特許第6367222号(P6367222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367222噴霧法により製造される炭酸水素ナトリウム粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367222
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】噴霧法により製造される炭酸水素ナトリウム粒子
(51)【国際特許分類】
   C01D 7/38 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   C01D7/38
【請求項の数】62
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-548673(P2015-548673)
(86)(22)【出願日】2013年12月23日
(65)【公表番号】特表2016-500364(P2016-500364A)
(43)【公表日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2013077948
(87)【国際公開番号】WO2014096457
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月24日
(31)【優先権主張番号】61/745,227
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】サヴァリ, ダヴィド ジャン リュシアン
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00623553(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0286790(US,A1)
【文献】 特開平04−270113(JP,A)
【文献】 米国特許第05411750(US,A)
【文献】 米国特許第06660049(US,B1)
【文献】 米国特許第03072466(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第00532301(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1〜10重量%の炭酸水素ナトリウムと
(ii)マグネシウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び大豆レシチンからなる群から選択される添加剤
含む水溶液を噴霧乾燥することによる、炭酸水素ナトリウム粒子の製造方法。
【請求項2】
前記水溶液が、水溶液1キログラム当たり少なくとも1mgの添加剤を含み、前記添加剤がマグネシウム化合物の場合には上記量は水溶液1キログラム当たりのmg Mgで表される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶液が、水溶液1キログラム当たり少なくとも5mg以上の添加剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液が、水溶液1キログラム当たり少なくとも10mg以上の添加剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液が、水溶液1キログラム当たり少なくとも100mg以上の添加剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶液が、水溶液1キログラム当たり少なくとも200mg以上の添加剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
水溶液1キログラム当たり2000mg以下の前記添加剤を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
水溶液1キログラム当たり多くとも1500mg以下の前記添加剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水溶液1キログラム当たり多くとも1200mg以下の前記添加剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記水溶液が少なくとも2重量%以上の炭酸水素ナトリウムを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶液が少なくとも3重量%以上の炭酸水素ナトリウムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水溶液が少なくとも4重量%以上の炭酸水素ナトリウムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記水溶液が少なくとも5重量%の炭酸水素ナトリウムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記水溶液が10%以下の炭酸水素ナトリウムを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液が多くとも8%以下の炭酸水素ナトリウムを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水溶液が多くとも6%以下の炭酸水素ナトリウムを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記噴霧乾燥が、乾燥ガス基準で少なくとも5体積%のCOを含むガス中で行われる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記噴霧乾燥が、乾燥ガス基準で少なくとも10体積%のCOを含むガス中で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記噴霧乾燥が、乾燥ガス基準で少なくとも20体積%のCOを含むガス中で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記噴霧乾燥が、乾燥ガス基準で少なくとも30体積%のCOを含むガス中で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記噴霧乾燥又は噴霧が、乾燥ガス基準で少なくとも80体積%のCOを含むガス中で行われる、請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記噴霧乾燥又は噴霧が、乾燥ガス基準で少なくとも90体積%のCOを含むガス中で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記噴霧乾燥又は噴霧が、乾燥ガス基準で少なくとも95体積%のCOを含むガス中で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記噴霧乾燥が噴霧乾燥チャンバー中で行われ、前記ガスは予熱された後に、少なくとも40℃で前記噴霧乾燥チャンバーに導入される、請求項17〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記噴霧乾燥が噴霧乾燥チャンバー中で行われ、前記ガスは予熱された後に、少なくとも50℃で前記噴霧乾燥チャンバーに導入される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記噴霧乾燥が噴霧乾燥チャンバー中で行われ、前記ガスは予熱された後に、少なくとも60℃で前記噴霧乾燥チャンバーに導入される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記噴霧乾燥が噴霧乾燥チャンバー中で行われ、前記ガスは予熱された後に、少なくとも70℃で前記噴霧乾燥チャンバーに導入される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記ガスが予熱された後に、220℃以下で噴霧乾燥チャンバーに導入される、請求項17〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ガスが予熱された後に、200℃以下で噴霧乾燥チャンバーに導入される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ガスが予熱された後に、180℃以下で噴霧乾燥チャンバーに導入される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記ガスが予熱された後に、130℃以下で噴霧乾燥チャンバーに導入される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記噴霧乾燥工程後の前記ガスの温度が80℃以下である、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記噴霧乾燥工程後の前記ガスの温度が70℃以下である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記噴霧乾燥工程後の前記ガスの温度が60℃以下である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
噴霧される前の前記水溶液が少なくとも20℃の温度である、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
噴霧される前の前記水溶液が80℃以下の温度である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記水溶液が、噴霧される前に20℃以上25℃以下の温度に予熱される、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法によって製造され、炭酸水素ナトリウム粒子1kg当たり少なくとも20mgの前記添加剤を含む、炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項39】
炭酸水素ナトリウム粒子1kg当たり少なくとも100mg以上の前記添加剤を含む、請求項38に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項40】
炭酸水素ナトリウム粒子1kg当たり少なくとも500mg以上の前記添加剤を含む、請求項38に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項41】
炭酸水素ナトリウム粒子1kg当たり少なくとも5000m以上の前記添加剤を含む、請求項38に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項42】
炭酸水素ナトリウム粒子1kg当たり少なくとも10000mg以上の前記添加剤を含む、請求項38に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項43】
50000mg以下の前記添加剤を含む、請求項38〜42のいずれか1項に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項44】
30000mg以下の前記添加剤を含む、請求項43に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項45】
20000mg以下の前記添加剤を含む、請求項43に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項46】
BET比表面積が少なくとも4mgである、請求項38〜45のいずれか1項に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項47】
BET比表面積が少なくとも5m/gである、請求項46に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項48】
前記添加剤がマグネシウムMg2+の化合物であり、BET比表面積が少なくとも6mgである、請求項46又は47に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項49】
BET比表面積が少なくとも9m/gである、請求項48に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項50】
前記添加剤がアルキルベンゼンスルホン酸塩であり、BET比表面積が少なくとも6m/gである、請求項46又は47に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項51】
前記添加剤が大豆レシチンである、請求項46又は47に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項52】
球形である、請求項38〜51のいずれか1項に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項53】
前記添加剤がマグネシウム塩である、中空球形状の請求項38〜49のいずれか1項に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項54】
水溶液1kg当たり150〜500mg Mgのマグネシウム塩を含む水性組成物から製造される、請求項38〜49、52、53のいずれか1項に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項55】
かさ密度が40〜80kg/mである、請求項54に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項56】
水溶液1kg当たり、100〜1000mgのアルキルベンゼンスルホンナトリウムを含む水溶液から製造される、請求項52に記載の炭酸水素ナトリウム粒子。
【請求項57】
請求項38〜56のいずれか1項に記載の炭酸水素ナトリウム粒子の、発泡プラスチック製造における発泡剤としての使用。
【請求項58】
請求項55に記載の炭酸水素ナトリウム粒子の、吸入用薬品用途での使用。
【請求項59】
請求項38〜56のいずれか1項に記載の炭酸水素ナトリウム粒子を含む水性ゲル。
【請求項60】
請求項38〜56のいずれか1項に記載の炭酸水素ナトリウム粒子の焼成によって得られる又は得た炭酸ナトリウム粒子。
【請求項61】
BET比表面積が少なくとも15mgである、請求項60に記載の炭酸ナトリウム粒子。
【請求項62】
BET比表面積が少なくとも120m/gである、請求項61に記載の炭酸ナトリウム粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1〜10重量%の炭酸水素ナトリウムと、マグネシウム化合物(Mg)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び大豆レシチンからなる群から選択される添加剤とを含む水溶液の噴霧乾燥又は噴霧による、炭酸水素ナトリウムの製造方法に関する。
【0002】
本発明は、このように製造された炭酸水素ナトリウム粒子、及び本発明の炭酸水素ナトリウム粒子を含む水性ゲルにも関し、また、本発明の炭酸水素ナトリウム粒子の焼成により得られる又は得た炭酸ナトリウム粒子にも関する。
【背景技術】
【0003】
本特許は、噴霧法による炭酸水素ナトリウムの乾燥によって約100ナノメートルのオーダーの粒径を得ることに関する。
【0004】
米国特許第5411750明細書には、噴霧法によって炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムとの混合物を乾燥し、粒径100nm〜1μm(透過型電子顕微鏡及びX線回折によって測定した粒径)、比表面積6〜15m/gの粒子を得ることが記載されている。このような小さな粒径及び大きい比表面積を得るために、噴霧乾燥には非常に低濃度の炭酸水素化合物が使用されているが、3g KHCO/100g HO、3g NaHCO/100g HO、つまり各炭酸化合物についてそれぞれ0.3%、は非常に低い。これは、炭酸水素塩1トン当たり約99トンの水を留去すべきことになる(140℃の空気使用)。したがって、これは製造する炭酸水素塩粒子1トンにつき大量のエネルギーが消費されることになる。この文献は、炭酸水素ナトリウム溶液よりも、炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムの両方を含む溶液の方がより小さい粒子を形成できることを示唆している。この文献には、得られる粒子が一次粒子の凝集集合体結晶であることが開示されており、このような凝集体の形状については記載されていない。
【0005】
この文献には、より濃い炭酸水素塩水溶液を使用した場合により低コストで炭酸水素ナトリウム粒子を得る方法について記載されておらず、また、流動性が向上した(流動性の向上により安定なゲルを得ることが可能になり、また炭酸ナトリウムの形態に焼成される場合に反応性が向上した粉末が得られる)異なる形状の粒子、特に球状の粒子についての記載がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、このタイプの技術を改良すること、及び、低コストで新規な炭酸水素ナトリウム粒子を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、1〜10重量%の炭酸水素ナトリウムと、マグネシウム化合物(Mg)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び大豆レシチンからなる群から選択される添加剤とを含む水溶液を噴霧乾燥することによる、炭酸水素ナトリウム粒子の製造方法に関する。
【0008】
本発明は、本発明の方法によって製造され、炭酸水素ナトリウム粒子1kg当たり少なくとも20mgの添加剤(マグネシウム化合物の場合はMgのミリグラムとして表される)を含む、炭酸水素ナトリウム粒子にも関する。
【0009】
これらの非常に低いかさ密度や大きい比表面積や特異的な形状によって、制御可能な溶解速度、吸入用薬品用途での使用のための気体への分散容易性、粒子が例えばプラスチックの発泡剤として使用される場合で添加剤がアルキルベンゼンスルホン酸塩又は大豆レシチンの場合の向上した粒子のポリマーとの界面相溶性、及び速い焼成速度、という興味深い特性がもたらされることから、本発明はこのような炭酸水素ナトリウム粒子の使用にも関する。
【0010】
本発明は、沈降速度が非常に遅く安定な、本発明の炭酸水素ナトリウム粒子を含む水性ゲルにも関し、また、本発明の炭酸水素ナトリウム粒子の焼成により得られる又は得た、大きい比表面積且つ非常に低いかさ密度の炭酸ナトリウム粒子にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】添加剤なしの参照試験である実施例1で得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真である。
図2】アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(NaDBS)添加剤を用いた実施例2で得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真である。
図3】大豆レシチン添加剤を用いた実施例3で得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真である。
図4】添加剤なしの参照試験である実施例5で得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真である。
図5】添加剤としてNaDBSを用いた実施例6で得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真である。
図6】添加剤としてレシチンを用いた実施例7で得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真である。
図7】添加剤としてMg化合物を用いた実施例8で得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真である。
図8】実施例5〜8の炭酸水素ナトリウム粒子中空球の概略図(断面)及び式の記号である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
出願中、1つの要素または構成要素が、列挙された要素または構成要素のリスト中に含まれるかつ/またはこのリストから選択されるものと記されている場合、本明細書で明示的に企図されている関連する実施形態の中で、その要素または構成要素は同様に、個別の列挙された要素および構成要素のいずれか1つでもあり得るか、または、明示的に列挙された要素または構成要素のいずれか2つ以上からなる群からも選択され得ることを理解すべきである。
【0013】
さらに、本明細書中に記載されている器具、プロセスまたは方法の要素および/または特徴は、本明細書中において明示的であるか暗示的であるかに関わらず、本教示の範囲および開示から逸脱することなくさまざまな形で組合せることのできるものであることを理解すべきである。
【0014】
本明細書において、用語「約」は、特に明記しない限り、その公称値から±10%の変動を意味する。
【0015】
記号「%」は、特に明記しない限り、「重量%」を意味する。
【0016】
本明細書において「球形」の粒子とは、走査型電子顕微鏡上の形状が、小さい方の直径に対する大きい方の直径の比が1.4未満の卵形である粒子を意味する。
【0017】
噴霧乾燥又は噴霧による乾燥は、乾燥技術である。この方法は、高温ガス流中の溶液(又は懸濁液)の形態である乾燥すべき製品を噴霧し、数秒あるいはわずかな時間のうちに粉末を得ることからなる。製品を微細な液滴に分割することで大きな物質移動表面が生じ、使用した溶液の溶媒が迅速に蒸発する。
【0018】
噴霧による乾燥のための装置は、一般的に複数のモジュールを含む。すなわち、溶液を噴霧又はスプレーするための装置を含む、溶液を貯蔵及び噴霧するための回路を含むモジュールと、高温ガスの準備及びこれを噴霧された溶液と接触させる場所である乾燥チャンバー(ここで噴霧溶液が蒸発し、粒子が生成する)に移送するためのモジュールと、一般的にはサイクロンとフィルターとを含む、粒子を集めるためのモジュールである。
【0019】
一般的に、溶液の噴霧又はスプレーのための装置は、圧縮ガス噴霧器又は分散タービンである。本発明では、溶液を噴霧するために超音波ノズルを使用することもできる。
【0020】
炭酸水素ナトリウム溶液は、好ましくは炭酸水素ナトリウム水溶液である。しかし、添加剤を溶解することのできる、他の極性溶媒又は、例えば水とエタノールの混合物などの極性溶媒の混合物も適している。この場合、ガス燃焼及び/又はガス爆発を防ぐために、通常二酸化炭素や窒素などのエタノールに対して不活性なガスが用いられる。
【0021】
本発明は、1〜10重量%の炭酸水素ナトリウムと、マグネシウム化合物(Mg)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及び大豆レシチンからなる群から選択される添加剤とを含む水溶液を噴霧乾燥することによる、炭酸水素ナトリウム粒子の製造方法に関する。
【0022】
マグネシウムMgの化合物は、好ましくはマグネシウム塩であり、より好ましくは、これは水への溶解度が水1kg当たり少なくとも5000mg Mg(5g/kg)であるマグネシウム塩である。MgCl、MgSO、MgNOなどのマグネシウム化合物又はマグネシウム塩が好ましい。MgClがより好ましい。本発明では、マグネシウム化合物添加剤の量的割合について述べる場合、これはマグネシウムMgの重量で表されるマグネシウム化合物の量に関する。
【0023】
本発明のアルキルベンゼンスルホン酸塩は、通常少なくとも6個の炭素、好ましくは少なくとも8個の炭素、より好ましくは少なくとも10個の炭素を含むアルキル鎖を有するベンゼンスルホン酸塩である。アルキル鎖は、有利には24個以下の炭素、好ましくは20個以下の炭素、更に好ましくは16個以下の炭素を含む。ドデシルベンゼンスルホン酸塩が特に有利である。本発明では、アルキルベンゼンスルホン酸塩は通常そのナトリウム塩として使用される。
【0024】
本発明で使用される大豆レシチンは、好ましくは大豆油由来のレシチン化合物である。
【0025】
本発明では、添加剤は有利には、炭酸水素ナトリウム溶液1キログラム当たり、活性物質は1〜1000mg、又は1〜2000mgの量添加される。
通常、水溶液は、水溶液1キログラム当たり少なくとも1mg、好ましくは5mg以上、より好ましくは10mg以上、更に好ましくは100mg以上、更に好ましくは200mg以上の添加剤を含み、添加剤がマグネシウム化合物の場合には、上記量は水溶液1キログラム当たりのmg Mgを表している。通常、水溶液は、水溶液1キログラム当たり2000mg以下、好ましくは1500mg以下、より好ましくは1200mg以下の添加剤を含む。
【0026】
通常、水溶液は2重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは4重量%以上、更に好ましくは5重量%の炭酸水素ナトリウムを含む。水溶液中に高濃度に炭酸水素ナトリウムが存在すると、スプレー装置又は噴霧装置がすぐに詰まってしまうことになるため不利である。そのため、通常は水溶液が10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下の炭酸水素ナトリウムを含むことが推奨される。好ましくは、炭酸水素ナトリウム水溶液は1〜10重量%、有利には3〜8重量%、より有利には4〜6重量%の炭酸水素ナトリウムを含む水溶液である。
【0027】
高温ガスを用いて乾燥すると、炭酸水素ナトリウムの一部は炭酸ナトリウムとCOと水の形態に分解する。本発明のある有利な実施形態では、噴霧乾燥は乾燥ガス基準で少なくとも5体積%、有利には少なくとも10体積%、より有利には少なくとも20体積%、更に有利には少なくとも30体積%のCOを含むガス中で行われる。これによって、炭酸水素ナトリウムが炭酸ナトリウムの固体とCO及び水の気体とに分解するのを抑制することができる。
【0028】
したがって、30体積%のCO含量とすることで、炭酸水素ナトリウム粒子中の炭酸ナトリウム含量を1重量%未満に減らすことができる。
【0029】
本発明のある更に有利な実施形態では、噴霧乾燥又は噴霧は、乾燥ガス基準で少なくとも80体積%、有利には少なくとも90体積%、より有利には少なくとも95体積%のCO2を含むガス中で行われる。
【0030】
通常、噴霧乾燥は40〜220℃に予熱したガスを用いて行われる。有利には、噴霧乾燥は噴霧乾燥チャンバー中で行われ、ガスは予熱された後に、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃、更に好ましくは少なくとも70℃で噴霧乾燥チャンバーに導入される。また有利には、ガスは予熱された後に、220℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは130℃以下で噴霧乾燥チャンバーに導入される。
【0031】
噴霧乾燥工程後のガスの温度は80℃以下、有利には70℃以下、より有利には60℃以下であることが好ましい。
【0032】
本発明のある実施形態では、噴霧乾燥工程時に噴霧される前に、水溶液は少なくとも20℃、好ましくは80℃以下の温度に予熱される。ある具体的な実施形態では、噴霧乾燥工程時に噴霧される前に、水溶液は20℃以上25℃以下の温度に予熱される。
【0033】
本発明は、本発明にかかる方法によって製造された、炭酸水素ナトリウム粒子1kg当たり少なくとも20mg、好ましくは100mg以上、より好ましくは500mg以上、更に好ましくは5000mg以上、更に好ましくは10000mg以上の添加剤を含む、炭酸水素ナトリウム粒子にも関する。本発明の炭酸水素ナトリウム粒子は、通常50000mg以下、好ましくは30000mg以下、より好ましくは20000mg以下の添加剤を含む。特に、本発明は、MgClやMgSOやMgNOなどのマグネシウム塩、又はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、又は大豆レシチンを20〜20000mg含む、本発明にかかる方法によって製造される炭酸水素ナトリウム粒子にも関する。
【0034】
本発明にかかる方法によって得られる炭酸水素ナトリウム粒子は、添加剤なしで得られる炭酸水素ナトリウム粒子と比較して、驚くほど増加したBET比表面積を示した。これにより、噴霧乾燥に高濃度の水溶液を用いても、大きい比表面積の炭酸水素ナトリウム粒子を製造することが可能である。更に、この炭酸水素ナトリウム粒子の大きさは、添加剤なしで得られる炭酸水素ナトリウム粒子と比較して小さい。これも驚くべきことには、このような添加剤を用いると、電子顕微鏡で観察されるように、通常少なくとも一部の粒子が球形で得られる。球形のこのような粒子の統計的な数は、球形の数中の得られた粒子の少なくとも50%にのぼる。
【0035】
本発明は、
− 本方法によって得られる、BET比表面積が少なくとも4m/g、好ましくは少なくとも5m/gである炭酸水素ナトリウム粒子、
− 添加剤がマグネシウム塩であり、BET比表面積が少なくとも6m/g、好ましくは少なくとも9m/gである、本方法によって得られる炭酸水素ナトリウム粒子、
− 添加剤がアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムであり、BET比表面積が少なくとも6m/gである、本方法によって得られる炭酸水素ナトリウム粒子、
− 添加剤が大豆レシチン又はアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムであり、BET比表面積が少なくとも4m/g、好ましくは少なくとも5m/gである、本方法によって得られる炭酸水素ナトリウム粒子、
にも関する。
【0036】
これらの新規な炭酸水素ナトリウム粒子は、次のような有利な特性を有する。
・マグネシウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、又は大豆レシチンを使用した場合、例えば重量平均粒径(D50)が約3〜11μmであり、通常それぞれが約200nmである微結晶から構成される、小さい粒子サイズの炭酸水素ナトリウム粒子。これに対し、添加剤なしの炭酸水素ナトリウム粒子の重量平均粒径(D50)は13〜14μmである。
・同じ条件で添加剤なしでのBET比表面積が2.8m/gであるのに対し、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、特にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用した場合には約6.6m/gにまで、大豆レシチンを使用した場合には約6m/gにまで、Mg2+を使用した場合には約10m/gにまで増加した、BET比表面積。
・添加剤としてマグネシウム塩又はアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム又は大豆レシチンを用いることで得られる球形。これにより粉末の流動性が向上し、安息角に関して、例えばSOLVAY BICAR0/13(0〜130μm)などのはるかに大きい炭酸水素ナトリウム粒子径の炭酸水素塩に近づく。
・マグネシウム塩を用いることで得られる中空球の部分。
・本発明の粒子からなる粉末の、450kg/m未満という見かけかさ密度。特にマグネシウム塩を用いた場合には、一般的に500〜1200kgである既存の工業製品の見かけ重量と比較して、値は約200kg/mへと、更には約46kg/mへと低下する。
・アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム又は大豆レシチンを用いた場合の、噴霧乾燥した炭酸水素ナトリウムの焼成によって得られる炭酸ナトリウムの大きい比表面積(例えば約22〜25m/g)。
・添加剤全くなしの噴霧乾燥した炭酸水素ナトリウムが95%の溶解に最大15秒しかからないのに対して、噴霧乾燥した炭酸水素ナトリウムがマグネシウム塩を用いて製造された場合の、水への相対的に緩やかな溶解速度(95%の溶解に少なくとも40秒)。
【0037】
更に、本発明の小サイズ化された炭酸水素ナトリウム粒子は、低い懸濁液濃度で、例えば、32〜33重量%(ゲル総重量基準)の固体炭酸水素ナトリウムの水性懸濁液で、特にマグネシウムを含む炭酸水素ナトリウム粒子を用いた場合に、水又は極性溶媒と安定なゲルを形成することができる。
【0038】
これによって、これらの炭酸水素ナトリウム粒子に対して以下のような様々な用途を想定することができる。
・110〜180℃の温度で成形されるポリマーの発泡剤又は気泡剤。これらの炭酸水素ナトリウム粒子の熱脱炭酸速度は非常に早く、Bicar 0/13タイプ(Solvay)の炭酸水素ナトリウムが23分、Bicar 13/27(Solvay)が28分であるのに対して、140℃で95%の固形分が7分で分解する。レシチン又はアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(特にはNaDBS)を含む粒子が特に有利である。
・剥離剤(ヘルスケア用)。特に、球の形状によって、炭酸水素ナトリウム粒子が肌でよりよく伸び、死滅細胞を取り除きやすくする効果を高めることができる。
・家禽などの農用動物又は家畜の寄生虫用の抗寄生虫薬。ゲルの形態で使用され、安定なゲルを得るためにシリカを必要としない。
・大きい比表面積及び特にはその低い有機物含量を生かした、脱臭剤(ヘルスケア及び家事用)。
・吸入剤(有効成分担体として、医薬用)、又は、粘膜のpH緩衝用や酸性ガスを吸入した場合の肺のpH緩衝用。
【0039】
したがって、本発明は、
− 本発明の方法によって得られる又は得た、球形の炭酸水素ナトリウム粒子、
− 添加剤がマグネシウム塩であり、中空球状である、本発明の方法によって得られる又は得た炭酸水素ナトリウム粒子、
にも関する。
【0040】
特に、本発明は、
− 中空球状であり、添加剤がマグネシウム塩である、本発明の方法によって得られる又は得た、上に列挙した特性の1つを有する炭酸水素ナトリウム粒子、
− 150〜500mgのマグネシウム塩(水溶液1kg当たりのMgのmgとして表される)を含む水性組成物から製造した炭酸水素ナトリウム粒子であって、特に球体の70%超、又は80%超、又は更には90%超が、1未満の形状係数を有する中空球である、炭酸水素ナトリウム粒子に関し、又は別の特定の実施形態では40〜80kg/mのかさ密度を有するそのような炭酸水素ナトリウム粒子にも関する。
【0041】
本発明は、
− 水溶液が水溶液1kg当たり100〜1000mgのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む、本発明の方法によって得られる球形の炭酸水素ナトリウム粒子、
にも関する。
【0042】
本発明は、
− 本発明の方法によって製造される炭酸水素ナトリウム粒子の、発泡プラスチック製造における発泡剤としての使用、
− 本発明の方法によって製造される炭酸水素ナトリウム粒子の、吸入用薬品用途での使用、にも関する。
【0043】
本発明は、
− 本発明の方法によって製造される炭酸水素ナトリウム粒子を含む水性ゲル、
にも関する。
【0044】
本発明の炭酸水素ナトリウム粒子が炭酸ナトリウム粒子に焼成される場合、これらは次の式に従い水と二酸化炭素を放出する。
2NaHCO3(s)→NaCO3(s)+H(g)+CO2(g)
【0045】
本発明の炭酸水素ナトリウム粒子が焼成されると、BET比表面積は増加する。通常、このような粒子は少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%の炭酸ナトリウムを含む。温度や焼成時間などの好ましい焼成条件は、添加剤の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%が炭酸ナトリウム粒子中に残存するような条件である(マグネシウム化合物はMgとして計算し、アルキルベンゼンスルホン酸塩及び大豆レシチンは有機炭素分として計算)。
【0046】
このような条件では、生成した炭酸ナトリウム粒子のBET比表面積は、添加剤なしで噴霧乾燥することによって得た炭酸水素ナトリウム粒子を焼成したもの比べて増加する。更に、噴霧乾燥時に添加された添加剤由来であり、一部は炭酸水素ナトリウム粒子の体積中に、一部は表面上に分布しているマグネシウム原子又は炭素原子は、得られる焼成粒子の体積中及び/又は表面上に残存しており、このような焼成粒子が触媒担体として又は医薬品の有効成分担体として使用される場合に興味深い。
【0047】
したがって、本発明は、特には
− 本発明の炭酸水素ナトリウム粒子の焼成によって得られる炭酸ナトリウム粒子、
− BET比表面積が少なくとも15m/g、好ましくは少なくとも20m/gである本発明の炭酸ナトリウム粒子、
− 水溶液1kg当たり、少なくとも150mg又は少なくとも500mgのマグネシウム塩(Mgとして)、又はアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、又は大豆レシチンを用いて製造された、炭酸水素ナトリウム粒子の焼成で得られる又は得た、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%の添加剤(マグネシウム化合物はMgとして計算し、アルキルベンゼンスルホン酸塩及び大豆レシチンは有機炭素分として計算)を含む、本発明の炭酸水素ナトリウム粒子の焼成によって得られる又は得た炭酸ナトリウム粒子、
− 本発明の炭酸水素ナトリウム粒子、好ましくは水溶液1kg当たり、少なくとも500mgのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム又は少なくとも500mgの大豆レシチンを用いた製造によって得られるまたは得られた炭酸水素ナトリウム粒子、の焼成によって得られる又は得た、炭酸ナトリウム粒子、特にはBET比表面積が少なくとも15m/g、好ましくは少なくとも20m/gであり、好ましくは水溶液1kg当たり、少なくとも500mgのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム又は少なくとも500mgの大豆レシチンを用いて製造された炭酸水素ナトリウムから得られる又は得た炭酸水素ナトリウム粒子、より好ましくは、炭酸水素ナトリウム粒子中に少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも40%の添加剤(マグネシウム化合物はMgとして計算し、アルキルベンゼンスルホン酸塩及び大豆レシチンは有機炭素分として計算)も含む、炭酸ナトリウム粒子、
に関する。
【0048】
以降の実施例は本発明の非限定的な例示のために示されており、当業者が容易に想到できるこの変形も可能である。
【実施例】
【0049】
以降の実施例は、BUCHI実験室型噴霧乾燥器、モデルB−191を用いて行われた。装置の特性は表1に示されている。
【0050】
【0051】
実施例1(比較例):Buchi B−191 lab実験室型噴霧乾燥器を用いた添加剤なしの噴霧試験:
試験条件は表2に示されている。
【0052】
【0053】
特定の特性を有する炭酸水素ナトリウム粒子が得られた(4つの参照試験、A、B、C、Dの平均)。
BET比表面積:3.4m/g(+/−0.3)
直径D50:9μm(−)
自由流れ密度:216kg/m3(−)
タップ密度:404kg/m3(−)
粉末中のNaCO含量:4重量%(+/−1%)
【0054】
重量平均径(D50)は、波長632.8nm、直径18mmのHe−Neレーザー源と、後方散乱300mmレンズ(300RF)を備えた測定セルと、MS17液体調製ユニットと、自動溶媒濾過キット(「エタノールキット」)とを使用したMalvern Mastersizer S粒度分析計で、炭酸水素塩の飽和エタノール溶液を用いたレーザー回折及び散乱により測定した。
【0055】
BET(Brunauer、Emmett、Teller)比表面積は、吸着ガスとして窒素を用いたMicromeritics Gemini 2360 BET分析計で測定した。測定は、少なくとも1mのBET面積が形成された粉末試料に対して行われ、粉末試料は、炭酸ナトリウム粒子に吸着されている微量の湿気を取り除くために、室温(20〜25℃)で5時間ヘリウムガスを用いて予め脱気された。
【0056】
図1は、添加剤なしの参考試験で得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真を示す。
【0057】
実施例2(本発明):
添加剤として1000ppmのNaDBSを用いた試験(参照試験59)
【0058】
運転条件は、噴霧溶液に1000ppmのNaDBSを有していた以外は実施例1と同じであった。
【0059】
特定の特性を有する炭酸水素ナトリウム粒子が得られた。
BET比表面積:6m/g
粉末中のNaCO含量:3.8%
【0060】
得られた粉末は流体であり、得られた粒子は球形であった。
【0061】
図2は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(NaDBS)添加剤を用いてこのようにして得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真を示す。
【0062】
実施例3(本発明):
添加剤として1000ppmの大豆レシチンを用いた試験
【0063】
運転条件は、噴霧溶液に1000ppmの大豆レシチンを有していた以外は実施例1と同じであった。
【0064】
特定の特性を有する炭酸水素ナトリウム粒子が得られた。
BET比表面積:5.8m/g
粉末中のNaCO含量:4.5%
【0065】
得られた粉末は流体であり、得られた粒子は球形であった。
【0066】
図3は、大豆レシチン添加剤を用いてこのようにして得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真を示す。
【0067】
実施例4(本発明):
添加剤として100ppm及び1000ppmのMg(MgCl)を用いた試験
【0068】
運転条件は、噴霧溶液に100ppm及び1000ppmのMgを有していた以外は実施例1と同じであった。
【0069】
それぞれ特定の特性を有する炭酸水素ナトリウム粒子が得られた(100及び1000ppmのMg)。
BET比表面積:6.2m/g(100ppm)及び9.7m/g(1000ppm)
粉末中のNaCO含量:5.7%(100ppm)及び10.9%(1000ppm)
【0070】
実施例5〜8(本発明):
添加剤なしの試験、NaDBS1000ppmを用いた試験、大豆レシチン1000ppmを用いた試験、添加剤としてMg254ppmを用いた試験
【0071】
運転条件は実施例1と同じであった。
【0072】
表3及び図4〜7に、噴霧乾燥した炭酸水素ナトリウムの主な特性及びこのようにして得られた炭酸水素ナトリウム粒子のSEM写真が記載されている。
【0073】
【0074】
図4:実施例5−添加剤なしの参照試験:得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真を示す。
図5:実施例6:添加剤としてNaDBS:得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真を示す。
図6:実施例7:添加剤としてレシチン:得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真を示す。
図7:実施例8:添加剤としてMgイオン:得られた炭酸水素ナトリウム粒子の走査顕微鏡写真を示す。
【0075】
同様の試験を、上と同じMg量で、MgSO、Mg(NOを用いて行った。同様の結果が得られた。
【0076】
我々は、中空球は中間の量のマグネシウムイオンで得られることに気付くことができる(約254ppmのMgでの試験参照)。溶液中の濃度が約1000ppm Mgと高い場合、球体が破裂して非常に細かい粒子となる(実施例4など)。
【0077】
また、形状係数は、球体が中空になる能力を見積もるために用いられてきた。この係数(記号ガンマ)は、比表面積(記号a)、平均径D50(記号L:中空球の外径に対応)、中空球の内径(記号l)、中空球の層の厚さ(したがって:記号L−1)、及びバルク密度(記号PSE)と、次式のような関係がある。
図8は、炭酸水素ナトリウム粒子中空球の概略図(断面)である。
最後に、形状係数は次のように定義することができる。
【0078】
上記形状係数が1未満の場合、これは噴霧乾燥された炭酸水素ナトリウム中の中空球の量が約75%より多いことを示す。
【0079】
これらの炭酸水素ナトリウムを、オーブン中、240℃で2時間、更に焼成する。次の化学反応が生じる。
2NaHCO3(s)→NaCO3(s)+CO2(g)+H
【0080】
反応によって、大きい比表面積の炭酸ナトリウム粒子が生成する。アルキルベンゼンスルホン酸塩(NaDBS)を用いた場合は約25m/gであり、大豆レシチンでは22m/gであり、マグネシウム化合物では7m/gである。
【0081】
【0082】
実施例9〜12(本発明):噴霧乾燥をより大きいスケールでも試験した。空気予熱器は、空気を300℃に加熱できる4つの抵抗で構成されていた。液体は回転噴霧器(8穴、20000回/分)で噴霧した。噴霧乾燥チャンバーは、
− 内径が1200mmで全高が内径の約2倍である上部シリンダーと、
− シリンダー底部の、60℃の角度のコーンと、
から構成されていた。
【0083】
乾燥粉末は、粉末から湿った空気を分離するサイクロン(限界粒径約2μm)のオーバーフローで回収した。運転条件は表5に示されている。
【0084】
試験は添加剤なしと、添加剤として1000ppmのNaDBSあり、1000ppmの大豆レシチンあり、254ppmのMgありで行われた。
【0085】
【0086】
水中への相対的な溶解速度の結果が表6に示されている。試験は1000gの脱塩水が入った、全部で4つの垂直翼スターラー(直径42mm、高さ11mm)を備えているビーカー(直径100mm、高さ/直径:1.7)中で行われた。磁気撹拌は350回/分に設定される。液体+固体の混合物の温度は25℃に設定される。その後、10gの粉末を素早くビーカーの中に入れ、溶解の挙動を伝導率測定によって観察する。
【0087】
【0088】
これらの結果は、Mg化合物を用いた製造によって得られる炭酸水素ナトリウム粒子の溶解時間(t95%)は、添加剤なしで得られる粒子と比較して増加する傾向があることを示している。
【0089】
本発明の好ましい実施形態が図示および記載されているが、本発明の趣旨または教示から逸脱することなく当業者によるその変更が可能である。本明細書に記載の実施形態は単なる例示であり、限定的ではない。システムおよび方法の多くの変形および変更が可能であり、これらも本発明の範囲内である。
【0090】
参照によって本明細書に包含されているいずれかの特許、特許出願、及び刊行物の開示が、用語が不明確になるほどに本出願の記載と相反するときは、本明細書が優先される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8