【文献】
Ling Zhang,Degradable Disulfide Core-Cross-Linked Micelles as a Drug Delivery System Prepared from Vinyl Functionalied Nucleosides via the RAFT Process,Biomacromolecules,2008年,Vol.9,p.3321-3331
【文献】
Agne Tubeleviciute,Compartmentalized self-replication(CSR) selection of Thermococcus litoralis ShIB DNA polymerase for diminished uracil binding,Protein Engineering, Design & Selection,2010年,vol.23,p.589-597
【文献】
Aaron P.Esser-Kahn,Triggered Release from Polymer Capsules,Macromolecules,2011年,Vol.44,p.5539-5553
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化学的試薬が還元剤を含み、前記還元剤がジチオスレイトール(DTT)またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である、請求項1に記載の組成物。
前記核酸が、DNA、RNA、アンプリコン、合成ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、cDNA、dsDNA、ssDNA、プラスミドDNA、コスミドDNA、高分子量(MW)DNA、染色体DNA、ゲノムDNA、ウイルスDNA、細菌DNA、mtDNA(ミトコンドリアDNA)、mRNA、rRNA、tRNA、nRNA、siRNA、snRNA、snoRNA、scaRNA、マイクロRNA、dsRNA、リボザイム、リボスイッチおよびウイルスRNAからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
前記核酸が、DNA、RNA、アンプリコン、合成ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、cDNA、dsDNA、ssDNA、プラスミドDNA、コスミドDNA、高分子量(MW)DNA、染色体DNA、ゲノムDNA、ウイルスDNA、細菌DNA、mtDNA(ミトコンドリアDNA)、mRNA、rRNA、tRNA、nRNA、siRNA、snRNA、snoRNA、scaRNA、マイクロRNA、dsRNA、リボザイム、リボスイッチおよびウイルスRNAからなる群から選択される、請求項29に記載の装置。
前記核酸が、DNA、RNA、アンプリコン、合成ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、cDNA、dsDNA、ssDNA、プラスミドDNA、コスミドDNA、高分子量(MW)DNA、染色体DNA、ゲノムDNA、ウイルスDNA、細菌DNA、mtDNA(ミトコンドリアDNA)、mRNA、rRNA、tRNA、nRNA、siRNA、snRNA、snoRNA、scaRNA、マイクロRNA、dsRNA、リボザイム、リボスイッチおよびウイルスRNAからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において本発明の様々な実施形態を示し、説明したが、当業者であれば、斯かる実施形態が単なる一例として提示されていることが明らかであろう。当業者は、本発明から逸脱せずに、多数の改変、変化および置換を想定することができる。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替物を使用できることを理解されたい。
【0022】
I.概略
本開示は、マイクロウェルアレイ装置または他の区分カプセルアレイ装置と、斯かる装置を用いる方法を提供する。一般に、本装置は、多くの場合、区分当たり特定のマイクロカプセル濃度でマイクロカプセルが充填された区分(例えば、マイクロウェル、液滴)の集合体である。
【0023】
装置は、試料調製操作の実施に特に有用である可能性がある。一部の事例において、試料の一部のみが各区分に存在するように、本装置は、試料(例えば、核酸の不均一混合物、細胞の混合物等)を複数の区分に細分割する。例えば、核酸の1本の鎖(または分子)だけが各区分に存在するように、核酸の混合物を含む核酸試料を区分化することができる。他の例において、細胞が1つだけ各区分に存在するように、細胞試料を区分化することができる。
【0024】
区分化工程に続いて、装置内の細分割された試料において多数の異なる操作のいずれかを行うことができる。区分は、1種または複数の試薬[例えば、酵素、固有の識別子(例えば、バーコード)、抗体等]を含有する1個または複数のカプセルを含むことができる。一部の事例において、装置、付属の装置または使用者が、マイクロカプセルに、1種または複数の試薬をそれぞれの区分へと放出させるトリガーを付与する。試薬の放出が、細分割された試料と試薬との接触を可能にすることができる。例えば、試薬が、バーコード等の固有の識別子である場合、試料に、固有の識別子をタグ付けすることができる。続いて、配列決定反応等の下流の適用で、タグ付けされた試料を用いることができる。
【0025】
これらに限定されないが、試料区分化、試料単離、結合反応、断片化(例えば、区分化の前または区分化の後に)、ライゲーション反応および他の酵素反応等の種々の異なる反応および/操作を、本明細書に開示されている装置内で行うことができる。本装置はまた、これらに限定されないが、核酸配列決定、タンパク質配列決定、核酸定量化、配列決定最適化、遺伝子発現の検出、遺伝子発現の定量化およびゲノムまたは発現されたマーカーの単一細胞解析等の種々の異なる分子生物学的適用にも有用である可能性がある。さらに本装置は、多数の医学的適用を有する。例えば、これは、がんを含む様々な遺伝性および非遺伝性疾患ならびに障害の同定、検出、診断、治療、ステージ分類またはリスク予測に用いることができる。
【0026】
II.マイクロカプセル
図1Aは、固体または半透性の殻または膜110によって封入された第2の層130に包まれた内部区画120を含む例示的なマイクロカプセルの模式図である。一般に、殻は、周囲の環境(例えば、マイクロウェルの内部)から内部区画を隔てている。内部区画、例えば、120、130は、試薬等の材料を含むことができる。
図1Aに描写されている通り、試薬100は、内部区画120に存在することができる。しかし、一部の事例において、試薬は、エンベロープ層(enveloping layer)130にまたは両方の区画に位置する。一般に、マイクロカプセルは、特定のトリガーの導入後に、内部材料またはその一部を放出することができる。トリガーは、殻層110および/または内部エンベロープ層130の破壊を引き起こし、マイクロウェルの空洞等の外部環境と内部区画100、120との接触を可能にすることができる。
【0027】
マイクロカプセルは、数種の流体相を含むことができ、エマルション(例えば、油中水型エマルション、水中油型エマルション)を含むことができる。マイクロカプセルは、内部層120を包む第2の層130と非混和性の内部層120を含むことができる。例えば、内部層120は、水性流体を含むことができるが、エンベロープ層130は、油等の非水性流体であってもよい。逆に、内部層120は、非水性流体(例えば、油)を含むことができ、エンベロープ層130は、水性流体を含むことができる。一部の事例において、マイクロカプセルは、第2のエンベロープ層を含まない。多くの場合、マイクロカプセルは、ポリマー材料を含むことができる殻層110によってさらに封入される。一部の事例において、マイクロカプセルは、液滴を含むことができる。一部の事例において、マイクロカプセルは、液滴であってもよい。
【0028】
液滴および液滴生成のための方法は、例えば、あらゆる目的で参照によりその内容が本明細書に組み込まれる米国再発行特許第41,780号に記載されている。本装置は、装置中の試料および/またはマイクロカプセルの流動ならびに区分内の試料および/またはマイクロカプセルの分布を可能にするマイクロ流体要素を含有することもできる。
【0029】
マイクロカプセルは、複数の区画を含むことができる。マイクロカプセルは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、50、100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000または50000個の区画を含むことができる。他の事例において、マイクロカプセルは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、50、100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000または50000個未満の区画を含む。同様に、各区画またはそのサブセットは、複数の追加の区画へと細分割することもできる。一部の事例において、各区画またはそのサブセットは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、50、100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000または50000個の区画へと細分割される。他の事例において、各区画またはそのサブセットは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、50、100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000または50000個未満の区画へとさらに細分割される。
【0030】
複数の区画における数通りの試薬分布が可能である。例えば、各区画(または区画総数の一部)が同じ試薬または同じ試薬組み合わせを含むことができる。一部の事例において、各区画(または区画総数の一部)が異なる試薬または異なる試薬組み合わせを含む。
【0031】
区画は、種々の方法で構成することができる。一部の事例において、マイクロカプセルは、多くの場合、非混和性層によって隔てられた複数の同心円状区画(ある区画にその前の区画が含有される反復単位)を含むことができる。斯かるマイクロカプセルにおいて、試薬は、1区画空けて、2区画空けて、3区画空けて存在することができる。
【0032】
一部の事例において、マイクロカプセル内の区画の大部分は、同心円状ではない。その代わりに、区画はマイクロカプセル内に別個の独立した実体として存在する。
図1Bは、それぞれ試薬を含有する複数のより小型のマイクロカプセル140を含有するマイクロカプセルの例を描写する。本明細書に記載されている他のマイクロカプセルの多くと同様に、このマイクロカプセルは、多くの場合ポリマー材料150を含む外殻によって封入することができる。より大型のマイクロカプセル内に封入された複数のより小型のマイクロカプセルは、非混和性流体160により物理的に分離され、これにより、刺激を与えて試薬を溶液中に放出させる前に試薬が混合することを防止することができる。一部の事例において、非混和性流体に追加の材料または試薬が充填される。一部の事例において、複数のより小型のマイクロカプセルは、非混和性流体(例えば、170)の層で包囲されており、この非混和性流体は、マイクロカプセルの内部流体と混和性の流体160でさらに包囲されている。例えば、内部マイクロカプセル180は、非混和性(例えば、油)層に包まれた水性内部を含むことができ、この非混和性層は、水性層160でさらに包囲される。混和性区画(例えば、160および180)はそれぞれ、試薬を含有することができる。これらは、同じ試薬(または同じ試薬組み合わせ)を含有しても、異なる試薬(または異なる試薬組み合わせ)を含有してもよい。あるいは、混和性区画のうち1個または数個は、試薬を含んでいなくてもよい。
【0033】
マイクロカプセルは、ポリマー殻(例えば、
図1および
図2を参照)または複数のポリマー殻を含むことができる。例えば、マイクロカプセルは、互いに重なりあって複数のポリマー殻を含むことができる。他の事例において、マイクロカプセル内の個々の区画がポリマー殻を含んでいてもよく、または区画のサブセットがポリマー殻を含んでいてもよい。例えば、
図1Bにおけるより小型の区画140の全てまたは一部は、流体内部160からこの区画を隔てるポリマー殻を含んでいてもよい。特定の試薬が、高分子の殻を有する区画内に含有され、一方、異なる試薬が、単に非混和性液体で包まれた区画内に存在できるように、マイクロカプセルを設計することができる。例えば、熱によるトリガーによって放出されることが望まれる試薬は、感熱性または熱活性化可能な高分子の殻を有する区画内に含有され、一方、異なるトリガーによって放出されるよう設計された試薬は、異なる種類の区画に存在していてもよい。別の例において、常磁性粒子をカプセル殻壁に取り込むことができる。続いて、磁石または電場を用いて、カプセルを所望の位置に配置させることができる。一部の事例において、磁場(例えば、高周波交流磁場)を斯かるカプセルに印加することができる。続いて、取り込まれた常磁性粒子が磁場のエネルギーを熱に変換することにより、カプセル破裂を引き起こすことができる。
【0034】
本開示の装置のマイクロカプセル構成成分は、分析物の試料調製のための試薬の制御および/または徐放をもたらすことができる。マイクロカプセルは、酵素およびタンパク質等の特に感受性の高い試薬を含む、様々な種類の化学物質、成分、医薬品、香料等の制御放出および輸送に特に用いることができる(例えば、D. D. Lewis「Biodegradable Polymers and Drug Delivery Systems」、M. Chasin and R. Langer編(Marcel Decker、New York、1990); J. P. McGeeら、J. Control. Release 34 (1995)、77を参照)。
【0035】
マイクロカプセルは、別々の定義できる量で試薬を送達するための手段をもたらすこともできる。マイクロカプセルを用いて試料から試薬を隔離することにより、試料と試薬との早過ぎる混合を防止することができる。マイクロカプセルは、試料調製において用いられる酵素、核酸および他の化学物質等の特に感受性の高い試薬の取り扱いを容易にし、これらとの接触を限定することもできる。
【0036】
A.マイクロカプセルの調製
本開示の装置のマイクロカプセルは、多数の方法およびプロセスにより調製することができる。調製技法としては、パンコーティング、噴霧乾燥、遠心押し出し(centrifugal extrusion)、エマルションに基づく方法および/またはマイクロ流体技法が挙げられる。典型的には、調製のための方法は、マイクロカプセルの所望の特徴に基づき選ばれる。例えば、方法を選ぶ際に、殻壁の厚さ、透過性、殻壁の化学組成、殻壁の機械的統合性およびカプセルサイズを考慮に入れることができる。調製方法は、コア材料(例えば、流体、試薬等)が、水性、有機または無機であるか等、カプセル内に特異的な材料を取り込む能力に基づき選択することもできる。その上、調製方法は、マイクロカプセルの形状およびサイズに影響を与えることができる。例えば、カプセルの形状(例えば、球体、楕円体等)は、前駆液体における液滴の形状によって決まる可能性があり、これは、コア液体の粘性および表面張力、エマルションの流れの方向、液滴安定化において用いられた界面活性剤の選択、ならびに特定のサイズ(例えば、マイクロカプセルをマイクロチャネルまたはキャピラリー内に適合させるために、マイクロカプセルの歪みを要求するサイズ)のマイクロチャネルまたはキャピラリーにおいて作製された調製物等の物理的閉じ込めにより決定され得る。
【0037】
マイクロカプセルは、エマルションの水性/有機界面における単量体単位が重合して殻を形成するプロセスである、乳化重合により調製することができる。試薬は、二相性混合物の水性相と混合される。混合物の激しい振盪または超音波処理は、ポリマー殻に内包された、試薬を含有する液滴を作製する。
【0038】
一部の事例において、マイクロカプセルは、負および正に荷電した多価電解質が金属酸化物コア等の粒子上に置かれるプロセスである、層毎のアセンブリにより調製することができる。多価電解質間の静電相互作用は、コアの周りにポリマー殻を作製する。その後、酸の添加によりコアを除去し、様々な試薬を充填することができる半透性中空球をもたらすことができる。
【0039】
さらにまた別の事例において、マイクロカプセルは、水性溶液における2種の反対に荷電したポリマーがもつれて中和ポリマー殻壁を形成するようになるプロセスである、コアセルベーションにより調製することができる。一方のポリマーは、油相内に含有されてよく、他方の反対の電荷は、水性相に含有される。この水性相は、封入しようとする試薬を含有することができる。他方のポリマーに対する一方のポリマーの引力は、コアセルベートの形成をもたらし得る。一部の実施形態において、ゼラチンおよびアラビアゴムは、この調製方法の構成成分である。
【0040】
マイクロカプセルは、揮発性および不揮発性溶媒を含有する溶媒混合物においてポリマーが溶解されるプロセスである、内部相分離により調製することもできる。その結果得られる溶液の液滴は、水性層において懸濁され、連続的撹拌および界面活性剤の使用により安定化される。この相は、封入しようとする試薬を含有することができる。揮発性溶媒が蒸発すると、ポリマーが癒合して、殻壁を形成する。一部の事例において、ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)およびポリ(テトラヒドロフラン)等のポリマーが用いられて、殻壁を形成する。
【0041】
マイクロカプセルは、フローフォーカシング方法により調製することもでき、これは、マイクロキャピラリー装置を用いて、後に外部流体へと分散される中間流体に内包された単一の内部液滴を含有する二重エマルションを生成するプロセスである。内部液滴は、封入しようとする試薬を含有することができる。中間流体は、架橋反応により形成され得る殻壁となる。
【0042】
B.マイクロカプセル組成物
マイクロカプセルは、広範な化学的特徴を有する種々の材料を含むことができる。一般に、マイクロカプセルは、所望の形状およびサイズであり、マイクロカプセル中で貯蔵しようとする試薬と適合性のマイクロカプセルを形成する能力を有する材料を含む。
【0043】
マイクロカプセルは、これらに限定されないが、ポリマー、感熱性ポリマー、感光性ポリマー、磁気ポリマー、pH感受性ポリマー、塩感受性ポリマー、化学的感受性ポリマー、多価電解質、多糖、ペプチド、タンパク質および/またはプラスチック等の広範な異なるポリマーを含むことができる。ポリマーとしては、これらに限定されないが、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、ポリ(スチレンスルホン酸塩)(PSS)、ポリ(アリルアミン)(PAAm)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(ジアリルジメチル-塩化アンモニウム)(PDADMAC)、ポリ[ピロール](PPy)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVPON)、ポリ(ビニルピリジン)(PVP)、ポリ(メタクリル酸)(PMAA)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリ(テトラヒドロフラン)(PTHF)、ポリ[フタルアルデヒド](PTHF)、ポリ(ヘキシルビオローゲン)(PHV)、ポリ(L-リジン)(PLL)、ポリ(L-アルギニン)(PARG)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)等の材料が挙げられる。
【0044】
多くの場合、マイクロカプセルのための材料、特に、マイクロカプセルの殻は、与えた刺激によるマイクロカプセルの破壊を可能にすることができる。例えば、マイクロカプセルは、感熱性ポリマーから調製することができる、および/または斯かる感熱性ポリマーを含む1種もしくは複数の殻を含むことができる。感熱性ポリマーは、貯蔵または充填に用いた条件下で安定的となり得る。熱に曝露することにより、感熱性ポリマー構成成分は、脱重合を行い、殻の統合性に破壊を生じ、外部環境(例えば、マイクロウェルの内部)へとマイクロカプセル(および/または内部マイクロカプセル)の内部材料を放出することができる。例示的な感熱性ポリマーとしては、これらに限定されないが、NIPAAmまたはPNIPAMハイドロゲルが挙げられる。マイクロカプセルとしては、これらに限定されないが、1または複数の種類の油を含むこともできる。例示的な油として、炭化水素油、フッ素化油、フルオロカーボン油、シリコーン油、鉱物油、植物油および他のいずれかの適した油が挙げられる。
【0045】
マイクロカプセルは、乳化界面活性剤等の界面活性剤を含むこともできる。例示的な界面活性剤としては、これらに限定されないが、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、炭化水素界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、油を含む内部区画等のマイクロカプセルの1種または複数の構成成分の安定性を増加させることができる。
【0046】
その上、マイクロカプセルは、カプセルの外側の材料と混和性の内部材料を含むことができる。例えば、内部材料は、水性流体となることができ、マイクロウェル内の試料も水性流体に存在することができる。他の例において、マイクロカプセルは、水性流体と混和性の粉末またはナノ粒子を含むことができる。例えば、マイクロカプセルは、内部区画に斯かる粉末またはナノ粒子を含むことができる。マイクロカプセルの破壊により、斯かる粉末またはナノ粒子が、外側環境(例えば、マイクロウェルの内部)へと放出され、水性流体(例えば、水性試料流体)と混合され得る。
【0047】
その上、マイクロカプセルは、周囲の環境(例えば、マイクロウェルの内部、試料流体)と非混和性の材料を含むことができる。斯かる事例において、内部エマルションが周囲の環境へと放出されると、内部および外部構成成分の間の相分離は、周囲の流体と内部構成成分との混合等の混合を促進することができる。一部の事例において、マイクロカプセルのトリガーが引かれてその内容物が放出されると、内部および外側構成成分の混合を促進する圧力または力も放出される。
【0048】
マイクロカプセルは、カプセルの内部にポリマーを含むこともできる。一部の事例において、このポリマーは、試薬または試薬の組み合わせを捕捉することができる多孔性ポリマービーズであってもよい。他の事例において、このポリマーは、以前に膨潤してゲルを作製したビーズであってもよい。カプセルの内部エマルションとして用いることのできるポリマーに基づくゲルの例としては、これらに限定されないが、オリゴヌクレオチドバーコードと共に膨張したアルギン酸ナトリウムゲルまたはポリアクリルアミドゲルその他が挙げられる。
【0049】
一部の事例において、マイクロカプセルは、本明細書に記載されているポリマーに基づくゲルのいずれかを含むゲルビーズであってもよい。ゲルビーズマイクロカプセルは、例えば、1種または複数のポリマー前駆体を液滴中に封入することにより作製することができる。ポリマー前駆体を促進物質[例えば、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)]へと曝露することにより、ゲルビーズを作製することができる。
【0050】
オリゴヌクレオチドバーコード等の分析物および/または試薬は、例えば、ゲルビーズの内部表面(例えば、オリゴヌクレオチドバーコードの拡散によりアクセスできる内部および/またはオリゴヌクレオチドバーコードの作製に用いられる材料)に、および/またはゲルビーズもしくは本明細書に記載されている他のいずれかのマイクロカプセルの外表面にカップリング/固定化することができる。カップリング/固定化は、いずれかの形態の化学結合(例えば、共有結合、イオン結合)または物理現象(例えば、ファンデルワールス力、双極子-双極子相互作用等)を介して行うことができる。一部の事例において、ゲルビーズまたは本明細書に記載されている他のいずれかのマイクロカプセルへの試薬のカップリング/固定化は、例えば、不安定部分を介する(例えば、本明細書に記載されている化学的クロスリンカーを含む化学的クロスリンカーを介する)等、可逆的となり得る。刺激を与えることにより、不安定部分を切断し、固定化された試薬を遊離させることができる。一部の事例において、不安定部分は、ジスルフィド結合である。例えば、オリゴヌクレオチドバーコードが、ジスルフィド結合を介してゲルビーズに固定化されている場合、還元剤へとジスルフィド結合を曝露することにより、ジスルフィド結合を切断し、ビーズからオリゴヌクレオチドバーコードを遊離させることができる。不安定部分は、ゲルビーズもしくはマイクロカプセルの一部として、試薬もしくは分析物をゲルビーズもしくはマイクロカプセルに連結する化学的リンカーの一部として、および/または試薬もしくは分析物の一部として含まれ得る。
【0051】
ゲルビーズまたは本明細書に記載されている他のいずれかの種類のマイクロカプセルは、様々な数の試薬を含有することができる。マイクロカプセル当たりの試薬の密度は、利用される特定のマイクロカプセルおよび特定の試薬に応じて変動し得る。例えば、マイクロカプセルまたはゲルビーズは、マイクロカプセルまたはゲルビーズ当たり少なくとも約1;10;100;1,000;10,000;100,000;1,000,000;5,000,000;10,000,000;50,000,000;100,000,000;500,000,000;または1,000,000,000個のオリゴヌクレオチドバーコードを含むことができる。ゲルビーズは、同一オリゴヌクレオチドバーコードを含んでいてもよく、異なるオリゴヌクレオチドバーコードを含んでいてもよい。
【0052】
他の例において、マイクロカプセルは、カプセルの外殻壁に正味の中性、負または正の電荷を生じる1種または複数の材料を含むことができる。一部の事例において、カプセルの電荷は、粒子の凝集もしくはクラスター形成または装置の部分への粘着性もしくは反発の防止または促進に役立つことができる。
【0053】
加えて、マイクロカプセルは、カプセルの外殻壁を親水性または疎水性にする1種または複数の材料を含むことができる。カプセル殻壁に用いることのできる親水性材料は、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)であってもよい。カプセル殻壁に用いることのできる疎水性材料は、ポリスチレンであってもよい。ある特定の事例において、親水性殻壁は、水性流体を含むウェルへのカプセルのウィッキングに役立つことができる。
【0054】
C.マイクロカプセルのサイズおよび形状
マイクロカプセルは、多数のサイズまたは形状のいずれであってもよい。一部の事例において、マイクロカプセルの形状は、球体、楕円体、円柱状、六角形または他のいずれかの対称的もしくは非対称的形状であってもよい。マイクロカプセルのいずれかの断面も、いかなる適切な形状のものであってもよく、その例としては、これらに限定されないが、円形、長円形、正方形、長方形、六角形または他の対称的もしくは非対称的形状が挙げられる。一部の事例において、マイクロカプセルは、装置の開口部(例えば、マイクロウェルの表面)を補完する特異的な形状のものであってよい。例えば、マイクロカプセルが球体であれば、装置のマイクロウェルの開口部も円形であってもよい。
【0055】
マイクロカプセルは、均一なサイズ(例えば、マイクロカプセルは全て同じサイズである)のものであってもよく、不均一なサイズ(例えば、マイクロカプセルの一部は異なるサイズのものである)のものであってもよい。マイクロカプセルの寸法(例えば、直径、断面、側面等)は、少なくとも約0.001μm、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μmまたは1nmであってもよい。一部の事例において、マイクロカプセルは、最大で約0.001μm、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1μm、5μm、10μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μmまたは1nmのマイクロウェルを含む。
【0056】
一部の事例において、マイクロカプセルは、マイクロカプセルアレイの個々の区分(例えば、マイクロウェル、液滴)に限定的な数のマイクロカプセルを置くことができるような、サイズおよび/または形状のものである。マイクロカプセルは、正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個またはそれ以下のカプセルが、個々のマイクロウェル内に適合するような;一部の事例においては、平均して1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のカプセルが、個々のマイクロウェル内に適合するような、特定のサイズおよび/または形状を有することができる。さらにまた別の事例において、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、100、500または1000個のカプセルが、個々のマイクロウェル内に適合する。
【0057】
D.試薬および試薬充填
本明細書に提示されている装置は、遊離の試薬および/またはマイクロカプセルに封入された試薬を含むことができる。試薬は、分析物の試料調製反応に適した種々の分子、化学物質、粒子および要素であってもよい。例えば、標的のDNA配列決定のための試料調製反応において用いられるマイクロカプセルは、次の試薬:酵素、制限酵素[例えば、多重カッター(multiple cutter)]、リガーゼ、ポリメラーゼ(例えば、dUTPおよび/またはウラシルを認識するおよび認識しないポリメラーゼ)、フルオロフォア、オリゴヌクレオチドバーコード、バッファー、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)[例えば、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)]、デオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)その他。別の例において、単一細胞解析のための試料調製反応において用いられるマイクロカプセルは、次の試薬のうち1種または複数等の試薬を含むことができる:溶解バッファー、洗剤、フルオロフォア、オリゴヌクレオチドバーコード、リガーゼ、プロテアーゼ、熱活性化可能プロテアーゼ、プロテアーゼまたはヌクレアーゼ阻害剤、バッファー、酵素、抗体、ナノ粒子その他のうち1種または複数を含むことができる。
【0058】
例示的な試薬としては、これらに限定されないが、バッファー、酸性溶液、塩基性溶液、温度感受性酵素、pH感受性酵素、光感受性酵素、金属、金属イオン、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、マンガン、水性バッファー、中性緩衝液(mild buffer)、イオン性バッファー、阻害剤、酵素、タンパク質、核酸、抗体、糖類、脂質、油、塩、イオン、洗剤、イオン性洗剤、非イオン性洗剤、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、dNTP、ddNTP、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸、環状DNA(cDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、プラスミドDNA、コスミドDNA、染色体DNA、ゲノムDNA(gDNA)、ウイルスDNA、細菌DNA、mtDNA(ミトコンドリアDNA)、伝令RNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、転移RNA(tRNA)、nRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、低分子カハール体特異的RNA(scaRNA)、マイクロRNA、二本鎖RNA(dsRNA)、リボザイム、リボスイッチおよびウイルスRNA、ポリメラーゼ(例えば、dUTPおよび/またはウラシルを認識するおよび認識しないポリメラーゼ)、リガーゼ、制限酵素、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、キレート剤、還元剤[例えば、ジチオスレイトール(DTT)、2-トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)]、酸化剤、フルオロフォア、プローブ、発色団、色素、有機物、乳化剤、界面活性剤、安定剤、ポリマー、水、小分子、医薬品、放射性分子、保存料、抗生物質、アプタマーならびに医薬化合物が挙げられる。
【0059】
一部の事例において、マイクロカプセルは、同様の属性を有する試薬のセット(例えば、酵素のセット、鉱物のセット、オリゴヌクレオチドのセット、異なるバーコードの混合物、同一バーコードの混合物)を含む。他の事例において、マイクロカプセルは、試薬の不均一な混合物を含む。一部の事例において、試薬の不均一な混合物は、反応を行うのに必要なあらゆる構成成分を含む。一部の事例において、斯かる混合物は、反応を行うのに必要な1、2、3、4、5種以上の構成成分を除き、反応を行うのに必要なあらゆる構成成分を含む。一部の事例において、斯かる追加の構成成分は、異なるマイクロカプセル内または装置の区分(例えば、マイクロウェル)中の溶液内に含有される。
【0060】
試薬は、装置中に予め充填されていてもよく(例えば、分析物の導入の前に)、後で装置中に充填してもよい。試薬は、装置中に直接的に充填してもよく、または一部の事例においては、試薬は、装置に充填されるマイクロカプセル中に封入してもよい。一部の事例において、試薬を含むマイクロカプセルのみが導入される。他の事例において、遊離の試薬およびマイクロカプセルに封入された試薬の両方が、経時的にまたは同時発生的に装置中に充填される。一部の事例において、試薬は、特定の工程の前にまたは後に装置へと導入される。例えば、溶解バッファー試薬は、細胞試料を装置内の複数の区分(例えば、マイクロウェル、液滴)に区分化した後に、装置に導入することができる。一部の事例において、試薬および/または試薬を含むマイクロカプセルは、異なる反応または操作が異なる工程において行われるように、経時的に導入される。試薬(またはマイクロカプセル)は、反応または操作工程に散在する工程で充填することもできる。例えば、分子(例えば、核酸)を断片化するための試薬を含むマイクロカプセルを装置に充填した後に断片化工程を行い、続いてバーコード(または他の固有の識別子、例えば、抗体)をライゲーションするための試薬を含むマイクロカプセルを充填し、その後、断片化された分子にバーコードをライゲーションすることができる。試薬を充填する追加の方法は、本明細書の他の章にさらに記載されている。
【0061】
E.分子「バーコード」
試料調製の後または最中に、個々の分子または分析物を同定および追跡する選択肢を保持することが望ましくなり得る。一部の事例において、本技術分野において「分子バーコード」として知られることもある、1種または複数の固有の分子識別子は、試料調製試薬として用いられる。このような分子は、オリゴヌクレオチドバーコード、抗体もしくは抗体断片、フルオロフォア、ナノ粒子および他の要素またはこれらの組み合わせ等の種々の異なる形態を含むことができる。特異的な適用に応じて、分子バーコードは、標的分析物に可逆的にまたは不可逆的に結合して、試料調製後に装置から回収した後に、個々の分析物の同定および/または定量化を可能にすることができる。
【0062】
本開示の装置は、a)特異的分析物の存在および量の正確な測定と、b)解析のために複数の分析物がプールされるマルチプレックス反応とを必要とする、核酸配列決定、タンパク質検出、単一分子解析および他の方法に適用することができる。本開示の装置は、標的分析物を物理的に区分化するために、マイクロウェルアレイのマイクロウェルまたは他の種類の区分(例えば、液滴)を利用することができる。この物理的区分化は、個々の分析物が、1種または複数の分子バーコードを取得することを可能にする。試料調製後に、個々の分析物は、マルチプレックス解析のためにプールしてもよく、または組み合わせて装置から抽出してもよい。大部分の適用のために、マルチプレックス解析は、核酸配列決定の場合のように、解析の費用を実質的に減少させると共に、プロセスのスループットを増加させる。分子バーコードは、複数の分析物をプールした後であっても、個々の分子の同定および定量化を可能にすることができる。例えば、核酸配列決定に関して、分子バーコードは、複数の異なる核酸をプールした後であっても、個々の核酸の配列決定を可能にすることができる。
【0063】
オリゴヌクレオチドバーコードは、一部の事例において、核酸配列決定において特に有用となり得る。一般に、オリゴヌクレオチドバーコードは、オリゴヌクレオチドバーコードにその同定機能性を付与する固有の配列(例えば、バーコード配列)を含むことができる。固有の配列は、ランダムであっても非ランダムであってもよい。対象とする核酸へのバーコード配列の付着は、バーコード配列を対象とする核酸と関連付けることができる。次に、他の対象とする核酸(例えば、異なるバーコードを含む)が存在する場合であっても、バーコードを用いて、配列決定において対象とする核酸を同定することができる。配列決定の前に対象とする核酸が断片化される場合、配列決定において、付着したバーコードを用いて、対象とする核酸に属するものとして断片を同定することができる。
【0064】
オリゴヌクレオチドバーコードは、固有のバーコード配列のみからなる場合もあり、またはより長い配列長のオリゴヌクレオチドの一部として含まれる場合もある。斯かるオリゴヌクレオチドは、特定の配列決定化学および/または方法に必要とされるアダプターであってもよい。例えば、斯かるアダプターは、オリゴヌクレオチドバーコードに加えて、固体表面(例えば、シーケンサー・フローセルチャネルにおける固体表面)へのアダプターの固定化(例えば、ハイブリダイゼーションによる)に必要とされる固定化配列領域;配列決定プライマーの結合に必要とされる配列領域;および/または例えば、ランダム増幅スキームにおいて有用となり得るランダム配列(例えば、ランダムN塩基長)を含むことができる。アダプターは、例えば、増幅、ライゲーションまたは本明細書に記載されている他のいずれかの方法により、配列決定しようとする核酸に付着させることができる。
【0065】
さらに、オリゴヌクレオチドバーコードおよび/またはオリゴヌクレオチドバーコードを含むより大型のオリゴヌクレオチドは、天然核酸塩基を含むことができる、および/または非天然塩基を含むことができる。例えば、オリゴヌクレオチドバーコードまたはオリゴヌクレオチドバーコードを含むより大型のオリゴヌクレオチドがDNAである場合、オリゴヌクレオチドは、天然DNA塩基アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンを含むことができる、および/またはウラシル等の非天然塩基を含むことができる。
【0066】
F.マイクロウェル充填のためのマイクロカプセル調製
調製後に、試薬を充填したマイクロカプセルを、種々の方法を用いて装置中に充填することができる。マイクロカプセルは、一部の事例において、「乾燥カプセル」として充填することができる。調製後に、カプセルは、これらに限定されないが、分画遠心分離、液体相の蒸発、クロマトグラフィー、濾過その他等の様々な技法を用いて液体相から分離することができる。「乾燥カプセル」を粉末または粒子状物質として収集し、次に、マイクロウェルアレイのマイクロウェル中に置くことができる。空のウェルおよびマイクロウェルアレイにわたるマイクロカプセルの不十分な分布等の「湿潤カプセル」の充填が充填を無効にする事例において、「乾燥カプセル」の充填が、好ましい方法となり得る。
【0067】
マイクロカプセルが液体相に存在し、これにより「湿潤カプセル」として充填される場合、試薬を充填したマイクロカプセルを装置に充填することもできる。一部の事例において、油を除去または蒸発させ、ウェル中に乾燥カプセルのみを残すことができるように、マイクロカプセルを揮発性の油に懸濁することができる。マイクロカプセルクラスター形成、凝集およびマイクロウェルアレイにわたるマイクロカプセルの不十分な分布等の乾燥カプセルの充填が充填を無効にする一部の事例において、「湿潤カプセル」の充填が、好ましい方法となり得る。試薬およびマイクロカプセルを充填する追加の方法は、本開示の他の章に記載されている。
【0068】
マイクロカプセルは、特定の密度を有することもできる。一部の事例において、マイクロカプセルは、水性流体(例えば、水)よりも密度が低い。一部の事例において、マイクロカプセルは、水性流体(例えば、水)よりも密度が高い。一部の事例において、マイクロカプセルは、非水性流体(例えば、油)よりも密度が低い。一部の事例において、マイクロカプセルは、非水性流体(例えば、油)よりも密度が高い。マイクロカプセルは、少なくとも約0.05g/cm
3、0.1cm
3、0.2g/cm
3、0.3g/cm
3、0.4g/cm
3、0.5g/cm
3、0.6g/cm
3、0.7g/cm
3、0.8g/cm
3、0.81g/cm
3、0.82g/cm
3、0.83g/cm
3、0.84g/cm
3、0.85g/cm
3、0.86g/cm
3、0.87g/cm
3、0.88g/cm
3、0.89g/cm
3、0.90g/cm
3、0.91g/cm
3、0.92g/cm
3、0.93g/cm
3、0.94g/cm
3、0.95g/cm
3、0.96g/cm
3、0.97g/cm
3、0.98g/cm
3、0.99g/cm
3、1.00g/cm
3、1.05g/cm
3、1.1g/cm
3、1.2g/cm
3、1.3g/cm
3、1.4g/cm
3、1.5g/cm
3、1.6g/cm
3、1.7g/cm
3、1.8g/cm
3、1.9g/cm
3、2.0g/cm
3、2.1g/cm
3、2.2g/cm
3、2.3g/cm
3、2.4g/cm
3または2.5g/cm
3の密度を含むことができる。他の事例において、マイクロカプセル密度は、最大で約0.7g/cm
3、0.8g/cm
3、0.81g/cm
3、0.82g/cm
3、0.83g/cm
3、0.84g/cm
3、0.85g/cm
3、0.86g/cm
3、0.87g/cm
3、0.88g/cm
3、0.89g/cm
3、0.90g/cm
3、0.91g/cm
3、0.92g/cm
3、0.93g/cm
3、0.94g/cm
3、0.95g/cm
3、0.96g/cm
3、0.97g/cm
3、0.98g/cm
3、0.99g/cm
3、1.00g/cm
3、1.05g/cm
3、1.1g/cm
3、1.2g/cm
3、1.3g/cm
3、1.4g/cm
3、1.5g/cm
3、1.6g/cm
3、1.7g/cm
3、1.8g/cm
3、1.9g/cm
3、2.0g/cm
3、2.1g/cm
3、2.2g
/cm
3、2.3g/cm
3、2.4g/cm
3または2.5g/cm
3であってもよい。斯かる密度は、いずれか特定の流体(例えば、水性物、水、油等)中におけるマイクロカプセルの密度を反映することができる。
【0069】
III.マイクロウェルアレイ
A.構造/特色
本開示の装置は、複数の孔、空洞を含有する固体プレートを含むマイクロウェルアレイであってもよく、またはマイクロカプセルおよび/もしくは分析物が置かれたマイクロウェルであってもよい。一般に、流体試料(または分析物)は、装置中に導入され(例えば、入口を通して)、次に試料を複数のマイクロウェルへと分布させる流路を通って移動する。一部の事例において、追加の流体は、同様に装置中に導入される。試料が導入される際に、または一部の事例において、試料の導入後にマイクロカプセルがマイクロウェル中に導入される際に、マイクロウェルは、マイクロカプセルを含むことができる。
【0070】
図2Aは、原型マイクロウェルアレイを描写する。側面図は、
図2Bに描写されている。マイクロウェルアレイは、化学研究室において通常用いられるいずれかの適した材料で形成され得るプレート220を含むことができ、材料の例として、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、PMMA、サファイア、シリコン、ゲルマニウム、環状オレフィンコポリマーおよび環状ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸塩、ポリカーボネート、プラスチック、黄玉ならびに本技術分野において公知の他の適した基板が挙げられる。プレート220は最初、規則的なパターンのマイクロウェル270を含む平坦な固体プレートとなり得る。マイクロウェルは、穿孔または化学的溶解または他のいずれかの適した機械加工方法により形成することができる。しかし、所望の孔パターンを有するプレートは、好ましくは、例えば、射出成形、エンボス加工または環状オレフィンコポリマー等の適したポリマーの使用により成形される。
【0071】
マイクロウェルアレイは、入口(200および240)および/または出口(210および260)を含むことができる。一部の事例において、マイクロウェルアレイは、複数の入口および/または出口を含む。試料(または分析物)またはマイクロカプセルは、入口を介して装置に導入することができる。分析物、試薬および/またはマイクロカプセルを含有する溶液は、ピペットにより入口ポート200および240(または入口ポートに取り付けられた導管)に手作業で適用することができる。一部の事例において、液体取扱装置を用いて、分析物、試薬および/またはマイクロカプセルを装置に導入する。例示的な液体取扱装置は、ピペッティングロボット、毛管作用または流体への浸漬に頼ることができる。一部の事例において、入口ポートは、マイクロカプセルまたは分析物を含むリザーバに接続される。入口ポートは、装置におけるマイクロウェルへの分析物、試料またはマイクロカプセルの分布を可能にする流路250に取り付けることができる。一部の事例において、入口ポートを用いて、担体流体等のマイクロカプセルまたは分析物を含有しない流体(例えば、油、水性物)を装置に導入することができる。担体流体は、分析物および/またはマイクロカプセルの導入の前、最中または後に入口ポートを介して導入することができる。装置が複数の入口を有する場合、複数の入口を介して同じ試料を導入してもよく、または入口ごとに異なる試料を運んでもよい。一部の事例において、ある入口は、試料または分析物をマイクロウェルに運ぶことができ、一方、異なる入口は、遊離の試薬および/またはマイクロカプセルに封入された試薬を装置に運ぶ。本装置は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の入口および/または出口を有することができる。
【0072】
一部の事例において、マイクロカプセルおよび/または分析物を含有する溶液は、出口ポート210および260に取り付けた真空マニホールドを介して装置中を引くことができる。斯かるマニホールドは、装置に陰圧を加えることができる。他の事例において、陽圧を用いて、装置を通して試料、分析物および/またはマイクロカプセルを移動させる。本開示に係る230の表面の面積、長さおよび幅は、行うべきアッセイの要件に従って変動され得る。検討事項として、例えば、取り扱いの容易さ、表面を形成する材料の限定、検出または処理システムの要件、設置(deposition)システム(例えば、マイクロ流体システム)の要件その他を挙げることができる。厚さは、少なくとも約0.001mm、0.005mm、0.01mm、0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、2.0mm、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mm、9.0mm、10.0mm、11mm、12mm、13mm、14mmまたは15mmの厚さを含むことができる。他の事例において、マイクロカプセルの厚さは、最大で0.001mm、0.005mm、0.01mm、0.05mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、2.0mm、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mm、9.0mm、10.0mm、11mm、12mm、13mm、14mmまたは15mmであってもよい。
【0073】
マイクロウェル270は、行われるアッセイに適したいかなる形状およびサイズであってもよい。マイクロウェルの断面は、円形、長方形、正方形、六角形または他の対称的もしくは非対称的形状の断面寸法を有することができる。一部の事例において、マイクロウェルの形状は、円柱状、立方体、円錐体、円錐台形(frustoconical)、六角形または他の対称的もしくは非対称的形状であってもよい。マイクロウェル270の直径は、望まれるウェルのサイズおよびプレート自体の利用できる表面積によって決定することができる。例示的なマイクロウェルは、少なくとも0.01μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、1μm、10μm、25μm、50μm、75μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1.0mmの直径を含む。他の事例において、マイクロウェル直径は、最大で0.01μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、1μm、10μm、25μm、50μm、75μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μmまたは1.0mmを含むことができる。
【0074】
各ウェルの容量(または容積)は、ウェルの高さ(プレートの厚さ)および各ウェルの有効直径の尺度であり得る。個々のウェルの容量は、広範な容積から選択することができる。一部の事例において、本装置は、少なくとも0.001fL、0.01fL、0.1fL、0.5fL、1fL、5fL、10fL、50fL、100fL、200fL、300fL、400fL、500fL、600fL、700fL、800fL、900fL、1pL、5pL、10pL、50pL、100pL、200pL、300pL、400pL、500pL、600pL、700pL、800pL、900pL、1nL、5nL、10nL、50nL、100nL、200nL、300nL、400nL、500nL、1uL、50uLまたは100uLの容量を有するウェル(またはマイクロウェル)を含むことができる。他の事例において、マイクロカプセルは、0.001fL、0.01fL、0.1fL、0.5fL、5fL、10fL、50fL、100fL、200fL、300fL、400fL、500fL、600fL、700fL、800fL、900fL、1pL、5pL、10pL、50pL、100pL、200pL、300pL、400pL、500pL、600pL、700pL、800pL、900pL、1nL、5nL、10nL、50nL、100nL、200nL、300nL、400nL、500nL、1uL、50uLまたは100uL未満のマイクロウェルを含む。
【0075】
アレイ中の異なるマイクロウェル中の流体の容積は様々であってもよい。より具体的には、異なるマイクロウェルの容積は、マイクロウェルのセット全体で少なくとも(または最大で)プラスマイナス1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%または1000%異なっていてもよい。例えば、あるマイクロウェルは、第2のマイクロウェル内の流体容積の最大で80%の流体容積を含むことができる。
【0076】
個々のマイクロウェルの寸法およびプレートのサイズに基づき、マイクロウェルアレイは、ある範囲のウェル密度を含むことができる。一部の例において、複数のマイクロウェルは、少なくとも約2,500ウェル/cm
2、少なくとも約1,000ウェル/cm
2の密度を有することができる。一部の事例において、複数のウェルは、少なくとも10ウェル/cm
2の密度を有することができる。他の事例において、ウェル密度は、少なくとも10ウェル/cm
2、50ウェル/cm
2、100ウェル/cm
2、500ウェル/cm
2、1000ウェル/cm
2、5000ウェル/cm
2、10000ウェル/cm
2、50000ウェル/cm
2または100000ウェル/cm
2を含むことができる。他の事例において、ウェル密度は、100000ウェル/cm
2、10000ウェル/cm
2、5000ウェル/cm
2、1000ウェル/cm
2、500ウェル/cm
2または100ウェル/cm
2未満であってもよい。
【0077】
一部の事例において、マイクロウェルの内部表面は、好ましくは水性試料に適応する親水性材料を含む。一部の事例において、マイクロウェル間の領域は、本明細書に記載されている疎水性密封流体を優先的に引きつけることができる疎水性材料で構成される。
【0078】
複数のマイクロウェルアレイ、例えば、
図2Bは、単一の装置内に配置することができる。
図3、300。例えば、別々のマイクロウェルアレイスライドは、プレートホルダー上に平行して整列することができる。一部の事例において、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、25、50または100個のマイクロウェルアレイが、平行して整列される。他の事例において、最大で100、50、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の装置が、平行して整列される。共通の装置内のマイクロウェルアレイは、同時にまたは経時的に操作することができる。例えば、整列された装置は、同時にまたは経時的に試料またはカプセルを充填することができる。
【0079】
B.マイクロウェルアレイ流体
マイクロウェルアレイは、アルコール等の水性、非水性、油および有機溶媒を含む多数の異なる流体のいずれかを含むことができる。一部の事例において、流体を用いて、構成成分、例えば、試薬、マイクロカプセルまたは分析物を、マイクロウェル、アウトプットポート等の標的位置へと運搬する。他の事例において、流体を用いてシステムを流す。さらにまた他の事例において、流体を用いて、マイクロウェルを密封することができる。
【0080】
装置において用いられる分析物(例えば、細胞、分子)または試薬と生理的に適合性のいかなる流体またはバッファーを用いてもよい。一部の事例において、流体は、水性(緩衝されたまたは緩衝されていない)である。例えば、緩衝水性溶液に懸濁した細胞の集団を含む試料をマイクロウェルアレイに導入し、装置中を流動させ、マイクロウェルに分布させることができる。他の事例において、装置を通過する流体は、非水性(例えば、油)である。例示的な非水性流体としては、これらに限定されないが、油、非極性溶媒、炭化水素油、デカン(例えば、テトラデカンまたはヘキサデカン)、フルオロカーボン油、フッ素化油、シリコーン油、鉱物油または他の油が挙げられる。
【0081】
多くの場合、マイクロカプセルは、マイクロカプセルの殻の構成成分と適合性の流体に懸濁される。これらに限定されないが水、アルコール、炭化水素油またはフルオロカーボン油等の流体は、マイクロカプセルを懸濁し、マイクロアレイ装置中を流動させるのに特に有用な流体である。
【0082】
C.さらなる区分化および密封
分析物、遊離の試薬および/またはマイクロカプセルが装置に充填され、マイクロウェルに分布された後に、密封流体を用いて、マイクロウェル内でこれらをさらに区分化または単離することができる。密封流体を用いて、個々のウェルを密封することもできる。分析物、試薬および/またはマイクロカプセルの導入に用いた同じ入口ポートを通して密封流体を導入することができる。しかし、一部の事例において、密封流体は、別々の入口ポートにより、または複数の別々の入口ポートを通して装置に導入される。
【0083】
多くの場合、密封流体は、非水性流体(例えば、油)である。密封流体は、マイクロウェルアレイ装置中を流動する際に、個々のマイクロウェルから過剰な水性溶液(例えば、分析物、遊離の試薬および/またはマイクロカプセルを含む溶液)を排除することにより、隣接するマイクロウェル間の水性物質の広がりを取り除く可能性がある。本明細書に記載されている通り、水性流体(例えば、試料流体、マイクロカプセル流体)を毛管現象で個々のウェルに吸い込ませることを可能にする親水性材料がウェル自体に含まれていてもよい。一部の事例において、マイクロウェル内部への水性流体の配置を再度促すために、ウェルの外側の領域は、疎水性材料を含む。
【0084】
密封流体は、装置中に残してもよく、または除去してもよい。密封流体は、例えば、出口ポートを通して流動させることにより除去することができる。他の事例において、密封油は、加熱により除去することができる揮発性の油を含むことができる。密封流体が除去されると、分析物、遊離の試薬および/またはマイクロカプセルは、マイクロウェルにおいて互いに物理的に区分化され得る。
【0085】
その密度が、マイクロカプセルの密度に等しく、これよりも大きく、またはこれ未満になるように、流体を選択することができる。例えば、マイクロカプセルは、密封油および/または試料および試薬の水性流体よりも密度が高くなり、これにより、密封油が装置中を流動する際に、マイクロウェル中にマイクロカプセルを残すことができる。別の例において、カプセルは、本明細書に記載されている通り、試料の水性流体またはマイクロカプセルが懸濁された流体よりも密度が低くなり、これにより、装置における複数のマイクロウェルにわたるカプセルの移動および分布を容易にすることができる。
【0086】
常磁性材料を含むマイクロカプセルの場合、磁場を用いて、マイクロウェル中にカプセルを充填または配向させることができる。磁場を用いて、ウェルを試料、試薬および/または密封流体で満たしつつ、ウェル内に斯かるマイクロカプセルを保持することもできる。磁場を用いて、特にカプセルの破裂後に、ウェルからカプセル殻を除去することもできる。
【0087】
一部の事例において、操作または反応がマイクロウェル中で行われる場合、密封流体は、マイクロウェル中に残ることができる。密封流体の存在は、個々のマイクロウェルをさらに区分化、単離または密封するよう作用し得る。他の事例において、密封流体は、マイクロカプセルのための担体として作用し得る。例えば、マイクロカプセルを含む密封流体を装置に導入して、個々のマイクロウェルへのマイクロカプセルの分布を容易にすることができる。斯かる適用のため、マイクロウェルへのマイクロカプセルのより均質な分布を促すために、密封流体は、マイクロカプセルよりも密度が高くなることができる。刺激を与えることにより、密封流体内のマイクロカプセルは、マイクロウェルへと試薬を放出することができる。一部の事例において、カプセルが、マイクロウェル内または密封流体内に存在する場合、密封流体は、密封流体からウェルへと移動し(例えば、浸出または他の機序により)、カプセル破裂のトリガーを引くことができる化学物質または他の薬剤を含むことができる。
【0088】
密封流体に関与する方法以外の方法を用いて、分析物、遊離の試薬および/またはマイクロカプセルの充填後にマイクロウェルを密封することもできる。例えば、マイクロウェルは、積層板、テープ、プラスチックカバー、油、ワックスまたは封入された反応チャンバーを作製するための他の適した材料により密封することができる。本明細書に記載されている密封剤は、蒸発または反応もしくは操作に関する他の意図されない結果からマイクロウェルの内容物を保護することができる。装置に熱が加えられる場合、例えば、熱が加えられてマイクロカプセル放出を刺激する場合、蒸発の防止が、特に必要となり得る。
【0089】
一部の事例において、ラミネートシールは、個々のウェルからの内容物の回収を可能にすることもできる。この場合、所定の時点で対象の単一ウェルを密封しないことにより(例えば、ラミネートシールの除去により)、MALDI質量分析等による分析物のさらなる解析が可能になる。斯かる適用は、ハイスループット薬物スクリーニングを含む多数の設定において有用となり得る。
【0090】
IV.充填工程
本明細書に記載されている通り、分析物、遊離の試薬および/またはマイクロカプセルは、いずれかの適切な様式または順序で本装置に充填することができる。充填は、ランダムまたは非ランダムであってもよい。一部の事例において、正確な数の分析物および/またはマイクロカプセルが、個々のマイクロウェルそれぞれに充填される。一部の事例において、正確な数の分析物および/またはマイクロカプセルが、プレートにおけるマイクロウェルの特定のサブセットに充填される。さらにまた他の事例において、平均数の分析物および/またはマイクロカプセルが、個々のマイクロウェルそれぞれに充填される。さらに、本明細書に記載されている通り、一部の事例において、「乾燥」マイクロカプセルが、装置に充填されるが、他の事例において、「湿潤」マイクロカプセルが、装置に充填される。一部の事例において、「乾燥」および「湿潤」マイクロカプセル、および/または試薬の組み合わせは、同時にまたは経時的に装置に充填される。
【0091】
本明細書に言及されている通り、装置の充填は、いかなる順序で行われてもよく、複数のステージにおいて行われてよい。一部の事例において、マイクロカプセルは、分析物の充填の前に、装置に予め充填される。他の事例において、マイクロカプセルおよび分析物は、同時発生的に充填される。さらにまた他の事例において、分析物は、マイクロカプセルが充填される前に充填される。
【0092】
マイクロカプセルおよび/または分析物は、複数のステージにおいてまたは複数回充填することができる。例えば、マイクロカプセルは、分析物が装置に充填される前および後の両方に装置に充填することができる。予め充填された(例えば、分析物導入の前に充填された)マイクロカプセルは、分析物導入後に充填されたマイクロカプセルと同じ試薬を含むことができる。他の事例において、予め充填されたマイクロカプセルは、分析物導入後に充填されたマイクロカプセル内の試薬とは異なる試薬を含有する。一部の事例において、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20個の異なるセットのマイクロカプセルが、装置に充填される。一部の事例において、異なるセットのマイクロカプセルは、経時的に充填されるか、または異なるセットのマイクロカプセルは、同時に充填される場合もある。同様に、複数のセットの分析物を装置に充填することができる。一部の事例において、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20個の異なるセットの分析物が、装置に充填される。一部の事例において、異なるセットの分析物は、経時的に充填されるか、または異なるセットの分析物は、同時に充填される場合もある。
【0093】
本開示は、ウェル当たりに充填される特定の数のマイクロカプセルおよび/または分析物を含む装置を提供する。一部の事例において、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75または100個のマイクロカプセルおよび/または分析物が、個々のマイクロウェルそれぞれに充填される。一部の事例において、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75または100個のマイクロカプセルおよび/または分析物が、個々のマイクロウェルそれぞれに充填される。一部の事例において、平均して最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75または100個のマイクロカプセルおよび/または分析物が、個々のマイクロウェルそれぞれに充填される。他の事例において、平均して少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75または100個のマイクロカプセルおよび/または分析物が、個々のマイクロウェルそれぞれに充填される。一部の事例において、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75または100個のマイクロカプセルおよび/または分析物が、個々のマイクロウェルそれぞれに充填される。
【0094】
分析物および/またはマイクロカプセルは、所望の数の分析物を個々のマイクロウェル中に置くことができる含量で適用することができる。例えば、細胞等の分析物の末端希釈は、マイクロウェル1個当たり1個の細胞、またはマイクロウェル当たりいずれか所望の数の分析物の充填を達成することができる。一部の事例において、ポアソン分布を用いて、ウェル当たりの分析物またはマイクロカプセルの最終濃度を導くまたは予測することができる。
【0095】
マイクロカプセルは、特定のパターンでマイクロアレイ装置に充填することができる。例えば、装置のある特定のセクションは、特定の試薬(例えば、固有のバーコード、酵素、抗体、抗体サブクラス等)を含有するマイクロカプセルを含むことができ、一方、装置の他のセクションは、異なる試薬(例えば、異なるバーコード、異なる酵素、異なる抗体、異なる抗体サブクラス等)を含有するマイクロカプセルを含むことができる。一部の事例において、アレイのある1セクションにおけるマイクロカプセルは、対照試薬を含有することができる。例えば、これらは、対照分析物および反応に必要な材料を含む陽性対照を含有することができる。または、一部の事例において、マイクロカプセルは、不活性化酵素または断片化に抵抗性の合成オリゴヌクレオチド配列等の陰性対照試薬を含有する。一部の事例において、陰性対照試薬は、試料調製反応の特異性等のための対照であってもよい。他の事例において、陰性対照マイクロカプセルが、ある特定の試薬(例えば、溶解バッファー、ポリメラーゼ等)を欠いてよいことを除き、陰性対照マイクロカプセルは、他のマイクロカプセルに存在する同じ試薬を含むことができる。
【0096】
分析物/試料は、特定のパターンでマイクロアレイ装置に充填することもできる。例えば、装置のある特定のセクションは、対照分析物または特定の供給源に由来する分析物等の特定の分析物を含むことができる。これは、公知のウェル位置へのバーコードの特異的充填と組み合わせて用いることができる。この特色は、配列データに対しアレイにおける特異的な位置のマッピングを可能にし、これにより標識反応に用いるべきバーコードの数を低下させることができる。
【0097】
区分が液滴である場合、分析物および試薬は、マイクロ流体装置の助けにより、液滴内で組み合わせることができる。例えば、ゲルビーズ(例えば、オリゴヌクレオチドバーコードを含む)、核酸分析物および他のいずれか所望の試薬を含む液滴を作製することができる。水性相におけるゲルビーズ、核酸分析物および試薬は、マイクロ流体装置の2個以上のチャネルの接合部において組み合わせることができる。マイクロ流体装置の2個以上のチャネルの第2の接合部において、その結果得られた混合物を含む液滴は、試薬、ゲルビーズおよび核酸分析物の水性混合物を油連続相と接触させることにより作製することができる。
【0098】
V.マイクロカプセル刺激
様々な異なる刺激を用いて、マイクロカプセルまたはその内部区画からの試薬の放出を引き起こすことができる。一部の事例において、マイクロカプセルは分解性である。一般に、トリガーは、マイクロカプセルを包む殻もしくは膜の破壊もしくは分解、マイクロカプセルの内部の破壊もしくは分解、および/またはマイクロカプセルに試薬を固定化するいずれかの化学結合の破壊もしくは分解を引き起こすことができる。例示的なトリガーとしては、これらに限定されないが、化学的トリガー、バルクの変化、生物学的トリガー、光トリガー、熱的トリガー、磁気トリガーおよびこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。例えば、Esser-Kahnら(2011)Macromolecules 44:5539〜5553;Wangら(2009)ChemPhysChem 10:2405〜2409を参照されたい。
【0099】
A.化学的刺激および体積変化
多数の化学的トリガーを用いて、マイクロカプセルの破壊または分解を引き起こすことができる。このような化学的変化の例としては、これらに限定されないが、殻壁へのpH媒介性の変化、架橋結合の化学的切断による殻壁の崩壊、引き起こされた殻壁の脱重合および殻壁のスイッチング反応が挙げられる。体積変化を用いて、マイクロカプセルの破壊を引き起こすこともできる。
【0100】
溶液のpHの変化、特に、pHの減少は、多数の異なる機序により破壊を引き起こすことができる。酸の添加は、種々の機序により殻壁の分解または解体を引き起こすことができる。プロトンの添加は、殻壁におけるポリマーの架橋を解体し、殻壁におけるイオンまたは水素結合を破壊し、殻壁にナノポアを作製して、外面を通して内部の内容物を漏出させることができる。一部の例において、マイクロカプセルは、ケタール等の酸分解性化学的クロスリンカーを含む。特に5より低いpHとなるpHの減少は、ケタールをケトンおよび2個のアルコールに転換するよう誘導し、マイクロカプセルの破壊を容易にすることができる。他の例において、マイクロカプセルは、pH感受性である1種または複数の多価電解質(例えば、PAA、PAAm、PSS等)を含むことができる。pHの減少は、斯かるマイクロカプセルのイオンまたは水素結合相互作用を破壊する場合もあり、またはそこにナノポアを作製する場合もある。一部の事例において、多価電解質を含むマイクロカプセルは、pHの変化により拡張および収縮する荷電したゲルに基づくコアを含む。
【0101】
マイクロカプセル内のクロスリンカー(例えば、ジスルフィド結合)の除去も、多数の機序により達成することができる。一部の例において、殻壁のポリマー構成成分に酸化、還元または他の化学変化のいずれかを誘導する様々な化学物質を、マイクロカプセルの溶液に添加することができる。一部の事例において、マイクロカプセル殻壁におけるジスルフィド結合が破壊されるように、ベータ-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール(DTT)または2-トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)等の還元剤が添加される。加えて、酵素を添加して、マイクロカプセル内のペプチド結合を切断し、これにより殻壁クロスリンカーの切断をもたらすことができる。
【0102】
脱重合を用いて、マイクロカプセルを破壊することもできる。化学的トリガーを加えて、保護頭部の除去を容易にすることができる。例えば、トリガーは、ポリマー内の炭酸エステルまたはカルバメートの頭部の除去を引き起こし、続いてこれが、カプセルの内側からの試薬の脱重合および放出を引き起こすことができる。
【0103】
殻壁のスイッチング反応は、殻壁の多孔度に対する何らかの構造変化に起因する可能性がある。殻壁の多孔度は、例えば、アゾ色素またはビオローゲン誘導体の添加により改変することができる。エネルギー(例えば、電気、光)の添加を用いて、多孔度の変化を刺激することができる。
【0104】
さらになお別の例において、化学的トリガーは、浸透圧トリガーを含むことができ、浸透圧トリガーによるマイクロカプセル溶液のイオンまたは溶質濃度の変化は、カプセルの膨張を誘導する。膨張は、カプセルが破裂してその内容物を放出するように、内圧の積み重ねを引き起こすことができる。
【0105】
様々な刺激によるマイクロカプセルへの体積または物理的変化も、カプセルが試薬を放出するよう設計することにおいて多くの利点を生じることも本技術分野において公知である。体積または物理的変化は、カプセル破裂が刺激により誘導される機械物理(mechano-physical)力の結果である巨視的スケールで生じる。これらのプロセスとしては、これらに限定されないが圧力誘導性破裂、殻壁融解または殻壁多孔度の変化が挙げられる。
【0106】
B.生物学的刺激
生物学的刺激を用いて、マイクロカプセルの破壊または分解を引き起こすこともできる。一般に、生物学的トリガーは、化学的トリガーに似ているが、その多くの例は、酵素、ペプチド、糖類、脂肪酸、核酸その他等の生体分子または通常生物系に存在する分子を用いる。例えば、マイクロカプセルは、特異的プロテアーゼによる切断に対し感受性のペプチド架橋を有するポリマーを含むことができる。より具体的には、一例として、GFLGKペプチド架橋を含むマイクロカプセルを含むことができる。プロテアーゼカテプシンB等の生物学的トリガーの添加により、殻壁のペプチド架橋が切断され、カプセルの内容物が放出される。他の事例において、プロテアーゼを熱活性化してもよい。別の例において、マイクロカプセルは、セルロースを含む殻壁を含む。加水分解酵素キトサンの添加は、セルロース結合の切断、殻壁の脱重合およびその内部の内容物の放出のための生物学的トリガーとして役立つ。
【0107】
C.熱的刺激
マイクロカプセルは、熱的刺激を与えることによりその内容物を放出するよう誘導することもできる。温度の変化は、マイクロカプセルに種々の変化をもたらすことができる。熱の変化は、殻壁が崩壊するように、マイクロカプセルの融解をもたらすことができる。他の事例において、熱は、カプセルが破裂または爆発するように、カプセルの内部構成成分の内圧を増加させることができる。さらにまた他の事例において、熱は、カプセルを収縮した脱水状態へと変換させることができる。熱は、マイクロカプセルの殻内の感熱性ポリマーに作用して、マイクロカプセルを破壊させることもできる。
【0108】
一例において、マイクロカプセルは、1種または複数の乳化試薬粒子を封入する温度感受性ハイドロゲル殻を含む。35℃超等の熱を加えることにより、外殻壁のハイドロゲル材料が収縮する。殻の突然の収縮は、カプセルを破裂させ、カプセル内側の試薬をマイクロウェル内の試料調製溶液へと噴出させる。
【0109】
一部の事例において、殻壁は、異なる感熱性を有するジブロックポリマーまたは2種のポリマーの混合物を含むことができる。一方のポリマーは、熱を加えた後に特に収縮する可能性があるが、他方のポリマーは、より熱安定的となり得る。斯かる殻壁に熱が加えられると、感熱性ポリマーは収縮するが他方は無傷のままとなり、ポアを形成できる。さらにまた他の事例において、殻壁は、磁性ナノ粒子を含むことができる。磁場への曝露は、熱を発生させて、マイクロカプセルの破裂をもたらすことができる。
【0110】
D.磁気刺激
マイクロカプセルの殻壁への磁性ナノ粒子の包接は、カプセル破裂を引き起こすことに加えて、アレイにおいて粒子をガイドすることができる。本開示の装置は、あらゆる目的のための磁性粒子を含むことができる。一例において、カプセルを含有する多価電解質へのFe3O4ナノ粒子の取り込みは、振動磁場刺激の存在下で破裂を引き起こす。
【0111】
E.電気および光刺激
マイクロカプセルは、電気刺激の結果として破壊または分解することができる。前の章に記載した磁性粒子と同様に、電気的感受性の粒子は、カプセルの破裂を引き起こすことに加えて、電場における整列化、導電率または酸化還元反応等の他の機能の両方を可能にすることができる。一例において、電気的感受性材料を含有するマイクロカプセルは、内部試薬の放出を制御できるように、電場において整列される。他の例において、電場は、殻壁それ自体の内の酸化還元反応を誘導することができ、これは、多孔度を増加させ得る。
【0112】
光刺激を用いて、マイクロカプセルを破壊することもできる。多数の光トリガーが可能であり、特異的な範囲の波長の光子を吸収することができるナノ粒子および発色団等の様々な分子を用いるシステムを含むことができる。例えば、金属酸化物コーティングは、カプセルトリガーとして用いることができる。SiO2/TiO2でコーティングされた多価電解質カプセルのUV照射は、カプセル壁の崩壊をもたらすことができる。さらになお別の例において、アゾベンゼン基等の光スイッチ可能な材料を殻壁に取り込むことができる。UVまたは可視光を当てることにより、上述等の化学物質は、光子の吸収により可逆的シス・トランス異性化を行う。本態様において、光スイッチの取り込みは、光トリガーの適用により崩壊し得るまたはより多孔性となり得る殻壁をもたらす。
【0113】
F.刺激の適用
本開示の装置は、斯かるトリガーまたは刺激をもたらすいずれかの器具または装置と組み合わせて用いることができる。例えば、刺激が熱である場合、本装置は、マイクロウェルの加熱を可能にし、カプセルの破裂を誘導することができる加熱または熱的制御プレートと組み合わせて用いることができる。これらに限定されないが、放射熱伝達、対流熱伝達または伝導熱伝達による加熱等の多数の熱伝達のいずれを熱刺激に用いてもよい。他の事例において、刺激が生物学的酵素である場合、各マイクロウェル内に置かれるように、酵素を装置中に注入することができる。別の一態様において、刺激が磁場または電場である場合、本装置は、磁気または電気プレートと組み合わせて用いることができる。
【0114】
化学的刺激を区分に加えて、化学的刺激をマイクロカプセルと接触させた後の様々な時点でその機能を発揮させることができる。化学的刺激がその効果を発揮するスピードは、例えば、マイクロカプセルと接触した化学的刺激の量/濃度および/または用いた特定の化学的刺激に応じて変動し得る。例えば、液滴は、分解性ゲルビーズ(例えば、ジスルフィド結合等の化学的クロスリンカーを含むゲルビーズ)を含むことができる。液滴形成により、化学的刺激(例えば、還元剤)は、ゲルビーズと共に液滴に含まれ得る。化学的刺激は、ゲルビーズと接触して直ちに、ゲルビーズとの接触の直後に(例えば、約0、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10分間)またはそれより後の時点でゲルビーズを分解することができる。一部の事例において、ゲルビーズの分解は、例えば、本明細書に記載されている熱サイクル工程等のさらに別の処理工程の前、最中または後に起こり得る。
【0115】
VI.試料調製、反応および回収
刺激を与え、カプセルを破裂させ、試薬を放出させた後に、装置内で試料調製反応を進行させることができる。試料反応において用いた試薬に応じて様々な期間、装置内で反応物をインキュベートすることができる。本装置は、試料調製反応に役立つ他の装置と組み合わせて用いることもできる。例えば、PCR増幅が望まれる場合、本装置は、PCRサーモサイクラーと組み合わせて用いることができる。一部の事例において、サーモサイクラーは、複数のウェルを含むことができる。区分が液滴である場合、液滴をサーモサイクラーのウェルに進入させることができる。一部の事例において、熱サイクルが開始される際に各ウェルにおいて複数の液滴が熱サイクル処理されるように、各ウェルは、複数の液滴を含むことができる。別の例において、反応が撹拌を必要とする場合、本装置は、振盪器具と組み合わせて用いることができる。
【0116】
試料調製反応の完了後に、分析物および試料反応の産物を回収することができる。一部の事例において、本装置は、個々のマイクロウェルの内容物を流すための液体または気体の適用を含む方法を利用することができる。一例において、液体は、マイクロウェルアレイ材料を優先的に湿らせる非混和性担体流体を含む。これは、ウェルから反応産物を流し出すことができるように、水と非混和性であってもよい。別の例において、液体は、ウェルから試料を流し出すために用いることのできる水性流体であってもよい。マイクロウェルの内容物を流した後に、マイクロウェルの内容物は種々の下流の解析および適用のためにプールされる。
【0117】
VII.適用
図4Aは、本開示の方法の多くの概略フローを提示し、
図4Bは、
図4Aの概略的注釈付きバージョンを提示する。試薬410を含有する1種または複数のマイクロカプセルは、マイクロウェルに予め充填され、続いて、この特定の図面においては核酸分析物420である分析物を添加することができる。次に、密封流体の適用等のいずれかの方法によってマイクロウェルを密封430することができる。入口および出口ポートは、例えば、蒸発を防止するために密封することもできる。これらの工程の後に、マイクロカプセル460を破壊し、マイクロウェルの内部への試薬450の放出を引き起こすために、刺激(例えば、熱、化学的、生物学的等)をマイクロウェルに加えることができる。その後、試薬が、細胞の溶解、タンパク質の消化、高分子量核酸の断片化またはオリゴヌクレオチドバーコードのライゲーション等の特定の機能を実行できるように、インキュベーション工程440を行うことができる。インキュベーション工程(必要に応じて行われる)に続いて、マイクロウェルの内容物を単独で、またはまとめて回収することができる。
【0118】
A.分析物
本開示の装置は、分析物の操作、調製、同定および/または定量化において多種多様な用途を有することができる。一部の事例において、分析物は、細胞または細胞の集団である。細胞の集団は、均質(例えば、同じ細胞型の細胞株に由来、同じ種類の組織に由来、同じ器官に由来等)であってもよく、異質(異なる種類の細胞の混合物)であってもよい。細胞は、初代細胞、細胞株、組換え細胞、初代細胞、封入された細胞、遊離の細胞等であってもよい。
【0119】
分析物は、これらに限定されないがポリペプチド、タンパク質、抗体、酵素、核酸、糖類、小分子、薬物その他等の分子であってもよい。核酸の例としては、これらに限定されないが、DNA、RNA、dNTP、ddNTP、アンプリコン、合成ヌクレオチド、合成ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、cDNA、dsDNA、ssDNA、プラスミドDNA、コスミドDNA、高分子量(MW)DNA、染色体DNA、ゲノムDNA、ウイルスDNA、細菌DNA、mtDNA(ミトコンドリアDNA)、mRNA、rRNA、tRNA、nRNA、siRNA、snRNA、snoRNA、scaRNA、マイクロRNA、dsRNA、リボザイム、リボスイッチおよびウイルスRNA(例えば、レトロウイルスRNA)が挙げられる。
【0120】
一部の事例において、分析物は、装置に充填される前に、1種または複数の試薬(例えば、リガーゼ、プロテアーゼ、ポリメラーゼ)等の1種または複数の追加の材料と予め混合される。一部の事例において、分析物は、装置に充填される前に、1種または複数の試薬を含むマイクロカプセルと予め混合される。
【0121】
試料は、ヒト、哺乳類、非ヒト哺乳類、類人猿、サル、チンパンジー、植物、爬虫類、両生類、鳥類、真菌、ウイルスまたは細菌供給源を含む種々の供給源に由来するものでもよい。細胞、核酸およびタンパク質等の試料は、生検、吸引液、採血、尿試料、ホルマリン固定し包埋した組織その他等の種々の臨床供給源から得ることもできる。
【0122】
本開示の装置は、分析物の起源のその後の同定を可能にするために、分析物がタグ付けまたは追跡されることを可能にする。この特色は、混成の反応またはマルチプレックス反応を用い、複数の試料の平均としての測定または解析しかもたらさない他の方法とは対照的である。そこで、物理的区分化および個々の分析物への固有の識別子の割り当ては、個々の試料からのデータの取得を可能にし、試料の平均に限定されない。
【0123】
一部の例において、単一細胞に由来する核酸または他の分子は共通のタグまたは識別子を共有し得るので、後にその細胞に由来するものと同定することが可能である。同様に、核酸の一本鎖に由来する断片の全てを同じ識別子またはタグでタグ付けすることもできるので、同じ鎖に類似の位相またはリンケージを有する断片のその後の同定を可能にする。他の事例において、発現を定量化するために、個々の細胞に由来する遺伝子発現産物(例えば、mRNA、タンパク質)をタグ付けすることができる。さらにまた他の事例において、本装置は、PCR増幅の対照として用いることができる。斯かる事例において、PCR反応由来の複数の増幅産物を同じタグまたは識別子でタグ付けすることができる。その産物を後に配列決定した際に配列の差が示される場合は、同じ識別子を有する産物間の差は、PCRエラーが原因の可能性がある。
【0124】
マイクロカプセルおよび/または遊離の試薬を充填する前、その後またはその最中に、分析物を装置に充填することができる。一部の事例において、分析物は、マイクロカプセルアレイに充填する前に、マイクロカプセルに封入される。例えば、核酸分析物をマイクロカプセルに封入し、続いてこのマイクロカプセルを装置に充填した後、分析物の適切なマイクロウェルへの放出を引き起こすことができる。
【0125】
DNAまたは細胞等のいかなる分析物を、溶液中に、またはカプセルに封入された分析物として充填してもよい。一部の事例において、分子(例えば、核酸、タンパク質等)の均質または不均一な集団は、マイクロカプセルに封入され、装置に充填される。一部の事例において、細胞の均質または不均一な集団は、マイクロカプセルに封入され、装置に充填される。マイクロカプセルは、ランダムなまたは特定の数の細胞および/または分子を含むことができる。例えば、マイクロカプセルは、マイクロカプセル当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000、5000または10000個以下の細胞および/または分子を含むことができる。他の例において、マイクロカプセルは、マイクロカプセル当たり少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000、5000または10000個の細胞および/または分子を含む。流体技法および他のいずれかの技法を用いて、細胞および/または分子をマイクロカプセルに封入することができる。
【0126】
一般に、本明細書に提示されている方法および組成物は、配列決定反応等の下流の適用の前の分析物の調製に有用である。多くの場合、配列決定方法は、古典的サンガー配列決定である。配列決定方法としては、これらに限定されないが、ハイスループット配列決定、ピロシーケンス、合成による配列決定、単一分子配列決定、ナノポア配列決定、ライゲーションによる配列決定、ハイブリダイゼーションによる配列決定、RNA-Seq(Illumina社)、Digital Gene Expression(Helicos社)、次世代配列決定、Single Molecule Sequencing by Synthesis(SMSS)(Helicos社)、大規模平行配列決定、Clonal Single Molecule Array(Solexa社)、ショットガン配列決定、マクサム・ギルバート配列決定、プライマーウォーキングおよび本技術分野において公知の他のいずれかの配列決定方法が挙げられる。
【0127】
配列決定反応の代わりに、またはそれと併せて行うことができる適用の多数の例が存在し、その例としては、これらに限定されないが、生化学的解析、プロテオミクス、イムノアッセイ、特異的細胞型のプロファイリング/フィンガープリンティング、医薬品スクリーニング、ベイト捕捉実験、タンパク質-タンパク質相互作用スクリーニングその他等が挙げられる。
【0128】
B.分析物への固有の識別子の割り当て
本明細書に開示されている装置は、分析物への固有の識別子または分子バーコードの割り当てを含む適用に用いることができる。多くの場合、固有の識別子は、分析物のタグ付けに用いられるバーコードオリゴヌクレオチドであるが、一部の事例において、異なる固有の識別子が用いられる。例えば、一部の事例において、固有の識別子は抗体であり、この場合、付着は、抗体および分析物の間(例えば、抗体および細胞、抗体およびタンパク質、抗体および核酸)の結合反応を含むことができる。他の事例において、固有の識別子は色素であり、この場合、付着は、分析物分子への色素のインターカレーション(DNAまたはRNAへのインターカレーション等)または色素で標識されたプローブへの結合を含むことができる。さらにまた他の事例において、固有の識別子は、核酸プローブとなることができ、この場合、分析物への付着は、核酸および分析物の間のハイブリダイゼーション反応を含むことができる。一部の事例において、反応は、識別子および分析物の間の化学結合を含むことができる。他の事例において、反応は、分析物への直接的な、または同位体で標識されたプローブによる、金属同位体の添加を含むことができる。
【0129】
多くの場合、方法は、ライゲーション反応等の酵素反応によりオリゴヌクレオチドバーコードを核酸分析物に付着させる工程を含む。例えば、リガーゼ酵素は、DNAバーコードを断片化DNA(例えば、高分子量DNA)へと共有結合により付着させることができる。バーコードの付着後に、分子を配列決定反応に付すことができる。しかし、同様に他の反応を用いてもよい。例えば、バーコード配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーは、DNA鋳型分析物の増幅反応(例えば、PCR、qPCR、逆転写PCR、デジタルPCR等)において用い、これによりタグ付けされた分析物を産生することができる。個々の分析物へのバーコードの割り当て後に、さらなる解析のために、装置における出口ポートを介して個々のマイクロウェルの内容物を回収することができる。
【0130】
固有の識別子(例えば、オリゴヌクレオチドバーコード、抗体、プローブ等)は、ランダムにまたは非ランダムに装置に導入することができる。一部の事例において、固有の識別子は、固有の識別子対マイクロウェルの予想される比率で導入される。例えば、固有の識別子は、マイクロウェル当たり約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、500、1000、5000、10000または200000個を超える固有の識別子が充填されるように充填することができる。一部の事例において、固有の識別子は、マイクロウェル当たり約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、500、1000、5000、10000または200000個未満の固有の識別子が充填されるように充填することができる。一部の事例において、マイクロウェル当たりの充填された固有の識別子の平均数は、マイクロウェル当たり約0.0001、0.001、0.01、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、500、1000、5000、10000もしくは200000個未満、またはそれより多くの固有の識別子である。
【0131】
1種または複数の同一識別子のセットが特定のウェルに導入されるように、固有の識別子を充填することもできる。斯かるセットは、各マイクロウェルが異なるセットの識別子を含有するように充填することもできる。例えば、集団における第1のマイクロカプセルが、同一の固有の識別子(例えば、核酸バーコード等)の複数のコピーを含み、集団における第2のマイクロカプセルが、第1のマイクロカプセル内とは異なる固有の識別子の複数のコピーを含むように、マイクロカプセルの集団を調製することができる。一部の事例において、マイクロカプセルの集団は、それぞれ他のマイクロカプセルに含有されるものとは異なる固有の識別子の複数のコピーを含有する、複数のマイクロカプセル(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、500、1000、5000、10000、100000、1000000、10000000、100000000または1000000000個を超えるマイクロカプセル)を含むことができる。一部の事例において、集団は、固有の識別子の同一セットを有する2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、500、1000、5000、10000、100000、1000000、10000000、100000000または1000000000個を超えるマイクロカプセルを含むことができる。一部の事例において、集団は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、500、1000、5000、10000、100000、1000000、10000000、100000000または1000000000個を超えるマイクロカプセルを含むことができ、マイクロカプセルはそれぞれ、固有の識別子の異なる組み合わせを含む。例えば、一部の事例において、第1のマイクロカプセルが、例えば、固有の識別子A、BおよびCを含むことができる一方、第2のマイクロカプセルが、固有の識別子A、BおよびDを含むことができるように、異なる組み合わせは重複する。別の例において、第1のマイクロカプセルが、例えば、固有の識別子A、BおよびCを含むことができる一方、第2のマイクロカプセルが、固有の識別子D、EおよびFを含むことができるように、異なる組み合わせは重複しない。
【0132】
固有の識別子は、分析物(例えば、核酸の鎖、核酸の断片、タンパク質、細胞等)当たりの固有の識別子の予想または予測される比率で装置に充填することができる。一部の事例において、マイクロウェルにおける個々の分析物当たり約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、500、1000、5000、10000または200000個を超える固有の識別子が充填されるように、固有の識別子がマイクロウェルに充填される。一部の事例において、マイクロウェルにおける個々の分析物当たり約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、500、1000、5000、10000または200000個未満の固有の識別子が充填されるように、固有の識別子がマイクロウェルに充填される。一部の事例において、分析物当たりの充填される固有の識別子の平均数は、分析物当たり約0.0001、0.001、0.01、0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、500、1000、5000、10000または200000個未満、またはそれより多くの固有の識別子である。分析物当たり1個を超える識別子が存在する場合、斯かる識別子は、同じ識別子または複数の異なる識別子のコピーであってもよい。例えば、付着プロセスは、複数の同一識別子を単一の分析物に、または複数の異なる識別子を分析物に付着させるよう設計することができる。
【0133】
固有の識別子を用いて、細胞または分子を含む広範な分析物にタグ付けすることができる。例えば、固有の識別子(例えば、バーコードオリゴヌクレオチド)は、核酸鎖全体または核酸の断片(例えば、断片化ゲノムDNA、断片化RNA)に付着させることができる。固有の識別子(例えば、抗体、オリゴヌクレオチド)は、細胞の外表面、細胞上に発現したマーカー、または細胞小器官、遺伝子発現産物、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、RNA、mRNAもしくはタンパク質等の細胞内の構成成分を含む細胞に結合することもできる。固有の識別子は、透過処理した細胞(それ以外は無処置であっても処置されていてもよい)に存在する核酸(例えば、DNA、RNA)と結合またはハイブリダイズするよう設計することもできる。
【0134】
固有の識別子は、単独で、または他の要素(例えば、試薬、分析物)と組み合わせて装置に充填することができる。一部の事例において、遊離の固有の識別子を分析物と共にプールし、この混合物を装置に充填する。一部の事例において、混合物を装置に充填する前に、マイクロカプセルに封入された固有の識別子を分析物と共にプールする。さらにまた他の事例において、遊離の固有の識別子は、分析物を充填する前に、その最中に(例えば、別々の入口ポートにより)またはその後にマイクロウェルに充填される。さらにまた他の事例において、マイクロカプセルに封入された固有の識別子は、分析物を充填する前に、それと同時発生的に(例えば、別々の入口ポートにより)またはその後にマイクロウェルに充填される。
【0135】
多くの適用において、個々の分析物がそれぞれ、異なる固有の識別子(例えば、オリゴヌクレオチドバーコード)を与えられるか決定することが重要となり得る。装置に導入された固有の識別子の集団が、有意に多様という訳ではない場合、異なる分析物が、恐らく同一識別子でタグ付けされ得る。本明細書に開示されている装置は、同じ識別子でタグ付けされた分析物の検出を可能にし得る。一部の事例において、参照分析物は、装置に導入された分析物の集団と共に含まれ得る。参照分析物は、例えば、公知の配列および公知の含量を有する核酸であってもよい。分析物の集団が装置に充填および区分化された後に、本明細書に記載されている通り、固有の識別子を分析物に付着させることができる。固有の識別子がオリゴヌクレオチドバーコードであり、分析物が核酸である場合、タグ付けされた分析物は、その後に配列決定および定量化することができる。これらの方法は、1種または複数の断片および/または分析物に、同一バーコードを割り当てることができたか示すことができる。
【0136】
本明細書に開示されている方法は、分析物へのバーコードの割り当てに必要な試薬で装置を充填する工程を含むことができる。ライゲーション反応の場合、これらに限定されないがリガーゼ酵素、バッファー、アダプターオリゴヌクレオチド、複数の固有の識別子DNAバーコードその他等の試薬を装置に充填することができる。濃縮の場合、これらに限定されないが複数のPCRプライマー、固有の同定用配列またはバーコード配列を含有するオリゴヌクレオチド、DNAポリメラーゼ、DNTPおよびバッファーその他等試薬を装置に充填することができる。試薬は、遊離の試薬またはマイクロカプセルに封入された試薬として充填することができる。
【0137】
C.核酸配列決定
核酸配列決定は、特定の密度(例えば、マイクロウェル当たり約1個の分析物または本明細書に記載されている他の密度)におけるマイクロウェルへの試料分析物の物理的区分化から始まることができる。分析物が後に一体にプールされ、一斉に処理される場合であっても、核酸バーコードが個々の分析物に割り当てられると、その後の増幅および/または配列決定工程等のその後の工程において個々の分子を追跡することが可能になる。
【0138】
a.核酸の位相
本明細書に提示されている装置を用いて、位相またはリンケージ情報をその後に得ることができるような様式で分析物(例えば、核酸分析物)を調製することができる。斯かる情報は、長く伸びた核酸によって離間した遺伝的変種(例えば、SNP、突然変異、インデル、コピー数変種、トランスバージョン、転位置、逆位等)を含む、配列中の関連する遺伝的変異の検出を可能にすることができる。これらの変異は、シスまたはトランスいずれかの関係性で存在し得る。シス関係性において、2個以上の遺伝的変異は、同じポリ核酸分子または鎖に存在し得る。トランス関係性において、2個以上の遺伝的変異は、複数の核酸分子または鎖に存在し得る。
【0139】
核酸の位相を決定する方法は、本明細書に開示されている装置に核酸試料[例えば、所定の遺伝子座(単数または複数)に及ぶ核酸試料]を充填する工程と、マイクロウェル当たり最大で1分子の核酸が存在するように試料を分布させる工程と、マイクロウェル内で試料を断片化する工程とを含むことができる。方法は、本明細書に記載されている通り、固有の識別子(例えば、バーコード)を断片化された核酸に付着させる工程と、核酸をまとめて回収する工程と、2種の異なる遺伝的変異等の遺伝的変異を検出するために、試料においてその後の配列決定反応を実行する工程とをさらに含むことができる。2種の異なるバーコードでタグ付けされた遺伝的変異の検出は、2種の遺伝的変異が、2本の別々のDNA鎖に由来することを示すことができ、トランス関係性を反映する。逆に、同じバーコードでタグ付けされた2種の異なる遺伝的変異の検出は、2種の遺伝的変異が、同じDNA鎖に由来することを示すことができ、シス関係性を反映する。
【0140】
特に、分析物が、特定の疾患または障害(例えば、嚢胞性線維症、がん等の遺伝性劣性疾患等)のリスクがある、これらの疾患または障害がある、またはそうであると疑われる対象に由来する場合、位相情報は、分析物の特徴づけに重要となり得る。このような情報により、以下の可能性、すなわち:(1)同じDNA鎖中の同じ遺伝子内の2種の遺伝的変異を識別することができ、さらに(2)同じ遺伝子内であるが別々のDNA鎖に位置する2種の遺伝的変異を識別することができる。可能性(1)は、遺伝子の1つのコピーは正常であり、個体は疾患がないことを示すことができるが、可能性(2)は、特に2種の遺伝的変異が同じ遺伝子コピー内に存在している場合、遺伝子の機能を損傷しているのであれば、個体が、疾患を有するまたは将来発症するであろうことの指標となり得る。同様に、位相情報により、以下の可能性、すなわち:(1)それぞれ同じDNA鎖中の異なる遺伝子内にある2種の遺伝的変異を識別することもでき、さらに(2)それぞれ異なる遺伝子内にあるが別々のDNA鎖に位置する2種の遺伝的変異の間を識別することもできる。
【0141】
b.細胞特異的情報
本明細書に提示されている装置を用いて、細胞特異的情報をその後に得ることができるような様式で、細胞分析物を調製することができる。斯かる情報は、細胞毎の遺伝的変異(例えば、SNP、突然変異、インデル、コピー数の変化、トランスバージョン、転位置、逆位等)の検出を可能にし、これにより遺伝的変異が同じ細胞に存在するか2個の異なる細胞に存在するかの決定を可能にすることができる。
【0142】
核酸細胞特異的情報を決定する方法は、本明細書に開示されている装置に細胞試料(例えば、対象由来の細胞試料)を充填する工程と、マイクロウェル当たり最大で1個の細胞が存在するように試料を分布させる工程と、細胞を溶解させる工程と、続いて、本明細書に記載されている方法を用いて固有の識別子で細胞内の核酸をタグ付けする工程とを含むことができる。一部の事例において、固有の識別子を含むマイクロカプセルは、マイクロウェルアレイ装置において(細胞分析物を充填する前、最中または後に)、各細胞が異なるマイクロカプセルと接触されるような様式で充填される。その結果得られるタグ付けされた核酸は、続いてプールされ、配列決定され、核酸の起源の追跡に用いられる。同一の固有の識別子を有する核酸は、同じ細胞から生じると決定することができるが、異なる固有の識別子を有する核酸は、異なる細胞から生じると決定することができる。
【0143】
より特異的な例において、本明細書の方法を用いて、がん腫瘍細胞の集団にわたる発癌性突然変異の分布を検出することができる。この例において、細胞の一部は、2本のDNA鎖に癌遺伝子(例えば、HER2、BRAF、EGFR、KRAS)の突然変異または増幅を有していてもよいが(ホモ接合型)、他方は、突然変異がヘテロ接合型であってもよく、一方、さらに他の細胞は野生型であってもよく、癌遺伝子に突然変異または他の変異を含まない。本明細書に記載されている方法は、これらの差を検出することができ、ホモ接合型、ヘテロ接合型および野生型細胞の相対数を定量化することもできる。斯かる情報を用いて、特定のがんをステージ分類することができ、またはがんの進行を経時的にモニターすることができる。
【0144】
一部の例において、本開示は、2種の異なる癌遺伝子(例えば、KRASおよびEGFR)における突然変異を同定する方法を提供する。同じ細胞が、両方の突然変異を有する遺伝子を含む場合、これは、より高悪性度型のがんを示すことができる。対照的に、突然変異が、2種の異なる細胞に位置する場合、これは、がんがより良性であるまたは進行度が低いことを示すことができる。
【0145】
次に、細胞特異的な配列決定の別の特異的な例を示す。この例において、腫瘍生検由来等の複数の細胞が装置に充填される。試料由来の単一細胞は、個々のウェルに置かれ、DNAバーコードで標識される。
【0146】
装置への細胞の充填は、非ランダムな充填により達成することができる。細胞等の分析物の非ランダムな充填のパラメータは、次の干渉関数を用いて理解することができる:
「多重占有率(fraction multi-occupancy)」=
【0148】
(式中、
P=特定の細胞が、試みてもウェルに適合しないであろう確率(干渉の尺度)
N=ウェルの数
L=標識の数=バーコード
C=細胞の数)
【0149】
試料調製反応の一部として、細胞を溶解することができ、個々の細胞における異なる標的タンパク質および遺伝子のRNA増幅、DNA増幅または抗体スクリーニングを含む多くのその後の反応が可能となる。反応後に、細胞の内容物を一体にプールし、DNA配列決定等によりさらに解析することができる。固有のバーコードを割り当てた各細胞により、これらに限定されないが異なる遺伝子レベルの定量化または個々の細胞の核酸配列決定等のさらなる解析が可能となり得る。この例において、腫瘍が、異なる遺伝的背景を有する細胞(例えば、がんクローンおよびサブクローン)を含むか決定され得る。各種類の細胞の相対数を計算することもできる。
【0150】
c.増幅制御
本明細書に開示されている通り、本装置は、PCRエラー等の増幅エラーを制御する目的で用いることができる。例えば、核酸試料は、装置のマイクロウェルへと区分化することができる。区分化後に、試料は、マイクロウェル内でPCR増幅反応に付すことができる。マイクロウェル内のPCR産物は、本明細書に記載されている方法を用いて、同じ固有の識別子でタグ付けすることができる。産物が後に配列決定され、配列の差を実証する場合、同じ識別子を有する産物間の差は、PCRエラーに起因し得る。
【0151】
d.遺伝子発現産物解析
他の適用において、装置を用いて、多くの場合は細胞毎の試料における遺伝子産物(例えば、タンパク質、mRNA)発現レベルを検出することができる。試料は、個々の細胞、細胞から得たmRNA抽出物のプールまたは遺伝子産物の他の収集物を含むことができる。一部の事例において、単一細胞をマイクロウェルに充填することができる。他の事例において、所望の含量のmRNA分子が個々のマイクロウェルに充填されるように、mRNAまたは他の遺伝子産物のプールを充填することができる。
【0152】
本明細書に提示されている方法は、RNA解析に特に有用となり得る。例えば、本明細書に提示されている方法を用いて、固有の識別子は、直接的にmRNA分析物に、またはmRNA分析物に対して行った逆転写反応のcDNA産物に割り当てることができる。逆転写反応は、分析物の充填後に、装置のマイクロウェル内で行うことができる。反応のための試薬としては、これらに限定されないが、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ酵素、バッファー、dNTP、オリゴヌクレオチドプライマー、バーコード配列を含有するオリゴヌクレオチドプライマーその他が挙げられる。1種または複数の試薬をマイクロカプセルに充填してもよく、または溶液中に自由な状態で装置に充填してもよく、またはこれらの組み合わせである。続いて、cDNAを断片化し、固有の識別子を断片に付着すること等により、試料調製を行うことができる。試料調製および回収後に、配列決定等により、反応の核酸産物をさらに解析することができる。
【0153】
その上、装置を用いて、フローサイトメーターと同様に、複数の細胞マーカーを特徴づけることができる。細胞表面マーカー(例えば、細胞外タンパク質、膜貫通マーカー)および細胞の内側部分に位置するマーカー(例えば、RNA、mRNA、マイクロRNA、複数コピーの遺伝子、タンパク質、選択的スプライシング産物等)を含む、いかなる細胞マーカーを特徴づけることもできる。例えば、本明細書に記載されている通り、マイクロウェル内に最大で1個の細胞が存在するように、装置内に細胞を区分化することができる。核酸(例えば、RNA)等の細胞マーカーは、固有の識別子(例えば、分子バーコード)で標識する前に、抽出および/または断片化することができる。あるいは、核酸は、抽出および/または断片化することなく、固有の識別子で標識することができる。続いて、複数の遺伝子発現産物を検出するよう設計された配列決定反応等、さらなる解析に核酸を付すことができる。斯かる解析は、多数の分野において有用となり得る。例えば、出発細胞が、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ等)である場合、解析は、複数の発現されたマーカーに関する情報を提供し、例えば、細胞の異なるCDマーカー(例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD56等)を同定することにより、細胞の免疫表現型検査を可能にすることができる。斯かるマーカーは、細胞の機能、特徴、クラスまたは相対成熟度への洞察をもたらすことができる。斯かるマーカーは、病原体感染のマーカー(例えば、ウイルスまたは細菌タンパク質、DNAまたはRNA)等の必ずしも免疫表現型検査マーカーではないマーカーと併せて用いることもできる。一部の事例において、装置を用いて、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、500、700、1000、5000、10000、50000または100000種の異なる遺伝子発現産物または他の形態の細胞マーカーを単一細胞ごとに同定することができる。多くの場合、斯かる方法は、色素またはプローブ(例えば、蛍光プローブまたは色素)の使用を含まない。
【0154】
遺伝子発現産物解析は、免疫学、がん生物学(例えば、がん性組織の存在、種類、ステージ、高悪性度または他の特徴を特徴づけるための)、幹細胞生物学(例えば、幹細胞の分化状態、幹細胞の潜在力、幹細胞の細胞型または幹細胞の他の特色を特徴づけるための)、微生物学その他を含む多数の分野において有用となり得る。遺伝子発現解析は、薬物スクリーニング適用において用いて、例えば、特定の細胞の遺伝子発現プロファイルにおける特定の薬物または薬剤の効果を評価することもできる。
【0155】
VIII.用語法
本明細書に用いられている用語法は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、本開示の装置の限定を目的としない。本明細書において、文脈が明らかにそれ以外を示すのでなければ、単数形(「a」、「an」および「the」)は、複数形を同様に含むことを目的とする。さらに、用語「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」またはこれらの異形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲において用いられる程度まで、斯かる用語は、用語「含む(comprising)」と同様の様式で包括的であることを目的とする。
【0156】
本開示の装置の数種の態様は、例証のための実例適用を参照しつつ、上に記載されている。多数の特異的な詳細、関係性および方法が、装置の十分な理解をもたらすために示されていることを理解されたい。しかし、関連技術の当業者であれば、特異的な詳細のうち1種または複数なしで、あるいは他の方法により、装置を実施し得ることを容易に認識するであろう。一部の行為は、異なる順序でおよび/または他の行為もしくは事象と同時発生的に行われ得るため、本開示は、行為または事象の例証されている順序に限定されない。さらに、あらゆる例証されている行為または事象が、本開示に従った方法論の実行に必要とされるとは限らない。
【0157】
範囲は、本明細書において、ある特定の「約」が付けられた値から、および/または別の特定の「約」が付けられた値までとして表現することができる。斯かる範囲が表現される場合、別の実施形態は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、接頭辞「約」の使用により近似値として表現される場合、特定の値が、別の実施形態を形成することが理解されよう。範囲のそれぞれの端点が両者共に、他方の端点との関連において、また、他方の端点とは独立的に有意であることがさらに理解されよう。用語「約」は、本明細書において、特定の用法の文脈内で、言及されている数値からプラスマイナス15%である範囲を指す。例えば、約10は、8.5〜11.5の範囲を含むであろう。
【0158】
用語、マイクロウェルアレイは、本明細書において、マイクロウェルの所定の空間的配置を一般に指す。マイクロカプセルを含むマイクロウェルアレイ装置は、「マイクロウェルカプセルアレイ」とも称され得る。さらに、用語「アレイ」は、本明細書において、表面が複数コピーのアレイを有する事例等の表面に配置された複数のアレイを指すよう用いることができる。複数のアレイを有する斯かる表面は、「複数のアレイ」または「反復的アレイ」とも称され得る。
【実施例1】
【0159】
単一細胞のDNA配列決定
マイクロウェルカプセルアレイを調製して、血液試料から得た個々のヒトB細胞において核酸配列決定を行う。およそ15,000個の細胞を収集し、装置への充填に用いた。150,000個のマイクロウェルを含有する本開示の装置を用いる。各ウェルは、125umの直径および125umの高さを有する円柱状の形状をしており、ウェル当たり最大で1個のカプセルの充填を可能にする。装置に充填するためのマイクロカプセルが100umの直径を有するように、PNIPAMハイドロゲル殻壁を有するエマルション重合で作製したマイクロカプセルを作製する。PNIPAM殻が磁鉄粒子を含有するように、マイクロカプセルを作製する。次に、殻の外表面を、B細胞外部における膜貫通B細胞受容体に特異的な抗体に化学的にカップリングする。
【0160】
カプセルの調製プロセスにおいて、カプセルに試薬を同時に充填する。細胞溶解およびDNAバーコードによる細胞の個々のDNA鎖の標識に必要な試薬をカプセルに充填する。細胞溶解のための試薬は、中性非イオン性洗剤(mild non-ionic detergent)、バッファーおよび塩を含む。制限酵素、リガーゼおよび10,000,000個より多くの固有のDNAオリゴヌクレオチドを含む、ゲノムDNAへのDNAバーコードの付加のための試薬をカプセルに充填する。カプセルは、65℃超における破裂に対し感受性となるよう設計されている。
【0161】
マイクロカプセルアレイに適用できるようにカプセルを調製する。磁気温度制御ホットプレートにアレイを置く。1個のB細胞が1個のカプセルに結合することができるように、B細胞の試料にマイクロカプセルを添加する。カプセル-細胞コンジュゲートを、ウェルの相対数に対し過剰な含量で水性担体溶液に適用する。入口ポートへとカプセル-細胞を穏やかにピペッティングし、続いて出口ポートに真空マニホールドを適用することにより、装置の至るところにカプセルを分布させる。プレートを通じて磁場を加える。出口ポートを通したピペッティングにより、過剰なカプセル-細胞溶液を除去する。各カプセル-細胞コンジュゲートを捕捉し、磁場により個々のウェルに配置する。
【0162】
細胞およびカプセルを装置に充填した後に、担体油(または密封流体)を装置に適用して、隣接するマイクロウェルに広がる過剰な水性溶液を完全に除去する。入口に適用された担体油および過剰な油は、真空マニホールドにより出口で回収する。担体油を適用した後に、入口および出口ポートをテープで密封する。
【0163】
次に、磁気温度制御ホットプレートにより70℃の温度まで装置を10分間加熱して、カプセルを破裂させ、細胞を溶解することができる。次に、制限処理およびライゲーションのために、最大1時間ホットプレートを37℃に切り換える。
【0164】
試料調製反応が完了した後に、ウェルの内容物を回収する。装置の入口および出口ポートの密封を除き、窒素ガスを装置に適用して、マイクロウェルの個々の構成成分を流し出す。磁場が、個々のマイクロウェルに破裂したカプセル殻を保持しつつ、ピペットにより出口ポートにおいて試料をまとめて収集する。
【0165】
次に、本技術分野において公知のマルチプレックス配列決定戦略を用いて試料を配列決定する。個々の細胞のバーコード化は、複数の細胞の平均としてではなく、個々の細胞の配列決定情報の獲得を可能にする。配列決定した細胞の数および割り当てたバーコードに基づき、SNP細胞特異的情報を獲得する。さらに、個々のバーコードの読み取り値の数をカウントして、B細胞の本来の集団内における、変動する遺伝的背景を有する異なる種類の細胞の分布への洞察をもたらすことができる。
【実施例2】
【0166】
DNA一本鎖配列決定
マイクロウェルカプセルアレイを調製して、ヒト皮膚細胞の集団から単離した個々のDNA鎖において核酸配列決定を行う。洗剤および熱を用いて細胞を溶解し、クロロホルム/エタノール抽出によりおよそ15,000コピーの二倍体DNAを沈殿させる。およそ10,000コピーの一倍体DNAを有するDNAの再懸濁物を装置に充填する。300,000個のマイクロウェルを有する本開示の装置を用いる。各ウェルは、125umの直径および125umの高さを有する円柱状の形状であり、ウェル当たり最大で1個のカプセルを充填させることができる。装置へと充填するために、PNIPAMハイドロゲル殻壁を有するエマルション重合により作製されたマイクロカプセルを、100umの直径を有する球の規格となるよう作製する。
【0167】
マイクロカプセルの調製において、カプセルに試薬を同時に充填する。試薬は、制限酵素、リガーゼおよび10,000,000個より多くの固有のDNAオリゴヌクレオチドを含む、DNAバーコードによる個々のDNA鎖の標識に必要な試薬を含む。65℃超における破裂に対し感受性となるよう設計されたカプセルを封入に用いる。
【0168】
ウェルの相対数に対し過剰となるよう、カプセルを水性担体溶液に適用する。入口へとカプセルを穏やかにピペッティングし、続いて出口に真空マニホールドを適用することにより、装置中の至るところにカプセルを分布させた。過剰なカプセル溶液を除去した後に、バッファーにおけるDNAの懸濁液を、カプセルと同様の様式で装置に適用する。
【0169】
DNA鎖およびカプセルを装置に充填した後に、担体油を装置に適用して、隣接するマイクロウェルに広がる過剰な水性溶液を完全に除去する。入口ポートに担体油を適用し、真空マニホールドにより出口ポートにおいて過剰な油を回収する。担体油を適用した後に、入口および出口ポートをテープで密封する。
【0170】
次に、温度制御ホットプレート上に装置を置き、70℃の温度まで10分間加熱して、カプセルを破裂させることができる。試料調製反応物中に試薬を放出させる。次に、制限処理およびライゲーションのために、最大1時間ホットプレートを37℃に切り換える。
【0171】
試料調製反応が完了した後に、装置の入口および出口ポートの密封を除き、窒素ガスを装置に適用して、マイクロウェルの個々の構成成分を流し出す。出口ポートにおいてピペットにより試料産物をバルクで収集する。
【0172】
次に、本技術分野において公知のマルチプレックス配列決定戦略を用いて、十分な適用範囲(例えば、500)まで試料を配列決定する。個々のDNA鎖のバーコード化は、DNA試料全体の平均としてではなく、個々の鎖からの配列決定情報の獲得を可能にする。配列決定したDNA鎖および割り当てたバーコードの数に基づき、SNP位相/ハプロタイプ決定情報を獲得し、DNAの多くの反復領域を解明することができる。加えて、配列決定エラーである可能性が高いため、ハプロタイプに関してランダムに現れる突然変異を廃棄することにより、正確性の実質的な強化を得ることができる。
【0173】
前述から、特定の実施を例証および記載してきたが、これに対し様々な修正を行ってよく、本明細書において考慮され得ることを理解されたい。また、本明細書内に提示されている特異的な例によって、本発明が限定されることを企図しない。上述の明細書を参照しつつ本発明を記載してきたが、本明細書における好ましい実施形態の記載および例証は、限定的な意味における解釈を企図しない。さらに、本発明のあらゆる態様が、種々の条件および変数に依存する、本明細書に示されている特異的な描写、配置または相対的な割合に限定されないことを理解されたい。本発明の実施形態の形態および詳細における様々な修正は、当業者には明らかとなるであろう。従って、本発明が、このようないかなる修正、改変および均等物も網羅することが考慮される。次の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義すると共に、これにより、この特許請求の範囲内の方法および構造ならびにこれらの均等物が網羅されることが企図される。