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特許6367202マトリクス,特に静止画像又はビデオ画像を表すマトリクスを符号化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367202
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】マトリクス,特に静止画像又はビデオ画像を表すマトリクスを符号化する方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/41 20060101AFI20180723BHJP
   H04N 19/105 20140101ALI20180723BHJP
   H04N 19/176 20140101ALI20180723BHJP
   H04N 19/14 20140101ALI20180723BHJP
   H04N 19/593 20140101ALI20180723BHJP
   H03M 7/36 20060101ALI20180723BHJP
   H04N 19/33 20140101ALI20180723BHJP
【FI】
   H04N1/41
   H04N19/105
   H04N19/176
   H04N19/14
   H04N19/593
   H03M7/36
   H04N19/33
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-535097(P2015-535097)
(86)(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公表番号】特表2016-502297(P2016-502297A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】FR2013052369
(87)【国際公開番号】WO2014053791
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年10月4日
(31)【優先権主張番号】1259484
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516106748
【氏名又は名称】コリン,ジャン−クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルベ,ブルノ
(72)【発明者】
【氏名】ベッソー,ニコラス
【審査官】 松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−129945(JP,A)
【文献】 特開昭63−173465(JP,A)
【文献】 特開2004−200959(JP,A)
【文献】 特開平09−070042(JP,A)
【文献】 小林 誠 ほか1名,画像の階層的予測・変換符号化,映像情報メディア学会技術報告,1997年11月27日,第21巻、第72号,p.13〜18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00− 1/64
H04N 19/00−19/98
H03M 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期マトリクス(M)の少なくとも一つの層(MSB,MS1,MS2,MS3…)の圧縮マトリクス(MC)へのデジタル画像の圧縮,及び復元マトリクス(MR)としての前記圧縮マトリクス(MC)を復元する方法であって:
‐ 前記初期マトリクスの各セル(Cmn)は,各初期デジタル値(Vmn)を含み;
‐ 前記圧縮マトリクス(MC)の各セル(CCmn)は,前記各初期デジタル値(Vmn)に対応する各圧縮デジタル値(VCmn)を含み;
‐ 前記復元マトリクス(MR)の各セル(CRmn)は,前記各初期デジタル値(Vmn)に対応する各復元デジタル値(VRmn)を含む方法において,
初期ボックス(Cmn)の少なくとも1つの初期値(Vmn)を処理する,即ち圧縮するために,少なくとも1つの前記初期値の圧縮のための経路として前記ボックスを通過する複数の行の中から,以前に計算された復元値(VR)を用いて,変量(DV)の絶対値が最も小さい行を選択し,
少なくとも1つの前記層について,前記層の処理対象の初期値(Vmn)に関して,前記処理対象の値と,前記処理対象の値(Vmn)に対応する復元値を含むよう提供されたボックス(CRmn)の,以前に決定された,隣接する復元基準値(VR)との間の差分(Dmn)を計算することによって,対応する圧縮値(VCmn)が決定され,前記隣接する復元基準値は更に,前記ボックス(CRmn)を通過する複数の行のうちの1つにあり,
マトリクスが2次元であり,前記層(MSB)の前記処理対象の値(Vmn)と同一の行(m)に1つ,同一の列(n)にもう1つの少なくとも2つの潜在的な基準値が存在する場合,前記基準値の選択は:
‐ 前記処理対象の値(Vmn)と同一の列番号(n)を有する第1の潜在的基準値と,前記第1の潜在的基準値と同一の行番号及び第2の潜在的基準値と同一の列インデックスを有する復元値との間の第1の変量(DVm)を計算し;
‐ 前記処理対象の値(Vmn)と同一の行インデックス(m)を有する前記第2の潜在的基準値と,前記第2の潜在的基準値と同一の列番号及び前記第1の潜在的基準値と同一の行番号を有する復元値との間の第2の変量(DVn)を計算し;
‐ 経路が最小の変量を与える基準値を選択する,即ち,前記第2の変量(DVn)が前記第1の変量(DVm)より小さい絶対値を有する場合は,前記同一の列(n)上の前記第1の基準値を選択し,又は前記第1の変量(DVm)が前記第2の変量(DVn)より小さい絶対値を有する場合は,前記同一の行(m)上の前記第2の基準値を選択することによって実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記処理対象の値(Vmn)に対応する復元値を含むよう提供されたセル(CRmn)を通過する複数の行のうちのいくつかが,潜在的に基準値となり得る値を含む場合,
前記潜在的基準値のうちの,前記行のうち第1の行に位置する第1の値と,前記潜在的基準値のうちの,前記行のうち第2の行に位置する第2の値とについて,潜在的な値を2つずつ選択した全ての組み合わせに関して,前記第1の値と,前記第1の値と同一の第3の行に位置する以前に計算された別の復元値との間の差分に等しい変量(DV)を計算し,
ここで前記第3の行は前記第2の行に平行であり,
前記別の値と前記第1の値との間の距離は,前記第2の値と前記処理対象の値との間の距離と同一であり,
選択される基準値は,前記変量が最小となる前記第2の値である
ことを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項3】
好ましくはベース層(MSB)である少なくとも1つの層が存在し,前記層について,前記層の処理対象の初期値(V2y,2z)に関して,前記初期値(Vmn)と,前記処理対象の値と同一の行(m)又は同一の列(n)に属する,以前に計算された復元値に等しい基準値との間の差分(Dmn)を計算することによって,対応する圧縮値(VCnm)が決定されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの層(MS1,MS2,MS3…)が存在し,前記層について,処理対象の初期値(Vmn)に関して,既に処理済みの,前記値(Vmn)の両側に配置された,前記初期値の周辺のペア(Vo2,V42;V2o,V24)を用いて,基準値(Wmn)が計算され,また,以前に復元された値の,前記ペアと同等の周辺のペア(VRo2,VR42;VR2o,VR24)を用いて計算した解凍時の基準値(WRmn)を用いて,復元値(VRmn)が計算されることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの層(MS1,MS2,MS3…)が存在し,前記層について,処理対象の初期値(Vmn)に関して,既に処理済みの,前記値(Vmn)の両側に配置された,前記値の周辺の復元値のペア(VRo2,VR42;VR2o,VR24)を用いて,基準値(Wmn)が計算され,また,以前に復元された値の前記ペアと同一のペア(VRo2,VR42;VR2o,VR24)を用いて計算した解凍時の基準値(WRmn)を用いて,復元値(VRmn)が計算されることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの前記周辺のペア(Vo2,V42;V2o,V24;又は;VRo2,VR42;VR2o,VR24)が存在する場合,基準値(W22,WR22)を計算するために,以前に決定された復元値のうちの対応する復元値(VRo2,VR42;VR2o,VR24)間の差分に等しい変量(DVmn)の絶対値が最小となるようなペアを選択することを特徴とする,請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
前記基準値(Wmn)は,選択された周辺のペアの2つの値(V2o,V24;VR2o,VR24)の間の算術平均であり,場合によっては,前記解凍時の基準値(WRmn)は,前記周辺のペアの値のうちの復元値(VR2o,VR24)間の算術平均であることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項8】
初期原初値(Voo)であって,その圧縮値(VCoo)及び復元値(VRoo)が前記初期原初値(Voo)と等しく,前記原初復元値(VRoo)は他の初期値(Vmn)の処理のための基準値として直接的又は間接的に機能する,初期原初値(Voo)が存在することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
処理対象の初期値(Vmn)と基準値との間の差分に定量化テーブル(TB1,TB2,TS1,TS2)を適用して,前記圧縮値(VCmn)及び前記復元値(VRmn)を計算することを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
使用できる前記定量化テーブル(TB1,TB2,TS1,TS2)は複数存在し,使用される前記定量化テーブルは,以前に計算された復元値を用いて定義されることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項11】
前記定量化テーブルは,前記基準値(WRmn)のみによって選択されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記基準値(WRmn)に閾値が存在し,前記閾値未満では第1の定量化テーブル(TB1,TS1)が適用され,前記閾値を超えると第2の定量化テーブル(TB2,TS2)が適用されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記処理対象の初期値がある層(MSB)に属するか別の層(MS1,MS2,MS3)に属するかに応じて,あるテーブル(TB)又は別のテーブル(TS)が使用されることを特徴とする請求項8又は9記載の方法。
【請求項14】
各前記セル(Cmn,CCmn,CRmn)は,画像の1つの画素を表すことを特徴とする請求項1〜10いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記初期マトリクスは3以上の次元を有することを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は,マトリクス内に配置されたデジタル値の符号化の分野に関し,特にこのマトリクスが画像の画素を表す2次元マトリクスである場合に関する。
【0002】
圧縮方法の主要な制約は,初期デジタルファイルのバイト単位で測定した容量を,上記ファイルの圧縮によって可能な限り低下させること,及び初期ファイルに可能な限り近いファイルを復元することである。
【0003】
特定の圧縮方法により,初期値を正確に復元できる。これはDPCM変調の場合に当てはまる。この方法によると,原初値,即ち初期デジタルファイルの第1の値を保持し,他の全ての値を,初期ファイル内で上記値に先行する値との差分に置換する。上記差分に対応する数は通常,初期値に相当する数よりも小さいため,これによって圧縮されたファイルを得ることができる。初期値を復元するためには,先行する初期値に対応する差分を加算する,即ち連続する複数の値の差分を原初値と合計するだけでよい。従ってこのような圧縮モードは数値の線形シーケンス,即ち単一次元に従って広がるシーケンスに適用される。同一の方法は,複数の行及び列で形成される数値の2次元マトリクスにも適用され,ここではこの圧縮モードをマトリクスの各行に順次適用できる。同一の方法は,マトリクスの次元数に関わらず適用され,ここではこの圧縮モードを,マトリクスの各行(又は対応する次元内の均等物)に適用できる。
【0004】
2つの初期値間の差分を最も大幅に低減することによって,可能な限り高い圧縮比が得られることは認識されている。DPCM変調が導入されたのはこのためである。それにも関わらず,DPCM法によって得られる圧縮率は低いままである。従って,差分のファイルに対して更なる圧縮を適用するというアイデアは魅力的に思われる。しかしながら,この新たな圧縮によって誘発される誤差は,復元中に連続する差分を原初値と合計するのと同時に集積される。ADPCM(適応DPCM)法によると,これらの誤差を予測できると考えられるアルゴリズムによって,これらの値を部分的にオフセットする。この方法は,達成が望まれる圧縮率に対して未だ不満足なものである。
【0005】
更に,静止画像又はビデオ画像を表すマトリクスの場合,各画像の処理は,8×8画素のブロックにおいて,各ブロック内で第1行から第8行まで1行ごとに実行される。このような方法は,復元した画像に縞及び/又はジャギーを発生させる場合がある。
【0006】
本発明は,DPCM法のみの圧縮率よりも大きな圧縮率の複数の利点を併せ持つことができ,その一方で誤差を伝播させることなく差分符号化の利点も保持し,また同時に,従来技術の方法に特有の縞及び/又はジャギーを防止するか又はそのリスクを低減する,単純かつ強力な圧縮方法を提案することを目的としている。
【0007】
初期マトリクスの連続する複数の層から圧縮マトリクスへの符号化,及び復元マトリクスとしての圧縮マトリクスの復元のための,本発明による方法によると:初期マトリクスの各セルは,各初期デジタル値を含み;圧縮マトリクスの各セルは,各初期デジタル値に対応する各圧縮デジタル値を含み;復元マトリクスの各セルは,各初期デジタル値に対応する各復元デジタル値を含み;本方法は,初期ボックスの少なくとも1つの初期値を処理する,即ち圧縮するために,上記初期値の圧縮のための経路として上記ボックスを通過する複数の行の中から,以前に計算された復元値を用いて,変量が最も小さいと推定された行を選択することを特徴とする。
【0008】
上記方法は,少なくとも1つの層を含むことができ,この層について,上記層の処理対象の初期値に関して,上記処理対象の値と,あるボックスの,以前に決定された,隣接する,好ましくは最も近接する復元基準値との間の差分を計算することによって,対応する圧縮値が決定され,上記ボックスは,上記ボックスを通過する複数の行のうちの1つに,上記処理対象の値に対応する復元値を含むよう提供されたものである。上記処理対象の値に対応する復元値を含むよう提供されたセルを通過する複数の行のうちのいくつかが,潜在的に基準値となり得る値を含む場合,上記潜在的基準値のうちの,上記行のうち第1の行に位置する第1の値と,上記潜在的基準値のうちの,上記行のうち第2の行に位置する第2の値とについて,潜在的な値を2つずつ選択した全ての組み合わせに関して,上記第1の値と,上記第1の値と同一の第3の行に位置する以前に計算された別の復元値との間の差分に等しい変量を計算し,ここで上記第3の行は上記第2の行に平行であり,上記別の値と上記第1の値との間の距離は,上記第2の値と上記処理対象の値との間の距離と同一であり,選択される基準値は,上記変量が最小となる上記第2の値である。マトリクスが2次元であり,第2の層の処理対象の値と同一の行に1つ,同一の列にもう1つの少なくとも2つの潜在的な基準値が存在する場合,基準値の選択は:
‐ 処理対象の値と同一の列番号を有する第1の潜在的基準値と,この第1の潜在的基準値と同一の行番号及び第2の潜在的基準値と同一の列インデックスを有する復元値との間の第1の変量を計算し;
‐ 処理対象の値と同一の行インデックスを有する第2の潜在的基準値と,この第2の潜在的基準値と同一の列番号及び上記第1の潜在的基準値と同一の行番号を有する復元値との間の第2の変量を計算し;
‐ 経路が最小の変量を与える基準値を選択する,即ち,第2の変量が第1の変量より小さい絶対値を有する場合は第1の基準値を選択し,又は第1の変量が第2の変量より小さい絶対値を有する場合は第2の基準値を選択する
ことによって実施される。
【0009】
有利には,好ましくはベース層である少なくとも1つの層が存在し,この層について,上記層の処理対象の初期値に関して,この初期値と,上記処理対象の値と同一の行又は同一の列に属する,以前に計算された復元値に等しい基準値との間の差分を計算することによって,対応する圧縮値が決定される。
【0010】
好ましくは,少なくとも1つの層が存在し,この層について,処理対象の初期値に関して,既に処理済みの上記値の両側に配置された初期値の周辺のペアを用いて基準値が計算され,また,以前に復元された値の,上記のものと同等の周辺のペアを用いて計算した解凍時の基準値を用いて,復元値が計算される。あるいは,少なくとも1つの層が存在し,この層について,処理対象の初期値に関して,既に処理済みの,上記値の両側に配置された,上記値の周辺の復元値のペアを用いて,基準値が計算され,また,以前に復元された値の,上記のものと同等のペアを用いて計算した圧縮時の基準値を用いて,復元値が計算される。別の代替案としては,少なくとも1つの層が存在し,この層について,上記層の処理対象の初期値に関して,上記初期値と,上記初期値の周辺の,以前に決定された復元値のペアを用いて決定された基準値との間の差分を計算することによって,対応する圧縮値を決定し,ここで選択される上記周辺のペアは,上記ペアの2つの値,即ち変量が最小となるものである。これらの場合のいずれかにおいて,上記周辺のペアが少なくとも2つ存在する場合,基準値を計算するために,以前に決定された復元値のうちの対応する復元値間の差分に等しい変量の絶対値が最小となるようなペアを選択する。
【0011】
この層の基準値は有利には,選択された周辺のペアの2つの値の間の算術平均であり,場合によっては,解凍時の基準値は,上記周辺のペアの値のうちの復元値間の算術平均である。あるいはこの層に関する基準値は,選択された周辺のペアの初期値に対応する2つの初期値間の算術平均であってよい。
【0012】
本方法によると有利には,初期原初値であって,その圧縮値及び復元値が上記初期原初値と等しく,上記復元された原初値は他の初期値の処理のための基準値として直接的又は間接的に機能する,初期原初値が存在する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると,処理対象の初期値と基準値との間の差分に定量化テーブルを適用して,圧縮値及び復元値を計算する。好ましくは,使用できる定量化テーブルは複数存在し,使用される定量化テーブルは,以前に計算された復元値を用いて定義される。有利には,それ未満では第1の定量化テーブルが適用され,それを超えると第2の定量化テーブルが適用されるような閾値が存在する。好ましくは,処理対象の初期値がある層に属するか別の層に属するかに応じて,あるテーブル又は別のテーブルが使用される。
【0014】
各セルは,画像の画素を表すことができる。
【0015】
添付の図面を参照し,非限定的な実施例を用いて,本発明のいくつかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】画像の右上角を表す初期マトリクス,並びに圧縮マトリクス及び対応する誤差マトリクスの部分図である。
図2】初期マトリクスのセルのうちのいくつかのセルの層を示す。
図3】初期マトリクスのセルのうちのいくつかのセルの層を示す。
図4】初期マトリクスのセルのうちのいくつかのセルの層を示す。
図5】初期マトリクスのセルのうちのいくつかのセルの層を示す。
図6】ベース層の値の圧縮中に使用できる,画像の暗部値に関する定量化テーブルを示す。
図7】ベース層の値の圧縮中に使用できる,画像の明部値に関する定量化テーブルを示す。
図8】副次的な複数の層の値の圧縮中に使用できる,画像の暗部値に関する定量化テーブルを示す。
図9】副次的な複数の層の値の圧縮中に使用できる,画像の明部値に関する定量化テーブルを示す。
図10】本発明による方法で使用されるアルゴリズムを示す。
図11】本発明による方法で使用されるアルゴリズムを示す。
図12】本発明による方法で使用されるアルゴリズムを示す。
図13】本発明による方法で使用されるアルゴリズムを示す。
図14】本発明による方法で使用されるアルゴリズムを示す。
【0017】
本発明による方法を,画像のデジタル圧縮への応用について説明する。この例では,図面において原初画像を初期マトリクスMで示す。このマトリクスは,原初画像が単色であれば単色画像の値のマトリクスであり,又は原初画像が多色であれば,マトリクスのうちの1つはカラー画像の復元を可能とするものである。カラー画像の場合,初期マトリクスMは,RGB表現法による初期画像の場合には各画素に関して赤,緑又は青の光度を呈することができ,YCbCr表現法による初期画像の場合には光度Yからなる値を表すことができる。初期マトリクスMの値は0〜255である。従ってマトリクスは,原画像の表現又は既に比色変換に供された画像の表現となり得る。
【0018】
以下の説明では,「行(line)」は,図面において水平方向に示されている並びを表し,「列(column)」は垂直方向に示されている並びを表す。当然のことながら,これらの線は水平方向であるか垂直方向であるかに関わらず,本発明により一様に(indifferemment)処理を受ける。
【0019】
以下の説明では,初期マトリクスMの各セルCmnは,行番号m及び列番号nによるインデックスであり,同様にインデックスが付された,対応する初期値Vmnを含む。この初期マトリクスMには,圧縮マトリクスMC,及び圧縮マトリクスMCの解凍後の復元マトリクスMRが対応する。初期マトリクスMの各値Vmnには,それぞれ同一のインデックスのセルCCmn,CRmn内の各圧縮値VCmn及び各復元値VRmnが対応する。説明を簡略化するために,本発明による方法を,初期マトリクスMの左上角,従って対応する画像の左上角のみに適用するものとし,以下の説明において説明を簡略化するために,各マトリクスの角は,図示された対応するマトリクスと同一視される。従って図1は,初期マトリクスM,並びに図10〜14を参照して説明する本発明による方法により,初期マトリクスMを用いて得られた圧縮マトリクスMC及び復元マトリクスMRを示す。図1はまた,復元値と初期値との間の差分で構成される誤差マトリクスMEも示す。
【0020】
本発明による方法により,初期マトリクスMの左側の最も高い位置にある原初セルCooが含む原初値Vooを使用した,複数の値からなる連続する層の連続的な符号化が可能となる。所定の層のある値の符号化は,以前に符号化された複数の層,又は上記値自体の層の以前に符号化された複数の値のみに依存する。図示した例では,本方法はベース層及び3つの副次的な層という4つの層を利用する。
【0021】
図2では,ベース層に属するセルの値をマトリクスM内で太字で示す。図3では,第1の副次的な層に属するセルの値をマトリクスM内で太字で示す。図4では,第2の副次的な層に属するセルの値をマトリクスM内で太字で示す。図5では,第3の副次的な層に属するセルの値をマトリクスM内で太字で示す。各層に関して,その層を構成するセルはマトリクス内に規則的に分布していることに留意されたい。
【0022】
図示した例では,ベース層は,第1のロスレス差分符号化アルゴリズムと,これに続く第1の定量化とを用いて符号化される。副次的な層は,第2の予測アルゴリズムと,これに続く第2の定量化とを用いて符号化される。ベース層の値の定量化のためには,2つの定量化テーブルTB1,TB2を使用する。副次的な層の値の定量化のためには,2つの他の定量化テーブルTS1,TS2を使用する。これらのテーブルは図6図9に部分的に示されている。これらの図表はこれらの図に部分的にしか示されていない。特にこれらの図は,場合によって13又は14未満の正の差分に関する値しか示していない。しかしながら,完全なテーブルはより好ましくは負の値も含み,8ビットに亘って符号化された画像の場合は,−255〜+255の値の差分Dの符号化が可能である。
【0023】
各タイプの層に関して,第1のテーブルTB1,TS1は,暗部の値の定量化に割り当てられており,上記値は,255のうち閾値40より下において暗部とみなされる。第2のテーブルTB2,TS2は明部値に割り当てられ,即ち40〜255である。閾値としての値40の選択は任意であり,最暗色をより良好にレンダリングできるよう決定される。第1のテーブルTB1,TS1は,暗部値に対して,それぞれ明部値に対する3(TB2)及び5又は8(TS2)での除算に比べて,ベース層に関して2での除算,副次的な層に関して4での除算という甘い定量化を割り当てる。劣化,即ち復元値と初期値との間の誤差は一般に,明部より暗部において知覚され易い。従って,暗い領域における損失を低くすることができるような構成が特に有利である。本説明の残りの部分では,図11図14を参照して,値が明部とみなされるか暗部とみなされるかを決定する方法を説明する。
【0024】
各テーブルに関して,第1の列は定量化される差分Dを含み,第2の列は各差分Dに関して,対応する圧縮値VCを含み,第3の列は差分Dの対応する復元値を含む。
【0025】
層の数は,ベース層のピッチp,q,即ち第1の層に属するセル間の距離を画定する。図示した例では,行によるピッチpと列によるピッチqとは等しく,また:
p=q=2(i−2)
であり,「i」は本方法の層の数である。
【0026】
ここで説明する例では,4つの層,即ちベース層と3つの副次的な層とが存在し,即ち:
p=q=2(4−2)=4
である。
【0027】
従って,ベース層のセルはインデックスとして:
m=4y,ただしy≧0
n=4z,ただしz≧0
(y,z)≠(0,0)
を有する。
【0028】
従ってベースセルは,初期マトリクスMのセル間でメッシュを構成し,ここから他のセルの圧縮値が計算される。ベースセルの値に対して,全画像に規則的に分布する他のセルの符号化に対してはほとんど又は全く有害ではない符号化を用いることにより,副次的な層の値の比較的高い圧縮が可能なまま,所望の印刷品質を保持できる程度に十分に初期値に近い復元値が復元される。
【0029】
図示した例では,図示されている左上角は,各セルに関して:
m≦4かつn≦4
であるメッシュに対応する。
【0030】
これより,図10図14を参照して,本発明による方法を説明する。これらの図はそれぞれ,特に初期マトリクスMの初期値Vmnのみならず以前の圧縮値の復元値VRによる,圧縮値VCmnの計算,即ち圧縮マトリクスMCの構成におけるステップを示す。図11,12はそれぞれ,ベース層のセルの各値の圧縮を示す。図13,14はそれぞれ,第1の副次的な層のセルの各値の圧縮を示す。
【0031】
本発明による圧縮/復元方法は,図10において識別された原初セルCooの値Vooを,図示した例では:
Voo=VCoo=VRoo=25
のように保持する。
【0032】
復元された原初値VRooは,直接的又は間接的に,他の圧縮値VCmn又は復元値VRmnの計算のための基準となる。
【0033】
ここで図11を参照して,本発明による,初期マトリクスMのセルCo4に対する,より詳細にはこのセルCo4が含む値Vo4=32に対する本方法の適用について説明する。セルCo4はベース層に属する。値Vooの特定の場合を除いて,値V04は最初に圧縮される値である。
【0034】
第1のアルゴリズムに従って,同一の行又は同一の列上の最も近い下位のインデックスを有する,既に計算された基準値に関して,復元値を得る。この場合,基準値は必然的に値VRoo=25である。基準値が40未満であるため,値V04は暗部値として処理され,従って第1のテーブルTB1が使用される。続いて,処理対象の初期値Vo4と基準値VRooとの間の差分Do4=V04−VRoo=+7を計算し,テーブルTB1及び差分D04=+7から,圧縮値VCo4=+3及び復元差分DRo4=+6が演繹される。そして,復元差分DRo4を基準値VRooに加算することにより,復元値VRo4=VRoo+DRo4=25+6=31が得られる。
【0035】
初期マトリクスMのセルC4oの初期値V4oに対して同一の手順を適用する。そして初期値Vo,4z及びV4y,oの全てに対して同一の手順を適用できる。
【0036】
ここで図12を参照して,本発明による,初期マトリクスMのセルC44に対する,より詳細にはこのセルC44が含む値V44=55に対する本方法の適用について説明する。セルC44はベース層に属する。
【0037】
第1のアルゴリズムに従って,同一の行又は同一の列上の最も近い下位のインデックスを有する,既に計算された基準値に関して,復元値を得る。この場合,この定義には2つの値が潜在的に対応し,その一方はボックスCRo4の値VRo4,もう一方はマトリクスMRのボックスCR4oのVR4oである。
【0038】
これら2つの潜在的な基準値間の選択を行うために:
‐ 処理対象の値V44と同一の列インデックスn=4を有する第1の潜在的基準値VRo4と,この第1の潜在的基準値VRo4と同一の行インデックスm=o及び第2の潜在的基準値VR4oと同一の列インデックスn=oを有する復元値VRooとの間の変量DVm=VRo4−VRoo=+6を計算し;
‐ 処理対象の値V44と同一の行インデックスm=4を有する第2の潜在的基準値VR4oと,この第2の潜在的基準値VR4oと同一の列インデックスn=o及び上記第1の潜在的基準値VRo4と同一の行インデックスm=oを有する復元値VRooとの間の変量DVn=VR4o−VRoo=+24を計算し;
‐ マトリクスの移動方向,即ち基準値が選択される方向を,最小の変量に対して平行に決定する。この場合,最小の変量は行インデックスm=oによるDVmであり,従って処理対象の値V44と同一の行インデックスmの基準値が選択され,選択された基準値は復元マトリクスMRのボックスCR4oの値VR4oである。
【0039】
図12の場合,最小の変量はDVm=+6であり,従って基準値は値VR4o=49である。基準値が40より大きいため,値V44は明部値として処理され,従って第2のテーブルTB2が使用される。続いて,処理対象の初期値V44と基準値VR4oとの間の差分D44=V44−VR4o=+6を計算し,テーブルTB2及び差分D44=+6から,圧縮値VC44=+2及び復元差分DR44=+6が演繹される。そして,復元差分DR44を基準値VR4oに加算することにより,復元値VR44=VR4o+DR44=55が得られる。
【0040】
ここで図13図14を参照して,本発明による,初期マトリクスMの副次的な層のセルに対する本方法の適用について説明する。各副次的な層のセルは全て,下位のインデックスを有する層のセルによって(図13の場合),又は下位のインデックスを有する層のセルによってそれ自体がフレーミングされた同一の層のセルによって(図14の場合),フレーミングされる。
【0041】
副次的な層の処理のために,周辺のペアの値の間の平均値を基準値として選択する。周辺のペアは,同一の行m又は同一の列n上に整列された復元マトリクスMR内の処理対象のセルの両側の,2つの最も近接したボックス内に含まれる以前に計算された復元値のペアである。この平均はこの例では最も近くの整数へと丸められる。
【0042】
図13は,初期マトリクスMの第1の副次的な層SM1に属するセルCo2が含む値Vo2=29の処理をより詳細に示す。
【0043】
この場合,同一の行m=0に整列された,処理対象のセルCo2の両側の,2つの最も近接したボックスCoo,Co4が含む,以前に計算された原初値Voo,Vo4の間の平均値Wo2を計算する。列インデックスn=2上には周辺のペアは存在しない。このような理由から,基準値:
Wo2=(Voo+Vo4)/2=28
が演繹される。
【0044】
同様に,ボックスCRoo及びCRo4に含まれる対応する復元値VRooとVRo4との間の,解凍時の,即ち復元中に使用される基準値WRo2を計算し,解凍時の基準値:
WRo2=(VRoo+VR04)/2=28
を得る。
【0045】
圧縮時及び解凍時の基準値が異なる値として得られたため,処理対象の初期値Vo2と基準値Wo2との間の差分Do2=Vo2−Wo2=+1を計算する。解凍時の基準値WRo2が40未満であるため,これは第1のテーブルTS1を用いて暗部値として処理される。テーブルTS1から圧縮値VCo2=0が演繹される。次に復元差分DRo2=+0,そして復元値:
VRo2=WRo2+DRo2=28+0=+28
が得られる。
【0046】
図14は,これもまた初期マトリクスMの第1の副次的な層SM1に属するセルC22が含む値V22=41の処理をより詳細に示す。
【0047】
この場合,復元値の2つの潜在的な周辺ペア(VRo2,VR42)及び(VR2o,VR24)が存在する。図12に関して説明したものと同様の様式で,最小の変量DVを有する以前に計算された近接した復元値によって移動方向をまず決定する。副次的な層の場合,値が最小の変量DVを有する周辺ペアが選択される。この場合は:
DVm=VR24−VR2o=+10,及び
DVn=VR24−VRo2=+24
であり,DVmは行インデックスm=2による変量,DVnは列インデックスn=2による変量を示す。
【0048】
行による変量DVmが最小であるため,解凍時の基準値WR22を計算するために選択されるのは,処理対象の値と同一の行インデックスm=2に位置する値の周辺ペア(VR2o,VR24)であり:
WR22=(VR2o+VR24)/2=(33+43)/2=38
となる。
【0049】
次に,同等のセルに位置する原初値を用いて,圧縮時の基準値W22:
W22=(V2o+V24)/2=(33+42)/2=37.5,これを丸めて38
を計算する。
【0050】
図13に関して上述した場合と同様,処理対象の初期値V22と基準値W22との間の差分D22=V22−W22=+3を計算する。解凍時の基準値WR22が40未満であるため,これは第1のテーブルTS1を用いて暗部値として処理される。テーブルTS1から圧縮値VC22=+1が演繹される。次に復元差分DR22=+4,そして復元値:
VR22=WR22+DR22=38+4=+42
が得られる。
【0051】
図13図14に関して上述したものと同一の手順を,副次的な層の値それぞれに適用する。
【0052】
各復元対象の値に関して,基準値及び明度条件は,復元マトリクスMRの以前の復元値VRを用いて決定されることに留意されたい。換言すると,後続の復元値を計算するため,場合によっては各復元値に関する解凍の移動方向を決定するため,及び選択された閾値に応じて使用される定量化テーブルを決定するために,復元値を使用する。従って圧縮マトリクスMCは,復元に必要な情報を全て内包している。
【0053】
更に,特に図2,3に示すように,圧縮を層ごとに順次実施できる。従って,ある層の各値が圧縮されるとすぐに,これらを例えばサブマトリクスSMCoの形態で,これらを復元するためのデバイス,例えばコンピュータスクリーンに送信できる。これにより,鮮明度は比較的低いものの,全ての層が処理されるのを待つことなく画像全体を表示できる。これにより,静止画像を観たいユーザは処理がより高速であるという印象を得ることができ,ビデオを観るユーザにとっては更なる滑らかさが得られる。特にストリーミングとして閲覧されるビデオの場合において,特にある画像を次の画像の表示前に完全に処理するには帯域幅が不十分となることがあるような場合,上記により,H264等の特定の符号化方法におけるような,処理によって現れるジャギー効果が回避される。
【0054】
このような構成はまた,有利にはビデオゲーム,特に「オンライン」でプレイされるゲームに使用でき,複数のセッションを高い頻度で迅速に順次処理できる。画像の1つの領域しか処理できないか又はアクションが遅延すると,プレイヤーの楽しみが損なわれ,更にはプレイヤーのアクションの成功が妨げられることになる。画像内に分布する連続する層を処理し,各層を処理が済み次第伝送して表示することにより,これらの欠点を防止できる。
【0055】
図13に関して値Vo2の,又は図14に関して値V22の処理によって示した場合において,代替案として,同一のインデックスmnの復元値の平均を用いて対応する圧縮値を計算でき,また復元値はこれら同じ値を使用する。従って本発明のこの実施形態では
V02に関して:
Wo2=WR02=(VRoo+VRo4)/2=(25+31)/2=28
Do2=Vo2−Wo2=+1,かつDRo2=0
VRo2=WRo2+DRo2=28+0=+28
及びV22に関して:
W22=WR22=(VR2o+VR24)/2=(33+43)/2=38
D22=V22−W22=+3かつDR22=+4
VR22=WR22+DR22=38+4=+42
となり,値Wo2,W22は,図13図14に関して上述したように計算される。
【0056】
当然のことながら,本発明は上述の例に限定されるものではない。
【0057】
従って原初セルは,初期マトリクスの左上角にあるものではなく,初期マトリクスのいずれのセルとすることができ,行及び/又は列番号は負の値を取ることができ,これによって本発明による圧縮原理が影響を受けることはない。
【0058】
更に,上述の例は各セルが画像の画素を表すマトリクスの圧縮について説明しているが,本発明による圧縮方法は,特に例えば統計データ等の大量のデータに対応するマトリクスといった,いずれのタイプのマトリクスにも適用可能である。同様に,上述の例は一方が行,もう一方が列によって表される2次元マトリクスに対応するが,本発明はより高い次元のマトリクスにも適用可能であり,特にビデオは,第3の次元が時間を表す3次元マトリクスで表すことができる。更にこのような圧縮方法は,2次元以上のマトリクスの形態で表すことができる例えば気象データ等の大量のデータの処理に使用するのに適している。
【0059】
図示した例では,ベース層は固有の定量化テーブルを有し,副次的な層の圧縮に使用される定量化テーブルは全ての副次的な層に関して同一である。当然のことながらこのような例は限定的なものではなく,各副次的な層に好適な複数の定量化テーブルを提供すること,又はベース層を含む全ての層に対して有効な単一の定量化テーブルを提供することさえも可能である。
【0060】
各層の初期値を処理する順序は変更できる。連続する行若しくは列ごとに処理することもでき,又は別の順序で処理することもできる。ある層の処理を,先行する層の処理が終了する前に開始することも考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14