特許第6367227号(P6367227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367227
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】脂肪アミドの水性分散液
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20180723BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20180723BHJP
   C07C 233/09 20060101ALN20180723BHJP
   C07C 57/03 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
   B01J13/00 B
   C09K3/00 R
   !C07C233/09 Z
   !C07C57/03
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-550417(P2015-550417)
(86)(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公表番号】特表2016-504463(P2016-504463A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】US2013073240
(87)【国際公開番号】WO2014105379
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】61/746,741
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル・アン・チャーチフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジェイ・ヤング
(72)【発明者】
【氏名】マイ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エル・トムチャック
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/087196(WO,A1)
【文献】 特公昭59−045651(JP,B2)
【文献】 特開2006−002058(JP,A)
【文献】 特開2002−018254(JP,A)
【文献】 特開2009−157271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
C09K 3/00
C07B
C07C
C09D
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に分散した粒子を含む組成物であって、前記分散した粒子が、エルカミドおよびエルカ酸を含み、エルカ酸の50モル%以上が、カルボキシレート形態であり、エルカミドのエルカ酸に対する重量比が20:8050:50であり、前記粒子中のエルカミドの量が、前記粒子の重量に基づいて15重量%以上であり、かつ分散相が、前記組成物の重量に基づいて30重量%以上を占める、組成物。
【請求項2】
水性媒体中に分散した粒子および1つ以上のエトキシル化脂肪化合物界面活性剤を含む組成物であって、前記分散した粒子が、エルカミドおよびエルカ酸を含み、エルカ酸の50モル%以上が、カルボキシレート形態であり、エルカミドのエルカ酸に対する重量比が30:70〜80:20であり、前記粒子中のエルカミドの量が、前記粒子の重量に基づいて15重量%以上であり、かつ分散相が、前記組成物の重量に基づいて30重量%以上を占める、組成物。
【請求項3】
前記粒子のメジアン径が50マイクロメートル以下である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
エルカ酸の75モル%以上がカルボキシレート形態である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
水性媒体中に分散した粒子を含む組成物を作製する方法であって、前記分散した粒子がエルカミドおよびエルカ酸を含み、エルカ酸の50モル%以上が、カルボキシレート形態であり、エルカミドのエルカ酸に対する重量比が20:8050:50であり、前記粒子中のエルカミドの量が、前記粒子の重量に基づいて15重量%以上であり、前記方法が、エルカミドエルカ酸、および水を含む混合物に剪断を加えるステップを含み、前記剪断を加えることが59℃を超える温度で実施され、前記混合物中の水の量が、前記混合物の重量に基づいて、70重量%以下である、方法。
【請求項6】
水性媒体中に分散した粒子および1つ以上のエトキシル化脂肪化合物界面活性剤を含む組成物を作製する方法であって、前記分散した粒子がエルカミドおよびエルカ酸を含み、エルカ酸の50モル%以上が、カルボキシレート形態であり、エルカミドのエルカ酸に対する重量比が30:70〜80:20であり、前記粒子中のエルカミドの量が、前記粒子の重量に基づいて15重量%以上であり、前記方法が、エルカミド、エルカ酸、前記界面活性剤および水を含む混合物に剪断を加えるステップを含み、前記剪断を加えることが59℃を超える温度で実施され、前記混合物中の水の量が、前記混合物の重量に基づいて、70重量%以下である、方法。
【請求項7】
前記混合物中の水の量が、前記混合物の重量に基づいて、12重量%以下である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物が1つ以上の中和剤をさらに含み、前記中和剤の当量のエルカ酸の当量に対する比率が0.5:1〜1.01:1である、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記混合物に前記剪断を加えることが、エルカ酸の融点を超える温度で実施される、請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
脂肪アミドは、例えば、ポリオレフィンのための滑り補助添加剤としてなどを含む様々な目的に有用である。水性媒体中の安定した分散液として脂肪アミドを提供することが望ましい。脂肪アミドは水溶性ではないので、水性組成物中には含まれ得ない。水中にかかる分散液を提供する能力は、水性組成物中に脂肪アミドを含めることを可能にし得る。分散した粒子が有用な量の脂肪アミドを保有するために、分散した粒子は、粒子の重量に基づいて、10重量%を超える脂肪アミドを含有しなければならない。しかしながら、過去において、安定した保存可能期間を有するかかる分散液を作製する方法は知られていなかった。
【0002】
国際公開第2011/053904号は、アルキド樹脂の水性分散液を作製する方法を提供する。分散した粒子が脂肪アミドを含有する分散液を作製する方法を発見することが所望される。
【0003】
以下は本発明の陳述である。
【0004】
本発明の第1の態様は、水性媒体中に分散した粒子を含む組成物であり、該分散した粒子が、脂肪アミドおよび1つ以上の脂肪酸を含み、該脂肪酸の50モル%以上がカルボキシレート形態であり、該脂肪アミドと該脂肪酸との重量比が、0.12:1〜2.3:1である。
【0005】
本発明の第2の態様は、該脂肪アミド、該脂肪酸、および水を含む混合物に剪断を加えるステップを含む、組成物を作製する方法であり、該剪断を加えることが、59℃を超える温度で実施され、該混合物中の水の量が、該混合物の重量に基づいて、70重量%以下である。
【0006】
以下は本発明の詳細な記述である。
【0007】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、文脈が別途明確に示さない限り、指定された定義を有する。
【0008】
本明細書で使用される場合、分散液は、連続液体媒体の至る所に分布される離散粒子を含有する組成物である。分布された粒子は分散型と言われる。各離散粒子は、固体、液体、またはそれらの組み合わせであり得る。連続液体媒体は、10℃〜40℃を含む温度範囲にわたって液体である。連続液体媒体の組成物が、連続液体媒体の重量に基づいて、60重量%以上の量の水を含有する場合、連続液体媒体は、水性媒体である。
【0009】
一群の粒子の組成は、組成物が粒子の間で実質的に変化しない場合、本明細書において均一であると見なされる。
【0010】
本明細書で使用される場合、脂肪酸は、化学式R−COOHを有し、式中、Rは、8個以上の炭素原子を含む置換または非置換ヒドロカルビル基である。本明細書で使用される場合、用語脂肪酸は、カルボキシル形態R−COOHおよびカルボキシレート形態
の両方を含むよう意図されている。カルボキシレート形態は、溶液形態または塩形態であり得る。
【0011】
本明細書で使用される場合、脂肪アミドは、化学式R−C(O)NHRを有し、式中、Rは、8個以上の炭素原子を含む置換または非置換ヒドロカルビル基であり、Rは、以下から選択される:
(I)Rは、水素である(「I型」脂肪アミド)
(II)Rは、脂肪族非置換ヒドロカルビル基である(「II型」脂肪アミド)か、または
(III)Rは、構造−CHCH−NHC(O)−R(式中、Rが、8個以上の炭素原子を含む置換または非置換ヒドロカルビル基である)を有する(「III型」脂肪アミド)。
【0012】
エルカミドは、化学式CH−(CH−CH=CH−(CH11−C(O)−NHを有する。エルカ酸は、化学式CH−(CH−CH=CH−(CH11−C(O)−OHを有する。
【0013】
本明細書で使用される場合、液体組成物に剪断を加えることは、液体のサンプルの一部が液体のサンプルの別の部分に対して移動する機械的構成で液体の連続サンプルを配置することを意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、中和剤は、本発明の組成物中に使用される脂肪酸をカルボキシレート形態に変換するのに十分な強度の塩基である。
【0015】
本明細書で使用される場合、比率が「X:1以上」であるという陳述は、比率がY:1であることを意味し、Yは、X以上である。例えば、「3:1以上」であると言われる比率は、3:1または4:1または100:1であり得るが、2.9:1にはなり得ない。同様に、比率が「W:1以下」であるという陳述は、比率がZ:1であることを意味し、Zは、W以下である。例えば、「20:1以下」であると言われる比率は、20:1または19:1または0.15:1であり得るが、21:1にはなり得ない。
【0016】
本明細書で使用される場合、「室温」は約25℃である。
【0017】
本発明は、水性媒体である連続液体媒体に関する。好ましくは、水性媒体中の水の量は、水性媒体の重量に基づいて、70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0018】
本発明において、分散相は水性媒体中に分散する。好ましくは、体積基準での分散した粒子のメジアン直径は、50マイクロメートル以下、より好ましくは20マイクロメートル以下、より好ましくは10マイクロメートル以下、より好ましくは5マイクロメートル以下である。好ましくは、体積基準での分散した粒子のメジアン直径は、0.01マイクロメートル以上、より好ましくは0.02マイクロメートル以上、より好ましくは0.05マイクロメートル以上、より好ましくは0.1マイクロメートル以上である。
【0019】
好ましい脂肪アミドにおいて、Rは、12個以上の炭素原子、より好ましくは16個以上の炭素原子、より好ましくは18個以上の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基である。好ましい脂肪アミドにおいて、Rは、30個以下の炭素原子、より好ましくは25個以下を有する非置換ヒドロカルビル基である。
【0020】
III型脂肪アミドの中でも、好ましくは、Rは、12個以上の炭素原子、より好ましくは16個以上の炭素原子、より好ましくは18個以上の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基である。III型脂肪アミドの中でも、好ましくは、Rは、30個以下の炭素原子、より好ましくは25個以下を有する非置換ヒドロカルビル基である。II型脂肪アミドの中でも、好ましくは、Rは、12個以上の炭素原子、より好ましくは16個以上の炭素原子、より好ましくは18個以上の炭素原子を有する。II型脂肪アミドの中でも、好ましくは、Rは、30個以下の炭素原子、より好ましくは25個以下を有する。
【0021】
I型脂肪アミドが好ましい。好ましい脂肪アミドは、エルカミドおよびオレアミドであり、エルカミドが最も好ましい。
【0022】
好ましくは、分散した粒子の組成物は、均一である。
【0023】
好ましくは、粒子中の脂肪アミドの量は、粒子の重量に基づいて、60重量%以下、より好ましくは55重量%以下である。好ましくは、粒子中の脂肪アミドの量は、粒子の重量に基づいて、10重量%を超え、より好ましくは15重量%以上である。
【0024】
好ましくは、粒子中の脂肪酸の量は、粒子の重量に基づいて、40重量%以上、より好ましくは45重量%以上である。好ましくは、粒子中の脂肪酸の量は、粒子の重量に基づいて、95重量%以下、より好ましくは90重量%未満、より好ましくは85重量%以下である。
【0025】
粒子中、脂肪アミドと脂肪酸との重量比は、0.12:1以上、好ましくは0.18:1以上である。粒子中、脂肪アミドと脂肪酸との重量比は、2.3:1以下、好ましくは1.5:1以下、より好ましくは1.2:1以下である。
【0026】
好ましくは、脂肪酸のR基(上で定義された通りの)は、8個以上の炭素原子、より好ましくは14個以上の炭素原子、より好ましくは18個以上の炭素原子、より好ましくは20個以上の炭素原子を有する非置換炭化水素基である。好ましくは、脂肪酸のR基は、30個以下の炭素原子、より好ましくは25個以下の炭素原子を有する炭化水素基である。好ましくは、脂肪酸のR基は、1つまたは2つの炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基である。好ましくは、脂肪酸はエルカ酸である。
【0027】
好ましくは、一部または全ての脂肪酸はカルボキシレート形態である。好ましくは、カルボキシレート形態である脂肪酸のモル%は、50%〜100%、より好ましくは75%〜100%である。
【0028】
いくつかの実施形態において、1つ以上の界面活性剤も分散液中に存在する。陰イオン性および非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤がより好ましい。好ましい非イオン性界面活性剤は、ブロックコポリマー界面活性剤およびエトキシル化脂肪化合物界面活性剤である。エトキシル化脂肪化合物界面活性剤は、構造−(OCHCH−を含み、かつ非置換炭化水素基を含む分子を有する界面活性剤であり、好ましくは、nは3以上であり、より好ましくは、nは5以上であり、好ましくは、炭化水素基は、8個以上の炭素原子、より好ましくは12個以上の炭素原子、より好ましくは16個以上の炭素原子を有する。
【0029】
1つ以上の界面活性剤が組成物中に存在するとき、界面活性剤の好ましい量は、組成物の総重量に基づいて、5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。1つ以上の界面活性剤が組成物中に存在するとき、界面活性剤の好ましい量は、組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上である。
【0030】
本発明は、本明細書に記載される組成物を作製する方法も伴う。本発明の方法は、該脂肪アミド、該脂肪酸、および水を含有する混合物に剪断を加えるステップを含み、該剪断を加えることが、59℃を超える温度で実施され、該混合物中の水の量が、該混合物の重量に基づいて、30重量%以下である。
【0031】
本発明の方法は、好ましくは、分散相が、エマルジョンの重量に基づいて、エマルジョンの30重量%以上を占めるエマルジョンとして本明細書で定義される高内相エマルジョン(HIPエマルジョン)を作製することを伴う。好ましいHIPエマルジョン中、分散相の量は、エマルジョンの重量に基づいて、50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。HIPエマルジョンを生成するために、水、脂肪アミド、脂肪酸、中和剤、任意の界面活性剤、および任意のさらなる成分を含有する混合物(I)が作製される。
【0032】
好ましくは、混合物(I)中、脂肪アミドと脂肪酸との重量比は、2.3:1以下、より好ましくは1.5:1以下、より好ましくは1.2:1以下である。好ましくは、混合物(I)中、脂肪アミドと脂肪酸との重量比は、0.12:1以上、より好ましくは0.18:1以上である。
【0033】
混合物(I)中、水の量は、混合物(I)の重量に基づいて、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。好ましくは、混合物(I)中、水の量は、混合物(I)の重量に基づいて、1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。
【0034】
混合物(I)中、好ましい中和剤は、無機塩基および有機塩基である。有機塩基の中でも、有機アミンが好ましい。無機塩基が好ましい。好ましい無機塩基は、水酸化物化合物であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化アンモニウムがより好ましく、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウムがより好ましい。
【0035】
混合物(I)中、中和剤の量は、中和剤の当量と脂肪酸の当量との比率として本明細書で定義される当量比によって特徴付けられる。好ましくは、混合物(I)中の当量比は、1.2:1以下、より好ましくは1.01:1以下である。好ましくは、混合物(I)中の当量比は、0.5:1以上、より好ましくは0.6:1以上、より好ましくは0.7:1以上である。
【0036】
好ましくは、1つ以上の界面活性剤が混合物(I)中に含まれる。混合物(I)の好ましい界面活性剤および好ましい量は、本発明の組成物に関して本明細書で上述されたものと同一である。
【0037】
好ましくは、剪断は、機械式撹拌機を使用して混合物(I)に加えられる。好ましくは、機械式撹拌機は、均一な混合を提供し、これは、混合物(I)のあらゆる部分が剪断に曝され、混合物(I)の様々な成分が密に混合されることを意味する。混合物(I)中の水の量が、エマルジョンを生成することを目的とする典型的な混合物と比較して相対的に低いことが企図され、したがって、混合物(I)の粘度が、エマルジョンを生成することを目的とする典型的な混合物の粘度と比較して相対的に高いであろうことが企図されるため、機械式撹拌機が、かかる混合物において均一な混合を提供するのに十分な力を有さなければならないことが企図される。
【0038】
好ましい機械式撹拌機は、融解混練機、回転ブレードミキサー、および回転子−固定子ミキサーである。融解混練機の中でも、混練機、Banbury(商標)ミキサー、一軸押出機、および二軸押出機が好ましい。好ましい回転ブレードミキサーは、500rpm以上の回転速度で動作する。好ましい回転ブレードミキサーは、例えば、Cowles型ブレードのような歯付きのブレードを有する。
【0039】
剪断は、混合物(I)が59℃以上の温度である間に混合物(I)に加えられる。好ましくは、脂肪酸の融点が59℃を超える場合、剪断は、脂肪酸の融点を超える温度で混合物(I)に加えられる。好ましくは、混合物(I)が単一融点を有する場合、剪断は、混合物(I)が混合物(I)の融点を超える温度である間に混合物(I)に加えられる。
【0040】
混合物(I)が100℃以上の温度に曝される場合、好ましくは、混合物(I)は、混合物(I)中の水が液体状態を保つように、密閉され、かつ1気圧を超える圧力を含み得る容器内に保管される。
【0041】
好ましくは、混合物(I)に剪断を加えた結果、混合物(I)はHIPエマルジョンになる。好ましくは、分散した粒子の粒径分布は、本発明の組成物における粒径分布について本明細書に上述される特徴を有する。
【0042】
HIPエマルジョンの形成後、組成物は、好ましくは、室温に冷却される。
【0043】
任意に、HIPエマルジョンの形成後、HIPは、水または他の水性媒体の添加によって希釈される。希釈プロセスによって形成されるHIPおよび組成物の両方が本発明の組成物であることが企図される。
【0044】
室温への冷却およびさらなる水の添加が分散した粒子の粒径を変化させないことが企図される。
【0045】
好ましくは、本発明の組成物は、安定した分散液である。分散液が、いかなる著しい沈殿、クリーミング、相分離の他の兆候、粒径変化、または粘度変化を伴うことなく、25℃で保管され得る場合、本明細書において、分散液は安定していると見なされる。粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用して、25℃で測定される。粘度の著しい変化とは、初期粘度に基づいて、25%以上の変化である。粒径の著しい変化とは、初期メジアン直径に基づいて、メジアン直径の50%以上の変化である。好ましくは、本発明の組成物は、1日間以上、より好ましくは3日間以上、より好ましくは1ヶ月間以上、より好ましくは6ヶ月間以上安定している。
【0046】
以下は、本発明の実施例である。
【0047】
組成物を、以下の調製方法(「Prep Meth」)1または2のうちの1つを使用して作製した。
【0048】
調製方法1は、以下の通りであった。エルカミド、エルカ酸、水酸化カリウム(または水酸化アンモニウム)、および水(この方法の混合物(I))を、Cowlesブレードを装着した300mLのParr反応器容器内に配置した。材料を、緩徐に混合しながら100℃に加熱した。設定温度に達した時点で、ミキサーを高速(約1800rpm)で25分間稼動させた。引き続き高速で混合しながら、サンプルを、20mL/分の速度で、HPLCポンプを用いて反応器に供給される水(「初期水」)で所望の濃度に希釈した。熱を除去し、温度が45℃以下に冷却されるまで撹拌を続けた。その後、Parrを開放し、分散液を収集した。いくつかの場合において、結果として生じた混合物をさらなる水(「希釈水」)と混合した。
【0049】
調製方法2は、以下の通りであった。調製方法2は、以下の通りであった。エルカミド(Akzo NobelのArmoslip E)およびエルカ酸(CrodaのPrifrac 2990)を、rotovapシステム上で60〜80℃で、界面活性剤と一緒にブレンドした。加熱されたブレンド物を加熱した供給タンクに移した。加熱されたブレンド物を、15グラム/分の速度で、回転子固定子ミキサーにポンプで供給する。28パーセント(重量/重量)溶液の水酸化アンモニウム溶液を、さらなる水と共に回転子固定子ミキサーに供給し、乳化混合物生成物を作成した。2つのストリームの比率は、以下の表で見つけることができる。ミキサー速度を約700rpmに設定した。いくつかの場合において、乳化混合物生成物を、本発明の分散液として収集した。必要に応じて、乳化混合物を、さらなる水と共に第2の回転子固定子ミキサーに供給して、本発明の分散液を作成することができる。第2のミキサー速度を約500rpmに設定することができる。分散液の固形分の体積平均粒径直径を測定し、結果を以下の表に示す。
【0050】
粒径を、サンプル送達システムとしてUniversal Liquid Moduleを有するCoulter LS(商標)13−320粒径分析器(Beckman Coulter,Inc.)を使用して決定した。システムは、ISO13−320標準に従う。使用したソフトウエアのバージョンは、バージョン6.01であった。全ての測定の分析条件は、1.332の流体屈折率、1.5のサンプル実屈折率、および0.0のサンプル仮想屈折率を使用した。偏光強度微分散乱(PIDS)オプションを作動させ、粒径情報を生み出すために使用した。体積平均粒径直径を測定し、μmで報告した。Coulter LATRON(商標)300LSラテックス標準を使用して、粒径分析器を較正した。
【0051】
以下の組成物を作製した。それぞれを、許容できる分散液が生成されたかに従って判定した。許容できると見なされるためには、分散液は、50マイクロメートル以下のメジアン粒径を有し、可視の別個の粒子がなく、かつ安定していなければならない。安定した分散液は、作製時に許容でき、室温での少なくとも3日間の保管の間それを保った。
【0052】
以下の界面活性剤を使用した。
Dowfax(商標)2A1界面活性剤=アルキルジフェニルオキシドジスルホネート(Dow Chemical Co.)
Pluronic(商標)F−108界面活性剤=エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(BASF)
Tergitol(商標)15−S−30界面活性剤=二級アルコールエトキシレート、(Dow Chemical Co.)
Serdox(商標)NXC6界面活性剤=オレイン酸モノエタロールアミド+6EO(Elementis Specialties,Inc.)
Neodol(商標)23−6−6.5界面活性剤=1モルのアルコール当たり約6.5モルのエチレンオキシドを含むC12〜C13アルコール(Shell Chemicals)
Brij(商標)700界面活性剤=エトキシル化脂肪アルコール(Croda)
【0053】
以下の組成物それぞれにおいて、エルカミドを、以下の表で示される通り、水、構成成分2(「C2」)、界面活性剤1(「S1」)、および界面活性剤2(「S2」)のうちの1つ以上と混合することによって、混合物(I)を形成した。「Ex.」は「実施例」であり、「E/C2」はエルカミドとC2との重量比であり、「PS」はマイクロメートルでの粒径であり、「U」は許容できない分散液を示す。「C」を含む実施例番号は、比較実施例を示す。脂肪酸を塩として列挙するとき、脂肪酸は、別途示さない限り、カルボキシレート形態において100モル%であった。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
実施例187、189、190、193、194、239、240、および242は、6ヶ月間、室温(約25℃)で保管され、その時点で安定した分散液であると観察された。
【表5】
実施例1001、1002、1003、および1004は、1ヶ月間、室温(約25℃)で保管され、安定した分散液であると観察された。