特許第6367250号(P6367250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6367250-高周波信号増幅装置 図000002
  • 特許6367250-高周波信号増幅装置 図000003
  • 特許6367250-高周波信号増幅装置 図000004
  • 特許6367250-高周波信号増幅装置 図000005
  • 特許6367250-高周波信号増幅装置 図000006
  • 特許6367250-高周波信号増幅装置 図000007
  • 特許6367250-高周波信号増幅装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367250
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】高周波信号増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/07 20060101AFI20180723BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H03F1/07
   H03F3/68 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-1385(P2016-1385)
(22)【出願日】2016年1月6日
(65)【公開番号】特開2016-131369(P2016-131369A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】特願2015-3564(P2015-3564)
(32)【優先日】2015年1月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 一考
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直孝
【審査官】 白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/053534(WO,A1)
【文献】 特開2013−085179(JP,A)
【文献】 特開2001−274639(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/087637(WO,A1)
【文献】 特開2012−029239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/07
H03F 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分配器と、
前記分配器から供給された信号を分配する第1の分配部と、第1のキャリアアンプと、前記第1のキャリアアンプと電力合成される第1のピークアンプと、前記第1のキャリアアンプおよび前記第1のピークアンプから出力された信号を合成する第1の合成部とを有する第1の増幅部と、
前記分配器から供給された信号を分配する第2の分配部と、第2のキャリアアンプと、前記第2のキャリアアンプと電力合成される第2のピークアンプと、前記第2のキャリアアンプおよび前記第2のピークアンプから出力された信号を合成する第2の合成部とを有し、前記第2のキャリアアンプ前記第1のキャリアアンプ、および前記第2のピークアンプ前記第1のピークアンプのうち、一方が隣接するように配置される第2の増幅部と、
前記隣接する前記第1のキャリアアンプと前記第2のキャリアアンプとの間、または前記隣接する前記第1のピークアンプと前記第2のピークアンプとの間において発生するループ発振を抑制する発振抑制部と、
前記第1の合成部および前記第2の合成部から出力された信号を合成する合成器と、
を有する、
高周波信号増幅装置。
【請求項2】
前記発振抑制部は、前記隣接された前記第1のキャリアアンプと前記第2のキャリアアンプとの間、または前記隣接された前記第1のピークアンプと前記第2のピークアンプとの間を接続する、
請求項1に記載の高周波信号増幅装置。
【請求項3】
前記発振抑制部は、前記第1の増幅部と前記第2の増幅部との同電位となる位置同士を接続する、
請求項2に記載の高周波信号増幅装置。
【請求項4】
前記発振抑制部は、抵抗体を備える、
請求項2または3に記載の高周波信号増幅装置。
【請求項5】
前記第1の増幅部および前記第2の増幅部と並列に接続し、他のキャリアアンプと隣接したキャリアアンプ、または他のピークアンプと隣接したピークアンプを有する一又は複数の増幅部を有し、
前記発振抑制部は、前記増幅部におけるピークアンプと他のピークアンプとの間、または、前記増幅部におけるキャリアアンプと他のキャリアアンプとの間において発生するループ発振を抑制する、
請求項1から4のうち何れか1項に記載の高周波信号増幅装置。
【請求項6】
前記第1のキャリアアンプ、前記第1のピークアンプ、前記第2のキャリアアンプ、前記第2のピークアンプ、前記第1の分配部、前記第2の分配部、前記第1の合成部、前記第2の合成部、前記発振抑制部、前記分配器、前記合成器を含む素子群の少なくとも一部を単一のパッケージ内に実装する、請求項1〜5の何れか一項に記載の高周波信号増幅装置。
【請求項7】
前記第1のキャリアアンプ、前記第1のピークアンプ、前記第2のキャリアアンプ、前記第2のピークアンプ、前記第1の分配部、前記第2の分配部、前記第1の合成部、前記第2の合成部、前記発振抑制部、前記分配器、前記合成器を含む素子群の少なくとも一部を単一の半導体基板上に形成したモノリシックマイクロ波集積回路(Monolithic Microwave Integrated Circuit:MMIC)である、請求項1〜5の何れか一項に記載の高周波信号増幅装置。
【請求項8】
請求項1から6のうちいずれか1項記載の高周波信号増幅装置を並列に複数接続し、
前記高周波信号増幅装置同士が対向する端部には、同種のアンプがそれぞれ配置され、
前記同種のアンプ間に発振抑制部が設けられる、
高周波信号増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波信号増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バックオフした高周波信号を効率よく増幅するドハティ増幅器が知られている。ドハティ増幅器は、キャリアアンプとピークアンプとを並列接続し、キャリアアンプおよびピークアンプにより増幅された高周波信号を合成して出力する。このドハティ増幅器は、他のドハティ増幅器と並列して接続され、他のドハティ増幅器と同じ信号が分配されて増幅を行う場合がある。この場合、回路の条件によっては他のドハティ増幅器との間でループ発振が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−185966号公報
【特許文献2】特開2012−029239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、複数のドハティ増幅器の間のループ発振を抑制することができる高周波信号増幅装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の高周波信号増幅装置は、分配器と、第1の増幅部と、第2の増幅部と、ループ発振抑制部と、合成器と、を持つ。第1の増幅部は、第1の分配部と、第1のキャリアアンプと、第1のピークアンプと、第1の合成部とを持つ。第1の分配部は、分配器から供給された信号を分配する。第1のピークアンプは、第1のキャリアアンプと電力合成される。第1の合成部は、第1のキャリアアンプおよび第1のピークアンプから出力された信号を合成する。第2の増幅部は、第2の分配部と、第2のキャリアアンプと、第2のピークアンプと、第2の合成部とを持つ。第2の分配部は、分配器から供給された信号を分配する。第2のピークアンプは、第2のキャリアアンプと電力合成される。第2の合成部は、第2のキャリアアンプおよび第2のピークアンプから出力された信号を合成する。第2の増幅部は、第2のキャリアアンプが第1のキャリアアンプと隣接し、または第2のピークアンプが第1のピークアンプと隣接するように配置される。ループ発振抑制部は、隣接する第1のキャリアアンプと第2のキャリアアンプとの間、または隣接する第1のピークアンプと第2のピークアンプとの間において発生するループ発振を抑制する。合成器は、第1の合成部および第2の合成部から出力された信号を合成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の高周波信号増幅装置におけるドハティ増幅器1の構成を示すブロック図。
図2】実施形態のドハティ増幅器1において、位相調整回路16の構成例として分布定数線路30、IIN22の構成例としてλ/4線路32を使用した場合のブロック図。
図3】実施形態のドハティ増幅器1における入力電力と出力電力との関係の一例を示す図。
図4】実施形態の高周波信号増幅装置100の構成の一例を示す回路図。
図5】実施形態の高周波信号増幅装置100の他の構成の一例を示す回路図。
図6】実施形態の高周波信号増幅装置100におけるドハティ増幅器1の変形例の構成を示すブロック図。
図7】実施形態の高周波信号増幅装置100の応用例の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の高周波信号増幅装置を、図面を参照して説明する。
まず、実施形態の高周波信号増幅装置に含まれるドハティ増幅器について説明する。図1は、実施形態の高周波信号増幅装置における並列接続負荷型のドハティ増幅器1の構成を示すブロック図である。ドハティ増幅器1は、高周波信号を入力され、増幅した高周波信号を図示しないアンテナ側に出力する。
ドハティ増幅器1は、入力端子10、整合回路12、分配部14、位相調整回路16、ピークアンプ18、キャリアアンプ20、IIN(Impedance Inverting Network、インピーダンス反転回路)22、合成部24、整合回路26、及び出力端子28を持つ。
【0008】
入力端子10には、入力信号として高周波信号が供給される。高周波信号とは、例えばRF(Radio Frequency)の周波数帯の信号である。入力端子10に供給された高周波信号は整合回路12に送られる。
【0009】
整合回路12及び整合回路26は、ドハティ増幅器1における入力インピーダンスと出力インピーダンスとを整合させる。整合回路12及び整合回路26は、基板上に形成されたインダクタ及びキャパシタを組み合わせた回路を有する。整合回路12及び整合回路26は、インダクタ及びキャパシタだけでなく抵抗体も基板上に形成して構成してもよい。
【0010】
分配部14は、整合回路12を介して入力端子10に接続され、高周波信号をキャリアアンプ20およびピークアンプ18側に分配する。
【0011】
分配部14とピークアンプ18の間の位相調整回路16は、分配部14により分配された高周波信号の位相を、合成部24でピークアンプ18側とキャリアアンプ20側が同相になるように調整する。図2は、実施形態のドハティ増幅器1において、位相調整回路16の構成例として分布定数線路30を使用した場合のブロック図である。分布定数線路30を通過した高周波信号はピークアンプ18に供給される。ピークアンプ18で増幅した高周波信号は合成部24に供給される。
【0012】
IIN22は、キャリアアンプ20と合成部24の間でインピーダンスを反転する。IIN22は、図2に示すようにλ/4(波長/4)線路32を有する。λ/4線路32は、インピーダンスを反転すると同時に入力信号の位相を90度遅らせる。λ/4線路32を通過した高周波信号は合成部24に供給される。
【0013】
合成部24は、ピークアンプ18から供給された高周波信号とIIN22を通過した高周波信号とを合成する。合成部24により合成された高周波信号は、整合回路26に供給される。整合回路26を通過した高周波信号は、出力端子28から出力信号として出力される。
【0014】
キャリアアンプ20は、例えば電界効果トランジスタ(FET(Field effect transistor))を使ったアンプで、AB級増幅器又はB級増幅器となるようゲートバイアス電圧が印加されている。ピークアンプ18は、例えば電界効果トランジスタ(FET(Field effect transistor))を使ったアンプで、C級増幅器となるようゲートバイアス電圧が印加されている。
【0015】
図3は、実施形態のドハティ増幅器1における入力電力と出力電力との関係の一例を示す図である。キャリアアンプ20は、略ピンチオフするようにゲートバイアス電圧が設定され、低い振幅の高周波信号から増幅する。キャリアアンプ20は、入力電力が所定電力P1よりも低い範囲において、リニアに増幅して出力電力Pcを出力する。キャリアアンプ20は、入力電力が所定電力P1近傍となり出力電力PcがP3以上となると飽和し始める。
【0016】
ピークアンプ18は、ゲートバイアス電圧がキャリアアンプ20より深く設定され振幅(電力値)が所定値以上の高周波信号が供給されたことに応じて増幅動作を開始する。ピークアンプ18は、ドハティ増幅器1が飽和電力から例えば5dBバックオフした時に動作を開始する。このバックオフは、ドハティ増幅器1の平均出力電力に対する飽和出力電力の比である。
【0017】
ピークアンプ18は、図3に示すように、入力電力が所定電力P1より低い場合にはオフ状態となる。ピークアンプ18は、入力電力が所定電力P1より高くなるとゲートが開く期間が発生し、高周波信号の増幅を行う。ピークアンプ18は、入力電力がP1よりも高いと、入力電力を出力信号Ppに増幅することができる。
【0018】
このドハティ増幅器1において、キャリアアンプ20は比較的小電力の高周波信号の増幅を行い、キャリアアンプ20の電圧が飽和し始めるとピークアンプ18はオン状態となるように設定される。ピークアンプ18は、キャリアアンプ20の電圧の飽和による利得低下分を補うように動作する。これにより、ドハティ増幅器1は、図3の点線に示すように、入力電力がP2に至るまで、リニアに増幅して出力電力Pdを出力することができる。
【0019】
なお、ピークアンプ18及びキャリアアンプ20は、パッケージの内部でインピーダンスを整合する内部整合型の電界効果トランジスタアンプであることが望ましい。あるいは、ピークアンプ18及びキャリアアンプ20は、電界効果トランジスタとしてディスクリート半導体を使ってもよい。このドハティ増幅器1によれば、ピークアンプ18およびキャリアアンプ20における電界トランジスタのチップの入力電極および出力電極において最適信号源インピーダンスおよび最適負荷インピーダンスにでき、効率よく増幅動作を行うことができる。
【0020】
また、実施形態のドハティ増幅器1によれば、単一のモノリシックマイクロ波集積回路に、ピークアンプ18、キャリアアンプ20、分配部14、合成部24、位相調整回路16、およびIIN22を含めて構成してもよい。
次に、上述したドハティ増幅器1を複数備えた高周波信号増幅装置100について、図4を参照して説明する。図4は、実施形態の高周波信号増幅装置100の構成の一例を示す回路図である。
高周波信号増幅装置100は、分配器102と、複数のドハティ増幅器1A、1B、1C、1Dと、合成器104と、ループ発振抑制部Rc、Rpとを有する。この高周波信号増幅装置100において、複数のドハティ増幅器1A〜1Dは、分配器102および合成器104に対して並列に接続される。高周波信号増幅装置100は、1つのパッケージ内に4個のドハティ増幅器1A〜1Dを有する。また、高周波信号増幅装置100において、分配器102、ドハティ増幅器1A〜1D、および合成器104は平面状に形成される。
【0021】
なお、実施形態の高周波信号増幅装置100は、4個のドハティ増幅器1を並列に接続させているが、4個に限るものではない。複数のドハティ増幅器1は、高周波信号増幅装置100により要求される電力値に応じた数が並列接続される。例えば1つのドハティ増幅器1の出力が50Wの場合であって、要求電力が400Wである場合には、8個のドハティ増幅器1を並列接続すればよく、例えば、2個(n=1,2,3,・・・)のドハティ増幅器1を並列接続してもよい。または、任意の整数N(N=2,3,4,・・・)のドハティ増幅器1を並列接続しても良い。
【0022】
複数のドハティ増幅器1A〜1Dは、同種のアンプ同士が隣接するように配設される。
図4に示す高周波信号増幅装置100において、ドハティ増幅器1Aのキャリアアンプ20Aとドハティ増幅器1Bのキャリアアンプ20Bとが、互いに隣接して配設される。また、ドハティ増幅器1Bのピークアンプ18Bとドハティ増幅器1Cのピークアンプ18Cとが、互いに隣接して配設される。さらに、ドハティ増幅器1Cのキャリアアンプ20Cとドハティ増幅器1Dのキャリアアンプ20Dとが、互いに隣接して配設される。
【0023】
また、高周波信号増幅装置100において、キャリアアンプ20Aとキャリアアンプ20Bとの間には、ループ発振抑制部Rcが配設される。また、ピークアンプ18Bとピークアンプ18Cとの間には、ループ発振抑制部Rpが配設される。さらに、キャリアアンプ20Cとキャリアアンプ20Dとの間には、ループ発振抑制部Rcが配設される。
ループ発振抑制部Rcは、例えば同電位となる筈のキャリアアンプ20Aの入力側とキャリアアンプ20Bの入力側とを接続し、抵抗値を有する。抵抗値は、例えば配線抵抗とは別の抵抗体による抵抗値を含む(以下同様)。また、ループ発振抑制部Rcは、同電位となる筈のキャリアアンプ20Aの出力側とキャリアアンプ20Bの出力側とを接続し、抵抗値を有する。さらに、図示しないが、整合回路12や分布定数線路30やピークアンプ18やキャリアアンプ20やλ/4線路32や整合回路26の途中の同電位となる筈の位置同士を接続しても良い(以下同様)。なお、それぞれのループ発振抑制部の抵抗値は最適化によって異なった値にしても良い。
【0024】
一般的に、この種の高周波信号増幅装置は、ループ発振が発生する可能性がある。この発振現象は、RF入力電力が無くても熱雑音電力から成長する場合や、高い電力の特定周波数が入力されることにより発生する場合などがあり、アンプの動作に影響を与える。
【0025】
これに対し、実施形態の高周波信号増幅装置100では、このループ発振を抑制するため、ピークアンプ18同士、またはキャリアアンプ20同士を隣接して配置し、アンプの間のル−プ発振を抑制するための、抵抗値を有するループ発振抑制部Rc、Rpが設けられていることにより、ループ発振の発振条件を満足させないように構成することができる。これにより、ドハティ増幅器1間でループ発振が発生することを抑制することができる。なお、高周波信号増幅装置100は、同一基板に形成されるモノリシックマイクロ波集積回路であっても良い。また、モノリシックマイクロ波集積回路はパッケージに収容してもよい。
【0026】
ここで、実施形態の高周波信号増幅装置100によれば、隣接されたキャリアアンプ20の間、または隣接されたピークアンプ18の間を接続するループ発振抑制部の寄生インダクタンスは接続するアンプ間が隣接している為に小さくできる。したがって、ループ発振抑制部はほぼ抵抗体だけとなり、周波数に殆ど依存せずにループ発振の発生を抑制することができる。説明を変えれば、広帯域に亘ってループ発振の発生を抑制する為に、同電位となる筈の同種のアンプを隣接させる。
【0027】
図5は、実施形態の高周波信号増幅装置100の他の構成の一例を示す回路図である。
この高周波信号増幅装置100は、ドハティ増幅器1Aのピークアンプ18Aとドハティ増幅器1Bのピークアンプ18Bとを隣接させ、ドハティ増幅器1Bのキャリアアンプ20Bとドハティ増幅器1Cのキャリアアンプ20Cとを隣接させ、ドハティ増幅器1Cのピークアンプ18Cとドハティ増幅器1Dのピークアンプ18Dとを隣接させて形成される。
また、この高周波信号増幅装置100において、ピークアンプ18Aとピークアンプ18Bとの間にはループ発振抑制部Rpが形成される。また、キャリアアンプ20Bとキャリアアンプ20Cとの間にはループ発振抑制部Rcが形成される。さらに、ピークアンプ18Cとピークアンプ18Dとの間にはループ発振抑制部Rpが形成される。
【0028】
以上説明した実施形態の高周波信号増幅装置100によれば、複数のドハティ増幅器1のそれぞれのピークアンプ18同士を隣接させ、または複数のドハティ増幅器1のそれぞれのキャリアアンプ20同士を隣接させ、隣接されたピークアンプ18の間、またはキャリアアンプ20の間に形成されたループ発振抑制部を持つので、ループ発振の発振条件を満足させないように構成することができる。この結果、実施形態によれば、複数のドハティ増幅器1の間のループ発振の発生を抑制することができる。
【0029】
さらに、実施形態の高周波信号増幅装置100によれば、ピークアンプ18よりも動作している期間が長いキャリアアンプ20間においてループ発振が発生し易い場合は、図4のようにキャリアアンプ20同士を隣接して配設し、逆に非線形性が高いピークアンプ18間においてループ発振が発生し易い場合は、図5のようにピークアンプ18同士を隣接して配設することで、それぞれのループ発振の発振条件を満足させないように構成することができる。
【0030】
(実施形態の変形例)
図6は、実施形態の高周波信号増幅装置100におけるドハティ増幅器1の変形例の構成を示すブロック図である。このドハティ増幅器1は、直接接続負荷型の構成を示すブロック図である。このドハティ増幅器1は、図6に示すように、IIN(IIN:Impedance Inverting Network、インピーダンス反転回路)40およびバラン42を有する。バラン42は、平衡型線路と不平衡型線路との間で高周波信号を変換する変換器である。バラン42は、例えば、入力端子がIIN40およびキャリアアンプ20と接続され、出力端子が出力端子28に接続された変換器である。バラン42の入力端子は、IIN40に接続された入力端子と、キャリアアンプに接続された入力端子とを含む。
このような直列接続負荷型のドハティ増幅器1であっても、高周波信号増幅装置100は、上述したように、隣接したドハティ増幅器1のそれぞれのピークアンプ18同士を隣接させ、または隣接したドハティ増幅器1のそれぞれのキャリアアンプ20同士を隣接させ、隣接されたピークアンプ18の間、またはキャリアアンプ20の間に形成されたループ発振抑制部を設ける。これにより、高周波信号増幅装置100は、上述した高周波信号増幅装置100と同様に、複数のドハティ増幅器1の間でループ発振の発生を抑制することができる。
【0031】
(応用例)
図7は、実施形態の高周波信号増幅装置100の応用例の構成を示すブロック図である。応用例の高周波信号増幅装置は、上述した高周波信号増幅装置100と同様の構成を有する高周波信号増幅装置100Aと、高周波信号増幅装置100Bとを並列して配置し、高周波信号増幅装置100Aと高周波信号増幅装置100Bとの間にループ発振抑制部Rcが形成される。なお、高周波信号増幅装置100Aと高周波信号増幅装置100Bは、同一基板に形成されるモノリシックマイクロ波集積回路であっても良い。また、このモノリシックマイクロ波集積回路をパッケージに収容してもよい。
【0032】
応用例において、高周波信号増幅装置100Aに含まれるアンプと、高周波信号増幅装置100Bに含まれるアンプとは、同種のアンプ同士が隣接するように配設される。また、ループ発振抑制部Rcは、例えば同電位となる筈のキャリアアンプ20Aの入力側とキャリアアンプ20Bの入力側とを接続し、抵抗値を有する。また、ループ発振抑制部Rcは、同電位となる筈のキャリアアンプ20Aの出力側とキャリアアンプ20Bの出力側とを接続し、抵抗値を有する。
【0033】
応用例の高周波信号増幅装置によれば、複数の高周波信号増幅装置100を並列に配置しても、高周波信号増幅装置100間ループに発振抑制部Rcが形成されるので、高周波信号増幅装置100間においてループ発振の発振条件を満足させないようにすることができる。この結果、実施形態によれば、高周波信号増幅装置100においてループ発振の発生を抑制することができる。
【0034】
上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、隣接するキャリアアンプ20の間、または隣接するピークアンプ18の間を接続するループ発振抑制部を持つことにより、複数のドハティ増幅器1の間のループ発振を抑制することができる。
【0035】
上述した実施形態の高周波信号増幅装置100は、並列接続型のドハティ増幅器1を複数配置した構成について説明したが、直列接続型のドハティ増幅器1を複数配置した構成であっても、実施形態に開示した構成を適用することができる。すなわち、直列接続型のドハティ増幅器1を複数配置すると共に、同種のアンプを隣接するよう配置する。さらに、直列接続型のドハティ増幅器1において、隣接した同種のアンプ間に発振抑制部Rcを形成する。この発振抑制部Rcは、同種のアンプ同士の同電位となる筈の箇所を接続するよう形成される。この結果、実施形態の高周波信号増幅装置100によれば、ドハティ増幅器1が直列接続型であっても、ループ発振の発生を抑制することができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
1…ドハティ増幅器、10…入力端子、12…整合回路、14…分配部、16…位相調整回路、18…ピークアンプ、20…キャリアアンプ、22…INN、24…合成部、26…整合回路、28…出力端子、30…分布定数線路、32…λ/4線路、100…高周波信号増幅装置、102…分配器、104…合成器、Rc…ループ発振抑制部、Rp…ループ発振抑制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7