【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【文献】
J. Med. Chem.,1994年,37,526−541
【文献】
Chem. Pharm. Bull.,1995年,43,1466−1474
【文献】
Chem. Pharm. Bull.,1994年,42,2154−2156
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リソソーム蓄積症が、ニーマンピック病C型(NPC)、ウォルマン病、ニーマンピック病A型、ファーバー病、テイ−サックス病、MSIIIB、およびCLN2(バッテン)病からなる群から選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【背景技術】
【0005】
[0005]「リソソーム蓄積症」または「LSD」は、リソソームの機能が、リソソーム酵素の欠損により破壊された障害である。約50種類のLSDが存在し、すべてが、リソソームタンパク質の遺伝子が変異した、稀な遺伝性疾患である。個別的には、各疾患の頻度は、1:100,000未満であるが、集合的には、頻度は、約1:5,000〜1:10,000である。欠陥酵素により、リソソーム内で、脂質、糖タンパク質およびムコ多糖が蓄積され得る。LSDとしては、限定されないが、ニーマンピック病C型(NPC)、ウォルマン病、ニーマンピック病A型、ファーバー病、テイ−サックス病、ムコ多糖症IIIB型(MSIIIB)、およびトリペプチジルペプチダーゼI欠損症(CLN2病またはバッテン病)が挙げられる。
【0006】
[0006]LSDは、しばしば、生後数か月または数年で死をもたらす。症状としては、発達遅延、運動障害、異常な骨成長、肺および心臓の問題、肝腫大、脾腫大、認知症、発作、失明、ならびに/または難聴が挙げられる。
【0007】
[0007]細胞内小胞輸送は、リソソームおよびエンドソームの働きに不可欠である。未分解の基質の蓄積は、リソソームおよびエンドソームの機能に影響を及ぼす。リソソームは、多くの細胞過程、すなわち、食作用、エキソサイトーシス、オートファジー、免疫、受容体リサイクリング、神経伝達、細胞内シグナル伝達、骨生物学、および色素沈着に関与する。これらの過程のいずれか1つにおける破壊は、危険な、大抵は致命的な結果を与え得る(Parkinson−Lawrence,Eら(2010)Physiology 25:102)。
【0008】
[0008]LSDおよびそれらの関連する臨床表現型の再検討は、それらの臨床表現型に関する以下の一般法則化をもたらした:1)各障害は、遺伝子変異の影響に応じた、ある範囲の症状を表す;2)障害全般で、影響を受けた組織に応じた、表現型の類似性、および蓄積された基質の類似性が存在し得る;ならびに3)様々な障害を区別する症状も存在し得る(Parkinson−Lawrence,Eら、前掲)。
【0009】
[0009]LSDを治す方法は存在しない。しかし、症状の軽減において限定的結果をこれまで示している、ある治療法が存在する。特に、酵素補充療法(ERT)および/または造血幹細胞移植は、ある種のタイプのLSDの進行を遅らせるのに有用である可能性がある(van Gelder,CMら(2012)Expert Opin.Pharmacother.13(16):2281〜99)。加えて、基質抑制療法および低分子シャペロンも、いくつかのLSDの治療のために提案されている。
【0010】
[0010]トコフェロールの従来認められている機能は、脂質酸化防止剤である。その物理的特性および脂溶性を理由に、トコフェロールは、膜にほぼ局在し、ラジカルクエンチャーとして働き、例えば、不飽和リン脂質の酸化を防ぐ。膜脂質組成およびホメオスタシスの維持は、適切な機能、輸送、およびタンパク質結合に不可欠である。食品産業において、トコフェロールは、油が腐るのを防ぐのに使用される。
【0011】
[0011]ユビキノンまたはQ10は、ミトコンドリアの電子伝達系に存在する、脂溶性の電子伝達補酵素である。ユビキノンは、酸化形態から還元形態に周期的に変化できるキノンである。トコフェリルキノンは、弱いミトコンドリア脱共役剤として働く。なぜなら、トコフェリルキノンは、ユビキノンと競合し、複合体IIIと複合体Iと複合体IIとの間の電子の移動を阻害するからである。αトコフェリルキノンは、ミトコンドリア障害であるフリードライヒ運動失調症の治療のためのヒト臨床試験に使用され、神経機能を改善するという良い結果が得られている。
【0012】
[0012]Bascunan−Castilloら、「Tamoxifen and vitamin E treatments delay symptoms in the mouse model of Niemann−Pick C」、J.Appl.Genet.45(4):461〜7(2004)は、α−トコフェロールの投与時の、NPC1マウスにおける寿命の延長および運動技能の改善を記載している。Narashimaら、「Niemann−Pick C1−like 1 mediates alpha−tocopherol transport」Mol.Pharmacol.74(1):42〜9(2008)は、α−トコフェロールが輸送体ニーマンピックC1様1(NPC1L1)によって腸に吸収されることを実証する研究を記載している。
【0013】
[0013]Koyamaら、「Synthesis of fluorine analogs of vitamin E.IV.Synthesis of bis(trifluoromethyl)tocopherols」Chem.Pharm.Bull 43(9):1466(1995)は、ハロゲン化側鎖またはクロマノール環を有する、トコフェロール類似体の合成を記載している。Koyamaら(1995)は、その類似体がどのようにおよびどこでリポソームに組み込まれるかの指標としての、フッ素NMRでのスピン緩和時間(T
2)を研究した。さらに、Koyamaら、「Synthesis of fluorine analogs of vitamin E.IIII.Synthesis of 2−[4,8−dimethyl−12−(trifluoromethyl)tridecyl]−2,5,7,8−tetramethyl−6−chromanol and 2−[4,12−dimemethyl−8−(trifluoromethyl)tridecyl]−2,5,7,8−tetramethyl−6−chromanol」Chem.Pharm.Bull 42(10):2154(1994)は、ハロゲン化側鎖を有するトコフェロール類似体を記載している。
【0014】
[0014]Takiguchiら、US6,491,847は、ハロゲン化側鎖を含む、ベンゾキノン核およびR基を有するキノン誘導体を記載している。これらの化合物は、そのディスコチック液晶相が安定で広いので、液晶化合物として有用であることが見出された。
【0015】
[0015]Gilleら、「Tocopheryl quinones and mitochondria」、Mol.Nutr.Food Res.54:601(2010)は、トコフェロールおよびα−トコフェリルキノンが、複合体IIIを阻害することにより、ミトコンドリア呼吸を変えることができるという証拠を提示している。Mullebnerら、「Modulation of the mitochondrial cytochrome bc1 complex activity by chromanols and related compounds」、Chem.Res.Toxicol.23(1):193〜202(2010)も、トコフェリルキノンが、ミトコンドリア電子伝達を阻害することができることを示している。Yuら、「Altered cholesterol metabolism in Niemann−Pick Type C1 mouse brains affects mitochondrial function」、J.Biol.Chem.280(12):11731〜39(2005)は、ミトコンドリア膜電位が低下すると、ATP合成が低下することを教示している。
【0016】
[0016]シクロデキストリンによるLSD治療に関する調査も存在する。Rosenbaumら、「Endocytosis of β−cyclodextrins is responsible for cholesterol reduction in Niemann−Pick type C mutant cells」、PNAS Early Edition www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.0914309107(2010)は、シクロデキストリンによるNPC
−細胞の処理の結果、コレステロールの細胞外への輸送が高まり、それらの変異細胞においてコレステロールの蓄積が減少することを実証する研究を記載している。Davidsonら、「Chronic cyclodextrin treatment of murine Niemann−Pick C disease ameliorates neuronal cholesterol and glycosphingolipid storage and disease progression」、PLoS ONE 4(9):e6951(2009)は、シクロデキストリンによるNPC変異マウスの長期治療は、臨床的な疾患の発症を遅らせ、神経変性を遅延させ、寿命を延ばしたことを記載している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[0032]これから、本発明の代表的な実施形態について詳しく言及する。本発明を、列挙した実施形態と関連して説明するが、本発明がそれらの実施形態に限定されることを意図したものではないことを理解されたい。それどころか、本発明は、特許請求の範囲で規定した本発明の範囲内に含めることができるすべての代替物、変更形態および均等物を包含することを意図したものである。
【0029】
[0033]当業者は、本発明の実施において使用できかつ本発明の実施の範囲内である、本明細書に記述する方法および材料と類似または同等の多くの方法および材料を認識する。本発明は、本明細書に記述する方法および材料に全く限定されない。
【0030】
[0034]特に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって共通に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記述した方法、装置および材料と類似または同等の任意の方法、装置および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法、装置および材料をこれから記述する。
【0031】
[0035]本出願で引用するすべての刊行物、公開された特許文書および特許出願は、本出願に関係する分野の技術を示すものである。本出願で引用するすべての刊行物、公開された特許文書および特許出願は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、かつ、それぞれの各刊行物、公開された特許文書または特許出願が、参照によりそれら全体が組み込まれていると特定的および個別的に示されているかのごとく同程度に本明細書に組み込まれる。
【0032】
[0036]添付の特許請求の範囲を含む本出願で使用する場合、単数形「1つの(a、an)」、「その(the)」は、その内容について特に明確な断りが無い限り、複数の指示対象を含み、「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」を、互換的に使用する。
【0033】
[0037]本明細書で使用する場合、用語「約」は、その数値が関係する項目の基本的機能が変化しない程度の、数値のわずかな変更または変動を示す。
[0038]本明細書で使用する場合、用語「含む」、「含んだ」、「含める」、「含めた」、「含有する」、「含有した」、およびそれらの任意の変化形は、問題となっている、要素または要素の列挙を含む、含めるまたは含有するプロセス、方法、プロダクトバイプロセスおよび組成物が、それらの要素を含むだけでなく、明確に列挙していない要素、または問題となっているそのようなプロセス、方法、プロダクトバイプロセスまたは組成物に固有の他の要素も含み得るように、非排他的包含を網羅することを意図したものである。
【0034】
[0039]以下の説明において、化学、医学およびバイオテクノロジーで使用されるいくつかの用語を使用する。用語が明確に理解されるように、以下の定義を示す。
[0040]本明細書で使用する場合、リソソーム蓄積症またはLSDには、それらに限定されないが、以下の障害および疾患、すなわち、グリコーゲン蓄積症II型(ポンペ病)、ムコ多糖症(MPS)(例えば、MPSI型〜IV型およびVI型〜VII型)、ムコリピドーシス(例えばI型〜IV型)、オリゴ糖症(Oligosaccharidoses)(例えば、シンドラー病/神崎病、ならびにαマンノース症およびβマンノース症)、リピドーシス(例えば、ニーマンピック病C型およびD型、ならびにウォルマン病)、スフィンゴリピドーシス(例えば、ニーマンピック病A型およびB型、ゴーシェ病I型、II型およびIII型、テイ−サックス病を含めたGM1およびGM2ガングリオシドーシス)、ならびにリソソーム輸送障害(例えば、シアル酸蓄積症)が含まれる。
【0035】
[0041]ミトコンドリア障害および神経変性も、本発明の化合物を用いる治療を企図するものである。40種を超える異なるミトコンドリア細胞症が存在し、それらには、限定されないが、フリードライヒ運動失調症、カーンズ−セイヤー症候群(KSS)、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)、乳酸アシドーシスおよび脳卒中様発作を伴うミトコンドリア脳筋症(MELAS)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、リー症候群、筋神経胃腸脳症(Myoneurogenic gastrointestinal encephalopathy)(MNGIE)、ピアソン症候群、ニューロパチー、運動失調症、および網膜色素変性症(NARP)が含まれる。
【0036】
[0042]「個体」は、試験対象または患者を意味する。個体は、哺乳類または非哺乳類であり得る。種々の実施形態において、個体は、哺乳類である。哺乳類の個体は、ヒトまたはヒト以外であり得る。種々の実施形態において、個体は、ヒトである。健康または正常な個体は、LSD疾患が従来の診断方法により検出されない個体である。
【0037】
[0043]NCGC00250218、X類似体、およびCF
3−トコフェロールを、本明細書では互換的に使用する。
[0044]「医薬組成物」は、医薬作用物質と、医薬として許容されるビヒクルと、任意選択で、例えば、安定剤、防腐剤、医薬として許容される担体などの他の構成成分とを含む組成物である。「医薬作用物質」は、本明細書で記述するトコフェリルキノン誘導体および/またはトコフェロール誘導体である。
【0038】
[0045]本発明の医薬組成物は、医薬として許容されるビヒクルと混合する、化合物の既知の組み合わせ方法によって調製することができる。医薬組成物における適切なビヒクル、およびそれらの配合は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第16版、Osol,E.編、Mack Easton Pa.(1980))に記載されている。本質的に純粋な、または純粋な医薬作用物質を、医薬として許容されるビヒクル、および他の構成成分と混合して、現在のGood Manufacturing Practicesを使用して医薬組成物を製造することができる。
【0039】
[0046]「本質的に精製された」作用物質は、目的のものでない成分を実質的に含まないものである。本質的に精製された分子は、好ましさが増大するにつれて、少なくとも80%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも97%純粋、少なくとも98%純粋、および少なくとも99%純粋である。「純粋な」作用物質は、均一に精製されたものである、すなわち、100%純粋である。
【0040】
[0047]本発明は、本質的に精製された、または純粋なトコフェリルキノン誘導体、および/またはトコフェロール誘導体、ならびに、医薬組成物へのそれらの包含を含む。
[0048]加えて、保存期間を延ばすことができる安定剤が、医薬組成物に含まれ得る。適切な安定剤としては、グルタミン酸ナトリウム、および2−フェノキシエタノールを挙げることができる。さらに、細菌汚染を防止し、多用量バイアルを可能にするために、防腐剤を添加することができる。適切な防腐剤としては、フェノキシエタノールおよびホルムアルデヒドを挙げることができる。
【0041】
[0049]「医薬として許容される担体」は、限定されないが、タンパク質、多糖類、ポリグリコール酸、アミノ酸コポリマー、および当分野で周知の担体などを含めた、ゆっくり代謝される高分子である。
【0042】
[0050]「医薬として許容されるビヒクル」は、医薬組成物における構成成分の溶解、懸濁、または混合に使用される、水、食塩水、グリセロール、エタノールなどを意味する。
[0051]治療的処置のための、用語「有効量」または「治療上許容される量」は、影響を受けた細胞もしくは組織においてリソソームのエキソサイトーシスを実質的に改善する、および/または問題のLSDの臨床症状を実質的に改善するのに十分な、作用物質の量を意味する。有効量は、比較的広い、致命的でない範囲内に存在し得ると考えられる。ルーチンの実験を使用して、適切な有効量を決定することができる。
【0043】
[0052]本発明の医薬組成物を個体に投与する方法は、非経口、例えば、静脈内、皮内、筋肉内、皮下、鼻腔内、髄腔内、経皮(局所)、経粘膜投与;ならびに直腸投与および経口投与を含めた、任意の適切な手段によって行うことができる。好ましい実施形態において、医薬組成物は、経口投与される。別の実施形態において、医薬組成物は、注入により投与される。別の実施形態において、医薬組成物は、血液脳関門を迂回するために、中枢神経系(CNS)に直接注射される。
【0044】
[0053]投与される投与量は、投与経路に依存する。しかし、概して、対象の体重1kgあたり約5〜約300mgの投与量範囲が有用であり得る。一実施形態において、投与量範囲は、約10〜約250mg/kgである。投与量範囲(および本明細書で挙げた他の投与量範囲)は、小数値を含めた、上述の各値のあたりおよびその間の投与量のすべてを含む。適切な投与量は、技術を有する研究専門科学者または臨床医に既知の実験を使用して決定することができる。そのような決定は、上述の範囲の範囲外の投与量を特定することができ、それも、本明細書で企図するものである。例えば、単回投与量は、体重1kgあたり約1mg/kgであってもよい。
【0045】
[0054]「シクロデキストリン」は、医薬、薬物送達、食品、農業および化学業界ならびに環境工学で使用されている環状オリゴ糖である。それらは、典型的には、6員環、7員環および8員環であり、それらは、それぞれ、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンと表される。シクロデキストリンは、LSDにおいてコレステロールをリソソームから出すのを助ける。本発明で適切であり得るシクロデキストリンの例としては、限定されないが、ヒドロキシプロピルβ−シクロデキシトリン(HPβCD)、およびメチル−β−シクロデキストリン(MβCD)が挙げられる。本発明において、疎水性コレステロール分子は、シクロデキストリン環の内部にとどまり、次いで、それが細胞から除去される。
【0046】
[0055]「生物学的試料」は、通常、基質の蓄積、リソソームの肥大、およびミトコンドリアATP産生の低下から明らかであるリソソーム機能の障害を有する細胞を含有する、個体の体液または組織を意味する。生物学的試料の例としては、限定されないが、血液、血漿、血清、白血球、脳脊髄液(CSF)、骨髄腫細胞、涙、唾液、母乳、尿、リンパ液、気道内分泌物、および泌尿生殖器または腸管分泌物が挙げられる。
【0047】
[0056]一実施形態において、本発明は、構造[1]
【0049】
(式中、点線の結合は、単結合または二重結合を示し;R
1、R
2およびR
3=アルキル、フルオロアルキル、ハロゲンまたはHであり;側鎖は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル直鎖または分岐鎖であり、R
7=Hまたは単結合もしくは二重結合であり、X=ハロゲンである)
を有する化合物を含む、トコフェリルキノン誘導体を提供する。
【0050】
[0057]本発明はまた、構造[1]の化合物と、医薬として許容されるビヒクルとを含む、医薬組成物も含む。構造[1]を含む医薬組成物は、LSDを治療する方法において使用することができる。そのような方法において、該組成物は、それを必要とする個体に治療有効量で投与される。
【0051】
[0058]本発明の別の態様において、該キノン誘導体は、構造[2]
【0053】
(式中、R
1、R
2およびR
3=アルキル、フルオロアルキル、ハロゲンまたはHであり;n=20であり;R
4、R
5=アルキル、フルオロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシまたはHであり;側鎖は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル直鎖または分岐鎖であり、X=ハロゲンである)
を有する。
【0054】
[0059]本発明はまた、構造[2]の化合物と、医薬として許容されるビヒクルとを含む、医薬組成物も含む。構造[2]を含む医薬組成物は、任意選択で、シクロデキストリンを含むこともできる。該医薬組成物は、LSDを治療する方法において使用することができる。そのような方法において、該組成物は、それを必要とする個体に治療有効量で投与される。
【0055】
[0060]構造[1]および[2]を有する化合物は、ミトコンドリアATP産生を改善するために使用することができる。ATP産生の改善は、ある種のLSDの症状を和らげることができる。単離されたミトコンドリア内の異なる複合体の機能、および最終的なATP産生は、例えば、XF CELL MITO STRESS TEST KIT(登録商標)(Seahorse Bioscience)を使用して測定することができる。
【0056】
[0061]構造[1]および[2]を有する化合物の両方において、末端の炭素は、ハロゲン化されている。薬物動態の実質的改善のために、典型的には、2つの分岐したトリハロゲン化メチル基が側鎖の末端に与えられる。そのような化合物は、P450アイソフォーム、CYP4F2による、肝臓における加水分解および酸化を防ぐことが判明した。
【0057】
[0062]さらなる実施形態において、本発明は、構造[3]
【0059】
(式中、R
1〜R
3=アルキル、フルオロアルキル、ハロゲンまたはHであり;R
6=アルキル、フルオロアルキル、アルケニルまたはHであり;R
8=C
1〜C
6を有する低級アルキルであり;側鎖は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル直鎖または分岐鎖であり、R
7=Hまたは単結合もしくは二重結合であり、X=ハロゲンである)
を有するトコフェロール誘導体を含む。
【0060】
[0063]本発明はまた、構造[3]の化合物と、医薬として許容されるビヒクルとを含む、医薬組成物も含む。構造[3]を含む医薬組成物は、任意選択で、シクロデキストリンを含むこともできる。該医薬組成物は、LSDを治療する方法において使用することができる。そのような方法において、該組成物は、それを必要とする個体に治療有効量で投与される。
【0061】
[0064]さらなる態様において、トコフェロール誘導体は、構造[4]
【0063】
(式中、R
1〜R
3=アルキル、フルオロアルキル、ハロゲンまたはHであり;n=1〜20であり、側鎖は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル直鎖または分岐鎖であり、X=ハロゲンである)
を有する。
【0064】
[0065]本発明はまた、構造[4]の化合物と、医薬として許容されるビヒクルとを含む、医薬組成物も含む。構造[4]を含む医薬組成物は、任意選択で、シクロデキストリンを含むこともできる。該医薬組成物は、LSDを治療する方法において使用することができる。そのような方法において、該組成物は、それを必要とする個体に治療有効量で投与される。
【0065】
[0066]構造[3]および[4]で示された化合物の両方において、末端の炭素は、ハロゲン化されている。薬物動態の実質的改善のために、典型的には、2つの分岐したトリハロゲン化メチル基が側鎖に与えられる。そのような化合物は、P450アイソフォーム、CYP4F2による、肝臓における加水分解および酸化を防ぐことが判明した。
【0066】
[0067]構造[1]、[2]、[3]または[4]を含んだトコフェリルキノン誘導体またはトコフェロール誘導体を含む組成物による治療は、例えば、細胞へのCa
2+の流入の実質的増加、リソソームの大きさの縮小、および/または患者の細胞からのコレステロールの細胞外放出の増加を含めた改善をもたらすこと、そうでなければ、本明細書に記述する、特性の改善をもたらすことができる。
【0067】
医薬組成物
[0068]医薬として許容される担体、賦形剤、希釈剤、複合体形成剤または添加剤を任意選択で含む、医薬的に適切な形態の本発明の化合物は、一度作製されると、治療および/または予防を必要とする患者に投与されることになる。患者への投与は、例えば、経口および/または非経口投与経路を介することができる。ある種の実施形態において、本発明の化合物は、任意の方法で、または、患者の脳もしくは中枢神経系において化合物の効果的な濃度を実現する任意の様式を用いて投与することができる。
【0068】
[0069]したがって、一実施形態において、該化合物は、患者への投与のために、安定な、安全な医薬組成物に製剤化される。該組成物は、ある量の化合物成分を希釈剤に溶解または懸濁させることによって、従来の方法に従って調製することができる。その量は、希釈剤1mlあたり、該化合物約0.1mg〜約1000mgであり得る。緩衝剤が添加されてもよく、任意選択で、炭水化物もしくは多価アルコール等張化剤(tonicifier)、および/または防腐剤が添加されてもよい。トコフェロール誘導体または他の企図される化合物の全体的な張度を維持するために、所望により、他の賦形剤も存在し得る。
【0069】
[0070]緩衝剤、緩衝溶液および緩衝液という用語は、水素イオン濃度またはpHと関連して使用する場合、酸もしくはアルカリの添加時または溶媒による希釈時にpHの変化を阻止する系、特に水溶液の能力を意味する。酸または塩基の添加時にほとんど変化しない緩衝液の特徴は、弱い酸および弱い酸の塩、または弱い塩基および弱い塩基の塩の存在である。製剤の安定性は、製剤のpHを約5.0〜約9.5の範囲に維持することにより高めることができる。緩衝剤は、例えば、酢酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤またはグルタミン酸塩緩衝剤から選択することができる。
【0070】
[0071]長期間保存のために(すなわち、保存期間を考慮に入れて)、本発明の化合物を含む製剤とより大きく関係することは、酸素の濃度を最小化することである。一実施形態において、酸素は、製剤から本質的に排除され、その結果として、該化合物と酸素との経時的な反応は、起こり得ない。
【0071】
[0072]本発明による化合物の投与を容易にするために、担体または賦形剤を使用することもできる。担体および賦形剤の例としては、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、例えば、ラクトース、グルコース、もしくはスクロース、または各種デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコール、および生理学的に適合可能な溶媒が挙げられる。
【0072】
[0073]安定剤も、本発明による医薬組成物に含まれてもよい。安定剤の例としては、炭水化物および多価アルコールが挙げられる。
[0074]微生物による本明細書に記述する医薬組成物の結果的な腐敗を防ぐために、微生物の成長を抑えるよう、防腐剤が該組成物に添加されてもよい。しかし、防腐剤の量は、多くない。なぜなら、それが、本発明の化合物の全体的な安定性に影響を与えかねないからである。防腐剤、ならびに医薬組成物の他の構成成分の各々は、当分野で既知であり、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、ならびにPharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications、第1巻、1992、Avisら編、Mercel Dekker、New York、N.Y.1992(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0073】
[0075]医薬として許容される担体、賦形剤、希釈剤、複合体形成剤、および/または添加剤は、本発明の化合物の安定性を高める、該化合物を含む医薬組成物の合成もしくは製剤化を容易にする、および/または該化合物の生物学的利用能を高めるために選択することができる。
【0074】
[0076]例えば、担体分子、例えばシクロデキストリンおよびその誘導体は、薬物分子の物理化学的性質を変えることができる複合体形成剤としての潜在能力について、当分野で周知である。例えば、シクロデキストリンは、複合体化された活性な作用物質を(熱的および酸化的に)安定化する、その作用物質の揮発性を低下させる、ならびにその作用物質の溶解性を変えることができる。ある分子の、別の分子内への蓄積は、複合体化として知られ、得られる生成物は、包接複合体と呼ばれる。
【0075】
[0077]あるいは、医薬的に適切な形態の本発明のトコフェロール誘導体化合物は、該化合物の安定性および生物学的利用能を高めるために製剤化することができる。
[0078]1つの経口徐放構造は、固体剤形の腸溶コーティングである。腸溶コーティングは、化合物が胃液に曝されたときに指定の期間にわたりその化合物を剤形の内部に物理的に組み込まれたままにすることを促進するが、腸液中で分解して化合物がすぐに吸収されるように設計されている。吸収の遅延は、胃腸管を移動する速度に依存するので、胃が空になる速度が重要な因子である。投与法によっては、マルチプルユニット型剤形、例えば顆粒が、有用である可能性がある。
【0076】
[0079]本発明の好ましいトコフェロール誘導体化合物、ならびに/またはその組成物および/または複合体は、有利な医薬特性を示し、それらは、容易に製剤化することができる、化学的にも物理的にも安定である、容易に水に溶ける、低い吸湿性を有する、および/または良好な保存期間を示す。
【0077】
[0080]これから、本発明の態様および実施形態を実施例において説明する。さらなる態様および実施形態は、当業者にとって明白である。
【実施例】
【0078】
実施例1−トコフェロール誘導体の合成
ステップ1
【0079】
【化5】
【0080】
反応手順:
[0081]0℃に冷却された、NaH(5.75g、143.67mmol、1当量)の乾燥DMF(100mL)溶液に、乾燥DMF(150mL)中の化合物1(25g、143.67mmol、1当量)を0℃でゆっくり添加し、得られた混合物を、0℃で1時間撹拌した。1時間後、臭化ベンジル(20.62ml、172.4mmol、1.2当量)を、0℃で、20分かけて反応混合物にゆっくり滴下した。次いで、反応混合物を、室温で12時間撹拌した。反応の完了をTLCにより確認した後、反応混合物を氷水でクエンチし、水性層を、エーテル(2×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮し、粗製生成物を得た。粗製物を、石油エーテル中の10%酢酸エチルを溶離液として使用する、シリカゲル(100〜200メッシュ)でのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、純粋な化合物(23g、収率60%)を得た。
【0081】
[0082]NMRデータは、ステップ1の化合物の特徴または特性を証明した(データ示さず)。
ステップ2
【0082】
【化6】
【0083】
反応手順
[0083]0℃の、化合物2(25g、94.69mmol、1当量)のジエチルエーテルおよびアセトニトリル(3:1の比率)溶液に、イミダゾール(9.02g、132.57mmol、1.4当量)およびトリフェニルホスフィン(29.77g、113.63mmol、1.2当量)を0℃で添加した。5分の撹拌後、ヨウ素(31.26g、123.10mmol、および1.3当量)を0℃で反応混合物に添加して、反応混合物を、0℃で45分間撹拌した。反応の完了をTLCにより確認した後、反応混合物を、セライト層に通して濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、粗製生成物を得た。粗製物を、石油エーテル中の2〜3%酢酸エチルで溶離するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、純粋な化合物(32.5g、収率92%)を得た。
【0084】
[0084]NMRデータは、ステップ2の化合物の特徴または特性を証明した(データ示さず)。
ステップ3
【0085】
【化7】
【0086】
反応手順
[0085]化合物3(25g、66.84mmol、1当量)の乾燥THF溶液に、トリフェニルホスフィン(22.76g、86.89mmol、および1.3当量)を添加した。次いで、反応混合物を12時間還流した。反応の完了をTLCにより確認した後、反応混合物を減圧下で蒸留し、粗製化合物を、ジクロロメタン中の5%メタノールを溶離液として使用することによるフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、純粋な化合物(35.2g、収率83%)を得た。
【0087】
[0086]NMRデータは、ステップ3の化合物の特徴または特性を証明した(データ示さず)。
ステップ4
【0088】
【化8】
【0089】
反応手順
[0087]化合物4(50g、78.54mmol、1当量)を、乾燥THFに入れ、−78℃に冷却し、n−BuLi(103ml、164.9mmol、2.1当量)を、−78℃で、1時間かけて滴下した。ヘキサフルオロアセトン三水和物(46ml、314.1mmol、4当量)を、濃H
2SO
4に滴下した。放出された気体のヘキサフルオロアセトンを、−78℃で、前述の溶液にゆっくりパージした。反応混合物を、室温で12時間放置した。反応の完了後、2NのHClでクエンチし、水性層を、酢酸エチル(2×300mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮し、粗製生成物を得た。粗製物を、石油エーテル中の5%の酢酸エチルで溶離するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、純粋な化合物(23.3g、収率75%)を得た。
【0090】
[0088]NMRデータは、ステップ4の化合物の特徴または特性を証明した(データ示さず)。
ステップ5
【0091】
【化9】
【0092】
反応手順
[0089]化合物5(25g、63.13mmol、1当量)をMeOHに入れた。Pd/C(10g)を、N
2下で、少量ずつ添加した。それを、par撹拌機において、80psiで、50℃まで24時間加熱した。反応の完了後、それをセライトに通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮し、粗製生成物を得た。粗製物を、DCM中の2〜3%MeOHで溶離する、フラッシュカラム(100〜200シリカゲル)クロマトグラフィーにより精製し、純粋な化合物(11g、収率85%)を得た。
【0093】
[0090]NMRデータは、ステップ5の化合物の特徴または特性を証明した(データ示さず)。
ステップ6
【0094】
【化10】
【0095】
反応手順
[0091]化合物6(20g、64.93mmol、1当量)をDCMに入れ、0℃まで冷却し、DMP(38.5g、90.90mmol、1.4当量)を少量ずつ添加した。反応混合物を室温で2時間放置した。反応の完了後、DCMを留去した。残留物をジエチルエーテルに溶解し、セライトに通して濾過した。濾液を重炭酸ナトリウム(2×300ml)で洗浄した。有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮し、粗製生成物(17.5%、収率88%)を得た。粗製物自体を、さらに精製することなく、次のステップに進めた。
【0096】
[0092]HPLCおよびNMRのデータは、ステップ6の化合物の特徴または特性を証明した(データ示さず)。
ステップ7
【0097】
【化11】
【0098】
反応手順
[0093]NaH(2.1g、86.192mmol、および2.2当量)を、0℃でTHFの中に少量ずつ添加し、次いで、ウィティッヒ試薬(11.4g、43.095mmol、1.1当量)を滴下し、それを1時間放置した。次いで、THF中の、HMPA(14ml、78.356mmol、および2当量)および化合物7(12g、39.178mmol、1当量)を、0℃で滴下した。反応混合物を室温で2時間放置した。完了後、反応物を氷でクエンチし、ジエチルエーテルで2回抽出し、およびエーテル(2×30mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮し、粗製生成物を得た。粗製物を、石油エーテル中の10%の酢酸エチルで溶離するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、純粋な化合物(1.85g、収率65%)を得た。
【0099】
[0094]LCMS、HPLCおよびNMRのデータは、ステップ7の化合物の特徴または特性を証明した(データ示さず)。
ステップ8
【0100】
【化12】
【0101】
反応手順
[0095]−78℃に冷却された、化合物8(1g、2.4mmol、1当量)の乾燥THF(20mL)溶液に、LAH(4.8ml、1M溶液、2当量)を−78℃で添加し、得られた混合物を、−30℃で3時間撹拌した。反応の完了をTLCにより確認した後、NH
4Cl飽和溶液を反応混合物に添加し、水性層をエーテル(3×10mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮し、0.8gの化合物8を無色のシロップ状物として得た。得られた粗製物(0.75、収率83%)を、精製することなく、次のステップに進めた。
【0102】
[0096]HPLCデータは、ステップ8の化合物の特徴または特性を証明した(データ示さず)。
ステップ9
【0103】
【化13】
【0104】
反応手順
[0097]化合物9(1g、2.67mmol、1当量)のEtOAc(20mL)溶液に、ヒドロキノン(0.29g、2.67mmol、1当量)、塩化亜鉛(0.286g、2.13mmol、0.8当量)、および37%HCl水溶液(0.2当量)を0℃で添加し、得られた混合物の温度を室温に到達させ、室温で12時間維持した。反応の完了をTLCにより確認した後、NaHCO
3飽和溶液(10mL)を反応混合物に添加し、水性層をエーテル(3×10mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥し、減圧下で濃縮した。残留物を、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc:85:15)により精製し、0.25〜0.3g(75%、LS−MS)の茶色シロップ状物を与えた。
【0105】
[0098]LCMSおよびNMRのデータは、ステップ9の化合物の特徴または特性を証明した(データ示さず)。
ステップ10
【0106】
【化14】
【0107】
反応手順
[0099]化合物10(1g、2.14mmol)のメタノール(20mL)溶液に、10%Pd/C(0.25g)を添加し、得られた反応混合物を、水素(バルーン圧)雰囲気下で、12時間撹拌した。反応の完了を質量分析により確認した後、反応混合物を、セライト層に通して濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、0.8gの化合物GVK−NCI−02を無色シロップ状物として得た。得られた粗製物を、prep HPLCにより精製し、薄茶色シロップ状物(0.3g、収率30%)(95%HPLC)を与えた。
【0108】
[00100]HPLCおよびNMRのデータは、ステップ10の化合物の特徴または特性を証明した(データ示さず)。
【0109】
実施例2−δトコフェロールおよび類似体による処理時の、野生型およびNPC線維芽細胞におけるコレステロールレベルの低下
[00101]δ−トコフェロールおよび5つの類似体についての50%効果濃度(EC−50)を、野生型およびNPC3123細胞において測定した。
図1Aは、δ−トコフェロールおよび類似体の濃度が、野生型細胞において上がるにつれて、血清のコレステロールレベルが下がったことを示す。さらに、NPC細胞(
図1B)において、コレステロールレベルの低下は、対照(δ−トコフェロール無し)と比較して大きかった。NCGC00250218への曝露時の、NCP線維芽細胞における、表現型のコレステロールの除去についてのIC50は、10μMの範囲であった。最も大幅な変化は、「X−類似体」またはNCGC00250218で見られた。実際、CF
3−トコフェロールは、δ−トコフェロール(δ−T)よりも効力が大きかった。
【0110】
実施例3−δ−トコフェロールおよびNCGC00250218(X−類似体)による処理時の、野生型およびNPC線維芽細胞におけるコレステロールレベルの評価のためのフィリピン染色アッセイ
[00102]コレステロールに対する組織化学的染料であるフィリピンを使用して、野生型線維芽細胞およびNPC線維芽細胞におけるコレステロールを検出した。対照の線維芽細胞、すなわち、野生型およびNPC線維芽細胞は、フィリピンのみで処理され、δ−トコフェロールまたは類似体で処理されなかった。実験の試料は、X−類似体またはδ−トコフェロールを与えられたNPC細胞であった。
図2は、フィリピンおよびX−類似体(20μM)により処理されたNPC細胞は、フィリピンおよびδ−トコフェロール(40μM)で処理されたNPC細胞よりもコレステロールが少ないことを示す。したがって、X−類似体によるNPC細胞の処理は、δ−トコフェロールにより処理された細胞と比べて、後者は前者の2倍の濃度で使用されたが、コレステロールレベルを大幅に低下させる。
【0111】
実施例4−Balb/cマウスへのX−類似体の経口投与時の、脳および血漿における薬物動態
[00103]X−類似体を、雌のBalb/cマウスに投与し、脳および血漿における時間−濃度曲線を研究した。
図3Aの表は、その結果を示す。血清におけるX−類似体のピーク平均濃度は、約2〜4時間で生じるのに対して、脳におけるX−類似体のピーク平均濃度は、72時間でまたは72時間後に生じる。これらの結果を、
図3Bのグラフにも示す。
【0112】
実施例5−X−類似体の異なる投与経路および用量の影響
[00104]X−類似体を雌のBalb/cマウスに経口(PO)または腹腔内(IP)投与し、脳および血漿における投与経路および用量の影響を観察した。結果を、
図4A、
図4B、および
図4Cに示す。血漿(
図4A)において、PO経路は、X−類似体のより高いレベルを生じさせるのにより有効であることが分かった。驚くべきことに、低用量(10mg/kg)の投与されたX−類似体が、より高い用量(250mg/kg)よりも高い血漿中濃度(ng/mL)をもたらした。脳(
図4B)において、PO経路は、X−類似体のより高いレベルを生じさせるのにより有効であることがここでも観察された。PO投与についての異なる用量(10mg/kgおよび250mg/kg)は、ほぼ同じ脳中濃度の結果をもたらした。
図4Cは、250mg/kgでの血漿対脳の比較を示す。したがって、CF
3官能基を含む脂肪族鎖の合成調節は、薬物動態が改善される分子をもたらした。注目すべきは、天然の酵素は、フルオロ脂肪族鎖を酸化する能力を有しない。
【0113】
[00105]初期in vivo研究は、ニーマンピック病C型のマウスにおけるCF
3−トコフェロール(NCGC00250218)の単回投与は、脳においてコレステロールエステルの産生を上昇させることを示しており、それは、コレステロールのホメオスタシスの回復の兆候である。さらに、長期(100mg/kgの単回I.P.投与後42日まで)の薬物動態研究が、完了している(データ示さず)。
【0114】
実施例6−CF3−トコフェロール、NCGC00250218への曝露は、コレステロール代謝を活性化させる
[00106]天然に存在する他のトコフェロールのように、NCGC00250218は、優れた生物学的利用能を有する可能性が高いが、NPCマウスへの簡単な対処、および以前の薬物動態実験との脳中レベルの比較のために、I.P.投与を行った。HPCDを用いた以前の実験に基づき、化合物およびコレステロールエステルのレベルを、72時間の曝露後に測定した。リソソームに閉じ込められたコレステロールの細胞外放出は、コレステロールの代謝を活性化し、脳においてはコレステロールエステルの、血漿においては24−ヒドロキシコレステロールのレベルがあがることが判明した。NCGC00250218の用量は、線維芽細胞におけるそのIC50(約10μM)と同様の脳中濃度に達することができるように選択した。結果を
図5Aおよび
図5Bに示す。
【0115】
[00107]NCGC00250218を用いたさらなる調査は、300mg/kgの単回IP投与後、24時間および48時間でのコレステロールエステルの増加を測定して、コレステロール代謝回転の速度論を評価するために行うことができる。さらに、用量は、コレステロール代謝回転をもたらすことになるNCGC00250218の最小用量を決定するために減らすことができる。上記の長期薬物動態の研究と共に、これらの結果は、神経変性および生存の研究を可能にする。
【0116】
[00108]したがって、本明細書に記述した研究は、CF
3−トコフェロールが、NPC患者の細胞(線維芽細胞および神経細胞)におけるコレステロール蓄積を減少させること;NPC細胞における肥大したリソソームを縮小させること;細胞内のCa
2+を増加させ、リソソームのエキソサイトーシスを高めること;単回投与時に、NPCマウスにおいて、コレステロール代謝回転を示すこと;および良好な脳中浸透および非常に長い半減期(約20〜30日)を有することを示す。実際、CF
3−トコフェロールの長い半減期は、その化合物が脳に到達することを可能にする。それはまた、注入による、または、例えば、毎日、毎週、もしくは毎月低い(マイクロモル範囲の)口内濃度による、経時的な投与も可能にする。したがって、CF
3−トコフェロールは、経口的に、生物学的に利用可能で安全(測定可能または観察可能な副作用のない、5g/kgまでの、ラットモデルにおける多い1日用量に基づく)であり得る。それは、それほど速く代謝されない。
【0117】
[00109]CF
3−トコフェロール(およびCF
3−トコフェリルキノン)は、ミトコンドリア障害およびリソソーム蓄積症および神経変性における適用可能性を有する。