特許第6367248号(P6367248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367248
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】イオン改質
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   G01N27/62 101
【請求項の数】22
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-562311(P2015-562311)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公表番号】特表2016-515205(P2016-515205A)
(43)【公表日】2016年5月26日
(86)【国際出願番号】GB2014050744
(87)【国際公開番号】WO2014140577
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】1304776.6
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507235789
【氏名又は名称】スミスズ ディテクション−ワトフォード リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド シャープ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン アトキンソン
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/094529(WO,A1)
【文献】 特表2004−504696(JP,A)
【文献】 特表2009−532822(JP,A)
【文献】 特開2006−107929(JP,A)
【文献】 特開2007−046966(JP,A)
【文献】 特表2010−508535(JP,A)
【文献】 特開2003−223864(JP,A)
【文献】 特開2010−170754(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0164409(US,A1)
【文献】 米国特許第06744043(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60−70、92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン移動度分光分析装置(IMS)を用いたイオン移動度分光分析方法において、サンプルが第1特性を有するイオンを含んでいるか否かを決定するステップと
前記サンプルが前記第1特性を有するイオンを含んでいると決定する場合に、熱エネルギーを無線周波数(RF)電界とともに親イオンに印加し、第2特性を有する娘イオンを取得する娘イオン取得ステップであって、前記第1特性及び前記第2特性に基づいて前記親イオンの少なくとも1つの素性を推定するための、該娘イオン取得ステップと、
を備え
前記イオン移動度分光分析装置はドリフトチャンバを備え、
該ドリフトチャンバは、RF電界を印加するための電極を有する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記サンプルが第1特性を有するイオンを含んでいるか否かを決定するステップは、RF電界及び熱エネルギーのうちの一方を印加して、前記サンプルから派生する第1複数イオンを改質するステップを含む、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記熱エネルギーを印加するステップは、熱エネルギーを、前記イオン移動度分光分析装置におけるドリフトチャンバの或る領域に選択した期間にわたり印加するステップを含む、方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、記熱エネルギーは、前記電極に対して選択した距離内に局在させる、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記熱エネルギーを無線周波数(RF)電界とともに印加するステップは、RF電界を印加する前に前記熱エネルギーを印加するステップを含む、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、さらに、前記イオン移動度分光分析装置におけるドリフトチャンバの領域の温度を決定するステップと、及び前記温度が選択した閾値温度よりも低い場合にのみ前記熱エネルギーを印加するステップとを備える、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記熱エネルギーを印加するステップは、前記イオン移動度分光分析装置におけるドリフトチャンバの領域を、RF電界の印加なしではイオンを改質するのに不十分である温度に加熱するステップを含む、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記熱エネルギーを印加するステップは、前記イオン移動度分光分析装置におけるドリフトチャンバの領域を、RF電界によるイオン改質を促進するよう選択した温度に加熱するステップを含む、方法。
【請求項9】
イオン移動度分光分析装置(IMS)において、
ドリフトチャンバと、
サンプルにおけるイオンの特性を決定する特性決定装置と
前記ドリフトチャンバ内に配置され、前記イオン移動度分光分析装置の或る領域で前記イオンをRF電界に被曝させ得る電極と
前記領域を加熱し得るヒータと
前記電極に対するRF電圧印加及びヒータのうち少なくとも一方を選択的に制御するよう構成したコントローラであって、前記決定した特性に基づいて前記熱エネルギー及びRF電界のうち少なくとも一方を印加する、該コントローラと
を備える、イオン移動度分光分析装置。
【請求項10】
請求項9記載のイオン移動度分光分析装置において、
前記コントローラは、前記サンプルにおけるイオンが第1特性を有すると前記特性決定装置が決定する場合に、前記電極を動作させ、RF電界及び熱エネルギーのうち一方を前記サンプルにおけるイオンの一部である第1複数イオンに印加し、また
次に、前記サンプルにおけるイオンが第2特性を有すると前記特性決定装置が決定する場合に、前記RF電界及び熱エネルギーを前記サンプルにおけるイオンの一部である第2複数イオンに印加するよう構成する、イオン移動度分光分析装置。
【請求項11】
請求項9記載のイオン移動度分光分析装置において、前記特性決定装置は、記ドリフトチャンバ内へのイオン通過を制御するゲートとを有し、前記コントローラは、前記ヒータを動作させて熱エネルギーを選択した期間にわたり印加するよう構成する、イオン移動度分光分析装置。
【請求項12】
請求項9記載のイオン移動度分光分析装置において、前記コントローラは、温度が選択した閾値温度よりも低い場合に、前記ヒータを動作させて熱エネルギーを印加するよう構成する、イオン移動度分光分析装置。
【請求項13】
イオン移動度分光分析装置(IMS)において、
ドリフトチャンバと、
前記ドリフトチャンバ内に配置され、前記イオン移動度分光分析装置の或る領域でRF電界をイオンに印加するよう構成したイオン改質器と
前記領域を加熱するよう構成したヒータと
前記イオン改質器を動作させてRF電界を印加する前に、前記ヒータを動作させて前記領域を加熱するよう構成したコントローラと
を備える、イオン移動度分光分析装置。
【請求項14】
請求項13記載のイオン移動度分光分析装置において、記ドリフトチャンバに沿うイオン通過を検出するよう構成した検出器と、及び記ドリフトチャンバ内へのイオン通過を制御するゲートとを備え、前記ヒータは、前記ドリフトチャンバにおけるドリフトガス入口前記ドリフトチャンバ内における前記イオン改質器と前記ゲートとの間前記ドリフトチャンバ内における前記検出器と前記イオン改質器との間及び前記イオン改質器付近で前記ドリフトチャンバの壁に担持される位置よりなるグループから選択した位置に配置する、イオン移動度分光分析装置。
【請求項15】
請求項13記載のイオン移動度分光分析装置において、前記ヒータは、前記ドリフトチャンバにおける前記領域を、前記ドリフトチャンバの他の領域よりも多く加熱するよう配列する、イオン移動度分光分析装置。
【請求項16】
請求項13記載のイオン移動度分光分析装置において、前記イオン移動度分光分析装置は、赤外放射線を前記ドリフトチャンバ内の局在領域に印加する赤外放射線源を備える、イオン移動度分光分析装置。
【請求項17】
請求項13記載のイオン移動度分光分析装置において、前記イオン改質器はヒータを有する、イオン移動度分光分析装置。
【請求項18】
請求項13記載のイオン移動度分光分析装置において、イオンの特性を決定する特性決定装置を備え、前記コントローラは、前記特性決定装置が選択した1組の特性セットのうち1つを有するイオンの存在を示さない限り、前記ヒータを動作させないよう構成する、イオン移動度分光分析装置。
【請求項19】
請求項13記載のイオン移動度分光分析装置において、温度センサを備え、前記コントローラは、前記温度が選択した閾値温度より低いものでない限り、前記ヒータを動作させないよう構成する、イオン移動度分光分析装置。
【請求項20】
請求項1記載の方法において、前記RF電界を印加するための電極は、イオンの移動方向に互いに離間する2個の電極を備える、方法。
【請求項21】
請求項9記載のイオン移動度分光分析装置において、前記イオン移動度分光分析装置の或る領域で前記イオンをRF電界に被曝させ得る電極は、イオンの移動方向に互いに離間する2個の電極を備える、イオン移動度分光分析装置。
【請求項22】
請求項13記載のイオン移動度分光分析装置において、前記イオン改質器は、イオンの移動方向に互いに離間する2個の電極を備える、イオン移動度分光分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する本発明は、装置及び方法に関し、とくに、分光分析装置及び分光分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン移動度分光分析装置(IMS:ion mobility spectrometers)は、関心対象サンプルからの物質(例えば、分子、原子等々)をイオン化し、またこの結果生じたイオンが既知の電界の下で既知の距離を移動するのにかかる時間を測定することによって、物質を識別することができる。イオン飛行時間は検出器によって測定することができ、またこの飛行時間はイオン移動度に関連する。イオン移動度はイオンの質量及びジオメトリに関連する。したがって、検出器内でのイオンの飛行時間を測定することによって、イオンの素性(アイデンティティ)を推定することができる。これら飛行時間はプラズマグラムとしてグラフィック的又は数値的に表示することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
場合によっては、付加的情報を得るため、無線周波数(RF)電界を使用して幾つかのイオンを改質する(例えば、イオン断片化による)ことを用いて、イオンの素性を推定することができる。このことは、イオン測定における自由度を増し、またひいては見分けるのが困難なイオン間の相違を解明する能力を改善することができる。汚染物が存在する中で、又は困難な操作条件で測定を実施する場合、又はサンプルが類似のジオメトリ及び質量等を有する場合、イオン並びにイオン移動度を検出し、また同定するIMSの能力は、これらの問題を対処する1つの方法である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、関心対象サンプルからイオンを改質する変動する、例えば、RFの電界と組み合せる熱エネルギーの選択的印加に関する。このことによれば、イオンを改質するに使用するエネルギーは、電界又は熱エネルギーを単独で使用するときに必要とされるよりも、少なくすることができる。このことは、手持ち用の及び/又はバッテリ動作の装置のような携帯分光分析装置を改善した効率で動作させることを可能にする。
【0005】
イオン移動度分光分析装置は、第1特性、例えば、関心対象である1つ又は複数の物質に関連する飛行時間を有するイオンを含んでいるか否かを決定することができるイオン移動度分光分析装置は、次に、熱エネルギーを無線周波数(RF)電界とともに親イオンに加え、娘イオンを取得するよう動作する。娘イオンは第2特性(例えば、第2飛行時間)を有する場合があり、これにより、第1特性及び第2特性に基づいて親イオンに対する素性又は候補素性の選択を決定することができる。
【0006】
本発明の他の例として、イオン移動度分光分析装置は、イオン改質器であって、分光分析装置の領域、例えば、イオン改質器に隣接する所定領域において、RF電界をイオンに印加するよう構成した、該イオン改質器と;前記領域を加熱するよう構成したヒータと;及び前記ヒータを動作させて、RF電界を印加するためのイオン改質器を動作させる前に領域を加熱するよう構成したコントローラとを備える。この加熱は局在化し、これにより前記領域を分光分析装置の他の領域よりも多く加熱できるようにする。例えば、イオン改質器は、分光分析装置のドリフトチャンバにおける領域でRF電界をイオンに印加するよう配置し、またヒータは、ドリフトチャンバにおける他の領域よりも多く前記領域を加熱するよう構成する。
【0007】
本発明の実施形態を以下に添付図面につき単に例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】分光分析装置の説明図である。
図2A図1の分光分析装置の変更例を示す分光分析装置の実施形態の概略図である。
図2B図1の分光分析装置の変更例を示す分光分析装置の実施形態の概略図である。
図2C図1の分光分析装置の変更例を示す分光分析装置の実施形態の概略図である。
図2D図1の分光分析装置の変更例を示す分光分析装置の実施形態の概略図である。
図2E図1の分光分析装置の変更例を示す分光分析装置の実施形態の概略図である。
図3】分光分析装置を動作させる方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1はイオン移動度分光分析装置(IMS)100を示し、この装置は、ゲート106によってドリフトチャンバ104から分離されるイオン化チャンバ102を有する。ゲート106は、イオン化チャンバ102からドリフトチャンバ104へのイオン通過を制御することができる。図1において、イオン化源110は物質をイオン化するようイオン化チャンバ102内に配置する。図示のように、IMS100は、物質を関心対象サンプルからイオン化チャンバ102に導入できる入口108を備える。
【0010】
図1に示す実施形態において、ドリフトチャンバ104は、イオン化チャンバ102と検出器118との間に位置し、これによりイオンはドリフトチャンバを横切って検出器118に到達することができる。ドリフトチャンバ104は、ドリフトチャンバ内に電界を印加してイオンをイオン化チャンバからドリフトチャンバ104に沿って検出器118に移動させる一連の電極120a〜dを有する。
【0011】
IMS100は、検出器118への移動経路とは逆方向のドリフトガス流を生ずるよう構成することができる。例えば、ドリフトガスは、検出器118に隣接する位置からゲート106に向かって流動することができる。図示のように、ドリフトガス入口122及びドリフトガス出口124を使用して、ドリフトガスをドリフトチャンバに通過させることができる。例えば、ドリフトガスとしては、限定しないが、窒素、ヘリウム、空気、再循環させる空気(例えば、清浄化及び/又は乾燥化される空気)等々がある。
【0012】
検出器118は信号を特性決定装置200に供給するよう接続することができる。検出器118からの電流フローは特性決定装置200が使用することができ、イオンが検出器118に到達したかを推定し、またイオンの特性は、イオンがゲート106を通過してドリフトチャンバ104に沿って検出器118に達するまでの時間に基づいて決定することができる。検出器118の実施例は、イオンが検出器118に到達したことを示す信号を発生するよう構成する。例えば、検出器は、帯電させてイオンをキャッチできるようにしたファラデープレートを有することができる。
【0013】
電極120a〜dは、検出器118に向かってイオンを案内するよう配列し、例えば、電極120a〜dは、ドリフトチャンバ104周りに配列してイオンを検出器118に向けて収束させるようにしたリングを有することができる。図1の実施形態は複数個の電極120a〜dを有するが、幾つかの実施形態において、2個のみの電極を使用する、又は単独の電極を使用して検出器118と組み合わせ、電界を印加し、イオンを検出器118に案内することができる。他の電極構成も可能であり、例えば、限定しないが、他のジオメトリ形状、電気抵抗性及び/又は導電性の(例えば、抵抗性電気導体)コーティング、例えば、連続的コーティングがある。
【0014】
無線周波数RF電極126をドリフトチャンバ104に配列するが、この配列は、イオン化チャンバから検出器に向かうイオンがRF電極を通過するように行う。RF電極は、導体のグリッドを有し、この導体は、ニッケルのような金属により構成することができる。一実施形態において、導体は直径20ミクロンとすることができる。一実施形態において、これら導体は30ミクロン互いに離間させることができる。RF電極は、2個のグリッドを有し、例えば、互いに離間する2個のグリッドとすることができる。一実施形態において、2個のグリッド間の間隔は250ミクロンとすることができる。RF電極は、ドリフトチャンバ104の領域内でイオンにRF電界を被曝させる。RF電極126が2個の電極を有する場合、この被曝領域は、電極間の間隔によって設けることができる。
【0015】
図1において、RF電極126は、ドリフトチャンバにおける、イオンにRF電界を被曝させるようRF電極126を配列した領域に熱エネルギーを供給するよう配置したヒータを有する。図1の実施形態において、ヒータ127は、RF電極126の一部とすることができる抵抗性電気導体を有する。
【0016】
図1に示す実施形態において、特性決定装置200をコントローラ202に接続し、またこのコントローラは、RF電極126に対するRF電圧印加、及びヒータ127による加熱を選択的に制御するよう構成することができる。したがって、コントローラ202は、特性決定装置200が決定したイオンの特性に基づいて、熱エネルギー及び/又はRF電界の印加を制御することができる。
【0017】
分光分析装置100はガード123を有し、このガード123は、イオンが実際に検出器に到達する前にイオンに関連する電界が検出器に達するのを阻止する等電位スクリーンをなすよう配列した導体を有することができる。このガードは、イオンが検出器118に到達する前に、検出器がイオンの到達を虚偽検出するのを阻止することができる。ガード123は、グリッドとして配列することができる導電材料によって設けることができる。ガード123は、選択した電圧に、例えば、コントローラ202によって接続することができる。
【0018】
分光分析装置100は、ドリフトチャンバ104内の温度を感知する、及び感知した温度に基づく信号をコントローラ202に供給するセンサ105を有することができる。センサ105はドリフトチャンバ104内に配置し、例えば、温度センサ105は任意のセンサ、例えば、サーミスタ又は熱電対を有する電気的センサ(例えば、電子センサ)により構成することができる。コントローラ202は、温度センサ105からの信号を取得し、また温度が選択した閾値温度よりも低い場合にヒータ127を動作させて熱エネルギーを供給できるよう構成することができる。例えば、コントローラ202は、選択した閾値温度より低くならない限りヒータ127が動作しないよう構成することができる。
【0019】
分光分析装置100の動作にあたり、サンプルからの物質は、イオン化チャンバ102内に入口108から導入することができ、イオン化源110によってイオン化することができる。コントローラ202は、次にゲート106を動作させてイオンをドリフトチャンバ内に導入させ、これにより特性決定装置200がイオンの特性を(ドリフトチャンバ104内の飛行時間に基づいて)決定することができる。
【0020】
コントローラ202は、特性決定装置200によりサンプルからのイオンが選択した特性、例えば、関心対象物質に関連する飛行時間を有していると決定する場合、イオンの素性を推定する決定を実行できる。この場合、サンプルから一層イオンを取得し、またゲート106を動作させてこれらイオンをドリフトチャンバ104内に導入させる。次に、コントローラ202がRF電極126又はヒータ127の何れかを動作させて、イオンを例えば断片化することによって改質させ、次にそれらイオンの第1特性、例えば、それらイオンの飛行時間を決定することができる。
【0021】
コントローラは、さらに、改質したイオンの第1特性が、選択した特性、例えば、関心対象物質に関連する飛行時間を有する場合、RF電界及び熱エネルギーをともに印加し、サンプルからのイオンを改質させ、これら改質したイオンの同一特性、例えば、改質したイオンに関連する飛行時間を順次測定できる第2特性を決定することができる。
【0022】
RF電界と一緒に熱エネルギーを印加することは、ゲート106を動作させてドリフトチャンバ内にイオンを導入させる前に選択した期間にわたり熱エネルギーを供給するよう構成したコントローラ202を備えることができる。実施形態において、コントローラは、RF電界とともに熱エネルギーを供給するよう構成することができ、これは、ゲート106を動作させてドリフトチャンバ104内にイオンを導入させ、次にヒータ127を動作させてRF電極周囲の領域に熱エネルギーを印加することによって行う。
【0023】
図1において、RF電極126はヒータ127を有する。例えば、RF電極126の1つ又は複数の導体は、電極をオーム加熱するための電流を受け入れるよう接続することができ、またRF電界を供給するのに使用されるRF電圧に加えて供給される電流も含むことができ、例えば、DC電流がRF電極の1又は複数の導体を導通して発熱できるようにする。
【0024】
RF電極126はヒータ127を含まないようにすることができる。付加的に又は代替的に、ヒータは導体のグリッドとすることができ、このグリッドはドリフトチャンバを横切るよう配列することができる。RF電極126をグリッドとする実施形態において、ヒータグリッドのピッチ(例えば、隣接する導体間の間隔)は、RF電極126のピッチに基づいて選択することができる。ヒータ127における導体のピッチは、RF電極126の導体のピッチと同一にするか、又はRF電極126の導体のピッチがヒータにおける導体のピッチの整数倍となるようにする若しくはその逆の関係となるようにすることができる。これら実施形態において、ヒータ127及びRF電極126の導体構成は、例えば、イオンが通過するドリフトチャンバの断面がヒータの存在により減少することがないよう、互いに一致させるよう配列することができる。導体のグリッドは、平行に配列した真直ぐな導体を有することができ、例えば、導体は互いに交差するよう格子状に配列するか、又はグリッドの導体と交差しないように配列することができる。
【0025】
RF電極126がヒータ127を含まない場合、ヒータ127は、ヒータ127とRF電極126との間の電気的相互作用(例えば、容量的及び/又は誘導的な)結合によってRF電極126がイオンを改質するのを阻害しないよう配列することができる。
【0026】
ヒータ127をRF電極126から離間させ、この離間距離は、RF電極126がイオンを改質するのをヒータ127が阻害しないよう選択することができる。付加的又は代替的に、RF電極に対するヒータのジオメトリ及び/又は向きは、RF電極126がイオンを改質するのを阻害しないよう選択することができる。ヒータ127の電位は、RF電極126の電位に基づいて、RF電極126がイオンを改質するのをヒータ127が阻害しないよう選択することができる。幾つかの実施形態において、ヒータ127は、ヒータ127とRF電極126との間における容量的及び/又は誘導的な結合を回避するようRF電極に対して相対配置する。幾つかの実施形態において、ヒータ127の電圧及び/又はインピーダンスは、ヒータ127とRF電極126との間における容量的及び/又は誘導的な結合を回避するよう選択する。
【0027】
ヒータ127はドリフトガス入口122とRF電極126との間に配置することができ、例えば、ガード123がヒータ127を有することができる。ヒータはRF電極126とドリフトガス出口124との間に配置することができ、例えば、ゲート106がヒータを有することができる。実施形態において、電極120a、120b、120cがヒータを有することができる。ヒータはドリフトガス入口122に配置し、ドリフトガスがドリフトチャンバ104に進入する際に、又は進入する前にドリフトガスを加熱できるようにする。ヒータ127は、赤外放射線源のような放射熱源とすることができ、例えば、RF電極がRF電界を印加するドリフトチャンバの領域に熱エネルギーを照射し得る構成のレーザーとすることができる。
【0028】
熱エネルギーを印加するステップは、RF電極周りの領域を、RF電界の印加なしではイオンを改質するのに不十分な温度に加熱するステップを含む。例えば、熱エネルギーを印加するステップは、その領域を少なくとも30℃、例えば少なくとも35℃、例えば少なくとも40℃、及び/又は120℃未満の温度、例えば、100℃未満に加熱するステップを含む。コントローラ202は、温度センサからの信号に基づいてヒータ127を制御するよう構成することができる。
【0029】
特性決定装置200はタイマーを有することができ、また特性決定装置は、イオンがドリフトチャンバに導入されている時期と1つ又は複数のイオンが検出器118によって検出されている時期との間における時間を決定するよう接続することができる。イオンがドリフトチャンバに導入されている時期は、ゲート106の動作に基づいて決定することができる。
【0030】
特性決定装置は、この時期に基づいてイオンの特性を決定できる参照テーブルを有することができる。イオンの決定された特性は、リストから選択された1つ又は複数の特性を含み、このリストは、イオンの飛行時間、イオンの帯電、イオンの質量、イオンの移動度、及びイオンの質量/帯電比を含むことができる。例えば、飛行時間は、イオンがドリフトチャンバ104に導入されている時期と検出器に到達する時期との間における時間、例えば、イオンがドリフトチャンバ104に導入させるゲート106の作動時期と検出器118に到達する時期との間における時間とすることができる。
【0031】
コントローラ202及び/又は特性決定装置200は、任意の適正なコントローラによって設けることができ、例えば、アナログ及び/又はデジタル論理回路、現場でプログラム可能なゲートアレイ、FPGA特定用途向け集積回路、ASIC、デジタル信号プロセッサ、DSP、又はプログラム可能な汎用プロセッサにロードされるソフトウェアによって設けることができる。
【0032】
図2A〜2Eは、図1に示す分光分析装置の様々な変更例の概略図である。
【0033】
図1および図2A〜2Eにおいて、同一参照符号は同一素子を示すのに使用する。
【0034】
図2Aは、ヒータ127を検出器118とRF電極126との間におけるドリフトチャンバ104内に配置した分光分析装置100−Aを示す。ヒータ127は、ドリフトチャンバを横切って配置した導体のグリッドのような抵抗性ヒータにより構成することができる。
【0035】
図2Bは、ヒータ127をRF電極126とイオン化チャンバ102との間におけるドリフトチャンバ104内に配置した分光分析装置100−Bを示す。ヒータ127は、ドリフトチャンバを横切って配置した導体のグリッドのような抵抗性ヒータにより構成することができる。
【0036】
図2Cは、ヒータ127−Cをドリフトチャンバ104の壁によって担持してドリフトチャンバ104周りに配置した分光分析装置100−Cを示す。ヒータ127−Cは、RF電極126周りにおけるドリフトチャンバ104の領域を加熱する抵抗性のフィルム若しくはテープを有するフィルムヒータにより構成することができる。
【0037】
図2Dは、ヒータ127−Dをドリフトチャンバ104内に流入するドリフトガスを加熱するようドリフトガス入口122に配置した分光分析装置100−Dを示す。図2Dのヒータ127−Dは、ドリフトガス入口内及び/又はドリフトガス入口周りに配置することができ、例えば、ドリフトガス入口122の壁によって担持した抵抗性フィルム、コーティング又はテープとすることができる。付加的又は代替的に、図2Dのヒータ127−Dは、ドリフトガス入口を横切るよう配置した導体のグリッドにより構成することができる。
【0038】
図2Eは、透過性窓129をドリフトチャンバ104の壁に設け、放射性熱源127−EがRF電極126を有するドリフトチャンバの領域に熱エネルギーを放射することができるようにした分光分析装置100−Eを示す。
【0039】
図3は、分光分析測定を行う方法を示す。分光分析測定が曖昧な結果をもたらす場合(ステップ298)、本発明方法は、曖昧な結果を解消する更なる決定を行う。この場合、本発明方法は、サンプルが第1特性、例えば、選択した飛行時間を持つイオンを有するか否かを決定する(ステップ300)。サンプルが第1特性を有することを決定する場合(ステップ302)、本発明方法は、サンプルからイオンを取得し(ステップ304)、エネルギーを印加してイオンを改質し、娘イオンを取得する(ステップ306)。エネルギー印加(ステップ306)は、無線周波数RF電界を印加して、又は熱エネルギーを印加して、又は無線周波数電界とともに熱エネルギーを印加して、娘イオンを取得することを含む。
【0040】
次に、娘イオンの第2特性、例えば、娘イオンの飛行時間を決定する(ステップ308)。このことは、第1特性及び娘イオンの第2特性に基づいて、親イオンの素性を推定する(ステップ310)ことを可能にする。第1特性及び第2特性は、同一パラメータ、例えば飛行時間の順次の測定値とすることができる。
【0041】
幾つかの実施形態において、イオン改質なしで行う分光分析測定が曖昧な結果をもたらす場合(ステップ298)、本発明方法は、サンプルからイオンを取得し(ステップ304)、無線周波数RF電界を印加して、又は熱エネルギーを印加してイオンを改質し、第1娘イオンを取得する(ステップ306)。第1娘イオンの特性、例えば、第1娘イオンの飛行時間を決定することができる(ステップ308)。
【0042】
更なる情報を取得するため、更なるイオンをサンプルから取得することができ、またRF電界を熱エネルギーとともにイオンに印加し、イオンを改質して第2娘イオンを取得することができる。次に、これら第2娘イオンの特性、例えば、飛行時間を決定することができる(ステップ308)。このことは、親イオンの特性及び第1娘イオン及び第2娘イオンの特性に基づいて、親イオンの素性を推定する(ステップ310)ことを可能にする。
【0043】
本発明方法の第1実施例において、方法は、サンプルが第1特性を持っているイオンを含むか否かを決定するステップと、RF電界及び/又は熱エネルギーを印加してサンプルから派生した第1複数イオンを改質するステップとを備える。第2実施例において、熱エネルギー印加するステップは、イオンをドリフトチャンバの領域に導入する前又は後の選択した期間にわたり分光分析装置のドリフトチャンバ領域に熱エネルギーを印加するステップを含む。この第2実施例は、随意的に第1実施例の特徴を含む。第3実施例において、分光分析装置のドリフトチャンバは、RF電界を印加する電極を有し、熱エネルギーは電極から選択した距離内に局在化する。この第3実施例は、随意的に第1及び第2の実施例の何れか一方又は双方の特徴を含む。第4実施例において、RF電界とともに熱エネルギーを印加するステップは、RF電界を印加する前に熱エネルギーを印加するステップを含む。この第4実施形態は、随意的に第1、第2、及び第3の実施例のうち任意な1つ又は複数における特徴を含む。第5実施例において、本発明方法は、分光分析装置におけるドリフトチャンバの領域の温度を決定するステップと、温度が選択した閾値温度より低い場合にのみ熱エネルギーを印加するステップを備える。この第5実施例は、随意的に第1〜第4の実施例のうち任意な1つ又は複数における特徴を含む。
【0044】
本発明装置の第1実施例において、イオン移動度分光分析装置は、RF電界及び熱エネルギーのうち一方を、サンプルのイオンが第1特性を有することを特性決定装置が決定する場合に、第1複数イオンに印加し、次いで、第1複数イオンが第2特性を有することを特性決定装置が決定する場合に、RF電界及び熱エネルギーを第2複数イオンに印加するよう構成する。
【0045】
本発明装置の第2実施例において、特性決定装置は、分光分析装置のドリフトチャンバと、ドリフトチャンバへのイオン通過を制御するゲートとを備え、コントローラは、選択した期間にわたり熱エネルギーを印加するヒータを動作させるよう構成する。この第2実施例の装置は、随意的に第1実施例における装置の特徴を含む。
【0046】
本発明装置の第3実施例において、コントローラは、温度が選択した閾値温度よりも低い場合にヒータを動作させて熱エネルギーを印加するよう構成する。この第3実施例の装置は、随意的に第1及び第2の実施例における装置の特徴を含む。
【0047】
本発明装置の第4実施例において、イオン移動度分光分析装置は、分光分析装置の或る領域におけるイオンにRF電界を印加するよう構成したイオン改質器と;その領域を加熱するよう構成したヒータと;及びイオン改質器を動作させてRF電界を印加する前にヒータを動作させてその領域を加熱するよう構成したコントローラとを備える。この第4実施例の装置は、随意的に第1及び/又は第2及び/又は第3の実施例における装置の特徴を含む。
【0048】
本発明装置の第5実施例において、ヒータ及びイオン改質器は、ヒータがRF電界によるイオン改質を阻害しないよう配列する。この第5実施例の装置は、随意的に第1〜第4の実施例のうち任意の1つ又は複数における装置の特徴を含む。
【0049】
本明細書の文脈において、RF電界は、エネルギーを印加して(例えば、イオンにエネルギーを加えて有効温度を上昇させて)イオンを改質するのに適切な周波数特性を有する任意な他の電界を含むものであると理解されたい。
【0050】
他の実施例及び変更例は、当業者であれば、本明細書の文脈から明らかであろう。
【0051】
本発明の態様は、コンピュータプログラム製品、及び本明細書に記載の方法のうち任意な1つ又は複数を実施するようプロセッサをプログラムする命令を格納する有形な非一時的媒体のようなコンピュータ可読媒体を提供する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3