(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記シングルプランジャポンプは、それぞれが、流量範囲1μL/min〜10mL/min、プランジャストローク範囲0.01mm〜20mm、プランジャ容積範囲0.1μL〜100μLの範囲内であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のグラジエント送液装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したリニアグラジエントの2つの方式のうち、低圧グラジエント方式は、キャリア液の流量が少ないときはグラジエントの応答性が悪いので、キャリア液の流量が多いときに用いられる。本発明において「グラジエントの応答性」というときは、予定しているキャリア液の組成変化に対する実際のキャリア液の組成変化の達成の程度を意味するものとする。
一方、高圧グラジエント方式は、グラジエントの応答性が良いので、キャリア液の流量が少ないときに主に用いられ、理想的なグラジエント操作ができるが、2本以上のプランジャを用いた脈動の少ないポンプを複数台使用するため装置が大きくなり、高価になる。
【0007】
上記のようにリニアグラジエント送液装置に2本以上のプランジャのポンプが使用され、シングルプランジャポンプが使用されていないのは、シングルプランジャポンプではキャリア液の吸引工程においてはキャリア液が吐出されず、又、低流量のときにはキャリア液の吸引時間も長くなるため、キャリア液送液中の脈動が大きくなり、高感度分析ができないからである。
【0008】
より具体的には、例えばカム方式のプランジャポンプでは、プランジャの往復動の1サイクルの中で吸引工程を極力短時間にし、吐出工程に1サイクルの大部分の時間を使うようにカムを設計するが、吸引時間と吐出時間との比は一定であるため、プランジャの往復動速度を遅くし低流量とする時には吸引時間が長くなる。尚、キャリア液が吐出されない時間が長くなると、キャリア液の組成変化にも悪影響を与える。また単位時間あたりの吸引・吐出サイクルの回数が多いほうが流速の変動が少なく、高流量の送液では脈動の影響が小さくなるが、低流量の時にはプランジャの往復動速度が遅くなることにより、単位時間あたりの吸引・吐出サイクルの回数が減少するため、脈動が大きくなる。
【0009】
このような事情から、実際に使用されているHPLC方式の試料分析装置においては、装置のコストと大きさを所望の範囲に収めるため、試料分離能及び分析時間を一部犠牲にしてシングルプランジャポンプ1台を用い、組成の異なる複数のキャリア液をポンプの吸引口側でバルブ(電磁弁)により切換え、パルスダンパで脈動を消去して送液する、ステップグラジエント送液装置を用いることが多い。
【0010】
すなわち、シングルプランジャポンプを使用した、低流量でのキャリア液送液時においても脈動が少なくグラジエントの応答性が良好なリニア高圧グラジエント送液装置は実用化されていない。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたもので、HPLC方式の試料分析装置のためのグラジエント装置として、試料分離能及び分析時間を犠牲にすることなく、グラジエントの応答性の良い、安価で小型化されたリニア高圧グラジエント送液装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、HPLC方式の試料分析装置におけるグラジエント送液装置を、互いに組成の異なるキャリア液を貯留する複数のキャリア液貯留槽と、上記複数のキャリア液貯留槽のそれぞれからキャリア液を吸引・吐出可能な複数のシングルプランジャポンプと、上記複数のシングルプランジャポンプから吐出されるキャリア液を混合して送出するミキサーと、このミキサーと連通し送液中の脈動を吸収するパルスダンパと、を含んで構成し、上記シングルプランジャポンプが、キャリア液の吸引・吐出のストローク長を可変とする機能、及び、キャリア液の吸引時間と吐出時間との比を可変とする機能のうち、少なくとも一方、好ましくは両方を有すればよいことを見出した。
【0013】
また、本発明者らは、よりグラジエントの応答性を高めるために、上記シングルプランジャポンプと上記ミキサーとの間の流路に、1つ以上のパルスダンパが設置されればよいことを見出した。
【0014】
さらに、本発明者らは、特願2013−148183号(PCT/JP2014/61256)に記載のバルブを使用すれば、シングルプランジャポンプによるキャリア液の吸引・吐出のストローク長を短くした場合でも、シリンダ室内の空気を容易かつ送液装置の動作のみにより排除することができ、ポンプの送液不良を招くことがないことを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
また、本発明者らは、HPLC方式の試料分析装置として、上記のグラジエント送液装置と、このグラジエント送液装置のミキサー下流のキャリア液の流路に試料を注入する試料注入装置と、この試料注入装置より下流側のキャリア液の流路に配置されて試料中の成分を分離するカラム装置と、このカラム装置より下流側のキャリア液の流路に配置されて試料中の成分を検出する検出装置と、を含んだ構成すればよいことを見出した。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のキャリア液のそれぞれに対応させた複数のポンプを使用してリニア高圧グラジエント方式とすることで、グラジエントの応答性を向上させることができる。その一方、ポンプとしてシングルプランジャポンプを用いることで、装置を小型化することができる。また、シングルプランジャポンプを用いることにより送液中に生ずる脈動は、パルスダンパを用いること、上記シングルプランジャポンプがキャリア液の吸引・吐出のストローク長を可変とする機能を有すること、及び、キャリア液の吸引・吐出時間の比を可変とする機能を有すること、により解消することができる。
【0017】
すなわち、吸引・吐出のストローク長が可変となることにより、プランジャの往復動サイクル時間を変更することなく流量を変化させることができる。低流量での送液においても脈動の影響を小さくできるよう往復動サイクル回数を確保することができることから、脈動を抑制できる。尚、従来技術であるプランジャの往復動速度を変更する流量変更を組み合わせてもよい。
また、キャリア液の吸引・吐出時間の比が可変となることにより、プランジャの往復動速度を流量に応じて変更する時でも、吸引工程を任意の時間とすることができ、脈動を抑制することができる。さらに、キャリア液の組成変化も好適に実施することができる。
【0018】
さらに、吸引・吐出のストローク長を可変とする機能と、キャリア液の吸引・吐出時間の比を可変とする機能とを組み合わせることにより、任意の吸引時間及び吐出時間、任意のプランジャ往復動速度、任意のプランジャ往復動サイクル時間、を組み合わせ、脈動を抑制するのに好適な条件でプランジャを動作させることができる。
その結果、安価で小型化されたリニア高圧グラジエント送液装置を提供することができる。
【0019】
従って、上記のグラジエント送液装置を用いて、HPLC方式の試料分析装置を構成することにより、高精度でかつ高速な分析が可能となる一方、HPLC方式の試料分析装置の小型化等に寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態として、バルブ16に特願2013−148183号(PCT/JP2014/61256)に記載のバルブを使用した場合のシステム図である。
本実施形態のHPLC方式の試料分析装置は、HPLCの原理により分析可能な各種の分析対象、例えば、血液中のヘモグロビンA1cをはじめとするヘモグロビン各成分などを分析するために用いられる。
【0022】
図1のHPLC方式の試料分析装置には、例えば分離溶媒の濃度など、互いに組成の異なる第1及び第2のキャリア液(溶離液)の貯留槽(タンク)51、52と希釈・洗浄液の貯留槽53とが、共通の脱気装置54を介して、接続される。尚、第1及び第2のキャリア液の貯留槽51、52と希釈・洗浄液の貯留槽53は試薬キット50としてキット化されていてもよい。さらに希釈・洗浄液の貯留槽53は、それぞれ別個の貯留槽に分割されていてもよく、すなわち希釈液の貯留槽53aと洗浄液の貯留槽53bとに分割されていてもよい。
【0023】
図1のHPLC方式の試料分析装置は、貯留槽51、52から第1及び第2のキャリア液を送給する送液ポンプ1、2と、これらの送液ポンプ1、2からのキャリア液を混合するミキサー3と、ミキサー3に連通して送液中の脈動を吸収するパルスダンパ4と、ミキサー3からのキャリア液の流路5と、流路5が入口ポートに接続される試料注入装置6と、試料注入装置6の出口ポートに接続されるキャリア液の流路7と、流路7に配置されるカラム装置8及び検出装置9と、これらの下流の排液流路10とを含んで構成される。
【0024】
第1及び第2のキャリア液の送液ポンプ1、2は、それぞれ、シングルプランジャポンプであり、プランジャにより容積変化するシリンダ室(ポンプ室)の吸入口及び吐出口にそれぞれ逆止弁(一方向弁)61〜64を有している。また、送液ポンプ1、2は、プランジャストロークの変更によって吐出容積を変更することができる可変容積型のポンプであり、2つの送液ポンプ1、2の流量比を変えることができる。
【0025】
本発明に係るグラジエント送液装置では、特願2013−148183号(PCT/JP2014/61256)に記載のバルブを使用し、シングルプランジャポンプのシリンダ室と計量ポンプとを連通させる配管を具備することにより、シングルプランジャポンプによるキャリア液の吸引・吐出のストローク長を短くした場合でも、シリンダ室内の空気を排除することができる。
【0026】
ミキサー3は、送液ポンプ1からの第1のキャリア液と送液ポンプ2からの第2のキャリア液とを混合して、均一化する。ミキサー3は、具体的には、円筒容器内に2種のキャリア液を接線方向に導入して混合し、混合液を軸線方向に導出させる。従って、送液ポンプ1、2の流量比の変更とミキサー3による混合とで、第1のキャリア液の濃度と第2のキャリア液の濃度との間の任意の濃度のキャリア液を得ることができる(グラジエント機能)。尚、ミキサー3には運転準備段階でエア抜き及び液充填を行うための配管19が接続されている。この配管19は通常運転中は後述する切換バルブ16にて閉じられている。
【0027】
パルスダンパ4は、ミキサー3内の空間に連通するダイアフラム式のダンパであり、特に小型化のために送液ポンプ1、2としてシングルプランジャポンプを用いることにより発生する脈動を吸収する。パルスダンパ4は圧力センサを具備していてもよい。尚、パルスダンパ4はミキサー3に連通する流路上に設置されればよく、ミキサー3と試料注入装置6の間の流路上、ミキサー3と切換バルブ16の間の流路上、ミキサー3と送液ポンプ1の間の流路上、またはミキサー3と送液ポンプ2の間の流路上に1つ以上設置されればよい。好ましくは、ミキサー3と送液ポンプ1の間の流路上、またはミキサー3と送液ポンプ2の間の流路上に1つ以上設置されると、グラジエントの応答性が向上するため好適である。
【0028】
尚、送液ポンプ1、2として用いるシングルプランジャポンプは、小容積のポンプを用いて送液量あたりの吐出回数を多くし、流量が少なくなるにつれてプランジャのストロークを小さくして1回の吐出量を減らし、さらに吸引時間と吐出時間との割合を変えることにより送液中の脈動の発生を抑制することができる。さらに、ミキサー3とパルスダンパ4との働きで、実質的に脈動の少ない送液が可能である。
【0029】
本発明のグラジエント送液装置にその性能を発揮させるためのシングルプランジャポンプの能力としては、分析化学用のシングルプランジャポンプに要求される範囲内でストローク可変機能を有すればよく、例えば上記シングルプランジャポンプは、それぞれが、流量範囲1μL/min〜10mL/min、プランジャストローク範囲0.01mm〜20mm、プランジャ容積範囲0.1μL〜100μLの範囲内でストローク可変機能を有すればよい。また、吸引時間と吐出時間との割合が可変であり、流量が少なくなるに従い吸引時間の割合を減少させ吐出時間の割合を増加させるように制御し、低流量での送液時にはキャリア液の吸引時間を極短時間とすることが好ましい。なお本明細書において「プランジャ容積」とは、プランジャとシリンダ室とで形成される空間の容積を意味するものとする。
【0030】
本発明のグラジエント送液装置として、例えば糖尿病検査における血液中のヘモグロビンA1c値を含むヘモグロビン類の計測装置では、好ましい流量範囲としては10μL/min〜1.5mL/min、好ましいプランジャストローク範囲としては0.1mm〜2.21mm、好ましいプランジャ容積範囲としては、0.8μL〜17.5μLを満たすシングルプランジャポンプを例示できる。さらに、吸引時間と吐出時間との割合は、最大流量時には1:1を例示でき、流量が少なくなるに従い吸引時間の割合を減少させ吐出時間の割合を増加させるように制御し、低流量での送液時にはキャリア液の吸引時間を極短時間とすることが好ましい。低流量時における吸引時間と吐出時間との割合として、1:1000を例示できる。
【0031】
試料注入装置(本体)6は、詳細構造については省略するが、試料注入部22を備えている。試料注入部22は、ミキサー3からのキャリア液の流路5とその下流側の流路7との間に配置され、ニードル移動装置(図示せず)による上下動によって試料注入位置に移動させたニードル27により、キャリア液に試料を注入可能である。
試料注入装置6はまた、試料注入部22の下方に試料吸引部(容器保持部)39を備えている。試料吸引部39では、試料吸引位置に移動させたニードル27により、試料を吸引可能である。従って、試料吸引部39にて吸引した試料を試料注入部22にてキャリア液に注入することになる。尚、吸引及び注入は、計量ポンプ(サンプリングポンプ)11を切換バルブ16を介してニードル27への配管12に接続して行う。
【0032】
試料注入装置6はまた、試料注入部22と試料吸引部39との間で試料注入部22のハウジングと一体に、ニードル27に対する洗浄部33を備えている。洗浄部33では、洗浄位置に移動させたニードル27に対し、洗浄液を供給して洗浄を行う。洗浄は、計量ポンプ11を切換バルブ16を介して洗浄・希釈液の貯留槽53からの配管13に接続して、洗浄液を吸引した後、計量ポンプ11を切換バルブ16を介してニードル27への配管12に接続して行う。洗浄後の洗浄液は、排液ポンプ14により回収して、排液流路15へ排出する。
【0033】
カラム装置8は、試料注入装置6下流のキャリア液の流路7に配置されて試料中の成分を分離する。
検出装置9は、カラム装置8の下流側に配置されて、前記分離された成分を検出し、その信号をデータ処理装置(図示せず)に送る。データ処理装置でのデータ処理結果が分析結果として出力される。
【0034】
制御装置30は、送液ポンプ1、2、試料注入装置6、検出装置9、計量ポンプ11、排液ポンプ14、及び切換バルブ16を制御する。特にグラジエント送液のために、制御装置30は送液ポンプ1、2のプランジャストローク長、吸引・吐出時間比、プランジャ往復動速度、プランジャ往復動サイクル時間等を制御する。また、パルスダンパ4に圧力センサが具備されている場合には、制御装置30に圧力センサからの信号が入力される。制御装置30にはコンピュータ及び記録媒体が備わり、該記録媒体には各種プログラムが記録されている。
【0035】
図1の試料分析装置は、流路切換えのための切換バルブ16を備え、切換バルブ16は4つの位置a〜dをとることができる。4つの位置a〜dは、計量ポンプ11と連通する第1バルブ内流路16aの回動により、この第1バルブ内流路16aが選択的に接続されるポートa〜dにそれぞれ対応する。また、第1バルブ内流路16aの回動に伴ってもう1つの弧状の第2バルブ内流路16bが回動し、位置a、bでは、第2バルブ内流路16bによりポートeとポートfとが連通する。尚、バルブ内流路16a、16bは切換バルブ16のロータに形成され、ポートa〜fは切換バルブ16のステータに形成されている。
ポートaは、エア抜き及びキャリア液充填用の配管17により、送液ポンプ1のシリンダ室に接続されている。
ポートbは、エア抜き及びキャリア液充填用の配管18により、送液ポンプ2のシリンダ室に接続されている。
ポートcは、配管12により、ニードル27に接続されている。
ポートdは、配管13により、希釈・洗浄液の貯留槽53に接続されている。
ポートeは、ミキサー3からのエア抜き及びキャリア液充填用の配管19に接続され、ポートfは、排液流路20に接続されている。
言い換えれば、切換バルブ16のロータは、計量ポンプ11が接続される中央配管接続ポートと、中央配管接続ポートから連通される第1バルブ内流路16aと、第1バルブ内流路16aの回動に伴って回動する弧状の第2バルブ内流路16bとを備えている。
切換バルブ16のステータは、上記ポートa〜dを含む第1配管接続ポート群と、上記ポートe、fを含む第2配管接続ポート群とを備えている。
第1配管接続ポート群(a〜d)は、第1バルブ内流路16aの回動により、第1バルブ内流路16aを介して中央配管接続ポートと個別に連通され、第1バルブ内流路16aと各ポートa〜dとの接続位置は同一円周上にある。
第2配管接続ポート群(e、f)は、弧状の第2バルブ内流路16bの回動により、第2バルブ内流路16bを介して互いに連通可能であり、第2バルブ内流路16bと各ポートe、fとの接続位置は、ポートa〜dがある円周とは同軸であり、異なる径の円周上にある。
ここで、第1配管接続ポート群のうち、ポートa、bでは、中央配管接続ポートと当該ポートa、bとが連通されるときに、弧状の第2バルブ内流路16bによって、第2配管接続ポート群の2つのポートe、fが連通される。
第1配管接続ポート群のうち、他のポートc、dでは、中央配管接続ポートと当該ポートc、dとが連通されるときに、弧状の第2バルブ内流路16bによって、第2配管接続ポート群の2つのポートe、fが連通されない。
【0036】
図1の試料分析装置の運転準備段階でのエア抜き及びキャリア液充填について説明する。
運転準備段階では、流路内のエア抜きを行って流路内にキャリア液を満たすため、次のような操作が自動的に行われる。
【0037】
切換バルブ16を位置aにする(
図1の状態)。位置aでは、計量ポンプ11がポートa(配管17)と接続されると共に、ポートeとポートfとが連通する。
この状態で、先ず計量ポンプ11を吸引動作させる。すると、貯留槽51内の第1のキャリア液が送液ポンプ1の吸入側の逆止弁61を通り、送液ポンプ1のシリンダ室から配管17を通って、計量ポンプ11内に吸入される。これにより、第1のキャリア液の貯留槽51から送液ポンプ1までの流路がキャリア液で満たされる。
次に計量ポンプ11を吐出動作させる。すると、計量ポンプ11内の第1のキャリア液が配管17により送液ポンプ1に圧送され、吐出側の逆止弁62を開いて、ミキサー3へ流れる。そして、カラム装置8側の抵抗で、キャリア液は、ミキサー3を経て配管19へ流れ、さらに、配管19から切換バルブ16(ポートe、f)を介してつながっている排液流路20を通って排液として排出される。
【0038】
次に切換バルブ16を時計方向に60°回動して、位置bにする。位置bでは、計量ポンプ11がポートb(配管18)と接続され、ポートeとポートfとは引き続き連通する。
この状態で、先ず計量ポンプ11を吸引動作させる。すると、貯留槽52内の第2のキャリア液が送液ポンプ2の吸入側の逆止弁63を通り、送液ポンプ2のシリンダ室から配管18を通って、計量ポンプ11内に吸入される。これにより、第2のキャリア液の貯留槽52から送液ポンプ2までの流路がキャリア液で満たされる。
次に計量ポンプ11を吐出動作させる。すると、計量ポンプ11内の第2のキャリア液が配管18により送液ポンプ2に圧送され、吐出側の逆止弁64を開いて、ミキサー3へ流れる。そして、カラム装置8側の抵抗で、キャリア液は、ミキサー3を経て配管19へ流れ、さらに、配管19から切換バルブ16(ポートe、f)を介してつながっている排液流路20を通って排液として排出される。
【0039】
次に切換バルブ16を位置a、位置b以外にして、送液ポンプ1、2の送給を開始し、試料注入部22を含むキャリア液の流路5、7、カラム装置8及び検出装置9をキャリア液で満たす。
【0040】
図1の試料分析装置の通常運転中の希釈工程、試料吸引工程、試料注入工程、及び、洗浄工程について説明する。
希釈工程では、ニードル27を試料吸引位置(試料吸引部39)すなわち試料が収容される容器内に位置させる。
切換バルブ16の位置は先ず位置dにする。位置dでは、計量ポンプ11がポートd(配管13)と接続される。この状態で、計量ポンプ11を吸引動作させる。すると、貯留槽53内の希釈液(希釈・洗浄液)が配管13を介して計量ポンプ11内に吸引される。
切換バルブ16の位置は次に位置cにする。位置cでは、計量ポンプ11がポートc(配管12)と接続される。この状態で、計量ポンプ11を吐出動作させる。すると、計量ポンプ11内の希釈液が配管12を介してニードル27に圧送される。ニードル27は試料吸引位置(試料吸引部39)すなわち容器内に位置しており、希釈液が容器内に供給される。計量ポンプ11に吸引・吐出動作を繰り返させ、容器内の試料と希釈液との混合液をニードル27によって吸ったり戻したりすることで、容器内の混合液を撹拌し、試料を均一に希釈する。
【0041】
試料吸引工程では、ニードル27を試料吸引位置(試料吸引部39)すなわち試料(希釈液により希釈された試料)が収容された容器内に位置させる。
切換バルブ16をニードル27側に切換え(位置c)、計量ポンプ11と配管12とを接続する。この状態で、計量ポンプ11を吸引動作させる。すると、容器内の試料がニードル27内に吸引される。
【0042】
試料注入工程では、ニードル27を試料注入位置(試料注入部22)に位置させる。
切換バルブ16をニードル27側に切換え(位置c)、計量ポンプ11と配管12とを接続する。この状態で、計量ポンプ11を吐出動作させる。すると、ニードル27内の試料がキャリア液の流路5、7間の試料注入部22に注入される。
【0043】
洗浄工程では、ニードル27を洗浄位置(図示せず)に位置させる。
切換バルブ16の位置は先ず位置dにする。位置dでは、計量ポンプ11がポートd(配管13)と接続される。この状態で、計量ポンプ11を吸引動作させる。すると、貯留槽53内の洗浄液(希釈・洗浄液)が配管13を介して計量ポンプ11内に吸引される。
切換バルブ16の位置は次に位置cにする。位置cでは、計量ポンプ11がポートc(配管12)と接続される。この状態で、計量ポンプ11を吐出動作させる。すると、計量ポンプ11内の洗浄液が配管12を介してニードル27に圧送される。ニードル27は洗浄位置に位置しており、洗浄液によってニードル27が洗浄される。洗浄後の洗浄液は、排液ポンプ14により回収され、排液流路15を通って排液として排出される。
このとき、排液ポンプ14の流量は計量ポンプ11の流量より大きいので、洗浄後の洗浄液はニードル27の案内孔(図示せず)より入った空気と共に、外部へ漏れることなく排液流路15より排出される。ここで、洗浄液は空気と混合してミスト状となることで、洗浄効率を上げることができ、また洗浄液消費量の減少を図り、ニードル27の洗浄を好適に行うことができる。
【0044】
図1の試料分析装置の通常運転中のキャリア液の流れについて説明する。
送液ポンプ(シングルプランジャポンプ)1、2が運転されると共に、2つの送液ポンプ1、2の流量比が時間と共に変化せしめられる。そして、送液ポンプ1による第1のキャリア液と送液ポンプ2による第2のキャリア液とは、ミキサー3にて混合して均一化され、脈動はパルスダンパ4により吸収される。
このように、送液ポンプ1、2の流量比の変更と、ミキサー3及びパルスダンパ4による混合及び脈動吸収とで、第1のキャリア液の濃度と第2のキャリア液の濃度との間の任意の濃度のキャリア液を得ることができる。
【0045】
混合されたキャリア液は、流路5により試料注入部22へ送られ、ここで、試料として、例えば希釈・溶血済みの血液等が注入される。試料注入後のキャリア液は、流路7によりカラム装置8を経て検出装置9へ送られる。カラム装置8では、試料中の特定成分が分離される。その下流側の検出装置9では、前記分離された成分(例えばヘモグロビンA1cをはじめとするヘモグロビン成分)が吸光度測定などの検出方法により検出される。
【0046】
グラジエント送液におけるポンプの動作を、糖尿病検査における血液中のヘモグロビン類の計測装置を用いて例示する。
【0047】
総流量(ポンプ1とポンプ2との流量の和)を、例えば1mL/min等のある値に保った状態でグラジエントをかけるときの各場合を説明する。
ポンプ1を最大流量で送液させ、ポンプ2を停止させる場合、ポンプ1のプランジャのストローク長は最大流量に応じた長さに、吸引時間と吐出時間との割合は実質的に1:1に制御されればよい。
【0048】
次に、ポンプ1の流量を減少させ、ポンプ2による送液を開始させる場合について説明する。ポンプ1の流量を減少させるのに従い、ポンプ1のプランジャのストローク長を短くしていき、吸引時間の割合を減少させ吐出時間の割合を増加させるように制御する。一方、ポンプ2を設定可能な最低流量付近で送液させるとき、ポンプ2のプランジャのストローク長は短く、キャリア液の吸引時間は極短時間に、吐出時間は長くなるように制御される。
流量の増減は、ポンプの回転数、プランジャのストローク長等の調整により制御でき、これらを組み合わせて制御してもよい。
キャリア液の吸引時間及び吐出時間の増減は、プランジャのストローク長の調整、一定の往復動サイクル時間内における吸引時間と吐出時間比の変更等により制御でき、これらを組み合わせて制御してもよい。
【0049】
ポンプ1の流量をさらに減少させ、ポンプ2の流量を増加させる場合について説明する。ポンプ1を設定可能な最低流量付近で送液させるとき、ポンプ1のプランジャのストローク長は短く、キャリア液の吸引時間は極短時間に、吐出時間は長くなるように制御される。ポンプ2の流量の増加に従い、ポンプ2のプランジャのストローク長を長くしていき、さらに吸引時間の割合を増加させ吐出時間の割合を減少させるように制御する。
【0050】
ポンプ1を停止させ、ポンプ2を最大流量で送液させる場合、ポンプ2のプランジャのストローク長は最大流量に応じた長さに、吸引時間と吐出時間との割合は実質的に1:1に制御されればよい。
【0051】
従来、カム方式のプランジャポンプによる送液において、低流量時に吸引時間が長くなることにより脈動の影響が大きくなる課題があった。しかしながら、ポンプ1及びポンプ2を上記のように制御することにより、低流量での送液においても、キャリア液の吸引時間を極短時間とすることができる。言い換えれば、キャリア液の流速が低下する時間を極短時間とすることができる。
このように、プランジャのストローク長及びキャリア液の吸引・吐出時間比が可変となることにより、低流量での送液においても脈動の影響を小さくすることが可能となる。上記のポンプ動作とパルスダンパの使用を組み合わせることで、実質的に脈動の少ない送液ができる。
【0052】
本実施形態に係るグラジエント送液装置は、互いに組成の異なるキャリア液を貯留する複数のキャリア液貯留槽51、52と、これら複数のキャリア液貯留槽51、52のそれぞれからキャリア液を吸引・吐出可能な複数のシングルプランジャポンプ(送液ポンプ)1、2と、これら複数のシングルプランジャポンプ1、2からのキャリア液を混合して送出するミキサー3と、このミキサー3と連通し脈動を吸収するパルスダンパ4と、を含んで構成され、上記シングルプランジャポンプ1,2がキャリア液の吸引・吐出のストローク長を可変とする機能を有し、さらにキャリア液の吸引・吐出時間の比を可変とする機能を有するため、次のような効果が得られる。
【0053】
複数のキャリア液のそれぞれに対応させた複数のポンプを使用してリニア高圧グラジエント方式とすることで、グラジエントの応答性を向上させることができる。その一方、ポンプとしてシングルプランジャポンプ1、2を用いることで、装置を小型化することができる。また、シングルプランジャポンプ1、2により送液中に生ずる脈動は、パルスダンパを用いること、上記シングルプランジャポンプがキャリア液の吸引・吐出のストローク長を可変とする機能を有すること、吸引・吐出時間の比を可変とする機能を有すること、により解消することができる。その結果、小型で安価なリニア高圧グラジエント送液装置を提供することができる。
【0054】
また、本実施形態に係るグラジエント送液装置は、下記(A)〜(C)の構成を具備する切換バルブ16を介し、切換バルブ16の中央配管接続ポートと計量ポンプ11とを接続させるとともに、第1配管接続ポート群のうち少なくとも1以上の配管接続ポートを上記シングルプランジャポンプ1、2のシリンダ室に接続させることで、計量ポンプ11とシングルプランジャポンプ1、2のシリンダ室とを連通させる配管17、18を具備する。
(A)下記(1)〜(3)を具備するロータ。
(1)1個以上の中央配管接続ポート。
(2)上記の中央配管接続ポートから連通される1個以上の第1バルブ内流路。
(3)上記第1バルブ内流路の回動に伴って回動する、流路の長さが回動で移動する長さ1回分以上である1個以上の弧状の第2バルブ内流路。
本実施形態では、1個の中央配管接続ポート、1個の第1バルブ内流路16a、及び、1個の弧状の第2バルブ内流路16bを有している。
(B)下記(4)〜(5)を具備するステータ。
(4)上記ロータの第1バルブ内流路16aの回動により、第1バルブ内流路16aを介して中央配管接続ポートと個別に連通される配管接続ポートを2個以上有し、その接続位置がロータ中心軸回りの1つの円周上にある第1配管接続ポート群。本実施形態では、中央配管接続ポートと個別に連通される配管接続ポートは、a、b、c、dの4個を有している。
(5)上記ロータの第1バルブ内流路16aと第1配管接続ポート群a、b、c、dとの接続位置がある上記円周に対して、径の異なる同軸円の円周上に弧状の第2バルブ内流路16bとの接続位置を持ち、弧状の第2バルブ内流路16bの回動により互いに連通される配管接続ポートを2個以上有する第2配管接続ポート群。本実施形態では、上記の弧状の第2バルブ内流路16bの回動により連通される配管接続ポートは、e、fの2個を有している。
(C)下記(6)〜(7)の関係を満たすロータとステータの配置。
(6)上記ロータの第1バルブ内流路16aと個別に連通する上記ステータの第1配管接続ポート群のうち、1個以上の配管接続ポートでは、中央配管接続ポートと当該配管接続ポートとが連通されるときに、弧状の第2バルブ内流路16bによって、第2配管接続ポート群の2個以上の隣接する配管接続ポートが連通される。本実施形態では、中央配管接続ポートと配管接続ポートaまたはbとが連通されるときに、弧状の第2バルブ内流路16bによって配管接続ポートe、fが連通される。
(7)上記第1配管接続ポート群のうち、他の配管接続ポートでは、中央配管接続ポートと当該配管接続ポートとが連通されるときに、弧状の第2バルブ内流路16bによって、第2配管接続ポート群の上記隣接する配管接続ポートが連通されない。本実施形態では、中央配管接続ポートと配管接続ポートcまたはdとが連通されるときに、弧状の第2バルブ内流路16bによって配管接続ポートe、fが連通されない。
かかる構成により、既に述べたようなエア抜きが可能となる。尚、上記(3)の弧状の第2バルブ内流路について、好ましい長さは、回動で移動する長さ1回分以上であり、より好ましくは2回分以上である。
【0055】
また、本実施形態に係るHPLC方式の試料分析装置は、上記のグラジエント送液装置と、このグラジエント送液装置のミキサー3下流のキャリア液の流路5に試料を注入する試料注入装置6と、この試料注入装置6より下流側のキャリア液の流路7に配置されて試料中の成分を分離するカラム装置8と、このカラム装置8より下流側のキャリア液の流路に配置されて試料中の成分を検出する検出装置9と、を含んで構成されるため、高精度でかつ高速な分析が可能となる。
【0056】
また、上記のHPLC方式の試料分析装置を用いて、キャリア液の流路に試料として血液を注入し、血液中のヘモグロビン成分を分離・検出してその成分量(ヘモグロビンA1c値など)を計測することにより、糖尿病検査の高精度化、高速化に寄与することができる。
【0057】
尚、以上の説明では、グラジエントの例として、分離溶媒の濃度の異なる2つのキャリア液の混合比を変化させて分離溶媒の濃度を変化させる例で説明したが、これに限らず、2種以上の組成の異なる複数のキャリア液の混合比を変化させてキャリア液の組成を変化させるようにしてもよい。
【0058】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。