【文献】
Sang et al.,Structural and stimulated emission characteristics of diameter-controlled ZnO nanowires using buffer structure,J.Phys. D: Appl. Phys.,UK,IOP Publishing Ltd,2009年10月26日,Vol.42,pp.225403
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ナノワイヤ(3)の成長ステップは、Gaを注入し、窒化ガリウムナノワイヤを形成するステップを含み、前記ナノワイヤ(3)は、前記核生成層(2)の成長表面から延び出す請求項1乃至6何れか1項記載の方法。
前記基板(1)は、シリコンであり、前記遷移金属層を堆積させるステップは、前記堆積される遷移金属層への前記シリコンの相互拡散が10nmより小さくなるように、及び/又は少なくとも2nmの前記遷移金属層の非珪化スライスが残存するように構成される請求項1乃至7何れか1項記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、1つ以上のナノワイヤの核生成層の結晶方位を改善するソリューションを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明に係る少なくとも1つの半導体ナノワイヤを成長させる方法は、基板上にナノワイヤの成長のための核生成層を形成するステップと、ナノワイヤを成長させるステップとを有し、核生成層を形成するステップは、基板上にTi、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Taから選択される遷移金属の層を堆積させるステップと、遷移金属の層の少なくとも一部を窒化し、ナノワイヤを成長させることを意図した表面を有する遷移金属窒化物層を形成するステップとを含む。
【0009】
好ましくは、遷移金属層の窒化のステップが実行されることによって、遷移金属層の結晶構造の少なくとも一部が、面心立方格子構造、特に方向[111]、又は六方格子構造、特に方向[0001]、又は遷移金属窒化物層に関連する軸「C」の方向に沿って配向するように変更される。
【0010】
特定の具体例においては、窒化ステップは、第1の流量で窒化ガスを注入することによって少なくとも部分的に第1の温度で実行される第1の窒化サブステップと、第1の流量と異なる又は等しい第2の流量で窒化ガスを注入し、少なくとも部分的に第1の温度以下の第2の温度で実行される第2の窒化サブステップとを含む。注入される窒化ガスは、例えば、アンモニアであり、第1の温度は、1000℃乃至1050℃、特に1050℃であり、対応する窒化チャンバの総容積をリットルで表した値をVとして、第1の流量は、500*V/8sccm乃至2500*V/8sccm、特に1600*V/8sccmであり、第2の温度は、950℃乃至1050℃、特に1000℃であり、第2の流量は、500*V/8sccm乃至2500*V/8sccm、特に500*V/8sccmである。
【0011】
これに代えて、窒化ステップは、第1の流量で窒化ガスを注入することによって少なくとも部分的に第1の温度で実行される第1の窒化サブステップと、第1の流量と異なる又は等しい第2の流量で窒化ガスを注入し、少なくとも部分的に第1の温度以上の第2の温度で実行される第2の窒化サブステップとを含んでいてもよい。
【0012】
包括的に言えば、第1の温度は第2の温度より低くても高くても等しくてもよく、好ましくは、第2の温度より低い又は高い。
【0013】
一具体例においては、窒化ステップは、50〜800mbar、特に、100mbarの圧力に調整された窒化チャンバにおいて実行してもよい。
【0014】
ナノワイヤの成長ステップは、例えば、第2の窒化サブステップの後に実行してもよく、第2の窒化サブステップの間に開始してもよい。
【0015】
ナノワイヤの成長ステップは、好ましくは、Gaを注入し、窒化ガリウムナノワイヤを形成するステップを含み、ナノワイヤは、核生成層の成長表面から延び出す。
【0016】
好ましくは、基板は、シリコンであり、遷移金属層を堆積させるステップは、堆積される遷移金属層へのシリコンの相互拡散が10nmより小さくなるように、及び/又は少なくとも2nmの遷移金属層の非珪化スライスが残存するように構成される。
【0017】
堆積される遷移金属がCr、V及びTiから選択される場合、遷移金属は、100℃未満の温度で堆積される。
【0018】
好ましくは、基板は、シリコン系の基板であり、遷移金属層を堆積させるステップは、堆積させる遷移金属層の厚さを決定する予備的ステップを含み、予備的ステップは、使用される遷移金属及び堆積温度の関数として、遷移金属層の将来の堆積の間の遷移金属層へのシリコンの第1の拡散距離を判定するステップと、将来の遷移金属層の窒化のステップの間の遷移金属層へのシリコンの第2の拡散距離を判定するステップとを含み、堆積される遷移金属窒化物層の厚さは、遷移金属層の所望の厚さと、判定された第1及び第2の拡散距離から将来の遷移金属層に生じる遷移金属の珪化スライスの厚さとに基づいて決定される。
【0019】
成長方法の一具体例においては、方法は、1〜100mΩ・cmの間の抵抗率を有する基板を準備するステップを含む。
【0020】
好ましくは、成長方法は、遷移金属層を堆積させる前に、遷移金属層が堆積される基板の表面を脱酸するステップを有する。
【0021】
更に、遷移金属層の堆積ステップ及び窒化ステップは、好ましくは、成長ステップの前に実行される。
【0022】
更に、本発明に係る光電子デバイスを製造する方法は、上述の成長方法を実行するステップと、基板の反対側のナノワイヤの少なくとも1つの端部に第1のタイプの電気的ドーピングを行うステップと、基板の反対側のナノワイヤの端部に、第1のタイプとは逆の第2のタイプに電気的にドーピングされた要素を形成するステップとを有する。更に、この方法は、ナノワイヤと、電気的にドーピングされた要素との間の界面に位置する量子井戸を形成するステップを有していてもよい。
【0023】
他の利点及び特徴は、本発明の特定の実施形態の説明によって明らかとなり、これらの実施形態は、非限定的な具体例として提示され、添付の図面に表される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に説明する方法は、まず、遷移金属の堆積、及びこれに続くこの遷移金属の少なくとも部分的な窒化といった2つのステップで核生成層が準備される点が従来の技術とは異なる。この特定の順序のステップによって、核生成層は、ナノワイヤを成長させるように意図されたより良好な表面を有することができる。
【0026】
以下の説明において、用語「マイクロワイヤ」又は「ナノワイヤ」は、好ましくは、長手方向の寸法が断面方向の少なくとも5倍、更に好ましくは、10倍の細長い形状の三次元構造を意味する。断面寸法は、5nm〜2.5μmである。幾つかの実施形態では、断面寸法は、約1μm、好ましくは、100〜300nmである。幾つかの実施形態では、各ナノワイヤの高さは、500nm以上、好ましくは、1〜50μmである。
【0027】
図1に示すように、少なくとも1つの半導体ナノワイヤを成長させる方法は、基板1上に、ナノワイヤを成長させるための核生成層2を形成するステップと、ナノワイヤ3(
図2)を成長させるステップとを有する。ナノワイヤ3の成長ステップでは、ナノワイヤ3が核生成層2から成長することができる。
【0028】
以下、ナノワイヤの成長について説明するが、成長方法は、この単一の具体例に制限されず、成長ステップの間、核生成層2を用いて、複数のナノワイヤを並べて成長させることができる。
【0029】
先に説明した通り、核生成層2の主な機能は、ナノワイヤ3の核生成を促進することである。更にこの核生成層2は、好ましくは、(基板がシリコンから形成され、ナノワイヤが窒化ガリウムから形成される場合)成長の間のあらゆる劣化から基板1を保護し、及び/又は(500℃を超える温度を用いる場合)高温における良好な安定性を保ち、及び/又は特に、各ナノワイヤ3を分極して、基板1に電流を流すことが望まれる場合、良好な導電性を実現するように選択される。
【0030】
基板1については、方法は、以下に限定されるわけではないが、1〜100mΩ.cmの間の抵抗率を有する基板を準備するステップを含む。この抵抗率は、上述したように、核生成層2に亘ってナノワイヤを分極することが望ましい場合に有利である。
【0031】
まず、ワイヤの大部分が基板1に実質的に垂直(
図2に示す軸Cの方向)に、この核生成層2から成長する場合、この核生成層2によって、1つ以上のナノワイヤ3の成長を促進することができる。「実質的に垂直」とは、正確な垂直から、10°前後の誤差を含む。配向誤差が10°前後までであれば、より完全なデバイスを準備するための後続する技術的ステップを実行することができる。
【0032】
したがって、核生成層の結晶方位をナノワイヤ3の成長に適応化する必要がある。更に、この結晶方位が高密度、すなわち、優勢である場合、これらのナノワイヤ3の密度を高めることができる。
【0033】
このため、核生成層を形成するステップは、基板1上にTi(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Hf(ハフニウム)及びTa(タンタル)から選択される遷移金属の層4を堆積させるステップと、これに続いて、遷移金属層の少なくとも一部を窒化して、ナノワイヤ3を成長させるために意図された表面を有する遷移金属窒化物(堆積された初期の遷移金属層に応じて、それぞれ、窒化チタン、窒化バナジウム、窒化クロム、窒化ジルコニウム、窒化ニオブ、窒化モリブデン、窒化ハフニウム又は窒化タンタル)の層を形成するステップとを有する。成長を最適化するために、この遷移金属窒化物層は、最小2nm、好ましくは、2〜50nmの厚さを有することができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、遷移金属層の堆積は、室温から400℃の間の温度で行われる。この温度を超えると、ナノワイヤ成長収量が低下するおそれがある。
【0035】
異なる遷移金属、特にHf、Nb及びTaに適用可能な一具体例では、堆積される遷移金属層は、20nm〜数百ナノメートル(例えば、200nm)の厚さに形成してもよい。他の遷移金属の場合、好ましい厚さは、例えば、20nmである。堆積は、例えば、金属ターゲットに定常電流を流して、金属ターゲットからの物理蒸着(physical vapor deposition:PVD)によって行ってもよい。この遷移金属の堆積のステップの間、基板1は、室温で維持してもよい。本明細書の全体に亘って、「室温」とは、好ましくは、20〜50℃の温度を意味する。遷移金属の堆積の間のPVDチャンバの圧力は、3×10
3〜6×10
3mbarであってもよい。
【0036】
様々な試験により、この2つのステップによって形成された核生成層2により、ナノワイヤの成長が促進されたことを観察できた。
【0037】
実際、このようにして形成された遷移金属窒化物層は、結晶方位がナノワイヤの成長により好ましい成長サイト(growth sites)を有することが判明した。これらの成長サイトは、従来に比べて、数が多く、より良好に分布しており、特に、本発明の方法に基づいて準備された窒化チタン核生成層を、従来の単一ステップで堆積された窒化チタン層と比べることによってこの傾向が確認された。更に、これによって、ガリウム系のナノワイヤの成長の間に金属ガリウム合金の形成を回避することができる。すなわち、ナノワイヤ成長ステップの前に、遷移金属層の堆積ステップ及び窒化ステップを実行することが有益であることがわかった。
【0038】
更に、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Taといった遷移金属の1つを選択して、遷移金属の窒化後に、核生成層2を形成することによって、金属の導電性と、セラミックの耐熱性(refractory nature)とを組み合わせることができる。原理的に相反するこれらの特性は、上述した遷移金属によって実現される。実際、耐熱性は、融点が約1800℃以上の材料によって実現され、上述した遷移金属の窒化物は、この特性を有する。タングステンは、クロム及びモリブデンと同じ族に属するが、高温下でのタングステン窒化物の安定性は不十分であり、ナノワイヤを効率的に成長させることができないため、候補から外してある。
【0039】
また、このようにして得られた遷移金属窒化物層及び使用される遷移金属のために、これまで核生成層として広く用いられているAlN系の核生成層に比べて、バンドギャップを小さくすることができる。すなわち、基板1がシリコン系である場合、本発明に基づく核生成層2と基板の界面に生じる電位障壁は、AlNを使用した場合に比べて越えやすく、このため、基板1から1つ以上のナノワイヤを分極することが望まれる場合に、有利である。
【0040】
以上から、核生成層2、特にナノワイヤを成長させることを意図した表面の結晶方位は、ナノワイヤの成長を促進する目的において重要であると言える。したがって、遷移金属層の堆積のステップは、窒化ステップの前に、遷移金属層が少なくとも部分的に立方格子(CC)又は六方格子の結晶構造(これらの2つの結晶構造は、上述した金属の結晶構造である。)を有するように実行することが好ましい。
【0041】
本明細書において、ある結晶構造が優勢であるとは、その構造が他の個々の結晶構造より多くの部分に出現することを意味する。
【0042】
通常、上述した遷移金属については、Cr、Mo、V、Nb、Taから選択される遷移金属の層を堆積させることによって、自然に立方格子(CC)構造を得ることができ、Ti、Zr、Hfから選択される遷移金属の層を堆積させることによって、自然に六方格子構造を得ることができる。
【0043】
上述した特定の結晶構造によって、遷移金属層又は少なくとも遷移金属層の一部の窒化ステップを実行して、遷移金属層の少なくとも一部の結晶構造を、面心立方格子構造、特に方向[111]に変更し、又は六方格子構造、特に方向[0001]に変更し、又は遷移金属窒化物層に関連する軸「C」の方向に沿って変更することができる。
【0044】
図3及び
図4は、それぞれ、存在する結晶相又は構造を特定するためのX線回折スペクトルを示している。
図3に示すように、窒化前のNb系遷移金属層の結晶構造を表す曲線C1については、実際に、Nbの立方格子(cc)構造の配向[110]が優勢であり、遷移金属窒化物層NbNの六方格子構造を表す曲線C2については、実際に、六方格子構造の配向[0004]及びその高調波配向(orientation harmonic)[0008]、すなわち、[0001]と同様の配向が優勢である。また、
図4に示すように、窒化前のHf系遷移金属層の六方格子構造を表す曲線C3については、実際に、六方格子構造の配向[0002]が優勢であり、遷移金属窒化物層HfNの面心立方格子構造を表す曲線C4については、実際に、面心立方格子構造の配向[111]が優勢である。
図3及び
図4については、優勢を視覚化するために、ピークだけが重要であり、曲線の他の部分は、実験用のデバイス及びサンプルに起因する連続的なバックグラウンドを表している。当業者は、他の遷移金属についても同様の曲線を作成でき、結論は、実質的に同じであり、例えば、窒化タンタルの場合、窒化タンタルの面心立方格子構造において配向[111]が優勢となる。
【0045】
特に、
図5に示す特定の具体例では、窒化ステップは、第1の流量で窒化ガスを注入することによって、少なくとも部分的に第1の温度で実行される第1の窒化サブステップEn1と、第2の流量で窒化ガスを注入することによって、少なくとも部分的に、第1の温度以下の第2の温度で実行される第2の窒化サブステップEn2とを有し、第2の流量は、第1の流量と異なっていても、異なっていなくてもよい(すなわち、第1の流量は、第2の流量と等しくてもよい)。これによって、核生成層の結晶方位を最適化することができる。これらの2回の窒化サブステップは、順次的に実行されることは言うまでもない。具体的には、第1のサブステップEn1によって、急速な窒化を行うことができ、第2のサブステップEn2によって、アニーリングを行い、遷移金属の窒化物相を安定させることができる。これらの2つのサブステップEn1、En2の後に、遷移金属窒化物層は、化学的及び熱的に安定し、(特に、この基板がシリコンから形成されている場合)ナノワイヤの成長の間、基板の保護層として機能できる。
【0046】
注入ガスは、アンモニアNH
3又は二窒素N
2であってもよい。NH
3は、遷移金属層を速やかに窒化できるため、好ましい。実際、窒化力は、NH
3の形式の方がN
2より優れている。特に、遷移金属が珪化物に変化する可能性がある場合、この速やかな窒化が重要であることがあり、この点については、後述する。
【0047】
注入される窒化ガスがアンモニアである特定の具体例では、第1の温度は、1000〜1050℃、例えば、1050℃であり、第1の流量は、500〜2500sccm(sccmは、「立方センチメートル毎分」を意味する)、例えば、1600sccmであり第2の温度は、950〜1050℃、例えば、1000℃であり、第2の流量は、500〜2500sccm、例えば、500sccmである。
【0048】
上述した流量は、使用される窒化チャンバの容積、すなわち、上述した具体例では、8リットルの気体(例えば、N
2+NH
3)の総体積に対応している。容積が異なるチャンバについては、流量を適応化する必要がある(例えば、18リットルのチャンバの場合、第1の流量は、4000sccm、第2の流量は、1200sccmにする必要がある)。換言すれば、第1の流量は、500*V/8〜2500*V/8sccm、特に、1600*V/8sccmとし、第2の流量は、500*V/8〜2500*V/8sccm、特に、500*V/8sccmとする。Vは、対応する窒化チャンバの総容積をリットルで表した値である。「対応する窒化チャンバ」とは、遷移金属層の窒化が行われるチャンバを意味する。
【0049】
包括的に言えば、窒化ステップは、50〜800mbar、特に、100mbarの圧力に調整された窒化チャンバにおいて実行できる。
【0050】
図5は、時間の関数として窒化チャンバ内の温度の変化を表すことによって、窒化ステップを詳細に示している。第1の時間T1において、例えば、2℃/sの速度で、窒化チャンバ内の温度を1050℃のステージまで徐々に上昇させる。上述したNH
3を用いた第1の窒化サブステップEn1は、温度が200℃に達すると開始される。この第1のサブステップの間、NH
3の流量は、1600sccmで一定に維持する。第1のサブステップの少なくとも一部に重なる第2の時間T2では、5〜15分間、温度を1050℃に維持する。第3の時間T3では、第1のサブステップEn1を続けながら、60秒に亘って、温度を1050℃から1000℃に下げる。第4の時間T4では、第2のサブステップEn2を開始して、5〜15分間、窒化チャンバの温度を1000℃に維持する。第5の時間T5では、窒化チャンバへの熱の供給を停止し、これにより窒化チャンバの温度は、低下して室温に戻る。T5の長さは、窒化チャンバの熱慣性に対応していてもよい。第2の窒化サブステップEn2は、第5の時間T5の間、所与の時間に亘って継続してもよい。第5の時間T5は、チャンバの加熱の停止及びこれに続く温度の低下に対応していてもよく、また、窒化のために用いられたチャンバがナノワイヤの合成用のMOCVDチャンバである場合、ナノワイヤの成長のステップに対応していてもよい。特定の具体例では、ナノワイヤ3の成長のステップは、第2の窒化サブステップEn2の後に実行され、又は第2の窒化サブステップEn2の間に開始される。
【0051】
包括的に言えば、少なくとも1つのナノワイヤ3を成長させるステップは、ナノワイヤ3を少なくとも部分的に形成することを意図した材料を注入するステップを含むことができる。具体的には、窒化ガリウムナノワイヤ3を形成するためには、Gaを注入し、ナノワイヤ3は、核生成層2の成長表面から延び出る。窒化ガリウムナノワイヤを形成する場合、Gaの注入は、NH
3又はN
2の注入に伴って行ってもよい。GaNの合成は、通常、GaとNH
3の反応であり、使用されるN
2との反応ではない。ナノワイヤの成長に適応化されたチャンバにGaを注入してもよい。
【0052】
窒化ガリウムを用いて少なくとも1つのナノワイヤ3を形成することには、少なくとも2つの利点がある。
【0053】
第1の利点は、遷移金属窒化物層(したがって、核生成層2)の面心立方格子構造又は六方格子構造が、窒化ガリウムのエピタキシーにとって好ましいという点である。窒化ガリウムから形成されるナノワイヤの結晶構造は、ウルツ鉱型の六方格子構造であり、
図2の軸Cに沿って(又は軸[0001]に沿って)配向され、上述したように、核生成層2から容易に核生成を行うことができる。これに代えてZnO、InN又はSiCによってナノワイヤを形成してもよい。
【0054】
第2の利点は、窒化ガリウムが、電気光学デバイスを形成する材料として良好な候補であるという点である。具体的には、窒化ガリウムを材料とするナノワイヤ2によって、光ナノエミッタ(light nanoemitter)を形成することができる。ナノワイヤの周囲にシェル形式で、又はナノワイヤの軸に連続させて(軸構造)、GaN系の量子井戸を追加してもよい。これらのGaN系の量子井戸の構成に応じて、光放出のスペクトル領域は、紫外から赤外線に至る広い波長範囲をカバーすることができる。
【0055】
最適化されたナノワイヤ成長を達成するために、遷移金属層の珪化/珪化物形成を僅かにすることが望ましい。遷移金属層の珪化は、基板1がシリコン系である場合に、2つのケースで生じ、すなわち、遷移金属の堆積のステップの間、及び/又は核生成層2を画定するために堆積された遷移金属層を窒化することが望まれる場合に生じる。
【0056】
第1のケースは、以下のように説明できる。実際、高温(約1000℃)では、珪化物MSi
2の形成が促進される(Mは、使用される遷移金属である)。これらの珪化物のうち、V族の遷移金属の珪化物(VSi
2、NbSi
2、TaSi
2)及び珪化クロム(CrSi
2)のみが六方格子構造の結晶相を形成し、これは、(軸cに沿って組織化されると)GaNナノワイヤの成長のために潜在的に有利である。しかしながら、これらの六方格子とGaN(3.19Å)との間の格子定数「a」の不一致は、非常に大きく、VSi
2、NbSi
2、TaSi
2及びCrSi
2について、それぞれ−30%、−36%、−33%及び−25%であり、GaNのエピタキシーは、生じ難い。通常、六方格子構造の化合物VSi
2、NbSi
2、TaSi
2及びCrSi
2の格子定数「a」は、それぞれ、4.57Å、4.97Å、4.78Å及び4.28Åである。したがって、サブファミリは、Ti、V、Cr、Nb、Ta、Moから形成してもよく、これらは、Siとの相互拡散係数が高い金属であり、これは、新しいMSi
2相が急速に成長することを意味する。例えば、Crの場合、850℃におけるSiとの相互拡散係数は、1.5×10−7cm
2/sであり、すなわち、15分間の拡散距離が約11.6μmであり、一方、約100℃では、この拡散距離は、15分間で約80nmにまで減少する。上述した理由から、堆積される遷移金属がCr、V及びTiから選択されている場合、100℃未満の温度で堆積させて、基板に由来するシリコンの拡散を制限することが望ましい。Nbの場合、15分間でのNb−Si相互拡散長は、800℃で12nm、700℃で2nmである。したがって、Nbは、珪化を排除又は抑制しながら、700〜750℃までの高温で堆積させることができる。したがって、Siとの相互拡散係数がNbより小さい他の材料であるZr、Hf及びTaは、室温から750〜800℃までの温度で、容易に堆積させることができる。珪化が過剰に行われると、十分な厚さの遷移金属窒化物層を得ることができなくなる。換言すれば、包括的には、基板がシリコンである場合、遷移金属層を堆積するステップは、堆積される遷移金属層へのシリコンの相互拡散が10nmより小さくなり、及び/又は珪化していない遷移金属層のスライスが少なくとも2nmは保存されるように構成される。実際、この非珪化スライスは、基板の反対側にあり、遷移金属の窒化物層を形成するためのものである。
図6の符合4は、最初に基板1に堆積された遷移金属層を示し、層4の堆積の間この層のスライス5が珪化され、層4の部分6だけが純粋な遷移金属で構成され、この部分6が、窒化による核生成層の形成に寄与する。
【0057】
第2のケースでは、窒化ステップは、数分間、1050℃で行う必要がある。このため、窒化ガスとしては、高い窒化力によって、窒化反応率が珪化反応率より高いNH
3を使用することが好ましい。実際、理想的には、窒化ステップの間、堆積された遷移金属層4内に、好ましくは、2〜50nmの厚さの少なくとも1つの遷移金属窒化物層2(すなわち、核生成層)を形成することが望まれる(
図7)。この遷移金属窒化物層の領域内に新たな珪化化合物が大量に生成されることを防ぐため、窒化ステップは、最適化される。実際には、
図7に示すように、窒化ステップの後に、遷移金属を堆積させることによって形成する必要がある層4は、遷移金属の堆積の間に生じる第1の遷移金属珪化物層5と、第1の遷移金属珪化物層5に連続し、窒化ステップの間に生じる第2の遷移金属珪化物層7と、
図6の層6の窒化によって得られる核生成層2とを含む。オプションとして、純粋な遷移金属の残りの層8が層2と層7との間に挟まれたまま残存することもあり、これは、部分的に、最初に堆積された遷移金属層の厚さによる。
【0058】
第1及び第2のケースの説明から、基板1がシリコンを材料としている場合、当業者は、所定の厚さの遷移金属窒化物層を実現するために、堆積される遷移金属のタイプ、遷移金属堆積の温度、遷移金属堆積の期間及び窒化ステップの期間の関数として、堆積する必要がある遷移金属層の厚さを決定できる。換言すれば、シリコン系基板の場合、遷移金属層4の堆積ステップは、堆積させる遷移金属層4の厚さを決定する予備的ステップを含んでいてもよく、この厚さを決定するステップは、使用される遷移金属及び堆積温度の関数として、遷移金属層の将来の堆積の間のシリコンの遷移金属層4への第1の拡散距離を判定するステップと、将来の遷移金属層4の窒化のステップの間のシリコンの遷移金属層4への第2の拡散距離を判定するステップとを含む。堆積させる遷移金属層4の厚さは、遷移金属窒化物層の所望の厚さと、判定された第1及び第2の拡散距離から、将来、遷移金属層4に生じる遷移金属の珪化スライスの厚さとの関数である。
【0059】
基板1は、通常、遷移金属層4の堆積の前に準備することが好ましい。このために、方法は、遷移金属層の堆積のステップの前に遷移金属層4が堆積される予定の基板1の表面を脱酸するステップを有していてもよい。具体的には、このシリコン表面の脱酸のステップは、化学的(HFバス)又は物理的(基板1にバイアス張力を印加することによる表面のエッチング)に実行してもよい。これによって、特に、核生成層へ及び窒化ガリウムナノワイヤへの電子注入にとっての「絶縁性」バリアとなる生来的な酸化シリコン(SiO2)層を除去することができる。
【0060】
好ましくは、光電子デバイス(optoelectronic device)を形成するコンテキストにおいて、上述した成長方法を用いることができる。
【0061】
このように、本発明は、光電子デバイス(
図8)を製造する方法にも関連する。このような製造方法は、特にその様々な具体例又は実施形態において説明したように、成長方法を実現するステップを含む。更に、製造方法は、基板1の反対側のナノワイヤ3の少なくとも1つの端部3aに第1のタイプの電気ドーピングを行うステップを含む。この第1のタイプとは、好ましくは、n型のドーピングである。また、方法は、基板1の反対側のナノワイヤ3の端部3aに、第1のタイプとは逆の第2のタイプに電気的にドーピングされた要素9を形成するステップを含む。このドーピングの第2のタイプは、好ましくは、p型である。このように、ナノワイヤ3の端部3aと、この端部3aに形成されたドーピングされた要素9とは、光を出射するように意図されたダイオード接合を形成できる。この接合は、好ましくは、ホモ接合であり、すなわち、ナノワイヤ3及び関連するドーピングされた要素9は、同じ材料、例えば、窒化ガリウムに基づいている。また、ヘテロ接合を準備することもでき、例えば、ZnOをn型ドープナノワイヤの形式で使用し、ZnOに基づく量子井戸を追加し、電気的にp型ドーピングされたGaNで構成された要素9を使用することもできる。実際には、現在の技術では、ZnOをp型ドーピングすることは難しい。
【0062】
図8は、この製造方法によって得られる光電子デバイスの特定の具体例を示している。このように、基板1は、シリコンから形成され、導電性を有するように構成され(例えば、n型ドーピングされ)、基板1の一方の面は、核生成層2の向きに配向される。この核生成層2から、ナノワイヤ3が延び出る。ここで、「延び出る」とは、ナノワイヤ3が、長手方向の2つの端部3a、3bによって画定される長さを有し、長手方向の第1の端部3bが核生成層2に接触し、長手方向の第2の端部3aが核生成層2から遠位にあることを意味する。ナノワイヤ3の第2の端部3aとの接合を形成するようにドーピングされた要素9は、第2の端部3aにおいて、ナノワイヤ3を少なくとも部分的に覆っていてもよい。好ましくは、ドーピングされた要素9は、ナノワイヤ3の端部3aの周囲にシースを形成する。
【0063】
更に、光電子デバイスのコンテキストでは、ナノワイヤ3の発光効率を高めるために、閉じ込めゾーンを形成することを意図する量子井戸を追加することが有益であることがある。したがって、光電子デバイスを製造するための方法は、ナノワイヤ3と、第2のタイプに電気的にドーピングされた要素9との間の界面に位置する量子井戸を形成するステップを有していてもよい。量子井戸は、ナノワイヤの周囲のシェルの形式で堆積させてもよい。量子井戸を構成する材料の構成は、選択された波長での発光が実現するように調整される。量子井戸は、ナノワイヤと要素9との間に挟まれた更なる層に形成される。
【0064】
好ましくは、同じ核生成表面に関連するナノワイヤは、核生成層2を形成する窒化層によって、同時に分極される。抵抗が小さいシリコン基板1を用いることによって、様々な遷移金属及び窒化物の電気抵抗が適切になり、公称値に一致するようになる。ここに説明するような遷移金属窒化物を用いる利点は、効果的に核生成を行い、続いてGaNナノワイヤを成長させることができるという点であるが、これらの材料の他の重要な利点は、これらの材料が電流の流路に(AlNで生じるような)電位障壁を発生させないという点である。
【0065】
また、本発明は、上述した方法の何れかによって得られるあらゆるデバイスに関連し、好ましくは、核生成層がチタンを含まないあらゆるデバイスに関連する。
【0066】
好ましくは、基板の支配的な結晶構造は、少なくとも基板と遷移金属層との間の界面における配向[100]である。これによって、特に、製造コストが低下する。
【0067】
図5の実施形態の変形例では、窒化ステップは、第1の流量で窒化ガスを注入することによって、少なくとも部分的に第1の温度で実行される第1の窒化サブステップEn1と、第2の流量で窒化ガスを注入することによって、少なくとも部分的に、第1の温度以上の第2の温度で実行される第2の窒化サブステップEn2とを有し、第2の流量は、第1の流量と異なっていても、異なっていなくてもよい(すなわち、第1の流量は、第2の流量と等しくてもよい)。
【0068】
図5の変形例を
図9に示す。
図9に示すように、温度T1は、400〜1050℃(又は1400℃)であり、特に500〜800℃であり、好ましくは、600℃である。
【0069】
第1のサブステップEn1は、処理を明瞭するために、2つのステップであるステップ1及びステップ2に分割される。
【0070】
図9のステップ1では、温度がT1(すなわち、第1の温度)まで上昇することが観測される。キャリアガスは、N
2、N
2+H
2又はH
2であり、好ましくは、N
2である。注入される窒化ガスは、アンモニア(NH
3)であってもよく、注入は、室温とT1との間の温度から開始してもよく、特に、200℃以上から開始してもよい。室温からT1までの温度上昇傾斜は、1℃/分より大きく、特に好ましくは、1℃/秒である。このステップ1の間のアンモニアの流量は、10×V/18〜4000×V/18sccm、特に、1200×V/18sccmであってもよい(Vは、チャンバの容積をリットルで表した値である)。また、窒素(NH
3/N
2)に対するアンモニアの流量の比は、包括的には、0.0005〜100%、好ましくは、0.0055〜22%、特に好ましくは、6.6%である。
【0071】
図9のステップ2では、温度T1でアニーリングを行う。キャリアガスは、N
2、N
2+H
2又はH
2であり、好ましくは、N
2である。注入される窒化ガスは、アンモニア(NH
3)であってもよい。アンモニアの流量は、10×V/18〜4000×V/18sccm、特に、1200×V/18sccmであってもよい(Vは、チャンバの容積をリットルで表した値である)。また、窒素(NH
3/N
2)に対するアンモニアの流量の比は、包括的には、0.0005〜100%、好ましくは、0.0055〜22%、特に好ましくは、6.6%である。NH
3の下でのアニーリング時間は、好ましくは、1秒以上、特に好ましくは、5〜30分間である。
【0072】
第2の窒化サブステップEn2は、処理を明瞭するために、3つのステップであるステップ3、ステップ4及びステップ5に分割される。第2の温度T2は、好ましくは、400〜1050℃(又は1400℃)、より好ましくは、500〜1000℃、特に好ましくは、800℃である。ステップ3では、温度がT2まで高められる(T1≠T2の場合、これ以外の場合は、方法は、直接ステップ4に進む)。キャリアガスは、N
2、N
2+H
2又はH
2であり、好ましくは、N
2である。注入される窒化ガスは、アンモニア(NH
3)であってもよい。T1までの温度上昇傾斜は、1℃/分より大きく、特に好ましくは、1℃/秒である。アンモニアの流量は、10×V/18〜4000×V/18sccm、特に、1200×V/18sccmであってもよい(Vは、チャンバの容積をリットルで表した値である)。また、窒素(NH
3/N
2)に対するアンモニアの流量の比は、包括的には、0.0005〜100%、好ましくは、0.0055〜22%、特に好ましくは、6.6%である。
【0073】
ステップ4では、温度T2でアニーリングを行う。キャリアガスは、N
2、N
2+H
2又はH
2であり、好ましくは、N
2である。注入される窒化ガスは、アンモニア(NH
3)であってもよい。アンモニアの流量は、10×V/18〜4000×V/18sccm、特に、1200×V/18sccmであってもよい(Vは、チャンバの容積をリットルで表した値である)。また、窒素(NH
3/N
2)に対するアンモニアの流量の比は、包括的には、0.0005〜100%、好ましくは、0.0055〜22%、特に好ましくは、6.6%である。NH
3の下でのアニーリング時間は、1秒以上、特に好ましくは、1〜30分間である。
【0074】
ステップ5では、温度を下降させる。キャリアガスは、N
2、N
2+H
2又はH
2であり、好ましくは、N
2である。注入される窒化ガスは、アンモニア(NH
3)であってもよい。T2から室温までの温度下降傾斜は、1℃/分より大きく、特に好ましくは、1℃/秒である。アンモニアの流量は、10×V/18〜4000×V/18sccm、特に、1200×V/18sccmであってもよい(Vは、チャンバの容積をリットルで表した値である)。また、窒素(NH
3/N
2)に対するアンモニアの流量の比は、包括的には、0.0005〜100%、好ましくは、0.0055〜22%、特に好ましくは、6.6%である。
【0075】
図9に示すこの変形例では、窒化ステップは、50〜800mbar、特に、100mbarの圧力に調整された窒化チャンバで行ってもよく、ナノワイヤ(2)の成長ステップは、第2の窒化サブステップ(En2)の後に実行してもよく、第2の窒化サブステップ(En2)の間に開始してもよい。
【0076】
図5に関連するステップは、好ましくは、遷移金属がTaである場合に実行される(この場合、窒化ステップの間の第1の温度は、第2の温度より高いことが好ましい)。具体的には、この材料については、
図9の変形例に比べて、得られるナノワイヤの品質(垂直度、形状の均一性)が大幅に改善される。逆に、同様の理由によって、
図9の変形例は、特に、Ti、Zr、Hf又はNb系の遷移金属を窒化する必要がある場合に適用される(この場合、窒化ステップの間の第1の温度は、第2の温度より低いことが好ましい)。
【0077】
上述した全ての実施形態おいて、堆積される遷移金属がチタンである場合、窒化は、特にH
2の形式で水素を含むキャリアガスを用いて実行することが好ましい。水素の存在によりナノワイヤ成長収量が向上することが試験によって確認された。