(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これには、手と目との協応が良好でなければならない。同一患者の診察時に、複数の投与量の薬物を順次送達するなどの特定の用途では、迅速、簡便、精密かつ正確な方法で極めて正確な量の流体を送達することが重要になり得る。
【0006】
物質を繰り返しかつ正確に投薬できるようにし、かつ操作者が関連する手術の他の重要な側面に集中できるようにする、シリンジまたはシリンジ状装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による定量複数分割量/投与量シリンジは、一般に、開放端と、針を受けるように適合される対向する離間したポートとを有するバレルを含む。バレルの開放端を通してバレル内にピストンを提供して摺動可能に配置し、また、ピストンをバレル内で摺動させるために、ピストンにプッシュロッドを接続する。
【0008】
本発明によれば、バレル内でプッシュロッド及びピストンが段階的に動くことができるようにするために、バレルとプッシュロッドとを相互に接続する構造が設けられる。本構造は、このような段階的な動きの触知性表示及び/または可聴式(音響)表示をさらに提供し、それによって、ユーザが、複数投与量を送達する際に、シリンジを目視せずに、これを操作できるようにする。
【0009】
こうして、本発明の範囲内のシリンジは、プッシュロッド(ピストン)から親指の圧力を外した後に、液圧の勢いによって流体が送達され続けるのを防ぐように作用し得る、物理的な止め具または投与量が管理されている指示体(すなわち、
図1の要素58、
図6の要素22、
図8の要素138、及び
図10の要素68)により、正確な投与量の注入を可能とする。
【0010】
より具体的には、本発明の一実施形態による構造は、プッシュロッドの外面上にある複数の離間したリッジと、バレルの内面上に配置された係合可能なリッジとを含んでもよい。
【0011】
本発明の別の実施形態では、本構造は、プッシュロッドの外面にある複数の離間した戻り止めと、バレルの内面上に配置された対応する係合可能なリッジとを備える。
【0012】
本発明のまた別の実施形態では、本構造は、バレルの外面に配置された複数の離間したリッジと、プッシュロッドに接続されたアームとを備える。アームは、離間したリッジが段階的に係合するように配置されたリッジを含む。より具体的には、離間したリッジは、バレル周囲の一部のみ互いに位置合わせされてもよく、また、アームの幅は、プッシュロッドの周囲よりも狭くてもよい。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態では、本構造は、バレルの外面上に配置された複数の離間したリッジを含み、さらにスリーブが設けられ、スリーブは、プッシュロッドを取り囲み、かつ離間したリッジが段階的に係合するようにスリーブの内面上に配置されたリッジを含む。より具体的には、この実施形態では、離間したリッジは、バレルを取り巻いており、また、スリーブリッジは、スリーブ内面を取り巻いている。
【0014】
本発明によるさらなる実施形態は、バレルの外面上に配置された複数の離間した戻り止めと、プッシュロッドに接続されたアームであって、アームが、離間した戻り止めが段階的に係合するように配置されたリッジを含む、アームとを備える構造を含む。より具体的には、この実施形態では、離間した戻り止めは、バレル構造の一部にわたって互いに位置合わせされてもよく、また、アームの幅は、プッシュロッドの周囲よりも狭い。
【0015】
本発明のさらなる実施形態は、シリンジを提供し、シリンジにおいて、構造は、バレルの外面上に配置された複数の離間した戻り止めを備え、さらにプッシュロッドを取り囲むスリーブは、離間した戻り止めが段階的に係合するようにスリーブの内面上に配置されたリッジを含む。より具体的には、この実施形態では、離間した戻り止めは、バレルを取り巻いていてもよく、また、スリーブリッジは、スリーブ内面を取り巻いていてもよい。
【0016】
別の実施態様では、本発明は、神経毒などの物質を繰り返しかつ正確に投薬できるようにする投薬用機構を含む、投薬用注入器を提供する。
【0017】
特定の実施形態では、物質を繰り返しかつ正確に投薬できるようにする投薬用機構と、ユーザが投薬用機構から離脱できるようにする解除機構とを含む、投薬用注入器が提供される。
【0018】
以下の説明を添付の図面と併せて検討することによって、本発明の利点及び特徴がより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による定量複数分割量/投与量シリンジの図である。本シリンジは、一般に、バレルと、ピストンに接続されたプッシュロッドと共に摺動可能にバレル内に配置されるピストンと、プッシュロッド及びピストンがバレル内で段階的に動くことができるようにする、バレル及びピストンに相互に接続される構造とを含み、より具体的には、本構造は、ピストンの外面上にある複数の離間したリッジと、バレルの内面上に配置された係合可能なリッジとを含んでもよい。
【
図2】本発明の触知性及び可聴式機構を利用しながら、膀胱を観察して手術するために、本発明を膀胱鏡と共に使用する方法を示す図である。
【
図3】本発明に包含される代替的なリッジ及び戻り止め構成を示す図である。
【
図4】本発明に包含される代替的なリッジ及び戻り止め構成を示す図である。
【
図5】本発明に包含される代替的なリッジ及び戻り止め構成を示す図である。
【
図6】バレルを示す、本発明の代替的な実施形態の平面図である。バレルは、バレルの一部にわたって互いに位置合わせされた複数の離間したリッジを有する。
【
図7】プッシュロッドに接続されたアームをさらに示す、
図6に示すバレルの断面図である。アームは、バレル上の離間した戻り止めが段階的に係合するように配置されたリッジを含む。
【
図8】本発明の代替的な実施形態の平面図である。ここで、バレルは、周囲リッジを含み、さらにプッシュロッドに接続されたスリーブは、離間したリッジが段階的に係合するようにスリーブの内面上に配置されたリッジを含む。
【
図10】戻り止めと係合するための周囲リッジを有するスリーブと共に、その外面に複数の離間した戻り止めを有するバレルを示す、本発明のさらに別の実施形態の平面図である。
【
図12】バレルに複数の離間した周囲戻り止めを有するバレルと、プッシュロッドを取り囲むスリーブに形成された対応するリッジとを利用する、本発明のさらに別の実施形態の平面図である。
【
図14】本発明の別の態様による投薬用装置の斜視図である。本装置は、シリンジと、その中に摺動可能に配置されるプランジャーロッドと、シリンジ及びプランジャーロッドを相互に接続する制御部品とを含む。
【
図15】本発明の別の態様による投薬用装置の図であり、
図14に示す装置の断面図である。
【
図16A】本発明の態様による3つの異なる位置にある制御部品の断面図である。
【
図16B】本発明の態様による3つの異なる位置にある制御部品の断面図である。
【
図16C】本発明の態様による3つの異なる位置にある制御部品の断面図である。
【
図17A】本発明の態様による代替的な投薬用装置の制御部品を示す図である。
【
図17B】本発明の態様による代替的な投薬用装置の制御部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照すると、定量複数分割量/投与量を供給するための本発明によるシリンジ10が示されている。シリンジは、開放端18と、対向する離間したポート22とを有するバレル14を含む。ポートは、破線で示す従来型の針26を受けるように適合される。バレルの開放端18を通してバレル14内にピストン30を摺動可能に配置し、また、ピストン30をバレル14内で摺動させるために、ピストンにプッシュロッド34を接続する。
【0021】
バレル14とプッシュロッド34とを相互に接続する構造40は、バレル14内でプッシュロッド34及びピストン30が段階的に動くことができるようにする。
【0022】
後述するように、構造40は、
図2の線44で示すように、プッシュロッド34及びピストン30のバレル14内での段階的な動きの音響表示を出して、操作者48が、シリンジ10を目視せずに複数投与量の薬剤を送達できるように構成される。このことは、
図2に示すように内視鏡52を用いて薬剤を送達する際に特に有用である。
【0023】
操作者48(外科医または泌尿器科医など)は、体組織54の適切な領域を見ることができるようにするために内視鏡52の操作に追われる中、補助者がいなければ、操作者はさらに、シリンジ10を制御し、内視鏡52を配置及び固定し、そしてシリンジ10を掴んで押すために一方の手で内視鏡52を離さなければならない。
【0024】
この間、内視鏡52及び針10は、動いてしまいがちである。従来技術で見出されたことによれば、最初にピストン(図示せず)を押した時の液圧の勢いによって、バレル上の所望の点を越えてピストンが動いてしまうことがあり(図示せず)、各注入部位で過剰な量の流体が投与されることになってしまう。本発明によるシリンジ10は、所望の体積を送達するための適切な間隔で離間した「ラチェット式止め具(ratcheted stops)」を有することによって、このオーバーランを防ぐ。さらに、内視鏡52が中継する画像から内視鏡操作者48が目を外さなくてもよいことから、補助者を必要とせずに1人で手術を行うことができるようにする。
【0025】
ここで再び
図1を参照すると、本発明によれば、構造40は、プッシュロッド34の外面62上に配置された複数の離間したリッジ58と、バレル14の内面70上に配置された係合可能なリッジ66とを含む。矢印72が示す方向へのプッシュロッド34の動きによって、リッジ58、66の間が段階的に係合され、操作者48による触知性感触だけではなく、
図2の線44で示す音響発生をもたらす。間隔76を選択することによって、例として、複数ミリリットルのシリンジから、1ミリリットルの投与量を排出し得る。このように、本発明のシリンジ10は、迅速かつ段階的な簡便な方法で流体の正確かつ精密な投与量/分割量を投与できるようにする。係合中のリッジ58、66を示す、構造40の拡大図を
図3に示す。
【0026】
図4は、本発明による構造80の代替的な実施形態であり、ここで、構造80は、プッシュロッド外面86にある複数の戻り止め82と、バレル内面92上に配置された対応して係合可能なリッジ88とを備える。
【0027】
プッシュロッド98及びバレル100のための構造96が提供する段階的な動きの触知性感覚表示の制御を
図5に示し、ここで、戻り止め104及びリッジ108は、
図4に示す対応するリッジ82、88よりも滑らかな輪郭を有しており、これにより、バレル100内でのプッシュロッド98の動きの触知性及び可聴式検知を変えている。
【0028】
さらに別の実施形態では、シリンジ112が
図6及び
図7に示され、これは、バレル114と、ピストン116と、プッシュロッド118とを含む。シリンジバレル114は、
図6及び
図7に示すように、バレル114の外面126上に配置された複数の離間したリッジ122と、プッシュロッド118に接続された、リッジ122と段階的に係合するためのアームリッジ132を含むアーム130とを含む。このシリンジ112では、リッジ122は、バレル114周囲、または外面126の一部にわたって互いに位置合わせされ、また、アーム130の幅は、プッシュロッド118の周囲よりも狭い。
【0029】
さらに別の実施形態では、シリンジ134が
図8及び
図9に示されている。ただし、共通の文字の参照符号は、本発明のその他の実施形態との関連で説明した既出のものと同一または実質的に類似の要素を示す。
【0030】
図8及び
図9に示すように、シリンジ134は、バレル142の外面140に配置された複数の離間した周囲リッジ138を含み、スリーブは、プッシュロッド150を取り囲み、これに接続されている。スリーブ146の内面上に配置された周囲リッジ154は、本発明の先に説明した実施形態に関連して上に説明したのと同じ方法で、バレルリッジ138の段階的な係合を可能にする。
【0031】
図10及び
図11は、本発明によるさらに別の実施形態のシリンジ162を示しており、シリンジは、複数の離間した戻り止め168及びバレル164の外面170を含むバレル164と、プッシュロッド178に取り付けられ、かつ段階的な方法で戻り止め168と段階的に係合するようにアーム内面182上に配置されたリッジ180を含む、アーム174とを含む。
【0032】
また別の実施形態のシリンジ190を
図12及び
図13に示す。シリンジは、バレル表面200に離間した周囲戻り止め198を有するバレル194と、プッシュロッド206を取り囲み、離間した戻り止め198が段階的に係合するようにスリーブ204の内面214に配置されたリッジ210を含む、スリーブ204とを含む。
【0033】
本発明による方法は、上に説明したシリンジ10、112、134、162、190のうちのいずれか1つを利用し、かつシリンジ10に関し、バレル14に薬剤を配置することと、定量複数分割量/投与量の薬剤を投与するために、バレル114及びプッシュロッド34を相互に接続する構造40を操作して、プッシュロッド34及びピストン30をバレル114内で段階的に動かすこととを含む。
【0034】
別の態様では、本発明は、その他の特徴の中でも、(1)物質を繰り返し、精密かつ正確に投薬できるようにする投薬用機構と、(2)ユーザが投薬用機構から離脱できるようにする解除機構とを提供する、投薬用装置を提供する。
【0035】
図14は、本発明の態様にしたがって提供された、投薬用装置300の例示的な実施形態の斜視図である。手短に言えば、投薬用装置300は、制御部品330によってプランジャーロッド320に接続されたシリンジ310を備える。シリンジ310は、標準的または特注のシリンジであり得る。投薬用装置300の他の部分と共に事前包装されていてもよいし、されていなくてもよい。制御部品330は、投薬用装置300を作動させるアクチュエータ360を備える。一実施形態では、アクチュエータ360は、ボタンである。代替的な実施形態では、アクチュエータ360は、レバーである。
【0036】
図15に示すように、プランジャーロッド320は、係合面340を備える。一実施形態では、係合面340は、複数の離間した歯345を有するラックを備える。離間した歯345は、プッシュロッド320の表面の少なくとも一部分にわたって、長手方向に均等に離間している。1つの歯と隣の歯との間の距離は、
図16Aに示すように、歯間間隔365すなわちピッチを画定する。歯間間隔365は、液体の既定の体積に対応している。代替的な実施形態では、係合面340は、リッジ、戻り止めなどを備える。
【0037】
一実施形態では、制御部品330は、プランジャーアセンブリである。分注装置用のプランジャーアセンブリは、例えば、米国特許第3,161,323号に説明されており、本特許の内容全体を参照により本願明細書に援用する。
【0038】
図15及び
図16Aを参照すると、制御部品330は、上側355を有するハウジング350と、シリンジに配置された既定体積の液体組成物を繰り返しかつ正確に送達するために、プッシュロッド320をシリンジ310内で段階的に動かすことができるように投薬用装置300を作動させるためのアクチュエータ360とを備える。一実施形態では、アクチュエータ360は、ボタンである。代替的な実施形態では、アクチュエータ360は、レバーである。一実施形態では、アクチュエータ360は、上側355に対する様々な位置へと垂直に移動可能である。一実施形態では、アクチュエータ360は、上側355に対する異なる高さに対応する3つの基本的な位置を有する。完全に伸張した位置では、アクチュエータ360は、その最大高さにある。完全に押し下げられた位置では、アクチュエータ360は、上側355に対するその最小高さにある。部分的に伸張した位置では、アクチュエータ360は、部分的に押し下げられており、最大高さ及び最小高さの間の中間の高さを有する。アクチュエータ360を上へと持ち上げる原動力は、当業者に良く知られる、ばねまたはなんらかのその他の機械設計要素によって提供され得る。
【0039】
一実施形態では、ハウジング350は、枢動ピン410に回転可能に接続された歯止め380を収容している。一実施形態では、歯止め380は、くさび形の端部部分390を有し、これは、本明細書で説明した投薬用機構にある係合面340上の離間した歯345と可逆的に係合する。歯止め380の内側に隣接して止めピン400を配置し、歯止め380が時計回り方向に動くのを制限する。付勢要素370は、歯止め380をアクチュエータ360に接続する。一実施形態では、付勢要素370は、ばねである。
【0040】
図16Aを参照すると、リセットまたは開始位置では、アクチュエータ360は、上側355に対するその最大高さにある。付勢要素370は、伸展状態にある。歯止め380の端部部分390は、係合面340上の複数の離間した歯345から係脱されている。
【0041】
図16Bに示す、部分的に作動させた位置では、アクチュエータ360は、上側355に対するその高さが最大高さ及び最小高さの間の中間の高さにあるように、部分的に押し下げられている。アクチュエータ360を押すと付勢要素370が部分的に圧縮され、これにより、端部部分390が係合面340上の最初の歯345と係合する。付勢要素370は、確実に、歯止め380の端部部分390を最初の歯345と係合したままにする。
【0042】
図16Cに示す完全に作動させた位置では、アクチュエータ360は、完全に押し下げられている。付勢要素370を圧縮すると、歯止め380が後傾し、プランジャーロッド320及び係合面340が前方に押される。この位置では、歯止め380は、もはや止めピン400と接触していない。この位置からアクチュエータ360が解放されると、歯止め380の端部部分390が最初の歯345から係脱し、次にアクチュエータが押された時に隣の歯に係合するように並ぶ。離間した歯345の間の歯間間隔は、所望の投与量と相互に関連する。アクチュエータ360を作動させるたびに、歯間間隔365すなわちピッチ365に対応するちょうど1つの増分だけプランジャーロッド320が進められる。一実施形態では、作動1回につき、0.1mlだけ分注する。代替的な実施形態では、作動1回につき、0.1mlよりも少ない体積を分注する。さらにその他の実施形態では、作動1回につき、0.1mlよりも多い体積を分注する。
【0043】
一実施形態では、本投薬用装置は、解除機構を提供し、ユーザは、吸引、充填、排出、または歯間間隔365によって決められた量以外の量の投薬のために、プランジャーロッド320を両方向に自由に引くための選択肢を有する。解除機構を使うには、ユーザは、アクチュエータ360を解放して、これが
図16Aに示すように上側355に対するその最大高さに戻ることができるようにする。一実施形態では、ピン(図示せず)をアクチュエータ360内に組み込んで、歯止め380がプランジャーロッド320の係合面340から係脱するようにこれをこの位置に維持することもできる。準備が整ったら、ユーザは、(例えば、装置の外部からアクセス可能なプルタブを使用することによって)アクチュエータ360を完全に進展した位置に保持しているピンを除去してもよい。ピンが除去されると、付勢要素370は、歯止め380を係合面340に係合させる。この特定の実施形態は、係脱が必要なのは手術の最初だけである場合、有用であると証明できる。例えば、注入装置に再調整に使用する希釈剤を予め充填すべき場合、ユーザは、その希釈剤を自由に射出し、そして再調整した生成物を装置内に自由に吸引することを必要とする。装置を充填した後、ユーザはタブを引き、装置を増分単位で投薬するように整えることができる。
【0044】
よって、本投薬用装置の態様は、開放端、及び針を受けるように適合される対向する離間したポートを有するバレルと、バレル開放端を通して前記バレル内に摺動可能に配置されるプランジャーロッドであって、プランジャーロッドが、その上側の少なくとも一部分にわたって複数の離間した歯を有し、歯の間に歯間間隔を有する、プランジャーロッドと、前記バレル及び前記プランジャーロッドを相互に接続する制御部品とを備える投薬用装置を提供する。一実施形態では、制御部品は、複数の離間した歯と係合するように構成される終点を有する歯止めと、プランジャーロッドがバレル内で段階的に動くことができるようにするために、終点を歯間間隔に入れ、歯に係合させ、歯間間隔に対応する増分だけプランジャーロッドを前方へ移動させるための手段と、段階的な動きを作動させるアクチュエータとを備える。一実施形態では、アクチュエータは、リセット位置から移動可能であり、終点が複数の離間した歯から部分的作動位置に係脱され、終点が完全作動位置まで第1の歯に係合し、終点が第1の歯から第2の歯まで移動し、リセット位置においてプランジャーロッドがバレルを長手方向に自由に摺動可能である。
【0045】
図17A及び
図17Bに示す代替的な実施形態では、投薬用装置500は、制御部品530を備える。一実施形態では、制御部品530は、アクチュエータ560と、付勢要素570を収容する上側555を有するハウジング550と、枢動ピン510に回転可能に接続される「二重歯止め」580と、歯止め580の時計回り方向の動きを制限する止めピン590とを備える。二重歯止め580は、プランジャーロッド520の係合面540と係合可能な終点585を有する第1の側面581と、係合面540と接触しない第2の側面582とを有する。一実施形態では、「二重歯止め」580は、通常、プランジャーロッド520の係合面540上で複数の離間した歯545と係合する。一実施形態では、アクチュエータ560は、休止位置から作動位置へ移動可能である。休止状態では、
図17Aに示すように、アクチュエータ560を上側555対してある高さに配置して、付勢要素570が部分的に圧縮されるようにし、係合面540で複数の離間した歯545のうちの1つと終点585を係合させた状態に保つ。作動状態では、アクチュエータを押し下げて、付勢要素570をさらに圧縮させる。付勢要素570を圧縮すると、
図16A、B及びCで説明したものと同様の機構で、歯止め580が後傾し、プランジャーロッド520及び係合面540が前方に押される(図示せず)。
【0046】
一実施形態では、プランジャーアセンブリ530は、ばねで付勢されたスライダーアクチュエータ600に接続される。
図17Aに示すように、ロック位置では、スライダーアクチュエータ600をハウジング550に接続するばね610は、伸展状態にあり、スライダーアクチュエータ600は、「二重歯止め」580の第2の側面582から離間している。このロック位置では、ユーザは、プランジャーロッド520を引くことができないが、ユーザは、係合面540上の点を失うことなく吸引を制御できる。
【0047】
図17Bに示す解放状態では、「二重歯止め」580を係合面540から係脱するために、ユーザは、スライダーアクチュエータ600を前方に押して、「二重歯止め」580の第2の側面582と接触するようにする。ばね610が圧縮することにより、「二重歯止め」580が後傾され、係合面540から係脱される。この位置において、ユーザは、吸引、充填、排出、または複数の離間した歯545の歯間間隔すなわちピッチによって決められた量以外の量の投薬のために、プランジャーロッド520を両方向に引くことができる。
【0048】
よって、本投薬用装置の態様は、開放端、及び針を受けるように適合される対向する離間したポートを有するバレルと、バレル開放端を通して前記バレル内に摺動可能に配置されるプランジャーロッドであって、プランジャーロッドが、その上側の少なくとも一部分にわたって複数の離間した歯を有し、歯の間に歯間間隔を有する、プランジャーロッドと、前記バレル及び前記プランジャーロッドを相互に接続する制御部品とを提供する。一実施形態では、制御部品は、複数の離間した歯と係合可能な終点を有する第1の側面、及び第1の側面に対向する第2の端部を備える歯止めと、プランジャーロッドがバレル内で段階的に動くことができるようにするために、終点を歯間間隔に入れ、歯に係合させ、歯間間隔に対応する増分だけプランジャーロッドを前方へ移動させるための手段と、段階的な動きを作動させるアクチュエータとを備える。一実施形態では、アクチュエータは、休止位置から移動可能であり、終点が作動位置まで第1の歯に係合し、終点が第1の歯から第2の歯まで移動する。一実施形態では、制御部品は、歯止めの第2の側面に面する圧縮可能なスライダーアクチュエータであって、スライダーアクチュエータが、ロック状態から解放状態に移動可能である、スライダーアクチュエータをさらに備え、ロック状態では、スライダーアクチュエータが、歯止めの第2の側面から離間し、また解放状態では、スライダーアクチュエータが、ある角度で歯止めの第2の側面に突き当たり、第1の側面の終点を複数の離間した歯から係脱させる。一実施形態では、解放状態において、プランジャーロッドが、バレルを長手方向に自由に摺動可能である。
【0049】
代替的な実施形態では、プランジャーロッドの異なる側面に異なる歯のサイズを有する複数の係合面を使用してもよく、その結果、プランジャーロッドを回転、取り外しまたは交換することによって、異なる投与量サイズを1つの単一の装置で分注できる。投与量のバリエーションは、歯止めの幾何形状に依存するが、ラック(複数可)の歯間間隔すなわちピッチによって依然として駆動される。
【0050】
さらなる実施形態は、一部の場合における、吸引の必要性を考慮している。このことは、ユーザが血管内へ注入しているのではないことの確認を望む状況において必要である場合がある(例えば、吸引中のシリンジ内のいかなる赤色の兆候も、針が血管内に入っていることを示す)。歯止めが係合した場合、これは一般に、係合面のラック歯の間のどこかに収まっている。したがって、(歯車のバックラッシュと同様)歯止めに対して急に停止する前に、ラックがわずかに引き戻され得る。この機構は、送達する最終的な投与量を押し込むことなく(ユーザは、ラック上の歯をスキップできない)、注入のたびに一貫した吸引を可能にするため、利点として利用され得る。
【0051】
実施例
本発明は、泌尿器疾患または病態(すなわち、過活動膀胱などの膀胱機能不全)、前立腺障害、眼疾患または病態、あるいは任意のその他の人間の病気、病態または疾患などの疾患または病態を治療するために膀胱壁などの標的組織内にボツリヌス毒素などの製剤を注入するための膀胱鏡で特に役立つ。
【0052】
通常の排尿プロセスは、膀胱及び尿道括約筋の神経刺激伝達の複雑なネットワークの賜物であり、このおかげで、健康な個人では確実に、十分な膀胱充満後、適時排尿される。蓄尿期の間、膀胱に尿を溜めておくために、膀胱頸部及び尿道は閉鎖されたままであり、及び排尿筋は弛緩している(膀胱頂部にあるノルアドレナリンβ受容体刺激による)。健康な膀胱では、膀胱内の圧力が尿道内の圧力よりも大きい場合、排尿が開始する。痛み及び膀胱充満の感覚が求心性線維によって運ばれる。求心性線維は、膀胱から、排尿を促す脳の橋排尿中枢にそれらの情報を伝える。排尿期は、膀胱底及び尿道括約筋の協調弛緩(ノルアドレナリンα受容体刺激による)、ならびに神経伝達物質のアセチルコリンを介する、ノルアドレナリン刺激とそれに続く副交感神経刺激との抑制に続く、膀胱壁の排尿筋の収縮を含む。
【0053】
過活動膀胱は、通常の排尿プロセスを乱す病態である。これは、尿意切迫感、頻尿を特徴とする複合症候群であり、尿失禁を伴うこともあれば、伴わないこともある。尿失禁は、蓄尿中の排尿筋の不随意収縮(排尿筋過活動)に起因する。尿失禁は、ほとんどのケースで、明らかな病的状態が認められない中で起こる。このようなケースでは、異常な排尿筋収縮は、特発性の過活動膀胱と呼ばれている。残りのケースは、神経因性の病的状況に伴うものであり、神経因性排尿筋過活動と呼ばれる。
【0054】
神経因性排尿筋過活動
OABの病態生理学は複雑であり、末梢神経系及び中枢神経系(CNS)動態を含む。いくつかのCNS疾患がOABの発生に関係しており、それには脊髄損傷及び多発性硬化症を含む。脊髄を含む神経疾患は、排尿中枢からの抑制性入力が失われるのに伴って、また、通常膀胱の挙動を制御している脊髄−橋−脊髄経路の遮断によって、尿失禁をもたらし得る。脊髄損傷の際には、膀胱の筋肉と粘膜下組織との間にある求心性線維の働きのバランスに変化が見られる。無髄C線維が機能的に優位になり、このような患者で説明される排尿筋反射亢進は、この無髄C線維が媒介する反射に起因すると考えられる。
【0055】
排尿水力学上で実証可能な結果は、異常不随意排尿筋収縮であり、しばしば尿失禁をもたらす。加えて、こうした患者は、通常排尿に先立つ尿道括約筋の協調弛緩の喪失にしばしば悩まされる。このように協調活動を欠くことは、尿失禁だけでなく、膀胱尿管逆流をももたらす。膀胱尿管逆流は、治療せずにいると、腎障害を引き起こす可能性がある。
【0056】
利用可能な治療
清潔間欠自己導尿(CIC)は、膀胱から排尿させ、神経因性失禁を管理し、また膀胱尿管逆流を予防するために一般的に使用されている。CICを使う場合、患者は、尿を出すために、尿道を介して膀胱内にカテーテルを挿入する。しかしながら、CICは、感染症と関連し得る。このことは、尿失禁の問題を再燃させ、一部の状況では、腎損傷を引き起こし得る。膀胱の収縮性を抑える一般的な薬物治療は、抗コリン薬、抗痙攣薬及び抗うつ薬を含む。しかしながら、これらの治療は、高い副作用の発生率と関係している。抗コリン薬の副作用には、口渇、便秘及び視力障害が含まれる。現在、抗コリン薬に反応がない、あるいはこれを中断した患者が利用できる唯一の選択肢は、仙椎神経を長期にわたって刺激する植込み型器具、または外科的に膀胱を拡張するなどの侵襲的な手技である。一部の患者にはこうした手技が有効な場合もあるが、これらは非常に侵襲的で、排泄抑制を必ずしも保証するものではなく、長期にわたる合併症を有し得る。
【0057】
ボトックス(登録商標)(A型ボツリヌス毒素精製神経毒複合体)治療
最近、過活動膀胱を患う患者の治療にボトックス(登録商標)(ボツリヌス毒素)を使用した研究が行われた。排尿筋にボトックス(登録商標)(ボツリヌス毒素)を局所的に投与することによる不随意排尿筋収縮の抑制が試みられている。これは、アセチルコリン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、グルタミン酸塩、P物質を含み、神経終末内の小胞のドッキング及び放出を成功させるのに不可欠なタンパク質である、SNAP25を開裂することによって、アセチルコリン放出を阻害する。ボトックス(登録商標)(ボツリヌス毒素)は、アセチルコリンが媒介する排尿筋収縮を抑制すると考えられ、さらに、膀胱壁、尿路上皮または粘膜固有層の求心性及び遠心性の両方の経路においてその他の小胞内神経伝達物質を阻害し得る。
【0058】
神経因性失禁の管理にボトックス(登録商標)(ボツリヌス毒素)を成功裏に使用したエビデンスが存在する。排尿筋内に20から30の注射部位にわたって、200Uから300U(1注射部位につき、1mL当たり10単位)のボツリヌス毒素注射をすることが、排泄抑制を回復させ、そのような患者の抗コリン薬治療の低減または中止を可能にするのに有効であることが分かっている。21人の患者が参加した研究では、追跡データのある19人の患者のうち17人が、6週以内に排泄抑制を回復した。今日まで、200Uから300Uの範囲の投与量で20から30の注射部位へのボトックス(登録商標)(ボツリヌス毒素)による、900人を超える神経因性過活動膀胱の患者の治療が報告されている。治療の有益性は、許容可能な副作用プロフィールで、6から12か月の間続くと説明されている。
【0059】
尿道を介する膀胱の内視鏡検査は、膀胱鏡検査である。診断のための膀胱鏡検査は、通常、局所麻酔を併用して行われる。全身麻酔は、膀胱鏡手術で使用されることがある。
【0060】
患者が尿疾患または病態を患う場合、外科医は膀胱鏡52(
図2参照)を使用して、膀胱及び尿道の内側を見る。尿道は、尿を膀胱から体外に運ぶ管である。膀胱鏡は、外科医が尿路の内面に焦点を合わせることができるようにするレンズを有する。一部の膀胱鏡は、装置の先端から他方の接眼部まで画像を伝える光ファイバ(柔軟性のあるガラスファイバ)を使用する。膀胱鏡は、その厚さが鉛筆ほどであり、先端に照明を有する。多くの膀胱鏡は、追加の管を有して、泌尿器系の問題を治療するための外科手術用のその他の装置を案内する。
【0061】
膀胱鏡には、主に2種類、すなわち軟性及び硬性があり、膀胱鏡の柔軟性が異なる。軟性膀胱鏡検査は、男女ともに局所麻酔を用いて行われる。一般的に、尿道に注入する麻酔薬として、リドカインゼリー(商標名Instillagelなど)を使用する。硬質膀胱鏡検査は、同じ条件下で行うことができるが、一般に、また特に、男性の対象者では、プローブによる痛みのため、全身麻酔の下で行われる。本明細書で説明する本発明の実施形態(例えば、図面参照)は、膀胱機能不全を治療するために、患者の膀胱壁(排尿筋)内に定量投与量(分割量)のボツリヌス毒素(ボトックス、DYSPORT、MYOBLOC、またはXEOMINなど)を正確かつ精密に注入するために使用することができる。本発明は、膀胱機能不全を治療するため、またはボツリヌス毒素を投与するための使用に限定されるものではない。なぜなら、本発明は、水性医薬製剤の正確かつ精密に定量された投与量が求められるあらゆる治療、化粧または研究用途に使用できるからである。
【0062】
本発明は、慢性偏頭痛、あるいはその他の人間の病気、病態または疾患などの疾患または病態を治療するために、頭部及び/または頸部の筋肉などの標的組織内にボツリヌス毒素などの製剤を注入するのに役立つ。
【0063】
慢性偏頭痛を患う患者の治療にボトックス(登録商標)(ボツリヌス毒素)を使用した研究が行われた。例えば、頭部及び頸部の筋肉内へのボツリヌス毒素注射は、慢性偏頭痛の治療に有効であることが分かっている。推奨希釈度は、200単位/4mLまたは100単位/2mLであり、最終濃度は、5単位/0.1mLである。慢性偏頭痛の治療のための推奨投与量は、155単位であり、各部位当たり0.1mL(5単位)の注入として、滅菌30ゲージの0.5インチ(12.7mm)の針を用いて、筋肉内に投与される。注射は、以下の表に指定される7の具体的な頭部/頸部の筋肉領域にわたって分割すべきである。頸部筋肉の厚い患者の頸部領域では、1インチ(25.4mm)の針が必要な場合もある。1つの部位(正中線)で注射されるべき鼻根筋を除き、すべての筋肉は、注射部位の半数は頭部及び頸部の左側に投与し、半分は右側に投与するように、左右対称に注射されるべきである。推奨再治療スケジュールは、12週ごとである。
【表1】
各筋肉内注射部位=0.1mL=5単位のボトックス(登録商標)
【0064】
本明細書で説明する本発明の実施形態は、慢性偏頭痛を治療するために、患者の特定の頭部/頸部の筋肉内に定量投与量(分割量)のボツリヌス毒素(ボトックス(登録商標)など)を正確かつ精密に注入するために使用することができる。例えば、投薬注入器を作動させるたびに、各筋肉内注射につき0.1ml(5U)のボトックス(登録商標)を提供すると測定され得る。
【0065】
本発明は、慢性頭痛の治療用に使用するため、またはボツリヌス毒素を投与するための使用に限定されるものではない。なぜなら、本発明は、水性医薬製剤の正確かつ精密に定量された投与量が求められるあらゆる治療、化粧または研究用途に使用できるからである。したがって、当業者が想到し得るあらゆるそしてすべての修正、変形または均等な構成は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内にあるとみなされるべきである。
【0066】
当業者であれば、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの変更及び修正がなし得る。例えば、一実施形態において具体的に説明したが、別の実施形態では具体的に説明していない特徴及び態様は、修正が矛盾せず、動作不能でない限り、交換可能であり得る。したがって、説明した実施形態は、単に例示の目的で説明されており、実施形態は、以下の特許請求の範囲に定義される本開示を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されねばならない。したがって、以下の特許請求の範囲は、文章で説明した要素の組み合わせだけではなく、実質的に同じ結果を得るために実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を行うためのすべての均等な要素を包含するものとして読まれるべきである。よって、本特許請求の範囲は、上に図示及び説明されたもの、概念的に均等であるもの、及び本開示の概念を組み込むものを包含するものとして理解されたい。