【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する金属焼結材料を含む回転翼型ポンプ用最終形状翼の製造方法、請求項10の特徴を有する回転翼型ポンプ用翼、及び更に請求項15の特徴を有する回転翼型ポンプによって成し遂げられる。更なる有利な構成及び更なる実施形態は以下の記載から明らかになる。請求項、明細書又は図面に記載の1以上の特徴をそれらに記載の1以上の特徴と組み合わせて、本発明の更なる実施形態とすることができる。特に、独立請求項に記載の1以上の特徴は、明細書及び/又は図面に記載の1以上の他の特徴によって置き換えられてもよい。提示した請求項は主題の定式化のための草案であると考えられるべきであり、主題を限定することはない。
【0007】
金属焼結材料を含む回転翼型ポンプ用最終形状翼の製造方法が提案される。好ましくは、この方法は、開気孔を有する最終形状翼の製造方法である。従って、この翼は、少なくとも第1端面及び第2端面、並びに第1側面及び第1側面に平行に配向する第2側面を有する。第2端面は第1端面に平行に配向していることが好ましい。更に、この翼は第1輪郭表面と第2輪郭表面とを有する。この翼の製造方法は、少なくとも以下の工程を含む。
粉末成形プレスを用いて粉末混合物を圧縮して、成形体を形成する工程、
焼結炉の中で上記成形体を焼結し、オーステナイト構造を有する焼結部品を形成する工程、
上記焼結部品を上記焼結炉内で、上記焼結部品のマルテンサイト開始温度よりも低い温度まで焼き入れ、上記焼結部品を硬化させる工程、
上記焼結部品を焼き戻す工程、及び
上記焼結部品を最終形状翼として取り出す工程。
【0008】
用語「金属焼結材料」は、金属結合成分を主成分とする材料であって焼結されているものを意味する。特にこの金属焼結材料は、例えば、焼結青銅、焼結鉄、又はいずれかの焼結鋼鉄を有していてもよい。しかしながら、金属焼結材料の概念は、金属焼結材料の中に少なくとも部分的にセラミック等の更なる成分が存在することを排除しない。
【0009】
用語「翼」は、翼、とりわけ回転翼型ポンプ用の翼として用いることができる小平板を意味する。しかしながら、小平板の概念は翼の形状が平坦な形状及び平面状の形状から逸脱することを排除しない。
【0010】
小平板として構成された翼は、6つの面を持つ平行六面体に少なくとも由来する形状を有することが好ましい。例えば、平行六面体の2つの相対する面が平行に配向しておらず角をなすというように、平行六面体の形状から変更されていてもよい。また、翼の少なくとも1つの面は平面状表面として構成されていないということも更に想定されうる。
【0011】
第1側面及びこの第1側面に平行に配向している側面はともに、平面状表面として構成されていることが好ましい。これは、上記翼を対応する好適な寸法を有するスロット形状のガイドの中へと導入することができ、その場合この翼はそのスロット形状のガイドの中で支持されうるが、一次元空間又はせいぜい二次元空間でしか動くことができないという点で有利である。
【0012】
特定の実施形態では、上記側面が平行に配向しているだけではなく、上記第1端面も上記第2端面に平行な配向で配置されている。
【0013】
上記第1端面及び第2端面はともに、平面状表面として構成されていることが好ましい。上記第1端面及び第2端面が平面状表面として構成されていることは、上記第1端面全体及び第2端面全体が回転翼型ポンプの相互に平行な内部表面で嵌め込み式で少なくともほぼ配向し、そのためいわゆる面の軸に沿った端面に垂直な動きが回避されるか又は少なくとも実質的に回避されるように、上記回転翼型ポンプを寸法決めできるという点で有利である。
【0014】
端面及び側面に加えて、上記翼は、第1輪郭表面及び第2輪郭表面をも含むことができる。この第1輪郭表面及び第2輪郭表面は特に、例えば回転翼型ポンプにおける上記翼の使用のための輪郭表面は、輪郭表面が回転翼型ポンプの壁の内部表面に沿って通過するために最適化されているような構成を有することができるということを特徴とする。この翼は、典型的には、回転翼型ポンプのローターの回転運動によって回転翼型ポンプの内壁に沿って案内され、かつこの内壁が翼の観点から内側へ反った表面であるので、外側へ反った輪郭表面も特に想定されてもよい。
【0015】
上記輪郭表面は、その輪郭表面の2つの相対する縁が反っている構成を有してもよい。輪郭表面の好ましい実施形態では、例えば、輪郭表面の一方又は両方が反った長方形の構成を有するということが想定されうる。
【0016】
例えば、第1輪郭表面及び第2輪郭表面が同じ表面積を有すること、及び両方の輪郭表面が同じ曲率を有し、上記翼の最短の縁が湾曲した縁であるということが想定されうる。
【0017】
更に、第1輪郭表面及び第2輪郭表面が平行に配向しているということが想定されうる。これにより、翼の第1輪郭表面が外側へ反っておりかつ翼の第2輪郭表面が内側へ反っている構成、又は翼の第1輪郭表面が内側へ反っておりかつ翼の第2輪郭表面が外側へ反っている構成が生じる。
【0018】
第1輪郭表面が鏡面対称的に第2輪郭表面に配向しているということも可能でありうる。好ましくは、第1輪郭表面は、上記2つの側面の各々及び上記2つの端面の各々に平行に配向している法線ベクトルを有する平面において鏡面対称である。
【0019】
上記説明から得られる構成のうちで好ましい実施形態は、直方体形状から始まり、外側へ反ったか又は内側へ反った同じ曲率半径を持つ上記2つの輪郭表面の両方を有する本体としての翼の構成であり、この構成では、上記2つの輪郭表面が外側に向かって配向した反りを有するものがこの好ましい構成である。
【0020】
例えば、上記第1輪郭表面及び/又は第2輪郭表面が、例えば、回転翼型ポンプの内壁に形状が合い、第1輪郭表面が鏡面対称の関係で第2輪郭表面に配向することが可能でありうる。そのような翼の構成は、翼が回転翼型ポンプのローターにある所定のガイドへ挿入されるときに、翼の高い対称性のため、回転翼型ポンプの内壁に対する翼の配向に関する誤差を回避することができるという点で有利である。
【0021】
また、第1輪郭表面が例えば回転翼型ポンプの内壁に適応しており、他方で第2輪郭表面が任意の構成、例えば、略平面の構成を有するということが想定されうる。
【0022】
特定の実施形態では、上記翼は、直方体として形成された平行六面体に由来する構成を有する。この特定の実施形態では、翼は12個の縁を有し、3つの異なる長さの縁が各々4回現れる。この直方体は、a×b×cの縁の長さを有し、aは縁の長さ1mm〜2mmの最短の縁であり、cは縁の長さ25mm〜30mmの最長の縁であり、bは縁の長さ7mm〜13mmの中間の長さの縁である。この特定の実施形態では、上記翼は、最短の縁aを対応して曲げることにより第1輪郭表面及び第2輪郭表面が外側へ反るということによって形成されており、曲率は最短の縁aの各々について同一であり、いずれの場合も外側に向けられており、すなわち、本体から遠ざかるように向けられており、そのため、この曲率はその本体に関する上面図において凹状曲率として見える。
【0023】
用語「最終形状(の)」は、最後の熱処理が行われた加熱炉から翼が取り出された後は、上記翼の許容誤差を発現させるための上記翼の機械加工はもはや必要ではないという上記翼の構成に関する。ここで、用語「許容誤差」は、機能を果たすために必須の寸法及び形状の許容範囲を指す。一方、用語「最終形状(の)」は、上記翼の許容誤差よりも更に寸法及び形状の誤差を減らすための加工を排除しないとされる。とりわけ、例えば圧縮(プレス加工)の際に形成された可能性があるバリの除去を行うためにも、特に上記焼結部品の取り出しの後に上記翼がバリ取りされるということを排除しないとされる。上記方法の好ましい実施形態では、焼結炉内で上記焼結部品を焼き入れた後、焼結部品の焼き戻しもその焼結炉内で行われる。この好ましい実施形態では、上記焼結部品の焼き戻しの後の最終形状翼としての焼結部品の取り出しもその焼結オーブンから行われ、その際、焼結部品の冷却を待ってもよい。
【0024】
用語「粉末混合物」には、例えば、元素の粉末の混合物、又は化合物粉末(合金粉末ともいう)の混合物、又は元素の粉末及び/若しくは化合物粉末の混合物が含まれる。
【0025】
上記翼の製造方法の手順においては、用語「成形体」は、圧縮(プレス加工)によって製造されるが、まだ選択的な熱処理にはかけられておらず、特に、焼結の工程にはまだ供されていない中間生成物を意味する。
【0026】
上記成形体の焼結が焼結炉内で、焼結の全工程の間一定に保たれる温度、この場合は焼結温度、で行われ、オーステナイト構造を有する焼結部品が形成されるということが更に想定されうる。しかしながら、更にこの焼結が異なる温度で、例えば、一連の不連続な焼結温度で、又は連続的な温度履歴で、又は不連続(段階的)な温度履歴及び/若しくは連続的な温度履歴の組み合わせで行われるということも想定されうる。しかしながら、上記焼結部品が一連のいくつかの焼結時間によって焼結され、それら焼結時間がこの焼結部品を焼結するのにまだ十分ではない低い温度の他の時間によって中断されることも想定されてもよい。
【0027】
オーステナイト構造を有する焼結部品を形成するための焼結炉内での成形体の焼結は、例えば、上記焼結部品の焼き入れの直前に焼結炉内での焼結のために準備された温度が、圧粉体を調製するために用いる粉末混合物の元素組成に対応する元素組成で、定常状態における相図においてオーステナイト領域にあるというようにすれば行うことができる。
【0028】
特に、焼結部品の焼き入れの直前に到達されたこの温度及び/又は上記粉末混合物の元素組成に対応する元素組成で定常状態における相図において同じオーステナイト領域にある1以上の温度が、焼結炉内に成形体として置かれた焼結部品の主としてオーステナイト構造を得るのに十分に長く維持されるということが想定されうる。「主としてオーステナイト構造を得る」は、焼結部品の体積の少なくとも50%においてオーステナイト構造を得ることを意味する。
【0029】
好ましくは、例えば、焼結部品の焼き入れの直前に上記焼結部品の体積の少なくとも90%がオーステナイト構造を有するということが想定されうる。
【0030】
上記方法の特に有利な実施形態では、例えば、焼結部品の焼き入れの直前に焼結部品の体積のほぼ100%がオーステナイト構造を有するということが想定されうる。焼結するべき部品のほぼ100%がオーステナイト構造を有する上記翼のこのような実施形態では、焼結部品の焼き入れの後には残留オーステナイトがほとんどない。残留オーステナイトが存在しないということは、許容誤差のばらつきがなく、これにより最終形状翼としての上記翼の一実施形態が更に後加工をする必要もなく、特に簡便に成し遂げられうるという点で有利である。
【0031】
しかしながら、上記方法の別の実施形態では、上記翼が最終形状翼として取り出され、この翼の焼き戻しがさらなる選択的な熱処理なしに行われるということも想定されうる。この代わりに、使用する材料によっては、翼の焼き戻しが既に常温で行われてもよい。これは、例えば、高い割合で軽金属又は軽金属合金を有する翼の場合に当てはまる可能性がある。
【0032】
上記方法の別の実施形態では、上記翼のプレス加工(圧縮)は、加圧下で、第1輪郭表面を粉末成形プレスの少なくとも1つの下側パンチによって形成し、第2輪郭表面を粉末成形プレスの少なくとも1つの上側パンチによって形成することにより行われ、第1端面、第2端面、第1側面及び第2側面は粉末成形プレスの少なくとも1つのダイによって形成される。
【0033】
第1輪郭表面及び/又は第2輪郭表面が翼の最短の縁及び最長の縁を境界とする表面である翼の構成では、これは、上記パンチによってもたらされる圧力が輪郭表面に作用して、上記上側パンチ及び上記下側パンチとダイとの間のクリアランスに起因して、上記縁にバリ(はみ出し部分)を形成するという効果を有する翼の配向につながる。これらのバリは、翼の焼結の後にバリ取りという別の工程によって取り除くことができる。そのようなバリ取りは、特に縁を丸める点で有利である。
【0034】
上記方法の別の実施形態では、上記翼のプレス加工(圧縮)は、粉末成形プレスのダイを用いて少なくとも上記第1輪郭表面及び第2輪郭表面を形成することにより行われるということが想定される。上記方法のこの実施形態では、第1側面、第2側面、第1端面及び第2端面の1以上が粉末成形プレスの下側パンチ及び上側パンチを用いて加圧下で形成されるということが更に想定される。
【0035】
上記第1輪郭表面及び/又は第2輪郭表面が上記翼の最短の縁及び最長の縁を境界とする表面である上記最終形状翼の一実施形態では、これは、上記パンチによってもたらされる圧力が主として上記端面に作用するという効果を有する翼の配向につながる。この輪郭表面の形成は、ここではダイによって行われる。従って、輪郭表面の一方又は両方のほとんどあらゆる複雑さの構成が提供されうるということが可能である。更に、その場合、クリアランスはないので、バリ取りは必要でない可能性がある。
【0036】
更に、焼結が1050℃〜1300℃の温度範囲内で行われる上記方法の一実施形態が想定される。
【0037】
これに関して、1050℃〜1300℃の温度範囲内の定常温度が焼結の全継続期間中用いられるということが想定されうる。更に、焼結の全継続期間中、1050℃〜1300℃の温度範囲内で温度履歴が設定されるということが想定されうる。しかしながら、焼結の継続期間の一部の期間のみ1050℃〜1300℃で定常温度及び/又は温度履歴が設定されるということ、及び焼結前及び/又は焼結後及び/又は焼結中、少なくとも部分的に更に低温及び/又は更に高温に到達されてもよいことも想定されうる。温度が選択的に変更される場合、温度は連続的に又は不連続的に調整されてもよい。
【0038】
上記方法の好ましい実施形態では、1100℃〜1150℃の温度範囲内で焼結が行われる。この温度範囲での焼結は、特に、濃度を重量%単位で表した割合で考える場合に、MoがFe及びCを除き最も高い濃度又は2番目に高い濃度にある合金元素である合金に対して想定されうる。
【0039】
上記方法の別の好ましい実施形態では、1250℃〜1300℃の温度範囲内で焼結が行われる。この温度範囲での焼結は、特に、濃度を重量%単位で表した割合で考える場合に、CrがFe及びCを除き、最も高い濃度又は2番目に高い濃度にある合金元素である合金に対して想定される。
【0040】
上記方法の更なる実施形態では、上記焼き入れが100℃〜300℃の温度範囲内の温度まで行われるということが想定されうる。
【0041】
上記方法の好ましい実施形態では、直接的な空気吹込みによって上記焼き入れが行われるということが想定される。直接的な空気吹込みによる焼き入れは、特に簡単な形式で焼き入れが行えるという点で有利である。特に、直接的な空気吹込みによる焼き入れの別の利点は、焼結炉内で焼き入れを行えるということである。
【0042】
上記焼結部品のマルテンサイト開始温度よりも低い温度までの焼結部品の焼き入れは、焼結部品を硬化させるために行われる。マルテンサイト開始温度は、上記の粉末混合物の多くについてはだいたい300℃〜400℃の範囲内にある。
【0043】
上記焼き入れは、0.85℃/秒〜5.0℃/秒の範囲内の冷却速度で行われることが好ましい。特に好ましい実施形態では、この焼き入れは、0.85℃/秒〜2.0℃/秒の範囲内の冷却速度で行われることになる。
【0044】
焼き入れの更なる可能な方法として、例えば水中及び/又は油中での焼き入れが想定されてもよい。
【0045】
例えば、異なる種類の焼き入れ、例えば直接的な空気吹込み、水の中での焼き入れ(水焼き入れ)及び/又は油中で焼き入れ(油焼き入れ)が連続的に行われるということも想定されうる。例えば、これらの上記工程の1以上が異なる温度で、また反復的に行われるということも想定されうる。
【0046】
上記方法の一実施形態では、上記焼結部品の焼き戻しが150℃〜300℃の温度範囲内で行われるということが想定されうる。
【0047】
上記方法の好ましい変更態様は、上記焼結部品の焼き戻しが180℃〜240℃の温度範囲内で行われるということを提供する。
【0048】
この焼き戻しのために実際に選択される温度及び継続期間は、特に材料組成にも依存する。
【0049】
上記方法の別の実施形態では、焼結部品が最終形状翼として取り出された後に最終形状翼のバリ取りが行われるということが想定されうる。特に、圧縮(プレス加工)の際に工具にクリアランスがある上記方法の実施形態において、バリ取りが必要になる可能性がある。特に、第1輪郭表面及び/又は第2輪郭表面がそれぞれ下側パンチ及び/又は上側パンチによって生成される場合に工具のクリアランスは存在する可能性がある。
【0050】
バリ取りは、例えば、ブラシがけ、やすり掛け、研削、フライス加工、バレル研磨、熱によるバリ取り、電気化学的バリ取り、高圧水ジェットによるバリ取り、高圧流動(Druckfliessen)、液体浸食による研削(hydroerosives Schleifen)、及び/又は切断により行われてもよい。
【0051】
上記方法の一実施形態では、上記粉末混合物が以下の成分を含むということが想定されうる。
Cu 0〜5.0重量%、
Mo 0.2〜4.0重量%、
Ni 0〜6.0重量%、
Cr 0〜3.0重量%、
Si 0〜2.0重量%、
Mn 0〜1.0重量%、
C 0.2〜3.0重量%、及び
Fe 残りの部分。
【0052】
上記方法の別の実施形態では、例えば、上記粉末混合物が以下の成分を含むということが想定されうる。
Mo 0.2〜4.0重量%、
Cu 0〜5.0重量%、
Ni 0〜6.0重量%、
C 0.2〜2.0重量%、及び
Fe 残りの部分。
【0053】
上記方法の特に好ましい実施形態では、例えば、上記粉末混合物が以下の成分を含むということが想定されうる。
Mo 1.2〜1.8重量%、
Cu 1.0〜3.0重量%、
C 0.4〜1.0重量%、及び
Fe 残りの部分。
【0054】
上記方法の別の好ましい実施形態では、例えば、上記粉末混合物が以下の成分を含むということが想定されうる。
Cr 0〜3.0重量%、
Ni 0〜3.0重量%、
Si 0〜2.0重量%、
C 0.2〜3.0重量%、
Mo 0.2〜2.0重量%、及び
Fe 残りの部分。
【0055】
上記方法の別の好ましい実施形態では、例えば、上記粉末混合物が以下の成分を含むということが想定されうる。
Cr 0.8〜1.2重量%、
Ni 0.5〜2.5重量%、
Si 0.4〜0.8重量%、
C 0.4〜1.0重量%、
Mo 0.4〜1.5重量%、及び
Fe 残りの部分。
【0056】
上記方法の別の変更態様では、例えば、上記粉末混合物が以下の成分を含むということが想定されうる。
Cu 1.0〜3.0重量%、
Mo 1.0〜2.0重量%、
C 0.4〜0.8重量%、
Ni、Cr、Si、Mnからなる群から選択される1以上の元素 0〜2.0重量%、及び
Fe 残りの部分。
【0057】
残部としてのFeを含む複数の成分から構成される粉末混合物の組成は、わずかの割合の不可避の不純物及び/又は化合物成分を除き、記載した元素及び/又は化合物以外に他の元素及び/又は化合物がその粉末混合物に存在しない、すなわち、100重量%になるための残部をFeが占めるというように理解されたい。
【0058】
更に、粉末混合物が圧縮される前に圧縮助剤が加えられるということが想定されうる。このような圧縮助剤は、例えば、潤滑剤、結合剤及び/又は可塑剤であってもよい。これらは粉末混合物への添加物であって、例えば、上記粉末混合物の圧縮を容易にし、プレス加工(圧縮)された部品のプレス加工(圧縮)工具からの排出を簡単にし、かつ/又は粉末混合物に対する機械的な作用及び/又は熱的な作用の際にその粉末混合物の他の有利な性能を引き出すものである。上記粉末混合物の上記の組成では、これらの圧縮助剤は考慮されていない。このように、上記粉末混合物の組成において記載した量的な値は、存在してもよい圧縮助剤を何ら考慮せずに記載されているが、粉末混合物が圧縮される前に、上記の組成物に加えて圧縮助剤が加えられることを排除しない。
【0059】
上記方法の別の実施形態では、構成部品から何らかの圧縮助剤を除去するために、圧縮(プレス加工)後でかつ焼結の前に別の工程として上記成形体の熱処理が行われるということが想定されうる。これは、脱ろうとも呼ばれる工程である。例えば、成形体の焼結が行われる同じ焼結炉内で成形体の脱ろうが行われるということが想定されうる。しかしながら、上記焼結炉以外の加熱炉の中で脱ろうが行われるということも想定されうる。
【0060】
上記方法の一実施形態では、脱ろう及び/又は焼結のための連続的な温度履歴及び/又は不連続(段階的)な温度履歴の調整が1以上の段階で行われるということが想定されうる。
【0061】
脱ろう及び/又は焼結並びに焼き入れ並びに焼き戻しの工程のうちのいくつか、又は好ましくはすべてを同じ加熱炉で行う1つの可能な方法として、例えば、温度履歴全体を焼結用コンベヤー炉の中で設定するということが想定されうる。
【0062】
また、脱ろう及び/又は焼結の工程並びに焼き入れの工程に加えて、焼き戻しの工程もそれまでの工程と同じ加熱炉の中で行われるということが想定されうる。ここでも、これを実現する1つの可能な方法は、上記の工程を連続的に実施するための工程の流れ全体を焼結用コンベヤー炉の中で設定することである。ここで、温度履歴全体が、焼結されるべき構成部品の流れる方向に沿って設定されるということが想定されうる。しかしながら、温度履歴の個々のステップが位置によらず時間によって調整されるということも想定されうる。これらの2つの可能な方法の組み合わせも想定されうる。
【0063】
上記の方法に関連して又は上記の方法とは独立に適用されてもよい本発明の別の態様は回転翼型ポンプ用翼に関する。
【0064】
この回転翼型ポンプ用翼は、第1端面及びこの第1端面に平行に配向している第2端面、第1側面及びこの第1側面に平行に配向している第2側面、並びに第1輪郭表面及び第2輪郭表面を少なくとも有する。この翼は金属焼結材料を含む。更に、この翼の表面は少なくともそのいくつかの領域において開気孔を有する。
【0065】
「翼の表面の少なくともいくつかの領域における開気孔の存在」は、翼の6つの面のうちの少なくとも1つにおいて、すなわち第1端面、第2端面、第1側面、第2側面、第1輪郭表面及び第2輪郭表面のうちの少なくとも1つにおいて、表面がそのいくつかの領域において開気孔を有するというように理解されたい。表面の開気孔領域は、表面が完全には閉じられておらず、金属焼結材料にとって通常の量だけその表面上に存在する細孔が開いている(外部に通じている)ことを特徴とする。
【0066】
特に、用語「開気孔表面」は、例えば、DIN 30910 第3部による開気孔表面を意味してもよい。
【0067】
不完全に閉じた、従って開いた気孔表面を有する領域は、特に、その表面の開気孔領域が例えば潤滑膜用液溜として働きうるという点で有利である。この翼が回転翼型ポンプで使用されるとき、潤滑油の供給は、例えば潤滑膜用液溜として働く開気孔領域によって行うことができる。回転翼型ポンプの内壁との摩擦接触のために供されている輪郭表面も少なくとも開気孔領域を有する場合、これによって存在する潤滑接触のため、内壁の領域にわたり潤滑の向上につながる可能性があり、これによって特に摩耗の減少を成し遂げることができる。
【0068】
上記翼の特に好ましい実施形態では、少なくとも、翼のセルの内壁との摩擦接触のために供されている表面及び両端面は、それら表面及び両端面の各々の少なくともいくつかの領域において開気孔を有する。上記翼のこのような実施形態では、回転翼型ポンプの内部で、翼の表面の開気孔領域によって潤滑剤供給の向上がもたらされうる。
【0069】
翼の表面は大部分が開気孔であることが好ましい。「翼の表面の大部分が開気孔である構成」とは、翼の表面の少なくとも50%が開気孔であることを意味する。
【0070】
上記翼の特に好ましい実施形態では、翼の表面全体、すなわち全ての外側面の表面が完全に開気孔である。
【0071】
上記翼の一実施形態では、翼の表面は、少なくともそのいくつかの領域において研削の痕跡がないということが想定されうる。研削の痕跡は、例えば、許容誤差を調整するための翼の後加工の範囲内で表面を選択的に研削することから形成される。研削についての更にありうる理由としては、例えば研削及び研磨の選択されたプロセスに応じて構成部品の特定の表面粗さを調整することができるように、例えば相応に所望される表面特性を調整するための表面加工が挙げられる。更なる後加工なしに構成部品を使用するために必要な対策が既に施された最終形状の構成部品については、成し遂げられる表面の品質によってその構成部品が用途に好適である限りは、そのような研削は必要ではない。研削の痕跡なく形成される翼としての上記の実施形態の提案される翼では、研削が不要であるということから生じる費用の削減従ってコストの削減に加えて、翼のどの開気孔領域も、必要となりうる後加工のための研削によってその開気孔としての特性を失うことがないというさらなる利点が生じる。
【0072】
上記翼の表面には実質的に研削の痕跡がないことが好ましい。用語「実質的に研削の痕跡がない翼の表面」は、翼の表面の少なくとも50%に研削の痕跡がないというように理解されたい。
【0073】
特に好ましい実施形態では、翼の表面には研削の痕跡が全くないということが想定されうる。
【0074】
上記翼の好ましい実施形態では、翼が少なくとも表面下0.2mmの深さまでマルテンサイト構造を有するということが想定されうる。「翼の表面」は翼の全ての面の全体を意味し、従って、上記翼は翼の表層部分全体にわたってマルテンサイト構造を有する。
【0075】
上記翼の好ましい実施形態は、少なくとも表面下0.5mmの深さまでマルテンサイト構造を有する。
【0076】
上記翼の特に好ましい実施形態では、上記翼がその体積全体にわたってマルテンサイト構造を有する、すなわち、翼が完全にマルテンサイトであるということが想定されうる。
【0077】
上記翼の別の実施形態では、上記翼のマルテンサイト構造が主として立方晶マルテンサイト形態を有するということが想定されうる。マルテンサイト構造のこの特定の形態は、マルテンサイト構造の特別の場合である立方晶マルテンサイト構造は比較的低い程度でしか内部応力を有しないという点で有利である。これは翼の寸法安定性にとって利点となり、特に、内部応力の解放から生じる寸法安定性の変化の可能性が低減される。
【0078】
より好ましくは、翼のマルテンサイト構造が完全に立方晶マルテンサイト形態を有する上記翼の一実施形態が想定されうる。とりわけ、マルテンサイト構造が完全に立方晶マルテンサイト形態を有する場合、内部応力の解放に由来する許容誤差のばらつきが可能な限り回避される。
【0079】
上記翼の別の実施形態では、上記翼が、550HV0.2〜800HV0.2の硬度範囲内の値の表面硬度を有するということが想定されうる。特に、マルテンサイト構造が形成されると、比較的高いこれらの値の間に入る表面硬度の値が得られる。これらの比較的高い硬度の値は、高い硬度が通常は摩擦接触における摩耗の低減と関連するという点で有利である。従って、上記翼の交換は顕著に小さい頻度でしか必要にならないということを成し遂げることができる。従って、潤滑剤の分散の向上が理由で上記翼の開気孔領域によって向上される潤滑と高い硬度とを組み合わせることにより、最適の場合には、回転翼型ポンプの耐用年数全体にわたり翼の交換が必要とはならないということさえ成し遂げられうる。
【0080】
上記の方法及び/若しくは上記の翼に関連して、又はそれらとは独立に適用されてもよい本発明の別の態様は、制御リングと、この制御リングの内部にその制御リングに対して偏心して装着されたローターとを含む回転翼型ポンプに関する。このローターは少なくとも1つのスロット形状のガイドを有し、このスロット形状のガイドは半径方向に配置されていることが好ましい。開気孔を有する最終形状翼はこのスロット形状のガイドに挿入される。この翼はスロット形状のガイドの中で可動式に支持されており、ローターが回転するとき、この翼は制御リングの内壁に押しつけられる。
【0081】
この回転翼型ポンプの一実施形態では、制御リングの内部に存在する潤滑剤が翼の表面の開気孔領域と接触し、そのような開気孔領域が、制御リング内での潤滑剤の分散に寄与する毛細管機構の部分機構として作用するということが想定されうる。
【0082】
本発明の別の態様は、回転翼型ポンプにおける開気孔を有する最終形状翼の使用を提供する。このポンプは自動車用エンジン又は自動車用ギヤの潤滑油ポンプとしての回転翼型ポンプであることが好ましい。
【0083】
このような潤滑油ポンプの特定の実施形態として、及び更なる可能性として、開気孔を有する最終形状翼は、例えば、
内燃機関用のエンジン潤滑油ポンプにおいて、
電気モーター用の潤滑ポンプにおいて、
電気モーター用の冷却ポンプにおいて、
ハイブリッド駆動用の潤滑ポンプにおいて、
ハイブリッド駆動用の冷却ポンプにおいて、
コンバーター自動変速装置用の作動ポンプにおいて、
コンバーター自動変速装置用の潤滑ポンプにおいて、
コンバーター自動変速装置用の冷却ポンプにおいて、
デュアルクラッチ自動変速装置用の作動ポンプにおいて、
デュアルクラッチ自動変速装置用の潤滑ポンプにおいて、
デュアルクラッチ自動変速装置用の冷却ポンプにおいて、
トランスファーケース用の作動ポンプにおいて、
トランスファーケース用の潤滑ポンプにおいて、
トランスファーケース用の冷却ポンプにおいて、及び
空調設備用のコンプレッサーにおいて
利用できる。
【0084】
更に、開気孔を有する最終形状翼は、例えば、他の用途用のポンプ及び/又はコンプレッサーにおいても一般に用いられるということが想定されうる。
【0085】
上記の金属焼結材料、好ましくは開気孔を有する金属焼結材料を含む最終形状翼の製造方法は、金属焼結材料、好ましくは開気孔を有する金属焼結材料を含む最終形状の構成部品を製造するためにも用いてよく、あらゆる構成部品をこの方法によって製造することができる。それゆえ、上記方法のすべての記載された実施形態も、一般にかつ翼としての上記構成部品の構成とは独立にクレームすることができるはずである。
【0086】
更なる有利な構成及び更なる実施形態は以下の図面から明らかとなる。しかしながら、それらの図面から明らかになる細部及び特徴はそれらに限定されない。むしろ、1以上の特徴を上記の記載による1以上の特徴と組み合わせて、新しい実施形態を提供することができる。特に、以下の記載はそれぞれの保護範囲を限定せず、個々の特徴及びそれらの起こりうる相互作用を説明する。