコピラノシド(30mg,0.15mmol,1.0当量)をDMSO(0.5mL,0.3M)に溶解させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(4mg,3.8μmol,2.5mol%)を加えた。混合物を室温で穏やかな気流により撹拌した。H−NMRによって示されるように13日後に73%変換したところで反応が停止した。
【0067】
酸化剤としてクメンヒドロペルオキシド(溶媒としてDMSO)
メチル−α−グルコピラノシド(30mg,0.15mmol,1.0当量)およびクメンヒドロペルオキシド(86μL,0.46mmol,3.0当量)をDMSO(0.5mL,0.3M)に溶解させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(4mg,3.8μmol,2.5mol%)を加え、混合物を室温で撹拌した。H−NMRによって示されるように13日後に69%変換したところで反応が停止した。
【0068】
酸化剤として過酸化水素(溶媒としてDMSO)
メチル−α−グルコピラノシド(30mg,0.15mmol,1.0当量)および30%過酸化水素(46μL,0.46mmol,3.0当量)をDMSO(0.5mL,0.3M)に溶解させた。触媒[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(4mg,3.8μmol,2.5mol%)を加え、混合物を室温で撹拌した。H−NMRによって示されるように16日後に反応は49%変換を示した。
【0069】
実施例10:一酸化炭水化物の削減
メチル−α−アロピラノシド
【0070】
【化10】
【0071】
メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(200mg,1.04mmol,1.0当量)をMeOH(8.5mL)に溶解させ、混合物を0℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(118mg,3.12mmol,3.0当量)を添加し、混合物を室温で30分間撹拌した。過剰のホウ素水素化物(borohydride)を酸性イオン交換樹脂(Amberlite(登録商標)120H−型)の添加により破壊し、混合物をセライトで濾過し、真空中で濃縮した。赤みを帯びた粘着性の油として193mg(0.99mmol,95%)のメチル−α−アロピラノシドを与えるために、残渣をMeOH(3×10mL)で共蒸発させた。
【0072】
H NMR[3](400MHz,CDOD):δ=4.69(d,J=3.8Hz,1H),3.98(tとして現れる,J=3.2Hz,1H),3.88−3.82(m,1H),3.74−3.67(m,2H),3.60(tとして現れる,J=3.6Hz,1H),3.47(dd,J=9.7,3.1Hz,1H),3.43(s,3H)。13C NMR(101MHz,CDOD)δ=101.6,73.6,69.6,69.1,68.4,62.8,56.2。C14Na([M+Na])について計算されたHRMS(ESI):217.0683,検出:217.0682。
【0073】
実施例11:一酸化された炭水化物のオキシム化
A.E/Z−メチル−3−O−メチルオキシム−α−D−リボ−ヘキサピラノシド
【0074】
【化11】
【0075】
メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(330mg,1.70mmol,1.0当量)、O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(215mg,2.58mmol,1.5当量)およびNaHCO(218mg,2.58mmol,1.5当量)をメタノール(13mL)中で2時間、加熱還流した。塩を除去するために濾過し、溶媒を蒸発させた後、残渣を熱酢酸エチルで抽出した。抽出物を短いシリカゲルカラムに通過させ、真空中で濃縮し、粘着性の黄色の固体としてメチル−3−O−メチルオキシム−α−D−リボ−ヘキサピラノシド(344mg,1.55mmol,E/Z異性体の混合物として92%)を得た。C15NOH([M+H])について計算された正確な質量HRMS(ESI):222.0972,検出:222.0970,C15Na([M+Na]):244.0792,検出:244.0789 IRVmax/cm−1:3454(OH),2946(C−H),1034(C−O)
【0076】
B.E/Z−メチル−3−O−メチルオキシム−β−D−リボ−ヘキサピラノシド
【0077】
【化12】
【0078】
メチル−β−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(300mg,1.56mmol,1.0当量)、O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(195mg,2.34mmol,1.5当量)およびNaHCO(197mg,2.34mmol,1.5当量)をメタノール(13mL)中で2.5時間、加熱還流した。塩を除去するために濾過し、溶媒を蒸発させた後、残渣を熱酢酸エチルで抽出し、抽出物を短いシリカゲルカラムに通過させた。真空中で溶媒を除去することにより、粘着性の黄色の固体としてメチル−3−O−メチルオキシム−β−D−リボ−ヘキサピラノシド(311mg,1.41mmol,E/Z異性体の混合物として90%)を得た。C15NOH([M+H])について計算された正確な質量HRMS(ESI):222.0972,検出:222.0970,C15Na([M+Na]):244.0792,検出:244.0789 IRVmax/cm−1:3447(OH),2946(C−H),1034(C−O)
【0079】
C.E/Z−メチル−2−(アセトアミド)−2−デオキシ−3−O−メチルオキシム−α−D-リボ−ヘキサピラノシド
【0080】
【化13】
【0081】
2−(アセトアミド)−2−デオキシ−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース(300mg,1.37mmol,1.0当量)、O−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(171mg,2.05mmol,1.5当量)およびNaHCO(172mg,2.05mmol,1.5当量)をメタノール(12mL)中で3時間、加熱還流した。塩を除去するために濾過し、溶媒を蒸発させた後、残渣を熱酢酸エチルで抽出し、抽出物を短いシリカゲルカラムに通過させ、真空中で濃縮し、粘着性の黄色の固体としてメチル−2−(アセトアミド)−2−デオキシ−3−O−メチルオキシム−α−D-リボ−ヘキサピラノシド(308mg,1.17mmol,E/Z異性体の混合物として86%)を得た。C1018H([M+H])について計算された正確な質量HRMS(ESI):263.1238,検出:263.1235,C1018Na([M+Na]):285.01057,検出:285.1054 IRVmax/cm−1:3447(OH),2946(C−H),1654(OCN),1031(C−O)
【0082】
実施例12:メチル−3−アミノ−α−D−リボ−ヘキサピラノシドの合成
【0083】
【化14】
【0084】
E/Z−メチル−3−O−メチルオキシム−α−D−リボ−ヘキサピラノシド(実施例11A;240mg,1.08mmol,1.0当量)を酢酸(5mL)中において、白金(IV)酸化物(25mg,0.11mmol,10mol%)で24時間、水素ガス圧力(5bar)下で水素化を行った。混合物を短いセライトカラムに通し、真空中で濃縮させ、わずかに黄色の粘着性の固体としてメチル−3−アミノ−α−D−リボ−ヘキサピラノシド(208mmg,1.08mmol,99%)を得た。生成物は、そのまま次のペルアセチル化反応に使用した。H NMR(400MHz,298K,DMSO−d):δ=5.21(d,J=3.1Hz,1H),4.31−4.26(m,2H),4.23(dd,J=9.9,4.1Hz,1H),4.15(dd,J=11.0,4.9Hz,2H),4.00(d,J=4.2Hz,1H),3.90(s,3H)。
【0085】
実施例13:メチル−3−アセトアミド−2,4,6−トリ−O−アセチル−3−デオキシ−α−D−リボ−ヘキサピラノシドの合成
【0086】
【化15】
【0087】
メチル−3−アミノ−α−D−リボ−ヘキサピラノシド(実施例12;208mg,1.08mmol,1.0当量)を乾燥ピリジン(2.4mL)および無水酢酸(1mL,9.9mmol,8当量)中に溶解させた。反応混合物を一晩撹拌した。混合物をトルエン(1mL)で共蒸発させ、ペンタン/EtOAc(1:1から純粋なEtOAc)の溶媒勾配をともなう自動化されたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(GRACE)によって精製し、白色固体としてメチル−3−アセトアミド−2,4,6−トリ−O−アセチル−3−デオキシ−α−D−リボ−ヘキサピラノシド(245mg,63%,0.68mmol)を得た。H NMR[5](400MHz,298K,DMSO−d):δ=7.11(d,J=8.7Hz,1H),4.81(d,J=3.2Hz,1H),4.79−4.76(m,1H),4.73(d,J=9.3Hz,2H),4.15(d,J=3.3Hz,2H),4.10(dd,J=9.0,3.4Hz,1H),3.30(s,3H),2.00(s,3H),1.97(s,3H),1.89(s,3H),1.88(s,3H)。
【0088】
実施例14:メチル−3−アセトアミド−α−D−リボ−ヘキサピラノシドの合成
【0089】
【化16】
【0090】
メチル−3−アセトアミド−2,4,6−トリ−O−アセチル−3−デオキシ−α−D−リボ−ヘキサピラノシド(実施例13;141mg,0.39mmol,1.0当量)を乾燥メタノール(1.4mL)に溶解した。この混合物に、ナトリウムメタノラート(1M,0.1mL)を加え、反応混合物を、TLC(ペンタン/EtOAc 1:1)により示されるように反応が完了するまで、室温で一晩攪拌した。反応は、酸性イオン交換樹脂(Amberlite(登録商標)120H−型)によりクエンチされ、さらに10分間撹拌した。短いシリカゲルカラムを通過させた後、溶媒を真空中で除去し、粘着性のわずかに赤色の固体としてメチル−3−アミド−α−D−リボ−ヘキサピラノシド(90mg,99%,0.38mmol)を得た。H NMR(400MHz,298K,DMSO−d):δ=6.71(d,J=8.9Hz,1H,NH),4.52(d,J=3.0Hz,1H,1−H),4.38−4.30(m,1H,3−H),3.63(dd,J=11.4,J=1.6Hz,1H,6−H),3.56(dd,J=5.2,2.7Hz,1H,2−H),3.46(m,1H,6’−H),3,43(m,2H,4−H,5−H),3.32(s,3H,OCH),1.88(s,3H,CH)。13C NMR(101MHz,298K,DMSO−d):δ=170.9(NHCOCH),99.6(CH,C−1),68.8(CH,C−4),66.3(CH,C−2),66.0(CH,5−C),60.7(CH,C−6),54.8(OCH),52.8(CH,C−3),23.6(NHCOCH)。gCOSY(400MHz,298K,DMSO−d):δ(H)/δ(H)=6.71/4.34(NH/3−H),4.52/3.56(1−H/2−H),4.38−4.30/6.71,3.56,3.43(3−H/NH,2−H,4−H),3.63/3.46,3.43(6−H/6’−H,5−H),3.56/4.52,4.34(2−H/1−H,3−H),3.46/3.63,3.43(6’−H/6−H,5−H),3.43/4.34,3.43(4−H/3−H,5−H),3.43/3.63,3.46(5−H/6−H,6’−H)。gHSQC(400MHz,298K,DMSO−d):δ(H)/δ(13C)=4.52/99.63(1−H/C−1),4.38−4.30/52.75(3−H,C−3),3.63/60.73(6−H/C−6),3.56/66.34(2−H/C−2),3.46/60.73(6’−H/C−6),3.43/68.83(4−H/C−4),3.43/66.00(5−H/C−5),3.32/23.58(OCH/OCH),1.88/54.81(CH/CH)。NOESY(400MHz,298K,DMSO−d):δ(H)/δ(H)=3.43/3.63,3.56(4−H/6−H,2−H),3.43/6.71,1.88(5−H/NH,CH)。C17NOHについて計算されたHRMS(ESI)([M+H]):236.1129,検出:236.1127,C17NONa([M+Na]):258.0948,検出:258.0947
【0091】
実施例15:メチル−3−アミノ−β−D−リボ−ヘキサピラノシドの合成
【0092】
【化17】
【0093】
メチル3−O−メチルオキシム−β−D−リボ−ヘキサピラノシド(実施例11B,299mg,1.14mmol,1.0当量)を酢酸(5mL)中で,白金(IV)酸化物(26mg,0.14mmol,10mol%)で、水素ガス圧力(5bar)下で水素化を行った。混合物を短いセライトカラムに通過させ、真空中で濃縮し、わずかに黄色の粘着性固体としてメチル−3−アミノ−α−D−リボ−ヘキサピラノシド(267mg,1.14mmol,99%)をわずかに得た。生成物は、ジアステレオマーを分離するために、次のペルアセチル化反応(実施例16)でそのまま使用した。H NMR[5](400MHz,298K,DMSO−d):δ=4.46(d,J=7.6Hz,1H),3.66−3.61(m,1H),3.60−3.52(m,2H),3.45(dd,J=11.6,5.0Hz,1H),3.40(d,J=3.3Hz,1H),3.37(s,3H),3.33(dd,J=7.3,4.2Hz,1H)。
【0094】
実施例16:メチル−3−アセトアミド−2,4,6−トリ−O−アセチル−3−デオキシ−β−D−リボ−ヘキサピラノシドの合成
【0095】
【化18】
【0096】
メチル−3−アミノ−β−D−リボ−ヘキサピラノシド(実施例15;272mg,1.41mmol,1.0当量)を、乾燥ピリジン(2.8mL)および無水酢酸(1mL,11mmol,8当量)に溶解させた。反応混合物を一晩攪拌し、続いてトルエン(1mL)とともに真空中で共蒸発させ、白色固体としてメチル−3−アセトアミド−2,4,6−トリ−O−アセチル−3−デオキシ−β−D−リボ−ヘキサピラノシドを得た。粗生成物を精製し、2つのジアステレオマーが、ペンタン/EtOAcの溶媒勾配をともなう自動シリカゲルカラムクロマトグラフィー(GRACE)により分離された。15mg(3%)の純粋C3−NHACeqおよび49mg(10%)のC3−NHAcaxは、254mgの混合した留分(318mg,63%,0.88mmol)とともに単離され得る。C3−NHAcaxH NMR[5](400MHz,298K,DMSO−d):δ=7.93(d,J=9.6Hz,1H,NH),4.80(d,J=8.2Hz,1H,1−H),4.76(dd,J=9.4,4.6Hz,1H,3−H),4.70(dd,J=9.1,4.2Hz,1H,4−H),4.55(dd,J=7.9,4.6Hz,1H,2−H),4.20−4.10(m,3H,5−H,6−H,6’−H),3.39(s,3H,OCH),2.03(s,3H,CH),1.96(s,3H,CH),1.93(s,3H,CH),1.90(s,3H,CH)。13C NMR(101MHz,298K,DMSO−d):δ=170.4(COCH),170.1(COCH),169.2(COCH),169.1(COCH),98.2(CH,C−1),69.7(CH,C−5),69.1(CH,C−2),66.3(CH,C−4),62.5(CH,C−6),55.9(OCH),46.0(CH,C−3),22.5(NHCOCH),20.6(COCH),20.5(COCH),20.5(COCH)。gCOSY(400MHz,298K,DMSO−d):δ(H)/δ(H)=7.93/4,76(NH/3−H),4.80/4.55(1−H/2−H),4.76/7.93,4.70,4.55(3−H/NH,4−H,2−H),4.70/4.76,4.16(4−H/3−H,5−H),4.55/4.80,4.76(2−H/1−H,3−H),4.16/4.70,4.16(5−H/4−H,6−H,6’−H),4.16/4.16(6−H,6’−H/5−H)。gHSQC(400MHz,298K,DMSO−d):δ(H)/δ(13C)=4.80/98.20(1−H,C−1),4.76/46.01(3−H/C−3),4.70/66.34(4−H/C−4),4.55/69.12(2−H/C−2),4.16/69.71,62.48(5−H,6−H,6’−H/C−5,C−6)C1523NOH([M+H])について計算されたHRMS(ESI):326.1446,検出:326.1443,C1523NONa([M+Na]):384.1265,検出:384.1261
【0097】
C3−NHAceqH NMR(400MHz,298K,DMSO−d):δ=7.94(d,J=9.3Hz,1H,NH),4.80(dd,J=10.0Hz,10.0Hz,1H,4−H),4.70(dd,J=10.5Hz,8.3Hz,1H,2−H),4.59(d,J=7.8Hz,1H,1−H),4.19(ddd,J=10.6Hz,10.0Hz,9.3Hz,1H,3−H),4.13(m,1H),3.99(m,1H),3.88(ddd,J=10.0,9.4,3.1Hz,1H,5−H),3.36(s,3H,OCH),2.01(s,3H,CH),1.96(s,6H,CH),1.71(s,3H,CH)。13C NMR(101MHz,298K,DMSO−d):δ=170.1(NHCOCH),169.4(2COCH),169.0(COCH),101.2(CH,C−1),71.8(CH,C−5),71.2(CH,C−2),68.6(CH,C−4),62.1(CH,C−6),56.2(OCH),52.0(CH,C−3),22.6(NHCOCH),20.6(COCH),20.5(COCH),20.4(COCH)。gCOSY(400MHz,298K,DMSO−d):δ(H)/δ(H)=7.94/4.19(NH/3−H),4.80/4.19,3.88(4−H/3−H,5−H),4.70/4.59,4.19(2−H/1−H,3−H),4.59/4.70(1−H,2−H),4.19/7.94,4.80,4.70(3−H/NH,4−H,2−H),4.13/3.99,3.88(CH/5−H,CH),3.99/4.13,3.88(CH/CH,5−H),3.88/4.80,4.13,3.99(5−H/4−H,CH,CH)。gHSQC(400MHz,298K,DMSO−d):δ(H)/δ(13C)=4.80/68.59(4−H/C−4),4.70/71.19(2−H,C−2),4.59/101.25(1−H,C−1),4.19/51.99(3−H/C−3),4.13/62.08(CH/C−6),3.99/62.08(CH/C−6),3.88/71.83(5−H/C−5)C1523NOH([M+H])について計算されたHRMS(ESI):326.1446,検出:326.1442,C1523NONa([M+Na]):384.1265,検出:384.1261
【0098】
実施例17:ネオマイシンBの酸化
【0099】
【化19】
【0100】
カルボキシベンジル(Cbz)で保護されたネオマイシンB(190mg,134μmol,1.0当量)および2,6ジクロロベンゾキノン(71.1mg,402μmol,3.0当量)を446μLのDMSOに溶解させた。[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(1.5mg,1.5μmol,1.1mol%)を加え、混合物を1晩撹拌した。水(5mL)を加え、混合物を1晩凍結乾燥させた。純粋な酸化したCbzで保護されたネオマイシンB(41mg,22%)は、混合した留分とともにカラムクロマトグラフィー(溶離液:DCM/MeOH 0−10%勾配)により精製後単離された。C718125([M+H])について計算されたHRMS(ESI):1417.5246,検出:1417.5122,C718125Na([M+Na]):1439.5065,検出:1439.4911。
【0101】
【化20】
【0102】
実施例18:BIAN−錯体を用いた酸化
【0103】
メチル−α−D−グルコピラノシド(30mg,0.15mmol,1.0当量)およびベンゾキノン(50mg,0.46mmol,3.0当量)をジオキサン/DMSO(4:1,0.5mL,0.3M)の混合物中に溶解させた。(ビス[N−(2,6−ジメチルフェニル)イミノ]アセナフテン)−Pd−(OAc)(1.2mg,1.9μmol,1.25mol%)および(ビス[N−(2,6−ジメチルフェニル)イミノ]アセナフテン)−Pd−(CHCN)](OTf)(1.2mg,1.9μmol,1.25mol%)を加えた。反応物を60℃で1晩撹拌した後、NMR分光法は、単一の生成物として、メチル−α−D−リボヘキサピラノシド−3−ウロース(C3上の酸化)への9%の転換を示した。
【0104】
実施例19:メチル−2−デオキシ−α−グルコピラノシドの酸化
【0105】
【化21】
【0106】
メチル−2−デオキシ−α−グルコピラノシド(150mg,0.84mmol,1.0当量)および2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン(447mg,2.53mmol,3.0当量)を2.5mLのジオキサン/DMSO(4:1,0.3M)混合物中に溶解させ、[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(22mg,2.5mol%)を加えた。混合物を室温で30分間攪拌した。反応物を水(12mL)を加えることによってクエンチし、得られた沈殿物を濾過した。フィルターを3×2.25mLの水で洗浄し、合わさった水層を活性炭カラム(活性炭12g)に通した。活性炭カラムをカラム4倍の容量の水で洗浄し、その後、生成物を水/アセトニトリル1:1(カラム容量の2.5倍)で溶出させた。メチル−2−デオキシ−α−D−エリトロ−ヘキソピラノシド−3−ウロース(89mg,0.50mmol,60%)が、凍結乾燥後に緑がかった油として純生成物に得られた。H NMR(400MHz,CDOD):δ5.14(d,J=4.3Hz,1H),4.18(dd,J=9.9,1.1Hz,1H),3.88(dd,J=12.0,2.3Hz,1H),3.81(dd,J=12.0,4.7Hz,1H),3.69(ddd,J=9.9,4.7,2.3Hz,1H),3.34(s,3H),2.88(ddd,J=14.1,4.5,1.1Hz,1H),2.50(dd,J=14.1,1.1Hz,1H)。13C NMR(101MHz,CDOD):δ207.39(Cquart.),101.34(CH),76.53(CH),74.27(CH),62.79(CH),55.18(CH),46.80(CH)。C13([M+H])について計算されたHRMS(APCI):177.076,検出:177.075
【0107】
実施例20:フェニル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロースの合成
【0108】
【化22】
【0109】
フェニル−α−D−グルコピラノシド(108mg,0.42mmol,1.0当量)をジオキサン/DMSO混合物(4:1,1.3mL,0.32M)に溶解させ、ジクロロベンゾキノン(223mg,1.26mmol,3.0当量)および[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(11mg,2.5mol%)を加えた。反応物を30分間攪拌し、8mLの水を加えてクエンチした。混合物を濾過し、沈殿物を水(3×2mL)で洗浄した。水層をGenevac(T<40℃)を用いて濃縮し、粗生成物が230mg得られた。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(21gシリカゲル(SG2),溶離液:DCM/MeOH20/1,DCMを水で飽和させた)で精製し、89mg(H−NMRによると約13%のDMSOを含有,0.30mmol,73%)の純粋なフェニル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロースが得られた。H NMR(400MHz,CDOD):δ=7.29(t,J=7.9Hz,2H),7.13(d,J=8.0Hz,2H),7.03(t,J=7.4Hz,1H),5.83(d,J=4.2Hz,1H),4.58(dd,J=4.2,1.1Hz,1H),4.38(dd,J=9.0,1.1Hz,1H),3.85−3.74(m,3H)。13C NMR(101MHz,CDOD):δ=206.9(Cquart.),158.2(Cquart.),130.7(CH),124.0(CH),118.2(CH),101.9(CH),77.7(CH),76.0(CH),73.3(CH),62.3(CH)。C1214Na([M+Na])について計算されたHRMS(ESI):277.068,検出:277.068
【0110】
実施例21:チオフェニル−β−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロースの合成
【0111】
【化23】
【0112】
フェニルチオ−β−グルコピラノシド(229mg,0.84mmol,1.0当量)および2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン(446mg,2.53mmol,3.0当量)を2.8mLのジオキサン/DMSO混合物(4:1,0.3M)に溶解させ、[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)を何時間にもかけて滴下して加えた(6.5mol%,全部で57.2mg54.6μmol,2時間毎に4×1mol%そして1時間毎に2×1.0mol%および1時間後に1×0.5mol%)。混合物をさらに1時間(合計12時間)室温で撹拌し、もはや出発物質は、NMR分光法により観察されなかった。反応物を水(17mL)を加えることによりクエンチし、得られた沈殿物を濾過した。フィルターを3×2mLの水で洗浄し、合わさった水層を活性炭カラムクロマトグラフィー(10gの活性炭)に通過させた。活性炭カラムは、カラム容量の6倍の水で洗浄し、続いてアセトニトリル/水の混合物(25%,50%,75%,100%アセトニトリル,各200mL,50%アセトニトリルで生成物を溶出)で洗浄して、生成物を溶出した。生成物を含有する留分をフリーズドライして、白色の綿毛状の固体として純粋な生成物107mg(0.39mmol,47%)を得た。H NMR(400MHz,CDOD):δ7.64−7.49(m,2H),7.37−7.20(m,3H),4.68(d,J=10.0,1H),4.24(dd,J=10.1,1.4Hz,1H),4.06(dd,J=10.0,1.4Hz,1H),3.93(dd,J=12.3,2.0Hz,1H),3.79(dd,J=12.3,4.9Hz,1H),3.43(ddd,J=10.1,4.9,2.0Hz,1H)。13C NMR(101MHz,CDOD):δ=207.4,134.0,133.9,130.1,129.1,91.0,84.0,76.1,73.9,62.8。C1214SNa([M+Na])について計算されたHRMS(ESI):293.045,検出:293.045
【0113】
実施例22:メチルアロースの酸化
【0114】
【化24】
【0115】
メチルアロース(74mg,0.38mmol,1当量)および2,6−ジクロロベンゾキノン(202mg,1.14mmol,3当量)を1.3mLのアセトニトリル/水(10:1)混合物に溶解させた。[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(10mg,9.5μmol,2.5mol%)を加え、混合物を6時間室温で攪拌した。反応混合物を1mLの水で希釈し、10mLのトルエンで洗浄した。水層を5mLのエーテルで洗浄した。水層は濾過され濃縮されて、NMRによるとC2/C3に酸化の3.6/1混合物が得られ、こうして位置選択性が実証された。
【0116】
実施例23:ミオイノシトールの酸化
【0117】
【化25】
【0118】
ミオイノシトール(50mg,0.28mmol,1当量)および2,6−ジクロロベンゾキノン(147mg,0.83mmol,3当量)をDMSO(0.9mL)に溶解させた。[(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)−Pd(μ−OAc)](OTf)(7mg,7μmol,2.5mol%)を加え、混合物を4.5時間室温で攪拌した。反応混合物を1mLの水で希釈し、10mLのトルエンと5mLのエーテルで洗浄した。水層は濾過され濃縮されて、NMRによると2つの酸化生成物の3:1混合物が得られた。
【0119】
参考文献
[1] For NMR-spectrum in D2O see: G. de Wit, C. de Hann, A. P. G. Kieboom, H. van Bekkum, Carbohydr. Res. 1980, 86, 33-41.
[2] For NMR-spectrum in D2O see: S. Freimund, A. Huwig, F. Giffhorn, S. Kopper, Chem. Eur. J. 1998, 4, 2442-2455.
[3] For NMR-spectrum in D2O see: J. S. Brimacombe, A. Husain, Carbohydr. Res. 1968, 6, 491-493.
[4] For NMR-spectrum in D2O see: C. H. Wong, Y. Ichikawa, T. Krach, C. Gautheron-Le Narvor, D. P. Dumas, G. C. Look, J. Am. Chem. Soc. 1991, 113, 8137-8145.
[5] For NMR-spectrum in D2O or CDCl3 see: H. H. Baer, Y. Gan, Carbohydr. Res. 1991, 210, 233-245.
[付記]
[付記1]
一酸化された炭水化物基質を得るために、少なくとも1つの遷移金属原子と少なくとも1つの窒素原子を含む1以上のリガンドとを含む遷移金属触媒錯体の存在下、溶媒中で炭水化物基質を酸化剤と接触させることを含む、2以上の第二級ヒドロキシル官能基を含む炭水化物基質の1つの第二級ヒドロキシル官能基の位置選択的酸化の方法。
[付記2]
前記遷移金属触媒錯体は、パラジウム、ルテニウム、銅、マンガン又は鉄を含む、付記1に記載の方法。
[付記3]
前記遷移金属触媒錯体は、パラジウムを含む、付記2に記載の方法。
[付記4]
前記遷移金属触媒錯体は、少なくとも1つのパラジウム原子と、少なくとも1つの窒素原子を含む1つ以上のリガンドとを含む、付記3に記載の方法。
[付記5]
前記遷移金属触媒錯体は、パラジウムフェナントロリン錯体またはパラジウムビス(アリール)アセナフテンキノンジイミン(BIAN)錯体であり、フェナントロリンリガンドまたはBIANリガンドが必要に応じて置換されている、付記4に記載の方法。
[付記6]
前記遷移金属触媒錯体は、前記炭水化物基質に対して0.01〜10mol%のモル比で使用される、付記1から5のいずれか1つに記載の方法。
[付記7]
前記酸化剤は、キノン、酸素、空気、過酸化物およびヒドロペルオキシドからなる群から選択される、付記1から6のいずれか1つに記載の方法。
[付記8]
0から100℃の間の温度で行われる、付記1から7のいずれか1つに記載の方法。
[付記9]
酸化反応は、水、若しくは、DMSO、DMF、THF、ジオキサン、アセトニトリル、HMPA、NMP等の有機溶媒、又は、これらのいずれかの混合物を含む溶媒中で行われる、付記1から8のいずれか1つに記載の方法。
[付記10]
前記反応は、4:1から20:1(v/v)の比率のアセトニトリル/水混合物中、DMSO中、4:1から20:1(v/v)の比率のジオキサン/水混合物中、または4:1から20:1(v/v)の比率のジオキサン/DMSO混合物中で行われる、付記9に記載の方法。
[付記11]
前記炭水化物基質は、前記第二級ヒドロキシル基上に保護基を担持しない、付記1から10のいずれか1つに記載の方法。
[付記12]
前記炭水化物基質は、グリコシド、好ましくはO−グリコシド、S−グリコシド、N−グリコシド、C−グリコシド、またはハロゲングリコシドである、付記1から11のいずれか1つに記載の方法。
[付記13]
前記炭水化物基質は、単糖、オリゴ糖、多糖、デンプン、デンプン誘導体、セルロース、セルロース誘導体、キチン、イノシトール、またはイノシトールから誘導される化合物である、付記1から12のいずれか1つに記載の方法。
[付記14]
前記炭水化物基質は、好ましくは、ネオマイシン、アプラマイシン、ネアミン、アミカシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、フラマイセチン、イセパマイシン、及びこれらの誘導体からなる群から選択されるネアミン系アミノグリコシド抗生物質である、付記1から13のいずれか1つに記載の方法。
[付記15]
前記一酸化された炭水化物は、さらなる誘導体化反応に供される、付記1から14のいずれか1つに記載の方法。
[付記16]
前記さらなる誘導体化反応は、還元、還元性アミノ化、アセタール化、ジアゾ化、ヒドロシアン化、イミナート化(imination)、ヒドラジン化(hydrazination)、オキシム化(oximation)、脱酸素化、アルキル化、またはこれらの組み合わせを含む、付記15に記載の方法。
[付記17]
メチル−2−デオキシ−β−D−エリスロ−ヘキソピラノシド−3−ウロース、メチル−β−3−ケトマルトシド、メチル−β−3−ケトセロビオシド、(6−O−ベンゾイル)−メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース、(6−O−tert−ブチル−ジフェニルシリル)−メチル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロース、およびメチル−3−アセトアミド−α−D−リボ−ヘキサピラノシド、3’−ケト−ネオマイシンB、チオフェニル−β−D−リボ−ヘキソピラノシド−3−ウロース、フェニル−α−D−リボ−ヘキサピラノシド−3−ウロースからなる群から選択される二糖類又は多糖類であって、1つの第二級ヒドロキシル基だけがケトンに酸化されている二糖類又は多糖類。
[付記18]
薬剤又は診断上の化合物の合成における前駆体又は中間体としての付記17に記載の二糖類又は多糖類の使用。